特許第6201616号(P6201616)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6201616
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】防汚処理された道路用表示体
(51)【国際特許分類】
   E01F 9/60 20160101AFI20170914BHJP
【FI】
   E01F9/60
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-215595(P2013-215595)
(22)【出願日】2013年10月16日
(65)【公開番号】特開2015-78516(P2015-78516A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2016年9月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101340
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英一
(72)【発明者】
【氏名】吉武 勲
(72)【発明者】
【氏名】東良 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】阿部 克己
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−121277(JP,A)
【文献】 特許第3073775(JP,B2)
【文献】 特開平10−147913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 9/00−11/00
C09D 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン樹脂に、アルコキシシランまたはその多量体であるオルガノシリケート化合物を配合し、該オルガノシリケート化合物が加水分解したシラノール基を有する塗料で道路用標示体本体の表面の一部または全部を被覆してなる道路用標示体であり、
前記塗料中のウレタン樹脂とオルガノシリケート化合物の固形分重量の総合計量に対して、前記オルガノシリケート化合物が10.0〜58.0重量%の範囲で配合してなり、
前記ウレタン樹脂として高硬度のものと低硬度のものを併用することを特徴とする道路用標示体。
【請求項2】
前記オルガノシリケート化合物は、アルコキシシランの加水分解によりシラノール基が2つ以上生成するオルガノシリケート化合物であることを特徴とする請求項1記載の道路用標示体。
【請求項3】
前記オルガノシリケート化合物は、2〜4官能の加水分解性シラン化合物であるアルコキシシランであることを特徴とする請求項1又は2記載の道路用標示体。
【請求項4】
前記オルガノシリケート化合物は、下記式(1)の構造であるアルコキシシランの加水分解により得られることを特徴とする請求項1に記載の道路用標示体。
式(1)
【化1】
(式中、mは2〜100を表す。)
【請求項5】
前記塗料の厚みが1〜15μmとなることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の道路用標示体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防汚処理された道路用表示体に関し、詳しくは防汚性、柔軟性を有する道路用標示体に関する。
【背景技術】
【0002】
道路用表示体(道路標識柱)は、視線誘導や車両進入抑止用途として、歩道、中央分離帯、センターライン(車線分離)、分流箇所などの道路上、駐車場、公園や施設内の出入口などに設置され、日々交通を円滑にすること等のために寄与している。屋外に設置するため、長期間の使用で埃や排気ガスなどにより表面に汚れが付着し、主機能である視認性が低下する。
【0003】
そのため、道路標示体の表面に自浄作用のあるフィルムやシート、表面処理(塗装処理)等の様々な手法がとられている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−285625号公報
【特許文献2】特開平7−76808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、フィルムやシートを道路標示体本体に貼り付ける手法では、フィルムやシートを道路標示体本体に貼付後、端面を固着させているだけであり、道路用標示体本体に対する接着性が低く、剥がれ易いため問題であった。一方、シリケート含有フッ素樹脂塗料の表面処理では、ベースとなるポリマーが高額であるという欠点がある。
