特許第6201699号(P6201699)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6201699スプレーノズル異常検出装置及びそれを用いたスプレーノズル異常検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6201699
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】スプレーノズル異常検出装置及びそれを用いたスプレーノズル異常検出方法
(51)【国際特許分類】
   B21C 51/00 20060101AFI20170914BHJP
   B22D 11/124 20060101ALI20170914BHJP
   B22D 11/16 20060101ALI20170914BHJP
   B05B 15/02 20060101ALI20170914BHJP
   B05B 15/00 20060101ALI20170914BHJP
   B05B 15/04 20060101ALI20170914BHJP
   B21B 45/02 20060101ALN20170914BHJP
【FI】
   B21C51/00 Q
   B22D11/124 G
   B22D11/16 104P
   B05B15/02
   B05B15/00
   B05B15/04 103
   !B21B45/02 320
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-251193(P2013-251193)
(22)【出願日】2013年12月4日
(65)【公開番号】特開2015-107502(P2015-107502A)
(43)【公開日】2015年6月11日
【審査請求日】2016年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【弁理士】
【氏名又は名称】来田 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】楠 智行
(72)【発明者】
【氏名】八久保 平
(72)【発明者】
【氏名】杉山 誠司
(72)【発明者】
【氏名】藤原 和久
(72)【発明者】
【氏名】梶原 貢
【審査官】 池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−202959(JP,A)
【文献】 実開昭62−131768(JP,U)
【文献】 実開昭55−023234(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 45/00−45/02
B21C 51/00
B22D 11/00−11/22
B05B 15/00−15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼材又は鋳片に向けて噴射されるスプレー水の水量密度が20L/m/min〜700L/m/minであるスプレーノズルの異常を検出する装置であって、
前記スプレーノズルから噴射されるスプレー水を衝突させる透光性衝突板と、前記スプレーノズルと前記透光性衝突板の間に設置され、スプレー水が通過する貫通孔が2個以上設けられた遮蔽板と、前記透光性衝突板を挟んで前記スプレーノズルの反対側に設置され、隣接する前記貫通孔を通過して前記透光性衝突板に衝突したスプレー水が該透光性衝突板上で干渉して発生する干渉領域の白濁状態を撮像する撮像装置及び前記透光性衝突板を照らす照明装置とを備えることを特徴とするスプレーノズル異常検出装置。
【請求項2】
鋼材又は鋳片に向けて噴射されるスプレー水の水量密度が20L/m/min〜700L/m/minであるスプレーノズルの異常を請求項1記載のスプレーノズル異常検出装置を用いて検出する方法であって、
前記スプレーノズルから噴射され、前記遮蔽板に設けられた隣接する貫通孔を通過したスプレー水が、前記照明装置に照らされている前記透光性衝突板に衝突したときに該透光性衝突板上で干渉して発生する干渉領域の白濁状態を前記撮像装置で撮像する工程と、
