【実施例】
【0046】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0047】
(導電性酸化亜鉛粉末の比表面積の測定方法)
本発明の導電性酸化亜鉛粉末の比表面積は、粉末をガラス製のセルに充填して、島津-マイクロメリティックス製フローソーブIII2310装置により測定した。
【0048】
(導電性酸化亜鉛粉末におけるアルミニウムの固溶割合の測定方法)
本発明の導電性酸化亜鉛粉末におけるアルミニウムの固溶割合は、以下に説明する方法によって測定した。
【0049】
本発明の導電性酸化亜鉛粉末に固溶しているアルミニウムの割合は、アルミニウムの固体NMR分析(固体核磁気共鳴分光分析)により得られた導電性酸化亜鉛粉末中の全アルミニウムに対する酸化亜鉛に固溶したアルミニウムの割合と、ICP−AES(誘導結合プラズマを利用した発光分析)により得られた、導電性酸化亜鉛粉末中のアルミニウムの含有割合とを乗じることにより算出した。以下、具体的に説明する。
【0050】
本発明の導電性酸化亜鉛粉末および比較例の酸化亜鉛粉末を、硝酸、フッ化水素酸、硫酸で加熱溶解し、得られた溶液を、エスアイアイ・ナノテクノロジー製SPS5100型のICP発光分析装置を用いたICP発光分析に供して、導電性酸化亜鉛粉末中の全アルミニウムの含有割合を測定した。また、本発明の導電性酸化亜鉛粉末および比較例の酸化亜鉛粉末を、日本電子製JNM−ECA400型FT−NMR装置を用いた固体NMR分析に供して、得られたNMRスペクトルにおける、アルミニウムに由来する全てのピークの面積に対する、酸化亜鉛に固溶したアルミニウムに由来するピークの面積の割合から、(導電性)酸化亜鉛粉末中の全アルミニウムに対する、酸化亜鉛に固溶したアルミニウムの割合を求めた。
【0051】
以上のようにして得られた導電性酸化亜鉛粉末中のアルミニウム含有割合と、導電性酸化亜鉛粉末中の全アルミニウムに対する酸化亜鉛に固溶したアルミニウムの割合とを乗じることにより、本発明の導電性酸化亜鉛粉末および比較例の酸化亜鉛粉末に固溶しているアルミニウムの割合を算出した。
【0052】
(導電性酸化亜鉛粉末における窒素の固溶割合の測定方法)
本発明の導電性酸化亜鉛粉末における窒素の固溶割合は、以下に説明する方法によって測定した。
【0053】
はじめに、日本分光株式会社製レーザーラマン分光装置を用いたラマン分光分析により得られた本発明の導電性酸化亜鉛粉末のラマンスペクトルに、酸化亜鉛への窒素の固溶に由来するピークが存在することを確認した。次いで、本発明の導電性酸化亜鉛粉末を黒鉛坩堝に投入して、LECO社製酸素・窒素・水素分析装置TCH600を用いて加熱し融解し、融解した試料から発生した窒素を前記分析装置に備わる熱伝導度検出器によって定量することで、本発明の導電性酸化亜鉛粉末の窒素含有割合を測定した。また、上述の(導電性酸化亜鉛粉末におけるアルミニウムの固溶割合の測定方法)にて説明した、固体NMR分析により得られたNMRスペクトルに、窒化アルミニウムの生成を示す、4配位の窒素に由来する100ppm周辺のピークが存在しないことを全ての実施例において確認した。以上により、TCH600により検出された窒素の全てが、本発明の導電性酸化亜鉛粉末に固溶している窒素に由来することが確認されたので、TCH600により測定された窒素含有量を、窒素の固溶割合として確定した。
【0054】
(導電性酸化亜鉛粉末の体積抵抗率の測定方法)
本発明の導電性酸化亜鉛粉末を、断面積がπcm
2のテフロン(登録商標)製の内径20mmの円筒形の型に充填して、10MPaの圧力を加えて、円板状の圧粉体に成形した。得られた圧粉体について、市販のマルチメーターを用いて室温で体積抵抗率を測定し、その値を本発明の導電性酸化亜鉛粉末の体積抵抗率とした。製造直後の各導電性酸化亜鉛粉末の体積抵抗率を測定する場合は、製造時の雰囲気が保たれた高周波誘導炉から取り出して24時間経過する前に各導電性酸化亜鉛粉末の体積抵抗率の測定を行った。
【0055】
(導電性酸化亜鉛粉末の体積抵抗率の経時変化の評価方法)
製造直後の導電性酸化亜鉛粉末4gを、温度25℃、湿度50%の大気雰囲気下で、容量10gのポリエチレン製の袋(チャック付)に収容し、チャックを閉めた状態で、温度25℃、湿度50%を保持した大気雰囲気下で保存した。製造直後より30日経過後および210日経過後に、(導電性酸化亜鉛粉末の体積抵抗率の測定方法)で説明した方法と同様の方法で導電性酸化亜鉛粉末の体積抵抗率を測定し、製造直後の体積抵抗率と比較した。
【0056】
(製造例)
本発明に係るAl−N−H系化合物粉末としては、以下の方法にて製造したAl
2(NH)
3粉末を用いた。
