特許第6201620号(P6201620)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6201620太陽電池用裏面保護シート、その製造方法および太陽電池モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6201620
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】太陽電池用裏面保護シート、その製造方法および太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/049 20140101AFI20170914BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20170914BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20170914BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20170914BHJP
   C08J 7/04 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   H01L31/04 562
   B32B27/20 A
   B32B27/30 A
   B32B27/40
   C08J7/04 ECER
   C08J7/04CEZ
【請求項の数】6
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2013-218320(P2013-218320)
(22)【出願日】2013年10月21日
(65)【公開番号】特開2015-82526(P2015-82526A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2016年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 直宏
(72)【発明者】
【氏名】山口 浩史
(72)【発明者】
【氏名】吉川 猛
【審査官】 嵯峨根 多美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−021273(JP,A)
【文献】 特開2014−067968(JP,A)
【文献】 特開2011−258879(JP,A)
【文献】 特開2012−216677(JP,A)
【文献】 特開2013−117021(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/004961(WO,A1)
【文献】 特開2013−129750(JP,A)
【文献】 特開2013−012952(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/049
B32B 27/20
B32B 27/30
B32B 27/40
C08J 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルム(A)の一方の主面に易接着性コーティング層(B)を有する太陽電池用裏面保護シート(V)であって、
前記易接着性コーティング層(B)が、アクリル系樹脂(b1)、ポリイソシアネート化合物、平均粒子径が0.35〜0.5μmの酸化チタン(a)を含有することを特徴とする太陽電池用裏面保護シート(V)。
【請求項2】
酸化チタン(a)の平均粒子径が0.39〜0.45μmであることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池用裏面保護シート(V)。
【請求項3】
前記易接着性コーティング層(B)の全重量中に、酸化チタン(a)を30〜70重量%含有することを特徴とする請求項1または2に記載の太陽電池用裏面保護シート(V)。
【請求項4】
アクリル系樹脂(b1)のガラス転移温度が10℃〜100℃であることを特徴とする、請求項1〜3いずれか1項に記載の太陽電池用裏面保護シート(V)。
【請求項5】
アクリル系樹脂(b1)が側鎖に不飽和二重結合を有することを特徴とする、請求項1〜4いずれか1項に記載の太陽電池用裏面保護シート(V)。
【請求項6】
太陽電池の受光面側に位置する太陽電池表面保護材(I)、太陽電池の受光面側に位置する封止剤層(II)、太陽電池セル(III)、太陽電池の非受光面側に位置し、有機過酸化物を含有する封止剤層(IV)、及び請求項1〜いずれか1項に記載の太陽電池裏面保護シート(V)を具備してなる太陽電池モジュールであって、易接着性コーティング層(B)が、前記非受光面側封止剤層(IV)に接していることを特徴とする太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池用裏面保護シートおよび該太陽電池用裏面保護シートを具備してなる太陽電池モジュールに関する。
詳しくは、本発明は、可視光および赤外線を反射する機能に優れた太陽電池用裏面保護シートおよび該太陽電池用裏面保護シートを具備してなる太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に対する意識の高まりから環境汚染がなくクリーンなエネルギー源として太陽電池が注目され、有用なエネルギー資源としての太陽エネルギー利用の面から鋭意研究され実用化が進んでいる。
太陽電池素子には様々な形態があり、その代表的なものとして、結晶シリコン太陽電池素子、多結晶シリコン太陽電池素子、非晶質シリコン太陽電池素子、銅インジウムセレナイド太陽電池素子、化合物半導体太陽電池素子等が知られている。この中で薄膜結晶太陽電池素子、非晶質シリコン太陽電池素子、化合物半導体太陽電池素子は比較的低コストであり、また大面積化が可能であるため、各方面で活発に研究開発が行われている。またこれらの太陽電池素子の中でも、導体金属基板上にシリコンを積層し、更にその上に透明導電層を形成した非晶質シリコン太陽電池素子に代表される薄膜太陽電池素子は軽量であり、また耐衝撃性やフレキシブル性に富んでいるので、太陽電池における将来の形態として有望視されている。
【0003】
太陽電池モジュールのうち、単純なものは、太陽電池素子の両面に充填剤、ガラス板を、順に積層した構成形態を呈する。ガラス板は、透明性、耐候性、耐擦傷性に優れることから、太陽の受光面側の封止シートとして、現在も一般的に用いられている。しかし、透明性を必要としない非受光面側においては、コストや安全性、加工性の面から、ガラス板以外の太陽電池用裏面保護シート(以下裏面保護シート)が各社により開発され、ガラス板に置き換わりつつある。
【0004】
裏面保護シートとしては、ポリエステルフィルム等の単層フィルムや、ポリエステルフィルム等に金属酸化物や非金属酸化物の蒸着層を設けたものや、ポリエステルフィルムやフッ素系フィルム、オレフィンフィルムやアルミニウム箔などのフィルムを積層した多層フィルムが挙げられる。
多層構成の裏面保護シートは、その多層構造により、さまざま性能を付与することができる。例えば、ポリエステルフィルムを用いることで絶縁性を、フッ素系フィルムを用いることで耐候性を、アルミニウム箔を用いることで水蒸気バリア性を付与することができる。
どのような裏面保護シートを用いるかは、太陽電池モジュールが用いられる製品・用途によって、適宜選択され得る。
【0005】
太陽電池の吸収する波長領域は、太陽電池素子により異なり、非晶質シリコン太陽電池素子は300〜800nm、結晶シリコン太陽電池素子は400〜1200nmに、それぞれ吸収感度を有する。裏面保護シートの受光面側が白色である場合、太陽電池素子が吸収できず透過した光は裏面保護シートで反射され、太陽電池素子に入射することができる。しかし、裏面保護シートの受光面側に一般的な汎用白色顔料を用いた場合、波長350nmにおける反射率は最も高いが、長波長になるにつれ反射率が低下していき、結晶シリコン太陽電池素子の吸収感度が最も高い800nm付近の反射率は大幅に低下する。すなわち、人間の目にとって最も高感度の波長域の光を反射する一般的な汎用白色顔料では、近赤外領域の波長を有効利用することができない。
【0006】
一方、太陽電池素子は一般的に高温になるほど出力が低下しやすいため、太陽電池モジュールが高温になることは望ましくない。一般的に温度上昇に寄与する太陽光は800nm〜4000nmの近赤外〜赤外領域の波長である、そこで、裏面保護シートの受光面側を白色にすることで、赤外光を反射して、太陽電池モジュール全体が高温になることを防ぐことが望ましいが、前述した通り、一般的な汎用白色顔料を用いた場合では赤外領域の反射率は高くないため、太陽電池モジュール全体の温度上昇を防ぐことが困難となる。
【0007】
そこで、粒径の大きな白色顔料を用いることで、近赤外線を反射させて、遮熱機能並びに太陽電池のエネルギー変換効率を増大させる太陽電池用裏面保護シートが提案されている。
しかし、粒径が過剰に大きい場合、1300nm以上の反射率は良好であるが、結晶シリコン太陽電池素子の吸収感度が最も高い700nm〜1200nmの反射率は悪い結果となり、太陽電池のエネルギー変換効率の向上は期待できない。したがって、太陽電池のエネルギー変換効率と遮熱性を両立する最適な粒径を有する白色顔料の選定が重要となってくる。
【0008】
特許文献1には、白色顔料で着色された接着性塗布層を有する太陽電池用裏面保護シートが開示されている。特許文献2には、白色無機粒子を含有するポリマー基材に、白色無機粒子を含有する反射層を有する太陽電池用裏面保護シートが開示されている。特許文献3には、600nmから1400nmの領域の光を平均70%以上反射する太陽電池裏面保護膜用プラスチックフィルムが開示されている。特許文献4には、太陽電池セルと、裏面封止材と、裏面保護シートとを有する太陽電池モジュールであって、前記裏面封止材および前記裏面保護シートのいずれかに異なる大きさの酸化チタンを含む太陽電池モジュールが開示されている。また、特許文献5には、 粒径が0.5μm以上1.5μm以下の白色顔料を含む白色層と、 波長750nm以上1500nm以下の近赤外線を透過する黒色材料を含む黒色層と、を有する太陽電池モジュール用裏面保護シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−109240号公報
【特許文献2】特開2011−165967号公報
【特許文献3】特開2007−208179号公報
【特許文献4】特開2011−258879号公報
【特許文献5】特開2012−019138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1、2記載の発明の場合、光を反射させることで太陽電池素子が吸収できなかった光の再利用効果は記載されているが、近赤外領域の光を反射させることによる太陽電池素子が吸収できなかった光の再利用効果についての技術思想、および近赤外〜赤外領域の光を反射させることによる放熱効果に関する技術思想は開示されていない。
