【実施例1】
【0010】
まず、構成を説明する。
実施例1のロータ軸芯冷却構造の構成を、[インホイールモータ駆動ユニットの全体構成]、[ロータ軸芯冷却構造の詳細構成]に分けて説明する。
【0011】
[インホイールモータ駆動ユニットの全体構成]
図1は、実施例1のロータ軸芯冷却構造を備えたインホイールモータ駆動ユニットIWMを示す。以下、
図1に基づき、インホイールモータ駆動ユニットIWMの全体構成を説明する。
【0012】
前記インホイールモータ駆動ユニットIWMは、
図1に示すように、ユニットケース1と、モータ制御ユニット2と、モータ/ジェネレータ3(モータ)と、平行軸ギヤ対4と、減速遊星ギヤ5と、タイヤ軸6と、を備えている。そして、自然空冷によるモータ/ジェネレータ3のロータ軸31のロータ軸中心線CLmを、タイヤ軸6のタイヤ軸中心線CLtに対して車両上方(
図1の矢印UP)にオフセット配置している。
【0013】
前記ユニットケース1は、ナックルアーム71を介して図外の車体に対し転舵可能に支持されている。このユニットケース1は、制御ユニットカバー11と、制御ユニットケース12と、仕切り壁ケース13と、モータケース14と、減速機ケース15と、を互いにボルト結合して構成される。ユニットケース1のうち、制御ユニットカバー11と制御ユニットケース12とモータケース14の外周面には、走行風により冷却する空冷フィン11a,12a,14aがそれぞれ突設されている。ナックルアーム71は、減速機ケース15に固定されていて、その下端部にロアアームが連結され、その上端部にアッパアームが連結され、アッパピボット及びロアピボットを通るキングピン軸を中心として転舵可能にユニットケース1を支持している。ユニットケース1の内部室は、制御ユニット室16と、モータ室17と、ギヤ室18と、に画成されている。
【0014】
前記モータ制御ユニット2は、制御ユニットカバー11と制御ユニットケース12と仕切り壁ケース13により囲まれた制御ユニット室16(ドライ空間)に設定される。このモータ制御ユニット2は、モータコントローラやインバータやコンバータ等のモータ/ジェネレータ3を制御する制御機器類により構成される。モータ制御ユニット2を設定した制御ユニット室16は、空冷フィン11a,12aにより自然空冷が確保されていると共に、仕切り壁ケース13を介してモータ室17と隣接配置されている。
【0015】
前記モータ/ジェネレータ3は、仕切り壁ケース13とモータケース14により囲まれたモータ室17(ドライ空間)に設定される。このモータ/ジェネレータ3は、ロータ軸31と、ロータコア32と、ステータ33と、ステータコイル34と、を有して構成される。ロータ軸31は、ベアリング35,36により仕切り壁ケース13とモータケース14に対し回転可能に支持されている。ロータコア32は、ロータ軸31の外周に固定され、永久磁石を埋設した積層鋼板により構成される。ステータ33は、モータケース14に固定されると共に、ロータコア32とエアギャップを介して配置され、ステータコイル34を巻き付けた積層のステータティースにより構成される。すなわち、三相交流の電流をステータコイル34に印加することでロータ軸31を回転させ(力行)、或いは、ロータ軸31の回転によりステータコイル34に三相交流の電流を発生させる(回生)。なお、ロータ軸31のモータ制御ユニット2側の端部位置には、モータ回転角度を検出するレゾルバ39が設けられている。
【0016】
