特許第6201748号(P6201748)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6201748注液方法、蓄電池の製造方法および注液装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6201748
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】注液方法、蓄電池の製造方法および注液装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/36 20060101AFI20170914BHJP
   H01M 2/38 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   H01M2/36 101H
   H01M2/38 B
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-270532(P2013-270532)
(22)【出願日】2013年12月26日
(65)【公開番号】特開2015-125942(P2015-125942A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年3月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】奥田 真也
【審査官】 小川 知宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−283114(JP,A)
【文献】 特開平10−115621(JP,A)
【文献】 特開2001−110399(JP,A)
【文献】 特表昭60−501822(JP,A)
【文献】 実開昭56−050060(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/36
H01M 2/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池の電槽内に電解液を注入するための注液装置であって、
前記電解液を注入するためのノズルと、
前記ノズルの先端開口部付近を直接振動させる振動手段と、を備え
前記ノズルは、前記先端開口部付近の内壁面に前記ノズルの中心軸線側に向かって延びる複数の棒状の突起を有し、
前記複数の棒状の突起は、前記振動手段によって前記ノズルが振動されることにより振動し、前記ノズル内部の前記電解液を攪拌することを特徴とする注液装置。
【請求項2】
前記ノズルは、前記先端開口部側ほど通路面積が狭くなるテーパ状をなしており、
前記複数の棒状の突起は、前記ノズルの前記先端開口部側から離れた位置に配置された突起ほど前記ノズルの中心軸線側に向かって延びる長さが長くなるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の注液装置。
【請求項3】
前記振動手段は、超音波振動の発振源であることを特徴とする請求項またはに記載の注液装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電槽内に電解液を注入するための注液方法、蓄電池の製造方法および注液装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1等に電解液の真空注液方法が開示されており、密閉型電池の電槽に極群を挿入した後、この電槽に密閉蓋をし、真空ポンプによって電槽内を減圧した後、電解液を注入するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−190168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、二次電池の注液工程において、注液口は小さく、ノズルの先端が細い。そのため、注液時に電槽内から出た気体は気泡としてノズルを通るようになり、気泡がノズルの内壁面に付いて留まってしまうと電解液の注液速度が遅くなり電解液が電槽により入りにくくなる要因になる。つまり、電解液がノズル壁面と接触することで電解液の注液速度が遅くなり、生産性が悪い。
【0005】
本発明の目的は、電解液の注液速度を速くすることができる注液方法、蓄電池の製造方法および注液装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項に記載の発明では、蓄電池の電槽内に電解液を注入するための注液装置であって、前記電解液を注入するためのノズルと、前記ノズルの先端開口部付近を直接振動させる振動手段と、を備え、前記ノズルは、前記先端開口部付近の内壁面に前記ノズルの中心軸線側に向かって延びる複数の棒状の突起を有し、前記複数の棒状の突起は、前記振動手段によって前記ノズルが振動されることにより振動し、前記ノズル内部の前記電解液を攪拌することを要旨とする。
【0010】
請求項に記載の発明によれば、ノズルで蓄電池の電槽内に電解液を注入する際に振動手段によりノズルの先端開口部付近を直接振動させる。これによって、気泡をノズル内壁面から離してノズル内壁面には気泡が無いので電解液が入りやすくなる。このようにして電解液の注液速度を速くすることができる。
【0011】
また、請求項に記載の発明によれば、振動によって突起が揺れるので気泡を上昇させる若しくは電解液の注入方向の流れを作ることができ、電解液の流れをよくしてノズル内での電解液の流速の更なる向上を図ることができる。