特許文献3−5記載の発明の場合、近赤外領域の光を反射させることによる放熱効果や太陽電池素子が吸収できなかった光の再利用効果は記載されているが、可視光領域の反射に劣り、全ての光を効率よく用いているとは言えない。
本発明の課題は、波長380−4000nmに亘る領域の光を効率よく反射でき、遮熱性に優れ、さらには、太陽電池のエネルギー変換効率を増大する機能を有する太陽電池用裏面保護シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、平均粒子径が0.35μm以上、0.5μm以下の酸化チタン(a)を有した易接着性コーティング層(B)を用いることにより、上記課題を解決できた。
即ち、本発明は、プラスチックフィルム(A)の一方の主面に易接着性コーティング層(B)を有する太陽電池用裏面保護シート(V)であって、
前記易接着性コーティング層(B)が、平均粒子径が0.35〜0.5μmの酸化チタン(a)を含有することを特徴とする太陽電池用裏面保護シート(V)に関する。
前記本発明において、酸化チタン(a)の平均粒子径は、0.39〜0.45μmであることが好ましい。さらに、前記易接着性コーティング層(B)の全重量中に、酸化チタン(a)を30〜70重量%含有することが好ましい。
なお、本発明において「プラスチックフィルム(A)の一方の主面」とは、プラスチックフィルム(A)の一方の面の意であり、プラスチックフィルム(A)の一方の面に位置する易接着性コーティング層(B)は太陽電池用裏面保護シート(V)最表面を構成する。


【0012】
また、前記本発明において、易接着性コーティング層(B)は水酸基を有する樹脂(b)とポリイソシアネート化合物とを含有することが好ましく、
前記水酸基を有する樹脂(b)は、アクリル系樹脂(b1)であることが好ましく、
前記アクリル系樹脂(b1)のガラス転位温度が10℃〜100℃であることが好ましい。
さらに前記アクリル系樹脂(b1)は、側鎖に不飽和二重結合を有することが好ましい。
【0013】
さらに、本発明は、太陽電池の受光面側に位置する太陽電池表面保護材(I)、太陽電池の受光面側に位置する封止剤層(II)、太陽電池セル(III)、太陽電池の非受光面側に位置し、有機過酸化物を含有する封止剤層(IV)、及び前記発明のいずれかに記載の太陽電池裏面保護シート(V)を具備してなる太陽電池モジュールであって、易接着性コーティング層(B)が、前記非受光面側封止剤層(IV)に接していることを特徴とする太陽電池モジュールに関する。
【発明の効果】
【0014】

本発明の太陽電池モジュールは、平均粒子径が0.35μm以上、0.50μm以下の酸化チタン(a)を含有した易接着性コーティング層(B)を具備する太陽電池用保護シート(V)によって、380−4000nmの波長の光を効率よく反射することができ、太陽電池のエネルギー変換効率を増大する効果を奏する。さらには、本発明の太陽電池モジュールは、太陽電池素子が吸収できずに透過した近赤外線を太陽電池用裏面保護材が反射することによって、太陽電池用裏面保護材が高温になることを防ぎ、太陽電池素子のエネルギー変換効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の太陽電池用モジュールの断面を模式的に示す図である。
図2】酸化チタン(a)の平均粒子径の求め方を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の太陽電池用裏面保護シート(V)について説明する。
本発明の太陽電池用裏面保護シート(V)は、前記したように酸化チタン(a)を含有する易接着性コーティング層を有する。
酸化チタン(a)を含有するコーティング層は、太陽電池用裏面保護シート(V)の最表面に位置し、太陽電池モジュールを構成する際、太陽電池の非受光面側に位置する封止剤(IV)と接し、太陽電池用裏面保護材(V)と封止剤(IV)を強固に貼り合せる機能と、380〜4000nmの波長の光を中心に効率よく反射させる機能を担う。
【0017】
太陽電池用裏面保護シートが、平均粒子径が0.2〜0.3μmの汎用的な酸化チタンを含有する白色層を有する場合、400〜600nmの波長の光は効率よく反射できる。しかし、一般的な太陽電池にとって最も感度の良い700〜1200nmの波長の光を効率よく反射させることができないため、太陽電池のエネルギー変換効率の向上や太陽電池モジュールの温度上昇抑制が期待できない。
【0018】
これに対し、本発明の太陽電池用裏面保護シート(V)では、プラスチックフィルム(A)の片面側に平均粒子径0.35〜0.5μmの酸化チタン(a)を含有する易接着性コーティング層を用いることで上記の問題を解決できることがわかった。
すなわち、受光面側から入射した光は、酸化チタン(a)を含有する最表面としての易接着性易接着性コーティング層(B)において、380〜4000nmの波長の光を万遍なく反射することが可能となる。
【0019】
易接着性コーティング層(B)についてさらに詳細に説明する。
易接着性コーティング層(B)は走査型電子顕微鏡で計測した平均粒子径が0.35〜0.5μmの酸化チタン(a)を含有することを特徴とする。易接着性コーティング層(B)は、赤外光・可視光を反射させて、太陽電池セル(III)に可視光を再入射させることによる変換効率の向上と太陽電池モジュールの温度上昇抑制、太陽電池用裏面保護シート(V)と非受光面側封止剤層(IV)との接着性の向上、という大きな役割を担う。
【0020】
易接着性コーティング層(B)に含有する酸化チタン(a)の平均粒子径は0.35〜0.5μmであり、0.39〜0.45μmであることが好ましい。平均粒子径が0.5μmを超える場合には、1000nm以下の光を反射させる機能が悪くなり、平均粒子径が0.35未満の場合には、600nm以上の反射機能が悪くなる。
【0021】
酸化チタン(a)の平均粒子径の求め方は走査型電子顕微鏡で観察し、画像から粒子径を直接求める。具体的には、酸化チタン(a)を粉体の状態のまま、ごく少量ガラス板上に乗せ、走査型電子顕微鏡で観察し、酸化チタン(a)ができるだけ1粒1粒独立して見える範囲(視野)を探す。次に、視野における任意の一定の方向に向かう直線を決定し(例えば図2では上下方向に向かう二点鎖線で示す)、前記直線上に存在する粒子を横断する最も長い長さを当該粒子の大きさとする。そして、前記直線上に存在する少なくとも200個の粒子の大きさの相加平均値を、酸化チタン(a)の平均粒子径とする。
【0022】
易接着性コーティング層(B)は、前記酸化チタン(a)と樹脂とを含有することが好ましい。封止剤との接着性、光反射性が向上する観点から、前記酸化チタン(a)と樹脂との合計100重量%中、酸化チタン(a)を30〜70重量%含有することが好ましく、35〜60重量%含有することがより好ましい。
【0023】
易接着性コーティング層(B)は、前記酸化チタン(a)と樹脂とを含有することができる。樹脂しては、水酸基を有する樹脂(b)の他に、水酸基の代わりにカルボキシル基やアミノ基やエポキシ基等を有するものを用いることもできる。
【0024】
最表面としての易接着性コーティング層(B)は、前記酸化チタン(a)と、樹脂として水酸基を有する樹脂(b)と、ポリイソシアネート化合物とを、含有することが好ましい。
【0025】
水酸基を有する樹脂(b)について説明する。
水酸基を有する樹脂(b)は、前記酸化チタン(a)のバインダーの役割を果たすとともに、太陽電池用裏面保護シート(V)と太陽電池の非受光面側に位置する封止剤(IV)と接着する機能を持っている。
また、易接着性コーティング層(B)が樹脂成分として水酸基を有する樹脂(b1)を含有し、さらにポリイソシアネート化合物を含有することで、太陽電池の非受光面側に位置する封止剤(IV)と接着する際、易接着性コーティング層(B)内で架橋反応が起こり、太陽電池モジュールとしての耐湿熱性や耐候性が向上する。
【0026】
水酸基を有する樹脂(b)としては、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ウレア系樹脂、ポリエステル系樹脂、オレフィン樹脂などが挙げられる。
また、さらに耐候性を向上するため、水酸基と有する樹脂(b1)に紫外線吸収剤、光安定化剤、酸化防止剤等を結合してもよいし、水酸基を有する樹脂(b1)に紫外線吸収剤、光安定化剤、酸化防止剤等を添加してもよい。
【0027】
樹脂に水酸基を導入する容易さや、耐候性、耐湿熱性等を考慮するとアクリル系樹脂(b1)であることが最も好ましい。
【0028】
本発明でいうポリエステル系樹脂とは、カルボン酸成分と水酸基成分とを反応(エステル化反応、エステル交換反応)させたポリエステル樹脂の他、水酸基を有するポリエステル樹脂にさらにイソシアネート化合物を反応させてなるポリエステルポリウレタン樹脂、さらにジアミン成分を反応させてなるポリエステルポリウレタンポリウレア樹脂などをも含む意である。
【0029】
ポリエステル系樹脂を構成するカルボン酸成分としては、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、テトレヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、テトラクロル無水フタル酸、1、4−シクロヘキサンジカルボン酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物、無水ピロメリット酸、ε−カプロラクトン、脂肪酸が例示できる。
ポリエステル系樹脂を構成する水酸基成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1、3−ブチレングリコール、1、6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、3−メチルペンタンジオール、1、4−シクロヘキサンジメタノール等のジオール成分の他、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの多官能アルコールが例示できる。
常法に従いこれらのカルボン酸成分と水酸基成分とを重合させて所定のポリエステル樹脂としたものが本発明で使用できる。
【0030】
本発明でいうウレタン系樹脂とは、水酸基を有するポリエステル樹脂以外の水酸基成分とイソシアネート化合物を反応させてなるものである。
水酸基成分としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加したポリエーテル系ポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエン系ポリオールなどのポリマーポリオールなどが使用できる。