【0006】
そこで、本発明は、防汚性、柔軟性を有する道路用標示体を提供することを課題とする。
【0007】
また本発明の他の課題は、以下の記載により明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は以下の各発明によって解決される。
【0009】
1.ウレタン樹脂に、アルコキシシランまたはその多量体であるオルガノシリケート化合物を配合し、該オルガノシリケート化合物が加水分解したシラノール基を有する塗料で道路用標示体本体の表面の一部または全部を被覆してなる道路用標示体であり、
前記塗料中のウレタン樹脂とオルガノシリケート化合物の固形分重量の総合計量に対して、前記オルガノシリケート化合物が10.0〜58.0重量%の範囲で配合してなり、
前記ウレタン樹脂として高硬度のものと低硬度のものを併用することを特徴とする道路用標示体。
【0010】
2.前記オルガノシリケート化合物は、アルコキシシランの加水分解によりシラノール基が2つ以上生成するオルガノシリケート化合物であることを特徴とする前記1記載の道路用標示体。
【0011】
3.前記オルガノシリケート化合物は、2〜4官能の加水分解性シラン化合物であるアルコキシシランであることを特徴とする前記1又は2記載の道路用標示体。
【0012】
4.前記オルガノシリケート化合物は、下記式(1)の構造であるアルコキシシランの加水分解により得られることを特徴とする前記1に記載の道路用標示体。
式(1)
【0013】
【化2】
(式中、mは2〜100を表す。)
【0014】
5.前記塗料の厚みが1〜15μmとなることを特徴とする前記1〜4の何れかに記載の道路用標示体。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、防汚性を有する道路用標示体を提供することができる。
【0016】
また、本発明によれば、屈曲性(柔軟性)に優れるため、180度屈曲しても、クラックなどを生じることがない道路用標示体を提供することができる。
【0017】
さらにまた、本発明によれば、従来のフッ素樹脂ではなくウレタン樹脂を塗料に用いるため、低コストであるという利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
本発明の道路用標示体は、特定の塗料で道路用標示体本体の表面の一部または全部を被覆してなる。
【0020】
本発明で用いられる特定の塗料は、ウレタン樹脂と、アルコキシシランまたはその多量体であるオルガノシリケート化合物からなり、オルガノシリケート化合物が加水分解したシラノール基を有する。
【0021】
<ウレタン樹脂>
塗料の原料であるウレタン樹脂としては、格別限定されるわけではないが、ポリオールを主成分とする主剤とイソシアネート化合物を主成分とする硬化剤からなる2液を反応させて合成される2液タイプのものと、主成分であるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーが空気中の水分と反応し、常温で硬化してウレタン樹脂となる1液タイプのものがある。本発明では、いずれのものも使用でき、それぞれを単独で使用することもできるが、2液タイプ同士、2液タイプと1液タイプのように2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0022】
イソシアネート化合物としては、2官能以上のイソシアネート化合物を好ましく挙げることができる。
【0023】
2官能のイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及びノルボルナンジイソシアネートなど選ばれるポリイソシアネート化合物が挙げられる。
【0024】
3官能以上のイソシアネート化合物は、上記ジイソシアネートを出発原料として合成されたもので、ビュレット体、トリメチロールプロパンアダクト体、イソシアヌレート体、アロファネート体などが挙げられる。
【0025】
ポリオールは、格別限定されず、公知のものを使用できる。
【0026】
塗布液におけるウレタン樹脂の配合量としては、固形分重量%として40〜90重量%の範囲が好ましく、さらに好ましくは50〜80重量%の範囲である。
【0027】
本発明に用いるウレタン樹脂としては、高硬度のものと低硬度のものを併用する。
【0028】
高硬度のウレタン樹脂を含まずに塗布液とすると、防汚性が低くなり、低硬度のウレタン樹脂を含まずに塗布液とすると柔軟性がなくなるため好ましくない。
【0029】