前記平行軸ギヤ対4は、モータケース14の一部と減速機ケース15により囲まれたギヤ室18(ウェット空間)のうち、モータケース14と減速機ケース15のボルト連結部の位置に設定される。この平行軸ギヤ対4は、ロータ軸31の端部に形成された入力ギヤ41と、入力ギヤ41に噛み合うと共に入力ギヤ41より大径とした出力ギヤ42と、出力ギヤ42を一体に有する出力ギヤ軸43と、を有する減速ギヤである。出力ギヤ42は、ユニットケース1のうちタイヤ軸中心線CLtより下部位置に形成された冷媒タンク44の冷媒(オイル)に一部浸漬して配置される。出力ギヤ軸43は、モータ側軸端部がモータケース14に対しベアリング45を介して回転可能に支持され、ホイール側軸端部がタイヤ軸6に対しベアリング46を介して回転可能に支持される。なお、出力ギヤ軸43には、その軸芯位置に貫通軸芯油路47が形成されている。
【0017】
前記減速遊星ギヤ5は、モータケース14の一部と減速機ケース15により囲まれたギヤ室18(ウェット空間)のうち、平行軸ギヤ対4と隣接する減速機ケース15側の位置に設定される。この減速遊星ギヤ5は、出力ギヤ軸43に一体に有するサンギヤ51と、サンギヤ51に噛み合う複数のピニオン52と、ピニオン52を支持するピニオンキャリア53と、ピニオン52と噛み合うと共に減速機ケース15に固定されたリングギヤ54と、を有する。すなわち、リングギヤ54をケース固定にすることで、サンギヤ51からの入力回転を減速してピニオンキャリア53に出力する減速ギヤ機構である。減速遊星ギヤ5の回転中心軸は、出力ギヤ42とタイヤ軸6の回転中心軸(タイヤ軸中心線CLt)と一致させた同軸配置とされている。
【0018】
前記タイヤ軸6は、減速遊星ギヤ5のピニオンキャリア53と一体に形成され、軸端部を減速機ケース15から外部(OUT)に突出させたユニット出力軸である。このタイヤ軸6の減速遊星ギヤ5側の一端部は、減速機ケース15に対しベアリング61とメカニカルシール62により、回転可能に油密状態で支持されている。タイヤ軸6の外部に突出させた他端部には、ホイールハブ軸72がセレーション結合されている。ホイールハブ軸72は、ナックル71にボルト固定されるナックルケース73に対し、複列アンギュラベアリング構造によるハブベアリング74により回転可能に支持される。ホイールハブ軸72のフランジ部72aには、図外のブレーキディスク及びタイヤホイールが固定される。
【0019】
[ロータ軸芯冷却構造の詳細構成]
図2は、実施例1のロータ軸芯冷却構造8を示し、
図3〜
図6は、実施例1のロータ軸芯冷却構造8の各構成要素を示す。以下、
図2〜
図6に基づき、実施例1のロータ軸芯冷却構造8の詳細構成を説明する。
【0020】
前記ロータ軸芯冷却構造8は、出力ギヤ42を、ユニットケース1のうちタイヤ軸中心線CLtより下部位置に形成された冷媒タンク44の冷媒に一部浸漬して配置し、出力ギヤ42により掻き上げられた冷媒によりロータ軸31を冷却する構造である(
図1)。このロータ軸芯冷却構造8は、
図2〜
図6に示すように、内周流路81と、外周流路82と、冷媒入口83と、冷媒出口84と、冷媒折り返し部85と、スペーサ部材86と、テンションリング87(バネ部材)と、冷媒供給カラー部材88と、を有する。
【0021】
前記内周流路81は、ロータ軸31を、内筒37と外筒38が同じ速度で回転する二重筒構成とし、内筒37の内周面により形成している。内筒37の内周面には、
図2に示すように、
図2の矢印Dに示す内周流路81の下流に向けて流路断面積が大きくなる内筒勾配37aを設けている。そして、内筒37の内周面には、
図4に示すように、軸方向に延びる凹凸部37bを設けている。
【0022】
前記外周流路82は、ロータ軸31を、内筒37と外筒38が同じ速度で回転する二重筒構成とし、内筒37の外周面と外筒38の内周面との円筒状隙間により形成している。外筒38の内周面には、
図2の矢印Eに示す外周流路82の下流に向けて流路断面積が大きくなる外筒勾配38aを設けている。この外筒勾配38aは、
図2に示すように、内筒勾配37aよりも緩勾配に設定している。
【0023】
前記冷媒入口83は、冷媒を、
