(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の模様塗料組成物の製造方法は、ゲル化剤を含む分散媒に着色塗料を接触させ、着色塗料の表面をゲル化したゲル化物を含有する模様塗料組成物を製造する方法である。
なお、本発明において「所望の模様の塗膜」とは、塗膜の模様の大きさや形状が設計通りであることを意味し、塗膜の模様の配置は規則的であってもよいし、不規則であってもよい。
【0014】
<着色塗料>
着色塗料としては、例えば樹脂エマルションと着色顔料と親水性コロイド形成物質とを含むエマルション塗料や、キトサンと着色顔料と錯体形成物質とを含むキトサン含有塗料などが挙げられる。模様塗料組成物より形成される塗膜に抗菌効果を付与できる点では、キトサン含有塗料が好ましい。
【0015】
(エマルション塗料)
エマルション塗料に含まれる樹脂エマルションとしては、例えばポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル、ベオバ(分岐脂肪酸ビニルエステル)、天然又は合成ゴムや、それらの共重合体のエマルションなど、一般に市販されている樹脂エマルションを使用することができる。中でも、アクリル樹脂が好ましい。
【0016】
着色顔料としては、例えばカーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄、クロム酸鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド等の無機顔料;パール顔料、マイカ顔料、マイカコーティングパール顔料、アルミニウム粉、ステンレス粉等の光輝性顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドンレッド等の有機顔料などが挙げられる。これら着色顔料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
着色顔料の含有量は、樹脂エマルション100質量部に対して、0.01〜50質量部が好ましく、より好ましくは0.1〜30質量部である。
【0017】
エマルション塗料が親水性コロイド形成物質を含有することにより、該親水性コロイド形成物質と後述するゲル化剤とが反応してエマルション塗料をゲル化膜でカプセル化することができる。
親水性コロイド形成物質としては、例えばセルロース誘導体;ポリチレンオキサイド;ポリビニルアルコール;カゼイン、デンプン、ガラクトマンノン、グアルゴム、ローカストビーンゴム等の天然高分子などを含有する水溶液が挙げられる。中でもグアルゴムの水溶液が好ましく、該水溶液の濃度は0.5〜5質量%が好ましく、より好ましくは1.0〜3質量%である。これら親水性コロイド形成物質は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
親水性コロイド形成物質の含有量は、樹脂エマルション100質量部に対して、0.05〜5質量部が好ましく、より好ましくは0.1〜3.0質量部である。親水性コロイド形成物質の含有量が上記範囲内であれば、安定したゲル化膜が得られやすくなる。
【0018】
エマルション塗料には、必要に応じて体質顔料や公知の添加剤(例えば増粘剤、分散剤、消泡剤、防腐剤、レベリング剤等)が任意成分として含まれてもよい。
体質顔料としては、カオリン、硫酸バリウム、含水ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどが挙げられる。これら体質顔料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
体質顔料の含有量は、エマルション塗料100質量%中、0〜30質量%が好ましく、より好ましくは0〜20質量%である。
【0019】
エマルション塗料は、上記樹脂エマルションに親水性コロイド形成物質を加え撹拌混合したものに、着色顔料と水の混合溶液を加えてさらに撹拌混合して得られる。
水の含有量は、エマルション塗料100質量%中、40〜90質量%が好ましく、より好ましくは50〜80質量%である。
【0020】
(キトサン含有塗料)
キトサン含有塗料に含まれるキトサンとしては、市販品を用いることができる。
