【実施例1】
【0009】
図1は、第1の実施例におけるICカード処理装置の構成を示す概略側面図である。
図1において、媒体処理装置としてのICカード処理装置2は、カード挿入排出口2aと、インサータ部21と、切替部22と、カードリーダ部23と、ICR/W(ICカードRead/Write)部24と、回収部25と、リライト印字部26と、ホッパ部27と、ピッカローラ28と、取忘取込部30と、各部を結びICカード3を搬送する搬送路31と、制御部32とにより構成されている。
【0010】
インサータ部21は、図中一点鎖線で囲まれた部分であり、カード挿入排出口2aから挿入されたカードを装置内に引き込むものである。また、インサータ部21は、情報の読取りまたは書込みを行い、また印字が終了したカードをカード挿入排出口2aから排出する。なお、インサータ部21には、カードの磁気ストライプの有無を検知する磁気ヘッドやICカードであるか否かを判別するためのセンサを備えている。
【0011】
搬送切替部としての切替部22は、搬送路31の一部として分岐部に配置され、ICカードの搬送方向に対して直交する回動軸を有しており、回動軸を中心に回動してインサータ部21により引き込んだICカードの搬送先を切り替えて搬送するものであり、ICカードの搬送先をカードリーダ部23、ICR/W部24、回収部25または取忘取込部30へと切り替える。
なお、切替部22は、回動軸を中心に回動してICカードの搬送先を切り替えて搬送するとしたが、それに限られることなく、ICカードの搬送方向に対して直交する方向(図中上下方向)に移動してICカードの搬送先を切り替えて搬送するようにしてもよい。
【0012】
カードリーダ部23は、カードの磁気ストライプに記録された情報の読取り、または情報の磁気ストライプへの書き込みを行うものである。このカードリーダ部23には、インサータ部21で磁気ストライプを有するカードであると判別されたカードが搬送される。
ICR/W部24は、ICカードに備えられたICチップに対して情報の読取りまたは書込みを行うものである。このICR/W部24には、インサータ部21で判別されたICカードやホッパ部27から繰り出されたICカードが搬送され、そのICカードのICチップに対して情報の読取りまたは書込みが行われる。
回収部25は、使用済みの旧ICカードを収容するものであり、切替部22で搬送先が切り替えられ、搬送されたICカードを収容するものである。
【0013】
リライト印字部26は、印字ヘッド26aおよび消去ヘッド26bを備え、ICカードの表面に形成されたリライト面に印字や印字された文字等の消去を行うものである。このリライト印字部26には、インサータ部21で判別されたICカードやホッパ部27から繰り出されたICカードが搬送され、そのICカードのリライト面に印字し、また印字された文字等を消去する。
ホッパ部27は、ICカード処理装置2に対して着脱可能に構成され、新規のICカードを予め収納しておく収納部である。このホッパ部27は、リライト印字部26の奥部に配設され、底部に形成された開口部から収納したICカードを搬送路31に搬出することができるようになっている。
【0014】
ピッカローラ28は、ホッパ部27の底部に形成された開口部を介してホッパ部27に収納されたICカードに接触するように配設され、駆動手段としてのモータからの駆動で回転することにより、ホッパ部27に収容されたICカードを搬送路31へ繰り出すことができるようになっている。
取忘取込部30は、カード挿入排出口2aから排出したカードが所定時間を経過しても受け取られない場合、そのカードを引き込み、収容するものである。
制御部32は、CPU等で構成され、メモリ等の記憶部に記憶された制御プログラム(ソフトウェア)に基づいてICカード処理装置2全体の動作を制御する。
【0015】
また、制御部32は、切替部22がICカードをインサータ部21などの搬送先へ搬送する際に、搬送路31のICカードの詰まりを検知し、切替部22を制御するものであり、ICカードの詰まりを検知したとき、切替部22を回動させる。
この場合、制御部32は、切替部22を回動させる方向を後述する
図4(a)または
図5(a)に示すようにICカードの上面方向もしくは下面方向とし、わずかにそれぞれの方向に回動させ、搬送先の搬送路31に対する角度を変更させる。
なお、この制御部32が行う切替部22の回動については後述する。
【0016】
図2は、第1の実施例におけるICカード書き換え処理の説明図である。
