特許第6201725号(P6201725)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6201725
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】圧力センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 19/14 20060101AFI20170914BHJP
   G01L 9/00 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   G01L19/14
   G01L9/00 E
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-262896(P2013-262896)
(22)【出願日】2013年12月19日
(65)【公開番号】特開2015-118052(P2015-118052A)
(43)【公開日】2015年6月25日
【審査請求日】2016年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】小栗 康範
(72)【発明者】
【氏名】直井 孝
【審査官】 梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−133345(JP,A)
【文献】 特開2002−098552(JP,A)
【文献】 特開2005−265667(JP,A)
【文献】 特開2012−103127(JP,A)
【文献】 国際公開第91/10888(WO,A1)
【文献】 米国特許第5315877(US,A)
【文献】 米国特許第7293464(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00 − 23/32
G01L 27/00 − 27/02
H01L 27/20
H01L 29/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定流体の圧力を電気信号に変換するセンサ素子(11)と、
前記センサ素子を搭載し、該センサ素子と電気接続する端子(12,13)が埋め込まれた絶縁性の第1ハウジング(10)と、
前記被測定流体の導入路(21a,21c,21d)が形成されてなり、前記第1ハウジングと一体的に組みつけられて、被測定流体の流れるボデーグランド(以下、GNDと記載)の配管(40)に装着される、導電性の第2ハウジング(20a,20c,20d)とを有してなる圧力センサ(100〜102,120,121)であって、
前記第2ハウジングと前記GNDの間に接続される抵抗(R,Ra)を有してなることを特徴とする圧力センサ。
【請求項2】
前記第2ハウジングと前記GNDの間に接続される容量(C)を有してなることを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項3】
被測定流体の圧力を電気信号に変換するセンサ素子(11)と、
前記センサ素子を搭載し、該センサ素子と電気接続する端子(12,13)が埋め込まれた絶縁性の第1ハウジング(10)と、
前記被測定流体の導入路(21b)が形成されてなり、前記第1ハウジングと一体的に組みつけられて、被測定流体の流れるGNDの配管(40)に装着される、導電性の第2ハウジング(20b)とを有してなる圧力センサ(110)であって、
前記第2ハウジングと前記GNDの間に接続される容量(C)を有してなることを特徴とする圧力センサ。
【請求項4】
前記抵抗が、前記被測定流体の導入路となる貫通穴(61)を有した筒形状の抵抗体(60)であり、
前記貫通穴と前記第2ハウジング(20a,20c)の導入路(21a,21c)を連結するようにして、前記筒形状の抵抗体の一方の端面が、前記第2ハウジングの端面に接続されてなり、
前記導入路を取り囲む前記第2ハウジングの側面と前記抵抗体の側面が、前記配管への装着時に配管と接触しないように、誘電体層(62,70)で被覆されてなり、
前記抵抗体のもう一方の端面が、前記配管への装着時に配管と接触するように構成されてなることを特徴とする請求項1または2に記載の圧力センサ。
【請求項5】
前記導入路を取り囲む前記第2ハウジングの側面が、前記配管への装着時に配管と接触しないように、誘電体層(70)で被覆され、
前記誘電体層上に、金属層(71)が積層され、
前記金属層の外面が、前記配管への装着時に配管と接触するように構成されてなり、
前記容量が、前記第2ハウジング、前記誘電体層および前記金属層で構成されることを特徴とする請求項2または3に記載の圧力センサ。
【請求項6】
