(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6201679
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20170914BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20170914BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20170914BHJP
H01M 10/6568 20140101ALI20170914BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20170914BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20170914BHJP
H01M 10/633 20140101ALI20170914BHJP
【FI】
E02F9/20 Z
H01M10/48 301
H01M10/615
H01M10/6568
H01M10/625
H01M10/613
H01M10/633
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-241432(P2013-241432)
(22)【出願日】2013年11月22日
(65)【公開番号】特開2015-101844(P2015-101844A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】山崎 洋一郎
【審査官】
荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−016827(JP,A)
【文献】
特開2008−236871(JP,A)
【文献】
特開2013−147825(JP,A)
【文献】
特開2012−154092(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第01199410(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
H01M 10/48
H01M 10/613
H01M 10/615
H01M 10/625
H01M 10/633
F15B 11/00−11/22
F15B 21/14
H01M 10/6568
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ポンプと、この油圧ポンプを油圧源とする油圧アクチュエータと、この油圧アクチュエータと上記油圧ポンプ及びタンクとを接続する油圧アクチュエータ回路と、この油圧アクチュエータ回路に設けられて上記油圧アクチュエータに対する作動油の給排を制御するコントロールバルブと、このコントロールバルブを操作する操作手段と、電動機と、この電動機の電源となる蓄電器とを備え、上記油圧アクチュエータ回路は、上記油圧ポンプの吐出油を上記コントロールバルブ経由で上記油圧アクチュエータに供給するポンプ管路と、上記油圧アクチュエータから出たリターン油を上記タンクに戻すリターン管路を有する建設機械において、上記蓄電器の温度を検出する蓄電器温度検出手段と、制御手段と、上記蓄電器を暖機する暖機ラインとを設け、上記暖機ラインの入口側を、上記油圧アクチュエータ回路のリターン管路に、出口側を上記タンクにそれぞれ接続するとともに、暖機ラインの入口側に、上記暖機ラインにおいて油を通過させる開き位置と上記暖機ラインにおいて油を遮断する閉じ位置との間で切換わる切換弁を設け、上記制御手段は、上記蓄電器の温度が暖機を開始すべき温度として予め設定された暖機設定値以下のときに、上記切換弁を開き位置として上記油圧アクチュエータから出たリターン油を上記暖機ラインに通す蓄電器暖機制御を行うように構成したことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
上記操作手段の操作/非操作と操作量を検出する操作検出手段を設ける一方、上記油圧アクチュエータ回路のポンプ管路とリターン管路の間に、リリーフ弁を備えたリリーフ管路と、アンロード弁を備えたアンロード管路を並列に設け、上記制御手段は、上記アンロード弁を操作量に応じて開度制御する一方、上記蓄電器暖機制御として、
(i) 上記操作手段の操作時には、上記油圧アクチュエータから出て上記コントロールバルブを経由したリターン油を上記暖機ラインに通し、
(ii) 上記操作手段の非操作時には、上記アンロード弁を閉じて上記リリーフ弁を作動させ、リリーフ油を上記暖機ラインに通すリリーフ暖機制御を行う
ように構成したことを特徴とする請求項1記載の建設機械。
【請求項3】