図2に示すように、ICカード処理装置2は、ICカード3がインサータ部21のカード挿入排出口2aから挿入され、インサータ部21でICカード3と判別されると、ICR/W部24でICカード3のICチップから情報の読取りを行う。その後、ICカード3のICチップに対して情報の書き換えを行い、印字が必要な場合はICカード3をリライト印字部26へ搬送し、消去ヘッド26bでICカードのリライト面に印字されている内容を消去し、印字ヘッド26aでICカード3のリライト面に新たな印字内容を印字する。新たな印字内容が印字されたICカード3は、インサータ部21へ搬送されてカード挿入排出口2aから排出される。
【0017】
また、ICカード処理装置2は、ICカード3を新規に発行するとき、予めICカード3が収納されたホッパ部27から1枚のICカード3をピッカローラ28により繰り出してICR/W部24へ搬送し、ICR/W部24で情報の書込みを行う。印字が必要な場合はICカード3をリライト印字部26へ搬送し、印字ヘッド26aでICカード3のリライト面に新たな印字内容を印字する。新たな印字内容が印字されたICカード3は、インサータ部21へ搬送されてカード挿入排出口2aから排出される。
【0018】
次に、インサータ部21および切替部22の構成について、
図3に基づきながら説明する。
図3は、第1の実施例における第1のリトライ戻し搬送の説明図である。
図3において、インサータ部21および切替部22は、カード挿入排出口2aから挿入された物がICカード3であるか否かを判別する検知センサと、ICカード3を搬送する搬送ローラ対とにより構成されている。インサータ部21には、さらにICカード3の磁気ストライプの有無を検知する磁気ヘッドも備えている。
【0019】
インサータ部21は、検知センサ214から図中矢印Bで示す排出方向における下流側へ向かって、検知センサ213、搬送ローラ対216、検知センサ212、磁気ヘッド217および218、搬送ローラ対215、検知センサ211の順に、搬送路31に沿って配置されている。
切替部22は、検知センサ223から図中矢印Bで示す排出方向における下流側へ向かって、搬送ローラ対225、検知センサ222、搬送ローラ対224、検知センサ221の順に、搬送路31に沿って配置されている。
【0020】
この切替部22は、ICチップが記憶する情報の書き換え、あるいは、リライト面に再印字するなどの処理を行ったICカード3をカード挿入排出口2aへ排出する際、図中点線で示す位置でICカード3が詰まり、制御部32がジャム(詰まり)監視時間を超えたと判定したとき、制御部32の指示にしたがって第1のリトライ戻し搬送を行い、図中実線で示す位置にICカード3を逆搬送した後、リトライ搬送を行うものである。
なお、ジャム監視時間とは、ICカード3が詰まっているか否かを判断する基準の時間であり、この場合においては検知センサ221がICカード3を検知したときから図示せぬタイマーが計測を開始する。
【0021】
また、「搬送ローラ対224がインサータ部21の搬送ローラ対216にICカード3を搬送できない」状態とは、搬送ローラ対224の搬送力が搬送ローラ対216の負荷よりも小さい状態となっている。
この要因としては、例えば、ICカード3が反っているため、搬送ローラ対216がICカード3を挟持できない場合や、ICカード3が汚れているため、搬送ローラ対224が滑り、搬送力が低下した場合などが考えられる。
【0022】
上述のような場合、つまり、切替部22がICカード3をインサータ部21へ搬送する際に、搬送路31のICカード3の詰まりを検知したとき、制御部32は、切替部22を回動させる前に、搬送ローラ対216の手前まで搬送した図中点線で示すICカード3を図中矢印Aで示す挿入方向へ戻して逆搬送させ、図中実線で示すようにICカード3が切替部22内の搬送路31に収まるまで搬送し、切替部22にICカード3を戻す(第1のリトライ戻し搬送)。
また、切替部22は回動軸22aを有しており、制御部32の指示にしたがって、モータなどの図示せぬ駆動部により回動するものである。
【0023】
次に、切替部22が回動することによるリトライ搬送についての説明を
図4および
図5に基づきながら説明する。
図4は、第1の実施例における1回目のリトライ搬送の説明図である。
図4(a)は切替部22が1回目のリトライ搬送を行っている状態を示しており、
図4(b)は
図4(a)で示した切替部22の1回目のリトライ搬送で搬送可能なICカード3の形状の例を示している。
【0024】
図4(a)において、
図3に示した第1のリトライ戻し搬送を行ったあと、切替部22は、図中矢印Cで示す媒体上面方向へ回動する。
すると、切替部22内の搬送路31は、インサータ部21内の搬送路31に対して所定の角度となる。