イソシアネート化合物としては、後述するポリイソシアネート化合物と同様のものを例示できる。トリメチレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、メチレンビス(4、1−フェニレン)=ジイソシアネート(MDI)、3−イソシアネートメチル−3、5、5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等のジイソシアネートや、これらジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、これらジイソシアネートの三量体であるイソシアヌレート体、これらジイソシアネートのビューレット結合体、ポリメリックジイソシアネートなどが例示できる。
【0031】
本発明でいうアクリル系樹脂とは、一般式CH=CR−CO−OR(Rは水素原子、もしくはメチル基、Rは水酸基もしくは炭素数1から20の置換基を有する炭化水素基を示す)で表されるアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2エチルヘキシル、アクリル酸4ヒドロキシブチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2ヒドロキシエチル、メタクリル酸4ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル等で例示できるアクリル系モノマーが重合した樹脂である。更にはアクリルアミド、メタアクリルアミド、アクリルニトリル、メタアクリルニトリル、N−メチロールアクリルアミド、N−アルキロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミド、アクロレイン、メタアクロレイン、グリシジルメタクリレートなども反応性モノマーとして例示できる。常法に従いこれらのモノマーを共重合させて所定のアクリル樹脂としたものが本発明で使用できる。
【0032】
水酸基を有するアクリル系樹脂(b1)は不飽和二重結合を有することが望ましい。アクリル系樹脂(b1)以外の水酸基を有する樹脂(b)に不飽和二重結合を導入することもできる。
一般的に太陽電池の封止剤は有機過酸化物を含有しており、モジュール作成時の真空ラミネート工程時の加熱にて、ラジカル反応により封止剤(II)、封止剤(IV)を架橋させる。このとき、易接着性コーティング層(B)中の水酸基を有するアクリル系樹脂(b1)が二重結合を有することで、太陽電池の非受光面側に位置する封止剤(IV)内で発生したラジカルと、水酸基と二重結合を有する樹脂(b1)内の二重結合が反応を起こし、封止剤と架橋するため、易接着性コーティング層(B)と非受光面側に位置する封止剤(IV)は強固に接着する。ラジカルとの反応性を考慮すると、水酸基を有する樹脂(b1)は(メタ)アクリル系の二重結合を有することが好ましい。
【0033】
水酸基と二重結合を有するアクリル系樹脂としては、例えば下記(メタ)アクリル系共重合体(b1−1)〜(b1−4)を挙げることができる。
(メタ)アクリル系共重合体(b1−1)は、グリシジル基を有する(メタ)アクリル系モノマー(i)と、水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマー(ii)と、グリシジル基も水酸基もカルボキシル基も有さない(メタ)アクリル系モノマー(iv)とを構成単位とする共重合体中の側鎖のグリシジル基に、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマー(iii)を反応させてなる(メタ)アクリル系共重合体である。
即ち、グリシジル基を有する(メタ)アクリル系モノマー(i)と、水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマー(ii)と、グリシジル基も水酸基もカルボキシル基も有さない(メタ)アクリル系モノマー(iv)とを構成単位とする共重合体を得、次いで、前記共重合対中の側鎖のグリシジル基の全部に又は一部に、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマー(iii)を反応させることによって、グリシジル基を起点とし、炭素−炭素二重結合の側鎖を導入することができる。
【0034】
(メタ)アクリル系共重合体(b1−2)は、カルボキシル基を基点とし、炭素−炭素二重結合の側鎖を導入してなる共重合体である。即ち、(メタ)アクリル系共重合体(ii)は、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマー(iii)と、水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマー(ii)と、グリシジル基も水酸基もカルボキシル基も有さない(メタ)アクリル系モノマー(iv)とを構成単位とする共重合体中のカルボキシル基に、グリシジル基を有する(メタ)アクリル系モノマー(i)を反応させてなる(メタ)アクリル系共重合体である。
前記メタ)アクリル系共重合体(b1−1)の場合と同様に、炭素−炭素二重結合の側鎖を導入する際、カルボキシル基の全部に又は一部にグリシジル基を反応させることができる。
【0035】
(メタ)アクリル系共重合体(b1―3)は、水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマー(ii)と、水酸基を有さない(メタ)アクリル系モノマー(vi)とを構成単位とする共重合体中の水酸基の一部に、イソシアネート基を有する(メタ)アクリル系モノマー(v)を反応させてなる(メタ)アクリル系共重合体である。
【0036】
(メタ)アクリル系共重合体(b1−4)は、無水マレイン酸と、水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマー(ii)と、水酸基を有さない(メタ)アクリル系モノマー(vi)とを構成単位とする共重合体中の酸無水物基に、水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマー(ii)を反応させてなる(メタ)アクリル系共重合体である。
【0037】
グリシジル基を有する(メタ)アクリル系モノマー(i)としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルなどが例示できる。
【0038】
水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマー(ii)としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどが例示できる。この水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマー(ii)由来の水酸基は、後述するポリイソシアネート化合物(C)と反応し、硬化処理前の易接着剤層(1)の硬化物である易接着剤層を形成する機能を担う。
また、本発明では、水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマー(ii)以外のモノマーを、水酸基を有さない(メタ)アクリル系モノマー(vi)として定義する。
【0039】
カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマー(iii)としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸などが挙げられる。
【0040】
上記のグリシジル基を有する(メタ)アクリル系モノマー(i)、水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマー(ii)、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマー(iii)以外のモノマーを、グリシジル基も水酸基もカルボキシル基も有さない(メタ)アクリル系モノマー(iv)として定義する。
グリシジル基も水酸基もカルボキシル基も有さない(メタ)アクリル系モノマー(b4)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0041】
イソシアネート基を有する(メタ)アクリル系モノマー(v)としては、2−イソシアナトエチルアクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレートなどが例示でき、これらの製品としては昭和電工(株)製のカレンズAOI、カレンズMOIなどがある。
【0042】
(メタ)アクリル系モノマー(i)〜(vi)の他に、酢酸ビニル、ビニルエーテル、プロピオン酸ビニル、スチレン等も(メタ)アクリル系共重合体(b1−1)〜(b1−4)の形成に適宜使用することができる。
【0043】
ところで、上述の(メタ)アクリル系モノマー(i)〜(vi)は、
CH=CR−CO−ORという一般式で表すことができる。
式中、Rは、水素原子、もしくはメチル基を示す。
は、カルボキシル基、グリシジル基、ヒドロキシアルキル基、イソシアナトアルキル基などの、各モノマー特有の官能基を有する1価の置換基を示す。
(メタ)アクリル系モノマー(i)〜(vi)の場合は、CH=CRの重合によって形成される主鎖に対し、Rの部位を側鎖と捉え、一つの側鎖をとして数える。
また、スチレンや無水マレイン酸のような、上記一般式で表されないようなモノマーに関しては、重合の際に炭素−炭素結合を形成して共重合体の主鎖となる部分以外の部位を側鎖と呼び、一つのモノマーにつき、一つの側鎖を有するとして数える。
例えば、仮に無水マレイン酸を2−ヒドロキシエチルアクリレートを反応させると、無水マレイン酸の無水環が開環してカルボキシル基とエステル結合部位が生じることになるが、このような場合も、これらをまとめて一つの側鎖として数えることとする。
【0044】
側鎖を上記のように定義すると、炭素−炭素二重結合を有する側鎖の、全側鎖に占める割合は次のように計算できる。
例えば、MMA(メチルメタクリレート、分子量100)/n−BMA(n−ブチルメタクリレート、分子量142)/HEMA(2−ヒドロキシエチルメタクリレート、分子量130)/GMA(グリシジルメタクリレート、分子量142)=18/78/2/2(重量比)で共重合した共重合体を構成するモノマーのモル比は、MMA/n−BMA/HEMA/GMA=23.7/72.4/2/1.9となる。モル比はモノマーの個数の比に等しく、さらには上記の側鎖の定義から、それぞれのモノマーが一つの側鎖を有すると数えられるので、モル比は、側鎖の個数の比に等しい。従って、この共重合体は全側鎖100個あたり1.9個のグリシジル基を有する。
次いで、前記共重合体中のグリシジル基を等モル量のアクリル酸で変性してなる(メタ)アクリル系共重合体(b1−1)は、全側鎖100個あたり1.9個のグリシジル基が同数の炭素−炭素二重結合に変じた側鎖を有することとなる。すなわち、(メタ)アクリル系共重合体(b1−1)は、全側鎖53個あたり1個の割合で炭素−炭素二重結合を有するということができる。
