特許第6201721号(P6201721)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6201721フォトレジスト用感光性樹脂組成物およびそれに用いる(メタ)アクリル共重合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6201721
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】フォトレジスト用感光性樹脂組成物およびそれに用いる(メタ)アクリル共重合体
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/28 20060101AFI20170914BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20170914BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   C08F220/28
   G03F7/039 601
   H01L21/30 502R
【請求項の数】3
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2013-261288(P2013-261288)
(22)【出願日】2013年12月18日
(65)【公開番号】特開2015-117305(P2015-117305A)
(43)【公開日】2015年6月25日
【審査請求日】2016年8月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】早川 祥一
(72)【発明者】
【氏名】田中 博康
(72)【発明者】
【氏名】棚木 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】古川 喜久夫
(72)【発明者】
【氏名】堀越 裕
【審査官】 小出 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−286670(JP,A)
【文献】 特開2012−123376(JP,A)
【文献】 特開2008−003540(JP,A)
【文献】 特開平08−012626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00−246/00
G03F 7/0004−7/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)及び一般式(2)、並びに一般式(3)もしくは(4)を繰り返し単位に含むフォトレジスト用(メタ)アクリル共重合体。
【化1】
(式中、R1は、水素原子またはメチル基を表し、R2は炭素数2〜5の直鎖または分岐状のアルキル基を示す。)
【化2】
(式中、R3は水素原子またはメチル基を示し、R4は同一又は異なっていても良く、炭素数1〜10の環状、直鎖状または分岐状のアルキル基、アリール基、もしくは、シクロアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、もしくは、アリールオキシ基、炭素数2〜6のアシルオキシ基またはハロゲン基を示し、nは1〜3の整数、mは0〜8の整数であり、n+m≦9である)
【化3】
(式中、R5は水素原子またはメチル基を示し、Zはメチレン(−CH2−)またはオキサ(−O−)を示し、R6は同一または異なって、水酸基、ハロゲン基、ニトリル基、カルボン酸基、炭素数1〜4のカルボン酸アルキル基または炭素数1〜4のアルコキシド基を示し、aは0〜2の整数である。)
【化4】
(式中、R7は水素原子またはメチル基を示し、R8はメチル基、エチル基、水酸基またはハロゲン基を示し、bは0〜2の整数、cは1〜3の整数である。)
【請求項2】
一般式(5)〜(7)から選ばれる少なくとも一種類を繰り返し単位に含むことを特徴とする請求項に記載の(メタ)アクリル共重合体。
【化5】
(式中、R9は水素原子またはメチル基を示し、R10は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R11は炭素数5〜20の脂環式アルキル基を示す。)
【化6】
(式中、R12は水素原子またはメチル基を示し、R13は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R14は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R15は水酸基で置換されても良い炭素数1〜4のアルキル基、水酸基で置換されても良い炭素数5〜20のシクロアルキル基または脂環式アルキル基を示す。)
【化7】
(式中、R16は水素原子またはメチル基を示し、R17は水素原子、または、炭素数1〜6の環状、直鎖もしくは分岐状のアルキル基を示し、R18は炭素数1〜20の直鎖、分岐状または環状のアルキル基を示す。)
【請求項3】
請求項1又は2に記載の(メタ)アクリル共重合体と光酸発生剤を含むフォトレジスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学増幅型レジストに用いる感光性樹脂組成物、およびその原料に適した(メタ)アクリル共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスは、記憶デバイスであるフラッシュメモリーの大容量化や携帯電話やスマートフォンの高解像度カメラ向けイメージセンサー等の市場の広がりと共に更なる微細化への強い要望がある。その各種電子デバイスの製造において、フォトリソグラフィ法が広く利用されている。フォトリソグラフィ法では、光源を短波長化させることにより、微細化が推進されてきた。光源としてKrFエキシマレーザー以降の短波長光源を使用する際には、一般的に化学増幅型レジストが使用されている。そこで用いられる感光性樹脂組成物の組成は、一般に主剤である感光性樹脂および光酸発生剤、さらには数種の添加剤を含む溶液となっている。主剤である感光性樹脂は、エッチング耐性、基板密着性、使用する光源に対する透明性、現像速度などの特性の各特性をバランス良く備えていることが重要である。
【0003】
このような感光性樹脂は、一般的にビニル化合物や(メタ)アクリレートなどを繰り返し単位として含む高分子である。例えば、KrFエキシマレーザーリソグラフィ用レジストではヒドロキシスチレン系樹脂が(特許文献1)、ArFエキシマレーザーリソグラフィ用レジストでは、アダマンチル(メタ)アクリレートを基本骨格とするアクリル系樹脂が提案されており(特許文献2〜6)、その基本骨格は定まりつつある。一つの種類の繰り返し単位では複数の要求に応えることはできないため、異なる機能を有する繰り返し単位を含む共重合体が感光性樹脂として使用されている。さらにその共重合体に光酸発生剤などを添加して溶剤に溶解させて感光性樹脂組成物として使用している。
【0004】
ネガティブトーン現像プロセスは、ポジティブトーン現像に比べて微細なパターンを形成できることから近年注目されている。特許文献7、8によると、ネガティブトーン現像用のレジスト用組成物として、従来型のポジティブトーン現像用のレジスト用組成物を用いることができるという。しかしながら従来型のポジティブトーン現像用レジスト用組成物は、通常、脱保護反応によりカルボキシル基が生成するため、アルカリ現像液とは異なり、ネガティブトーン現像では溶解コントラストが低いという問題がある。そこで脱保護反応によりカルボキシル基が生成しない新規なレジスト用組成物の開発が望まれている。
【0005】
ここで特許文献9にはメタクリル酸ヒドロキシアルキルをカルボネート保護基で保護した化合物(モノマー)を重合したポリマーがネガティブトーン現像用フォトレジスト用として例示されている。一方、特許文献10には炭素数1〜18のアルキル基で置換されたカルボネートで水酸基を保護したメタクリル酸ヒドロキシアルキルがリチウムイオン電池の固体電解質原料として開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−243474号公報
【特許文献2】特開平4−39665号公報
【特許文献3】特開平10−319595号公報
【特許文献4】特開2000−26446号公報
【特許文献5】特開2003−167346号公報
【特許文献6】特開2004−323704号公報
【特許文献7】特開2008−281974号公報
【特許文献8】特開2008−281975号公報
【特許文献9】特開2011−221513号公報
