特許第6201761号(P6201761)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱マテリアル株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6201761-パワーモジュール用基板の製造方法 図000002
  • 特許6201761-パワーモジュール用基板の製造方法 図000003
  • 特許6201761-パワーモジュール用基板の製造方法 図000004
  • 特許6201761-パワーモジュール用基板の製造方法 図000005
  • 特許6201761-パワーモジュール用基板の製造方法 図000006
  • 特許6201761-パワーモジュール用基板の製造方法 図000007
  • 特許6201761-パワーモジュール用基板の製造方法 図000008
  • 特許6201761-パワーモジュール用基板の製造方法 図000009
  • 特許6201761-パワーモジュール用基板の製造方法 図000010
  • 特許6201761-パワーモジュール用基板の製造方法 図000011
  • 特許6201761-パワーモジュール用基板の製造方法 図000012
  • 特許6201761-パワーモジュール用基板の製造方法 図000013
  • 特許6201761-パワーモジュール用基板の製造方法 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6201761
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】パワーモジュール用基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/12 20060101AFI20170914BHJP
   H01L 23/13 20060101ALI20170914BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20170914BHJP
   H05K 3/44 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   H01L23/12 D
   H01L23/12 C
   H05K3/00 X
   H05K3/44 Z
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-1722(P2014-1722)
(22)【出願日】2014年1月8日
(65)【公開番号】特開2015-130432(P2015-130432A)
(43)【公開日】2015年7月16日
【審査請求日】2016年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】加藤 浩和
(72)【発明者】
【氏名】北原 丈嗣
【審査官】 鈴木 駿平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−198905(JP,A)
【文献】 実開平05−066999(JP,U)
【文献】 特開平10−125824(JP,A)
【文献】 米国特許第06638592(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/12
H01L 23/34−23/473
H05K 3/00
H05K 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス基板を複数形成可能なセラミックス板を個片化して金属層が積層された複数のパワーモジュール用基板を製造する方法であって、セラミックスのグリーンシートに前記セラミックス基板の面取り形状に対応する貫通孔を形成したシート成形体を焼成して前記セラミックス板を形成するセラミックス板成形工程と、前記セラミックス板の少なくとも一方の面に金属板をろう付けによって接合する金属板接合工程と、該金属板をエッチングすることにより各セラミックス基板の形成領域に金属層が形成された積層基板を形成する金属層形成工程と、前記積層基板を分割して複数のパワーモジュール用基板を製造する分割工程とを有しており、前記金属板接合工程において、前記セラミックス板は前記金属板が接合される領域内の前記貫通孔に純度99%以上のアルミニウムからなるアルミニウム体を挿入した状態で、前記金属板とのろう付けが行われることを特徴とするパワーモジュール用基板の製造方法。
【請求項2】
前記金属層形成工程において、前記アルミニウム体をエッチングにより除去することによって、前記セラミックス板に前記セラミックス基板の面取り形状に対応する貫通孔を形成することを特徴とする請求項1記載のパワーモジュール用基板の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のパワーモジュール用基板の製造方法において、前記セラミックス基板の外形形状に沿って前記貫通孔の間を順次繋いで分割溝を形成する分割溝形成工程を有していることを特徴とするパワーモジュール用基板の製造方法。
【請求項4】