ウレタン樹脂は、市販品として入手でき、高硬度のウレタン樹脂としては、たとえばDIC社製DM−653、DM−675、DM−677、DM−678などを好ましく用いることができる。低硬度のウレタン樹脂としては、DF−407、16−411、16−416、18−472、DN−980、DN−981などを好ましく用いることができる。
【0030】
本発明の道路用標示体本体は、衝撃や曲げにより割れやクラックが発生すると、その部位に汚れが入り込むため、道路用標示体として用いる上では、柔軟性のあるウレタン樹脂を用いることが好ましい。また本発明では、道路用標示体として用いる上では、黄変が生じにくい(無黄変)ウレタン樹脂を用いることが好ましい。
【0031】
本発明において、道路用標示体本体をウレタン樹脂で形成した場合には、塗料のベースとなるポリマーに、ウレタン樹脂を使用しているので、その本体との接着性が良いので好ましい。
【0032】
<オルガノシリケート化合物>
本発明の塗料には、ウレタン樹脂に、アルコキシシランまたはその多量体であるオルガノシリケート化合物を配合し、オルガノシリケート化合物が加水分解したシラノール基を有する。
【0033】
オルガノシリケート化合物の含有量は、ウレタン樹脂とオルガノシリケート化合物の固形分重量の総合計量に対して、オルガノシリケート化合物が10重量%以上の範囲で配合される。特に、ウレタン樹脂とオルガノシリケート化合物の固形分重量の総合計量に対して、オルガノシリケート化合物が10〜70重量%の範囲で配合されることが好ましい。
【0034】
一定の割合でオルガノシリケート化合物を含有することで、ウレタン樹脂塗料の表面を親水化させることができる。かかる表面を親水性にすることにより、疎水性物質である煤煙や煤等の付着を防止でき、親水性物質である土や埃は、降雨により水と一緒に洗い流すという自浄作用を持たせることができる。
【0035】
本発明における防汚性とは、疎水性物質である煤煙や煤等の付着の防止と、親水性物質である土や埃を、降雨により水と一緒に洗い流すことができるという自浄作用を有することを言う。
【0036】
本発明において、オルガノシリケート化合物は、アルコキシシランの加水分解によりシラノール基が二つ以上生成するオルガノシリケート化合物が好ましい。
【0037】
また、本発明において、オルガノシリケート化合物は、2〜4官能の加水分解性シラン化合物であるアルコキシシランがさらに好ましく、たとえばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0038】
アルコキシとしては、メチルシリケートオリゴマーやメトキシなどが挙げられるが、たとえばメトキシシランを用いた場合には、加水分解速度が速く、反応性に富んだメチルシリケートオリゴマーが得られる。メチルシリケートオリゴマーは市販品として入手でき、たとえば三菱化学社製MS−51、MS−56、MS−57、MS−56Sなどを好ましく用いることができる。
【0039】
更に、本発明において、オルガノシリケート化合物は、前記式(1)で示されるアルコキシシランの加水分解により得られるものも好ましい。この例では、メトキシシランの加水分解により、メチルシリケートオリゴマーなどが得られる。
【0040】
<その他配合剤>
上記の塗料には、本発明の課題や目的を阻害しない範囲で、必要に応じて、他の任意成分が配合されてもかまわない。このような任意成分としては、例えば、紫外線吸収剤や光安定剤を挙げることができる。
【0041】
<塗料の製造>
以上の各成分を含む塗料を得るには、該成分を、トルエン、酢酸ブチル、シクロヘキサノン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの単独溶媒または混合溶液に、約5〜20重量%の成分濃度になるように溶解させた有機溶媒溶液として用いられる。
【0042】
<塗布による本発明の道路用標示体の製造>
得られた塗料で道路用標示体本体(基材)の表面の一部または全部を被覆することにより本発明の道路用標示体が得られる。
【0043】
具体的には、ウレタン樹脂製の道路用標示体本体上に、ウレタン樹脂塗料を塗装し、乾燥させ、溶剤を揮発、塗料を硬化させる表面処理を施して、本発明の道路用標示体が得られる。
【0044】
塗装方法は特に限定されないが、ディッピング法、スプレー法、ロールコート法、ドクターブレード法、フローコート法など、公知の塗装方法にて行なうことができる。
【0045】
乾燥方法は適宜設定することができるが、乾燥温度は室温〜120℃、乾燥時間が30〜90分間行なうことが好ましい。
【0046】
本発明で用いられる特定の塗料は、本発明の道路標示体に対して、塗布膜の厚みとして、1〜15μmの厚みで塗布されることが好ましい。