【特許文献10】特開2008−288127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は脱保護反応により水酸基を生成する新規なレジスト用感光性樹脂組成物を提供することにある。
【0008】
さらにアダマンタン骨格に代表される脂環系モノマーを多く含むアクリル系樹脂は、ドライエッチング耐性を有するものの溶剤への溶解性が悪く、プロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチルといったフォトレジスト用溶剤に溶解しにくいといった課題を有する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の各課題を解決する目的で鋭意検討した結果、特定の構造を有するメタクリル酸エステル化合物(一般式(1)に示す)をモノマーとした共重合体が、リソグラフィー操作において感光性樹脂として作用するだけでなく、フォトレジスト用溶剤に溶解しやすく、化学増幅型レジストにとって有用な化合物であることを見出し本発明に到達した。
【0010】
【化1】
(式中、Rは、水素原子、メチル基を表し、Rは炭素数2〜5の直鎖、分岐状のアルキル基を示す。)
【0011】
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0012】
<1> 一般式(2)を繰り返し単位に含むフォトレジスト用(メタ)アクリル共重合体。
【0013】
【化2】
(式中、Rは、水素原子またはメチル基を表し、Rは炭素数2〜5の直鎖または分岐状のアルキル基を示す。)
【0014】
一般式(3)から選ばれる少なくとも一種類、および、一般式(4)もしくは(5)から選ばれる少なくとも一種類を繰り返し単位に含む<1>に記載の(メタ)アクリル共重合体。
【0015】
【化3】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは同一又は異なっていても良く、炭素数1〜10の環状、直鎖状または分岐状のアルキル基、アリール基、もしくは、シクロアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、もしくは、アリールオキシ基、炭素数2〜6のアシルオキシ基またはハロゲン基を示し、nは1〜3の整数、mは0〜8の整数であり、n+m≦9である)
【0016】
【化4】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Zはメチレン(−CH−)またはオキサ(−O−)を示し、Rは同一または異なって、水酸基、ハロゲン基、ニトリル基、カルボン酸基、炭素数1〜4のカルボン酸アルキル基または炭素数1〜4のアルコキシド基を示し、aは0〜2の整数である。
【0017】
【化5】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rはメチル基、エチル基、水酸基またはハロゲン基を示し、bは0〜2の整数、cは1〜3の整数である。)
【0018】
<3>一般式(6)〜(8)から選ばれる少なくとも一種類を繰り返し単位に含むことを特徴とする<2>に記載の(メタ)アクリル共重合体。
【0019】
【化6】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、R10は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R11は炭素数5〜20の脂環式アルキル基を示す。)
【0020】
【化7】
(式中、R12は水素原子またはメチル基を示し、R13は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R14は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R15は水酸基で置換されても良い炭素数1〜4のアルキル基、水酸基で置換されても良い炭素数5〜20のシクロアルキル基または脂環式アルキル基を示す。)
【0021】
【化8】
(式中、R16は水素原子またはメチル基を示し、R17は水素原子、または、炭素数1〜6の環状、直鎖もしくは分岐状のアルキル基を示し、R18は炭素数1〜20の直鎖、分岐状または環状のアルキル基を示す。)
【0022】
<4> <1>〜<3>のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル共重合体と光酸発生剤を含むフォトレジスト。
【0023】
<5> 一般式(9)で表される<1>〜<3>のいずれか一項に記載されている(メタ)アクリル共重合体に用いられるエステル化合物。
【0024】
【化9】
(式中、Rは、水素原子またはメチル基を表し、Rは炭素数2〜5の直鎖または分岐状のアルキル基を示す。)
【0025】
<6> 一般式(9)で表されるエステル化合物の製造方法であって、
一般式(10)で表される(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル化合物と、二炭酸ジ−tert−ブチルとを反応させることを特徴とする製造方法。
【0026】
【化10】
(式中、Rは、水素原子またはメチル基を表し、Rは炭素数2〜5の直鎖または分岐状のアルキル基を示す。)
【0027】
<7>一般式(9)で表されるエステル化合物の製造方法であって、
一般式(11)で表されるアルカンジオールと二炭酸ジ−tert−ブチルとを反応させて一般式(12)で表されるハーフエステル化合物を合成したのち、一般式(13)または(14)で表される(メタ)アクリル化合物とエステル化反応を行うことを特徴とする製造方法。
【0028】
【化11】
(式中、Rは炭素数2〜5の直鎖または分岐状のアルキル基を示す。)
【0029】
【化12】
(式中、Rは炭素数2〜5の直鎖または分岐状のアルキル基を示す。)
【0030】
【化13】
(式中、Rは、水素原子またはメチル基を表し、XはCl、BrまたはOHを示す。)
【0031】
【化14】
(式中、Rは、水素原子またはメチル基を表す。)
【発明の効果】
【0032】
本発明のアクリル共重合体は、脱保護反応により水酸基を生成する新規なレジスト用感光性樹脂組成物として使用できる。
【0033】
さらに、本発明の(メタ)アクリル共重合体はフォトレジスト用溶剤への溶解性が高い。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明につき更に詳細に説明する。
本発明に使用するエステル化合物(モノマー)とその製造方法、本発明の(メタ)アクリル共重合体とその製造方法、(メタ)アクリル共重合体を用いた感光性樹脂組成物およびレジストについて述べる。
【0035】
本発明のエステル化合物は、下記一般式(15)で示される。
【0036】
【化15】
(式中、Rは、水素原子、メチル基を表し、Rは炭素数2〜5の直鎖、分岐状のアルキル基を示す。)
【0037】
本発明の一般式(15)で表される感光性樹脂組成物用エステル化合物は、具体的には、(メタ)アクリル酸2−((tert−ブトキシカルボニル)オキシ)エチル、(メタ)アクリル酸1−((tert−ブトキシカルボニル)オキシ)−2−メチルプロパン−2−イル、(メタ)アクリル酸3−((tert−ブトキシカルボニル)オキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−((tert−ブトキシカルボニル)オキシ)−2−メチルプロピル、(メタ)アクリル酸2−((tert−ブトキシカルボニル)オキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸1−((tert−ブトキシカルボニル)オキシ)プロパン−2−イル、(メタ)アクリル酸4−((tert−ブトキシカルボニル)オキシ)ブチル、(メタ)アクリル酸4−((tert−ブトキシカルボニル)オキシ)ブタン−2−イル、(メタ)アクリル酸3−((tert−ブトキシカルボニル)オキシ)ブチルが挙げられる。
【0038】
本発明の一般式(15)で表される感光性樹脂組成物用エステル化合物は、例えば、化学式(16)で示される化学反応、すなわち、一般式(17)で表される(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル化合物と、二炭酸ジ−tert−ブチルとを反応させることにより得られる(製造方法1)。もしくは式(18)とそれに続く式(19)で示される化学反応、すなわち、一般式(20)で表されるアルカンジオールと二炭酸ジ−tert−ブチルとを反応させ、一般式(21)で表されるハーフエステル化合物を合成したのち、残りの水酸基に公知の方法により(メタ)アクリル酸エステル化反応を行うことにより得られる(製造方法2)。
