特許第6201821号(P6201821)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田自動織機の特許一覧

<>
  • 特許6201821-電極のタブ垂れ防止装置 図000002
  • 特許6201821-電極のタブ垂れ防止装置 図000003
  • 特許6201821-電極のタブ垂れ防止装置 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6201821
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】電極のタブ垂れ防止装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
   H01M10/04 Z
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-40421(P2014-40421)
(22)【出願日】2014年3月3日
(65)【公開番号】特開2015-165471(P2015-165471A)
(43)【公開日】2015年9月17日
【審査請求日】2016年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(72)【発明者】
【氏名】山内 一輝
(72)【発明者】
【氏名】木下 恭一
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 雅巳
【審査官】 小川 知宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−122831(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0060189(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マガジンに積層される複数の電極のタブの垂れを防止するための電極のタブ垂れ防止装置であって、
前記マガジンの載置部に設けられる支柱と、
所定枚数の電極毎に前記支柱に取り付けられ、電極のタブを支持する支持部と、
を備え、
前記支持部は、先端が鋭角であり、
前記支持部の先端をタブの下方における活物質層側の端部に差し込むことにより、前記支持部をタブの下方に配置させる、電極のタブ垂れ防止装置。
【請求項2】
前記支持部は、前記支柱に固定され、
前記支柱は、前記マガジンの載置部において水平方向にスライド可能である、請求項1に記載の電極のタブ垂れ防止装置。
【請求項3】
前記支柱は、前記マガジンの載置部に固定され、
前記支持部は、水平方向にスライド可能な状態で前記支柱に取り付けられる、請求項1に記載の電極のタブ垂れ防止装置。
【請求項4】
前記支柱は、前記マガジンの載置部に固定され、
前記支持部は、水平面において回転可能な状態で前記支柱に取り付けられる、請求項1に記載の電極のタブ垂れ防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マガジンに積層される複数の電極のタブの垂れを防止するための電極のタブ垂れ防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の電池の電極の製造工程には、帯状の金属箔に塗布された電極ペーストに含まれる溶剤を除去するため、塗布直後に乾燥工程がある。乾燥工程では、熱風が供給される乾燥機内を帯状電極が通過することで、電極ペーストに含まれていた大半の溶剤が蒸発する。さらに、乾燥工程を経た後も残留する僅かな溶剤を除去するために、真空乾燥工程を設けることがある。真空乾燥工程では、個々の電極に打抜かれる前の帯状電極を巻いたロールの状態で、減圧下、数十時間の加熱乾燥を行う。帯状電極をロール状態で真空乾燥した場合、真空乾燥中に電極ペーストに含まれるバインダの硬化が進むため、ロールに巻かれた方向に形状が保持されてカールが発生する。このカールは、積層型電池において、打抜き工程後に帯状電極から打抜かれた各電極にも残る。そのため、カールが大きいと、打抜き工程後に多数の電極が積層された状態で、幅方向にズレが生じやすくなる。そこで、カールを発生させないために、打抜き工程後の個々の電極になった枚葉状態で乾燥工程を行う場合もある。例えば、特許文献1には、ロール体から繰り出された電極を所定の長さに切断するトリミング部と所定の長さに切断された電極をセパレータと重ね合せる組立部との間に電極を搬送しながら加熱する電極加熱乾燥部を有する電極群の製造装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−122831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される製造装置ではトリミング後の電極を一枚ずつ搬送して組立部に移行している。