着色顔料としては、エマルション塗料の説明において先に例示した着色顔料が挙げられる。これら着色顔料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
着色顔料の含有量は、キトサン含有塗料に含まれるキトサンと、錯体形成物質と水との合計100質量部に対して、0.01〜50質量部が好ましく、より好ましくは0.1〜30質量部である。
【0021】
キトサン含有塗料が錯体形成物質を含有することにより、キトサンが錯体形成物質と水中で反応し、イオン錯体を形成する。このイオン錯体を分散媒に接触させることでイオン錯体の表面がゲル化し、キトサン膜が形成される。
錯体形成物質としては、塩酸等の無機酸;酢酸、ギ酸、アクリル酸、乳酸、リンゴ酸等の有機酸などが挙げられる。中でも、塩酸の水溶液が好ましい。
錯体形成物質の含有量は、キトサン100質量部に対して、20〜150質量部が好ましく、より好ましくは50〜100質量部である。
【0022】
キトサン含有塗料には、必要に応じて、樹脂エマルション、体質顔料や公知の添加剤(例えば増粘剤、分散剤、消泡剤、防腐剤、レベリング剤等)が任意成分として含まれてもよい。
体質顔料および添加剤としては、エマルション塗料の説明において先に例示した体質顔料および添加剤が挙げられる。
【0023】
キトサン含有塗料は、上記錯体形成物質の水溶液にキトサンを加え撹拌混合したものに着色顔料を加え、さらに撹拌混合して得られる。
水の含有量は、キトサン含有塗料100質量%中、40〜90質量%が好ましく、より好ましくは50〜80質量%である。
【0024】
<分散媒>
分散媒は、ゲル化剤を含む水性の分散媒である。
ゲル化剤としては、例えばマグネシウムモンモリロナイト粘土、ナトリウムペンタクロロフェノール、ホウ酸塩、タンニン酸、乳酸チタン、塩化カルシウム、水酸化ナトリウムなどを含有する水溶液が挙げられる。中でも、着色塗料としてエマルション塗料を用いる場合はホウ酸塩の水溶液が好ましく、キトサン含有塗料を用いる場合は塩化カルシウムの水溶液が好ましい。ホウ酸塩の水溶液の濃度は0.05〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜8質量%である。塩化カルシウムの水溶液の濃度は0.05〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%である。これらゲル化剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
着色塗料としてエマルション塗料を用いる場合、ゲル化剤の含有量は、分散媒100質量%中、0.05〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜3質量%である。一方、着色塗料としてキトサン含有塗料を用いる場合、ゲル化剤の含有量は、分散媒100質量%中、0.1〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜3質量%である。
ゲル化剤の含有量が上記範囲内であれば、安定したゲル化膜が得られやすくなる。
【0025】
分散媒には、必要に応じて体質顔料や水溶性高分子化合物、公知の添加剤が任意成分として含まれてもよい。
体質顔料としては、エマルション塗料の説明において先に例示した体質顔料が挙げられる。中でも、含水ケイ酸マグネシウムの分散液が好ましく、該分散液の濃度は0.05〜20質量%が好ましく、より好ましくは2〜10質量%である。これら体質顔料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
体質顔料の含有量は、分散媒100質量%中、0.05〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量部である。
【0026】
水溶性高分子化合物としては、例えばヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコールなどを含有する水溶液が挙げられる。中でもカルボキシメチルセルロースまたはメチルセルロースの水溶液が好ましく、これら水溶液の濃度は0.1〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜3質量%である。これら水溶性高分子化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