上記油圧ポンプとして可変容量型ポンプを用い、上記制御手段は、上記リリーフ暖機制御時に上記油圧ポンプの容量を通常時よりも減少させるように構成したことを特徴とする請求項2記載の建設機械。
【請求項4】
上記蓄電器に、冷却ポンプから供給される冷媒によって蓄電器を冷却する冷却ラインを設け、上記蓄電器暖機制御時に、上記冷却ポンプからの冷媒供給量を制限するように構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蓄電器を備えたハイブリッド式または電動式の建設機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッドショベルを例にとって背景技術を説明する。
【0003】
ハイブリッドショベルにおいては、動力源としてのエンジンに発電電動機を接続し、発電電動機の発電機作用によって蓄電器に充電し、適時、この蓄電器電力により発電電動機に電動機作用を行わせてエンジンをアシストするように構成される。
【0004】
また、上部旋回体を旋回駆動する旋回駆動システムとして、旋回用油圧モータを駆動源とする油圧旋回ユニットに代えて、あるいは加えて、旋回用電動機を駆動源とする電動旋回ユニットを設け、旋回駆動時(起動を含む加速時及び加速後の定常運転時。力行時ともいう)に、発電電動機または蓄電器の電力によって上部旋回体を旋回駆動し、旋回減速時には旋回用電動機を発電機として作動させ、ブレーキ力を発揮させるとともに、その回生電力を蓄電器に充電する構成をとるものが公知である(特許文献1,2参照)。
【0005】
このハイブリッドショベルにおいて、低温時には蓄電器の容量が低下し、蓄電器性能(放電性能)が低下して十分な電力が得られなくなるため、冬期等の低温環境では蓄電器についてもエンジンのように適温まで加温する暖機対策をとることが望まれる。
【0006】
この暖機対策として、特許文献2に示されているように、蓄電器温度が設定値以下になったときに、発電電動機を作動させて蓄電器に強制的に充放電作用を行わせ、内部加熱によって蓄電器温度を上昇させる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−290882号公報
【特許文献2】特開2010−127271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般に、蓄電器の内部抵抗は、システム効率を良くする観点から小さく設定されている。
【0009】
このため、蓄電器の内部抵抗による内部発熱を暖機に利用する特許文献2の公知技術によると、蓄電器の発熱量が小さくて暖機効率が悪く、蓄電器の暖機に長時間を要する。
【0010】
また、蓄電器は、低温化で充放電を繰り返すと蓄電器寿命が短くなるという問題がある。
【0011】
そこで本発明は、蓄電器の暖機を短時間で効率良く、しかも蓄電器寿命に悪影響を与えることなく行うことができる建設機械を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する手段として、本発明においては、油圧ポンプと、この油圧ポンプを油圧源とする油圧アクチュエータと、この油圧アクチュエータと上記油圧ポンプ及びタンクとを接続する油圧アクチュエータ回路と、この油圧アクチュエータ回路に設けられて上記油圧アクチュエータに対する作動油の給排を制御するコントロールバルブと、このコントロールバルブを操作する操作手段と、電動機と、この電動機の電源となる蓄電器とを備え、上記油圧アクチュエータ回路は、上記油圧ポンプの吐出油を上記コントロールバルブ経由で上記油圧アクチュエータに供給するポンプ管路と、
上記油圧アクチュエータから出たリターン油を上記タンクに戻すリターン管路を有する建設機械において、上記蓄電器の温度を検出する蓄電器温度検出手段と、制御手段と、上記蓄電器を暖機する暖機ラインとを設け、上記暖機ラインの入口側を、上記油圧アクチュエータ回路のリターン管路に、出口側を上記タンクにそれぞれ接続するとともに、暖機ラインの入口側に、
上記暖機ラインにおいて油を通過させる開き位置と
上記暖機ラインにおいて油を遮断する閉じ位置との間で切換わる切換弁を設け、上記制御手段は、上記蓄電器の温度が暖機を開始すべき温度として予め設定された暖機設定値以下のときに、上記切換弁を開き位置として
上記油圧アクチュエータから出たリターン油を上記暖機ラインに通す蓄電器暖機制御を行うように構成したものである。
【0013】
この構成によれば、油圧アクチュエータ回路のリターン油を蓄電器の暖機ラインを経由してタンクに戻すため、蓄電器の内部発熱によって暖機する方式と比べて、蓄電器を短時間で効率良く暖機することができる。
【0014】