【0039】
【化16】
(式中、RとRは、一般式(15)と同じである。)
【0040】
【化17】
(式中、RとRは、一般式(15)と同じである。)
【0041】
【化18】
(式中、RとRは、一般式(15)と同じである。)
【0042】
【化19】
(式中、RとRは、一般式(15)と同じである。XはCl、BrまたはOHを示す。)
【0043】
【化20】
(式中、Rは、一般式(15)と同じである。)
【0044】
【化21】
(式中、Rは、一般式(15)と同じである。)
【0045】
〈製造方法1〉
製造方法1について詳述する。製造方法1で用いることができる一般式(17)で表わされる(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル化合物は、具体的には、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−ヒドロキシプロパン−2−イル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブタン−2−イル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチルが挙げられる。
【0046】
製造方法1は以下の製造方法が用いられる。すなわち(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル化合物と二炭酸ジ−tert−ブチルをアミン触媒存在下、反応させることにより得られる。二炭酸ジ−tert−ブチルの添加量は、一般式(17)で表される(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル化合物に対して、0.8〜3.0当量、好ましくは0.9〜2.0当量、さらに好ましくは1.0〜1.5当量である。これ範囲であれば、十分に反応が進行し、余剰の二炭酸ジ−tert−ブチルや副生成するtert−ブタノールを除去する手間が少なくて済み好ましい。
【0047】
製造方法1で用いられるアミン触媒は、N,N−4−ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルエチルアミン、トリベンジルアミン、N−メチルピぺリジン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、ピリジン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、2,6−ジメチルピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネンが挙げられるが、反応性の観点からもN,N−4−ジメチルアミノピリジンの使用が好ましい。添加する量は、一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル化合物に対して、0.001〜0.3当量、好ましくは0.005〜0.2当量、さらに好ましくは0.01〜0.1当量である。この範囲であれば十分に反応が進行し、多いと経済的に好ましくない。
【0048】
製造方法1に用いられる溶媒は、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ベンゼン、トルエン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロエタン、ジクロロメタン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが挙げられるが、無溶媒でも製造できる。
【0049】
製造方法1では、二炭酸ジ−tert−ブチルは、徐々に添加することが好ましい。急速に添加すると二炭酸ジ−tert−ブチルが反応することにより二酸化炭素を放出し、反応溶液が激しく発泡するからである。反応液の発泡状況を確認しながら、二炭酸ジ−tert−ブチルを徐々に添加するのが好ましい。二炭酸ジ−tert−ブチルの凝固点が23℃であるため、室温では固化することがあり、上記の溶媒に溶解させたうえで、滴下する方法が操作する上で好ましい。
【0050】
上記の具体的な反応条件は、基質濃度や用いる触媒によって適当な条件を設定すべきであるが、一般的に反応温度−20℃から100℃、反応時間1時間から10時間、圧力は常圧、減圧又は加圧下で行なうことができる。また、反応は、回分式、半回分式、連続式などの公知の方法を適宜選択して行なうことができる。
【0051】
反応終了後、反応生成物を含んだ溶液から触媒の除去のために水による洗浄操作を行うが、ここで副生成するtert−ブタノールを除去することが好ましい。tert−ブタノール除去が不十分である場合、蒸留操作の際に閉塞する場合がある。洗浄操作において反応生成物を溶解させておくために使用する有機溶剤は、ヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテルが例示される。なかでもトルエンは、tert−ブタノールの除去に好適であり、目的物の回収率も高くなって好ましい。このとき、洗浄水中に塩化ナトリウムや炭酸水素ナトリウム等、適当な無機塩が含まれていてもよい。更に、金属不純物を除去するために、酸洗浄しても良い。酸洗浄には、塩酸水溶液、硫酸水溶液、リン酸水溶液などの無機酸およびシュウ酸水溶液などの有機酸が挙げられる。
【0052】
<製造方法2>
製造方法2について詳述する。製造方法2は化学式(18)とそれに続く化学式(19)の2段階での製造方法である。製造方法2で用いられる一般式(20)で表されるアルカンジオールは、具体例としてエタン−1,2−ジオール、2−メチルプロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、プロパン−1,2−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ブタン−1,3−ジオールが挙げられる。
【0053】
製造方法2の1段目の反応、すなわち化学式(18)で示される反応では、一般式(20)で表されるアルカンジオールと二炭酸ジ−tert−ブチルをアミン触媒存在下で反応させ、一般式(21)に示されるtert−ブトキシカルボニル誘導体が製造される。添加する二炭酸ジ−tert−ブチルの量は、原料の一般式(20)で表されるアルカンジオールに対して0.5〜3.0当量、好ましくは0.6〜2.0当量、さらに好ましくは0.7〜1.5当量である。これ範囲であれば、十分に反応が進行し、余剰のアルカンジオールや二炭酸ジ−tert−ブチル、副生成するtert−ブタノールを除去する手間が少なくて済み好ましい。
【0054】
製造方法2の1段目の反応(化学式(18))で用いられるアミン触媒は、N,N−4−ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルエチルアミン、トリベンジルアミン、N−メチルピぺリジン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、ピリジン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、2,6−ジメチルピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネンが挙げられるが、反応性の観点からもN,N−4−ジメチルアミノピリジンの使用が好ましい。添加する量は、一般式(20)で表されるアルカンジオールに対して、0.001〜0.3当量、好ましくは0.005〜0.2当量、さらに好ましくは0.01〜0.1当量である。この範囲であれば十分に反応が進行し、多いと経済的に好ましくない。
【0055】
製造方法2の1段目の反応(化学式(18))に用いられる溶媒は、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ベンゼン、トルエン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロエタン、ジクロロメタン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが挙げられるが、無溶媒でも製造できる。
【0056】