しかし、搬送中の短い時間に乾燥を完了させるには、真空乾燥よりも相対的に高温とする必要があり、電極ペーストに含まれるバインダの種類によっては、適用が困難である。一般的には、打抜き工程後には多数の同極の電極がマガジンに積層され、マガジンに積層された状態で次工程に移行する。この多数の電極がマガジンに積層された状態で真空乾燥を行うことが考えられる。しかし、積層されている電極間における活物質層が形成されていないタブ間には活物質層の厚さにより空間があるので、タブの垂れが発生する。タブに垂れがあると、製造ラインで多用される吸着パッドによるピッキングにおいて、ピッキングエラー等の不具合の要因となる。特に、真空乾燥工程では電極に対して加熱するので、熱で金属箔(タブ)が軟らかくなり、タブに垂れが発生し易い。
【0005】
そこで、本技術分野においては、マガジンに積層される複数の電極のタブの垂れを防止する電極のタブ垂れ防止装置が要請されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る電極のタブ垂れ防止装置は、マガジンに積層される複数の電極のタブの垂れを防止するための電極のタブ垂れ防止装置であって、マガジンの載置部に設けられる支柱と、所定枚数の電極毎に支柱に取り付けられ、電極のタブを支持する支持部とを備え、支持部は、先端が鋭角であり、支持部の先端をタブの下方における活物質層側の端部に差し込むことにより、支持部をタブの下方に配置させる。
【0007】
このタブ垂れ防止装置は、マガジンに複数の電極が積層されている状態で用いられる装置であり、支柱と支持部を備えている。支柱は、複数の支持部を所定間隔毎に配置させるための支柱であり、マガジンの載置部に設けられる。支持部は、電極のタブを下方から支持するための支持部であり、所定枚数の電極毎に支柱に取り付けられる。この所定枚数は、例えば、ピッキングエラー等の不具合を発生させない程度にタブの垂れを防止するための枚数でもよいし、電池の電極組立体で積層される同極の電極の積層枚数でもよいし、あるいは、1枚や数枚ずつでもよい。支持部の個数は、この所定枚数とマガジンに積層される電極の積層枚数に応じて決まる。特に、支持部は先端が鋭角であり、支持部の先端を積層されている電極のタブの下方における活物質層側の端部に差し込むことにより支持部をタブの下方に配置させる。この支持部の先端は、支持部の活物質層側の端部におけるタブの下方に差し込む側の先端である。マガジンに積層されている電極間におけるタブ間には、活物質層の厚さによって空間がある。この空間があるので、マガジンに積層されている電極のタブは重力で垂れてしまう。この垂れがある場合でも、タブの活物質層側ほど下側のタブとの間に空間が残っている。そのため、支持部の鋭角な先端をタブの下方における活物質層側の端部には差し込むことができ、この支持部の一部がタブの下方に入ることによって、支持部のその他の部分もタブの下方(すなわち、積層される電極間におけるタブ間)に配置させることができる。その結果、所定枚数の電極毎に支持部がそれぞれ配置されて、各支持部でタブを下方から支持するので、所定枚数の電極毎にタブの垂れを防止できる。このように、タブ垂れ防止装置は、支持部の鋭角な先端をタブの下方における活物質層側の端部に差し込むことにより、マガジンに積層される複数の電極のタブの垂れを防止することができる。その結果、電極のタブの垂れによるピッキングエラー等の不具合を防止できる。
【0008】
一形態の電極のタブ垂れ防止装置では、支持部は、支柱に固定され、支柱は、マガジンの載置部において水平方向にスライド可能である。このタブ垂れ防止装置では、マガジンの載置部において支柱を水平方向にスライドさせることにより、支柱に取り付けられている各支持部を水平方向に移動させて、支持部の鋭角な先端をタブの下方における活物質層側の端部に差し込むことができる。なお、水平方向は、厳密な水平方向だけでなく、略水平方向も含むものとする。
【0009】
一形態の電極のタブ垂れ防止装置では、支柱は、マガジンの載置部に固定され、支持部は、水平方向にスライド可能な状態で支柱に取り付けられる。このタブ垂れ防止装置では、支持部毎に支柱において水平方向にスライドさせることにより、支持部の鋭角な先端をタブの下方における活物質層側の端部に差し込むことができる。
【0010】