前記干渉領域の白濁状態を前記撮像装置で撮像された画像から定量化し、定量化された数値の経時変化から前記スプレーノズルの異常を検出する工程とを備えることを特徴とするスプレーノズル異常検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼材又は鋳片の冷却に使用されるスプレーノズルの異常を検出するスプレーノズル異常検出装置及びそれを用いたスプレーノズル異常検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼の製造工程では、熱間圧延鋼材や連続鋳造鋳片の搬送ライン上に配置したスプレーノズルからスプレー水を噴射して鋼材や鋳片を冷却することが一般に行われている。スプレー水による鋼材や鋳片(以下では、「鋼材等」と記載する。)の冷却では、多くの場合、均一冷却が必要とされる。そのため、スプレーノズルから噴射されるスプレー水の水量密度(単位面積及び単位時間当たりのスプレー水供給量)は、スプレー水が衝突する鋼材等の表面において均一であることが求められる。しかし、スプレーノズルに供給される冷却水にカルシウム等が含まれているため、このカルシウム等がスプレーノズルの内部に付着堆積してスプレー水の噴射が不均一(水量密度不均一)となる場合がある。カルシウム等の付着堆積が進行すると、スプレー水の水量が減少し、さらに進行すると、スプレーノズルが完全に閉塞してスプレー水の噴射が不可能となる。
【0003】
上記問題に対して、例えば特許文献1では、スプレイノズル(スプレーノズル)の詰りを検出するため、スプレイノズルから放出される噴射水流(スプレー水)に直面する透視窓の背後に、透視窓を投光照射する照明装置と、透視窓の反射率変化を測定する撮像装置とを設置する、連続鋳造における冷却水噴射状況の判定方法および判定装置の発明が開示されている。特許文献1記載の発明では、スプレイノズルから放出される噴射水流が透視窓に衝突した際に生起される白濁部の輪郭を抽出し、当該輪郭の面積と当該輪郭内の階調別面積を算出して正常時の測定値と比較することによりスプレイノズルの詰りの有無を判別する。
【0004】
また、特許文献2では、連続鋳造片の冷却むらを回避するため、ノズルに供給される冷却液の流量を検出する流量検出手段及び冷却液の圧力を検出する圧力検出手段と、ノズルから噴出される冷却液の噴出状況を撮像する冷却液撮像手段とを備える連続鋳造用冷却装置の故障検知装置の発明が開示されている。特許文献2記載の発明では、ノズルから噴出された冷却液の完全正常状態を冷却液撮像手段で確認して完全正常状態における冷却液の流量−圧力特性に関するしきい値を記憶しておき、連続鋳造状態における冷却液の流量−圧力特性に関する実際データと完全正常状態における冷却液の流量−圧力特性に関するしきい値とを比較し、実際データがしきい値を超えていると判断されたとき警報を発する。
【0005】
さらにまた、スプレーノズルから噴射されるスプレー水の噴射領域をメッシュ状に区分けして各メッシュに計量容器を配置し、各計量容器に溜まるスプレー水の水量を測定することで、スプレー水の水量密度分布を求める方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭58−202959号公報
【特許文献2】特開平4−224065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の発明では、スプレイノズルから放出される噴射水流が透視窓に衝突した際に生起される白濁部全体を平均化して評価するため、スプレイノズルの部分的な詰り具合を正しく評価することが困難である。
また、特許文献2記載の発明では、ノズルから噴出される冷却液の流量−圧力特性を使用するため、ノズルの部分的な詰り等によって冷却液の噴出状況が不均一になる現象を検出することができない。加えて、連続鋳造機の二次冷却帯のような狭隘な箇所では、冷却液の完全正常状態を確認することが難しく、ノズルから冷却液が均一に噴出されているか評価することは困難である。