【0057】
容量1000mLのガラス製三口フラスコに、ガス導入用三方コック、温度計用さや管、留分を受ける、容量500mLの二つ口ナスフラスコと組み合わせた分留管を設置した。これらの器具は130℃のオーブンで事前に充分乾燥し、更に組み立てた後に真空下でホットブラスターにより加熱して、内壁表面に付着した水分を除去した。こうして乾燥し、内部をN
2ガス雰囲気に保持して密閉した装置を同じくN
2雰囲気のグローブボックスに入れた。グローブボックス出口ガスの酸素濃度と露点を測定し、酸素と水分が少ない雰囲気であることを確認した後、200mLのトリエチルアルミニウムへキサン溶液(和光純薬製、トリエチルアルミニウム濃度:1mol/L)を前記の容量1000mLのガラス製三口フラスコに導入した。次いでデカン(水分10ppm以下)200mLを導入し、充分に混合した後、ガラス装置全体を密閉状態に保持してグローブボックスから取り出した。
【0058】
容量1000mLのガラス製三口フラスコをオイルバスによって加熱しながら、内部のトリエチルアルミニウム溶液中にアンモニアガスをバブリングした。アンモニアガス供給の流量は100mL/分(25℃、常圧)であり、内部液はマグネチックスターラーで攪拌した。まず、オイルバス温度を120℃に保ち、反応混合物中のヘキサンを留去して、分留管に接続した、容量500mLの二つ口ナスフラスコに受けた。ヘキサンの留去が終了した後、オイルバス温度を180℃に上げると、白色沈殿が析出し始め、反応の進行が確認された。こうしてアンモニアガスを継続して供給しながらオイルバス温度180℃(フラスコ内のスラリー液温度170℃)で4時間反応を行った。
【0059】
次にオイルバス温度を200℃に上げ、生成した白色沈殿を含有するスラリーからデカンを留去した。デカンの留去操作においても、アンモニアガスは継続して供給した。次いでアンモニアガスの供給を止め、装置全体を密閉状態としてグローブボックスに入れ、主として(C
2H
5)Al(NH)からなる白色固体15.16gを回収した。白色固体中のAl量は、CyDTA-亜鉛逆滴定法(JIS R1675:2007準拠)により37.8質量%と分析され、N量は、直接分解−水蒸気蒸留−中和滴定法(JIS R1675:2007準拠)により19.9質量%と分析された。またこの白色固体を少量採取し、水/プロパノール混合液によって加水分解させた。発生したガスを捕集してガスクロマトグラフィーによって分析し、絶対検量線法により定量したところ、白色固体1gあたり12.4mmolのエタンが検出され、白色固体中のエチル基とAlのモル比はエチル基/Al=0.89(モル/モル)と計算された。これらの値は、前記組成式(C
2H
5)Al(NH)における理論値(Al:38.0質量%、N:19.7質量%、エチル基/Al=1)とよく一致している。一方、白色固体中のIRスペクトルの測定から、3263cm
−1と1554cm
−1にN−H結合に帰属されるピークが検出された。また、本固体の1H−NMR測定を日本電子製ECA−400型により行ったところ、δ0.72ppmの位置に頂点を持つブロードなシグナルが観察された(外部基準物質:トリメチルシリルプロパン酸塩重水溶液)。これらはエチル基及びイミド基上のHに由来すると考えられる。
【0060】
グローブボックス内にて、上記で合成した白色固体6.17gを両末端に三方コックを設置した内径17mmのU字型ガラス管に充填した。この三方コック及びガラス管は、前記の有機アルミニウム化合物溶液とアンモニアの反応に用いたガラス器具と同様の方法で乾燥したものである。このガラス管にヒーターを取り付け、アンモニアガスを片方のコックから供給し、もう片方のコックから排出させながら白色固体充填層を加熱した。この時のアンモニアガス供給の流量は100mL/分(25℃、常圧)、ヒーター温度は240℃であり、供給アンモニアの空塔速度は1.3cm/sである。6時間後に加熱を終了し、グローブボックス内にてAl
2(NH)
3からなる白色固体を回収した。収量は4.26gであり、処理前後での質量変化率は69.0%で、下記の反応式、式(1)に基づく固形成分の質量変化率の理論値69.7%と良い一致を示した。
2(C
2H
5)Al(NH)+NH
3→Al
2(NH)
3+2C
2H
6 (1)
【0061】
CyDTA-亜鉛逆滴定法によって求めたAl濃度は55.8質量%であった(組成式Al
2(NH)
3での計算値:54.5質量%)。また、IRスペクトルの測定から、3227cm
−1と1539cm