製造方法2の1段目の反応(化学式(18))の際、二炭酸ジ−tert−ブチルは、徐々に添加することが好ましい。急速に添加すると二炭酸ジ−tert−ブチルが反応することにより二酸化炭素を放出し、反応溶液が激しく発泡することがある。反応液の発泡状況を確認しながら、二炭酸ジ−tert−ブチルを徐々に添加するのが好ましい。二炭酸ジ−tert−ブチルの凝固点が23℃であるため、室温では固化する場合があるため、上記の溶媒に溶解させたうえで、滴下する方法が操作する上で好ましい。
【0057】
上記の具体的な反応条件は、基質濃度や用いる触媒によって適当な条件を設定すべきであるが、一般的に反応温度−20℃から100℃、反応時間1時間から10時間、圧力は常圧、減圧又は加圧下で行なうことができる。また、反応は、回分式、半回分式、連続式などの公知の方法を適宜選択して行なうことができる。
【0058】
一般式(21)で示されるtert−ブチルエステル化合物は濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィー、活性炭等による分離精製方法や、これらの組合せによる方法で単離精製することが望ましい。
【0059】
製造方法2の2段目の反応、すなわち化学式(19)で示される反応では、一般式(21)で示されるtert−ブチルエステル化合物を(メタ)アクリル酸エステル化し、一般式(15)で表される感光性樹脂組成物用エステル化合物を合成する。この反応では以下の様なエステル化方法を用いることができる。すなわち(メタ)アクリル酸クロライド、(メタ)アクリル酸ブロマイド、(メタ)アクリル酸無水物といった活性化された(メタ)アクリル酸を塩基触媒存在下で混合する方法や、(メタ)アクリル酸をN,N‘−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩といったカルボジイミド系脱水縮合剤と混合する脱水縮合法が使用できる。なかでも(メタ)アクリル酸クロライドは工業的に簡便に入手可能であることから、(メタ)アクリル酸クロライドによる(メタ)アクリル酸エステル化が簡便で望ましい。
【0060】
製造方法2の2段目の反応(化学式(19))で使用される(メタ)アクリル酸クロライドの添加量は、一般式(21)で示されるtert−ブチルエステル化合物に対して1.0〜3.0当量、好ましくは1.1〜2.0当量、さらに好ましくは1.2〜1.5当量である。これ範囲であれば、十分に反応が進行し、余剰の(メタ)アクリル酸クロライドの除去も簡便で済み、経済的にも好ましい。
【0061】
製造方法2の2段目の反応(化学式(19))の際には、アルカリ触媒の添加が望ましい。アルカリ触媒は公知の化合物が挙げられ、具体的には、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルエチルアミン、トリベンジルアミン、N−メチルピぺリジン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、ピリジン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、2,6−ジメチルピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネンといった有機アミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムといった塩基性金属塩が例示される。ハーフtert−ブチルエステル化合物に対して1.0〜3.0当量、好ましくは1.1〜2.0当量、さらに好ましくは1.2〜1.5当量である。これ範囲であれば、十分に反応が進行し、経済的にも好ましい。
【0062】
また、上記製造方法1ないし2の反応には重合禁止剤を添加しても良い。重合禁止剤としては一般的なものならば特に制限はなく、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシル、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩、N−ニトロソ−N−(1−ナフチル)ヒドロキシルアミンアンモニウム塩、N−ニトロソジフェニルアミン、N−ニトロソ−N−メチルアニリン、ニトロソナフトール、p−ニトロソフェノール、N,N’−ジメチル−p−ニトロソアニリンなどのニトロソ化合物、フェノチアジン、メチレンブルー、2−メルカプトベンゾイミダゾールなどの含硫黄化合物、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、4−ヒドロキシジフェニルアミン、アミノフェノールなどのアミン類、ヒドロキシキノリン、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、p−ベンゾキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテルなどのキノン類、p−メトキシフェノール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、カテコール、3−s−ブチルカテコール、2,2−メチレンビス−(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)などのフェノール類、N−ヒドロキシフタルイミドなどのイミド類、シクロヘキサンオキシム、p−キノンジオキシムなどのオキシム類、ジアルキルチオジプロピネートなどが挙げられる。添加量としては、一般式(17)、(13)、(14)で表される(メタ)アクリル酸誘導体100重量部に対して、0.001〜10重量部、好ましくは0.01〜1重量部である。
【0063】
以上の内容により得られた一般式(15)で表される感光性樹脂組成物用エステル化合物は、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィー、活性炭等による分離精製方法や、これらの組合せによる方法で所望の高純度モノマーとして単離精製するここが望ましい。なかでもには、反応液を水洗処理することは、余剰の活性化された(メタ)アクリル酸、二炭酸ジ−tert−ブチル、塩基触媒、副生成するtert−ブタノールなどが除去されるので好ましい。このとき、洗浄水中に塩化ナトリウムや炭酸水素ナトリウム等、適当な無機塩が含まれていてもよい。更に、金属不純物を除去するために、酸洗浄しても良い。酸洗浄には、塩酸水溶液、硫酸水溶液、リン酸水溶液などの無機酸およびシュウ酸水溶液などの有機酸が挙げられる。洗浄に際し、反応液に有機溶媒等を添加しても良く、添加する有機溶媒は、反応に使用したものと同一のものを使用することもできるし、異なったものを使用することもできるが、通常、水との分離がよい極性の小さい溶媒を用いることが好ましい。
【0064】
高純度の一般式(15)で表される感光性樹脂組成物用エステル化合物を製造する場合には、蒸留による精製が好ましい。公知である減圧蒸留装置、薄膜蒸留装置、分子蒸留装置が使用できる。
【0065】
本発明の一般式(15)で表される感光性樹脂組成物用エステル化合物を共重合することにより得られる(メタ)アクリル共重合体は一般式(22)の繰り返し単位を含み、フォトレジストで使用される感光性樹脂に使用できる。
【0066】
一般式(22)の繰り返し単位を含む本発明の(メタ)アクリル共重合体は、化学式(23)に示すように、露光により光酸発生剤から発生する酸の作用により、保護基が分解し、水酸基が生成する。
【0067】
【化22】
(式中、R、Rは一般式(15)と同じである。)
【0068】
【化23】
(式中、R、Rは一般式(15)と同じである。)
【0069】
本発明の(メタ)アクリル共重合体は、一般式(22)に加えて、一般式(24)から選ばれる少なくとも一種類、および一般式(25)〜(26)から選ばれる少なくとも一種類の繰り返し単位を含むことができる。さらに一般式(27)〜(29)から選ばれる一種類を含んでも良い。これら共重合体は原料モノマーを共重合することによって得られる。
【0070】
【化24】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは同一又は異なっていても良く、炭素数1〜10の環状、直鎖または分岐状のアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、アリールオキシ基、炭素数2〜6のアシルオキシ基またはハロゲン基を示し、nは1〜3の整数、mは0〜8の整数であり、n+m≦9である)
【0071】
