(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
この種の電子部品として、例えば、自動車用イモビライザーの他、児童の放課後の居場所の管理や、家畜の飼育管理、駅の入退場の管理等を行う、ID認証用アンテナ部品等があげられる(例えば、特許文献1、特許文献2,特許文献3参照)。
【0003】
特許文献1に記載の電子部品は、ICパッケージで、半導体基板(ICチップ)とリード端子とをワイヤで接続した後、周囲を樹脂材で封止してなるICパッケージである。
【0004】
特許文献2に記載の電子部品は、自動車のドアの施錠・解錠をキー操作なしで行うキーレスエントリーシステムで使用する、ICチップ付き送信用アンテナである。
【0005】
特許文献3に記載の電子部品は、回転すし店の皿に設けられるICタグである。
【0006】
ところで、このような電子部品には、一般的に受動部品や、半導体基板からなるICチップや、上記受動部品とICチップを設置するためのベース部材等、により構成されている。
【0007】
このようなICパッケージは、パッケージ内に封止される半導体基板(ICチップ)と、パッケージ内から導出されるリードを有するリードフレームと、パッケージ内で半導体基板に設けられた導電パターン(ランド)と、リードフレームとの間を接続している金のボンディングワイヤ等で構成されている。
【0008】
しかし、従来のICパッケージ等の電子部品において、リードフレームと半導体基板のランドとの間に金のボンディングワイヤを設けることは、非常にコストがかかり、作業工数も多くて作業性が悪いという問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、半導体基板とリード端子片等の板状金属部材との間の接続組立を簡略化し、コストの低減を図ることが可能な電子部品及び電子部品の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、本発明に係る態様は、以下に示す構成によって把握される。
(1)本発明に係る第1の態様は、電子部品であって、樹脂製フレームと、樹脂製フレームに収容された半導体基板と、半導体基板と離間した位置において樹脂製フレーム内に少なくとも一端が固定された板状金属部材と、導電性材料により半導体基板の板状金属部材側表面に形成された電気接続領域部と、電気接続領域部の板状金属部材側表面に形成された半田層とを備え、板状金属部材が、半田層及び電気接続領域部を介して半導体基板を非接触で支持し、かつ、電気接続領域部と電気的に接続されることを特徴とする。
【0012】
(2)上記(1)において、板状金属部材は、半田層と接続する領域に、半田層に向けて突出する屈曲部を有することができる。
【0013】
(3)上記(1)又は(2)において、樹脂製フレームは、半導体基板を収容する中空部を有し、板状金属部材は、中空部内で半導体基板と電気的に接続されることができる。
【0014】
(4)上記(1)から(3)のいずれか1つにおいて、板状金属部材は、一端側において樹脂製フレーム内に埋設して固定され、他端側において開放され、又は樹脂製フレーム内に埋設して固定されることができる。
【0015】
(5)上記(1)から(4)のいずれか1つにおいて、板状金属部材は、50Hv以上300Hv以下のビッカース硬さを有する銅合金又はステンレス鋼製を含むことができる。
【0016】
(6)上記(3)から(5)のいずれか1つにおいて、樹脂製フレームは、中空部に延出している突出部を有し、突出部は、半導体基板の少なくとも1箇所と接触して半導体基板を位置決めする接触部を有することができる。
【0017】
(7)本発明に係る第2の態様は、電子部品の製造方法であって、板状金属部材を金型内に位置決めすると共に樹脂を金型に射出注入し、板状金属部材の少なくとも一端を埋め込むようにして樹脂製フレームを形成するインサート成形工程と、導電性材料により形成された電気接続領域部と半田層とをこの順に表面に有する半導体基板を用意する半導体基板準備工程と、半導体基板の半田層を有する面を下向きにし、半田層と板状金属部材の一部とが接するように、板状金属部材の上に半導体基板を自重により載置させる半導体基板載置工程と、半田層に熱を加えて半田層を溶かし、半導体基板と板状金属部材とを電気的に接続するリフロ半田付け工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、半導体基板とリード端子片等の板状金属部材との間の接続組立を簡略化し、コストの低減を図ることが可能な電子部品及び電子部品の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る電子部品の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態により、本発明が限定されるものではない。