図2の矢印Cに示すように、内周流路81に導く開口であり、軸方向に形成された内周流路81の入力ギヤ41側端部の流路部分としている。この冷媒入口83には、減速機ケース15に固定された冷媒供給カラー部材88が、ロータ軸端面から冷媒入口83と重なり合う位置まで突出配置されている。この冷媒供給カラー部材88には、出力ギヤ42により掻き上げられた冷媒が、キャッチャや冷媒路等による図外の冷媒導入構造を介して供給される。
【0024】
前記冷媒出口84は、入力ギヤ41の隣接位置で、外周流路82とギヤ室18を連通するように径方向に開けられた開口であり、外周流路82を通ってきた冷媒を、
図2の矢印F方向(径方向)に吐き出す。この冷媒出口84と冷媒入口83は、ロータ軸31の入力ギヤ41側の隣接する位置に配置される。
【0025】
前記冷媒折り返し部85は、内周流路81を通過した冷媒の流れを、反対方向の外周流路82に向かう流れとする部分であり、ロータ軸31のうち、冷媒入口83と冷媒出口84が開口された入力ギヤ41側とは反対の他端側に形成される。実施例1の冷媒折り返し部85は、ロータ軸31の軸芯位置に入力ギヤ41側端面から開孔された有底孔の底部分とされている。この冷媒折り返し部85のうち、内周通路81からの冷媒が衝突する位置に、冷媒流れの向きを変える冷媒返し面85aが設けられる。この冷媒返し面85aは、軸方向の速度を持った内周通路81からの冷媒が衝突した際に、外径方向に向かう速度成分が生成されるような勾配面を持つ(
図6参照)。
【0026】
前記スペーサ部材86は、
図3に示すように、冷媒折り返し部85側の内外筒37,38が接触する位置に、冷媒の通過を許容する部材として等間隔に複数個介装される。このスペーサ部材86は、内筒37の端部外周面に固定され、
図5に示すように、外筒勾配38aと同じ勾配を持つ。そして、外筒38との接触外径を、外筒38の内周径よりも僅かに径を大きく作成し、内筒37を外筒38に挿入する際に、外筒38の内周面に押し当てるように組み立てられる。
【0027】
前記テンションリング87は、外周流路82での冷媒通過を許容するバネ部材であり、内筒37と外筒38の間に形成される外周流路82のスペーサ部材86から冷媒出口84までの流路全体に介装される。このテンションリング87は、
図4に示すように、金属製の波形状であり、かつ、バネ力で内外筒37,38に押し当てることでそれ自身の位置を保持する部材である。
【0028】
次に、作用を説明する。
まず、実施例1のモータ/ジェネレータ3は自然空冷であり、平行軸ギヤ対4と減速遊星ギヤ5による減速機構は、冷媒掻き上げ潤滑である。このように、モータ/ジェネレータ3が空冷モータの場合、高回転時にロータコア32の温度が上昇しやすく、ロータ軸芯に冷媒を流して冷却を促進する必要がある。
【0029】
また、ロータ軸31を二重筒構成の軸芯とした場合は、冷媒の折り返しが必要となる。この冷媒折り返し部85において衝突流が発生することにより流路抵抗が増大し、冷媒流量が低下してしまうため、冷却性能が低下してしまう。さらに、二重筒構成とすることで軸芯表面積は増加するが、内筒37は発熱部であるロータコア32から遠いため、冷却面として有効に使えない。以下、上記課題を解決するロータ軸芯冷却構造8によるロータコア32の冷却作用を説明する。
【0030】
実施例1のロータ軸芯冷却構造8は、ポンプにより冷媒を圧送していないため、冷媒供給量が少なく、軸芯内は冷媒が充満している状態にはならず、
図2に示すように、遠心力によって内筒37と外筒38の内周面に冷媒が張り付きながら流れる。すなわち、冷媒入口83に供給された冷媒は(
図2の矢印C)、内周流路81の内筒勾配37aに沿って軸方向に流れて冷媒折り返し部85に到達する(
図2の矢印D)。そして、冷媒折り返し部85にて流れの方向を反対方向に変え、外周流路82の入り口から外筒勾配38aに沿って軸方向に流れ(
図2の矢印E)、冷媒出口84から排出される(