電源または出力の前記端子(12)と前記GNDとの間に、バイパスコンデンサ(Cb)が接続されてなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の圧力センサ。
【請求項7】
前記第1ハウジングと前記第2ハウジングが一体的に組みつけられて、第2ハウジングに形成された前記導入路から第1ハウジングに搭載された前記センサ素子に至る空間が、導電性のダイヤフラム(22)によって仕切られてなり、
前記センサ素子側の空間に、誘電性の圧力伝達媒体(31)が充填されてなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の圧力センサ。
【請求項8】
前記圧力センサが、車載用であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の圧力センサ。
【請求項9】
前記圧力センサが、燃料圧センサであることを特徴とする請求項8に記載の圧力センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定流体の流れる配管に装着されて、被測定流体の圧力を電気信号に変換する圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
被測定流体の流れる配管に装着されて、被測定流体の圧力を電気信号に変換する圧力センサが、例えば、特開2001−133345号公報(特許文献1)と
特開2004−286644号公報(特許文献2)に開示されている。
【0003】
図13は、特許文献2と同様の従来の圧力センサの一例を示した図で、圧力センサ90の模式的な断面図である。
【0004】
図13に示す圧力センサ90は、車載用の燃料圧センサで、被測定流体であるガソリン等の燃料の配管に装着されて、燃料圧を電気信号に変換する。圧力センサ90は、絶縁性の第1ハウジング10と導電性の第2ハウジング20を、かしめにより一体的に組みつけて構成されている。
【0005】
絶縁性の第1ハウジング10は、樹脂製で、燃料の圧力を電気信号に変換するセンサ素子11が搭載され、該センサ素子11と電気接続するコネクタの端子12,13が埋め込まれている。より詳細には、第1ハウジング10の図示下面には、陥没部14が形成されていると共に、その陥没部14の中央に凹部15が形成されており、その凹部15にセンサ素子11が配置されている。センサ素子11は、ガラス台座16に陽極接合された状態で凹部15に接着剤で固定されており、その電極は、ボンディングワイヤ17を介してセンサ素子11を囲むように設けられた端子12,13と接続されている。尚、図13において、短く突き出た端子12は、電源端子または出力端子であり、長く突き出た端子13は、接地端子である。
【0006】
導電性の第2ハウジング20は、金属製で、燃料の導入路21が形成されている。より詳細には、第2ハウジング20の図示上面には、導入路21を閉鎖するように金属製で薄肉円盤状のダイヤフラム22が配置され、その外周部に金属製で円環状の押さえ部材23が配置されている。この押さえ部材23の全周は、ダイヤフラム22を介して第2ハウジング20に溶接されており、これによって、導入路21の一端は、ダイヤフラム22により液密に閉鎖されていることになる。また、第2ハウジング20の図示下方の外周には、被測定流体の燃料が流れる配管に装着するためのネジ部24が形成されている。
【0007】
第2ハウジング20と第1ハウジング10とが一体化された状態では、ダイヤフラム22と第1ハウジング10の陥没部14との間で液体封入空間30が形成され、その液体封入空間30に、圧力伝達媒体のシリコンオイル31が封入されている。第2ハウジング20と第1ハウジング10とは、貸し目かしめにより単に外周部が密着しているだけである。このため、液体封入空間30を液密に封止する手段として、第1ハウジング10に形成された溝部19にOリング32を配置し、シリコンオイル31の密閉を図るようにしている。
【0008】
図14は、燃料の流れる金属製の配管40に対して、図13の圧力センサ90を装着した状態を示す模式的な断面図である。
【0009】
図14に示すように、圧力センサ90は、配管40に形成されたネジ穴41に対して、第2ハウジング20のネジ部24をねじ込んで装着する。また、配管40には、燃料の分岐穴42が形成されており、該分岐穴42と第2ハウジング20の導入路21が連通することで、被測定流体である燃料が、ダイヤフラム22まで導入される。そして、燃料の圧力が、ダイヤフラム22とシリコンオイル31を介して、センサ素子11に伝達される。また、第1ハウジング10に埋め込まれているコネクタの端子12,13に対して、それぞれハーネス51,52が接続され、センサ素子11に対する電源電圧の入力とセンサ素子11からの電気信号の出力が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−133345号公報