【化25】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Zはメチレン(−CH−)またはオキサ(−O−)を示し、Rは同一または異なって、水酸基、ハロゲン基、ニトリル基、カルボン酸基、炭素数1〜4のカルボン酸アルキル基または炭素数1〜4のアルコキシド基を示し、aは0〜2の整数である。)
【0072】
【化26】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rはメチル基、エチル基、水酸基またはハロゲン基を示し、bは0〜2の整数、cは1〜3の整数である。)
【0073】
【化27】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、R10は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R11は炭素数5〜20の脂環式アルキル基を示す。)
【0074】
【化28】
(式中、R12は水素原子またはメチル基を示し、R13は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R14は炭素数1〜4のアルキル基を示し、R15は水酸基で置換されても良い炭素数1〜4のアルキル基、水酸基で置換されても良い炭素数5〜20のシクロアルキル基または脂環式アルキル基を示す。)
【0075】
【化29】
(式中、R16は水素原子またはメチル基を示し、R17は水素原子または炭素数1〜6の環状、直鎖または分岐状のアルキル基を示し、R18は炭素数1〜20の直鎖、分岐状または環状のアルキル基を示す。)
【0076】
一般式(24)で表される繰り返し単位の原料モノマーとしては、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3,5−ジヒドロキシ−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3,5,7−トリヒドロキシ−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−5−メチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−5−エチル−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−5,7−ジメチル−1−アダマンチルなどが挙げられる。
【0077】
一般式(25)で表される繰り返し単位の原料モノマーとしては、2−(メタ)アクリルロイルオキシ−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン、7または8−(メタ)アクリルロイルオキシ−3−オキソ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、9−(メタ)アクリルロイルオキシ−3−オキソ−2−オキサ−6−オキサ−トリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン、2−(メタ)アクリルロイルオキシ−5−オキソ−4−オキサ−8−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン、2−(メタ)アクリルロイルオキシ−9−メトキシカルボニル−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン、2−(メタ)アクリルロイルオキシ−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−6−カルボニトリルなどが挙げられる。
【0078】
一般式(26)で表される繰り返し単位の原料モノマーとしては、α−(メタ)アクリルロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、β−(メタ)アクリルロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、(メタ)アクリルロイルオキシパントラクトンなどが挙げられる。
【0079】
一般式(27)で表される繰り返し単位の原料モノマーとしては、2−メチル−2−(メタ)アクリルロイルオキシアダマンタン、2−エチル−2−(メタ)アクリルロイルオキシアダマンタン、2−イソプロピル−2−(メタ)アクリルロイルオキシアダマンタン、2−n−プロピル−2−(メタ)アクリルロイルオキシアダマンタン、2−n−ブチル−2−(メタ)アクリルロイルオキシアダマンタン、1−メチル−1−(メタ)アクリルロイルオキシシクロペンタン、1−エチル−1−(メタ)アクリルロイルオキシシクロペンタン、1−メチル−1−(メタ)アクリルロイルオキシシクロヘキサン、1−エチル−1−(メタ)アクリルロイルオキシシクロヘキサン、1−メチル−1−(メタ)アクリルロイルオキシシクロヘプタン、1−エチル−1−(メタ)アクリルロイルオキシシクロヘプタン、1−メチル−1−(メタ)アクリルロイルオキシシクロオクタン、1−エチル−1−(メタ)アクリルロイルオキシシクロオクタン、2−エチル−2−(メタ)アクリルロイルオキシデカヒドロ−1,4:5,8−ジメタノナフタレン、2−エチル−2−(メタ)アクリルロイルオキシノルボルナンなどが挙げられる。
【0080】
一般式(28)で表される繰り返し単位の原料モノマーとしては、2−シクロヘキシル−2−(メタ)アクリルロイルオキシプロパン、2−(4−tert−ブチルシクロヘキシル)−2−(メタ)アクリルロイルオキシプロパン、2−(4−メチルシクロヘキシル)−2−(メタ)アクリルロイルオキシプロパン、2−アダマンチル−2−(メタ)アクリルロイルオキシプロパン、(メタ)アクリル酸2−(3−(2−ヒドロキシプロパン−2−イル)アダマンタン−1−イル)プロパン−2−イルなどが挙げられる。
【0081】
一般式(29)で表される繰り返し単位の原料モノマーとしては、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸1−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸1−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸1−メトキシ−2−メチルプロピル、(メタ)アクリル酸(シクロヘキシルオキシ)メチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル(メトキシ)メチルが挙げられる。
【0082】
重合においては、繰り返し単位となる原料モノマーを溶媒に溶かし、触媒を添加して加熱あるいは冷却しながら反応を実施する。重合反応の条件は、開始剤の種類、熱や光などの開始方法、温度、圧力、濃度、溶媒、添加剤などにより任意に設定することができ、本発明の(メタ)アクリル共重合体の重合においては、アゾビスイソブチロニトリルや過酸化物などのラジカル発生剤を使用したラジカル重合や、アルキルリチウムやGrignard試薬などの触媒を利用したイオン重合など公知の方法で実施することができる。
【0083】
本発明の(メタ)アクリル共重合体の重合反応に用いる溶媒は、2−ブタノン、2−ヘプタノン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナン等のアルカン類、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のカルボン酸エステル類が例示され、これらの溶媒は単独又は2種類以上混合して使用することができる。
【0084】
本発明で得られる(メタ)アクリル共重合体は、公知の方法により精製を行うことができる。具体的には金属不純物の除去に関し、限外濾過、精密濾過、酸洗浄、電気伝導度が10mS/m以下の水洗浄、抽出を組み合わせて行うことができる。酸洗浄を行う場合、加える酸としては、水溶性の酸であるギ酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸等の無機酸が挙げられるが、反応液との分離性を考えた場合、無機酸を用いるのが好ましい。また、オリゴマー類の除去には、限外濾過、精密濾過、晶析、再結晶、抽出、電気伝導度が10mS/m以下の水洗浄など組み合わせて実施することができる。
【0085】