請求項2に記載の発明では、前記ノズルは、前記先端開口部側ほど通路面積が狭くなるテーパ状をなしており、前記複数の棒状の突起は、前記ノズルの前記先端開口部側から離れた位置に配置された突起ほど前記ノズルの中心軸線側に向かって延びる長さが長くなるように形成されていることを要旨とする。
【0012】
請求項に記載の発明では、請求項またはに記載の注液装置において、前記振動手段は、超音波振動の発振源であることを要旨とする。
請求項に記載の発明によれば、電解液の温度を上昇させて粘度を下げることによって電解液の流れをよくしてノズル内での電解液の流速の更なる向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電解液の注液速度を速くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態のリチウムイオン二次電池を示す斜視図。
図2】注液装置を模式的に示す側面図。
図3】第1の実施形態の注液装置を模式的に示す断面図。
図4】第2の実施形態の注液装置を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下、リチウムイオン二次電池に具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
なお、図面において、水平面を、直交するX,Y方向で規定するとともに、上下方向をZ方向で規定している。
【0016】
図1に示すように、蓄電池としてのリチウムイオン二次電池10において電槽11には電極組立体(図示せず)が収納されるとともに電解液が注入される。また、電槽11は、上面開口部を有する直方体状の電槽本体12と、電槽本体12の開口部を閉塞する矩形平板状の蓋体13とを備える。電槽本体12と蓋体13は、何れも金属製(例えば、ステンレスやアルミニウム)であり、電槽本体12と蓋体13はレーザー溶接によって接合されている。また、本実施形態のリチウムイオン二次電池10は、その外周が角型をなす角型電池である。
【0017】
正極端子14および負極端子15が蓋体13の長手方向において離間した位置に配置されている。正極端子14および負極端子15は電槽11内から蓋体13を貫通して電槽11外に突出している。正極端子14および負極端子15は絶縁部材16により蓋体13と絶縁された状態で蓋体13外においてナット17により蓋体13に締結され固定されている。
【0018】
正極端子14は電槽11内の電極組立体の正極電極と接続されるとともに負極端子15は電槽11内の電極組立体の負極電極と接続されている。詳しくは、電極組立体は、正極電極、負極電極、および正極電極と負極電極とを絶縁するセパレータを有する。正極電極は、正極金属箔(アルミニウム箔)の両面に正極活物質を備え、負極電極は、負極金属箔(銅箔)の両面に負極活物質を備え、電極組立体は、複数の正極電極と複数の負極電極が交互に積層されるとともに、両電極の間にセパレータが介在されている。そして、各正極電極が正極端子14と電気的に接続されるとともに各負極電極が負極端子15と電気的に接続されている。
【0019】
蓋体13の長手方向の中央部には円形の小径な注液口18が設けられている。この注液口18から、図2に示す注液装置20を用いて電解液が注入される。図1に示すように、電解液の注入後においては、注液口18はキャップ19により密封される。
【0020】
図2に示すように、電槽11内に電解液を注入するための注液装置20は、電解液22を貯めるタンク21と、タンク21の底面に設けられたノズル23と、超音波振動源24を備えている。
【0021】
図3に示すように、ノズル23は、先が細まった管であり、内部を電解液が通過する。ノズル23における幅広な基端側がタンク21の底板に固定され、ノズル23の内部はタンク21の底板の透孔21aを通してタンク21内と連通している。ノズル23の先端側は下方に延びており、先端側ほど通路面積が狭くなるテーパ状をなしている。ノズル23の先端開口部は蓋体13の注液口18と同形・同寸法となっており、ノズル23により電解液を注入することができる。ノズル23の先端を蓋体13の上面の所定の位置に配置することによりノズル23内および蓋体13の注液口18を通してタンク21内の電解液22の電槽11への流路が確保されるようになっている。ノズル23からリチウムイオン二次電池10の電槽11内に電解液22が注入される。電解液22の電槽11内への注入の際に電槽11内から気体が出てきてノズル23を気泡が通ることになる。
【0022】
超音波振動源24はノズル23に取り付けられている。振動手段としての振動源24は超音波振動の振動源である。超音波振動源24の振動部はノズル23の外壁面と接触しており、超音波振動源24で発生する振動でノズル23の先端開口部付近が直接振動する。つまり、超音波振動源24は、ノズル23と直接連結され、ノズル23の先端開口部付近を直接振動させることができるようになっている。
【0023】
次に、注液装置20の作用について説明する。
リチウムイオン二次電池の製造の際に、電極組立体と正極端子14および負極端子15を接続するとともに正極端子14および負極端子15を蓋体13にナット締めする。そして、電槽本体12の内部に電極組立体を挿入した後、電槽本体12の開口部を蓋体13で塞ぎ、電槽本体12と蓋体13をレーザー溶接によって封止する。引き続き、図2に示す注液装置20を用いて電解液を電槽11内に注入する。
【0024】
まず、ノズル23の先端を蓋体13の上面の所定の位置に配置する。これにより、タンク21内の電解液22について、ノズル23内および蓋体13の注液口18を通した電解液22の電槽11への流路が確保される。