水溶性高分子化合物の含有量は、分散媒100質量%中、0.05〜3質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜2質量%である。
【0027】
添加剤としては、エマルション塗料の説明において先に例示した添加剤が挙げられる。
【0028】
分散媒は、ゲル化剤を含む水溶液と、必要に応じて体質顔料を含む分散液、および水溶性高分子化合物を含む水溶液等とを撹拌混合したものに、水を加え希釈することにより得られる。
水の含有量は、分散媒100質量%中、20〜80質量%が好ましく、より好ましくは30〜70質量%である。
【0029】
<製造方法>
本発明の模様塗料組成物の製造方法は、上述した着色塗料を平ノズルから分散媒の中へ吐出させることを特徴とする。
ここで、「分散媒の中へ吐出させる」とは、着色塗料が平ノズルから吐出した瞬間に分散媒と接触することを意味する。
【0030】
(第一の実施形態)
本実施形態の模様塗料組成物の製造方法は、外側ノズルと該外側ノズルの内側に設けられた平ノズルとを備えた二重ノズルを用い、分散媒を二重ノズルの外側ノズルから吐出させ、着色塗料を二重ノズルの平ノズルから分散媒の中へ吐出させる方法である。
以下、本実施形態の模様塗料組成物の製造方法について、
図1を参照しながら説明する。
【0031】
図1は、模様塗料組成物の製造装置の一例を模式的に示す斜視図である。この例の模様塗料組成物の製造装置1は、外側ノズル11、および外側ノズル11の内側に設けられた平ノズル12を備えた二重ノズル10と、分散媒Bを貯留した分散媒用の貯留タンク21と、着色塗料Aを貯留した着色塗料用の貯留タンク22と、回収タンク30とを備えている。
なお、二重ノズル10を用いて製造された模様塗料組成物からは、2対の辺を有する模様の塗膜が形成される。
【0032】
分散媒用の貯留タンク21は、配管41によって外側ノズル11に接続されている。一方、着色塗料用の貯留タンク22は、配管42によって平ノズル12に接続されている。また、配管41には分散媒Bの流量を調整するコック41aが取り付けられ、配管42には着色塗料Aの流量を調整するコック42aが取り付けられている。
【0033】
図1に示す外側ノズル11のノズル口11aは、円形状に開口されている。ノズル口11aの口径については、後述する平ノズル12のノズル口12aの幅および長さよりも大きければ特に制限されない。
外側ノズル11のノズル口11aの形状は円形状に限定されず、例えば楕円状や多角形状であってもよい。
【0034】
平ノズル12のノズル口12aは、スリット状(矩形状)に開口されており、その形状については特に制限されない。
ノズル口12aの幅(スリット幅)は0.05〜0.5mmが好ましい。ノズル口12aの幅は、本発明の模様塗料組成物より形成される塗膜の模様の厚さに相当する。ノズル口12aの長さ(スリット長さ)については特に制限されず、例えば0.5〜10mm程度である。ノズル口12aの長さは、本発明の模様塗料組成物より形成される塗膜の模様の大きさ(2対の辺のうち、1対の辺の長さ)に相当する。
【0035】
平ノズル12のノズル口12aは、外側ノズル11のノズル口11aよりも突出していることが好ましく、具体的には1.0〜5.0mm程度突出していることが好ましい。平ノズル12のノズル口12aと外側ノズル11のノズル口11aとが同一平面に位置している、または外側ノズル11のノズル口11aが突出していると、二重ノズル10の中で分散媒Bが溜まってしまうことがある。ただし、平ノズル12のノズル口12aが突出しすぎると、着色塗料Aが分散媒Bの中に入りにくくなる傾向にある。
【0036】
図1に示す模様塗料組成物の製造装置1を用いる場合、まず、コック41aで流量を調整しながら分散媒Bを外側ノズル11から回収タンク30へ連続的に吐出する。同時に、この吐出した分散媒Bの中へ、コック42aで流量を調整しながら着色塗料Aを平ノズル12から断続的に吐出する。具体的には、所定の長さ(吐出長さ)の着色塗料Aとなるように、着色塗料用の貯留タンク22から平ノズル12への着色塗料Aの供給と停止を繰り返しながら、着色塗料Aを平ノズル12から吐出する。吐出長さは0.5〜40mm程度が好ましい。吐出長さは、本発明の模様塗料組成物より形成される塗膜の模様の大きさ(2対の辺のうち、もう1対の辺の長さ)に相当する。