図2の矢印F)。
このように、出力ギヤ42により掻き上げられた冷媒を、冷媒入口83→内周流路81→冷媒折り返し部85→外周流路82→冷媒出口84へと効率的に流すことで、高回転時に温度が上昇しやすいロータコア32を冷却することができる。
【0031】
上記のように、実施例1では、ロータ軸31を、内筒37と外筒38が同じ速度で回転する二重筒構成とすることで、内周流路81と外周流路82を形成した。そして、内筒37の内周面に流路断面積が大きくなる内筒勾配37aを設け、外筒38の内周面に流路断面積が大きくなる外筒勾配38aを設け、かつ、外筒勾配38aを内筒勾配37aよりも緩勾配に設定する構成とした。
すなわち、ロータ軸31の回転時、外周流路82の冷媒には、内周流路81の冷媒に比べて大きな遠心力が働き、外筒勾配38aと内筒勾配37aを同じ勾配とした場合、外周流路82の冷媒流速が速くなる。これに対し、外筒勾配38aを内筒勾配37aよりも緩勾配に設定したことで、内周流路81の冷媒流速と外周流路82の冷媒流速の均一化が図られると共に、外周流路82への入口断面積を広くとることができる。これによって、冷媒が受ける流路抵抗が低減され、ロータ軸芯を流れる冷媒流量、特に冷却面として有効に使える外周流路82を流れる冷媒流量の増加が促進される。
このように、ロータ軸芯を流れる冷媒流量の増加を促進することで、ロータコア32の冷却性能を向上することができる。
【0032】
実施例1では、内筒37と外筒38の間に形成される外周流路82に、冷媒の通過を許容するテンションリング87を押付け介装する構成とした。このテンションリング87は、
図4に示すように、バネの力によって内筒37と外筒38に密着し保持されており、金属製である。
これにより、外筒38から内筒37へのテンションリング87を介した伝熱と、テンションリング87そのものによる放熱が可能となる。
したがって、発熱部であるロータコア32に近い外筒38から内筒37への伝熱が促進され、内筒37も冷却面として作用するようになる。加えて、テンションリング87自体が冷媒中に配置されるため熱交換器の役割を果たす。この結果、ロータコア32の冷却性能が向上する。
【0033】
実施例1では、冷媒折り返し部85側の内外筒37,38が接触する位置に、冷媒の通過を許容するスペーサ部材86を介装する構成とした。
すなわち、冷媒折り返し部85の内外筒37,38が接触する部位の接触性を、スペーサ部材86により良くすることで、冷媒折り返し部85の乱れた流れを冷却に有効利用することができる。
したがって、冷媒流れに乱れが発生する冷媒折り返し部85に近い部位において、外筒38から内筒37への伝熱が促進され放熱面積が増大するので、冷媒折り返し部85での乱れた流れ(
図2の矢印G)の熱伝達率向上を有効に使うことができる。この結果、ロータコア32の冷却性能が向上する。
【0034】
実施例1では、内筒37の内周面に軸方向に延びる凹凸部37bを設ける構成とした。
すなわち、凹凸部37bを設けることで、回転軸であるロータ軸31の回転エネルギーが無駄なく冷媒に伝達されるため、冷媒の回転速度が増加し、それに伴い冷媒に作用する遠心力も増大する。
したがって、内周流路81を通過する冷媒に作用する遠心力の増大により冷媒流速が増加するため、冷却性能が向上する。
【0035】
実施例1では、冷媒折り返し部85のうち、内周通路81からの冷媒が衝突する位置に、冷媒流れの向きを変える冷媒返し面85aを設ける構成とした。
すなわち、
図6(a)に示す冷媒返し面85aを有さない比較例の場合は、内周に向かう冷媒の流れ(矢印H方向)が発生してしまう。これに対し、
図6(b)に示す冷媒返し面85aを有する実施例1の場合は、冷媒の衝突速度から外周側へと向かう速度成分(矢印I方向)が生成される。