−1にN−H結合に帰属されるピークが検出された。この白色固体を少量採取し、水/プロパノール混合液によって加水分解させ、発生したガスを捕集してガスクロマトグラフィーによって分析したところ、検出されるエタン量は白色固体1gあたり0.52mmolと僅かであった。これらの結果から、白色固体中のエチル基とAlのモル比はエチル基/Al=0.03(モル/モル)であり、白色固体中の炭素不純物濃度は1.2質量%と算出された。また、不純物酸素量をLECO社製TCH−600型酸素・窒素・水素分析装置を用いて赤外線吸収法により分析すると1.4質量%であった。蛍光X線分析により金属不純物を調べたところ、金属成分中のAl濃度は99.7質量%であり、実質的に金属不純物は存在しなかった。島津-マイクロメリティックス製フローソーブIII2310を使用し、BET1点法で比表面積を測定したところ、868m
2/gであった。また、本固体の1H−NMR測定を日本電子製ECA−400型により行ったところ、δ0.97ppmの位置に頂点を持つブロードなシグナルが観察された(外部基準物質:トリメチルシリルプロパン酸塩重水溶液)。これはイミド基上のHに由来すると考えられる。
【0062】
本生成物0.4708gをBN製るつぼに入れ、N
2ガス雰囲気下1600℃で2時間焼成すると0.3915gの粉末が得られた。XRD分析ではこの粉末はAlNと同定され、これ以外の結晶相は観測されなかった。元素分析結果も次の通りAlNと良い一致を示した;Al(CyDTA-亜鉛逆滴定法により測定):65.0質量%(計算値65.9質量%)、N(LECO社製TCH−600型酸素・窒素・水素分析装置を用いて電気伝導度法により測定):33.8質量%(計算値34.1質量%)。また、使用した原料に対する焼成後に回収した生成物の質量比率は83.2%であった。これは、下記の反応式、式(2)が定量的に進行していることを支持するものであり、焼成前の白色固体が組成式Al
2(NH)
3で表されることが確認できた。
Al
2(NH)
3 → 2AlN + NH
3 (2)
【0063】
(実施例1)
アルミニウム源として(製造例)で得られたAl
2(NH)
3粉末5molと、酸化亜鉛粉末(関東化学株式会社製NanoTek(登録商標))90molとを原料粉末として用い、次のように実施例1の導電性酸化亜鉛粉末を製造した。原料粉末の和が4gになるように原料粉末を秤量し、窒素雰囲気のグローブボックス内でナイロンボールと共にステンレスポット中に収容して、ポット内の窒素雰囲気が保たれるようにステンレスポットを密閉した。このステンレスポットを、Retsch製のミキサーミルを用いて、15Hzの振動数で、30分間振動して、原料粉末を混合した。窒素雰囲気のグローブボックス内で、ステンレスポットを開封し、得られた混合粉末をステンレスポットから取り出して、窒化ホウ素坩堝に収容した。さらに、その窒化ホウ素坩堝を黒鉛坩堝に収容して、高周波誘導炉を用いて、窒素雰囲気下で、1000℃/時間の昇温速度で室温から1000℃まで加熱し、1000℃で10分保持して、混合粉末を焼成した。焼成後の粉末を、アルミナ乳鉢とアルミナ乳棒を用いて解砕し、実施例1の導電性酸化亜鉛粉末を得た。
【0064】
得られた実施例1の導電性酸化亜鉛粉末のX線回折分析の結果を
図1に示す。
図1からは、酸化亜鉛に由来する回折ピークが観察され、得られた粉末が酸化亜鉛からなることが確認された。
【0065】
次に、上述の(導電性酸化亜鉛粉末におけるアルミニウムの固溶割合の測定方法)で説明した方法により、得られた導電性酸化亜鉛粉末のアルミニウムの固溶割合を測定した。はじめに、固体NMR分析により、実施例1の導電性酸化亜鉛粉末のNMRスペクトルを得た。得られた実施例1の導電性酸化亜鉛粉末のNMRスペクトルを
図2に示す。
図2からは、酸化亜鉛へのアルミニウムの固溶を示す、200ppm周辺にピークを持つNMRスペクトルが観察され、実施例1の導電性酸化亜鉛粉末の酸化亜鉛にはアルミニウムが固溶していることが確認された。また、得られたNMRスペクトルから、アルミニウムに由来する全てのピークの面積に対する、酸化亜鉛に固溶したアルミニウムに由来するピークの面積の割合を計算し、実施例1の導電性酸化亜鉛粉末中の全アルミニウムに対する、酸化亜鉛に固溶したアルミニウムの割合を、28.29%と算出した。次いで、ICP発光分析により、実施例1の導電性酸化亜鉛粉末中の全アルミニウムの含有割合を測定した。ICP発光分析により得られた、実施例1の導電性酸化亜鉛粉末中の全アルミニウムの含有割合3.5質量%に、NMRスペクトルにより得られた、全アルミニウムに対する、酸化亜鉛に固溶したアルミニウムの割合28.29%を乗じて、実施例1の導電性酸化亜鉛粉末のアルミニウムの固溶割合を算出した。その結果は、表1に示す通り、0.990質量%であった。
【0066】
