(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に図面を参照しながら、本発明に係る音響装置、音響処理方法および音響処理プログラムの好適な実施形態を説明する。係る実施形態に示す具体的な数値および外観構成などは、本発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本発明に直接関係のない要素は詳細な説明および図示を省略している。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に適用可能な車載用音響再生装置(以下、カーオーディオ装置と呼ぶ)の一例の構成を示す。
図1において、カーオーディオ装置1aは、車両100に搭載されて用いられる。カーオーディオ装置1aは、オーディオ再生部10と、ラウドネス補正部11と、イコライザ12と、DAC(Digital/Analog Convertor)13と、音量調整部14と、アンプ部15と、スピーカ(SP)16とを有する。さらに、カーオーディオ装置1aは、制御部20aと、記憶部21と、操作部22とを有する。
【0015】
オーディオ再生部10は、CD(Compact Disk)といったディスク記録媒体や、不揮発性の半導体メモリに記録されたオーディオデータを再生し、ディジタル方式のオーディオ信号として出力する。オーディオ再生部10から出力されたオーディオ信号は、ラウドネス補正部11に供給される。ラウドネス補正部11は、供給されたオーディオ信号に対して、制御部20aから供給されるラウドネス補正値に応じて等ラウドネス曲線に従った周波数特性の補正(ラウドネス補正)を施して出力する。
【0016】
ラウドネス補正部11から出力されたオーディオ信号は、イコライザ12に供給される。イコライザ12は、供給されたオーディオ信号に対して制御部20aから供給されるパラメータ(EQパラメータ)に従い周波数特性の補正を施して出力する。イコライザ12から出力されたオーディオ信号は、DAC13によりアナログ方式のオーディオ信号に変換されて音量調整部14に供給される。
【0017】
音量調整部14は、制御部20aから供給される音量制御値に従い、DAC13から供給されたオーディオ信号のレベルを調整する。音量制御部14でレベルを調整されたオーディオ信号は、アンプ部15で電力増幅されて、車両100の車内に取り付けられるスピーカ16に供給され、音として出力される。
【0018】
制御部20aは、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)と、上述したラウドネス補正部11、イコライザ12および音量調整部14に対するインターフェイスとを有する。これに限らず、制御部20aは、オーディオ再生部10に対するインターフェイスをさらに有してもよい。制御部20aは、ROMに予め記憶されたプログラムに従い、RAMをワークメモリとして用いてCPUが動作し、インターフェイスを介して上述の各部を制御する。
【0019】
記憶部21は、例えば不揮発性の半導体メモリやハードディスクドライブであって、制御部20aが用いる各種データが記憶される。操作部22は、ユーザ操作を受け付け、ユーザ操作に応じた制御信号を制御部20aに供給する。操作部22から供給された制御信号に応じて制御部20aがオーディオ再生部10、ラウドネス補正部11、イコライザ12および音量調整部14を制御することで、ユーザは、カーオーディオ装置1aに操作に応じた動作を実行させることができる。
【0020】
なお、第1の実施形態では、カーオーディオ装置1aは、車両100に設けられたマイクロフォン30から出力された、マイクロフォン30に収音された音声に基づくオーディオ信号が入力される。マイクロフォン30から出力されカーオーディオ装置1aに入力されたオーディオ信号は、制御部20aに供給される。
【0021】
例えば、マイクロフォン30により、走行中の車両100において路面にタイヤのトレッドパターンが叩き付けられることにより発生する音が当該車両100の車内に伝達したロードノイズを収音し、このロードノイズによるオーディオ信号を制御部20aに供給する。以下、特に記載のない限り、このロードノイズによるオーディオ信号を、ロードノイズ信号と呼ぶ。ロードノイズは、カーオーディオ装置1aのスピーカ16から出力される音に対する外来ノイズである。
