(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6201612
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】腹膜透析用排液バッグ構造および腹膜透析液セット
(51)【国際特許分類】
A61M 1/28 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
A61M1/28
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-213592(P2013-213592)
(22)【出願日】2013年10月11日
(65)【公開番号】特開2015-73828(P2015-73828A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2016年10月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100116861
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 義博
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 宏
【審査官】
宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−299476(JP,A)
【文献】
米国特許第01955008(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/001570(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/14 − A61M 1/32
A61J 1/10 − A61J 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟性シートの縁が所定幅で合着して形成された、平面視において略矩形形状の排液収容袋体と、
排液収容袋体の外側から袋内に液密に片端が進入し排液を排液収容体内へ流入させる通液チューブ体と、
を有する、腹膜透析に用いる排液バッグの使用前構造であって、
排液収容袋体を二つ折りに畳み、畳んだ辺の両側に位置するそれぞれの辺の中央より当該畳んだ辺と対向する辺の側に位置する縁のそれぞれ少なくとも一箇所を融着により留め、
通液チューブ体を輪にして折り畳まれた排液収容袋体の間に差し込んだことを特徴とする排液バッグ構造。
【請求項2】
通液チューブ体の前記片端は、前記対向する辺の端部から当該辺の1/4までのいずれかの位置から進入しており、
更に、当該辺の前記進入位置とは反対側の端部から1/6〜1/3までの縁の少なくとも一箇所を融着により留めたことを特徴とする請求項1に記載の排液バッグ構造。
【請求項3】
通液チューブ体の中途に止液用クリップがスライド可能に挿通され、
通液チューブ体他端および止液用クリップを、折り畳まれた排液収容袋体の間に位置させたことを特徴とする請求項1または2に記載の排液バッグ構造。
【請求項4】
融着を超音波ホチキスによりおこなったものであることを特徴とする請求項1、2または3に記載の排液バッグ構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一つに記載の構造を有する排液バッグと、腹膜透析液バッグとを、外包材に滅菌封入したことを特徴とする腹膜透析液セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CAPD(持続携帯式腹膜透析)その他の腹膜透析に用いる排液バッグおよびこれを備えた腹膜透析液セットに関し、特に、腹膜透析液セットの製造効率を高める排液バッグの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CAPD用の腹膜透析液セットは、透析液が封入された腹膜透析液バッグと、通液チューブが接合された排液バッグと、を滅菌封入した外包材により構成され、患者自身で透析をおこなうものとして流通している。
【0003】
透析液の容量は、例えば2000mlのものもあり、かつ、透析後の排液バッグへの排出処理を速やかにおこなうため、この排液バッグに接合される通液チューブは、直径が10mm程度の比較的大径のものが用いられ、長さも100cm程度と長い。従って、製造過程では、通液チューブを二重、三重の輪にして排液バッグとともに外包材に挿入していた。