【0047】
15μmよりも厚いと、表面に凹凸が発生したり、塗膜の柔軟性が低下するため好ましくない。また、1μmよりも薄いと、道路用標示体本体(基材)のウレタン層が露出したり、塗装成分の接待量が少なくなり磨耗性が低下、また防汚性が弱くなるため好ましくない。
【0048】
本発明に係る塗料の用途としては、道路標示体のみならず、屋内外設置物に塗布することで、防汚塗料として好ましく用いることができる。
【実施例】
【0049】
本発明の実施例について説明する。かかる実施例によって本発明が限定されるものではない。
【0050】
実施例1
<配合成分とその配合量>
・高硬度ウレタン樹脂(DIC社製「DM−653」(固形分濃度55.0重量%) 3.8重量部
・低硬度ウレタン樹脂(DIC社製「DM−407」(固形分濃度25.0重量%) 2.2重量部
・オルガノシリケート(テトラメトキシシラン)(固形分) 0.3重量部
・シクロヘキサノン 11.5重量部
・酢酸ブチル 11.5重量部
【0051】
上記実施例1に係る各種配合を混合し、均一に溶解させ、ウレタン樹脂塗料を作製した。
【0052】
また、ウレタン樹脂とオルガノシリケート化合物の固形分重量の総合計量に対するオルガノシリケート化合物固形分重量の配合比は、表1に示した通りであった。
【0053】
ウレタン樹脂製の道路用標示体本体上に、ウレタン樹脂塗料をスプレー塗装し、120℃にて60分間乾燥させ、溶剤を揮発、塗料を硬化させる表面処理を施した。
【0054】
硬化後の塗料の厚みは8μmであった。
【0055】
<評価方法>
実施例1で得られた防汚塗布膜に対して、下記の項目について評価を行ない、結果を表1に示した。
【0056】
(1)塗膜の初期接着性
JIS K5400−8−5(1990)に準拠し、100目の碁盤目を用いて碁盤目試験を行い、粘着テープの剥離を、以下の基準で評価した。
◎:剥離なし
○:1〜10目剥離が確認できた。
△:11〜60目剥離が確認できた。
×:61〜100目剥離が確認できた。
【0057】
(2)防汚性
カーボンブラック(ライオン株式会社製EC600JD)を防汚塗布膜に擦り付け、およびカーボンブラック懸濁液(レジノカラー工業社製ピグダイブラックLN−720N)を防汚塗布膜に塗布した後、防汚塗布膜をイオン交換水にてシャワー洗浄(圧力:0.3MPa)し、以下の基準で防汚性の評価を行なった。
◎:自浄作用があり、汚れなし。
○:微小な汚れあり。
△:部分的に汚れあり。
×:自浄作用がなく、全面的に汚れあり。
【0058】
(3)屈曲性(柔軟性)
JIS K5600−5−1(1999)に準拠し、180度屈曲試験後、実体顕微鏡にて観察し、割れ、クラックの有無を評価した。
◎:クラックなし。
○:微小にクラックあり。
△:部分的にクラックあり。
×:全面的にクラックあり。
【0059】
(4)親水性
水に対する接触角を、自動接触角計(協和界面科学CA−V型)により測定した。
接触角度は65°以下が好ましく、さらに好ましくは50°以下である。接触角度が65°以下であると親水性に優れ、疎水性物質である煤煙やすす等の付着を防止でき、親水性物質である土や埃は、降雨により水と一緒に洗い流すことができ好ましい。
【0060】
(実施例2)
実施例1において、オルガノシリケート0.3重量部を2.2重量部に、シクロヘキサノン11.5重量部を20.0重量部に、酢酸ブチル11.5重量部を20.0重量部に変更した以外は同様にウレタン樹脂塗料を成形した。
その後、実施例1と同様に、ウレタン樹脂製の道路用標示体本体上に表面処理を施した。得られた防汚塗布膜に対して、実施例1と同様に評価し、その結果を表1に示した。
【0061】
(実施例3)
実施例1において、オルガノシリケート0.3重量部を3.4重量部に、シクロヘキサノン11.5重量部を25.0重量部に、酢酸ブチル11.5重量部を25.0重量部に変更した以外は同様にウレタン樹脂塗料を成形した。
その後、実施例1と同様に、ウレタン樹脂製の道路用標示体本体上に表面処理を施した。得られた防汚塗布膜に対して、実施例1と同様に評価し、その結果を表1に示した。
【0062】
(実施例4)
実施例1において、ウレタン樹脂(DIC社製「DM−653」(固形分濃度55.0重量%)3.8重量部を3.9重量部に、ウレタン樹脂(DIC社製「DM−407」(固形分濃度25.0重量%)2.2重量部を1.0重量部に、オルガノシリケート0.3重量部を2.0重量部に、シクロヘキサノン11.5重量部を18.0重量部に、酢酸ブチル11.5重量部を18.0重量部に変更した以外は同様にウレタン樹脂塗料を成形した。