【特許文献2】特開2004−286644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図14に示す金属製の配管40は、電気的には、ボデーグランド(以下、GNDと記載)となっている。図14の装着状態にある圧力センサ90では、誘電性のシリコンオイル31を間に挟んで、金属からなるダイヤフラム22と、電源または出力の端子12、ボンディングワイヤ17およびセンサ素子11との間で、図中に示した数pF〜数十pFの寄生容量Cpが形成される。また、電源または出力の端子12に接続される長いハーネス51は、通常数mで電子制御装置(以下、ECUと記載)と接続され、図中に示した1mあたり約1μHの寄生インダクタンスLpを有している。このため、例えば圧力センサ90とECUを1mのハーネスで接続すると、Cp=30pFとして、約30MHzで共振がおこる。この共振周波数では、絶縁状態でもインピーダンスが非常に小さくなるため、圧力センサ90に大きなノイズ電流が流れ込んでしまい、圧力センサ90の誤動作が問題となる。
【0012】
車載用の圧力センサ90では、電磁ノイズの影響を少なくして誤動作し難くするために、一般的に、0.1μF程度のバイパスコンデンサが、電源または出力の端子12とGNDとの間に接続される(図示省略)。しかしながら、このバイパスコンデンサは、低周波ノイズについては十分に除去できるものの、上記のような共振を伴う高周波ノイズに対しては十分な低減効果が得られない。
【0013】
そこで本発明は、被測定流体の流れる配管に装着されて、被測定流体の圧力を電気信号に変換する圧力センサであって、共振を伴う高周波ノイズの影響を抑制可能で、該高周波ノイズによる誤動作の起き難い圧力センサを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る圧力センサは、被測定流体の圧力を電気信号に変換するセンサ素子と、以下に示す第1ハウジングおよび第2ハウジングを有してなる圧力センサである。第1ハウジングは、センサ素子を搭載し、該センサ素子と電気接続する端子が埋め込まれた絶縁性のハウジングである。また、第2ハウジングは、被測定流体の導入路が形成されてなり、第1ハウジングと一体的に組みつけられて、被測定流体の流れるGNDの配管に装着される、導電性のハウジングである。そして、本発明に係る圧力センサは、第2ハウジングとGNDの間に接続される抵抗を有してなる点に特徴がある。
【0015】
課題欄において説明したように、被測定流体の流れるGNDの配管に装着して使用される圧力センサでは、圧力センサの構造に起因した寄生容量Cpと、圧力センサとECUを接続するハーネスに起因した寄生インダクタンスLpが存在する。そこで、上記圧力センサは、寄生容量Cpと寄生インダクタンスLpによる共振周波数での高周波ノイズの影響を抑制するため、第2ハウジングとGNDの間に接続される抵抗を有した構成としている。
【0016】
上記抵抗が第2ハウジングとGNDの間に接続されることで、ノイズの伝播経路における寄生容量Cpと直列に該抵抗の抵抗値Rが挿入され、回路共振のQ値は、Q=(1/R)×√(Lp/Cp)となる。従って、十分に大きな抵抗値Rの抵抗を用いることで、回路共振のQ値を低減し、共振周波数での高周波ノイズを減衰させることができる。これによって、上記圧力センサは、共振を伴う高周波ノイズの影響を抑制可能で、該高周波ノイズによる誤動作の起き難くすることができる。
【0017】
また、上記圧力センサは、第2ハウジングとGNDの間に接続される容量を有してなることが好ましい。
【0018】
上記容量が第2ハウジングとGNDの間に接続されることで、ノイズの伝播経路における寄生容量Cpと直列に該容量の容量値Cが挿入され、共振周波数は、fa=1/2π√(LpCa)となる。但し、Ca=CpC/(Cp+C)である。従って、適当な容量値Cの容量を用いることで、先の共振周波数fpから圧力センサの動作に悪影響を及ぼさない共振周波数faまで、回路共振の共振周波数を高周波側にずらせることができる。これによっても、上記圧力センサは、高周波ノイズによる誤動作の起き難くすることができる。
【0019】
尚、上記圧力センサは、上記した抵抗と容量を第2ハウジングとGNDの間に接続して、抵抗による高周波ノイズの減衰効果と容量による共振周波数をずらせる効果を併用することが好ましい。しかしながら、いずれか一方だけであっても、高周波ノイズによる圧力センサの誤動作防止は可能である。