【0004】
しかしながら、製造ライン上では、単に輪にしただけでは、チューブ径が大きいため真っ直ぐになろうとする復元力も大きく、手作業にしても自動化するにしても、型くずれが発生し、製造効率が悪くなるという問題点があった。
【0005】
これを改良するものとして、二つ折りした排液バッグに輪にした通液チューブを挟み込みテープ留めした形態も考案されている。しかしながら、テープ留めは、チューブ姿勢が必ずしも一定しないなど自動化が事実上困難であるという問題点があった。
【0006】
一方、人手によりテープ留めは可能であるが、このような医療品の場合は、衛生性確保のため、作業員は手袋を使用する必要がある。この場合、テープが手袋に頻繁に張り付き、作業性を損ね製造効率を著しく悪化させるという問題点が生じる。
【0007】
更に、腹膜透析液セットは、最終的に高圧蒸気滅菌により加熱されるため、テープの粘着剤の揮発等も懸念され、このような観点からも、また、廃棄物が増えるという観点からも、好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−299476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、オートメーション化も可能で作業効率および製造効率を向上する腹膜透析用排液バッグの使用前の構造を提供することを目的とする。
また、使用部材の増加の招来を抑制し、製品品質が維持された腹膜透析用排液バッグおよび腹膜透析液セットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の排液バッグ構造は、柔軟性シートの縁が所定幅で合着して形成された、平面視において略矩形形状の排液収容袋体と、排液収容袋体の外側から袋内に液密に片端が進入し排液を排液収容体内へ流入させる通液チューブ体と、を有する、腹膜透析に用いる排液バッグの使用前構造であって、排液収容袋体を二つ折りに畳み、畳んだ辺の両側に位置するそれぞれの辺の中央より当該畳んだ辺と対向する辺の側に位置する縁のそれぞれ少なくとも一箇所を融着により留め、通液チューブ体を輪にして折り畳まれた排液収容袋体の間に差し込んだことを特徴とする。
【0011】
すなわち、請求項1に係る発明は、型くずれせず、オートメーション化も可能で作業効率および製造効率を向上する腹膜透析用排液バッグの使用前の構造を提供することが可能となる。また、現状の縁のある排液バッグの縁をそのまま利用して融着留めするので、排液バッグ自体の製造に特別な処理を施す必要がなく、また、テープ等を用いずに使用部材の増加、廃棄物の増加の抑制を実現できる。使用部材の増加に由来する新たな品質検査も不要となる。
【0012】
なお、柔軟性シートは合成樹脂素材、例えば、ポリブチレンテレフタレートシート、ポリイミド系合成樹脂シート、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシートなどを用いることができ、融着が可能な素材であれば特に限定されない。シートは複数層により構成されていてもよい。また、排液収容袋体は、矩形形状のシートを2枚重ね合わせて周囲四辺の縁を融着させたものでもよく、矩形形状のシートを二つ折りにして三辺の縁を融着させたものであってもよい。縁の幅は特に限定されないが、通液チューブを挟み込んだ後に融着留めするので、この融着しろとして、例えば、12mmとする態様を挙げることができる。
【0013】
畳んだ辺の両側に位置するそれぞれの辺、とは、いわゆる「わ」が形成される辺に直角に接続する左右の辺を意味する。ただし、二つ折りされているので、二重の縁により辺が形成されることとなる。融着により留める、とは、この二枚重ねの縁同士を留めることを意味する。なお、融着強度は、通液チューブ体の復元力では剥がれず、人力では容易に剥がすことのできる程度とする。
【0014】
辺の中央より、畳んだ辺と対向する辺の側、とは、上述の左右の辺上の、わを形成している辺からみて半分より向こう側の位置を意味する。この位置は、対向する辺の角を基点として、1/5までの位置とすることが好ましい。事実上、通液チューブ体は二重巻きから三重巻きにして、一部が対向する辺からはみ出すため、融着留めする位置が畳んだ辺に近いと保持性が悪くなるためである。
【0015】