さらにまた、スプレー水の噴射領域をメッシュ状に区分けする方法は、スプレー水の水量密度分布を測定できるものの、測定に必要となる水量が計量容器に溜まるまで長時間を要することに加え、スプレー水を鋼材等に噴射する設備は一般に狭隘な箇所に配置されており、スプレー水の水量密度分布を測定するための機具を当該箇所に設置することは困難である。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、スプレーノズル閉塞の前兆となるスプレー水の水量密度不均一を検出することが可能なスプレーノズル異常検出装置及びそれを用いたスプレーノズル異常検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、第1の発明は、鋼材又は鋳片に向けて噴射されるスプレー水の水量密度が20L/m/min〜700L/m/minであるスプレーノズルの異常を検出する装置であって、
前記スプレーノズルから噴射されるスプレー水を衝突させる透光性衝突板と、前記スプレーノズルと前記透光性衝突板の間に設置され、スプレー水が通過する貫通孔が2個以上設けられた遮蔽板と、前記透光性衝突板を挟んで前記スプレーノズルの反対側に設置され、隣接する前記貫通孔を通過して前記透光性衝突板に衝突したスプレー水が該透光性衝突板上で干渉して発生する干渉領域の白濁状態を撮像する撮像装置及び前記透光性衝突板を照らす照明装置とを備えることを特徴としている。
【0010】
また、第2の発明は、鋼材又は鋳片に向けて噴射されるスプレー水の水量密度が20L/m/min〜700L/m/minであるスプレーノズルの異常を第1の発明に係るスプレーノズル異常検出装置を用いて検出する方法であって、以下の工程を備えている。
(1)前記スプレーノズルから噴射され、前記遮蔽板に設けられた隣接する貫通孔を通過したスプレー水が、前記照明装置に照らされている前記透光性衝突板に衝突したときに該透光性衝突板上で干渉して発生する干渉領域の白濁状態を前記撮像装置で撮像する。
(2)前記干渉領域の白濁状態を前記撮像装置で撮像された画像から定量化し、定量化された数値の経時変化から前記スプレーノズルの異常を検出する。
【0011】
2個以上の貫通孔が設けられた遮蔽板をスプレーノズルと透光性衝突板の間に設置すると、スプレーノズルから噴射され隣接する貫通孔を通過したスプレー水は、透光性衝突板上で干渉して干渉領域が白濁化する。干渉領域の白濁状態、例えば干渉領域の大きさ(面積)や輝度はスプレー水量に応じて変化する。具体的には、貫通孔を通過するスプレー水量が多ければ、干渉領域の拡大や輝度の上昇(白くなる)が認められ、貫通孔を通過するスプレー水量が少なければ、干渉領域の縮小や輝度の低下(黒くなる)が認められる。従って、干渉領域の白濁状態を評価することで、スプレーノズルの水量密度不均一の有無を検出することができる。
【0012】
なお、スプレー水の水量密度が20L/m/min未満であると、スプレー水量が少なすぎて干渉領域が白濁化せず、スプレー水の水量密度が700L/m/min超になると、スプレー水量が多すぎて干渉領域の白濁化を判別することができなくなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、2個以上の貫通孔が設けられた遮蔽板をスプレーノズルと透光性衝突板の間に設置し、隣接する貫通孔を通過したスプレー水が透光性衝突板上で干渉することで発生する干渉領域の白濁状態を測定することにより、スプレー水の噴出状況が不均一になる現象を検出してスプレーノズルの部分的な詰り具合を正しく評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の基本構成を示した模式図である。
図2】透光性衝突板上に発生する干渉領域を示す説明図であり、(A)は遮蔽板の貫通孔が2個の場合、(B)は遮蔽板の貫通孔が3個の場合、(C)は遮蔽板の貫通孔が4個の場合である。
図3】(A)は本発明の一実施の形態に係るスプレーノズル異常検出装置が内蔵されたダミーバーの斜視図、(B)は同ダミーバーの断面図である。
図4】検証試験に使用した試験装置の構成を示す模式図である。
図5】スプレーノズルの詰りの有無と最大輝度との関係を、エリアA、Bそれぞれについて示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。
【0016】