【0022】
なお、マイクロフォン30により、走行中の車両100のエンジン音などのメカニカルノイズを、ロードノイズと共に、スピーカ16の再生音に対する外来ノイズとして収音してもよい。
【0023】
図2は、第1の実施形態に係る制御部20aの機能を説明するための一例の機能ブロック図である。制御部20aは、ロードノイズ補正部200aと、音量調整部220とを含む。これらロードノイズ補正部200aおよび音量調整部220は、制御部20aに含まれるCPU上で動作するプログラムにより構成される。これに限らず、これらロードノイズ補正部200aおよび音量調整部220を、それぞれ独立したハードウェアで構成してもよい。
【0024】
ロードノイズ補正部200aは、マイクロフォン30から供給されたロードノイズ信号が入力される。また、ロードノイズ補正部200aは、ロードノイズ信号の周波数特性を人の聴覚の特性に応じた周波数特性に変換するための変換係数が入力される。ロードノイズ補正部200aは、入力されたロードノイズ信号と変換係数とに基づきEQパラメータを生成し、イコライザ12に供給する。
【0025】
音量調整部220は、ユーザ操作に応じて操作部22から出力された制御信号が操作入力として入力される。音量調整部220は、例えば、操作入力に応じて音量制御値を生成し、音量調整部14に供給する。また、音量調整部220は、音量制御値に応じてラウドネス補正値を生成し、ラウドネス補正部11に供給する。
【0026】
図3は、第1の実施形態に係るロードノイズ補正部200aの機能を説明するための一例の機能ブロック図である。ロードノイズ補正部200aは、ロードノイズ取得部201と、解析部202aと、変換部203と、EQ設定部204とを含む。これらロードノイズ取得部201、解析部202a、変換部203およびEQ設定部204は、制御部20aに含まれるCPU上で動作する音響処理プログラムにより構成される。これに限らず、これらロードノイズ取得部201、解析部202a、変換部203およびEQ設定部204をそれぞれ独立したハードウェアで構成してもよい。また、当該音響処理プログラムに、上述した音量調整部220の機能を含めてもよい。
【0027】
なお、上述した音響処理プログラムは、例えば制御部20aが有するROMに予め記憶されて提供される。これに限らず、カーオーディオ装置1aに対して不揮発性メモリや、CDやDVD(Digital Versatile Disk)を再生するドライブを接続するインターフェイスを設け、当該音響処理プログラムを、これら不揮発性メモリやCD、DVDといった記録媒体から提供してもよい。さらに、カーオーディオ装置1aに対してインターネットに接続するための通信インターフェイスを設け、当該音響処理プログラムをインターネットから供給することも可能である。
【0028】
ロードノイズ取得部201は、マイクロフォン30から供給されたロードノイズ信号を取得する。例えば、ロードノイズ取得部201は、アナログ方式で供給されたロードノイズ信号をディジタル方式の信号に変換し、図示されないメモリに一時的に記憶する。解析部202aは、例えばフーリエ変換を用いて、ロードノイズ取得部201で取得されたロードノイズ信号の周波数特性を解析する。解析結果は、変換部203に供給される。
【0029】
変換部203は、解析部202aで解析されたロードノイズ信号の周波数特性を、変換係数に従い、人の聴覚特性(聴覚感度特性)を考慮した周波数特性に変換する。以下、この変換部203の処理について詳細に説明する。
【0030】
人は、空気振動を耳で検出することで、脳が音として認識する。その際、人は、聴覚特性に従い、実際に空気振動として放出されている音の周波数特性と異なった周波数特性で音を感じる。具体的には、
図4のフレッチャー・マンソンの等ラウドネス曲線(ISO(International Organization for Standardization) 226)に示されるように、人の聴覚は、中域(例えば1kHz〜5kHz)に対して低域および高域の感度が低く、また、音量(音圧)が低いほど、低域および高域の中域に対する感度の低下が顕著となる。さらに、感度の低下は、高域よりも低域の方がより顕著となる。
【0031】