本発明の(メタ)アクリル共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算重量平均分子量(以下、「Mw」という。)は、好ましくは1,000〜500,000、さらに好ましくは3,000〜100,000である。また、(メタ)アクリル共重合体のMwとGPCで測定したポリスチレン換算数平均分子量(以下、「Mn」という。)との比(Mw/Mn)は、通常、1〜10、好ましくは1〜5である。また、本発明において、(メタ)アクリル共重合体は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0086】
一般式(22)で表される繰り返し単位は、酸で解離する機能を有しており、露光時に酸発生剤から生成した酸の作用により水酸基が生成する。その結果、ポジティブトーン現像ではアルカリ現像液への可溶性が増し、ネガティブトーン現像では有機溶剤現像液への可溶性が低下することにより、パターンが形成できる。また感光性組成物調製時に、本発明の(メタ)アクリル共重合体の有機溶剤に対する溶解性を向上させ、シリコンウェハー塗布後の膜の均一性向上に寄与する。特に、感光性樹脂に一般式(24)で表される繰り返し単位を含む場合、有機溶剤に対する溶解性向上の効果が見られる。
【0087】
ここで、有機溶剤として以下のものが例示される。2−ペンタノン、2−ヘキサノン等の直鎖状ケトン類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等の環状ケトン類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルアセテート類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のジエチレングリコールアルキルエーテル類、酢酸エチル、乳酸エチル等のエステル類、シクロヘキサノール、1−オクタノール等のアルコール類、炭酸エチレン、γ−ブチロラクトン。これらの溶剤は、単独あるいは2種以上を混合して使用することができる。
【0088】
一般式(24)で表される繰り返し単位は、本発明の(メタ)アクリル共重合体の極性や、現像液に対する溶解性等の物性を調整する機能を有している。
【0089】
また、一般式(25)および(26)で表される繰り返し単位はラクトン基を有しており、基板密着性、溶剤溶解性およびアルカリ現像液への親和性を向上させることができ、フォトリソグラフィに使用することができる。これら2つのうち少なくとも一種類含めば良い。
【0090】
一般式(27)〜(29)で表される繰り返し単位は酸で解離する機能を有している。これらは露光時に光酸発生剤から生成した酸と反応してカルボン酸基が生起して、アルカリ可溶性へと変換することができる。これら繰り返し単位は、本発明の一般式(23)で表される繰り返し単位の酸解離性機能を補完することができる。
【0091】
一般式(22)、一般式(24)〜(29)で表される繰り返し単位からなる(メタ)アクリル共重合体の共重合比は、一般式(22)で表される繰り返し単位は5重量%〜80重量%、好ましくは10重量%〜60重量%、さらに好ましくは15重量%〜50重量%繰り返し単位に含み、一般式(24)で表される繰り返し単位は少なくとも一種類を5重量%〜50重量%、好ましくは10重量%〜40重量%、さらに好ましくは15重量%〜30重量%繰り返し単位に含み、一般式(25)〜(26)で表される繰り返し単位は少なくとも1種類を10重量%〜60重量%、好ましくは15〜50重量%、さらに好ましくは20重量%〜40重量%含む。さらに一般式(27)〜(29)で表される繰り返し単位を少なくとも一種類5重量%〜50重量%含んでも良い。一般式(27)〜(29)で表される繰り返し単位を含む場合の(メタ)アクリル共重合体の共重合比は、一般式(27)で表される繰り返し単位は5重量%〜60重量%、好ましくは10重量%〜40重量%、さらに好ましくは15重量%〜30重量%繰り返し単位に含み、一般式(25)〜(26)で表される繰り返し単位は少なくとも1種類を10重量%〜60重量%、好ましくは15〜50重量%、さらに好ましくは20重量%〜40重量%繰り返し単位に含む。この場合、一般式(24)で表される繰り返し単位は含まなくても良い。ただし、一般式(22)、および一般式(24)〜(29)の共重合比の合計は100重量%となる。
【0092】
本発明の感光性樹脂組成物は、上記の(メタ)アクリル系重合体と光酸発生剤とを溶剤に溶解させて使用しても良い。通常使用される溶剤としては、例えば、2−ペンタノン、2−ヘキサノン等の直鎖状ケトン類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等の環状ケトン類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルアセテート類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のジエチレングリコールアルキルエーテル類、酢酸エチル、乳酸エチル等のエステル類、シクロヘキサノール、1−オクタノール等のアルコール類、炭酸エチレン、γ−ブチロラクトン等を挙げることができる。これらの溶剤は、単独あるいは2種以上を混合して使用することができる。
【0093】
光酸発生剤は、露光光波長に応じて、化学増幅型レジスト組成物の酸発生剤として使用可能なものの中から、レジスト塗膜の厚さ範囲、それ自体の光吸収係数を考慮した上で、適宜選択することができる。光酸発生剤は、単独あるいは2種以上を組合せて使用することができる。酸発生剤使用量は、樹脂100重量部当り、好ましくは0.1〜20重量部、さらに好ましくは0.5〜15重量部である。
【0094】
遠紫外線領域において、利用可能な光酸発生剤としては、例えば、オニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、キノンジアジド化合物およびジアゾメタン化合物等が挙げられる。中でも、KrFエキシマレーザーやEUV、電子線に対しては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等のオニウム塩化合物が好適である。具体的には、トリフェニルスルホニウムトリフレート、トリフェニルスルホニウムノナフルオルブチレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムナフタレンスルホネート、(ヒドロキシフェニル)ベンジルメチルスルホニウムトルエンスルホネート、ジフェニルヨードニウムトリフレート、ジフェニルヨードニウムピレンスルホネート、ジフェニルヨードニウムドデシルベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート等を挙げるこができる。
【0095】
露光により酸発生剤から生じた酸のレジスト被膜中における拡散現象を制御し、非露光領域での好ましくない化学反応を抑制する作用を有する酸拡散制御剤を感光性樹脂組成物に配合することができる。酸拡散制御剤としては、レジストパターンの形成工程中の露光や加熱処理により塩基性が変化しない含窒素有機化合物が好ましい。このような含窒素有機化合物としては、例えば、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、等のモノアルキルアミン類;ジ−n−ブチルアミン等のジアルキルアミン類;トリエチルアミン等のトリアルキルアミン類;トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリブタノールアミン、トリペンタノールアミン、トリヘキサノールアミン、等の置換トリアルコールアミン類、トリメトキシエチルアミン、トリメトキシプロピルアミン、トリメトキシブチルアミン、トリエトキシブチルアミン等のトリアルコキシアルキルアミン類;アニリン、N,N−ジメチルアニリン、2−メチルアニリン、3−メチルアニリン、4−メチルアニリン、4−ニトロアニリン、ジフェニルアミン等の芳香族アミン類等;エチレンジアミンなどのアミン化合物、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド化合物、尿素等のウレア化合物、イミダゾール、ベンズイミダゾールなどのイミダゾール類、ピリジン、4−メチルピリジン等のピリジン類のほか、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等を挙げることができる。酸拡散制御剤の配合量は、樹脂100重量部当り、通常、15重量部以下、好ましくは0.001〜10重量部、さらに好ましくは0.005〜5重量部である。
【0096】
さらに、本発明の感光性樹脂組成物でも、必要に応じて、従来の化学増幅型レジスト組成物においても利用されていた種々の添加成分、例えば、界面活性剤、クエンチャー、増感剤、ハレーション防止剤、保存安定剤、消泡剤等の各種添加剤を含有させることもできる。