本発明に係るスプレーノズル異常検出装置10は、図1に示すように、スプレーノズル11の噴射孔11aに対峙し噴射孔11aから噴射されるスプレー水Wが衝突する透光性衝突板16と、透光性衝突板16を挟んでスプレーノズル11の反対側に設置された撮像装置22及び照明装置24とを備えている。また、スプレーノズル11と透光性衝突板16の間には、スプレー水Wが通過する貫通孔14が2個以上設けられた遮蔽板12が透光性衝突板16と平行に設置されている。
【0017】
スプレーノズル11の噴射孔11aから噴射され、遮蔽板12に設けられた貫通孔14を通過したスプレー水Wは、空気を巻き込んで円錐状に拡散し、照明装置24に照らされている透光性衝突板16に衝突する。例えば貫通孔14が2個の場合、貫通孔14aを通過したスプレー水W1と貫通孔14bを通過したスプレー水W2は、透光性衝突板16上で干渉し、干渉領域Kで水滴が発生する。干渉領域Kで水滴が発生すると、透光性衝突板16を通過した照明装置24の光が水滴に当たって乱反射し、干渉領域Kが白濁化する。
干渉領域Kの白濁度は発生した水滴の多寡に依存する。従って、干渉領域Kの大きさ(面積)や干渉領域Kの輝度(白さ)によって、発生した水滴の多寡を判別することができる。即ち、各貫通孔14を通過するスプレー水Wの水量が多ければ、干渉領域Kの拡大や輝度の上昇(白くなる)が認められ、各貫通孔14を通過するスプレー水Wの水量が少なければ、干渉領域Kの縮小や輝度の低下(黒くなる)が認められる。
【0018】
因って、貫通孔14を通過したスプレー水Wが、照明装置24に照らされている透光性衝突板16上で干渉して発生する干渉領域Kの白濁状態を撮像装置22で撮像し、撮像画像に基づいて干渉領域Kの大きさ(面積)や輝度の経時変化を評価することで、スプレーノズル11の水量密度不均一の有無を判別することができる。
【0019】
透光性衝突板16上に発生する干渉領域Kの位置を図2に示す。なお、同図における貫通孔14a〜14dは、遮蔽板12の貫通孔14a〜14dを透光性衝突板16上に投影したものである。
遮蔽板12に設けられた貫通孔14が2個の場合、隣接する貫通孔14aを通過したスプレー水W1と貫通孔14bを通過したスプレー水W2が透光性衝突板16上で干渉して、透光性衝突板16上に投影された貫通孔14aと貫通孔14bを結んだ線分の中点付近に干渉領域Kが発生する(図2(A)参照)。また、貫通孔14が3個の場合、隣接する貫通孔14aを通過したスプレー水W1と貫通孔14bを通過したスプレー水W2と貫通孔14cを通過したスプレー水W3が透光性衝突板16上で干渉して、透光性衝突板16上に投影された貫通孔14a、貫通孔14b、及び貫通孔14cを頂点とする三角形の中心付近に干渉領域Kが発生する(図2(B)参照)。同様に、貫通孔14が4個の場合、隣接する貫通孔14aを通過したスプレー水W1、貫通孔14bを通過したスプレー水W2、貫通孔14cを通過したスプレー水W3、及び貫通孔14dを通過したスプレー水W4が透光性衝突板16上で干渉して、透光性衝突板16上に投影された貫通孔14a、貫通孔14b、貫通孔14c、貫通孔14dを頂点とする四角形の中心付近に干渉領域Kが発生する(図2(C)参照)。
【0020】
このように、本発明では、スプレー水Wが通過する貫通孔14が2個以上設けられた遮蔽板12をスプレーノズル11と透光性衝突板16の間に設置して透光性衝突板16上にスプレー水Wの干渉領域Kを発生させることにより、鮮明な白濁部を安定的に発生させてスプレーノズル11の詰り具合を正しく評価することができる。一方、特許文献1に記載されている従来方法の場合、白濁部の発生が不鮮明であることに加え不安定であるため、スプレーノズル11の詰り具合を正しく評価することができない。
【0021】
本発明が対象とするスプレーノズル11は、鋼材又は鋳片の均一冷却に使用されるスプレーノズルであって、鋼材又は鋳片に向けて噴射されるスプレー水Wの水量密度は20L/m/min〜700L/m/minである。
スプレーノズル11は、スプレー水Wの噴射領域がノズル径よりも広く、スプレーノズルとして、例えばミストノズルや円形噴射ノズル、楕円形噴射ノズルなどが存在する。なお、本発明が対象とするスプレーノズル11は、水と空気の混合流体を噴射する気水ノズルも含む。
【0022】