音の実測値に基づく周波数特性を、このような、人の聴覚特性を考慮した周波数特性に変換するための周波数重み付け特性の一つとして、A特性と呼ばれる特性が規定されている。
図5を用いて、第1の実施形態に係る、A特性を用いたロードノイズ信号の周波数特性の変換について説明する。なお、
図5は、ディジタル方式のオーディオ信号の基準レベルを0dBとして示した図である。
【0032】
図5において、曲線302がA特性を示す。A特性は、主に騒音レベルの測定に用いられる、人の聴覚を考慮した周波数重み付け特性であって、JIS C1509シリーズ「電気音響−サウンドレベルメータ(騒音計)」に規定される。A特性は、
図5において曲線302として示されるように、2,000Hz〜3,000Hz付近をピークとして、低域側および高域側にそれぞれ音圧レベルが低下する周波数特性を示す。
【0033】
図5において、曲線300aは、ロードノイズの実測値すなわちロードノイズ信号の周波数特性の例を示し、曲線300aを平均化して曲線301aとして示す。曲線300aおよび301aに示すように、ロードノイズ信号は、高域から低域に向けてレベルが増大する周波数特性を有し、低域成分を多く含む信号となる。以下、この曲線300aを平均化した曲線301aが示す周波数特性を、ロードノイズ信号の周波数特性と見做す。
【0034】
図5において、曲線303aは、曲線301aの周波数特性を、曲線302で示されるA特性周波数重み付けを用いて人の聴覚を考慮した特性に変換した変換後の周波数特性を示す。曲線303aに示されるように、A特性周波数重み付けを用いて周波数特性を変換することで、200Hz〜300Hz付近をピークとして、低域側および高域側にそれぞれ音圧レベルが低下する周波数特性が得られる。また、変換後の周波数特性は、A特性の周波数特性のピークに近い1,500Hz付近にも小さなピークが存在する。この曲線303aに示される周波数特性が、人が聞いて感じるロードノイズの周波数特性と見做すことができる。より具体的には、ロードノイズは、人の耳には、200Hz〜300Hz付近の成分が感知され易く、次いで、1,500Hz付近の成分が感知され易いことになる。
【0035】
図6は、ロードノイズが
図5の場合に比べて小さく、ロードノイズ信号のレベルが
図5の曲線301a(曲線300a)よりも低い場合の例を示す。すなわち、
図6において、曲線300bがロードノイズ信号の周波数特性であり、この曲線300bの特性を平均化した周波数特性を曲線301bで示している。この場合は、ロードノイズ信号の周波数特性をA特性周波数重み付けを用いて変換すると、
図6に曲線303bで示されるように、
図5に示す曲線303aに対して全体的にレベルの低い周波数特性が得られる。この場合、変換後の周波数特性は、100Hz付近と1,500Hz付近にピークがあり、これらの周波数成分の音が、人の耳に感知され易いことを示している。
【0036】
例えば
図5の例において、カーオーディオ装置1のスピーカ16から出力される音声のうち、曲線303a以下の成分は、ロードノイズにマスキングされ人には聞こえないことになる。そのため、第1の実施形態に係るロードノイズ補正部200aは、オーディオ再生部10から出力されるオーディオ信号の周波数特性を、この曲線303aに応じた周波数特性で補正することで、ロードノイズによる再生音のマスキングを抑制する。
【0037】
より具体的には、曲線302で示されるA特性による周波数特性を示す情報を、記憶部21に予め記憶しておく。変換部203は、記憶部21から、曲線302のような、A特性周波数重み付けを示す情報を変換係数として取得する。変換部203は、解析部202aから供給された、曲線301a(曲線300a)で示したようなロードノイズ信号の周波数特性を変換係数を用いて変換して、曲線303aに示されるような変換後の周波数特性を取得する。
【0038】
変換部203は、取得した変換後の周波数特性を示す情報を、EQ設定部204に供給する。EQ設定部204は、変換部203から供給された変換後の周波数特性を示す情報に基づき、イコライザ12においてオーディオ信号の周波数特性の補正を行うためのパラメータを生成する。例えば、EQ設定部204は、
図7に曲線310で例示するように、イコライザ12が、曲線303aに対応してオーディオ信号の周波数毎のレベルを増加させるような特性となるようなパラメータを生成する。パラメータは、例えば、イコライザ12を構成するディジタルフィルタに対するフィルタ係数である。