【0021】
図1〜
図4は本発明に係る電子部品の実施形態を示し、電子部品としてアンテナユニット11を一例として説明する。アンテナユニット11は、
図1、
図2に示すように、ユニット本体12と、そのユニット本体12に取れ付けられたアンテナコイル13と、1対の板状金属部材14、14と、半導体基板15と、取付板16等を備えるものである。
【0022】
アンテナコイル13は、フェライトや金属材料からなる棒状コア17と、その棒状コア17の外周面に図示しない絶縁シート材を介して巻線を所定数巻回してなるコイル18と、でなる。コイル18は、巻線からの引出線18a、18bが設けられている。
【0023】
ユニット本体12は、樹脂材を金型(図示せず)内に射出することにより所定の形状に成形された樹脂製フレーム19を備える。また、樹脂製フレーム19を成形するとき、金型内の所定の位置に1対の板状金属部材14、14と取付板16を各々配置し、その状態で金型内に樹脂材を射出して板状金属部材14、14及び取付板16を樹脂内に埋め込む、いわゆるインサート成形を行い、樹脂製フレーム19が1対の板状金属部材14、14及び取付板16と一体化されている。
【0024】
その各板状金属部材14は、リード端子片としての機能を有するものであり、銅合金またはステンレス鋼等ある程度強度及び硬度を持つ弾性を有した金属製の板材をプレスして形成されている。なお、本例では製造の便利さ及びコスト削減の観点から、板状金属部材14の材質は、半導体基板15で使用するリードフレームと同じ材料で形成されることが好ましい。特に、この板状金属部材14が半導体基板15を後述するようにして支える役割を果たすためには、所定の硬度を有する金属材料が望ましく、本例で使用している板状金属部材14の硬度は、ビッカース硬さ50Hv以上300Hv以下である。
【0025】
板状金属部材14、14の各一端側は、
図1及び
図2に示すように接続端子14a、14aとして樹脂製フレーム19の一側面19aから外部に突出されている。その各接続端子14a、14aには、アンテナコイル13におけるコイル18の引出線18a、18bがそれぞれ絡げられ、電気的及び機械的に接続されている。なお、アンテナコイル13の棒状コア17は、樹脂製フレーム19の前面19bに一端側を固定することにより取り付けられている。
【0026】
また、樹脂製フレーム19は、
図2に示すように、裏面(下面19c)側に、開口20を有する中空部21が形成されている。その中空部21は、
図2〜
図4に示すように、半導体基板15を平面状に配して収納可能である。したがって、本例での中空部21は、開口20の大きさが四角形をした半導体基板15の平面とほぼ同じで、深さが半導体基板15の厚みよりも深い凹部として形成されている。
【0027】
さらに、
図4に示すように、中空部21の底面21aにおいて、2枚の板状金属部材14、14が各々貫通配置されている2つの内側面21b、21cのうち、板状金属部材14、14の接続端子14a、14aが設けられている側の内側面21b側の2つの角部には、それぞれ底面21aから開口20に向かって突出した状態で設けられた台座22と、台座22上に形成された突出部23とが一体に設けられている。なお、
図3に示すように、本例では突出部23の上面23aと開口20までの距離S1は、半導体基板15の厚みt0(この厚みt0には、後述するパッド27及び半田層28の厚みは加わっていない)と略同じに形成されている。また、中空部21は、必ずしも底面21aを設けた有底状に形成されていなくてもよく、上下に貫通した孔として形成してもよい。
【0028】
中空部21内には、台座22、22と対応する位置においてそれぞれ、板状金属部材14、14の中間部分14c、14cが、中空部21内を左右方向に横切り、かつ接続端子14a、14aと反対側の他端14b、14b側を樹脂製フレーム19に埋め込ませた状態にして配設されている。また、