【0097】
本発明の感光性樹脂組成物からレジストパターンを形成する際にはスピンコータ、ディップコータ、ローラコータ等の適宜の塗布手段によって、例えば、シリコンウエハー、金属、プラスチック、ガラス、セラミック等の基板上に塗布することにより、レジスト被膜を形成し、場合により予め50℃〜200℃程度の温度で加熱処理を行ったのち、所定のマスクパターンを介して露光する。塗膜の厚みは、例えば0.01〜5μm、好ましくは0.02〜1μm、より好ましくは0.02〜0.1μm程度である。露光には、種々の波長の光線、例えば、紫外線、X線などが利用でき、例えば、光源としては、Fエキシマレーザー(波長157nm)、ArFエキシマレーザー(波長193nm)やKrFエキシマレーザー(波長248nm)等の遠紫外線、EUV(波長13nm)、X線、電子線等を適宜選択し使用する。また、露光量等の露光条件は、感光性樹脂組成物の配合組成、各添加剤の種類等に応じて、適宜選定される。
【0098】
本発明においては、高精度の微細パターンを安定して形成するために、露光後に、50〜200℃の温度で30秒以上加熱処理を行うことが好ましい。この場合、温度が50℃未満では、基板の種類による感度のばらつきが広がるおそれがある。その後、ポジティブトーン現像ではアルカリ現像液により、ネガティブトーン現像では有機溶剤現像液により、通常、10〜50℃で10〜200秒、好ましくは20〜25℃で15〜1200秒の条件で現像することにより、所定のレジストパターンを形成する。
【0099】
上記アルカリ現像液としては、例えば、アルカリ金属水酸化物、アンモニア水、アルキルアミン類、アルカノールアミン類、複素環式アミン類、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド類、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物を、通常、0.0001〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%、より好ましくは0.1〜3重量%の濃度となるよう溶解したアルカリ性水溶液が使用される。また、上記アルカリ性水溶液からなる現像液には、水溶性有機溶剤や界面活性剤を適宜添加することもできる。
【0100】
上記のネガティブトーンで用いる有機溶剤現像液としては、2−ヘプタノン、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、酢酸ブチルなどが挙げられる。
【実施例】
【0101】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何らの制限を受けるものではない。なお、実施例において、新規(メタ)アクリル系化合物の純度及び収率は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、構造はHおよび13C−NMRにより決定した。HPLCの測定条件は以下のとおりである。
<HPLC測定条件>
カラム:化学物質評価機構L−column ODS L−C18(5μm、4.6φ×250mm)、展開溶媒 :アセトニトリル/水 =70/30(v/v)、流量:1ml/分、カラム温度:40℃、検出器:RI
【0102】
実施例1
<メタクリル酸2−((tert−ブトキシカルボニル)オキシ)エチルの製造>
撹拌子、温度計を備えた1L三口丸底フラスコに、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル100g(765mmol)、テトラヒドロフラン70g、4−ジメチルアミノピリジン3.93g(31.9mmol)を仕込み、反応液を40℃に加熱した。滴下ロートに二炭酸ジ−tert−ブチル140g(638mmol)、テトラヒドロフラン140gを仕込、反応液の発泡を確認しながら、徐々に滴下した。滴下終了後、40℃の液温を保ち1時間撹拌した。反応液を水冷して30℃以下に冷却し、イオン交換水480g添加し、反応を停止させた。反応液にトルエン454gを加え、撹拌し目的物を回収、水層を除去した。さらに有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液484g、イオン交換水461g、1%硫酸452g、イオン交換水450gで洗浄した。有機層を回収し、フェノチアジン283mg添加し、溶剤を減圧除去し、透明液体195gを得た。得られた褐色液体を減圧蒸留(0.2torr、87℃)し、留分を回収、目的物を透明液体として134.4g(収率91.5%)を得た。H−NMRスペクトル(CDCl):δ1.4ppm(9H、tert−ブトキシ基)、1.9ppm(3H、メタクリロイル基のメチル基)、4.3ppm(4H、エチレン)、5.5ppm(1H、メタクリロイル基二重結合)、6.1ppm(1H、メタクリロイル基二重結合)。13C−NMRスペクトル(CDCl):15ppm(メタクリロイル基のメチル基)、25ppm(tert−ブトキシ基のメチル基)、60ppm、62ppm(エチレン)、79ppm(tert−ブトキシ基の第3級炭素)、123ppm(メタクリロイル基二重結合末端)、133ppm(メタクリロイル基カルボニルα位)、150ppm(カルボネート基)、164pm(メタクリロイル基カルボニル基)。
式(30)にメタクリル酸2−((tert−ブトキシカルボニル)オキシ)エチルを示す。
【0103】
【化30】
(30)
【0104】
実施例2
<tert−ブチル(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)カルボネートの製造>
撹拌子、温度計を備えた500 ml三口丸底フラスコに、2−メチルプロパン−1,2−ジオール49.55g(550mmol)、4−ジメチルアミノピリジン2.80g(23mmol)、テトラヒドロフラン49.55gを仕込、反応液を40℃に加熱した。滴下ロートに二炭酸ジ−tert−ブチル100g(458mmol)、テトラヒドロフラン100gを仕込、反応液の発泡を確認しながら、徐々に滴下した。滴下終了後、40℃の液温を保ち1時間撹拌した。反応液を水冷して30℃以下に冷却し、イオン交換水33g添加し、反応を停止させた。反応液を2L分液ロートに移し、トルエン600g加え、イオン交換水800gでの洗浄操作を3回行った。有機層を回収し、溶媒を減圧留去させ、tert−ブチル(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)カルボネートを含む透明液体81.78gを得た。
式(31)にtert−ブチル(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)カルボネートを示す。
【0105】
【化31】
(31)
【0106】
<メタクリル酸1−((tert−ブトキシカルボニル)オキシ)−2−メチルプロパン−2−イルの製造>
得られた透明液体81.78gと1,2−ジクロロエタン370.60g、トリエチルアミン66.70g(662mmol)、フェノチアジン0.78g(3.9mmol)を撹拌子、温度計、冷却管を備えた1L三口丸底フラスコに加え、水冷し反応液温を20℃以下にした。滴下ロートにメタクリル酸クロライド61.04g(584mmol)を仕込、反応液に滴下した。滴下終了後、反応液温を80℃に保ち、8時間撹拌した。反応終了後、反応液温を30℃以下に水冷し、2L分液ロートに移し、トルエン741g、イオン交換水445g、5%水酸化ナトリウム水溶液445g、イオン交換水445gで洗浄した。有機層を回収し、p−メトキシフェノール10mg添加し、溶媒を減圧留去し、褐色透明液体119.6gを得た。得られた褐色液体を減圧蒸留(0.8torr、72℃)し、留分を回収、目的物を透明液体として850g(収率71.8%)を得た。H−NMRスペクトル(CDCl):δ1.5(9H、tert−ブトキシ基)、1.5ppm(6H、イソブチル基のメチル基)、1.9ppm(3H、メタクリロイル基のメチル基)、4.2ppm(2H、イソブチル基のメチレン)、5.5ppm(1H、メタクリロイル基二重結合)、6.0ppm(1H、メタクリロイル基二重結合)。13C−NMRスペクトル(CDCl):15ppm(メタクリロイル基のメチル基)、20ppm(イソブチル基のメチル基)、25ppm(tert−ブトキシ基のメチル基)、68ppm(イソブチル基のメチレン)、77ppm(イソブチル基の第3級炭素)、79ppm(tert−ブトキシ基の第3級炭素)、122ppm(メタクリロイル基二重結合末端)、134ppm(メタクリロイル基カルボニルα位)、150ppm(カルボネート基)、163pm(メタクリロイル基カルボニル基)。