【0039】
なお、
図7の曲線311は、
図6の、ロードノイズが低い場合の曲線303bに対応して設定されるイコライザ12の周波数特性の例を示す。このように、ロードノイズの大きさに応じて、イコライザ12に設定される周波数特性も変化する。
【0040】
EQ設定部204は、生成したパラメータをイコライザ12に設定する。イコライザ12が、設定されたパラメータに従い供給されたオーディオ信号に対して周波数特性の補正を行うことで、ロードノイズによりマスキングされる周波数帯域のレベルが増大され、マスキングを抑制することができる。
【0041】
図8は、第1の実施形態による処理の例を示すフローチャートである。ロードノイズ補正部200aにおいて、ロードノイズ取得部201は、ステップS10で、マイクロフォン30から出力されたロードノイズ信号を取得する。次のステップS11で、解析部202aは、ステップS10で取得されたロードノイズ信号を解析して、周波数特性を取得する。次のステップS12で、変換部203は、例えば記憶部21から読み出した、曲線302に示したA特性周波数重み付けに基づく変換係数を用いて、ステップS11で解析部202aに解析されたロードノイズ信号の周波数特性を、聴覚特性を考慮した周波数特性に変換する。
【0042】
次のステップS13で、EQ設定部204は、ステップS12で変換部203に変換された周波数特性に従いオーディオ信号の周波数特性を補正するためのイコライザ12のパラメータを生成する。そして、EQ設定部204は、次のステップS14で、生成したパラメータをイコライザ12に設定する。
【0043】
以上の、ステップS10〜ステップS14の処理を、所定の周期で繰り返し実行することで、車両100において発生するロードノイズの、カーオーディオ装置1aの再生音に対するマスキングを略リアルタイムで抑制することが可能となる。
【0044】
従来では、例えば
図5において曲線301aで示される、ロードノイズ信号の周波数特性そのものを用いてイコライザ12のパラメータを設定していた。この場合、ロードノイズ信号は、人の聴覚特性が考慮されたものではないため、例えばA特性周波数重み付けによる低域および高域の減衰が加味されていない。したがって、従来の技術では、人の聴覚特性では感度が低下する低域や高域のレベルを過度に増大させてしまうことになる。
【0045】
ロードノイズは、オーディオ再生部10から出力されるオーディオ信号に含まれる音ではなく、人が直接的に聞く音である。したがって、第1の実施形態のように、ロードノイズ信号の周波数特性を、例えばA特性周波数重み付けを用いて人の聴覚特性に従い変換した周波数特性に基づき、イコライザ12のパラメータを設定することで、人が直接的に聞くロードノイズによる、スピーカ16から出力される音に対するマスキングを抑制することができる。
【0046】
(第1の実施形態の変形例)
次に、第1の実施形態の変形例について説明する。上述では、ロードノイズ信号の周波数特性を聴覚特性を考慮した周波数特性に変換するために、A特性周波数重み付けを用いたが、これはこの例に限定されない。第1の実施形態では、この周波数特性の変換を、フレッチャー・マンソンによる等ラウドネス曲線に基づき行う。例えば、等ラウドネス曲線の凹凸を逆にした特性に従い、周波数特性の変換を行うことが考えられる。
【0047】
図4を用いて説明したように、等ラウドネス曲線によれば、人の聴覚の周波数特性は、音の大きさに応じて変化する。そのため、第1の実施形態では、ロードノイズ補正部200aにおいて、解析部202aは、ロードノイズ信号のレベルをさらに取得し、変換部203は、ロードノイズ信号の信号レベルに応じた変換係数を取得する。
【0048】
図9は、第1の実施形態の変形例による処理の例を示すフローチャートである。上述した
図3の構成を参照しながら、
図9のフローチャートによる処理について説明する。ロードノイズ補正部200aにおいて、ロードノイズ取得部201は、ステップS20で、マイクロフォン30から出力されたロードノイズ信号を取得する。解析部202aは、取得されたロードノイズ信号を解析して周波数特性を取得する(ステップS21)。
【0049】