透光性衝突板16は、光が透過する板材であればよく、例えば透明なアクリル板やガラス板などを使用することができる。透光性衝突板16の板厚としては、スプレー水Wの水圧によって透光性衝突板16が撓まない程度の厚さであればよい。
【0023】
一方、遮蔽板12には金属製の板材などを使用することができる。遮蔽板12に金属製の板材を使用した場合、遮蔽板12の板厚は1mm〜2mm程度でよい。
透光性衝突板16上にスプレー水Wの干渉領域Kを発生させるため、遮蔽板12に形成する貫通孔14は少なくとも2個以上必要である。好ましくは、遮蔽板12の水平二方向にそれぞれ3個以上の貫通孔14を形成することで、スプレーノズル11の詰り具合をより良好な精度で検出することができる。
貫通孔14の直径は4mm〜10mm程度、隣接する貫通孔14間の中心間距離は10mm〜100mm程度が目安となる。
【0024】
なお、スプレーノズル11と遮蔽板12との距離並びに遮蔽板12と透光性衝突板16との距離は、スプレーノズル11による噴射が正常な状態において透光性衝突板16上にスプレー水Wの干渉領域Kが発生するように、スプレーノズル11の水量密度並びに貫通孔14の直径及び隣接する貫通孔14間の中心間距離に応じて、設定する必要がある。
【0025】
スプレー水Wの干渉領域Kを撮像する撮像装置22には、乱反射した光を電圧に変換する撮像素子、例えばCCDセンサやCMOSセンサを内蔵するデジタルカメラを使用することができる。CCDセンサやCMOSセンサは、光の強さに比例して電圧が変化するため、白濁化した干渉領域Kの輝度を数値化して評価することが可能となる。
また、透光性衝突板16を照射する照明装置24には、LED等の白色光源などを使用することができる。
【0026】
図3は、連続鋳造機の二次冷却帯を構成するスプレーノズルの異常を検出することができる本発明の一実施の形態に係るスプレーノズル異常検出装置20を示したものである。本実施の形態におけるスプレーノズル異常検出装置20は、連続鋳造の開始時に使用されるダミーバー21に内蔵されている。図3(A)は、スプレーノズル異常検出装置20が内蔵されたダミーバー21の斜視図、(B)はダミーバー21の断面図である。
【0027】
スプレーノズル異常検出装置20が内蔵されているダミーバー21は、図3(B)に示すように中空とされ、ダミーバー21を構成する筐体26の一部が開口部とされ、複数の貫通孔15が設けられた遮蔽板13が当該開口部に取り付けられている。遮蔽板13に設けられた貫通孔15は、ダミーバー21の走行方向及び幅方向にそれぞれ所定の間隔をあけてマトリックス状に配置されている。
【0028】
ダミーバー21の内部には、遮蔽板13に対峙する位置に透光性衝突板17が設置され、遮蔽板13の貫通孔15を通過して透光性衝突板17に衝突したスプレー水の衝突状況を撮像する撮像装置23及び透光性衝突板17を照らす照明装置25が、透光性衝突板17を挟んで遮蔽板13の反対側に設置されている。撮像装置23及び照明装置25は、パーソナルコンピュータなどの制御装置28にケーブル27を介して接続され、制御装置28によって制御される。また、撮像装置23で撮像した撮像画像は、ケーブル27を介して制御装置28に出力される。
なお、撮像装置23及び照明装置25にスプレー水がかからないようにするため、撮像装置23及び照明装置25は防水板29で囲繞され、ダミーバー21内に滲入したスプレー水を排出するための排出孔(図示省略)がダミーバー21に設けられている。
【0029】
以下、スプレーノズル異常検出装置20が内蔵されたダミーバー21を連続鋳造機に挿入して、二次冷却帯を構成するスプレーノズルの異常を検出する方法について説明する。
(1)二次冷却帯を構成するスプレーノズルから噴射され、貫通孔15を通過したスプレー水が、照明装置25に照らされている透光性衝突板17上で干渉して発生する干渉領域の白濁状態を撮像装置23で撮像する。
(2)撮像装置23に内蔵されているCCDセンサなどの撮像素子が、撮像視野の画素ごとの受光量を電圧に変換し、その電圧レベルを例えば256階調の輝度に変換する。撮像素子が変換した画素ごとの輝度は制御装置28に出力される。