前記セラミックス板成形工程において、前記シート成形体は、前記セラミックス基板の形成領域の周囲に外枠領域が設けられることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のパワーモジュール用基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広い面積を有するセラミックス板を小片に分割して個々のセラミックス基板を有するパワーモジュール用基板を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子等の電子部品を搭載するためのパワーモジュール用基板は、これら基板を複数形成可能な広い面積を有するセラミックス板の表面に、これらを各基板の大きさに区画するように分割溝(スクライブ溝)を予め設けておき、この分割溝によって区画される領域にそれぞれ回路層を形成した後、その分割溝に沿って分割することにより個片化されて製造される。
【0003】
例えば、特許文献1では、基板(セラミックス板)の一方の面に分割溝を形成しておき、分割溝にしたがって、その分割溝とは反対側の面を第1押圧部により押圧するとともに、第2押圧部及び第3押圧部を、それぞれ分割溝を挟んだ両側の等距離の位置において、第1押圧部の押圧方向の反対方向に、分割溝に沿って押圧することにより、分割溝を支点として基板を折り曲げて個片化する装置が開示されている。
また、特許文献2では、第1固定部の端縁を基板(セラミックス板)の分割溝に一致させて、第2固定部との間に基板を挟持し、分割溝を境界とした第1固定部の反対側において、基板を分割溝に沿って押圧することにより、基板を折り曲げて分割する装置が開示されている。
【0004】
そして、このような分割体を製造する装置においては、セラミックス板に縦横のマトリクス状の分割溝を刻設し、いずれか一方の方向の分割溝に沿ってセラミックス板を分割して短冊状とし、次いで、その短冊状のセラミックス板を他方の分割溝に沿って分割することにより、所定寸法の矩形のセラミックス基板を得ることができる。
【0005】
ところで、分割した基板を箱体等に収容する場合などには、基板の四隅を面取りすることが必要な場合がある。例えば、特許文献3では、セラミックス板に縦横のマトリクス状の分割溝を設けるとともに、分割溝の交点に孔を設けることで、セラミックス板の分割を容易にできるようにしている。そして、特許文献3には、分割溝及び孔を、セラミックス板を焼成する前のグリーンシートの状態で加工形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011‐103404号公報
【特許文献2】特開2011‐101935号公報
【特許文献3】実開平5‐66999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
パワーモジュール用基板を製造する際には、広い面積を有する金属板をセラミックス板にろう付け等により積層した後、その金属板をエッチングすることで、分割溝によって区画されるセラミックス基板の形成領域に金属層を形成することが行われる。しかし、特許文献3のように孔を形成したセラミックス板では、孔に金属板を被せた状態でろう付けされると、溶融したろう材や金属が孔に流れ込み、金属板を変形させることがある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、セラミックス板を効率的に個片化し、面取りされたパワーモジュール用基板を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のパワーモジュール用基板の製造方法は、セラミックス基板を複数形成可能なセラミックス板を個片化して金属層が積層された複数のパワーモジュール用基板を製造する方法であって、セラミックスのグリーンシートに前記セラミックス基板の面取り形状に対応する貫通孔を形成したシート成形体を焼成して前記セラミックス板を形成するセラミックス板成形工程と、前記セラミックス板の少なくとも一方の面に金属板を接合する金属板接合工程と、該金属板をエッチングすることにより各セラミックス基板の形成領域に金属層が形成された積層基板を形成する金属層形成工程と、前記積層基板を前記分割溝から分割して複数のパワーモジュール用基板を製造する分割工程とを有しており、前記金属板接合工程において、前記セラミックス板は前記金属板が接合される領域内の前記貫通孔に純度99%以上のアルミニウムからなるアルミニウム体を挿入した状態で、前記金属板とのろう付けが行われることを特徴とする。
【0010】
焼成前のグリーンシートの状態で各分割体の面取り形状に対応する貫通孔を形成することで、各セラミックス基板の面取り形状を容易に形成することができる。そして、貫通孔を設けたグリーンシートを焼成後、その貫通孔が設けられたセラミックス板に金属板を接合する際に、貫通孔に純度99%以上のアルミニウムからなるアルミニウム体を挿入した状態としておくことで、溶融したろう材や金属が貫通孔に流れ込むことがないので、セラミックス板と金属板との接合時に金属板を変形させることがない。
そして、セラミックス基板の形成領域に金属層が積層された積層基板を分割することで、面取りした外形形状を有するパワーモジュール用基板を複数形成することができる。