しかも、内部発熱方式のように低温化での充放電作用によって蓄電器寿命が低下するおそれがないし、暖機によって油圧アクチュエータ回路の通常の動作に支障を来たすおそれもない。
【0015】
さらに、既存の油圧アクチュエータ回路で発生するリターン油熱を暖機に利用するため、暖機のための余分なエネルギーが不要となるとともに、追加設備も実質的に切換弁のみで済む。このため、コスト面でも有利となる。
【0016】
なお、上記構成において、操作時にはコントロールバルブを通過しかつ油圧アクチュエータで仕事をすることによって高温化した油が暖機ラインに送られ、非操作時には、リリーフ油またはアンロード油、すなわちバルブ圧損(請求項2ではリリーフ弁での圧損)によって高温化した油が暖機ラインに送られる。
【0017】
また、請求項1の「電動機」とは、ハイブリッド式建設機械では発電電動機と作業用電動機(たとえば旋回電動機)の一方または双方をさし、電動式建設機械では駆動源としての電動機と作業用電動機の一方または双方をさす。
【0018】
本発明において、上記操作手段の操作/非操作と操作量を検出する操作検出手段を設ける一方、上記油圧アクチュエータ回路のポンプ管路とリターン管路の間に、リリーフ弁を備えたリリーフ管路と、アンロード弁を備えたアンロード管路を並列に設け、上記制御手段は、上記アンロード弁を操作量に応じて開度制御する一方、上記蓄電器暖機制御として、
(i) 上記操作手段の操作時には、上記油圧アクチュエータから出て上記コントロールバルブを経由したリターン油を上記暖機ラインに通し、
(ii) 上記操作手段の非操作時には、上記アンロード弁を閉じて上記リリーフ弁を作動させ、リリーフ油を上記暖機ラインに通すリリーフ暖機制御を行う
ように構成するのが望ましい(請求項2,3)。
【0019】
この構成によれば、蓄電器暖機制御として、非操作時に、リリーフ油という、より高温のリターン油を暖機ラインに通すため、とくに冬季等、外気温度が低い状況での機械の運転開始時に蓄電器を適温まで急速に暖機し、迅速に運転態勢を整えることができる。
【0020】
この場合、上記油圧ポンプとして可変容量型ポンプを用い、上記制御手段は、上記リーフ暖機制御時に上記油圧ポンプの容量を通常時よりも減少させるように構成するのが望ましい(請求項3)。
【0021】
蓄電器4の暖機を要する状況は、上記のようにとくに外気温度が低い場合に発生し、低温下ではエンジンの出力トルクも低いため、この状況で油圧ポンプを最大負荷で運転するとトルク不足でエンジンドロップが発生する等の問題がある。
【0022】
そこで、請求項3のようにリリーフ暖機時にポンプ容量を落とすことによりエンジン負荷を軽減することができる。
【0023】
一方、上記蓄電器に、冷却ポンプから供給される冷媒によって蓄電器を冷却する冷却ラインを設け、上記蓄電器暖機制御時に、上記冷却ポンプからの冷媒供給量を制限するように構成するのが望ましい(請求項4)。
【0024】
この構成によれば、蓄電器の冷却ラインを併設したシステムにおいて、蓄電器暖機制御時に冷媒供給を制限(停止または減量)するため、良好な暖機効率を維持することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、蓄電器の暖機を短時間で効率良く、しかも蓄電器寿命に悪影響を与えることなく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施形態を示すシステム構成図である。
【
図2】実施形態の作用を説明するためのフローチャートである。
【
図3】レバー操作量とアンロード弁開度の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
実施形態はハイブリッドショベルを適用対象としている。
【0028】
図1に示すように、動力源としてのエンジン1に発電機作用と電動機作用を行う発電電動機2が接続され、インバータ3の制御により、この発電電動機2がエンジン駆動で発電機作用を行い、発生した電力が蓄電器4に送られた充電される。
【0029】
一方、油圧アクチュエータの要求トルクがエンジン出力トルクを上回る場合に、蓄電器4の電力により発電電動機2が電動機作用を行ってエンジン1をアシストする。
【0030】
また、エンジン1には油圧ポンプ5が、図示のように発電電動機2とタンデム(パラレルでもよい)に接続され、この油圧ポンプ5及び油圧タンク6と複数の油圧アクチュエータ(図では一つの油圧シリンダのみを例示する)7とが油圧アクチュエータ回路8によって接続される。
【0031】
油圧ポンプ5には、レギュレータ5aによって容量が大小制御される可変容量型ポンプが用いられている。
【0032】
油圧アクチュエータ回路8は、油圧アクチュエータ7に対する油の給排を制御するコントロールバルブ9と、ポンプ吐出油をコントロールバルブ9経由で油圧アクチュエータ7に供給するポンプ管路10と、油圧アクチュエータ7から出た油を油圧タンク6に戻すリターン管路11とを備えている。