一形態の電極のタブ垂れ防止装置では、支柱は、マガジンの載置部に固定され、支持部は、水平面において回転可能な状態で支柱に取り付けられる。このタブ垂れ防止装置では、支持部毎に支柱において水平面で回転させることにより、支持部の鋭角な先端をタブの下方における活物質層側の端部に差し込むことができる。なお、水平面は、厳密な水平面だけでなく、略水平面も含むものとする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、マガジンに積層される複数の電極のタブの垂れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施の形態に係るタブ垂れ防止装置と電極を積層したマガジンを模式的に示す図であり、(a)が側面図であり、(b)が平面図である。
図2】第2の実施の形態に係るタブ垂れ防止装置と電極を積層したマガジンを模式的に示す平面図である。
図3】第3の実施の形態に係るタブ垂れ防止装置と電極を積層したマガジンを模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明に係る電極のタブ垂れ防止装置の実施の形態を説明する。なお、各図において同一又は相当する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
本実施の形態では、本発明に係る電極のタブ垂れ防止装置を、電池の同極の複数(多数)の電極がマガジンに積層された状態のときに用いるタブ垂れ防止装置に適用する。本実施の形態では、多数の電極がマガジンに積層され、それにタブ垂れ防止装置が設置された状態で真空乾燥工程が実施される。なお、真空乾燥工程は、減圧乾燥工程又はベーク工程と呼称されることがある。本実施の形態には、タブ垂れ防止装置の構成が異なる3つの実施の形態があり、第1の実施の形態が支持部が支柱に固定され、支柱が水平方向にスライドする構成であり、第2の実施の形態が支柱がマガジンの載置部に固定され、支持部が水平方向にスライドする構成であり、第3の実施の形態が支柱がマガジンの載置部に固定され、支持部が水平面において回転する構成である。水平方向は、厳密な水平方向だけでなく、略水平方向も含むものとする。水平面は、厳密な水平面だけでなく、略水平面も含むものとする。なお、製造される電極は、例えば、二次電池又は電気二重層キャパシタ等の蓄電装置に用いられる。二次電池としては、例えば、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池である。また、製造される電極は、一次電池に用いられてもよい。本実施の形態では、リチウムイオン二次電池に用いられる電極を製造する場合とする。
【0015】
電極は、金属箔の表裏面の少なくとも一面に電極ペーストがそれぞれ塗布されて活物質層が形成されており、電極ペーストが塗布されていないタブも有している。金属箔は、例えば、銅箔、アルミニウム箔である。電極ペーストは、活物質、バインダ、溶剤等を含んでいる。活物質は、正極活物質及び負極活物質のいずれであってもよい。正極活物質としては、例えば、複合酸化物、金属リチウム、硫黄である。複合酸化物は、マンガン、ニッケル、コバルト及びアルミニウムの少なくとも1つとリチウムとを含む。負極活物質は、例えば、黒鉛、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボン等のカーボン、リチウム、ナトリウム等のアルカリ金属、金属化合物、SiOx(0.5≦x≦1.5)等の金属酸化物、ホウ素添加炭素である。バインダは、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリノレ基含有樹脂である。溶剤は、例えば、NMP(N−メチルピロリドン)、メタノール、メチルイソブチルケトン等の有機溶剤、水である。また、電極ペーストは、カーボンブラック、黒鉛、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)等の導電助剤を含んでいてもよい。また、電極ペーストは、カルボキシメチルセルロース(CMC)等の増粘剤を含んでいてもよい。
【0016】
電極を製造する場合、上記各物質を混練して電極ペーストを生成する工程、電極ペーストを帯状の金属箔に塗布して活物質層を形成する工程、この活物質層が形成された帯状の金属箔(帯状電極)から個々の電極を打抜く工程等がある。特に、打抜き工程では打抜かれた同極の電極をマガジンに積層して、同極の多数の電極がマガジンに積層された状態で次工程(真空乾燥工程)に移行される。
【0017】
なお、図1に示すように、マガジンMは、上下方向(鉛直方向)に沿って電極Eを積層した状態で収容するための装置である。マガジンMは、複数のガイド部材Maが載置部Mbに垂直に設けられている。複数のガイド部材Maは、電極Eを積層する空間を規定するとともに、積層された電極Eをガイドするための部材である。複数のガイド部材Maは、電極Eの外形状よりも少し大きい形状線上に配置される。ガイド部材Maは、多数の電極Eが積層された積層体の最大時の高さよりも長い長さを有し、例えば、棒状である。載置部Mbは、積層体を載置する部材である。載置部Mbは、電極Eよりも十分に大きい平面を有している。マガジンMには、例えば、数百枚、数千枚程度の電極Eが積層される。