【0037】
平ノズル12から吐出した着色塗料Aは分散媒Bと接触し、着色塗料Aの表面がゲル化することで被膜を形成したゲル化物G(表面がゲル化した着色塗料)となる。ゲル化物Gは分散媒Bに包まれた滴下物Dの状態で回収タンク30へと回収され、模様塗料組成物が得られる。
なお、本実施形態において、回収タンク30には予め分散媒Bが貯留されていてもよいし、分散媒Bが貯留されていなくてもよい。回収タンク30に予め分散媒Bが貯留されている場合、滴下物Dの分散媒Bは回収タンク30に貯留された分散媒Bと混ざり合う。
【0038】
分散媒Bの吐出量(流量)は、着色塗料Aの吐出量(流量)と同じであること、あるいは着色塗料Aの吐出量(流量)よりも多いこと、が好ましい。
【0039】
ゲル化物Gと、ゲル化物Gが分散した分散媒Bは、そのまま模様塗料組成物として用いてもよいし、ゲル化物Gのみを他の塗料に配合してもよい。
また、本実施形態では、ノズル口の形状の異なる平ノズルを備えた複数の二重ノズルを用いて着色塗料と分散媒とを吐出し、着色塗料と分散媒との接触により生成した各ゲル化物を1つの分散媒へ回収してもよい。
さらに、着色塗料を色の異なるものに交換すれば、色調の異なるゲル化物が分散媒に複数混在した模様塗料組成物が得られる。なお、色調の異なるゲル化物が分散媒に複数混在した模様塗料組成物を「多彩模様塗料組成物」ともいう。
多彩模様塗料組成物を製造する方法としては、1色目のゲル化物が分散した分散媒中へ、2色目以降の着色塗料を二重ノズルから吐出し、1つの分散媒中で複数の色調の異なるゲル化物を混合する方法;ゲル化物が分散した分散媒をゲル化物の色毎に複数製造し、所望の色合いとなるように各分散媒を混合する方法などが挙げられる。
【0040】
また、模様塗料組成物には、必要に応じてバインダの役割を果たす樹脂エマルションや公知の添加剤が任意成分として含まれてもよい。
樹脂エマルションとしては、エマルション塗料の説明において先に例示した樹脂エマルションが挙げられる。中でも、アクリル樹脂が好ましい。
樹脂エマルションの含有量は、模様塗料組成物100質量%中、50質量%以下が好ましく、より好ましくは20〜40質量%である。樹脂エマルションの含有量が上記範囲内であれば、模様塗料組成物の塗装作業性がよく、耐久性のよい塗膜が得られる。
【0041】
添加剤としては、エマルション塗料の説明において先に例示した添加剤が挙げられる。
【0042】
(第二の実施形態)
本実施形態の模様塗料組成物の製造方法は、平ノズルを分散媒に浸漬させた状態で、着色塗料を平ノズルから分散媒の中へ吐出させる方法である。
以下、本実施形態の模様塗料組成物の製造方法について、
図2を参照しながら説明する。
【0043】
図2は、模様塗料組成物の製造装置の他の例を模式的に示す斜視図である。この例の模様塗料組成物の製造装置2は、平ノズル12と、着色塗料Aを貯留した着色塗料用の貯留タンク22と、分散媒Bを貯留した回収タンク30とを備えている。
なお、平ノズル12を用いて製造された模様塗料組成物からは、2対の辺を有する模様の塗膜が形成される。
【0044】
着色塗料用の貯留タンク22は、配管42によって平ノズル12に接続されている。また、配管42には着色塗料Aの流量を調整するコック42aが取り付けられている。
【0045】
平ノズル12としては、第一の実施形態において先に説明した平ノズルが挙げられる。
平ノズル12のノズル口12aは、回収タンク30中の分散媒Bに浸漬している。
【0046】
図2に示す模様塗料組成物の製造装置2を用いる場合、コック42aで流量を調整しながら着色塗料Aを平ノズル12から、回収タンク30に貯留された分散媒Bの中へ断続的に吐出する。具体的には、所定の長さ(吐出長さ)の着色塗料Aとなるように、着色塗料用の貯留タンク22から平ノズル12への着色塗料Aの供給と停止を繰り返しながら、着色塗料Aを平ノズル12から吐出する。吐出長さは0.5〜40mm程度が好ましい。
【0047】
また、着色塗料Aを平ノズル12から、回収タンク30に貯留された分散媒Bの中へ連続的に吐出しつつ、着色塗料Aが所定の長さになるように、ノズル口12aで着色塗料Aを切断してもよい。
【0048】
平ノズル12から吐出した着色塗料Aは分散媒Bと接触し、着色塗料Aの表面がゲル化することで被膜を形成したゲル化物G(表面がゲル化した着色塗料)となり、分散媒B中にゲル化物Gが分散した模様塗料組成物が得られる。