【0020】
上記圧力センサは、電源または出力の端子とGNDとの間に、低周波ノイズを除去するためのバイパスコンデンサが接続されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る圧力センサの一例で、圧力センサ100の模式的な断面図である。
図2】燃料の流れる金属製の配管40に対して、図1の圧力センサ100を装着した状態を示す模式的な断面図である。
図3図2の装着状態にある圧力センサ100についてのシミュレーション結果の一例で、(a)は、使用した4等価回路と回路パラメータを示した図であり、(b)は、ノイズ電流の周波数依存性の評価結果である。
図4】別の圧力センサの例で、圧力センサ110の模式的な断面図である。
図5】燃料の流れる金属製の配管40に対して、図4の圧力センサ110を装着した状態を示す模式的な断面図である。
図6図5の装着状態にある圧力センサ110についてのシミュレーション結果の一例で、(a)は、使用した4等価回路と回路パラメータを示した図であり、(b)は、ノイズ電流の周波数依存性の評価結果である。
図7】別の圧力センサの例で、圧力センサ120の模式的な断面図である。
図8】燃料の流れる金属製の配管40に対して、図7の圧力センサ120を装着した状態を示す模式的な断面図である。
図9図8の装着状態にある圧力センサ120についてのシミュレーション結果の一例で、(a)は、使用した4等価回路と回路パラメータを示した図であり、(b)は、ノイズ電流の周波数依存性の評価結果である。
図10図1に示した圧力センサ100の変形例で、圧力センサ101の模式的な断面図である。
図11図1に示した圧力センサ100の変形例で、圧力センサ102の模式的な断面図である。
図12図7に示した圧力センサ120の変形例で、圧力センサ121の模式的な断面図である。
図13】特許文献2と同様の従来の圧力センサの一例を示した図で、圧力センサ90の模式的な断面図である。
図14】燃料の流れる金属製の配管40に対して、図13の圧力センサ90を装着した状態を示す模式的な断面図である。
図15図14の圧力センサ90についてのシミュレーション結果の一例で、(a)は、使用した4等価回路と回路パラメータを示した図であり、(b)は、ノイズ電流の周波数依存性の評価結果である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
最初に、図14の装着状態にある従来の圧力センサ90において、高周波ノイズの影響を分析した結果について説明する。
【0023】
課題欄において説明したように、被測定流体の流れるGNDの配管40に装着して使用される圧力センサ90では、圧力センサ90の構造に起因した寄生容量Cpと、ECUに接続するハーネス51に起因した寄生インダクタンスLpが存在する。このため、従来の圧力センサ90では、寄生容量Cpと寄生インダクタンスLpによる共振周波数fp=1/2π√(LpCp)で高周波のノイズ電流が流れ込み、誤動作が起きる場合がある。
【0024】
図15は、図14の圧力センサ90についてのシミュレーション結果の一例で、(a)は、使用した4等価回路と回路パラメータを示した図であり、(b)は、ノイズ電流の周波数依存性の評価結果である。
【0025】
図15(a)に示す等価回路では、図14に示したハーネス51の寄生インダクタンスLpを6μHとし、圧力センサ90の寄生容量Cpを約7pFとして、シミュレーションによる高周波ノイズの影響を評価している。その結果、図15(b)に示すように、従来の圧力センサ90では、約330MHzの共振周波数fpで、ハーネス51の寄生インダクタンスLpと圧力センサ90の寄生容量Cpに起因した回路共振が起きる。従って、この共振周波数fpでは、ECUからの大きなノイズ電流が圧力センサ90へ流れ込み、圧力センサ90が誤動作する可能性がある。
【0026】
次に、上記分析結果に基づいてなされた、本発明に係る圧力センサの実施形態を、図に基づいて説明する。
【0027】
図1は、本発明に係る圧力センサの一例で、圧力センサ100の模式的な断面図である。また、図2は、燃料の流れる金属製の配管40に対して、図1の圧力センサ100を装着した状態を示す模式的な断面図である。
【0028】
尚、以下に例示する各圧力センサは、一部を除いて図13図14に示した圧力センサ90と対応しているため、圧力センサ90と同様の部分については、同じ符号を付して、その説明は省略する。
【0029】
図1に示す圧力センサ100は、図13に示した圧力センサ90と同様の車載用の燃料圧センサで、被測定流体であるガソリン等の燃料の配管に装着されて、燃料圧を電気信号に変換する。
【0030】