このように、本発明のパワーモジュール用基板の製造方法においては、セラミックス板に予め貫通孔を形成しておくことで、セラミックス基板の面取り形状を分割作業によって形成する必要がなく、面取り形状部の形成のために複雑な金型構造を必要としない。また、セラミックス板と金属板との接合時に、貫通孔に純度99%以上のアルミニウムからなるアルミニウム体を挿入した状態としておくことで、貫通孔の影響を回避することができるので、金属板を変形させることがない。
【0011】
本発明のパワーモジュール用基板の製造方法の前記金属層形成工程において、前記アルミニウム体をエッチングにより除去することによって、前記セラミックス板に前記セラミックス基板の面取り形状に対応する貫通孔を形成するとよい。
貫通孔内の金属は、純度99%以上のアルミニウムからなるアルミニウム体で構成されているので、金属層のパターン形成を行うエッチング処理時に同時に除去することができる。したがって、工程処理を簡略化でき、積層基板を効率的に個片化して面取りされたパワーモジュール用基板を製造することが可能である。
【0012】
さらに、本発明のパワーモジュール用基板の製造方法において、前記セラミックス基板の外形形状に沿って前記貫通孔の間を順次繋いで分割溝を形成する分割溝形成工程を有しているとよい。
分割溝形成工程により、分割溝が形成されることで、セラミックス基板の形成領域に金属層が積層された積層基板をその分割溝で分割することにより、面取りした外形形状を有するパワーモジュール用基板を効率よく形成することができる。
【0013】
さらに、本発明のパワーモジュール用基板の製造方法の前記セラミックス板成形工程において、前記シート成形体は、前記セラミックス基板の形成領域の周囲に外枠領域が設けられているとよい。
外枠領域を設けることで、複数のセラミックス基板の形成領域を並べた領域の外周縁も、セラミックス基板の形成領域どうしの境界と同様に、貫通孔により区画することができ、金型構造を単純化することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、グリーンシートの状態で面取り形状に沿って貫通孔を形成しておくことで、工程処理を簡略化でき、セラミックス板を効率的に個片化して面取りされたパワーモジュール用基板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態のパワーモジュール用基板の製造方法を説明するフローチャートである。
図2】パワーモジュール用基板を用いたパワーモジュールを示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態のパワーモジュール用基板の製造方法により製造されたパワーモジュール用基板を示す斜視図である。
図4】ロール状に巻き取られたグリーンシートを説明する斜視図である。
図5】シート形成体を説明する斜視図である。
図6】セラミックス板の正面図である。
図7】セラミックス板に金属板を接合した状態を示す正面図である。
図8】金属層形成工程を説明する要部断面図であり、(a)がセラミックス板と金属板との接合前の状態、(b)がセラミックス板と金属板との接合後の状態、(c)が金属板をエッチングして金属層を形成した状態を示す。
図9】積層基板を示す斜視図である。
図10】外枠領域の分割手順を説明する図であり、(a)が第1工程、(b)が第2工程を示す。
図11】外枠領域を除去した積層基板を示す斜視図である。
図12】他の実施形態のセラミックス板を示す正面図である。
図13】さらに別の実施形態のセラミックス板を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の第1実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図2は、本発明のパワーモジュール用基板の製造方法により製造されるパワーモジュール用基板3を用いたパワーモジュール1を示している。この図2のパワーモジュール1は、パワーモジュール用基板3と、パワーモジュール用基板3の表面に搭載された半導体チップ等の電子部品4と、裏面に取り付けられたヒートシンク5とから構成される。
【0017】
パワーモジュール用基板3は、図11に示す積層基板31から製造され、図3に示すように、互いに接合されたセラミックス基板2と、金属層6,7とから構成される。
セラミックス基板2は、AlN(窒化アルミニウム)、Si(窒化珪素)等の窒化物系セラミックス、もしくはAl(アルミナ)等の酸化物系セラミックスにより形成されている。本実施形態では、セラミックス基板2としてAl(アルミナ)を用いた。
【0018】
また、金属層6,7は、純度99.00質量%以上のアルミニウム(いわゆる2Nアルミニウム)や純度99.90質量%以上のアルミニウム(いわゆる3Nアルミニウム)や純度99.99質量%以上のアルミニウム(いわゆる4Nアルミニウム)又はアルミニウム合金により形成されている。
【0019】
そして、これらセラミックス基板2と金属層6,7とは、Al−Si系、Al−Ge系、Al−Cu系、Al−Mg系またはAl−Mn系等の合金のろう材により、ろう付け接合されている。
【0020】
なお、回路層となる金属層6と電子部品4との接合には、Sn−Cu系、Sn−Ag−Cu系,Zn−Al系もしくはPb−Sn系等のはんだ材が用いられる。図中符号8がそのはんだ接合層を示す。また、電子部品4と金属層6の端子部との間は、アルミニウム等からなるワイヤ及びリボンボンディング等(図示略)により接続される。