図2及び
図3に示すように、中空部21内に配置された中間部分14c、14cには、突出部23と距離を置く他端14b、14b側において、半導体基板15が収容されてくる方向、すなわち本例では開口20側に向かって突出するように断面逆V字状に湾曲形成された屈曲部24が形成されている。また、
図4に示すように、屈曲部24の頂点24aから開口20面までの距離S2は、
図6の(a)に示す半導体基板15の厚みt1(この厚みt1には、半導体基板15の厚みt0に後述するパッド27の厚みも加わる)よりも若干大きく形成されている。
【0029】
取付板16は、例えば自動車等のドアの施錠及び解錠をキー操作なしで行うキーレスエントリーシステムを採用したドアハンドル内にアンテナユニット11を取り付ける際に使用されるもので、
図1及び
図2に示すように、一端側は樹脂製フレーム19内に埋め込まれて取り付けられ、樹脂製フレーム19の後面19cから導出されている他端側には、取付ビス(図示せず)等が挿入される取付孔25、26が設けられている。
【0030】
半導体基板15は、本例では単結晶または多結晶Si基板やSiC基板やGaN基板等の半導体材料からなり、その中には多層の集積回路が形成されている。また、中空部21の底面21aに向けて取り付けられる面(下面15a)側には、
図2〜
図5に示すように、電気接続領域部としての1対のパッド27、27が、板状金属部材14、14の屈曲部24と各々対応して形成されている。このパッド27、27は、一般的に、半導体及び金属の両方と相性良い合金または化合物により形成されており、電気を通せる導電性材料により形成されている。また、パッド27、27の表面上には、錫を主成分とするクリーム状の半田層28が形成されている。なお、ここでは、板状金属部材14により半導体基板15への擦り傷等を起こさないためには、半田層28の高さh1がパッド27の高さの5倍以上20倍以下であることが好ましい。本例では、パッド27の高さは約0.008mm、パッド27に半田層28を加えた高さは0.06mm以上0.10mm以下である。
【0031】
そして、半導体基板15は、半田層28を設けたパッド27を有する面(下面15a)を下向きにして樹脂製フレーム19の中空部21内に落とし込み、中空部21内に埋設する状態にして収容させる。すると、半田層28及びパッド27が板状金属部材14、14の屈曲部24、24と各々対応すると共に、中空部21内の突出部23、23が半導体基板15の下面15aと当接する。そして、半導体基板15は、中空部内21内で板状金属部材14,14の屈曲部24、24と突出部23、23とで、非常に小さな力(半導体基板15の自重に相当)で支えられる。また、この状態で、アンテナユニット11をリフロ炉(図示せず)に入れ、熱風を加えることにより半田層28を溶かし、その後、冷やして半田層28を固め、半導体基板15と板状金属部材14とを一体化している。
【0032】
なお、半田リフロ前、半導体基板15の自重により、板状金属部材14が半田層28に入り込むようになるが、半導体基板15の重量が軽いので、
図6の(b)に示すように、板状金属部材14の屈曲部24がパッド27と接するまでは入り込むことはなく、また、パッド27と屈曲部24との間は
図6の(b)に示すように、半田リフロ処理後も被接触で、直接には接してはいない。すなわち、半田リフロ時も、半田層28の半田は溶けるが、半導体基板15の重量は軽いので、板状金属部材14の屈曲部24が半田層28を突き破ってパッド27と直接には接していない。この時、勿論、板状金属部材14が半導体基板15の表面に接することがない。なお、
図6(b)に示された形態以外にも、例えば、板状金属部材14が半田層28を突き破って、パッド27を突き破れない程度でパッド27と接触してもよい。要するに、板状金属部材14と半導体基板15にダメージを与えない限り、種々の変形ができる。
【0033】
なお、図示しないが、このように形成されたアンテナユニット11は、取付板16の取り付け部分を除く全体が、樹脂で封止されて完成する。
【0034】
図5は、アンテナユニット11の製造手順の一例を示すブロック図である。
図5を使用してアンテナユニットの製造手順を、次に(1)〜(5)の順に説明する。