図1の圧力センサ100は、図13に示した圧力センサ90と同様で、被測定流体の圧力を電気信号に変換するセンサ素子11と、以下に示す第1ハウジング10および第2ハウジング20aを有してなる圧力センサである。第1ハウジング10は、センサ素子11を搭載し、該センサ素子11と電気接続する端子12,13が埋め込まれた絶縁性のハウジングである。また、第2ハウジング20aは、導電性のハウジングで、被測定流体の導入路21aが形成されており、第1ハウジング10と一体的に組みつけられて、図2に示すように、被測定流体の流れるGNDの配管40に装着される。
【0031】
また、図1の圧力センサ100は、図13に示した圧力センサ90と同様で、第2ハウジング20aに形成された導入路21aから第1ハウジング10に搭載されたセンサ素子11に至る空間が、導電性のダイヤフラム22によって仕切られている。そして、センサ素子11側の空間に、誘電性の圧力伝達媒体31が充填されている。
【0032】
一方、図1図2に示す圧力センサ100は、図中に一点鎖線と記号で示したように、第2ハウジング20aとGNDの間に接続される抵抗Rを有している点で、図13図14に示した圧力センサ90と異なっている。具体的には、抵抗Rは、被測定流体の導入路となる貫通穴61を有した筒形状の抵抗体60で、該貫通穴61と第2ハウジング20aの導入路21aを連結するようにして、筒形状の一方の端面(上側一点鎖線)が、第2ハウジング20aの端面に接続されている。また、導入路を取り囲む第2ハウジング20aの側面と抵抗体60の側面が、配管40と接触しないように、誘電体層62で被覆されている。誘電体層62は、第2ハウジング20aと配管40を絶縁する絶縁膜としての機能を有している。そして、図2に示すように、抵抗体60の筒形状のもう一方の端面(下側一点鎖線)が、配管40と接触するように構成されている。上記のように構成された抵抗Rを有する圧力センサ100を配管40に接続すると、図中に示す圧力センサ100の記号で示した寄生容量Cpと抵抗体60の抵抗Rは、直列接続されて、電源または出力の端子12とGNDの間に挿入される。
【0033】
圧力センサ100は、センサの構造に伴う寄生容量Cpとハーネスに伴う寄生インダクタンスLpによる先に説明した共振周波数fpでの高周波ノイズの影響を抑制するため、抵抗Rを有した構成としている。抵抗Rが第2ハウジング20aとGNDの間に接続されることで、ノイズの伝播経路における寄生容量Cpと直列に抵抗Rの抵抗値が挿入され、回路共振のQ値は、Q=(1/R)×√(Lp/Cp)となる。従って、十分に大きな抵抗値の抵抗Rを用いることで、回路共振のQ値を低減し、共振周波数fpでの高周波ノイズを減衰させることができる。これによって、圧力センサ100は、共振を伴う高周波ノイズの影響を抑制可能で、該高周波ノイズによる誤動作の起き難くすることができる。
【0034】
図3は、図2の装着状態にある圧力センサ100についてのシミュレーション結果の一例で、(a)は、使用した4等価回路と回路パラメータを示した図であり、(b)は、ノイズ電流の周波数依存性の評価結果である。
【0035】
尚、図3に示す圧力センサ100についてのシミュレーションは、図15に示した従来の圧力センサ90についてのシミュレーションと対応しており、(a)の等価回路において、寄生容量Cpに抵抗Rが直列接続されている点だけが異なっている。また、(b)のシミュレーション結果では、比較のため、図15に示した圧力センサ90についてのシミュレーション結果を点線で示している。
【0036】
図3(a)に示す等価回路では、ハーネス51の寄生インダクタンスLpを6μHとし、約7pFの寄生容量Cpに1Ωの抵抗Rを直列接続して、シミュレーションによる高周波ノイズの影響を評価している。その結果、図3(b)に示すように、寄生容量Cpに1Ωの抵抗Rを接続した圧力センサ100では、従来の圧力センサ90に較べて、ノイズ電流の回路共振ピークを85μAから30μAまで、1/3程度に抑制することができる。このように、ECUからのノイズ電流の流れ込みが1/3まで抑制されるため、圧力センサ100では、従来の圧力センサ90に較べて、誤動作する可能性が格段に低減される。
【0037】
図4は、別の圧力センサの例で、圧力センサ110の模式的な断面図である。また、図5は、燃料の流れる金属製の配管40に対して、図4の圧力センサ110を装着した状態を示す模式的な断面図である。
【0038】
図4の圧力センサ110は、センサ素子11、第1ハウジング10および第2ハウジング20bを有してなる圧力センサである。第1ハウジング10は、センサ素子11を搭載し、該センサ素子11と電気接続する端子12,13が埋め込まれた絶縁性のハウジングである。また、第2ハウジング20bは、導電性のハウジングで、被測定流体の導入路21bが形成されており、第1ハウジング10と一体的に組みつけられて、図5に示すように、被測定流体の流れるGNDの配管40に装着される。