したがって、冷媒折り返し部85において衝突流が発生した際、内周面へと向かう流れを抑制し、外周面へと向かう流れを生成できる。このため、流路抵抗が低減し、冷媒流量の増加を可能とするため、冷却性能が向上する。
【0036】
次に、効果を説明する。
実施例1のロータ軸芯冷却構造8にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0037】
(1) モータ(モータ/ジェネレータ3)のロータ軸芯に冷媒を供給し、前記モータ(モータ/ジェネレータ3)のロータコア32を冷却するロータ軸芯冷却構造8において、
前記ロータ軸31を、内筒37と外筒38が同じ速度で回転する二重筒構成とし、前記内筒37の内周面により内周流路81を形成し、前記内筒37の外周面と前記外筒38の内周面との円筒状隙間により外周流路82を形成し、
前記ロータ軸31の一端側の隣接位置に、前記内周流路81に冷媒を供給する冷媒入口83と、前記外周流路82からの冷媒を排出する冷媒出口84と、を配置し、
前記ロータ軸31の他端側に、前記内周流路81を通過した冷媒の流れを、反対方向の前記外周流路82に向かう流れとする冷媒折り返し部85を形成し、
前記内筒37の内周面に、前記内周流路81の下流に向けて流路断面積が大きくなる内筒勾配37aを設け、
前記外筒38の内周面に、前記外周流路82の下流に向けて流路断面積が大きくなる外筒勾配38aを設け、かつ、前記外筒勾配38aを前記内筒勾配37aよりも緩勾配に設定した(
図2)。
このため、ロータ軸芯を流れる冷媒流量の増加を促進することで、ロータコア32の冷却性能を向上することができる。
【0038】
(2) 前記内筒37と前記外筒38の間に形成される前記外周流路82に、冷媒の通過を許容するバネ部材(テンションリング87)を介装し、
前記バネ部材(テンションリング87)は、金属製であり、かつ、バネ力で前記内外筒に押し当てることでそれ自身の位置を保持する部材である(
図4)。
このため、(1)の効果に加え、内筒37が冷却面として作用するのに加えて、テンションリング87自体が熱交換器の役割を果たすことで、ロータコア32の冷却性能をさらに向上させることができる。
【0039】
(3) 前記冷媒折り返し部85側の前記内外筒37,38が接触する位置に、冷媒の通過を許容するスペーサ部材86を介装し、
前記スペーサ部材86は、前記外筒勾配38aと同じ勾配を持ち、前記外筒38との接触外径を、前記外筒38の内周径よりも僅かに径を大きく作成し、前記内筒37を前記外筒38に挿入する際に、前記外筒38の内周面に押し当てるように組み立てる(
図3,5)。
このため、(1)又は(2)の効果に加え、冷媒折り返し部85での乱れた流れをスペーサ部材86により熱伝達率向上させながら有効に使うことで、ロータコア32の冷却性能をさらに向上させることができる。
【0040】
(4) 前記内筒37の内周面に軸方向に延びる凹凸部37bを設けた(
図4)。
このため、(1)〜(3)の効果に加え、内筒37の内周面に設けた凹凸部37bにより内周流路81を通過する冷媒流速が増加することで、ロータコア32の冷却性能をさらに向上させることができる。
【0041】
(5) 前記冷媒折り返し部85のうち、前記内周通路81からの冷媒が衝突する位置に、冷媒流れの向きを変える冷媒返し面85aを設け、
前記冷媒返し面85aは、軸方向の速度を持った前記内周通路81からの冷媒が衝突した際に、外径方向に向かう速度成分が生成されるような勾配面を持つ(
図6)。
このため、(1)〜(3)の効果に加え、流路抵抗の低減により冷媒流量の増加を可能とすることで、ロータコア32の冷却性能をさらに向上させることができる。
【実施例2】
【0042】
実施例2は、外筒38に冷媒溜まり部89を設けるとともに、排出する冷媒の一部を冷媒入口83に再供給するようにした例である。
【0043】
まず、構成を説明する。