請求項2に記載の排液バッグ構造は、請求項1に記載の排液バッグ構造において、通液チューブ体の前記片端は、前記対向する辺の端部から当該辺の1/4までのいずれかの位置から進入しており、更に、当該辺の前記進入位置とは反対側の端部から1/6〜1/3までの縁の少なくとも一箇所を融着により留めたことを特徴とする。
【0016】
すなわち、請求項2に係る発明は、通液チューブ体の輪の保持安定性が高まり、型くずれが一層生じにくい構造を提供できる。
【0017】
請求項3に記載の排液バッグ構造は、請求項1または2に記載の排液バッグにおいて、通液チューブ体の中途に止液用クリップがスライド可能に挿通され、通液チューブ体他端および止液用クリップを、折り畳まれた排液収容袋体の間に位置させたことを特徴とする。
【0018】
すなわち、請求項3に係る発明は、利用者が実際に使用するまで通液チューブ体が不必要に他所にふれず衛生性が保てるとともに、通液チューブ体の保持安定性が一層高まる。
【0019】
なお、クリップは複数存在してもよく、他端にはコネクタ等が形成されていてもよい。使用の態様により他端側がY字に枝分かれして一方が腹膜透析液バッグに接続している場合もあるが、この場合は、他端とは、枝分かれしたもう一方の端部を意味する。通常この端部にはキャップのかぶせてあるコネクタが形成されている。
【0020】
請求項4に記載の排液バッグ構造は、請求項1、2または3に記載の排液バッグ構造において、融着を超音波ホチキスによりおこなったものであることを特徴とする。
【0021】
すなわち、請求項4に係る発明は、作業性を向上させオートメーション化も実現可能となる。
【0022】
請求項5に記載の腹膜透析液セットは、請求項1〜4のいずれか一つに記載の構造を有する排液バッグと、腹膜透析液バッグとを、外包材に滅菌封入したことを特徴とする。
【0023】
すなわち、請求項5に係る発明は、搬送時等に内容物が暴れない、製品品質の高い腹膜透析液セットを提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、オートメーション化も可能で作業効率および製造効率を向上する腹膜透析用排液バッグの使用前の構造を提供することができる。また、使用部材の増加の招来を抑制し、製品品質が維持された腹膜透析用排液バッグおよび腹膜透析液セットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の排液バッグの使用前の構造を、チューブの収容前の状態から示した説明図である。
【
図2】チューブを収容した排液バッグの部分拡大図である。
【
図3】排液バッグと腹膜透析液バッグの外包材3への収容の様子を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の排液バッグの使用前の構造を、チューブの収容前の状態から示した説明図である。
図2は、チューブを収容した排液バッグの部分拡大図である。
図3は、排液バッグと腹膜透析液バッグの外包材3への収容の様子を示した説明図である。なお、図では、表示の便宜上、構成部を簡略ないし省略して描画している。
【0027】
排液バッグ1は、収容袋10と、チューブ20と、を基本構成とする。
【0028】
収容袋10は、縦が約30cm、横が約20cm、厚みが約1mmの二枚の同型の長方形シートを重ね、縁幅12mmとして周囲を合着して液密な袋として形成されている。なお、四隅は面取りされている。また、シートは内側(排液に当接する側)がポリプロピレン、外側がポリブチレンテレフタレートからなる5層シートである。
【0029】
チューブ20は、外径7mm、内径5mmのPP製チューブであり、片端が収容袋10に進入し、他端にはコネクタ21が取り付けられている。また、中途にはチューブ20上をスライド可能な止液クリップ22が挿通されている。チューブ長さは約100cmであり、コネクタ21近傍でY字に分かれ、枝分かれしたチューブ20は、腹膜透析液バッグ2に接続されている。
【0030】
チューブ20の浸入位置は、収容袋10の短辺の端から約3cmの位置であり、腹膜透析後の排液を収容袋10内に通液する。なお、チューブ20と収容袋10とは液密性が当然に確保して接合されている。
【0031】
製造ライン上では、この排液バッグ1は次のようにチューブ20を丸め、折り畳んだ収容袋10に差し込まれて保持される。
【0032】
まず、収容袋10を短辺同士を合わせるようにして二つ折りする。