【0049】
ゲル化物Gと、ゲル化物Gが分散した分散媒Bは、そのまま模様塗料組成物として用いてもよいし、ゲル化物Gのみを他の塗料に配合してもよい。
また、本実施形態では、ノズル口の形状の異なる平ノズルを複数、分散媒に浸漬させた状態で、各平ノズルから着色塗料を吐出し、着色塗料と分散媒との接触により生成した各ゲル化物を1つの分散媒へ回収してもよい。
さらに、着色塗料を色の異なるものに交換すれば、色調の異なるゲル化物が分散媒に複数混在した模様塗料組成物(多彩模様塗料組成物)が得られる。
多彩模様塗料組成物を製造する方法としては、1色目のゲル化物が分散した分散媒中へ、2色目以降の着色塗料を分散媒に浸漬した平ノズルから吐出し、1つの分散媒中で複数の色調の異なるゲル化物を混合する方法;ゲル化物が分散した分散媒をゲル化物の色毎に複数製造し、所望の色合いとなるように各分散媒を混合する方法などが挙げられる。
【0050】
<作用効果>
以上説明した本発明の模様塗料組成物の製造方法によれば、着色塗料の表面がゲル化したゲル化物を、平ノズルを備えた二重ノズルを用いたり、平ノズルを分散媒に浸漬させたりして、着色塗料を平ノズルから分散媒の中へ吐出させることで製造する。このように平ノズルから分散媒の中へ吐出することにより着色塗料を所定の大きさや形状に形成することで、設計通りの模様を形成できる。よって、本発明により得られる模様塗料組成物からは、所望とする模様の塗膜を再現性よく形成でき、色再現性にも優れる。
しかも、平ノズルから吐出される着色塗料は膜状であるため、得られるゲル化物も膜状である。よって、膜状のゲル化物を含有する模様塗料組成物を塗装対象物にスプレー塗装しても、ゲル化物が跳ね返りにくい。
【0051】
ところで、着色塗料を平ノズルから単に吐出しただけでは、表面張力により吐出した着色塗料は直ちに球状になってしまい、着色塗料を所定の形状(膜状)に形成できない。
しかし、本発明のように着色塗料を平ノズルから分散媒の中へ吐出させれば、着色塗料が吐出した瞬間に分散媒と接触してゲル化物となるため、球状にならずに分散媒中で所定の形状を維持できる。
【0052】
また、特許文献1に記載のように、ゲル化物を分散機で撹拌しながら細分化する方法の場合、連続生産するのは困難である。
しかし、本発明であれば平ノズルを用い、分散媒の中へ吐出させることにより着色塗料を所定の大きさや形状に形成するため、連続生産が可能である。
さらに、本発明であれば平ノズルを用いて所定の大きさや形状の着色塗料を形成するため、所望とする形状の着色塗料を容易に形成できる。
【0053】
ところで、ゲル化物が乾燥していると、スプレー塗装時に圧力等によって変形しにくく、ノズルが詰まるおそれがある。よって、ゲル化物は乾燥していないことが望まれる。
本発明であれば、着色塗料が乾燥されることなく分散媒と接触するので、未乾燥の着色粒子の表面がゲル化したゲル化物(すなわち、乾燥していないゲル化物)が分散媒中に存在することになる。よって、スプレー塗装してもゲル化物がスプレー時の圧力でノズルから吐出する際に変形しやすく、ノズルが詰まりにくい。なお、ノズルから吐出した後のゲル化物は、圧力から開放されるため元の形状に戻る。
【0054】
<用途>
本発明により得られる模様塗料組成物の用途については特に制限はなく、モルタル、コンクリート、窯業系素材、プラスチック、金属、木材、紙など、種々の対象物に塗布することが可能である。塗布時における模様塗料組成物の塗布量には特に制限はないが、通常、300〜600g/m
2となるように塗布するのが好ましい。また、塗装方法にも制限はなく、刷毛、こて、ローラ、スプレーなどの公知の方法で塗装することができ、塗装後に常温乾燥、加熱乾燥することができる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、例中「部」とは「質量部」を、「%」とは「質量%」を示す。
【0056】
「着色塗料の製造」
<エマルション塗料の製造>
アクリル樹脂エマルション(日本アクリル化学株式会社製、「プライマルAC−38」)38部と、非イオン性グアルゴム誘導体の1.5%水溶液28.5部(固形分0.43部)とを混合し、混合溶液(a)を調製した。
別途、着色顔料としてチタン白10部と、アニオン性高分子分散剤(日本アクリル化学株式会社製、「オロタン731」)1部と、水22.5部とを混合し、混合溶液(b)を調製した。