式(32)にメタクリル酸1−((tert−ブトキシカルボニル)オキシ)−2−メチルプロパン−2−イルを示す。
【0107】
【化32】
(32)
【0108】
実施例3、比較例1、2
<tert−ブタノール除去試験>
実施例1の反応液を3g、表1に記載の有機溶剤を3g、イオン交換水3gを20mlガラスサンプル瓶に加え、撹拌、有機層、水層中の成分をHPLCにより測定、tert−ブタノールの除去効率を求めた。結果を表1に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
実施例4、比較例3、4
<tert−ブタノール除去試験>
実施例2のtert−ブチル(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)カルボネートの反応液を3g、表2記載の有機溶剤を3g、イオン交換水3gを20mlガラスサンプル瓶に加え、撹拌、有機層、水層中の成分をHPLCにより測定、tert−ブタノールの除去効率を求めた。結果を表2に示す。
【0111】
【表2】
【0112】
実施例5
<樹脂合成例1>
実施例2で得られたメタクリル酸1−((tert−ブトキシカルボニル)オキシ)−2−メチルプロパン−2−イル(以下モノマーA1と表記する)5.15g、3−ヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレート(以下、モノマーB1と表記する)2.37g、2−メタクリルロイルオキシ−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン(以下、モノマーC1)4.46g、アゾビスイソブチロニトリル0.42gを、テトラヒドロフラン100mLに溶解させ、窒素雰囲気下、反応温度を60℃に保持して、15時間重合させた(モノマー仕込み比は、A1/B1/C1=40/20/40モル%)。重合後、反応溶液を500mLのn−ヘキサン中に滴下して、樹脂を凝固精製させ、生成した白色粉末をメンブレンフィルターでろ過し、n−ヘキサンの1000mlで洗浄した。白色粉末を回収し、減圧下40℃で一晩乾燥させメタクリル共重合体P1を10.60g得た。
【0113】
実施例6
<樹脂合成例2>
実施例2で得られたメタクリル酸1−((tert−ブトキシカルボニル)オキシ)−2−メチルプロパン−2−イル(モノマーA1)2.58g、2−エチル−2−メタクリロイルオキシアダマンタン(以下、モノマーB2と表記する)4.97g、2−メタクリルロイルオキシ−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン(モノマーC1)4.44g、アゾビスイソブチロニトリル0.41gを、テトラヒドロフラン110mLに溶解させ、窒素雰囲気下、反応温度を60℃に保持して、15時間重合させた(モノマー仕込み比は、A1/B2/C1=20/40/40モル%)。重合後、反応溶液を550mLのn−ヘキサン中に滴下して、樹脂を凝固精製させ、生成した白色粉末をメンブレンフィルターでろ過し、n−ヘキサンの1000mlで洗浄した。白色粉末を回収し、減圧下40℃で一晩乾燥させメタクリル共重合体P2を7.60g得た。
【0114】
実施例7
<樹脂重合例3>
2−メタクリルロイルオキシ−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン(モノマーC1)4.44gを、α−メタクリルロイルオキシ−γ−ブチロラクトン(以下、モノマーC2)3.40gに代えた以外は、実施例4と同様に実施し、メタクリル共重合体P3を6.92g得た。
【0115】
実施例8〜10
<レジスト性能評価>
メタクリル共重合体P1〜P3をそれぞれ100重量部とトリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート(みどり化学社製TPS−109)10重量部を、共重合体濃度6.3重量%になるように溶剤(P1は乳酸エチル、P2およびP3はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)で溶解させ、感光性樹脂組成物R1、R2およびR3を調製した。シリコンウエハー上に反射防止膜(日産化学社製ARC−29)を塗布した後、この感光性樹脂組成物をスピンコーティングにより反射防止膜状に塗布し、厚み100nmの感光層を形成した。ホットプレート上で温度90℃、60秒間プリベークした後、電子線描画装置(エリオニクス社製ELS−7700)にて感光層を150nmハーフピッチのライン・アンド・スペースパターン(ライン10本)で照射した。表3に示した温度で90秒間ポストベーク(PEB)した。次いで、0.3Mのテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液により60秒間現像し、純水でリンスし、ライン・アンド・スペースパターンを得た。結果を表3に示す。
【0116】
【表3】
【0117】
比較例5
2−アダマンチル−2−メタクリルロイルオキシプロパン(以下、モノマーA2)を4.72g、3−ヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレート(モノマーB1)2.12g、2−メタクリルロイルオキシ−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン(モノマーC1)4.02g、アゾビスイソブチロニトリル0.37gを、テトラヒドロフラン100mLに溶解させ、窒素雰囲気下、反応温度を60℃に保持して、15時間重合させた(モノマー仕込み比は、A2/B1/C1=40/20/40モル%)。重合後、反応溶液を500mLのn−ヘキサン中に滴下して、樹脂を凝固精製させ、生成した白色粉末をメンブレンフィルターでろ過し、n−ヘキサン1000mlで洗浄した。白色粉末を回収し、減圧下40℃で一晩乾燥させメタクリル共重合体P4を10.21g得た。
式(33)にモノマーA2を示す。
【0118】
【化33】
(33)
【0119】
<溶剤溶解性試験>
実施例5〜7および比較例5で得られたメタクリル共重合体を共重合体濃度6.3重量%になるように乳酸エチルに分散させ、超音波撹拌器で撹拌し、目視により溶解性を確認した。結果を表4に示す。
○:溶け残りがない
×:溶け残りがある
【0120】
【表4】
【0121】
<酸解離性試験>
フォトレジストポリマー重合後の酸解離性のモデル試験として、溶液中でのモノマー酸分解性の試験を行った。表5に記載した各酸解離性エステル化合物を1.61mmol、重トルエン−d8を4ml、p−トルエンスルホン酸一水和物を15.3mg(0.0805mmol)をφ6試験管に加え、アルミブロックヒーターで90℃、1時間加熱し、試験前後のH−NMRスペクトル変化から分解率を求めた。分解率の算出に用いたピークは表5に示した。
【0122】
【表5】
【0123】
実施例16
<樹脂重合例4>
メタクリル酸1−((tert−ブトキシカルボニル)オキシ)−2−メチルプロパン−2−イル(モノマーA1)5.15gを、メタクリル酸2−((tert−ブトキシカルボニル)オキシ)エチル4.60gに、2−メタクリルロイルオキシ−5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン(モノマーC1)4.46gを、α−メタクリルロイルオキシ−γ−ブチロラクトン(モノマーC2)3.40gに変えた以外は実施例5と同様に行い、メタクリル共重合体P5を8.72g得た。
【0124】
比較例8
メタクリル酸2−((tert−ブトキシカルボニル)オキシ)エチル2.68gを、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル2.68gに変えた以外は実施例16と同に行い、メタクリル共重合体P6を5.40g得た。
【0125】
メタクリル共重合体P1、P5、P6をそれぞれ0.25gガラスサンプル瓶に添加し、安息香酸メチルを10g添加、メタクリル共重合体の溶解性を確認した。結果を表6に示す。
○:溶け残りがない
×:溶け残りがある
【0126】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明のエステル化合物、メタクリル共重合体、感光性樹脂組成物はフォトレジスト用に使用できる。