【0018】
電極EがマガジンMに積層された状態では、積層されている電極E,E間におけるタブT,T間には、活物質層Aの厚さによって空間があるので、重力によりタブTが垂れてしまう。このタブTの垂れは、多数の電極EがマガジンMに積層されているので、上方に積層されている電極EのタブTほどその一端部(活物質層A側の端部と反対側の端部)側の垂れの度合いが大きくなる。
【0019】
図1を参照して、第1の実施の形態に係るタブ垂れ防止装置1について説明する。図1は、第1の実施の形態に係るタブ垂れ防止装置1と電極Eを積層したマガジンMを模式的に示す図であり、(a)が側面図であり、(b)が平面図である。なお、図1(a)では、電極Eの積層状態やタブTの垂れ状態等を判り易くするために、マガジンMに積層される電極Eの積層枚数やタブ垂れ防止装置1の支持部11,11間の電極Eの枚数を実際より少なくして描いている。
【0020】
タブ垂れ防止装置1は、マガジンMに積層される電極EのタブTの垂れを所定枚数毎に防止するために、マガジンMの載置部Mbにおいて支柱10を水平方向にスライドさせることにより、支柱10に電極Eの所定枚数毎に取り付けられている各支持部11を水平方向に移動させて、支持部11の鋭角な先端11aをタブTの下方における活物質層A側の端部(タブTの根本)に差し込む。第1の実施の形態では、支柱10が特許請求の範囲に記載する支柱に相当し、支持部11が特許請求の範囲に記載する支持部に相当する。
【0021】
支柱10は、マガジンMの載置部Mbに水平方向にスライド可能な状態で設けられ、複数の支持部11を所定間隔毎に配置させるための支柱である。支柱10は、載置部Mbの上面におけるタブTの一端部(活物質層A側の端部と反対側の端部)よりも外側に配置され、載置部Mbにおいて水平方向にスライド可能に設けられる。スライド方向は、載置部Mbの角部からタブT側の方向である。そのために、載置部Mbの上面に支柱10をスライドさせるための溝(図示せず)が形成されており、支柱10の下面にはその溝に係合する係合部(図示せず)が形成されている。この支柱10の係合部と載置部Mbの溝とは、溝に対して係合部を取り外し/取り付け自在な構造となっている。支柱10は、直方体形状である。この直方体形状の支柱10の大きさや縦横比等については、側面に複数の支持部11を取り付けることができ、載置部Mbに対して安定したスライドができるように、適宜設定してよい。支柱10は、マガジンMのガイド部材Maと同程度の高さを有している。なお、支柱10には、スライドさせる際に作業者が持つための部分が形成されていてもよい。
【0022】
支持部11は、所定枚数の電極E毎に支柱10に固定した状態で取り付けられ、電極EのタブTを支持するための支持部である。この所定枚数は、ピッキングエラー等の不具合を発生させない程度に電極EのタブTの垂れを防止するための枚数(例えば、100枚)でもよいし、あるいは、電池の電極組立体で積層される同極の電極Eの積層枚数(例えば、50〜60枚)でもよい。支持部11は、図1(b)に示すように、台形状の平面形状であり、タブTの長さや幅に応じた適宜の大きさを有している。この支持部11の台形状における平行な二辺のうち長辺側がタブTの活物質層A側となり、短辺側が支柱10側となる。したがって、この支持部11の活物質層A側の端部における先端11aは、台形状の鋭角になっている。支持部11は、所定枚数の電極Eに相当する間隔(例えば、数cm)ずつあけて、台形状の短辺側が支柱10の一側面に固定された状態で取り付けられる。支持部11は、所定の厚さを有している。この所定の厚さは、積層されている電極E,E間におけるタブT,T間に支持部11を配置させるので、そのタブT,T間の空間を考慮して活物質層Aの2倍以下の厚さであり、例えば、活物質層Aの厚さ程度、活物質層Aの厚さよりも少し薄い厚さ程度である。
【0023】
上記構成のタブ垂れ防止装置1の作用について説明する。真空乾燥工程前に、多数の電極Eが積層されているマガジンMの載置部Mbの溝に支柱10の係合部を係合させて取り付け、載置部Mbにタブ垂れ防止装置1をスライド可能な状態で設置する。この設置する位置は、図1(b)のタブ垂れ防止装置1全体を破線で示しているタブTの一端部側(活物質層A側とは反対側の端部側)の側方の位置であり、載置部Mbの角部である。支柱10は載置部Mbに対して垂直(鉛直方向)であり、支柱10に取り付けられている各支持部11は載置部Mbに対して平行(水平方向)である。
【0024】