【0045】
封止剤への接着力が向上する観点から、水酸基と二重結合を有する樹脂(b1)の二重結合量は、側鎖5〜500個当たり1個の炭素−炭素二重結合が好ましく、さらには側鎖5〜300個あたり1個であることが好ましい。
【0046】
(メタ)アクリル系共重合体(b1−1)の形成の第一段階:(メタ)アクリル系モノマー(i)(ii)(iv)を重合する段階、(メタ)アクリル系共重合体(b1−2)の形成の第一段階:(メタ)アクリル系モノマー(iii)(ii)(iv)を重合する段階、(メタ)アクリル系共重合体(b1−3)の形成の第一段階:(メタ)アクリル系モノマー(ii)(vi)を重合する段階、(メタ)アクリル系共重合体(b1−4)の形成の第一段階:無水マレイン酸と(メタ)アクリル系モノマー(ii)(vi)を重合する段階は、通常のラジカル重合反応により行うことができる。反応方法に何ら制限はなく、溶液重合、塊状重合、乳化重合などの公知の重合法で行うことができるが、反応のコントロールが容易であることや直接次の操作に移れることから溶液重合が好ましい。
溶剤としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、セロソルブ、酢酸エチル、酢酸ブチルなど、本発明の樹脂が溶解するものであれば何ら制限は無く、単独でも、複数の溶媒を混合しても良い。また、重合反応の際に使用される重合開始剤もベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドなどの有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系開始剤など公知のものを用いることができ、特に制限は無い。また、(メタ)アクリル系共重合体(b1−1)〜(b1−4)それぞれの場合において、例えば(メタ)アクリル系モノマー(ii)として、1種類のみを用いてもよいし、複数種類の化合物を併用してもよい。(メタ)アクリル系モノマー(i)、(iii)〜(vi)についても同様である。
【0047】
封止剤への接着力やブロッキング性が向上する観点から、水酸基と二重結合を有するアクリル系樹脂のガラス転移温度は10〜100℃であることが好ましく、更には20〜70℃であることが好ましい。
なお、ここでのガラス転移温度とは、水酸基と二重結合を有するアクリル系樹脂を乾燥させて固形分100%にした樹脂について、示差走査熱量分析(DSC)によって計測したガラス転移温度のことを示す。例えば、ガラス転移温度は、試料約10mgを秤量したサンプルを入れたアルミニウムパンと、試料を入れていないアルミニウムパンとをDSC装置にセットし、これを窒素気流中で、液体窒素を用いて−50℃まで急冷処理し、その後、20℃/分で200℃まで昇温し、DSC曲線をプロットする。このDSC曲線の低温側のベースライン(試験片に転移および反応を生じない温度領域のDSC曲線部分)を高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になるような点で引いた接線との交点から、補外ガラス転移開始温度(Tig)を求め、これをガラス転移温度として求めることができる。本発明のガラス転移温度は、上記の方法により測定した値を記載している。
【0048】
封止剤への接着力が向上する観点から、水酸基と二重結合を有するアクリル系樹脂の数平均分子量は15,000〜250,000であることが好ましく、さらには30,000〜100,000であることがより好ましく、30,000〜75,000であることがより好ましく、30,000〜50,000であることが特に好ましい。
なお、上記の数平均分子量は、水酸基と二重結合を有するアクリル系樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算の値である。例えば、カラム(昭和電工(株)製KF−805L、KF−803L、及びKF−802)の温度を40℃として、溶離液としてTHFを用い、流速を0.2ml/minとし、検出をRI、試料濃度を0.02%とし、標準試料としてポリスチレンを用いて行ったものである。本発明の数平均分子量は、上記の方法により測定した値を記載している。
【0049】
封止剤や白色層(2)への接着力が向上する観点から、水酸基と二重結合を有するアクリル系樹脂の数平均分子量の水酸基価は、固形分換算で2〜100mgKOH/gであることが重要であり、好ましくは2〜50mgKOH/g、さらには2〜30mgKOH/gであることがより好ましい。
【0050】
ポリイソシアネート化合物について説明する。
ポリイソシアネート化合物は、水酸基を有する樹脂(b1)同士を架橋させ、強靱で且つ伸張性、柔軟性、成形加工性、耐擦傷性、長期耐候性、長期耐湿熱性、耐薬品性を有する耐候性樹脂層を形成するために用いられる。
得られる耐候性樹脂層が経時で黄色から褐色に変色することを防ぐために、脂環族または脂肪族の化合物のみを用いることが好ましい。
【0051】
脂環族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、水添4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0052】
脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0053】
芳香族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、o−キシレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどが挙げられる。
【0054】
ポリイソシアネート化合物としては、上記化合物とグリコール類またはジアミン類との反応生成物である両末端イソシアネートアダクト体、ビウレット変性体、イソシアヌレート変性体を用いても構わない。
特に、ポリイソシアネート化合物がイソシアヌレート変性体、特にイソシアヌレート環含有トリイソシアネートを含む場合には、より強靱、且つ伸張性を有する耐候性樹脂層を得ることができるため好ましい。イソシアヌレート環含有トリイソシアネートとして具体的には、イソシアヌレート変性イソホロンジイソシアネート(例えば、住友バイエルウレタン株式会社製のデスモジュールZ4470)、イソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネート(例えば、住友バイエルウレタン株式会社製のスミジュールN3300)、イソシアヌレート変性トルイレンジイソシアネート(例えば、住友バイエルウレタン株式会社製のスミジュールFL−2、FL−3、FL−4、HLBA)が挙げられる。また、イソシアヌレート環をさらに反応可能な官能基を2個以上有するポリエステルと反応させて、1分子中のイソシアネート基を増やしても良いし、生成したウレタン結合とさらに1等量のイソシアネート基を反応させてアロファネート化して、さらに1分子中のイソシアネート基を増やしても良い。イソシアネート基と反応可能な官能基を2個以上有するポリエステルとしては、周知のポリエステル樹脂を用いることができる。
【0055】
また、上記ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基を、例えば、メタノール、エタノール、n−ペンタノール、エチレンクロルヒドリン、イソプロピルアルコール、フェノール、p−ニトロフェノール、m−クレゾール、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、ε−カプロラクタムなどのブロック剤と反応させてブロック化した、ブロック変性体を用いても構わない。
【0056】
更に、ポリイソシアネート化合物として、イソシアネート基と反応可能な官能基を2個以上有するポリエステル(d)と、両末端にイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物(e)とを反応させてなる、両末端イソシアネートプレポリマーを用いても構わない。ポリイソシアネート化合物が上記両末端イソシアネートプレポリマーを含む場合には、少量で伸張性が得られ、塗膜の強靱性も損なわれない。
ポリイソシアネート化合物は、1種、もしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0057】
イソシアネート基と反応可能な官能基を2個以上有するポリエステル(d)としては、周知のポリエステル樹脂を用いることができる。
両末端にイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物(e)としては、例えば、トルイレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、o−トルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、水添4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0058】
さらに、これらポリイソシアネート化合物のイソシアネート基のほぼ全量とブロック化剤とを反応させることで、ブロック化ポリイソシアネート化合物を得ることができる。
【0059】
ブロック化剤としては、例えばフェノール、チオフェノール、メチルチオフェノール、キシレノール、クレゾール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノール等のフェノール類、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、t−ペンタノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルアルコールなどのアルコール類、3,5−ジメチルピラゾール、1,2−ピラゾール等のピラゾール類、1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール類、エチレンクロルヒドリン、1,3−ジクロロ−2−プロパノール等のハロゲン置換アルコール類、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピルラクタム等のラクタム類、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン、マロン酸メチル、マロン酸エチル等の活性メチレン化合物類が挙げられる。その他にもアミン類、イミド類、メルカプタン類、イミン類、尿素類、ジアリール類等も挙げられる。ブロック化剤は、1種類を用いてもよいし、2種類以上を併用して用いてもよい。
【0060】