また、(導電性酸化亜鉛粉末における窒素の固溶割合の測定方法)で説明した方法により、得られた導電性酸化亜鉛粉末の窒素の固溶割合を測定した。はじめに、ラマン分光分析により、実施例1の導電性酸化亜鉛粉末のラマンスペクトルを得た。得られた実施例1の導電性酸化亜鉛粉末のラマンスペクトルを
図3に示す。
図3からは、酸化亜鉛への窒素の固溶に由来する275cm
−1、508cm
−1、579cm
−1、642cm
−1付近のピーク(非特許文献1、2参照)が存在することが確認された。次いで、酸素・窒素・水素分析装置を用いて、実施例1の導電性酸化亜鉛粉末中の窒素の含有割合を測定した。また、実施例1の導電性酸化亜鉛粉末のアルミニウムの固溶割合の測定に用いたNMRスペクトルに、窒化アルミニウムの生成を示す100ppm付近のピークが存在しないことを確認した。実施例1の導電性酸化亜鉛粉末中の窒素は、酸化亜鉛に固溶するか、窒化アルミニウムを形成する以外には存在しえないことから、実施例1の導電性酸化亜鉛粉末においては、酸化亜鉛に固溶した以外の窒素は存在しないと断定し、酸素・窒素・水素分析装置を用いて得られた、実施例1の導電性酸化亜鉛粉末中の窒素の含有割合0.314質量%を、表1に示す通り、実施例1の導電性酸化亜鉛粉末の窒素の固溶割合とした。
【0067】
実施例1の導電性酸化亜鉛粉末の比表面積を、島津製作所製フローソーブ2310を用いて測定した。その結果は、表1に示す通り、4.73m
2/gであった。
【0068】
次に、実施例1の導電性酸化亜鉛粉末2gを、テフロン(登録商標)製の内径20mmの円筒に充填して10MPaの圧力で加圧成形し、得られた圧粉体の体積抵抗率を、室温で、東陽テクニカ社製「体積抵抗率測定装置」を用いて測定した。製造直後の実施例1の導電性酸化亜鉛粉末の、室温における体積抵抗率は、表1に示す通り、10.6Ω・cmであった。さらに実施例1の導電性酸化亜鉛粉末を、上述の(導電性酸化亜鉛粉末の体積抵抗率の経時変化の評価方法)で説明した方法により保存し、製造後30日経過させた。30日経過後の実施例1の導電性酸化亜鉛粉末についても、製造直後と同様の方法で体積抵抗率を測定した。30日経過後の実施例1の導電性酸化亜鉛粉末の体積抵抗率は、表1に示す通り、12.7Ω・cmであり、体積抵抗率の経時変化は殆どないことが確認された。
【0069】
また、実施例1の導電性酸化亜鉛粉末を製造直後から30日経過させた方法と同様にして、製造直後から210日経過させ、製造直後の体積抵抗率の測定と同様の方法で、210日経過後の実施例1の導電性酸化亜鉛粉末の体積抵抗率を測定した。210日経過後の実施例1の導電性酸化亜鉛粉末の体積抵抗率は、表1に示す通り、15.4Ω・cmであり、210日経過後でも、体積抵抗率の経時変化は殆どないことが確認された。
【0070】
また、実施例1の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルを測定し、格子空孔(酸素欠損)の有無を調べた。酸化亜鉛に格子空孔(酸素欠損)があれば、それに起因して格子空孔(酸素欠損)が埋まるまでの間は一時的に導電性を示すことがわかっているので、実施例1の導電性酸化亜鉛粉末が低い体積抵抗率を示すことが、アルミニウムの固溶に起因することを確認するためである。一般的に、酸化亜鉛中に格子空孔(酸素欠損)があれば、蛍光スペクトルの500nm付近にピークが現れることが知られている。日本分光株式会社製の蛍光分光光度計FP−6500を用いて、それに付帯する積分球内で、石英ガラス製の受光部を持つ粉末試料用ホルダに収容した実施例1の導電性酸化亜鉛粉末に320nmの光を照射し、実施例1の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルを測定した。その結果を、比較例3、4、5、6の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルと併せて
図14に示す。比較例3、4、5、6の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルには500nm付近にピークが観察されたが、実施例1の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルには、500nm付近のピークが観察されなかった。実施例1の導電性酸化亜鉛粉末には格子空孔(酸素欠損)が殆どないことがわかり、その低い体積抵抗率は、酸化亜鉛にアルミニウムが固溶していることに起因していることが確認された。
【0071】
(実施例2)
原料粉末を、Al
2(NH)