また、ヒートシンク5は、平板状のもの、熱間鍛造等によって多数のピン状フィンを一体に形成したもの、押出成形によって相互に平行な帯状フィンを一体に形成したもの等、適宜の形状のものを採用することができる。
【0021】
次に、本実施形態のパワーモジュール用基板の製造方法について説明する。パワーモジュール用基板の製造方法は、図1に示すように、複数の工程により構成される。
まず、セラミックスを構成する原料粉末をバインダー及び有機溶剤等と混合したスラリーを形成し(スラリー形成工程)、このスラリーをシート状に形成してセラミックスのグリーンシートを形成する(グリーンシート形成工程)。
グリーンシートは、ドクターブレード法や押出成形によるテープ成形等の方法を用いて形成することができる。例えば、ドクターブレード法によってグリーンシートを形成するには、スラリーをキャリアフィルム上にシート状に塗布し、そのシート状のスラリーを乾燥炉内に通過させ、スラリー中の揮発成分を揮発させることによりシート状の形態が保持された状態のグリーンシートを形成できる。
なお、グリーンシートは、キャリアフィルムから剥離して、図4に示すように、グリーンシート10だけでロール状に巻き取ることが好適である。このとき、所定のグリーンシート幅になるように、スリッターで連続的に切断しておくことで、後のシート成形工程への搬送等が容易になる。
【0022】
次に、グリーンシート10を所望の形状に切断、打抜き処理を施し、所望の形状のグリーンシート成形体を形成する(シート成形工程)。
この場合、長尺のグリーンシート10を切断して矩形状のグリーンシートとした後、図5に示すように、パワーモジュール用基板3を構成するセラミックス基板2の面取り形状16となる部分を、パンチングマシン等によってその厚み方向に打抜くことにより、複数の貫通孔15が形成されたシート成形体11が形成される。
【0023】
本実施形態では、1枚のシート成形体11から4個のセラミックス基板2を形成する。そのため、シート成形体11は、セラミックス基板2を縦横に2つずつ整列させた領域の周囲に、後述する外枠領域24を設けた形状に対応する大きさに形成されている。そして、貫通孔15は、セラミックス基板2の面取り形状16に対応する位置に、ほぼ四角形状に形成される。
なお、シート成形体11は、焼成時に収縮することを考慮し、焼成後に所定寸法のセラミックス板を得られるように、焼成の収縮率に合わせた寸法で成形されている。
【0024】
そして、このシート成形体11を焼成して、セラミックス板を形成する(焼成工程)。
焼成工程は、例えば、窒素雰囲気中でシート成形体11を1400℃〜1600℃に加熱することにより行う。
なお、この焼成工程により得られるセラミックス板は、シート成形体11に対して収縮するので、シート成形体11に形成する貫通孔15の大きさ及び位置は、この収縮分を見込んで設定しておく必要がある。
また、本発明では、上記シート成形工程と焼成工程とを合わせてセラミックス板成形工程と称している。
【0025】
次に、セラミックス板20に、図6に示すように、パワーモジュール用基板3を構成するセラミックス基板2の外形形状に沿って分割溝21を形成する(分割溝形成工程)。
分割溝21は、例えばレーザースクライブにより、セラミックス基板2の外形形状に沿ってレーザーを複数回照射することで、セラミックス板20を切削加工して形成される。
また、分割溝21は、図6に示すように、セラミックス板20に形成された貫通孔15aの間を順次繋いで形成されている。これら分割溝21によって、セラミックス基板2の外形形状の大きさに区画された4つのセラミックス基板2の形成領域22が縦横に2つずつ整列して形成されるとともに、それら4つのセラミックス基板2の形成領域22の周囲に配置される外枠領域24が形成されている。
【0026】
なお、分割溝21は、隣接する4つの形成領域22を分割するように、セラミックス板20の中央部を除いて隣接する各形成領域22の境界線上に縦横に形成された十字形分割溝21A,21Bと、形成領域22の外周縁を構成する外枠分割溝21C〜21Eとを有している。そして、これら外枠分割溝21C〜21Eにより形成領域22と外枠領域24とを隔てるとともに、外枠領域24を形成領域22の各辺に沿う短冊状の4つの領域24A,24Bに区画している。また、これら分割溝21は、セラミックス板20の金属層7側に配置される表面に形成されている。
【0027】
さらに、分割溝21が形成されたセラミックス板20の両面に金属板60,70を接合し(金属板接合工程)、その金属板60,70をエッチングすることにより金属層6,7が接合された積層基板30を形成する(金属層形成工程)。
セラミックス板20と金属板60,70との接合は、図8(a)に示すように、セラミックス板20の金属板60,70が接合される領域内の貫通孔15aを純度99%以上のアルミニウムからなるアルミニウム体18を挿入した状態で行われる。本実施形態において、アルミニウム体18は純度99%のアルミニウムで構成されている。このアルミニウム体18の形態としては、例えば貫通孔15aと同形状のピン部材や金属粉を用いることができ、これらを貫通孔15a内に詰め込むことにより、貫通孔15aを塞いだ状態とする。