これらのブロック剤の中でも、ブロック剤の解離温度が80℃〜150℃のものが好ましい。解離温度が80℃未満であると、易接着剤を塗布し、溶剤を揮散させる際に、硬化反応が進んで、充填剤との密着性が低下してしまう恐れがある。解離温度が150℃を超えると、太陽電池モジュールを構成する際の真空熱圧着の工程で、硬化反応が充分に進行せず、充填剤との密着性が低下してしまう。
【0061】
解離温度が80℃〜150℃のブロック剤としては、メチルエチルケトンオキシム(解離温度:140℃、以下同様)、3,5−ジメチルピラゾール(120℃)、ジイソプロピルアミン(120℃)などが例示できる。
【0062】
耐湿熱性を向上でき、封止剤や白色層(2)との接着力を向上できるという点で、ポリイソシアネート化合物の量は、水酸基と二重結合とを有する樹脂(b1)の水酸基1個に対して、イソシアネート基が0.1〜10個の範囲で存在するような量であることが好ましく、さらには0.5〜5個の範囲であることが好ましい。
【0063】
易接着性コーティング層(B)は、固形分100重量部に対して、後述する有機系粒子、又は無機系粒子を0.01〜30重量部含有することができ、より好ましくは0.1〜10重量部含有することができる。これらの粒子を含有することによって、硬化処理前のコーティング層表面のタックを低減したり、濡れ性を変化させたりして、リコート性やブロッキング性を改質することができる。
【0064】
特に、有機系粒子においては、融点もしくは軟化点が150℃以上のものを好ましく用いることができる。有機系粒子の融点もしくは軟化点が150℃よりも低いと、太陽電池モジュールを構成する際の真空熱圧着の工程で粒子が軟化し、塗膜物性を劣化させる恐れがある。
【0065】
有機系粒子の具体例としては、ポリメチルメタアクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ナイロン(登録商標)樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、シリコン樹脂、メタクリレート樹脂、アクリレート樹脂などのポリマー粒子、あるいは、セルロースパウダー、ニトロセルロースパウダー、木粉、古紙粉、籾殻粉、澱粉などが挙げられる。有機系粒子は、1種類を用いてもよいし、2種類以上を併用して用いてもよい。
【0066】
前記ポリマー粒子は、乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法、ソープフリー重合法、シード重合法、マイクロサスペンジョン重合法などの重合法により得ることができる。また、前記有機系粒子は、その特性を損なわない程度に不純物を含んでいてもよい。また、粒子の形状は、粉末状、粒状、顆粒状、平板状、繊維状など、どのような形状であってもよい。
【0067】
無機系粒子の具体例としては、本発明に用いられる酸化チタン(a)以外の一般的な無機系粒子を用いることができる。
【0068】
また、前記無機系粒子は、その特性を損なわない程度に不純物を含んでいてもよい。また、粒子の形状は、粉末状、粒状、顆粒状、平板状、繊維状など、どのような形状であってもよい。
【0069】
また、易接着性コーティング層(B)は、必要に応じて、本発明による効果を妨げない範囲で、架橋促進剤を添加してもよい。架橋促進剤は水酸基と二重結合とを有する樹脂(b1)または水酸基を有する樹脂(b2)の水酸基と、ポリイソシアネート化合物のイソシアネートによるウレタン結合反応を促進する触媒としての役割を果たす。架橋促進剤としては、スズ化合物、金属塩、塩基などが挙げられ、具体的にはオクチル酸スズ、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、塩化スズ、オクチル酸鉄、オクチル酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、トリエチルアミン、トリエチレンジアミンなどが挙げられる。これらは、単独または組み合わせて用いることができる。
【0070】
また、易接着性コーティング層(B)は、必要に応じて、本発明による効果を妨げない範囲で、充填剤、チクソトロピー付与剤、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、熱伝導性改良剤、可塑剤、ダレ防止剤、防汚剤、防腐剤、殺菌剤、消泡剤、レベリング剤、硬化剤、増粘剤、顔料分散剤、シランカップリング剤等の各種の添加剤を添加してもよい。
【0071】
易接着性コーティング層(B)を形成するための易接着性コーティング剤には、溶剤が含まれる。
溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル等のアルコール類、
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、
テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、
ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素類、
ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の芳香族類、
酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、などの内から樹脂組成物の組成に応じ適当なものを使用できるが、沸点が50℃〜200℃のものを好ましく用いることができる。沸点が50℃よりも低いと、易接着剤を塗布する際に溶剤が揮発しやすく、固形分が高くなって均一な膜厚で塗布することが難しくなる。沸点が200℃よりも高いと、溶剤を乾燥しづらくなる。なお、溶剤は2種以上用いてもよい。
【0072】
本発明の太陽電池用裏面保護シート(V)は、プラスチックフィルム(A)の片面に易接着性コーティング層(B)を有することを特徴とする。
【0073】
プラスチックフィルム(A)上に易接着性コーティング層(B)を設ける方法としては、易接着性コーティング剤を従来公知の方法で塗工する方法を挙げることができる。塗工機(方法)としては、具体的にはコンマコーティング、グラビアコーティング、リバースコーティング、ロールコーティング、リップコーティング、スプレーコーティングなどが例示できる。これらの方法で易接着性コーティング層(B)用塗液を塗布し、加熱乾燥により溶剤を揮散させることで、硬化処理前の白色易接着層を形成することができる。
形成される硬化処理前の白色易接着層の厚みは、1〜30μmであることが好ましく、5〜15μmであることがより好ましい。
【0074】
本発明の太陽電池用裏面保護シート(V)は、プラスチックフィルム(A)の片面に易接着性コーティング剤を塗工した後、乾燥工程を経て、易接着性コーティング層(B)を形成させる方法で得ることができる。
【0075】
プラスチックフィルム(A)としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリシクロペンタジエンなどのオレフィンフィルム、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、エチレン‐テトラフルオロエチレン共重合体フィルムなどのフッ素系フィルム、アクリルフィルム、トリアセチルセルロースフィルムを用いることができる。フィルム剛性、コストの観点からポリエステル系樹脂フィルムであることが好ましく、この中でもポリエチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。プラスチックフィルム(A)は、1層または2層以上の複層構造でも構わない。さらには、プラスチックフィルム(A)には、金属酸化物や非金属無機酸化物を蒸着した蒸着フィルムが積層されていても良い。
【0076】
蒸着される金属酸化物もしくは非金属無機酸化物としては、例えば、ケイ素、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、スズ、ナトリウム、ホウ素、チタン、鉛、ジルコニウム、イットリウムなどの酸化物が使用できる。また、アルカリ金属、アルカリ土類金属のフッ化物なども使用することができ、これらは単独もしくは組み合わせて使用することができる。
これらの金属酸化物もしくは非金属無機酸化物は、従来公知の真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリングなどのPVD方式や、プラズマCVD、マイクロウェーブCVDなどのCVD方式を用いて蒸着することができる。
【0077】
プラスチックフィルム(A)は、無色であってもよいし、顔料もしくは染料などの着色成分が含有されていても良い。着色成分を含有させる方法としては、例えば、フィルムの製膜時にあらかじめ着色成分を練りこんでおく方法、無色透明フィルム基材上に着色成分を印刷する方法等がある。また、着色フィルムと無色透明フィルムとを貼り合わせて使用してもよい。
【0078】
太陽電池用裏面保護シート(V)は、プラスチックフィルム(A)の易接着性コーティング層(B)が形成されていない側の表面に、金属箔(4)や耐候性樹脂層(5)などのフィルム層やコート層が単層または複数層設けられていても良い。
【0079】
金属箔(4)としては、アルミニウム箔、鉄箔、亜鉛合板などを使用することができ、これらの中でも、耐腐食性の観点から、アルミニウム箔が好ましい。厚みは10μmから100μmであることが好ましく、更に好ましくは20μmから50μmであることが好ましい。金属箔(F)の積層には、従来公知の種々の接着剤を用いることができる。
【0080】
耐候性樹脂層(5)としては、ポリフッ化ビニリデンフィルムやポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂フィルムを従来公知の種々の接着剤を用いて積層したものや、旭硝子(株)のルミフロンのような高耐候性塗料を塗工して形成したコート層などを使用することができる。
【0081】
次に本発明の太陽電池モジュールについて説明する。
本発明の太陽電池モジュールは、太陽電池の受光面側に位置する太陽電池表面保護材(I)、太陽電池の受光面側に位置する封止剤(II)、太陽電池セル(III)、太陽電池の非受光面側に位置する封止剤(IV)、及び太陽電池の非受光面側に位置する太陽電池裏面保護シート(V)を具備してなる太陽電池モジュールであって、
前記太陽電池用裏面保護シート(V)は、最表面としての易接着性コーティング層(B)が、前記非受光面側の封止剤(IV)と接するように配置・積層されてなるものである。
非受光面側封止剤層(IV)と太陽電池用裏面保護シート(V)とを積層する際、減圧下に両者を接触させ、次いで加熱・加圧下に重ね合わせることによって得ることができる。易接着性コーティング層(B)が熱硬化性の場合、常圧に戻した後、さらに高温条件下に置いて、最表面としての易接着性コーティング層(B)の硬化を進行させることもできる。
【0082】