【0035】
(1)インサート成形工程において、金型内の所定の位置に1対の板状金属部材14、14と取付板16を各々配置し、その状態で金型内に樹脂材を射出して板状金属部材14、14及び取付板16を樹脂内に埋め込むようにして、いわゆるインサート成形を行って樹脂製フレーム19を形成する。
【0036】
(2)半導体基板準備工程において、表面(下面15a)に導電性材料により形成された電気接続領域部としてのパッド27と、このパッド27の表面に錫が主成分とするクリーム状の半田層28とを有する半導体基板15を用意する。
【0037】
(3)半導体基板載置工程において、半田層28を有する面を下向きにし、その半田層28と板状金属部材14の一部である屈曲部24の頂点24aとが接するように、半導体基板15を自重により中空部21内に落とし込み、半導体基板15を板状金属部材14上に載置させる。これにより、半導体基板15の自重で、板状金属部材14の屈曲部24が半田層28内に入り込むようになるが、半導体基板15の重量が軽いので、板状金属部材14の屈曲部24はパッド27乃至半導体基板15の表面とは直接的には接していない。
図6の(a)は、このリフロ前の状態を示している。なお、板状金属部材14の屈曲部24をフラックス処理してから半導体基板を載置させれば、さらに確実な接合が可能となる。
【0038】
(4)リフロ半田付け工程では、アンテナユニット11をリフロ炉に入れ、熱風を加えることにより、半田層28を溶かし、半導体基板15と板状金属部材14を一体化させる。この時、半田層28の半田は溶けて板状金属部材14の屈曲部24の周囲に回り込みながら、板状金属部材14の屈曲部24の凹部内にも浸入することがある。
図6の(a)は、このリフロ半田処理前の状態を示し、(b)はリフロ半田処理後の状態を示している。なお、リフロ半田処理では、リフロ炉に入れる以外に、スポットリフロ装置を使ってもよく、またレーザで半田層28を溶かして処理するようにしてもよい。
【0039】
(5)封止工程では、取付板16の取り付け部分を除くアンテナユニット11のほぼ全体が、樹脂で封止され、これによりアンテナユニット11が完成する。なお、
図1〜
図3に示すアンテナユニット11は、樹脂で封止される前の状態で示している。すなわち、アンテナユニット11は、樹脂で封止することなく、使用する場合もあり得る。
【0040】
したがって、このようにして形成された電子部品であるアンテナユニット11では、板状金属部材14と半導体基板15とを組み付ける際、板状金属部材14が半導体基板15を、半導体基板15の表面に形成された電気接続領域部であるパッド27の表面に設けた半田層28を介して支持し、この状態で半田層28を溶かすと、溶けた半田層28の一部が板状金属部材14とパッド27との間に流れ込み、板状金属部材14と半導体基板15との間を電気的に接続する。また、その後、半田層28を冷やして固まらせると、板状金属部材14とパッド27とが互いに電気的、かつ、機械的に固定された電子部品が容易に得られる。
【0041】
また、板状金属部材14には、半導体基板15の半田層28と接続する領域に、半田層28に向けて突出するように湾曲する屈曲部24を設けているので、半導体基板15を中空部21内に配置した時に屈曲部24の一部が半田層28内に浸入し易い。また、半田層28が溶けると、突出した屈曲部24の周囲に半田層28が入り込み、その溶けた半田が屈曲部の周辺に回り込んで、板状金属部材14と半導体基板15との間における安定した電気接続並びに固定を実現することができる。
【0042】
また、樹脂製フレーム19は、半導体基板15を収容する中空部21を有し、半導体基板15は収容配置された中空部21内で板状金属部材14と電気接続されるようになっているので、樹脂製フレーム19に対する半導体基板15の位置決めが容易で、板状金属部材14と半導体基板15との電気接続並びに固定を安定して行うことができる。
【0043】
なお、本発明は
図7に示すように変形して実施することも可能である。
図7に示す変形例は、同図(a)に示すように板状金属部材14を中空部21の左右の内側面21b、21cより各々2枚ずつ、片持ち状に延出させて4枚設けた構造にしたものである。また、4枚の板状金属部材14の、中空部21内にそれぞれ延出されている自由端側には、半導体基板15が収容されてくる方向、すなわち開口20側(後述する半導体層)に向かって突出するように断面逆V字状に湾曲形成された屈曲部24が各々設けられている。また、屈曲部24の頂点24aから開口20までの距離S2は、半導体基板15の厚みt1よりも若干大きく形成されている。