そして、この貫通孔15aが塞がれた状態のセラミックス板20の両面に、ろう材箔19を介在させて金属板60,70を積層し、これらの積層体を加圧した状態のまま真空中で加熱することにより、セラミックス板20と金属板60,70とをろう付け接合する(図8(b))。また、これら金属板60,70をエッチングすることにより、金属層6,7を形成する(図8(c))。貫通孔15a内の金属は、このエッチング処理の際に同時に除去される。
金属層6,7は、分割溝21により区画された4つの形成領域22に、それぞれ設けられる。なお、図9の積層基板30において、セラミックス板20の裏面に接合された金属層6は回路層用、セラミックス板20の表面に接合された金属層7は放熱層用である。
【0028】
そして、パワーモジュール用基板3は、ダイシング装置や基板分割装置等の切断手段により、積層基板30を分割溝21に沿って分割することで、セラミックス板20を個片化して製造される(分割工程)。
この場合、図10に示すように、積層基板30を構成するセラミックス板20の外枠領域24を、外枠分割溝21C〜21Eに沿って除去した後、図11に示す、積層基板31を形成し、十字形分割溝21A,21Bから分割して、面取りされた4個のパワーモジュール用基板3を製造する。なお、積層基板30の外枠領域24は、まず外枠領域24Aを分割した後(図10(a))、さらに外枠領域24Bを分割することにより除去される(図10(b))。そして、外枠領域24を除去することにより、図11に示すように、積層基板31の外周面に面取り形状16が形成される。
【0029】
このように、本実施形態のパワーモジュール用基板の製造方法では、グリーンシートの焼成前にセラミックス基板の形成領域の面取り形状に対応する貫通孔を形成していることから、各セラミックス基板の面取り形状を容易に形成することができる。そして、貫通孔を設けたグリーンシートを焼成後、その貫通孔が設けられたセラミックス板に分割溝を形成する。
この分割溝を形成したセラミックス板に金属板を接合する際に、貫通孔をアルミニウム体18により塞いだ状態としておくことで、溶融したろう材や金属が貫通孔に流れ込むことが防止され、貫通孔の影響を回避することができる。
貫通孔を塞がずに接合すると、溶融したろう材や金属板の金属が貫通孔内に流れ込んで充満し、その貫通孔の両端で金属を溶融する現象が生じる。セラミックス板に接合される金属板が薄肉であることから、表面が窪んだ状態となるなど、外観不良を生じ易くなる。
一方、上述したように、貫通孔を金属で塞いだ状態ではセラミックス板と金属板との接合時に金属板を変形させることがない。また、貫通孔内の金属は、純度99%のアルミニウムで構成されているので、セラミックス板に積層された金属板をエッチングする際に、同時に除去することができる。
したがって、パワーモジュール用基板の製造工程を簡略化でき、セラミックス板を効率的に個片化して、面取りされたパワーモジュール用基板を製造することができる。
【0030】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、貫通孔15aを四角形に形成していたが、図12に示すように円形の貫通孔15bを形成してもよい。また、図13に示すように、形成領域22の間に区画される貫通孔15aと、複数並べられた形成領域22の外周縁において面取り形状を形成する貫通孔15c,15dとで、異なる形状の貫通孔としてもよく、その他適宜の形状によって貫通孔を形成することができる。
また、積層基板の外枠領域を4つに区画した領域24A,24Bを形成していたが、図12に示す積層基板80のように、十字形分割溝21A,21Bをセラミックス基板20の外周縁まで延長した分割溝を形成することによって、外枠領域24を4つ以上に区画してもよい。この場合、外枠領域は8つに区画されており、外枠領域24を除去する前に、十字形分割溝21A,21Bから分割して4つの分割体を形成しておき、個々の分割体に連結状態となっている外枠領域24を除去する工程としてもよい。
また、上記実施形態では、分割溝21はセラミックス板20の一方の面のみに設けられているが、これに限定されず、セラミックス板の両面に設けてもよい。
さらに、スラリーを乾燥させた後、得られたセラミックスのグリーンシートは、上記実施形態のように、そのまま巻取り回収してもよいし、任意の方法で適当な大きさに切断加工して回収してもよい。
また、上記実施形態では、分割溝21はシート成形体11の焼成後に形成したが、これに限定されず、焼成前に形成してもよいし、金属板をエッチングした後に形成してもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 パワーモジュール
2 セラミックス基板
3 パワーモジュール用基板
4 電子部品
5 ヒートシンク
6 金属層(回路層)
7 金属層(放熱層)
8 はんだ接合層
10 グリーンシート
11 シート成形体
15,15a〜15d 貫通孔
16 面取り形状
18 アルミニウム体
19 ろう材箔
20 セラミックス板
20a 分割溝形成面
20b 押圧面
21,21C〜21E 分割溝
21A,21B 分割溝(十字形分割溝)
22 分割体形成領域
24,24A,24B 外枠領域
30,31,80 積層基板
60,70 金属板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13