太陽電池表面保護材(I)としては、特に限定されないが、公的な例として、ガラス板、ポリカーボネートやポリアクリレートのプラスチック板などを挙げることができる。透明性、耐候性、強靭性などの点からは、ガラス板が好ましい。さらには、ガラス板の中でも透明性の高い白板ガラスが好ましい。
【0083】
受光面側封止剤層(II)、非受光面側封止剤層(IV)は、太陽電池セル(III)全体を受光面及び非受光面の両面から挟み込むものである。受光面側封止剤層(II)、非受光面側封止剤層(IV)としては、熱可塑性オレフィン系樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、アセタール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体を、それぞれ厚さ0.2mm〜1.0mmのシート状に成形したものが主に用いられ、該樹脂中には架橋補助剤や紫外線吸収剤などを含んでいても良い。全光線透過率の観点からエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)が好ましい。
【0084】
本発明の最表面としての易接着性コーティング層(B)は、太陽電池モジュールを形成するときの高温加熱圧着工程において、炭素−炭素二重結合が架橋することにより封止剤(IV)との接着力向上効果を奏する。封止剤(IV)の中に有機過酸化物が含まれていると、この架橋反応が促進されるため、本発明の効果が最大限に発揮される。従って、非受光面側に位置する封止剤(IV)は、有機過酸化物を含有することが好ましい。
【0085】
太陽電池セル(III)としては、結晶シリコン、アモルファスシリコン、銅インジウムセレナイドに代表される化合物半導体などの光電変換層に電極を設けたもの、さらにはそれらをガラス等の基板上に積層したもの等が例示できる。
【実施例】
【0086】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例によって限定されるものではない。なお、実施例中、部は重量部を、%は重量%をそれぞれ示す。
表1に各実施例、各比較例で用いた種々の酸化チタン(a1−1)〜(a1−5)、(a2−1):石原産業社製 タイペークCR−90、(a2−2):石原産業社製 タイペークR−780−2、(a2−3)の走査型電子顕微鏡で計測した平均粒子径を示す。
表2に水酸基と二重結合とを有する樹脂(b1−1〜b1−8)、表3に水酸基を有する樹脂(b1−9〜b1−16)を示す。
【0087】
<水酸基と二重結合とを有する樹脂b1−1溶液>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、メチルメタクリレート40部、n−ブチルメタクリレート56部、2−ヒドロキシルエチルメタクリレート4部、トルエン100部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら100℃まで昇温し、アゾビスイソブチロニトリルを0.15部加えて2時間重合反応を行い、次に、アゾビスイソブチロニトリルを0.07部加えてさらに2時間重合反応を行い、更に0.07部のアゾビスイソブチロニトリルを加えてさらに2時間重合反応を行った。
その後、ハイドロキノンを0.03部、ジブチルスズジラウレートを0.03部添加し、2−イソシアナトエチルメタクリレート:1.7部(前記、2−ヒドロキシルエチルメタクリレート:4部のうち、約2部の変性に要する量)をメチルエチルケトン1.7部に溶解したものを、40℃で撹拌しながら2時間かけて滴下した。IRでイソシアネートピーク(2260cm−1)が消失したことを確認し、数平均分子量が38,000、水酸基価が8.6(mgKOH/g)、Tgが50℃、ヨウ素価が3.9(g/100g)、固形分50%の水酸基と二重結合とを有する樹脂b1−1溶液を得た。
【0088】
なお、数平均分子量、ガラス転移温度、酸価、水酸基価、ヨウ素価は、下記に記述するようにして測定した。
【0089】
<数平均分子量(Mn)の測定>
Mnの測定は、前述したGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって求めた。
【0090】
<ガラス転移温度(Tg)の測定>
ガラス転移温度の測定は、前述した示差走査熱量測定(DSC)法により求めた。
なお、Tg測定用の試料は、上記のアクリル樹脂溶液を150℃で約15分、加熱し、乾固させたものを用いた。
【0091】
<酸価(AV)の測定>
共栓三角フラスコ中に試料(樹脂の溶液:約50%)約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解する。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間保持する。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定する。酸価は次式により求めた。酸価は樹脂の乾燥状態の数値とした(単位:mgKOH/g)。
酸価(mgKOH/g)={(5.611×a×F)/S}/(不揮発分濃度/100)
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
【0092】
<水酸基価(OHV)の測定>
共栓三角フラスコ中に試料(樹脂の溶液:約50%)約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解する。更にアセチル化剤(無水酢酸25gをピリジンで溶解し、容量100mlとした溶液)を正確に5ml加え、約1時間攪拌した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間持続する。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定する。
水酸基価は次式により求めた。水酸基価は樹脂の乾燥状態の数値とした(単位:mgKOH/g)。
水酸基価(mgKOH/g)
=[{(b−a)×F×28.25}/S]/(不揮発分濃度/100)+D
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
b:空実験の0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
D:酸価(mgKOH/g)
【0093】
<ヨウ素価の測定>
三角フラスコに0.3〜1gの試料を0.1mgの桁まで量り取り、25℃の恒温水槽で30分間静置する。恒温水槽から三角フラスコを取り出し、ウィイス溶液25cmをピペットを用いて加え、栓をして均一になるまで軽く振り混ぜた後、25℃の恒温水槽中で120分間静置する。恒温水槽から三角フラスコを取り出し、濃度が100g/Lのヨウ化カリウム水溶液を10cm加え、栓をして強く振り混ぜる。次に、0.1mol/Lのチオ硫酸ナトリウム水溶液を用いて滴定する。上層の水槽が少し黄色になったときに1cmのでんぷん溶液を加えて、溶液の紫色が消失するまで滴定を続ける。
ヨウ素価は次式により求める。水酸基価は易接着剤の固形分に換算した数値とする(単位:g/100g)。
ヨウ素価(g/100g)
=[{(V0−V1)×c×12.69}/m]/(固形分濃度/100)
ただし、m:試料の採取量(g)
V0:空試験の滴定量(cm
V1:資料の滴定量(cm
c:チオ硫酸ナトリウム溶液の濃度(mol/L)
【0094】
ヨウ素価の滴定に使用するウィイス溶液は、次に示す手順で調整する。
三塩化ヨウ素4.8〜5.2gを0.1gの単位まではかり取り、ポリテトラフルオロエチレンで被覆した栓のついた1Lの褐色瓶に入れる。1Lの共栓付三角フラスコに、ヨウ素5.5gを0.1gの単位まではかり取り、酢酸640cmを加えて溶解する。この溶液を三塩化ヨウ素の入った褐色瓶に加えて混合し、これをウィイス溶液とする。なお、本発明では溶液の調整後は冷暗所に保管し、溶液調整後30日以内のものを使用した。
【0095】
<水酸基と二重結合とを有する樹脂b1−2溶液>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、メチルメタクリレート18部、n−ブチルメタクリレート78部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート2部、グリシジルメタクリレート2部、トルエン100部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら80℃まで昇温し、アゾビスイソブチロニトリルを0.075部加えて2時間重合反応を行い、次に、アゾビスイソブチロニトリルを0.07部加えてさらに2時間重合反応を行い、更に0.07部のアゾビスイソブチロニトリルを加えてさらに2時間重合反応を行った。
その後、ハイドロキノンを0.03部、ジメチルベンジルアミンを0.8部、アクリル酸を1部(前記、グリシジルメタクリレート:2部の変性に要する量)添加し、100℃で15時間加熱撹拌した。酸価が2以下であることを確認し、数平均分子量が75,000、水酸基価が18.0(mgKOH/g)、Tgが30℃、ヨウ素価が3.6(g/100g)、固形分50%の水酸基と二重結合とを有する樹脂b1−2溶液を得た。
【0096】
<水酸基と二重結合とを有する樹脂b1−3溶液>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、メチルメタクリレート18部、n−ブチルメタクリレート78部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート2部、グリシジルメタクリレート2部、トルエン100部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら100℃まで昇温し、アゾビスイソブチロニトリルを0.40部加えて2時間重合反応を行い、次に、アゾビスイソブチロニトリルを0.05部加えてさらに2時間重合反応を行い、更に0.05部のアゾビスイソブチロニトリルを加えてさらに2時間重合反応を行った。
その後、ハイドロキノンを0.03部、ジメチルベンジルアミンを0.8部、アクリル酸を1部(前記、グリシジルメタクリレート:2部の変性に要する量)添加し、100℃で15時間加熱撹拌した。酸価が2以下であることを確認し、数平均分子量が16,000、水酸基価が16.9(mgKOH/g)、Tgが30℃、ヨウ素価が3.6(g/100g)、固形分50%の水酸基と二重結合とを有する樹脂b1−3溶液を得た。
【0097】