図1に示すように、便宜上、二つ折りした際の折り線、いわゆる「わ」が形成される辺をL1、L1に接続する左右の辺(半分となった長辺)をL2およびL3、L1に対向する辺をL4とする。
【0033】
次に、チューブ20を三重巻きにしてコネクタ21がL1に内側から押し当たるように収容袋10に差し込む。すなわち、収容袋10の谷折り部分にコネクタ21をあてがうように位置させる。
【0034】
また、このとき、止液クリップ22をスライドさせ、チューブ20の収容袋10への進入位置から離れている方の、半分となった長辺側(
図1では、進入部分がL2側に位置しているので、この場合はL3側)に持ってくる。
【0035】
最後に、左右の辺L2およびL3のL4側の頂点近くの位置にある、二枚重ねにしている縁を超音波ホチキスにてスポット融着する(以降、L2側の融着スポットをS2、L3側の融着スポットをS3と適宜称する)。このとき、チューブ20は左右の辺L2およびL3から外にはみ出ないようにする。
【0036】
同時に、対向辺L4の、チューブ20の収容袋10への進入位置に近い端と反対側にある端から1/4あたりの縁も超音波ホチキスにてスポット融着する(以降、この融着スポットをS4と適宜称する)。このとき、スポットS3とスポットS4との間にチューブ20の束が挟まれるようにする。
【0037】
なお、融着強さは、当然ながら融着強度はチューブ20が真っ直ぐになろうとする復元力では剥離せず、人力では簡単に剥離できる強さとする。この設定は、使用する超音波ホチキスに依存するが、ヘッドの押圧力と押圧時間とを調整することによりおこなう。また、融着箇所は、縁幅の中央付近を目安とし、収容袋10の内側に寄りすぎないようにする。液密性を維持するためである。本実施の形態では1mm×3mmの線形状のスポット形状としている。
【0038】
排液バッグ1は以上の様な姿勢を有するように形成されるので、チューブ20が収容袋10に保持され、安定性に優れる。一般に、チューブ20は太く長く、また、折れや曲がりや癖がつくと製品信頼性が低下するため、二つ折りにした収容袋10内に総てを収容することはできず、一部が辺L4からはみ出さざるを得ないが、上記の形態とすることにより、以降のラインで排液バッグ1に振動等がかかる場合であっても、チューブ20が暴れ出すことなく、外包材3への収容作業性も向上する。
【0039】
なお、スポットS2の位置は、L4側の端からL2上の1/4までの位置とする。スポットS3の位置も同様に、L4側の端からL3上の1/4までとする。好ましくはいずれの場合も1/5までとする。
【0040】
スポットS4の位置は、L4上の1/4あたりとしたが、端から1/6〜1/3までが好ましい。ただし、S3とS4は協働してチューブ20および止液クリップ22のずれ落ちを抑制するので、チューブ20の太さ、巻き数(束ねる数)、クリップ22の大きさを考慮して適宜S3およびS4を位置決めするのが最も好ましい。
【0041】
また、融着する箇所は各辺に複数設けるようにしてもよい。融着手段も超音波ホチキスでなく、他の熱融着手段、熱溶着手段を適宜用いることもできる。
【0042】
なお、このように形成された排液バッグ1は、
図3に示したように、チューブ20の枝分かれさせた他端を2液型の腹膜透析液バッグ2に接合させた後、この腹膜透析液バッグ2に挟み込まれ、外包材3に挿入される。外包材3内は、その後EOGガスにより滅菌され、封入され、腹膜透析セットが完成する。
【0043】
以上説明したように、排液バッグ1は、収容袋10に元からある縁を利用して、融着によりチューブ20の安定的な保持を実現し、作業性および製造効率を向上させる。テープ等新たな部材を用いない接合であるため好適であり、また、接着剤等の溶剤を用いた接合でないため、溶剤の揮発、付着、浸入などがおこらず、製品信頼性も維持される。また、利用者においても、二つ折りの収容袋10を開けるまでチューブ20自体やその先のコネクタ21が遊ばないので、衛生性が保持され良好な取扱性を提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、CAPDやAPD、その他の透析に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 排液バッグ
2 腹膜透析液バッグ
3 外包材
10 収容袋
20 チューブ
21 コネクタ
22 止液クリップ
L1 辺(二つ折りし「わ」のある辺)
L2,L3 辺(L1から立ち上がる左右の辺)
L4 対向辺(L1に対向する辺)
S2,S3,S4 融着スポット