【0039】
一方、図4図5に示す圧力センサ110は、図中に二点鎖線と記号で示したように、第2ハウジング20bとGNDの間に接続される容量Cを有している点で、図13図14に示した圧力センサ90と異なっている。すなわち、圧力センサ110では、導入路21bを取り囲む第2ハウジング20bの側面が配管40と接触しないように誘電体層70で被覆され、誘電体層70上に金属層71が積層され、金属層71の外面が配管40と接触するように構成されている。これによって、二点鎖線と記号で示した容量Cが、第2ハウジング20b、誘電体層70および金属層71で構成される。
【0040】
上記容量が第2ハウジング20bとGNDの間に接続されることで、ノイズの伝播経路における寄生容量Cpと直列に該容量Cの容量値が挿入され、共振周波数は、fa=1/2π√(LpCa)となる。但し、Ca=CpC/(Cp+C)である。従って、適当な容量値Cの容量を用いることで、先の共振周波数fpから圧力センサの動作に悪影響を及ぼさない共振周波数faまで、回路共振の共振周波数を高周波側にずらせることができる。これによって、圧力センサ110は、高周波ノイズによる誤動作を起き難くすることができる。
【0041】
図6は、図5の装着状態にある圧力センサ110についてのシミュレーション結果の一例で、(a)は、使用した4等価回路と回路パラメータを示した図であり、(b)は、ノイズ電流の周波数依存性の評価結果である。
【0042】
図6(a)に示す等価回路では、約7pFの寄生容量Cpに100pFの容量Cを直列接続して、シミュレーションによる高周波ノイズの影響を評価している。その結果、図6(b)に示すように、圧力センサ110では、回路共振周波数を、圧力センサ90のfp=330MHzからfa=620MHzまでずらせることができる。また、回路共振ピークについても、85μAから50μAまで、2/3に低減される。このように、回路共振の共振周波数を圧力センサ100の動作に悪影響を及ぼさない高周波側までずらせることで、誤動作を起き難くすることが可能である。
【0043】
図7は、別の圧力センサの例で、圧力センサ120の模式的な断面図である。また、図8は、燃料の流れる金属製の配管40に対して、図7の圧力センサ120を装着した状態を示す模式的な断面図である。
【0044】
図7の圧力センサ120は、図1の圧力センサ100において一点鎖線と記号で示した抵抗Rと図4の圧力センサ110において二点鎖線と記号で示した容量Cの両方を備えている。
【0045】
図7図8に示す圧力センサ120は、センサ素子11、第1ハウジング10および第2ハウジング20cを有している。そして、圧力センサ120の抵抗Rは、被測定流体の導入路となる貫通穴61を有した筒形状の抵抗体60であり、該貫通穴61と第2ハウジング20cの導入路21cを連結するようにして、筒形状の一方の端面(上側一点鎖線)が、第2ハウジング20cの端面に接続されている。一方、導入路を取り囲む第2ハウジング20cの側面と抵抗体60の側面は、図1の圧力センサ100における誘電体層62と異なり、図4の圧力センサ110と同じ誘電体層70で被覆され、誘電体層70上に金属層71が積層されている。そして、図8に示すように、抵抗体60の筒形状のもう一方の端面(下側一点鎖線)と金属層71の外面が配管40と接触するように構成されている。これによって、圧力センサ120においては、一点鎖線と記号で示した抵抗Rおよび二点鎖線と記号で示した容量Cが、それぞれ寄生容量Cpに対して直列接続されて、電源または出力の端子12とGNDの間に挿入される。
【0046】
図9は、図8の装着状態にある圧力センサ120についてのシミュレーション結果の一例で、(a)は、使用した4等価回路と回路パラメータを示した図であり、(b)は、ノイズ電流の周波数依存性の評価結果である。
【0047】
図9(a)に示す等価回路では、約7pFの寄生容量Cpに1Ωの抵抗Rと100pFの容量Cをそれぞれ直列接続(抵抗Rと容量Cは並列接続)して、シミュレーションによる高周波ノイズの影響を評価している。その結果、図9(b)に示すように、圧力センサ120では、回路共振周波数を、圧力センサ90のfp=330MHzからfa=620MHzまでずらせることができ、回路共振ピークを、85μAから20μAまで1/4以下に低減することができる。
【0048】