3粉末1mol、および酸化亜鉛粉末98molとしたこと以外は実施例1と同様の方法によって、実施例2の導電性酸化亜鉛粉末を製造した。得られた実施例2の導電性酸化亜鉛粉末について、実施例1と同様の方法により、X線回折分析、比表面積の測定、アルミニウムの固溶割合の測定、および窒素の固溶割合の測定と製造直後、30日経過後および210日経過後の体積抵抗率の測定を行った。得られた実施例2の導電性酸化亜鉛粉末のX線回折分析の結果を
図1に示す。X線回折分析の結果からは、
図1に示す通り、酸化亜鉛に起因する回折ピークが観察され、得られた粉末が酸化亜鉛からなることがわかった。また、実施例2の導電性酸化亜鉛粉末の比表面積、アルミニウムの固溶割合、窒素の固溶割合と、製造直後、30日経過後および210日経過後の体積抵抗率を表1に示す。実施例2の導電性酸化亜鉛粉末の比表面積は、3.76m
2/g、アルミニウムの固溶割合は0.143質量%、窒素の固溶割合は0.030質量%であった。また、その体積抵抗率は、製造直後で54.9Ω・cm、30日経過後で65.4Ω・cm、210日経過後で84.8Ω・cmと、若干の経時変化はあるものの、210日経過後でも100Ω・cm以下の低い値に留まった。
【0072】
(実施例3)
原料粉末を、Al
2(NH)
3粉末3mol、および酸化亜鉛粉末94molとしたこと以外は、実施例1と同様の方法によって、実施例3の導電性酸化亜鉛粉末を製造した。得られた実施例3の導電性酸化亜鉛粉末について、実施例1と同様の方法により、X線回折分析、比表面積の測定、アルミニウムの固溶割合の測定、および窒素の固溶割合の測定と、製造直後、30日経過後および210日経過後の体積抵抗率の測定を行った。得られた実施例3の導電性酸化亜鉛粉末のX線回折分析の結果を
図1に示す。X線回折分析の結果からは、
図1に示す通り、酸化亜鉛に由来する回折ピークが観察され、得られた粉末が酸化亜鉛からなることがわかった。また、実施例3の導電性酸化亜鉛粉末の比表面積、アルミニウムの固溶割合、窒素の固溶割合と、製造直後、30日経過後および210日経過後の体積抵抗率を表1に示す。実施例3の導電性酸化亜鉛粉末の比表面積は、3.48m
2/g、アルミニウムの固溶割合は0.331質量%、窒素の固溶割合は0.130質量%であった。また、その体積抵抗率は、製造直後で17.7Ω・cm、30日経過後で17.3Ω・cm、210日経過後で14.0Ω・cmと、特に低い体積抵抗率を示し、210日経過後でも、その経時変化は殆どないことが確認された。
【0073】
(実施例4)
混合粉末の焼成温度(焼成時の最高温度)を1100℃としたこと以外は、実施例1と同様の方法によって、実施例4の導電性酸化亜鉛粉末を製造した。得られた実施例4の導電性酸化亜鉛粉末について、実施例1と同様の方法により、X線回折分析、比表面積の測定、アルミニウムの固溶割合の測定、および窒素の固溶割合の測定と、製造直後、30日経過後および210日経過後の体積抵抗率の測定を行った。得られた実施例4の導電性酸化亜鉛粉末のX線回折分析の結果を
図1に示す。X線回折分析の結果からは、
図1に示す通り、酸化亜鉛に由来する回折ピークが観察され、得られた粉末が、酸化亜鉛からなることがわかった。実施例4の導電性酸化亜鉛粉末の比表面積、アルミニウムの固溶割合、窒素の固溶割合と、製造直後、30日経過後および210日経過後の体積抵抗率を表1に示す。実施例4の導電性酸化亜鉛粉末の比表面積は、3.80m
2/g、アルミニウムの固溶割合は0.408質量%、窒素の固溶割合は0.174質量%であった。また、その体積抵抗率は、製造直後で45.9Ω・cm、30日経過後で41.8Ω・cm、210日経過後で41.5Ω・cmと、100Ω・cm以下の低い体積抵抗率を示し、210日経過後でも、その経時変化は殆どないことが確認された。
【0074】
(比較例1)
混合粉末の焼成温度を800℃としたこと以外は実施例1と同様の方法によって、比較例1の導電性酸化亜鉛粉末を製造した。得られた比較例1の導電性酸化亜鉛粉末について、実施例1と同様の方法により、X線回折分析、比表面積の測定、アルミニウムの固溶割合の測定、および窒素の固溶割合の測定と、製造直後、30日経過後および210日経過後の体積抵抗率の測定を行った。得られた比較例1の導電性酸化亜鉛粉末のX線回折分析の結果を
図4に示す。X線回折分析の結果からは、
図4に示す通り、酸化亜鉛に由来する回折ピークが観察され、得られた粉末が酸化亜鉛からなることがわかった。比較例1の導電性酸化亜鉛粉末の比表面積、アルミニウムの固溶割合、窒素の固溶割合と、製造直後、30日経過後および210日経過後の体積抵抗率を表1に示す。比較例1の導電性酸化亜鉛粉末の比表面積は、7.37m