その後、実施例1と同様に、ウレタン樹脂製の道路用標示体本体上に表面処理を施した。得られた防汚塗布膜に対して、実施例1と同様に評価し、その結果を表1に示した。
【0063】
(実施例5)
実施例1において、ウレタン樹脂(DIC社製「DM−653」(固形分濃度55.0重量%)3.8重量部を2.6重量部に、ウレタン樹脂(DIC社製「DM−407」(固形分濃度25.0重量%)2.2重量部を2.4重量部に、オルガノシリケート0.3重量部を1.7重量部に、シクロヘキサノン11.5重量部を11.0重量部に、酢酸ブチル11.5重量部を11.0重量部に変更した以外は同様にウレタン樹脂塗料を成形した。
その後、実施例1と同様に、ウレタン樹脂製の道路用標示体本体上に表面処理を施した。得られた防汚塗布膜に対して、実施例1と同様に評価し、その結果を表1に示した。
【0064】
(比較例1)
実施例1において、オルガノシリケート0.3重量部を0重量部に、シクロヘキサノン11.5重量部を10.0重量部に、酢酸ブチル11.5重量部を10.0重量部に変更した以外は同様にウレタン樹脂塗料を成形した。
その後、実施例1と同様に、ウレタン樹脂製の道路用標示体本体上に表面処理を施した。得られた防汚塗布膜に対して、実施例1と同様に評価し、その結果を表1に示した。
【0065】
(比較例2)
実施例1において、オルガノシリケート0.3重量部を4.0重量部に、シクロヘキサノン11.5重量部を28.0重量部に、酢酸ブチル11.5重量部を28.0重量部に変更した以外は同様にウレタン樹脂塗料を成形した。
その後、実施例1と同様に、ウレタン樹脂製の道路用標示体本体上に表面処理を施した。得られた防汚塗布膜に対して、実施例1と同様に評価し、その結果を表1に示した。
【0066】
(比較例3)
実施例1において、ウレタン樹脂(DIC社製「DM−653」(固形分濃度55.0重量%)3.8重量部を4.0重量部に、ウレタン樹脂(DIC社製「DM−407」(固形分濃度25.0重量%)2.2重量部を0重量部に、オルガノシリケート0.3重量部を1.8重量部に、シクロヘキサノン11.5重量部を12.0重量部に、酢酸ブチル11.5重量部を12.0重量部に変更した以外は同様にウレタン樹脂塗料を成形した。
その後、実施例1と同様に、ウレタン樹脂製の道路用標示体本体上に表面処理を施した。得られた防汚塗布膜に対して、実施例1と同様に評価し、その結果を表1に示した。
【0067】
(比較例4)
実施例1において、ウレタン樹脂(DIC社製「DM−653」(固形分濃度55.0重量%)3.8重量部を0重量部に、ウレタン樹脂(DIC社製「DM−407」(固形分濃度25.0重量%)2.2重量部を6.2重量部に、オルガノシリケート0.3重量部を1.3重量部に、シクロヘキサノン11.5重量部を7.0重量部に、酢酸ブチル11.5重量部を7.0重量部に変更した以外は同様にウレタン樹脂塗料を成形した。
その後、実施例1と同様に、ウレタン樹脂製の道路用標示体本体上に表面処理を施した。得られた防汚塗布膜に対して、実施例1と同様に評価し、その結果を表1に示した。
【0068】
【表1】
【0069】
<評価>
以上の結果より、塗料中のウレタン樹脂とオルガノシリケート化合物の固形分重量の総合計量に対して、前記オルガノシリケート化合物が10.0重量%以上配合している実施例1〜5、比較例2〜4に関しては、オルガノシリケート化合物を含まない比較例1と比較して、親水性が良好であることが確認できた。
【0070】
しかし、オルガノシリケート化合物を、58.0重量%を超えて配合している比較例2に関しては、オルガノシリケートを多量に配合したために、屈曲試験において割れが生じてしまったため、屈曲性が×となった。また、比較例2においては、光沢感が著しく低下していた。
【0071】
また、比較例3より、低硬度のウレタン樹脂を含まない塗料とした場合には、柔軟性が悪く、また、比較例4より、高硬度のウレタン樹脂を含まない塗料とした場合には、防汚性が悪化してしまうことが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明で用いられる特定の塗料は以上のような効果を奏するため、道路標示体に好ましく用いることができる他、ディッピング法、スプレー法、ロールコート法、ドクターブレード法、フローコート法など様々な塗装方法で塗布することができるため、フィルムやシートによる防汚処理と異なり、設置物の形を問わず、様々な屋外設置物において好ましく利用することが出来る。
【0073】
また、本発明で用いられる特定の塗料は、汚れが落ち易い効果があるため、屋内設置物においても好ましく用いることができる。