図7は、実施例2のロータ軸芯冷却構造8を示し、
図8及び
図9は、
図7の断面A及び断面Bを示す。以下、
図7〜
図9に基づき、実施例2のロータ軸芯冷却構造8の詳細構成を説明する。
【0044】
前記ロータ軸芯冷却構造8は、
図7に示すように、内周流路81と、外周流路82と、冷媒入口83と、冷媒出口84と、冷媒折り返し部85と、スペーサ部材86と、冷媒供給カラー部材88と、冷媒溜まり部89と、を有する。
【0045】
前記冷媒出口84は、
図7に示すように、冷媒供給カラー部材88を設けた冷媒入口83がある軸端方向に傾けて設定される。
【0046】
前記冷媒溜まり部89は、
図7に示すように、外筒38の内周面のうちロータコア32が固定された近傍位置に設けられ、外周流路82を流れる冷媒を一時的に溜める。この冷媒溜まり部89は、外周流路82の内面を一部拡大した台形の断面形状とし、ロータコア32のロータ軸31への固定面に沿って軸方向幅が設定される。
なお、他の構成は、実施例1と同様であるので図示並びに説明を省略する。
【0047】
次に、作用を説明する。
実施例2では、冷媒出口84を、冷媒入口83がある軸端方向に傾けて設定する構成とした。
すなわち、冷媒出口84を冷媒入口83の軸端方向に傾けることで、冷媒出口84の流路抵抗が低減し、軸芯内の冷媒流量が増加する。また、冷媒出口84を冷媒入口83の軸端方向に傾けることで、冷媒入口83の近傍の減速機ケース15の壁面への冷媒付着を促進し、
図7の矢印J及び矢印Kに示すように、排出された冷媒が、冷媒供給カラー部材88との隙間を経過して再び冷媒入口83へ戻される。
したがって、冷媒出口84の流路抵抗が低減されるし、排出される冷媒の一部を回収することができることで、冷媒流量が増加し、冷却性能が向上する。
【0048】
実施例2では、外筒38の内周面のうちロータコア32が固定された近傍位置に、外周流路82を流れる冷媒を一時的に溜める冷媒溜まり部89を設ける構成とした。
すなわち、発熱部であるロータコア32の近傍に冷媒溜まり部89を設けることで、冷媒とロータコア32との距離が近くなるため、より冷却効率が高まる。なお、冷媒溜まり部89に高温の冷媒が滞留することで冷却効率が悪化することはない。なぜなら、冷媒の粘性により
図8の矢印Lで示すような循環流が発生するためである。さらに、低温の冷媒は高温の冷媒よりも密度が大きいためより大きな遠心力が働き、高温の冷媒を押しのけて常に外周側へと供給される。
したがって、冷媒溜まり部89を設けることで、発熱部であるロータコア32の近傍に冷媒を導くことができるため、冷却性能が向上する。なお、他の作用は、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0049】
次に、効果を説明する。
実施例2のロータ軸芯冷却構造8にあっては、下記の効果を得ることができる。
【0050】
(6) 前記外筒38の内周面のうち前記モータ(モータ/ジェネレータ3)のロータコア32が固定された近傍位置に、前記外周流路82を流れる冷媒を一時的に溜める冷媒溜まり部89を設けた(
図7)。
このため、(1),(3)の効果に加え、冷媒とロータコア32との距離が近くなり、冷却効率が高まることで、ロータコア32の冷却性能をさらに向上させることができる。
【0051】
(7) 前記冷媒出口84を、前記冷媒入口83がある軸端方向に傾けて設定した(
図7)。
このため、(1),(3),(6)の効果に加え、冷媒出口84での流路抵抗低減と冷媒の一部回収により冷媒流量が増加することで、ロータコア32の冷却性能をさらに向上させることができる。
【実施例3】
【0052】
実施例3は、冷媒出口84から排出される冷媒の回収量をより増大させるようにした例である。
【0053】
まず、構成を説明する。
図11は、実施例3のロータ軸芯冷却構造8を示し、