切替部22の搬送ローラ対224は、この状態でICカード3を図中矢印Bで示す排出方向へ搬送する(1回目のリトライ搬送)。
【0025】
このようにICカード3を搬送することにより、
図4(b)に示したように反っているICカード3が搬送ローラ対216に挟持されやすくなるため、ICカード3を円滑に搬送することができる。
また、ICカード3の表面の汚れが搬送ローラ対224に付着して滑り、ICカード3を搬送する搬送力が低減する場合でも、インサータ部21内の搬送路31の上面に押し当てられたICカード3に対する搬送ローラ対224の接触状態が変化することにより、搬送ローラ対224の搬送力の低減を抑制するため、ICカード3を円滑に搬送することができる。
【0026】
図5は、第1の実施例における2回目のリトライ搬送の説明図である。
図5(a)は切替部22が2回目のリトライ搬送を行っている状態を示しており、
図5(b)は
図5(a)で示した切替部22の2回目のリトライ搬送で搬送可能なICカード3の形状の例を示している。
図5(a)において、
図4(a)に示した1回目のリトライ搬送を行ったあと、切替部22は、図中矢印Dで示す媒体下面方向へ回動する。
すると、切替部22内の搬送路31は、インサータ部21内の搬送路31に対して所定の角度となる。
【0027】
切替部22の搬送ローラ対224は、この状態でICカード3を図中矢印Bで示す排出方向へ搬送する(2回目のリトライ搬送)。
2回目のリトライ搬送においても、1回目のリトライ搬送と同様に、
図5(b)に示したように反っているICカード3が搬送ローラ対216に挟持されやすくなるため、また、ICカード3を搬送する搬送力が低減する場合でも、インサータ部21内の搬送路31の下面に押し当てられたICカード3に対する搬送ローラ対224の接触状態が変化することにより、搬送ローラ対224の搬送力の低減を抑制するため、ICカード3を円滑に搬送することができる。
【0028】
上述した構成の作用について説明する。
リトライ搬送処理を
図6の第1の実施例におけるリトライ搬送処理の流れを表すフローチャートの図中Sで示すステップにしたがって
図3から
図5までを参照しながら説明する。
S101:制御部32は、切替部22からインサータ部21にICカード3が搬送されず、検知センサ221がICカード3を検知してからジャム監視時間を超えたと判定し、ICカード3のジャムを検出する。
S102:制御部32は、切替部22に第1のリトライ戻し搬送を行うように指示する。
【0029】
S103:制御部32は、切替部22に1回目のリトライ搬送を行うように指示する。
S104:制御部32は、各検知センサにより正常排出されたか否かを判定し、正常排出されていないと判定すると処理をS105へ移行し、正常排出されたと判定すると処理をS109へ移行する。
S105:制御部32は、切替部22に再度、第1のリトライ戻し搬送を行うように指示する。
S106:制御部32は、切替部22に2回目のリトライ搬送を行うように指示する。
【0030】
S107:制御部32は、各検知センサにより正常排出されたか否かを判定し、正常排出されていないと判定すると処理をS108へ移行し、正常排出されたと判定すると処理をS109へ移行する。
S108:制御部32は、排出リトライオーバーエラーとして係員にICカード3のジャムを警告灯などで報告し、本処理を終了する。
S109:制御部32は、インサータ部21にカード挿入排出口2aにICカード3を排出させ、ユーザがICカード3を受け取るのを待ち、本処理を終了する。
【0031】
以上説明したように、第1の実施例では、ICカードのジャムを検出した制御部が、切替部にICカードを戻して搬送させた後、搬送先の搬送路に対して所定の角度に切替部の搬送路を回動させるようにしたことにより、ICカードの反りに対応するとともに、切替部の搬送ローラの汚れによる搬送力の低減を抑制するようにしたため、媒体を円滑に搬送することができるという効果が得られる。
なお、第1の実施例では、ICカードを切替部からインサータ部に搬送し、カード挿入排出口へ排出する場合を例として説明したが、それに限られることなく、挿入されたICカードを切替部からICR/W部などに搬送する場合に適用することも可能であり、また、挿入されたICカードをインサータ部などから切替部に搬送する場合に適用することも可能である。
【実施例2】
【0032】
本実施例におけるインサータ部21は、第2のリトライ戻し搬送を行い、ICカード3が反っている場合やICカード3の表面の汚れが搬送ローラ対216に付着して滑り、ICカード3を搬送する搬送力が低減する場合においても、第1の実施例の第1のリトライ戻し搬送を行うことなく、ICカード3をカード挿入排出口2aへ搬送できるようにするものである。