また、解析部202aは、取得されたロードノイズ信号を解析して信号レベルを取得する(ステップS22)。次のステップS23で、変換部203は、ステップS22で取得された信号レベルに対応する変換係数を選択する。例えば、等ラウドネス曲線に基づき信号レベルの各段階に対応する変換係数をそれぞれ作成し、記憶部21に予め記憶しておく。変換部203は、ステップS22で取得された信号レベルに従い、記憶部21に記憶される変換係数から対応する変換係数を選択する。
【0050】
ステップS21およびステップS23の処理が終了すると、処理がステップS24に移行される。ステップS24で、変換部203は、ステップS21で取得されたロードノイズ信号の周波数特性を、ステップS23で選択された変換係数を用いて聴覚特性を考慮した周波数特性に変換する。
【0051】
次のステップS25で、EQ設定部204は、ステップS24で変換部203に変換された周波数特性に従いオーディオ信号の周波数特性を補正するためのイコライザ12のパラメータを生成する。そして、EQ設定部204は、次のステップS26で、生成したパラメータをイコライザ12に設定する。
【0052】
以上の、ステップS20〜ステップS26の処理を、所定の周期で繰り返し実行することで、車両100において発生するロードノイズの、カーオーディオ装置1aの再生音に対するマスキングを、等ラウドネス曲線に基づき略リアルタイムで抑制することが可能となる。
【0053】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態に係るカーオーディオ装置は、予め、車両で発生するロードノイズを、ロードノイズの大きさが変わる条件毎に収音して各ロードノイズ信号の周波数特性を取得し、記憶部に記憶させる。そして、当該カーオーディオ装置は、車両の走行時に当該条件を取得して、取得された条件に対応するロードノイズ信号の周波数特性を記憶部から選択し、選択された周波数特性に、聴覚特性を考慮した周波数特性に変換する変換処理を施すようにしている。
【0054】
第2の実施形態に係るカーオーディオ装置は、これにより、車両の走行中にマイクロフォンでロードノイズを収音すること無く、ロードノイズによるカーオーディオ装置の再生音に対するマスキングを抑制することができる。
【0055】
図10〜
図13を用いてより具体的に説明する。なお、
図10〜
図13において、上述の
図1と共通する部分には同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
図10において、解析部202bは、予め車両100のロードノイズをマイクロフォン30で収音したロードノイズ信号を解析して、当該ロードノイズ信号の周波数特性を取得する。そして、解析部202bは、取得した周波数特性を示す情報を記憶部21に記憶させる。解析部202bは、この処理を、車両100走行時の、ロードノイズが変化する各条件について実行し、周波数特性を示す情報と条件とを関連付けて記憶部21に記憶させる。
【0056】
第2の実施形態では、ロードノイズが変化する条件として、車両100の走行速度を用いる。例えば、車両100の走行速度が高速になるほど、ロードノイズの大きさが大きくなり、走行速度が低速では、ロードノイズの大きさが小さくなる。そこで、複数の走行速度についてそれぞれロードノイズを収音して、解析部202bにより、各ロードノイズ信号の周波数特性を解析する。解析部202bは、ロードノイズ信号の周波数特性を示す情報と、走行速度とを関連付けて記憶部21に記憶させる。
【0057】
図11は、第2の実施形態に係るカーオーディオ装置1bの一例の構成を示す。
図11において、車両100の走行速度を示す速度情報として、例えば車速パルスが車両100から制御部20bに供給される。制御部20bは、
図12に例示されるように、ロードノイズ補正部200bと、音量調整部220とを有する。速度情報は、ロードノイズ補正部200bに供給される。
【0058】
図13は、第2の実施形態に係るロードノイズ補正部200bの機能を説明するための一例の機能ブロック図である。ロードノイズ補正部200bは、
図3に示したロードノイズ補正部200aに対して、ロードノイズ取得部201および解析部202aの代わりに、速度情報取得部230およびロードノイズ特性取得部231を有している。
【0059】
なお、