【0033】
また、ポンプ管路10とリターン管路11の間に、リリーフ弁12を備えたリリーフ管路13と、アンロード弁14を備えたアンロード管路15が互いに並列状態で設けられている。
【0034】
16はリターン油に一定の背圧をかけるためにリターン管路11に設けられた背圧弁である。
【0035】
アンロード弁14は、パイロットポートに入力されるパイロット圧によって全開と全閉の間で開度が制御される油圧パイロット弁として構成され、制御手段としてのコントローラ17によりアンロード制御弁18を通じて開度制御される。
【0036】
図中、19はアンロード弁14のパイロット油圧源である。
【0037】
20はレバー操作される操作手段としてのリモコン弁で、このリモコン弁20の操作方向と操作量に応じてコントロールバルブ9が切換制御されて油圧アクチュエータ7の作動方向と速度が制御される。以下、通称に従って、リモコン弁20の操作を「レバー操作」、その操作量を「レバー操作量」という。
【0038】
蓄電器4には、これを冷却または暖機するための温度管理プレート21が設けられている。
【0039】
この温度管理プレート21には、冷却ポンプ22からの冷媒(水、油等)を流す冷却ライン23と、油圧アクチュエータ回路8からのリターン油(高温の作動油)を流す暖機ライン24が通され、この両ライン23,24により温度管理プレート21を通じて蓄電器4の冷却または暖機が行われる。図中、25は冷媒タンク、26は冷却ライン23の冷媒タンク入口に設けられたクーラーである。
【0040】
暖機ライン24は、入口側がリターン管路11に、出口側が油圧タンク6にそれぞれ接続され、この暖機ライン24の入口側に、コントローラ17によって切換制御される電磁式の切換弁27が設けられている。
【0041】
この切換弁27は、油を通過させる開き位置イと、油を遮断する閉じ位置ロとの間で切換わり、開き位置イで油圧アクチュエータ回路8のリターン油が暖機ライン24に導入される。
【0042】
一方、検出手段として、リモコン弁20のパイロット圧によってレバー操作/非操作の別と操作量を検出する操作検出手段としてのパイロット圧センサ28と、蓄電器4の温度を検出する蓄電器温度検出手段としての温度センサ29が設けられ、この両センサ28,29によって検出された操作信号と温度信号がコントローラ17に入力される。
【0043】
コントローラ17は、入力される操作、温度両信号に基づいて、低温下で蓄電器温度を上昇させるための蓄電器暖機制御を行う。
【0044】
このコントローラ17の作用を
図2のフローチャートによって説明する。
【0045】
たとえばエンジン始動によって制御が開始され、まずステップS1で、検出された蓄電器温度T1が、蓄電器4の暖機を開始すべき温度として予め設定された暖機設定値Taよりも低いか否か(暖機が必要か否か)が判断される。
【0046】
ここでNO(暖機の必要がない)となると、ステップS2でレバー操作無しか否かが判断され、YES(レバー操作無し)の場合はステップS3でアンロード弁14を全開とする。
【0047】
ここで、油圧ポンプ5は容量最大で最大流量を吐出しており、このポンプ吐出油が全量、アンロード弁14を通じて油圧タンク6に戻される。
【0048】
ステップS2でNO(レバー操作有り)の場合は、通常制御として、ステップS4において
図3に示すようにアンロード弁14の開度をレバー操作量に応じて、大操作量で小さくなる方向に制御する。すなわち、油圧アクチュエータ7に必要な流量以外の余剰油がアンロードされる。
【0049】
ステップS3またはステップS4に続くステップS5ではポンプ容量を「通常」、すなわち最大とし、ステップS6で切換弁27を閉じ位置ロとする。
【0050】
また、ステップS7で蓄電器温度T1が、蓄電器4の冷却を開始すべき温度として予め設定された冷却設定値Tbよりも高いか否かが判断され、YESで冷却ポンプ22を作動させる。従って、冷媒が冷却ライン23に供給され、温度管理プレート21での熱交換によって蓄電器4が冷却される。
【0051】
一方、ステップS1でYES、すなわち蓄電器温度T1が暖機設定値Taよりも低いと判断されたときは、ステップS9で冷却ポンプ22を停止させるとともに、ステップS10で切換弁27を開き位置イに切換える。
【0052】
これにより、油圧アクチュエータ回路8のリターン油が切換弁27を介して暖機ライン24に供給される態勢(暖機態勢)が整う。
【0053】
ステップS11ではレバー操作無しか否かが判断され、NO(レバー操作有り)の場合はステップS12でアンロード弁14の通常制御(レバー操作量に応じた開度制御)を行うとともに、ステップS13でポンプ容量を「通常(最大)」とする。