図12は、冷媒供給カラー部材88を示す。以下、
図11及び
図12に基づき、実施例3のロータ軸芯冷却構造8の詳細構成を説明する。
【0054】
前記ロータ軸芯冷却構造8は、
図11に示すように、内周流路81と、外周流路82と、冷媒入口83と、冷媒出口84と、冷媒折り返し部85と、スペーサ部材86と、冷媒供給カラー部材88と、を有する。
【0055】
前記冷媒出口84は、
図11に示すように、冷媒供給カラー部材88を設けた冷媒入口83がある軸端方向に傾けて設定される。
【0056】
前記冷媒供給カラー部材88は、
図11に示すように、冷媒入口83の位置に、内側通路81に冷媒を供給する部材として設けられる。この冷媒供給カラー部材88には、
図12に示すように、軸端面プレート面88aとカラー円筒面88bとの両方に冷媒案内溝88c,88dを設けている。この冷媒案内溝88c,88dは、ロータ正回転時(車両前進時:
図12の矢印M方向回転時)、内側通路81内へと冷媒を吸引するような放射状の溝としている(
図12の矢印N、矢印P)。なお、他の構成は、実施例1と同様であるので図示並びに説明を省略する。
【0057】
次に、作用を説明する。
実施例3では、冷媒供給カラー部材88の軸端面プレート面88aとカラー円筒面88bとの両方に、冷媒案内溝88c,88dを設ける構成とした。
すなわち、冷媒出口84を、冷媒入口83のある軸端方向に傾けることにより流路抵抗の低減が可能になるとともに、冷媒入口83へと繋がる減速機ケース15の壁面への冷媒付着を促進することができる。そして、ケース壁面に付着した冷媒が、冷媒供給カラー部材88の軸端面プレート面88aに供給されると、冷媒案内溝88cに導かれてカラー円筒面88bへと向かって吸引されるように冷媒が流れる。さらに、カラー円筒面88bへ流れた冷媒は、冷媒案内溝88dに導かれ冷媒入口83へと向かって吸引されるように冷媒が流れる。このように、冷媒の一部を、冷媒案内溝88c,88dにより効率良く回収することで、軸芯への冷媒流量を増加させることができる。なお、他の作用は、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0058】
次に、効果を説明する。
実施例3のロータ軸芯冷却構造8にあっては、下記の効果を得ることができる。
【0059】
(8) 前記冷媒入口83の位置に、前記内側通路81に冷媒を供給する冷媒供給カラー部材88を設け、
前記冷媒供給カラー部材88は、軸端面プレート面88aとカラー円筒面88bの少なくとも一方に冷媒案内溝88c,88dを設け、前記冷媒案内溝88c,88dを、ロータ正回転時(車両前進時)に、前記内側通路81内へと冷媒を吸引するような放射状の溝とした(
図12)。
このため、(7)の効果に加え、冷媒出口84から排出される冷媒を、冷媒供給カラー部材88の冷媒案内溝88c,88dにより効率良く回収し、軸芯への冷媒流量が増加することで、ロータコア32の冷却性能をさらに向上させることができる。
【0060】
以上、本発明のロータ軸芯冷却構造を実施例1〜実施例3に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0061】
実施例1〜3では、ロータ軸芯冷却構造8として、出力ギヤ42による掻き上げられた冷媒(オイル)をロータ軸芯に流す例を示した。しかし、ロータ軸芯冷却構造としては、循環する冷媒をロータ軸芯に流す例やオイルポンプから吐出されるオイルをロータ軸芯に流す例としても良い。
【0062】
実施例1〜3では、ロータ軸芯冷却構造8をインホイールモータ駆動ユニットIWMに適用する例を示した。しかし、本発明のロータ軸芯冷却構造は、インホイールモータ駆動ユニットIWM以外のモータ駆動ユニットや、ロータコアの冷却性が要求される様々なモータ駆動系に適用することができる。