【0044】
一方、中空部21内に収容される半導体基板15は、
図7(b)に示すように4枚の板状金属部材14の屈曲部24にそれぞれ対応する位置に半田層28を有するパッド27が設けられている。
【0045】
そして、この変形例でも、半導体基板15は、半田層28を有するパッド27が設けられている面(下面15a)を下向きにして樹脂製フレーム19の中空部21内に自重で落とし込まれて、中空部21内に埋設する状態にして収容される。すると、半田層28及びパッド27が板状金属部材14の屈曲部24と各々対応されて、屈曲部24が半田層28及びパッド27を介して半導体基板15の下面15aと当接する。そして、半導体基板15が、中空部内21内で4枚の板状金属部材14の屈曲部で支えられる。また、この状態で、アンテナユニット11をリフロ炉(図示せず)に入れ、熱風を加えると半田層28が溶かされ、その後、冷やされることにより半田層28が固まり、半導体基板15と板状金属部材14とが電気的、機械的に固定される。
【0046】
この変形例の場合では、上記実施形態で設けていた台座22及び突出部23を省略して、4枚の板状金属部材14にそれぞれ設けた屈曲部24により半導体基板15を支えて電気的、機械的に固定することができる。また、2枚の板状金属部材14は、コイル18の引出線18a、18bに接続させ、残りの2枚の板状金属部材14を別の電気回路と接続させて使用することもできる。
【0047】
また、本発明は
図8に示すように変形して実施することも可能である。
図8に示す変形例は、同図(a)に示すように中空部21の対角線で結ばれる2つの角部に、それぞれ底面21aから開口20に向かって突出された台座22、及び台座22上に形成された突出部23を一体に設けている。この場合も、突出部23の上面23aと開口20までの距離S2は、半導体基板15の厚みt0と略同じに形成されている。さらに、板状金属部材14、14は、その中間部分14c、14cが、台座22が設けられている位置で、それぞれ中空部21内を左右方向に横切り、かつ接続端子14a、14aと反対側の他端14b、14b側を樹脂製フレーム19に埋め込ませた状態にして配設されている。また、中空部21内に配置された中間部分14c、14cには、半導体基板15が収容されてくる方向、すなわち本例では開口20側(言い換えれば、半導体基板15の半田層28側)に向かって突出するように断面逆V字状に湾曲形成された屈曲部24が形成されている。この屈曲部24は、台座22から所定の距離ずつ離れた互いに対称な位置に各々設けられている。また、屈曲部24の頂点24aから開口20面までの距離S2は、半導体基板15の厚みt1よりも若干大きく形成されている。
【0048】
一方、中空部21内に収容される半導体基板15は、
図8(b)に示すように2枚の板状金属部材14の屈曲部24にそれぞれ対応する位置に、半田層28を有するパッド27が設けられている。
【0049】
そして、この変形例でも、半導体基板15は、半田層28を有するパッド27が設けられている面(下面15a)を下向きにして樹脂製フレーム19の中空部21内に自重で落とし込まれて、中空部21内に埋設する状態にして収容される。すると、半田層28及びパッド27が板状金属部材14の屈曲部24と各々対応すると共に、中空部21内の突出部23、23が半導体基板15の下面15aと当接する。そして、半導体基板15が、中空部内21内で2枚の板状金属部材14の屈曲部24と2つの台座22上の突出部23でそれぞれ同時に支えられる。また、この状態で、アンテナユニット11をリフロ炉(図示せず)に入れ、熱風を加えると半田層28が溶かされ、その後、冷やされると半田層28が固まり、半導体基板15と板状金属部材14とが電気的、機械的に固定される。
【0050】
図9は、中空部21の変形例を示すものである。
図2〜
図8に示した中空部21では、4つの内側面が連続している切れ目のない凹所として形成された構造を開示したが、