<水酸基と二重結合とを有する樹脂b1−4溶液>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、n−ブチルメタクリレート96部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート2部、グリシジルメタクリレート2部、トルエン100部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら100℃まで昇温し、アゾビスイソブチロニトリルを0.15部加えて2時間重合反応を行い、次に、アゾビスイソブチロニトリルを0.07部加えてさらに2時間重合反応を行い、更に0.07部のアゾビスイソブチロニトリルを加えてさらに2時間重合反応を行った。
その後、ハイドロキノンを0.03部、ジメチルベンジルアミンを0.8部、アクリル酸を1部(前記、グリシジルメタクリレート:2部の変性に要する量)添加し、100℃で15時間加熱撹拌した。酸価が2以下であることを確認し、数平均分子量が38,000、水酸基価が17.0(mgKOH/g)、Tgが20℃、ヨウ素価が3.5(g/100g)、固形分50%の水酸基と二重結合とを有する樹脂b1−4溶液を得た。
【0098】
<水酸基と二重結合とを有する樹脂b1−5溶液>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、メチルメタクリレート90部、n−ブチルメタクリレート6部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート2部、グリシジルメタクリレート2部、トルエン100部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら100℃まで昇温し、アゾビスイソブチロニトリルを0.15部加えて2時間重合反応を行い、次に、アゾビスイソブチロニトリルを0.07部加えてさらに2時間重合反応を行い、更に0.07部のアゾビスイソブチロニトリルを加えてさらに2時間重合反応を行った。
その後、ハイドロキノンを0.03部、ジメチルベンジルアミンを0.8部、アクリル酸を1部(前記、グリシジルメタクリレート:2部の変性に要する量)添加し、100℃で15時間加熱撹拌した。酸価が2以下であることを確認し、数平均分子量が41,000、水酸基価が17.0(mgKOH/g)、Tgが96℃、ヨウ素価が3.6(g/100g)、固形分50%の水酸基と二重結合とを有する樹脂b1−5溶液を得た。
【0099】
<水酸基と二重結合とを有する樹脂b1−6溶液>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、メチルメタクリレート18部、n−ブチルメタクリレート78部、2−ヒドロキシルエチルメタクリレート4部、トルエン100部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら100℃まで昇温し、アゾビスイソブチロニトリルを0.15部加えて2時間重合反応を行い、次に、アゾビスイソブチロニトリルを0.07部加えてさらに2時間重合反応を行い、更に0.07部のアゾビスイソブチロニトリルを加えてさらに2時間重合反応を行った。
その後、ハイドロキノンを0.03部、ジブチルスズジラウレートを0.03部添加し、2−イソシアナトエチルメタクリレート:3.3部(前記、2−ヒドロキシルエチルメタクリレート:4部の変性に要する量)をメチルエチルケトン3.3部に溶解したものを、40℃で撹拌しながら2時間かけて滴下した。IRでイソシアネートピーク(2260cm−1)が消失したことを確認し、数平均分子量が37,000、水酸基価が0(mgKOH/g)、Tgが34℃、ヨウ素価が7.8(g/100g)、形分50%の水酸基と二重結合とを有する樹脂b1−6溶液を得た。
【0100】
<水酸基と二重結合とを有する樹脂b1−7溶液>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、n−ブチルメタクリレート30部、2−エチルヘキシルメタクリレート66部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート2部、グリシジルメタクリレート2部、トルエン100部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら100℃まで昇温し、アゾビスイソブチロニトリルを0.15部加えて2時間重合反応を行い、次に、アゾビスイソブチロニトリルを0.07部加えてさらに2時間重合反応を行い、更に0.07部のアゾビスイソブチロニトリルを加えてさらに2時間重合反応を行った。
その後、ハイドロキノンを0.03部、ジメチルベンジルアミンを0.8部、アクリル酸を1部(前記、2−ヒドロキシルエチルメタクリレート:2部の変性に要する量)添加し、100℃で15時間加熱撹拌した。酸価が2以下であることを確認し、数平均分子量が35,000、水酸基価が18.3(mgKOH/g)、Tgが0℃、ヨウ素価が3.6(g/100g)、固形分50%の水酸基と二重結合とを有する樹脂b1−7溶液を得た。
【0101】
<水酸基と二重結合とを有する樹脂b1−8溶液>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、メチルメタクリレート96部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート2部、グリシジルメタクリレート2部、トルエン100部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら100℃まで昇温し、アゾビスイソブチロニトリルを0.15部加えて2時間重合反応を行い、次に、アゾビスイソブチロニトリルを0.07部加えてさらに2時間重合反応を行い、更に0.07部のアゾビスイソブチロニトリルを加えてさらに2時間重合反応を行った。
その後、ハイドロキノンを0.03部、ジメチルベンジルアミンを0.8部、アクリル酸を1部(前記、グリシジルメタクリレート:2部の変性に要する量)添加し、100℃で15時間加熱撹拌した。酸価が2以下であることを確認し、数平均分子量が30,000、水酸基価が16.7(mgKOH/g)、Tgが102℃、ヨウ素価が3.6(g/100g)、固形分50%の水酸基と二重結合とを有する樹脂b1−8溶液を得た。
【0102】
<水酸基を有する樹脂b1−9溶液>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、n−ブチルアクリレート70部、n−ブチルメタクリレート28部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート2部、トルエン100部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら100℃まで昇温した。次いで、アゾビスイソブチロニトリルを0.15部加えて2時間重合反応を行った。続いて、アゾビスイソブチロニトリルを0.07部加えてさらに2時間重合反応を行い、更に0.07部のアゾビスイソブチロニトリルを加えてさらに2時間重合反応を行うことにより、数平均分子量が40,000、水酸基価が8.8(mgKOH/g)、Tgが−34℃、ヨウ素価が0(g/100g)、固形分50%の水酸基を有する樹脂b1−9溶液を得た。
【0103】
<水酸基を有する樹脂b1−10溶液>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、n−ブチルメタクリレート32部、2−エチルヘキシルメタクリレート66部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート2部、トルエン100部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら100℃まで昇温し、アゾビスイソブチロニトリルを0.15部加えて2時間重合反応を行った。続いて、アゾビスイソブチロニトリルを0.07部加えてさらに2時間重合反応を行い、更に0.37部のアゾビスイソブチロニトリルを加えてさらに2時間重合反応を行うことにより、数平均分子量が36,000、水酸基価が9.2(mgKOH/g)、Tgが2℃、ヨウ素価が0(g/100g)、固形分50%の水酸基を有する樹脂b1−10溶液を得た。
【0104】
<水酸基を有する樹脂b1−11溶液>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、n−ブチルメタクリレート98部、2−ヒドロキシルエチルメタクリレート2部、トルエン100部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら100℃まで昇温し、アゾビスイソブチロニトリルを0.15部加えて2時間重合反応を行った。続いて、アゾビスイソブチロニトリルを0.07部加えてさらに2時間重合反応を行い、更に0.07部のアゾビスイソブチロニトリルを加えてさらに2時間重合反応を行うことにより、数平均分子量が35,000、水酸基価が8.8(mgKOH/g)、Tgが19℃、ヨウ素価が0(g/100g)、固形分50%の(水酸基を有する樹脂b1−11溶液を得た。
【0105】
<水酸基を有する樹脂b1−12溶液>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、メチルメタクリレート18部、n−ブチルメタクリレート80部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート2部、トルエン100部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら80℃まで昇温し、アゾビスイソブチロニトリルを0.075部加えて2時間重合反応を行った。続いて、アゾビスイソブチロニトリルを0.07部加えてさらに2時間重合反応を行い、更に0.07部のアゾビスイソブチロニトリルを加えてさらに2時間重合反応を行うことにより、数平均分子量が76,000、水酸基価が8.0(mgKOH/g)、Tgが34℃、ヨウ素価が0(g/100g)、固形分50%の水酸基を有する樹脂b1−12溶液を得た。
【0106】
<水酸基を有する樹脂b1−13溶液>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、メチルメタクリレート40部、n−ブチルメタクリレート56部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート4部、トルエン100部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら100℃まで昇温し、アゾビスイソブチロニトリルを0.6部加えて2時間重合反応を行った。続いて、アゾビスイソブチロニトリルを0.05部加えてさらに2時間重合反応を行い、更に0.05部のアゾビスイソブチロニトリルを加えてさらに2時間重合反応を行うことにより、数平均分子量が16,000、水酸基価が16.2(mgKOH/g)、Tgが51℃、ヨウ素価が0(g/100g)、固形分50%の(メタ)アクリル系共重合体水酸基を有する樹脂b1−13溶液を得た。