混合溶液(a)に混合溶液(b)を加え撹拌し、エマルション塗料を得た。
【0057】
<キトサン含有塗料の製造>
乳酸の5%水溶液95部に、キトサン5部を徐々に加えて90分間撹拌し、キトサン溶液を調製した。得られたキトサン溶液100部に、茶系顔料1部を添加して20分間撹拌し、キトサン含有塗料を得た。
【0058】
「分散媒の製造」
<分散媒(1)の製造>
含水ケイ酸マグネシウムの4%水中分散液25部(固形分1部)に、重ホウ酸アンモニウムの5%水溶液5部(固形分0.25部)と、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの1%水溶液25部(固形分0.25部)を加え撹拌混合した後、水45部を加えて希釈し、分散媒(1)を得た。
【0059】
<分散媒(2)の製造>
20%塩化カルシウム水溶液50部と、1.5%メチルセルロース水溶液50部とを混合し、分散媒(2)を得た。
【0060】
「実施例1」
着色塗料としてエマルション塗料を用い、分散媒として分散媒(1)を用い、製造装置として
図1に示す模様塗料組成物の製造装置1を用いた。二重ノズル10としては、ノズル口11aの口径が14mmである外側ノズル11と、該外側ノズル11の内側に、ノズル口12aの幅(スリット幅)が0.5mmであり、長さ(スリット長さ)が10mmである平ノズル12とを備えた二重ノズルを用いた。なお、平ノズル12のノズル口12aは、外側ノズル11のノズル口11aよりも2.0mm突出していた。
まず、流量が5g/分となるようにコック41aで調整しながら分散媒Bを外側ノズル11から回収タンク30へ連続的に吐出した。同時に、流量が5g/分となるようにコック42aで調整しつつ、吐出長さが10mmの着色塗料Aとなるように着色塗料用の貯留タンク22から平ノズル12への着色塗料Aの供給と停止を繰り返しながら、着色塗料Aを平ノズル12から吐出した分散媒Bの中へ断続的に吐出した。こうして平ノズル12から吐出した着色塗料Aを分散媒Bと接触させ、着色塗料Aの表面をゲル化した白色のゲル化物G(表面がゲル化した着色塗料)とした。該ゲル化物Gを分散媒Bに包まれた滴下物Dの状態で回収タンク30へと回収し、分散媒B中にゲル化物Gが分散した模様塗料組成物を得た。
得られた模様塗料組成物に含まれる白色のゲル化物Gは、10mm角の大きさに揃っていた。
【0061】
「実施例2」
着色塗料としてキトサン含有塗料を用い、分散媒として分散媒(2)を用いた以外は、実施例1と同様にして模様塗料組成物を得た。
得られた模様塗料組成物に含まれる茶色のゲル化物Gは、10mm角の大きさに揃っていた。
【0062】
「実施例3」
着色塗料としてエマルション塗料を用い、分散媒として分散媒(1)を用い、製造装置として
図2に示す模様塗料組成物の製造装置2を用いた。平ノズル12としては、ノズル口12aの幅(スリット幅)が0.5mmであり、長さ(スリット長さ)が10mmである平ノズルを用いた。平ノズル12は回収タンク30中に分散媒Bに浸漬させた。
流量が5g/分となるようにコック42aで調整しつつ、吐出長さが10mmの着色塗料Aとなるように着色塗料用の貯留タンク22から平ノズル12への着色塗料Aの供給と停止を繰り返しながら、着色塗料Aを平ノズル12から回収タンク30の分散媒Bの中へ断続的に吐出した。こうして平ノズル12から吐出した着色塗料Aを分散媒Bと接触させ、着色塗料Aの表面をゲル化した白色のゲル化物G(表面がゲル化した着色塗料)が分散媒B中に分散した模様塗料組成物を得た。
得られた模様塗料組成物に含まれる白色のゲル化物Gは、10mm角の大きさに揃っていた。
【0063】
「実施例4」
着色塗料としてキトサン含有塗料を用い、分散媒として分散媒(2)を用いた以外は、実施例3と同様にして模様塗料組成物を得た。
得られた模様塗料組成物に含まれる茶色のゲル化物Gは、10mm角の大きさに揃っていた。
【0064】
「比較例1」
分散媒(1)40部に、エマルション塗料60部を加えて、粒径が10mmになるまでディソルバで撹拌しながら細分化して、着色塗料の表面をゲル化した白色のゲル化物が分散媒(1)に分散した模様塗料組成物を得た。
得られた模様塗料組成物には、1mm角以下の微細なゲル化物と、10mm角のゲル化物と、20mm×3mmの紐状のゲル化物とが混在しており、ゲル化物の大きさにバラつきがあった。