図10に示した解析部202bは、ロードノイズ補正部200b内または制御部20b内に含めてもよいし、制御部20b外、さらには、カーオーディオ装置1b外の構成であってもよい。
【0060】
速度情報取得部230は、車両100からの速度情報が供給される。速度情報取得部230は、車速パルスとして供給された速度情報に基づき車両100の走行速度を取得する。速度情報取得部230は、取得した走行速度を、ロードノイズ特性取得部231に供給する。
【0061】
ロードノイズ特性取得部231は、速度情報取得部230から供給された走行速度に基づき、記憶部21から、
図10を用いて説明したようにして解析部202bにより取得され予め記憶された、当該走行速度に対応する周波数特性を示す情報を選択して取得する。取得された周波数特性を示す情報は、変換部203に供給される。変換部203は、聴覚特性を考慮した周波数特性に基づく変換係数を例えば記憶部21から取得する。
【0062】
ここでは、聴覚特性を考慮した周波数特性として、第1の実施形態で説明した、A特性周波数重み付けを用いるものとする。これに限らず、聴覚特性を考慮した周波数特性として、第1の実施形態の変形例で説明したように、等ラウドネス曲線に基づく特性を用いることもできる。この場合、走行速度に応じて特性を選択することが考えられる。
【0063】
変換部203は、第1の実施形態と同様にして、ロードノイズ特性取得部231から取得された情報に示される周波数特性を変換係数を用いて変換して、変換後の周波数特性を取得する。変換後の周波数特性は、EQ設定部204に供給される。EQ設定部204は、上述と同様にして、供給された変換後の周波数特性に応じたイコライザ12のパラメータを生成し、イコライザ12に設定する。
【0064】
図14は、第2の実施形態による処理の例を示すフローチャートである。ロードノイズ補正部200bにおいて、速度情報取得部230は、ステップS30で、車両100から供給された速度情報に基づき車両100の走行速度を取得する。次のステップS31で、ロードノイズ特性取得部231は、ステップS30で取得された走行速度に対応するロードノイズ信号の周波数特性を記憶部21から取得する。
【0065】
次のステップS32で、変換部203は、例えば記憶部21から読み出したA特性に基づく変換係数を用いて、ステップS31で取得されたロードノイズ信号の周波数特性を、聴覚特性を考慮した周波数特性に変換する。
【0066】
次のステップS33で、EQ設定部204は、ステップS32で変換部203に変換された周波数特性に従いオーディオ信号の周波数特性を補正するためのイコライザ12のパラメータを生成する。そして、EQ設定部204は、次のステップS34で、生成したパラメータをイコライザ12に設定する。
【0067】
以上の、ステップS30〜ステップS34の処理を、例えば所定の周期で繰り返し実行することで、車両100において発生するロードノイズの、カーオーディオ装置1bの再生音に対するマスキングを、マイクロフォン30によるロードノイズの収音を行うこと無く、略リアルタイムで抑制することが可能となる。
【0068】
これに限らず、ロードノイズ補正部200bは、速度情報取得部230にステップS30で取得された速度情報に基づき車両100の走行速度が変化したか否かを判定し、走行速度が変化したと判定した場合に、ステップS31〜ステップS34の処理を実行することも考えられる。
【0069】
(第2の実施形態の変形例)
次に、第2の実施形態の変形例について説明する。人の聴覚特性の一つとして、音の変化に対する感知の遅延がある。すなわち、人の聴覚は、音が大きくなる変化には、反応が速く、音が小さくなる変化には、反応が遅い特性がある。ここで、車両100の走行速度が大きいほど、ロードノイズが大きくなり、走行速度が小さいほど、ロードノイズが小さくなる傾向がある。換言すれば、車両100の加速および減速時には、ロードノイズが急激に変化する。
【0070】
第2の実施形態の変形例では、ロードノイズ補正部200bは、速度情報取得部230で取得される速度情報を監視して車両100が加速したか減速したかを判定し、判定結果に応じて、EQ設定部204によるイコライザ12に対するパラメータの設定を遅延させる。
【0071】
図15は、第2の実施形態の変形例による処理の例を示すフローチャートである。また、