【0054】
これにより、油圧アクチュエータ7にレバー操作量に応じた流量が供給されて油圧アクチュエータ7が作動し、この油圧アクチュエータ7から出た油、及びアンロード弁14を通過した油が切換弁27を通り暖機ライン24を流れて油圧タンク6に戻される。
【0055】
こうして、レバー操作時の蓄電器暖機制御として、コントロールバルブ9を通過しかつ油圧アクチュエータ7で仕事をすることによって高温化したリターン油、及びアンロード弁14での圧損によって高温化したリターン油により、温度管理プレート21を通じて蓄電器4の暖機が行われる。
【0056】
これに対し、ステップS11でYES(レバー操作無し)の場合は、油圧アクチュエータ7からのリターン油が暖機ライン24に送られないため、これに代えて、リリーフ暖機制御が行われる。
【0057】
すなわち、ステップS14でポンプ容量を通常値qから暖機時設定値qTに減少させることによってポンプ吐出量を減じるとともに、ステップS15でアンロード弁14を全閉とする。
【0058】
これにより、リリーフ弁12が作動し、ポンプ吐出油が全量、リリーフ弁12を通り、切換弁27を介して暖機ライン24に送られる。
【0059】
こうして、レバー非操作時の暖機制御として、リリーフ作動によって高温化した油によって蓄電器4の暖機が行われる。
【0060】
ステップS8,S13,S15の後はステップS1に戻り、以下、蓄電器温度T1が暖機設定値Ta以上となる(暖機完了)まで上記暖機制御が継続される。
【0061】
このように、油圧アクチュエータ回路8のリターン油、すなわち、レバー操作時にはコントロールバルブ9を通過しかつ油圧アクチュエータ7で仕事をすることによって高温化した油、及びアンロード弁14での圧損によって高温化した油を、またレバー非操作時にはリリーフ弁12での圧損によって高温化した油を、それぞれ蓄電器4の暖機ライン24に通すため、蓄電器4の内部発熱によって暖機する方式と比べて、蓄電器4を短時間で効率良く暖機することができる。
【0062】
ここで、レバー非操作時に、リリーフ油という、より高温のリターン油を暖機ライン24に通すため、とくに冬季等、外気温度が低い状況での機械の運転開始時に蓄電器を適温まで急速に暖機し、迅速に運転態勢を整えることができる。
【0063】
しかも、内部発熱方式のように低温化での充放電作用によって蓄電器寿命が低下するおそれがないし、暖機によって油圧アクチュエータ回路8の通常の動作に支障を来たすおそれもない。
【0064】
さらに、既存の油圧アクチュエータ回路8で発生する熱を暖機に利用するため、暖機のための余分なエネルギーが不要となるとともに、追加設備も実質的に切換弁27のみで済む。このため、コスト面でも有利となる。
【0065】
ところで、蓄電器4の暖機を要する状況は、上記のようにとくに外気温度が低い場合に発生し、低温下ではエンジン1の出力トルクも低いため、この状況で油圧ポンプ5を最大負荷で運転するとトルク不足でエンジンドロップが発生する等の問題がある。
【0066】
この点、前記のようにリリーフ暖機時にポンプ容量を落とすため、エンジン負荷を軽減することができる。
【0067】
また、実施形態では、冷却ライン23を併設したシステムにおいて、蓄電器暖機制御時に冷却ポンプ22を停止させて冷媒供給(蓄電器冷却)を停止するため、良好な暖機効率を維持することができる。
【0068】
他の実施形態
(1) 上記実施形態では蓄電器暖機制御時に冷却ポンプ22を停止(
図2のステップS9)させて冷媒の供給を止めるようにしたが、冷却ポンプ22からの冷媒吐出量を、暖機の妨げとならない量に減少させるようにしてもよい。
【0069】
(2) 上記実施形態では、蓄電器暖機制御時におけるリリーフ暖機制御時にポンプ容量を減少させる構成をとったが、エンジン1のトルク不足が生じない場合には、ポンプ容量を減少させない構成をとってもよい。
【0070】
(3) 本発明はハイブリッドショベルに限らず、ショベル以外のハイブリッド建設機械にも、また蓄電器電力で電動機を駆動し、この電動機で油圧ポンプを駆動する構成をとる電動式の建設機械にも適用することができる。
【符号の説明】
【0071】
4 蓄電器
5 油圧ポンプ
5a レギュレータ
6 油圧タンク
7 油圧アクチュエータ
8 油圧アクチュエータ回路
9 コントロールバルブ
10 ポンプ管路
11 リターン管路
12 リリーフ弁
13 リリーフ管路
14 アンロード弁
15 アンロード管路
17 制御手段としてのコントローラ
18 アンロード制御弁
20 操作手段としてのリモコン弁
21 蓄電器の温度管理プレート
22 冷却ポンプ
23 冷却ライン
24 暖機ライン
27 切換弁
28 操作検出手段としてのパイロット圧センサ
29 蓄電器温度検出手段としての温度センサ