2/g、アルミニウムの固溶割合は0質量%、窒素の固溶割合は1.21質量%であった。また、その体積抵抗率は、製造直後、30日経過後および210日経過後のいずれにおいても、測定装置の測定限界(1×10
8Ω・cm)を上回るほど高かった。
【0075】
(比較例2)
混合粉末の焼成温度を1300℃としたこと以外は、実施例1と同様の方法によって混合粉末を焼成した。焼成後の比較例2の試料は窒化ホウ素坩堝と反応してガラス化し、窒化ホウ素坩堝の底に固着していた。この固着物を解砕し、X線回折分析を行った。得られた比較例2の導電性酸化亜鉛粉末のX線回折分析の結果を
図4に示す。
図4に示すように、酸化亜鉛に由来する回折ピークは観察されず、焼成温度を1300℃とした比較例2では酸化亜鉛粉末が得られなかった。
【0076】
(比較例3)
アルミニウム源を硫酸アルミニウム(Al
2(SO
4)
3)粉末とし、原料粉末を、硫酸アルミニウム粉末5mol、酸化亜鉛粉末90molとしたこと以外は、実施例1と同様の方法によって、比較例3の導電性酸化亜鉛粉末を製造した。得られた比較例3の導電性酸化亜鉛粉末について、実施例1と同様の方法により、X線回折分析、比表面積の測定、アルミニウムの固溶割合の測定、および窒素の固溶割合の測定と、製造直後、30日経過後および210日経過後の体積抵抗率の測定を行った。得られた比較例3の導電性酸化亜鉛粉末のX線回折分析の結果を
図5に示す。X線回折分析の結果からは、
図5に示す通り、酸化亜鉛に由来する回折ピークが観察された。
図6に、得られた比較例3の導電性酸化亜鉛粉末のNMRスペクトルを示す。比較例3の導電性酸化亜鉛粉末のNMRスペクトルには、酸化亜鉛へのアルミニウムの固溶を示す200ppm周辺にピークが観察されるが、実施例1の導電性酸化亜鉛粉末のNMRスペクトルのそれと比較すると非常に小さなピークであった。
図7に、比較例3の導電性酸化亜鉛粉末のラマンスペクトルを示す。比較例3の導電性酸化亜鉛粉末のラマンスペクトルには実施例1のような窒素の固溶ピークが観察されなかった。
【0077】
比較例3の導電性酸化亜鉛粉末の比表面積、アルミニウムの固溶割合、窒素の固溶割合と、製造直後、30日経過後および210日経過後の体積抵抗率を表1に示す。比較例3の導電性酸化亜鉛粉末の比表面積は2.70m
2/g、アルミニウムの固溶割合は0.015質量%、窒素の固溶割合は0質量%であった。また、その体積抵抗率は、製造直後では37.9Ω・cmと低かったが、30日経過後では189.1Ω・cm、210日経過後では測定装置の測定限界(1×10
8Ω・cm)を上回るほど高くなり、著しく経時変化することが確認された。比較例3の導電性酸化亜鉛粉末は、実用的な導電性酸化亜鉛粉末ではないことが分かった。
【0078】
また、比較例3の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルを測定し、格子空孔(酸素欠損)の有無を調べた。実施例1と同様の方法で比較例3の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルを測定した。その結果を、実施例1、比較例4、5、6の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルと併せて
図14に示す。実施例1の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルには、500nm付近にピークが観察されないのに対して、比較例3の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルには、他の比較例と同様に500nm付近にピークが観察された。比較例3の導電性酸化亜鉛粉末が、製造直後に、低い体積抵抗率を持ち、導電性を示し、その経時変化が著しいのは、比較例3の導電性酸化亜鉛粉末の導電性が、格子空孔(酸素欠損)に起因することによるからと推察される。
【0079】
(比較例4)
アルミニウム源を硝酸アルミニウム(Al(NO
3)
3)粉末とし、原料粉末を、硝酸アルミニウム粉末10mol、酸化亜鉛粉末90molとしたこと以外は、実施例1と同様の方法によって、比較例4の導電性酸化亜鉛粉末を製造した。得られた比較例4の導電性酸化亜鉛粉末について、実施例1と同様の方法により、X線回折分析、比表面積の測定、アルミニウムの固溶割合の測定、および窒素の固溶割合の測定と、製造直後、30日経過後および210日経過後の体積抵抗率の測定を行った。得られた比較例4の導電性酸化亜鉛粉末のX線回折分析の結果を
図5に示す。X線回折分析の結果からは、
図5に示す通り、酸化亜鉛に由来する回折ピークが観察された。