図16は、第2の実施形態の変形例に係るロードノイズ補正部200b’の機能を説明するための一例の機能ブロック図である。なお、
図16において、
図13と共通する部分には同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。この
図16に例示される構成は、上述した
図13に例示される構成に対して、速度情報取得部230’およびEQ設定部204’の機能が一部、異なっている。
【0072】
ロードノイズ補正部200b’において、速度情報取得部230’は、ステップS40で、車両100から供給された速度情報に基づき車両100の走行速度を取得する。また、速度情報取得部230’は、当該速度情報を監視し、走行速度の変化を検出する。速度情報取得部230’は、検出の結果、少なくとも走行速度の減速を示す速度変化情報をEQ設定部204’に供給する。
【0073】
次のステップS41で、ロードノイズ特性取得部231は、ステップS40で取得された走行速度に対応するロードノイズ信号の周波数特性を記憶部21から取得する。次のステップS42で、変換部203は、例えば記憶部21から読み出したA特性に基づく変換係数を用いて、ステップS41で取得されたロードノイズ信号の周波数特性を、聴覚特性を考慮した周波数特性に変換する。
【0074】
次のステップS43で、EQ設定部204’は、ステップS42で変換部203に変換された周波数特性に従いオーディオ信号の周波数特性を補正するためのイコライザ12のパラメータを生成する。
【0075】
次のステップS44で、EQ設定部204’は、速度情報取得部230’から供給された速度変化情報に基づき、車両100が減速したか否かを判定する。EQ設定部204’は、車両100が減速したと判定した場合、処理をステップS45に移行させ、所定時間待機して処理を遅延させた後に処理をステップS46に移行させ、ステップS43で生成したパラメータをイコライザ12に設定する。
【0076】
ステップS45での処理の遅延時間は、例えば200msec程度とすることができる。ステップS45での遅延時間は、200msecに限定されず、他の値でもよい。また、遅延時間を、例えば操作部22に対するユーザ操作により設定可能としてもよい。
【0077】
一方、EQ設定部204’は、ステップS44で車両100が減速していない、すなわち、加速および走行速度に変化無しのうち一方であると判定した場合、待機時間を設けずに処理をステップS46に移行させ、ステップS43で生成したパラメータをイコライザ12に設定する。
【0078】
以上の、ステップS40〜ステップS46の処理を、例えば所定の周期で繰り返し実行することで、車両100において発生するロードノイズの、カーオーディオ装置1bの再生音に対するマスキングを、マイクロフォン30によるロードノイズの収音を行うこと無く、略リアルタイムで抑制することが可能となる。
【0079】
これに限らず、ロードノイズ補正部200b’は、速度情報取得部230’にステップS40で取得された速度情報に基づき車両100の走行速度が変化したか否かを判定し、走行速度が変化したと判定した場合に、ステップS41〜ステップS46の処理を実行することも考えられる。この場合、ステップS44では、減速および加速の何れかを判定すればよい。
【0080】
(他の実施形態)
上述では、ロードノイズ信号の周波数特性を聴覚特性を考慮した周波数特性に変換し、変換後の周波数特性に従いイコライザ12の周波数特性を設定している。他の実施形態では、さらに、上述したカーオーディオ装置1aおよび1bは、スピーカ16から出力される再生音が小さい場合に、等ラウドネス曲線に従い高域および低域を強調するラウドネス補正処理を、ロードノイズに応じた聴覚特性を考慮した周波数特性の補正処理とは非連動で実行可能である。
【0081】
すなわち、例えばカーオーディオ装置1aにおいて、制御部20aから出力する音量制御値に従い音量調整部14においてオーディオ信号のレベルを下げた場合を考える。この場合、等ラウドネス曲線に従い、スピーカ16から出力される再生音の高域および低域が人に感知されにくくなる。そこで、制御部20aにおいて、音量調整部220は、音量制御値に応じたラウドネス補正値を生成してラウドネス補正部11に供給し、ロードノイズ補正部200aの処理とは非連動で、高域および低域を等ラウドネス曲線に従い強調する。