図9に示す中空部21では、一内側面に外側面まで繋がる切欠部29を設けた構造にしたものである。このような構造にすると、中空部21の開口20の大きさが半導体基板15の面積よりも小さいような場合でも、その切欠部29で開口20が拡がり、半導体基板15との誤差等を吸収することができる。また、半導体基板15と樹脂製フレーム19の熱膨張も吸収することができる。
【0051】
図10は、板状金属部材14に設けられる屈曲部24の変形例を示すものである。
【0052】
図10の(a)は屈曲部24を形成しているV字の天井部分24bを平面状に形成し、その天井部分24bが半田層28と面で当接するようにしたものである。この形状では、屈曲部24が半田層28内に浸入して行く時間を遅らせるように調整することができる。
【0053】
図10の(b)は、(a)を変形したもので、天井部分24bに上下方向にする貫通孔30を設けたものである。この形状では、溶けた半田層28が貫通孔30内に入り込み、屈曲部24との一体化を図ることができる。
【0054】
図10の(c)は、同じく(a)を変形したもので、天井部分24bに上下方向に貫通する切欠孔31を設けたものである。この形状も、溶けた半田層28が切欠孔31内に入り込み、屈曲部24との一体化を図ることができる。
【0055】
図10の(d)は屈曲部24を弓状をした曲面に形成し、半田層28と曲面で当接するようにしたものである。この形状でも、その屈曲部24が半田層28内に浸入して行く時間を遅らせるように調整することができる。
【0056】
また、さらに変形例としては、実施形態では、リフロ半田処理において、屈曲部24が溶かされた半田層28内に、半導体基板15の自重により浸入して接続することを開示したが、反対に、樹脂製フレーム19の自重を利用して接続することも可能である。
【0057】
以上の実施形態に係る電子部品によれば、板状金属部材と半導体基板とを組み付ける際、半導体基板の表面に形成されたパッド等の電気接続領域部に設けた半田層を介して、板状金属部材が半導体基板を支持し、この状態で半田層を溶かす。すると、溶けた半田層の一部が板状金属部材と電気接続領域部との間に流れ込み、板状金属部材と半導体基板との間を電気的に接続する。また、その後、半田層を固まらせると板状金属部材と電気接続領域部が互いに電気的、機械的に接続固定された電子部品が容易に得られる。
【0058】
板状金属部材に屈曲部を設けた場合、半田層が溶けると、半田層に向けて突出されている屈曲部が半田層内に入り込み、その溶けた半田が屈曲部の周辺に回り込み、また半田層が固まった後には、板状金属部材と半導体基板との安定した電気接続並びに固定が実現できる。
【0059】
樹脂製フレームが半導体基板を収容する中空部を有する場合、樹脂製フレームの中空部内に半導体基板を収容配置すると、半導体基板が樹脂製フレームに位置決めされ、板状金属部材と半導体基板との電気接続並びに固定を安定して行うことができる。
【0060】
板状金属部材が銅合金またはステンレス鋼製で、かつ、ビッカース硬さが50Hv以上300Hv以下である場合、そのような板状金属部材を使用して半導体基板を支えることにより、板状金属部材が半導体基板を安定的に支えることができる。これにより、板状金属部材と半導体基板との電気接続並びに固定を安定して行うことができる。
【0061】
樹脂製フレームが中空部に延出している突出部を有している場合、中空部内に収容配置された半導体基板を、位置決め接触部と板状金属部材とで安定的に支え、なおかつ、板状金属部材と半導体基板との電気接続並びに機械的な固定を安定して行うことができる。
【0062】
以上の実施形態に係る電子部品の製造方法によれば、インサート成形工程において、板状金属部材の一端を埋め込んだ樹脂製フレームを形成し、半導体基板準備工程において、表面に電気接続領域部を有し、かつ該電気接続領域部の表面に半田層を有する半導体基板を用意し、半導体基板載置工程において、半田層を有する面が下向きで、半田層と板状金属部材の一部とが接するように、板状金属部材の上に半導体基板を自重により載置させ、その後、リフロ半田付け工程で、半田層を熱で溶かすと、半導体基板が自重で下がりながら、溶けた半田の一部が板状金属部材と電気接続領域部との間に流れ込み、板状金属部材と半導体の電気接続領域部との間を電気的に接続する。また、その後、半田層を固まらせると板状金属部材と電気接続領域部が互いに電気的及び機械的に接続された電子部品が容易に得られる。