【0107】
<水酸基を有する樹脂b1−14溶液>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、メチルメタクリレート18部、n−ブチルメタクリレート82部、トルエン100部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら100℃まで昇温し、アゾビスイソブチロニトリルを0.15部加えて2時間重合反応を行った。続いて、アゾビスイソブチロニトリルを0.07部加えてさらに2時間重合反応を行い、更に0.07部のアゾビスイソブチロニトリルを加えてさらに2時間重合反応を行うことにより、数平均分子量が42,000、水酸基価が0(mgKOH/g)、Tgが36℃、ヨウ素価が0(g/100g)、固形分50%の水酸基を有する樹脂b1−14溶液を得た。
【0108】
<水酸基を有する樹脂b1−15溶液>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、nーブチルアクリレート98部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート2部、トルエン100部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら100℃まで昇温し、アゾビスイソブチロニトリルを0.15部加えて2時間重合反応を行った。続いて、アゾビスイソブチロニトリルを0.07部加えてさらに2時間重合反応を行い、更に0.07部のアゾビスイソブチロニトリルを加えてさらに2時間重合反応を行うことにより、数平均分子量が33,000、水酸基価が8.9(mgKOH/g)、Tgが−50℃、ヨウ素価が0(g/100g)、固形分50%の水酸基を有する樹脂b1−15溶液を得た。
【0109】
<水酸基を有する樹脂b1−16溶液>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、メチルメタクリレート90部、n−ブチルメタクリレート8部、2−ヒドロキシルエチルメタクリレート2部、トルエン100部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら100℃まで昇温し、アゾビスイソブチロニトリルを0.15部加えて2時間重合反応を行った。続いて、アゾビスイソブチロニトリルを0.07部加えてさらに2時間重合反応を行い、更に0.07部のアゾビスイソブチロニトリルを加えてさらに2時間重合反応を行うことにより、数平均分子量が40,000、水酸基価が8.0(mgKOH/g)、Tgが95℃、ヨウ素価が0(g/100g)、固形分50%の水酸基を有する樹脂b1−16溶液を得た。
【0110】
<ポリイソシアネート化合物溶液>
3,5−ジメチルピラゾールでブロックされた、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体を、酢酸エチルで75%に希釈し、ポリイソシアネート化合物溶液を得た。
【0111】
【表1】
【0112】
【表2】
【0113】
【表3】
【0114】
<最表面としての易接着性コーティング層(B)用塗液(コーティング剤)の調整>
表4、5に示す組成にて、酸化チタン(a)、水酸基と二重結合とを有する樹脂(B1)溶液、水酸基を有する樹脂溶液(B2)、ポリイソシアネート化合物溶液、触媒を混合し、易接着性コーティング層(B)用塗液を得た。
【0115】
[実施例1]
<太陽電池用裏面保護シートの作成>
ポリエステルフィルム(東レ(株)製、ルミラーS10、厚み188μmの一方の面にポリエステル接着剤「ダイナレオVA−30.2/HD−701」(トーヨーケム(株)製、配合比100/7、以下同)をグラビアコーターによって塗布し、溶剤を乾燥させ、塗布量:10g/平方メートルの接着剤層を設け、該接着剤層に、ポリフッ化ビニルフィルム(デュポン(株)製、テドラー、厚み50μm、以下「PVFフィルム」という)を重ね合わせた。
その後、50℃、4日間、エージング処理し、接着剤層を硬化させ、ポリエステルフィルム−PVFフィルム積層体を作成した。
次いで、前記ポリエステルフィルム−PVFフィルム積層体のポリエステルフィルム面に、表4、5に記載される易接着性コーティング層(2)形成用塗液をグラビアコーターによって塗布し、溶剤を乾燥させ、塗布量:10g/平方メートルの易接着性コーティング層(B)を設け、太陽電池用裏面保護シート1を作成した。
【0116】
<反射率の測定>
反射率は、分光光度計V−570(日本分光製)を用いて、太陽電池用裏面保護シート1の易接着性コーティング層(B)面側から、波長400〜1600nmの範囲で測定した。結果を表6に示す。
【0117】
<接着力測定>
前記太陽電池用裏面保護シート1を2枚用意し、サンビック(株)製のEVAシート(厚み450μ、スタンダードキュアタイプ、以下同)の両面に接着剤層が接するように、前記EVAシートを2枚の太陽電池用裏面保護シート1で挟み、真空ラミネーターで温度150℃、脱気時間5分、プレス圧力1atm、プレス時間10分、アフターキュア150℃−15分で加熱加圧圧着し、接着力測定用のサンプルを作製した。
接着力測定用のサンプルの一部について、温度121℃、相対湿度100%RH、2気圧の環境条件で24時間、48時間、72時間のプレッシャークッカー試験を行った。
プレッシャークッカー試験をしなかったもの(初期)、試験をしたもの(湿熱経時後)、それぞれを15mm幅の長方形にカットし、試験片とした。各試験片について、引っ張り試験機を用いて荷重速度100mm/minでT字剥離試験を行った。結果を表7に示す。
◎:40N/15mm以上
○:20N/15mm以上〜40N/15mm未満
△:5N/15mm以上〜20N/15mm未満
×:5N/15mm未満
【0118】
<遮熱性試験>
室温23℃に調整した室内に、縦280mm、横465mm、高さ190mmの発泡スチロールの箱の上に70mm×70mmに切断した黒色の紙を置き、さらに黒色の紙にちょうど重なる様に70mm×70mmに切断した太陽電池用裏面保護シート1を置き(白色易接着剤層(1)を上方に向けて)、太陽電池用裏面保護シート1の真上15cmの地点から125Wの赤外線ランプを照射して、白色易接着剤層(1)の表面から10cm下の箱の内部の温度上昇を測定した。結果を表7に示す。
【0119】
[実施例2〜26]、[比較例1〜3]
太陽電池用裏面保護シート1と同様にして、太陽電池用裏面保護シート2−29を作成し、反射率、接着力の測定試験並びに遮熱性試験を行った。表6に反射率、表7に接着力、遮熱性の結果を示す。
【0120】
[実施例101]
<太陽電池モジュールの作成>
白板ガラス・・・太陽電池用表面保護材(I)
酢酸ビニル−エチレン共重合体フィルム(EVA)・・・太陽電池の受光面側に位置する封止材(II)
多結晶シリコン太陽電池素子・・・太陽電池素子(III)
EVA・・・太陽電池の非受光面側に位置する封止材(IV)
及び太陽電池用裏面保護材(V)として、実施例1にて得た太陽電池用裏面保護シート1の白色易接着剤層(1)を前記EVAに接するように重ねた後、真空ラミネーターに入れ、1Torr程度に真空排気して、プレス圧力としては大気圧の圧力をかけた状態で、150℃30分間加熱後、さらに150℃で30分間加熱し、18cm×18cm角の光電変換効率評価用太陽電池モジュール1を作製した。
【0121】
<光電変換効率の測定>
得られた太陽電池モジュール1の太陽電池出力を測定し、JISC8912に従って、ソーラーシュミレーター(ウシオ電機製、USS−180S)を用いて光電変換効率を測定した。
また、温度121℃、相対湿度100%RH、2気圧の環境条件で72時間のプレッシャークッカー試験した後の耐湿熱試験後の光電変換効率を、同様にして測定した。表8に光電変換効率の測定試験の結果を示す。
さらに、上記ソーラーシミュレーターから1SUNの光を180分当てて温度を上昇させ、光電変換効率を測定した。表8に光電変換効率の測定試験の結果を示す。
【0122】
[実施例102〜126]、[比較例101〜103]
実施例101と同様にして、光電変換効率評価用太陽電池モジュール2−29を作成し、初期と温度上昇後の光電変換効率の測定試験を行った。表8に光電変換効率の測定試験の結果を示す。
【0123】
【表4】
【0124】
【表5】
【0125】
【表6】
【0126】
【表7】
【0127】
【表8】
【0128】
表6に示すように、実施例1〜26の太陽電池用裏面保護シートは、平均粒子径が0.35〜0.5μmの酸化チタン(a)を含有する易接着性コーティング層(B)を具備しているため、400〜1600nmの範囲の反射率が高い。その結果、太陽電池素子が吸収できずに通過した光を反射し、太陽電池素子に再入光させることができ、表8に示されるように初期の光電変換効率が高い。更に光照射を受けても近赤外領域の光を反射するため、表7に示すように温度上昇が小さい。その結果、表8に示すように、光照射後の光電変換効率の低下が抑制される。しかも、耐湿熱性が良好であるので、耐湿熱性試験後においても光電変換効率の低下が抑制される。
【0129】
一方、比較例1、2の太陽電池用裏面保護シートは、平均粒子径が0.25μmの酸化チタンを含有する易接着性コーティング層(B)を具備する場合である。平均粒子径が小さいため、表6に示すように400〜500nmの範囲は反射率が高いが、600nm以上の波長領域において反射率が顕著に低く、表8に示されるように光電変換効率は低水準となっている。また、表7に示すように光照射後の温度上昇が大きく、表8に示すように光照射後の光電変換効率の低下が大きい。
比較例3の太陽電池用裏面保護シートは、平均粒子径が0.60μmの酸化チタンを含有する易接着性コーティング層(B)を具備する場合である。平均粒子径が大きいため、表6に示すように1400nm以上の波長領域では反射率が高く、表7に示すように光照射後の温度上昇が小さく、表8に示すように光照射後の光電変換効率の低下が小さい。しかしながら、400〜1000nmの波長領域では反射率が顕著に低い。その結果、表8に示すように初期の光電変換効率が低水準となっており、光照射後のエネルギー変換効率は劣る結果となっている。
【0130】
表7に示すように水酸基を有する樹脂(b)とポリイソシアネート化合物を含有する易接着性コーティング層(B)を具備している太陽電池用裏面保護シート(V)は、接着力が良好な結果となっている。同様に、表7に示すようにアクリル系樹脂(b2)が側鎖に不飽和二重結合を含有する易接着性コーティング層(B)を具備している太陽電池用裏面保護シート(V)についても、接着力が良好な結果となっている。
【符号の説明】
【0131】
(I):太陽電池用表面保護材
(II):太陽電池の受光面側に位置する封止材
(III):太陽電池素子
(IV):太陽電池の非受光面側に位置する封止材
(V):太陽電池用裏面保護材
図1
図2