【0033】
図7は、第2の実施例における第2のリトライ戻し搬送の説明図である。
なお、インサータ部21および切替部22の構成は上述した第1の実施例と同様であるため、同一の符号を付してその説明を省略する。
図7において、インサータ部21は、ICチップが記憶する情報の書き換え、あるいは、リライト面に再印字するなどの処理を行ったICカード3をカード挿入排出口2aへ排出する際、図中点線で示す位置でICカード3が詰まり、制御部32がジャム監視時間を超えたと判定したとき、第2のリトライ戻し搬送を行うものである。
【0034】
この場合においては、検知センサ212がICカード3を検知したときから図示せぬタイマーが計測を開始し、制御部32がジャム監視時間を超えたか否かを判定する。
また、図中点線で示す位置でICカード3が詰まる要因としては、例えば、搬送ローラ対216に搬送する際に搬送ローラ対224がICカード3の汚れなどで滑ることにより時間が掛かったため、搬送ローラ対216がICカード3を搬送し始めたところでジャム監視時間を超えてしまったことなどが考えられる。
【0035】
上述のような場合、つまり、切替部22がICカード3を搬送先へ搬送する際に、搬送路31のICカード3の詰まりを検知したときであって、搬送先がICカード3を受け取っているときに、制御部32は、インサータ部21に、磁気ヘッド217および218の手前まで搬送した図中点線で示すICカード3を挟持して受け取った状態を維持しながら、図中矢印Aで示す挿入方向へ逆搬送させて戻す(第2のリトライ戻し搬送)。
このようにICカード3を搬送することにより、第1の実施例の第1のリトライ戻し搬送を行って切替部22までICカード3を戻し、再度搬送ローラ対216に挟持させることなく、搬送ローラ対216がICカード3を挟持した状態から搬送を行い、再度ジャム監視時間を超える確率は少なくなるため、ICカード3を円滑に搬送することができる。
【0036】
上述した構成の作用について説明する。
リトライ搬送処理を
図8の第2の実施例におけるリトライ搬送処理の流れを表すフローチャートの図中Sで示すステップにしたがって
図7を参照しながら説明する。
切替部22が行うリトライ処理を
図6の第1の実施例におけるリトライ搬送処理の流れを表すフローチャートの図中Sで示すステップにしたがって
図6および
図7を参照しながら説明する。
S201:
図6におけるS101と同様の処理であるため説明を省略する。
【0037】
S202:制御部32は、搬出ローラ対216の排出方向における上流側に配置されている検知センサ213がICカード3を検知しているか否かを判定し、検知している(検知センサON)と判定すると処理をS203へ移行し、検知していない(検知センサOFF)と判定すると処理をS209へ移行する。
S203:制御部32は、搬出ローラ対216の排出方向における下流側に配置されている検知センサ212がICカード3を検知しているか否かを判定し、検知している(検知センサON)と判定すると処理をS204へ移行し、検知していない(検知センサOFF)と判定すると処理をS209へ移行する。
【0038】
S204:制御部32は、搬送ローラ対216に第2のリトライ戻し搬送を行うように指示する。
S205:制御部32は、各検知センサによりICカード3が正常排出されたか否かを判定し、正常排出されていないと判定すると処理をS207へ移行し、正常排出されたと判定すると処理をS206へ移行する。
S206:正常排出されたと判定した制御部32は、インサータ部21にカード挿入排出口2aへICカード3を排出するように指示し、ユーザがICカード3を受け取るのを待ち、本処理を終了する。
【0039】
S207:制御部32は、ジャム監視時間を超えたか否かを判定し、ジャム監視時間を超えたと判定するとリトライオーバーとして処理をS208へ移行し、ジャム監視時間を超えていないと判定すると処理をS204へ移行する。
S208:制御部32は、排出リトライオーバーエラーとして係員にICカード3のジャムを警告灯などで報告し、本処理を終了する。
S209〜S216:
図6におけるS102〜S109と同様の処理であるため説明を省略する。
【0040】
以上説明したように、第2の実施例では、インサータ部の搬送ローラ対がICカードを挟持した状態から再度搬送を行うことにより、ジャム監視時間を超える確率は少なくなるため、媒体を円滑に搬送することができるという効果が得られる。
なお、第2の実施例では、インサータ部の搬送ローラ対を例として説明したが、それに限られることなく、リライト印字部の搬送ローラ対などに適用することも可能である。