図8に、比較例4の導電性酸化亜鉛粉末のNMRスペクトルを示す。比較例4の導電性酸化亜鉛粉末のNMRスペクトルには、酸化亜鉛へのアルミニウムの固溶を示す200ppm周辺のピークは観察されなかった。
図9に、比較例4の導電性酸化亜鉛粉末のラマンスペクトルを示す。比較例4の導電性酸化亜鉛粉末のラマンスペクトルには窒素の固溶に由来するピークは観察されなかった。比較例4の導電性酸化亜鉛粉末の比表面積、アルミニウムの固溶割合、窒素の固溶割合と、製造直後、30日経過後および210日経過後の体積抵抗率を表1に示す。比較例4の導電性酸化亜鉛粉末の比表面積は1.97m
2/g、アルミニウムの固溶割合は0質量%、窒素の固溶割合は0.021質量%であった。また、その体積抵抗率は、製造直後でも200.7Ω・cmと高く、30日経過後では423.3Ω・cmとさらに高くなり、また210日経過後では測定装置の測定限界(1×10
8Ω・cm)を上回るほど高くなり、著しく経時変化することが確認された。
【0080】
また、比較例4の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルを測定し、格子空孔(酸素欠損)の有無を調べた。実施例1と同様の方法で比較例3の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルを測定した。その結果を、実施例1、比較例3、5、6の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルと併せて
図14に示す。実施例1の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルには、500nm付近にピークが観察されないのに対して、比較例4の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルには、他の比較例と同様に500nm付近にピークが観察された。比較例4の導電性酸化亜鉛粉末が、製造直後に、体積抵抗率が高いものの導電性を示し、その経時変化が著しいのは、比較例4の導電性酸化亜鉛粉末の導電性が、格子空孔(酸素欠損)に起因することによるからと推察される。
【0081】
(比較例5)
アルミニウム源を塩化アルミニウム(AlCl
3)粉末とし、原料粉末を、塩化アルミニウム粉末10mol、酸化亜鉛粉末90molとしたこと以外は、実施例1と同様の方法によって、比較例5の導電性酸化亜鉛粉末を製造した。得られた比較例5の導電性酸化亜鉛粉末について、実施例1と同様の方法により、X線回折分析、比表面積の測定、アルミニウムの固溶割合の測定、および窒素の固溶割合の測定と、製造直後、30日経過後および210日経過後の体積抵抗率の測定を行った。得られた比較例5の導電性酸化亜鉛粉末のX線回折分析の結果を
図5に示す。X線回折分析の結果からは、
図5に示す通り、酸化亜鉛に由来する回折ピークが観察された。
図10に、比較例5の導電性酸化亜鉛粉末のNMRスペクトルを示す。比較例5の導電性酸化亜鉛粉末のNMRスペクトルには、酸化亜鉛へのアルミニウムの固溶を示す200ppm周辺のピークは観察されなかった。
図11に、比較例5の導電性酸化亜鉛粉末のラマンスペクトルを示す。比較例5の導電性酸化亜鉛粉末のラマンスペクトルには、窒素の固溶に由来するピークは観察されなかった。比較例5の導電性酸化亜鉛粉末の比表面積、アルミニウムの固溶割合、および窒素の固溶割合と、製造直後、30日経過後および210日経過後の体積抵抗率を表1に示す。比較例5の導電性酸化亜鉛粉末の比表面積は2.32m
2/g、アルミニウムの固溶割合は0質量%、窒素の固溶割合も0質量%であった。また、その体積抵抗率は、製造直後では94.1Ω・cmと低かったが、30日経過後では191.0Ω・cmと高くなり、210日経過後では測定装置の測定限界(1×10
8Ω・cm)を上回るほど高くなって、経時変化することが確認された。
【0082】
また、比較例5の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルを測定し、格子空孔(酸素欠損)の有無を調べた。実施例1と同様の方法で比較例5の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルを測定した。その結果を、実施例1、比較例3、4、6の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルと併せて