【0025】
そして、超音波振動源24を作動させてノズル23の先端開口部付近を直接振動させる。この状態で、ノズル23の内部を電解液22が通過してノズル23先端の開口部から電槽11内に電解液が注入される。このノズル23の内部を電解液22が通過して先端の開口部から電解液22が出る際において、図3に示すように、超音波振動源24によりノズル23の内壁面23aが振動する。つまり、気泡が付くノズル23の内壁面が振動する。
【0026】
よって、気泡がノズル内壁面と接触した時に摩擦抵抗があるが、振動によりノズル23の内壁面23aとの接触でとどまっていた気泡30は内壁面23aとの接触面積が少なくなり、ノズル内壁面23aから離れて浮上する。
【0027】
これにより、ノズル内壁面には気泡が無いので摩擦抵抗を減らしてノズル23内での電解液22の流速、即ち、注液速度が上がり、電解液が電槽11内に入りやすくなる。また、ノズル23内の電解液については振動により流動化して下降して電槽11内に入りやすくなる。さらに、超音波振動を加えることにより電解液22の温度上昇も期待でき、液温上昇により粘度が下がって電解液22の流れがよくなり、ノズル23内での電解液22の流速の更なる向上が図られる。
【0028】
このようにして電槽11に電解液22を注入した後において注液口18をキャップ19で塞ぐ。
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0029】
(1)ノズル23からリチウムイオン二次電池10の電槽11内に電解液22を注入するための注液方法として、ノズル23の先端開口部付近を直接振動させながら電槽11内に電解液22を注入する。これにより、二次電池の注液工程において、注液口18は微小でありノズル23の先端が細くなり液がノズル壁面と接触することで電解液の注液速度が遅くなりがちであるが、ノズル23の先端開口部付近を直接振動させることによって電解液の注液速度を速くすることができる。
【0030】
(2)電槽11内に電解液22が注入された蓄電池としてのリチウムイオン二次電池の製造方法として、上記(1)の注液方法により電槽11内に電解液22を注入することにより、電解液の注液速度を速くして生産性の向上を図ることができる。
【0031】
(3)リチウムイオン二次電池10の電槽11内に電解液22を注入するための注液装置20として、電解液22を注入するためのノズル23と、ノズル23の先端開口部付近を直接振動させる振動手段としての振動源24と、を備える。これにより、振動源24によりノズル23の先端開口部付近を直接振動させながら電槽11内に電解液22を注入することができる。よって、二次電池の注液工程において、注液口18は微小でありノズル23の先端が細くなり液がノズル壁面と接触することで電解液の注液速度が遅くなりがちであるが、ノズル23の先端開口部付近を直接振動させることによって電解液の注液速度を速くすることができる。
【0032】
(4)振動手段(振動源24)は、超音波振動の発振源であるので、電解液22の温度を上昇させて粘度を下げることによって電解液22の流れをよくしてノズル23内での電解液22の流速の更なる向上を図ることができる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態を、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0033】
図4に示すように、ノズル23は、その先端開口部付近の内壁面に突起40を有する。突起40は、微細な棒状突起であり、ノズル23の内壁面に複数設けられている。
そして、超音波振動源24により突起40が振動する。この振動によって突起40が揺れるので気泡を上昇させる若しくは電解液の注入方向の流れを作ることができ、電解液の流れをよくしてノズル23内での電解液の流速の更なる向上を図ることができる。つまり、ノズル23の内部の電解液22が攪拌され、ノズル23の内壁面23aとの接触でとどまっていた気泡31は内壁面23aから離れて浮上する。これにより、ノズル23内での電解液22の流速、即ち、注液速度が上がる。
【0034】
第2の実施形態によれば、上記(1)〜(4)に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(5)ノズル23は、その先端開口部付近の内壁面に突起40を有するので、電解液22の流れをよくしてノズル23内での電解液22の流速の更なる向上を図ることができる。
【0035】
(6)第1の実施形態との比較において第2の実施形態ではノズル内部における電解液を突起40により撹拌できるので、より注入速度を速くすることができる。
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
【0036】
・第2の実施形態の突起に代わり突条をノズル内壁に螺旋状に設ける等してもよい。
・振動源として超音波振動源24を用いたが、それ以外の振動源を用いてもよい。つまり、振動について超音波振動を用いたが、これに限らない。例えば電磁波振動等を用いてもよい。
【0037】
・ノズルはテーパ状をなしていたが、真っ直ぐな筒状をなしていてもよい。
・蓄電池はリチウムイオン二次電池であったが、これに限定されることなく、他の二次電であっても、また一次電池、キャパシタ等であってもよい。
【符号の説明】
【0038】
10…リチウムイオン二次電池、11…電槽、22…電解液、23…ノズル、24…振動源、40…突起。
図1
図2
図3
図4