圧力センサ120のように、上記した抵抗Rと容量Cを第2ハウジング20cとGNDの間に接続して、抵抗Rによる高周波ノイズの減衰効果と容量Cによる共振周波数をずらせる効果を併用することがより好ましい。これによって、高周波ノイズによる悪影響をより効果的に抑制することができ、圧力センサの誤動作防止をより確実にすることができる。しかしながら、抵抗Rと容量Cのいずれか一方だけであっても、高周波ノイズによる圧力センサの誤動作防止は可能である。
【0049】
次に、上記した圧力センサの変形例について説明する。
【0050】
図10図11は、図1に示した圧力センサ100の変形例で、それぞれ、圧力センサ101,102の模式的な断面図である。尚、図10図11に示す圧力センサ101,102において、図1に示した圧力センサ100と同様の部分については、同じ符号を付した。また、図10図11では、燃料の流れる金属製の配管40への各圧力センサ101,102の装着状態を点線で示してある。
【0051】
図10に示す圧力センサ101は、図1の圧力センサ100と同様の高周波ノイズを減衰させるための抵抗Rだけでなく、低周波ノイズを除去するための図中に記号で示したバイパスコンデンサCbを有している。バイパスコンデンサCbは、電源または出力の端子12とGNDとの間に接続する必要がある。このため、図10に示す圧力センサ101では、絶縁性の誘電体層62上の一部に金属層63が積層され、該金属層63の外面が配管40と接触するように構成されている。そして、図中の記号に示すように、バイパスコンデンサCbの一方の電極は、電源または出力の端子12に接続され、バイパスコンデンサCbのもう一方の電極は、金属層63に接続される。
【0052】
図11に示す圧力センサ102は、高周波ノイズを減衰させるための図1の圧力センサ100とは異なる抵抗体60aを有している。図11の圧力センサ102における抵抗体60aは、図中に一点鎖線と記号で示したように、抵抗Raとして、第2ハウジング20dとGNDの間に接続される。詳細には、抵抗体60aは、被測定流体の導入路となる貫通穴61aを有した筒形状に形成され、該貫通穴61aと第2ハウジング20dの導入路21dを連結するようにして、筒形状の内壁面(右側一点鎖線)が、第2ハウジング20dの外壁面に接続されている。そして、抵抗体60aの筒形状の外壁面(左側一点鎖線)が、配管40と接触するように構成されている。また、第2ハウジング20dの側面の一部は、配管40と接触しないように、絶縁性の誘電体層62aで被覆されている。上記のように構成された抵抗体60aを有する圧力センサ102を配管40に接続すると、圧力センサ102の寄生容量Cpと抵抗Raが直列接続されて、電源または出力の端子12とGNDの間に挿入される。
【0053】
また、図10の圧力センサ100と同様で、図11に示す圧力センサ102においても、絶縁性の誘電体層62a上に金属層63が積層され、該金属層63の外面が配管40と接触するように構成されている。そして、高周波ノイズを減衰させるための抵抗Raだけでなく、低周波ノイズを除去するための図中に記号で示したバイパスコンデンサCbが、電源または出力の端子12とGNDとの間に接続される。
【0054】
図12は、図7に示した圧力センサ120の変形例で、圧力センサ121の模式的な断面図である。図12の圧力センサ121において、図7の圧力センサ120と同様の部分については、同じ符号を付した。また、図12では、燃料の流れる金属製の配管40への圧力センサ121の装着状態を点線で示してある。
【0055】
図12に示す圧力センサ121は、図7に示した圧力センサ120と同じ構造で、さらに、端子12と金属層71の間に、低周波ノイズを除去するためのバイパスコンデンサCbが接続されている。これによって、抵抗Rと容量Cによる高周波ノイズの抑制だけでなく、バイパスコンデンサCbによる低周波ノイズの除去も同時に行うことができる。
【0056】
以上のようにして、上記した圧力センサは、いずれも、被測定流体の流れる配管に装着されて、被測定流体の圧力を電気信号に変換する圧力センサであって、共振を伴う高周波ノイズの影響を抑制でき、誤動作の起き難い圧力センサとすることができる。
【0057】
従って、上記圧力センサは、高周波ノイズに対して厳しい性能保証が必要とされる車載用に適しており、特に、燃料圧センサに好適である。
【符号の説明】
【0058】
90,100〜102,110,120,121 圧力センサ
10 第1ハウジング
11 センサ素子
12,13 端子
20,20a〜20d 第2ハウジング
Cp 寄生容量
40 配管
GND ボデーグランド
51,52 ハーネス
Lp 寄生インダクタンス
60,60a 抵抗体
R,Ra 抵抗
62,62a,70 誘電体層
63,71 金属層
C 容量
Cb バイパスコンデンサ
図1
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