図14に示す。実施例1の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルには、500nm付近にピークが観察されないのに対して、比較例5の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルには、他の比較例と同様に500nm付近にピークが観察された。比較例5の導電性酸化亜鉛粉末が、製造直後に、低い体積抵抗率を持ち、導電性を示し、その経時変化が著しいのは、比較例5の導電性酸化亜鉛粉末の導電性が、格子空孔(酸素欠損)に起因することによるからと推察される。
【0083】
(比較例6)
アルミニウム源を窒化アルミニウム(AlN)粉末とし、原料粉末を、窒化アルミニウム粉末10mol、酸化亜鉛粉末90molとしたこと以外は、実施例1と同様の方法によって、比較例6の導電性酸化亜鉛粉末を製造した。得られた比較例6の導電性酸化亜鉛粉末について、実施例1と同様の方法により、X線回折分析、比表面積の測定、アルミニウムの固溶割合の測定、および窒素の固溶割合の測定と製造直後、30日経過後および210日経過後の体積抵抗率の測定を行った。得られた比較例6の導電性酸化亜鉛粉末のX線回折分析の結果を
図5に示す。X線回折分析の結果からは、
図5に示す通り、酸化亜鉛に由来する回折ピークが観察された。
図12に、比較例4の導電性酸化亜鉛粉末のNMRスペクトルを示す。比較例6の導電性酸化亜鉛粉末のNMRスペクトルには、酸化亜鉛へのアルミニウムの固溶を示す200ppm周辺のピークは観察されなかった。
図13に、比較例6の導電性酸化亜鉛粉末のラマンスペクトルを示す。比較例6の導電性酸化亜鉛粉末のラマンスペクトルには、窒素の固溶に由来するピークは観察されなかった。比較例6の導電性酸化亜鉛粉末の比表面積、アルミニウムの固溶割合、窒素の固溶割合と、製造直後、30日経過後および210日経過後の体積抵抗率は表1に示す通りであった。比較例6の導電性酸化亜鉛粉末の比表面積は3.17m
2/g、アルミニウムの固溶割合は0質量%、窒素の固溶割合は0.060質量%であった。また、その体積抵抗率は、製造直後でも424.0Ω・cmと高く、30日経過後および210日経過後のいずれにおいても、測定装置の測定限界(1×10
8Ω・cm)を上回るほど高くなり、著しく経時変化することが確認された。
【0084】
また、比較例6の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルを測定し、格子空孔(酸素欠損)の有無を調べた。実施例1と同様の方法で比較例6の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルを測定した。その結果を、実施例1、比較例3、4、5の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルと併せて
図14に示す。実施例1の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルには、500nm付近にピークが観察されないのに対して、比較例6の導電性酸化亜鉛粉末の蛍光スペクトルには、他の比較例と同様に500nm付近にピークが観察された。比較例6の導電性酸化亜鉛粉末が、製造直後に、体積抵抗率が高いものの導電性を示し、その経時変化が著しいのは、比較例6の導電性酸化亜鉛粉末の導電性が、格子空孔(酸素欠損)に起因することによるからと推察される。
【0085】
(比較例7)
混合粉末の焼成時の雰囲気をアンモニア(NH
3)雰囲気としたこと以外は、比較例3と同様の方法によって、混合粉末を焼成した。ところが、焼成後の坩堝内には、焼成物が残存しなかった。酸化亜鉛粉末がアンモニア雰囲気において加熱されたことにより、酸化亜鉛が還元されて亜鉛が生成し、生成した亜鉛がその沸点以上の温度に加熱されて、蒸発したためと考えられる。
【0086】
以上の通り、導電性酸化亜鉛粉末の製造に、本発明のAl−N−H系化合物粉末の一種であるAl
2(NH)
3粉末をアルミニウム源として用いることで、焼成後の解砕は行うものの、原料を混合して特定の温度範囲で焼成するだけの簡便な方法によって、体積抵抗率が低く、その経時変化が少ない、実用的な導電性酸化亜鉛粉末を製造することができた。そして、その導電性酸化亜鉛粉末は、アルミニウムと窒素がともに固溶した新規な導電性酸化亜鉛粉末であった。一方、従来のアルミニウム源である硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、および塩化アルミニウムを用いても、またアルミニウムと窒素をともに含有する窒化アルミニウムを用いても、あるいは従来のアルミニウム源を用いてアンモニア雰囲気で焼成しても、原料を混合して焼成するだけの方法では、体積抵抗率が低く、その経時変化が少ない、アルミニウムと窒素とがともに固溶した導電性酸化亜鉛粉末を得ることはできなかった。
【0087】
【表1】