(3)制御装置28では、撮像結果(白を255、黒を0とする256階調のグレー画像)がディスプレイ上に表示され、測定者はディスプレイ上で白濁部を指定する。測定者は、ディスプレイに表示される遮蔽板13の貫通孔15の位置を参考にして、隣接する貫通孔15の中間付近に存在する白濁部を指定することができる。この指定によって白濁部の画素が確定し、指定された白濁部の輝度の最大値や平均値を算出(定量化)することができる。そして、この定量化された数値の経時変化からスプレーノズルの異常を検出する。
【0030】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、上記実施の形態では、ダミーバーの内部にスプレーノズル異常検出装置を設置したが、スプレーノズル異常検出装置を特製の筐体で覆って単独の計測装置を構成してもよい。また、上記実施の形態では、撮像画像を256階調のグレー画像としたが、1024階調以上のカラー画像としてもよい。
【実施例】
【0031】
本発明の効果について検証するために実施した検証試験について説明する。
検証試験に使用した試験装置の構成を図4に示す。スプレーノズル11に対峙するように透光性遮蔽板16を設置し、透光性衝突板16を挟んでスプレーノズル11の反対側に撮像装置22と照明装置24を設置した。そして、スプレー水Wが通過する貫通孔14a、14bが設けられた遮蔽板12を、遮蔽板12の一部がスプレーノズル11の噴射領域を覆うように、スプレーノズル11と透光性衝突板16の間に配置した。
なお、スプレーノズル11による噴射が正常な状態において透光性衝突板16上にスプレー水Wの干渉領域が発生するように、スプレーノズル11、遮蔽板12、及び透光性衝突板16の位置、並びに貫通孔14a、14bの直径及び中心間距離を調整した。
【0032】
図4に示すように、透光性衝突板16上に投影された貫通孔14aと貫通孔14bの中間点付近を干渉領域が発生するエリアA、遮蔽板12に遮られていない透光性衝突板16上の特定領域をエリアBとし、エリアAとエリアBが撮像装置22の撮像視野に収まるようにエリアAとエリアBを設定した。
【0033】
また、スプレーノズル11には正常噴射を行うスプレーノズル(水量密度は20L/m/min〜700L/m/min)を使用し、スプレーノズル11に供給される水量を30%減じることで、詰りのあるスプレーノズルを模擬した。
スプレーノズル11に詰りがある状態と詰りがない状態をそれぞれ10回撮像し、エリアAとエリアBの各最大輝度(白を255、黒を0とする256階調値)をプロットした。スプレーノズル11の詰りの有無と最大輝度との関係を、エリアA、Bそれぞれについて図5に示す。なお、同図は、詰りのない状態におけるスプレーノズル11の水量密度が200L/m/minの場合の結果を示している。また、バックグラウンド光(エリアAでは遮蔽板12からの反射光、エリアBではスプレーノズル11側からの反射光)の影響をエリアAとエリアBで同一条件とするため、白濁部の最大輝度からバックグラウンド光の最大輝度を差し引いた値を縦軸に示している。
【0034】
実施例であるエリアAでは、スプレーノズル11に詰りがない場合、白濁部が発生して最大輝度が高くなり、スプレーノズル11に詰りがある場合、エリアAにおけるスプレー水量が不足し、白濁部が現れず最大輝度が低くなる。スプレーノズル11に詰りがない場合と詰りがある場合の最大輝度の平均値の差は30以上あり、スプレーノズル11の詰りの有無を明確に判別することができる。
一方、比較例であるエリアBでは、スプレーノズル11の詰りの徴候は見られるが、明確な輝度差は認められず、スプレーノズル11の詰りの有無を判別することができない。また、比較例は、実施例に比べて最大輝度の変動が大きいことがわかる。
なお、詰りのない状態におけるスプレーノズル11の水量密度を、20L/m/min〜700L/m/minの間で変更しても上記と同様の傾向が認められた。
【符号の説明】
【0035】
10、20:スプレーノズル異常検出装置、11:スプレーノズル、11a:噴射孔、12、13:遮蔽板、14、14a、14b、14c、14d、15:貫通孔、16、17:透光性衝突板、21:ダミーバー、22、23:撮像装置、24、25:照明装置、26:筐体、27:ケーブル、28:制御装置、29:防水板、K:干渉領域、W、W1、W2、W3、W4:スプレー水
図1
図2
図3
図4
図5