そして、載置部Mbにおいて支柱10を角部からタブT側にスライドさせる。これに伴って、支柱10に取り付けられている各支持部11はタブT側に水平方向に移動する。すると、各支持部11は、まず、タブTの活物質層A側に位置する鋭角な先端11aがタブTの下方における活物質層A側の端部部分に到達し、この鋭角の先端11aがタブTの下方における活物質層A側の端部に差し込まれる。積層されている電極E,E間におけるタブT,T間には活物質層Aの厚さによって空間があるので、タブTが垂れ、タブTの一端部側(活物質層A側とは反対側の端部)は下側のタブTに接しているが、タブTの下方における活物質層A側の端部部分には最も広い空間が残っている。そのため、その空間に鋭角の先端11aをスムーズに差し込むことができる。そして、各支持部11は、タブT側に移動するに従ってタブTの下方に深く入り込むことができる。最終的に、各支持部11は、その略全体がタブTの下方に配置されることになる。その結果、所定枚数の電極E毎にタブTを支持部11によって下方から支持できる。これによって、ピッキングエラー等の不具合を発生させない程度にタブTの垂れを防止でき、最も一端部側が垂れているタブTに対しても吸着によるピッキングが可能となる。
【0025】
このタブ垂れ防止装置1によれば、マガジンMの載置部Mbにおいて支柱10を水平方向にスライドさせて、支持部11の鋭角な先端11aをタブTの下方における活物質層A側の端部に差し込むことにより、マガジンMに積層されている電極EのタブTの垂れを防止することができる。その結果、電極EのタブTの垂れによるピッキングエラー等の不具合を防止できる。
【0026】
支柱10に支持部11を電極組立体で積層される同極の電極Eの積層枚数毎に取り付けた場合、マガジンMではその枚数の電極E毎にタブTが垂れて一端部分が接触することになるので、電極組立体を生成する工程で同極の電極EのタブTを溶接する際にその枚数分のタブTを集めるのが容易になる。
【0027】
なお、帯状電極をロールした状態ではなく、打抜き後の個々の電極Eになった枚葉状態で真空乾燥工程が行われるので、電極Eのカールを抑制(防止)することができる。カールが抑制された電極EがマガジンMに積層されるので、安定して積層が可能になり、電極EのタブTの垂れを抑制できる。
【0028】
図2を参照して、第2の実施の形態に係るタブ垂れ防止装置2について説明する。図2は、第2の実施の形態に係るタブ垂れ防止装置2と電極Eを積層したマガジンMを模式的に示す平面図である。
【0029】
タブ垂れ防止装置2は、マガジンMに積層される電極EのタブTの垂れを所定枚数毎に防止するために、マガジンMの載置部Mbに支柱20が固定され、支柱20に電極Eの所定枚数毎に取り付けられている各支持部21を水平方向にスライドさせて、支持部21の鋭角な先端21aをタブTの下方における活物質層A側の端部に差し込む。第2の実施の形態では、支柱20が特許請求の範囲に記載する支柱に相当し、支持部21が特許請求の範囲に記載する支持部に相当する。
【0030】
支柱20は、マガジンMの載置部Mbに設けられ、複数の支持部21を水平方向にスライド可能な状態で所定間隔毎に配置させるための支柱である。支柱20は、載置部Mbの上面における電極EのタブTの一端部よりも外側に配置され、載置部Mbにおいて固定した状態で設けられる。そのために、載置部Mbの上面と支柱20の下面とには、支柱20を載置部Mbに取り外し/取り付け自在かつ取り付けた際には固定できる構造をそれぞれ有している。支柱20は、直方体形状である。この直方体形状の支柱20の大きさや縦横比等については、側面において支持部21を水平方向にスライドできるように取り付けることができ、載置部Mbに対して安定して固定できるように、適宜設定してよい。支柱20の一側面には、鉛直方向の所定間隔毎に支持部21を水平方向にスライドさせるための溝(図示せず)が形成されている。支柱20は、マガジンMのガイド部材Maと同程度の高さを有している。
【0031】
支持部21は、所定枚数の電極E毎に支柱20にスライド可能な状態で取り付けられ、電極EのタブTを支持するための支持部である。支持部21は、図2に示すように、第1の実施の形態に係る支持部11と同様の台形状の平面形状及び大きさを有している。支持部21は、所定枚数の電極Eに相当する間隔ずつあけて、台形状の短辺側が支柱10の一側面にスライド可能な状態で取り付けられる。そのために、支柱20の短辺側の側面には、支柱20の溝に係合する係合部(図示せず)が形成されている。この支持部21の係合部と支柱20の側面の溝とは、溝に対して係合部を取り外し/取り付け自在な構造をそれぞれ有している。支持部21は、第1の実施の形態に係る支持部11と同程度の所定の厚さを有している。なお、支持部21には、スライドさせる際に作業者が持つための部分が形成されていてもよい。
【0032】
上記構成のタブ垂れ防止装置2の作用について説明する。真空乾燥工程前に、多数の電極Eが積層されているマガジンMの載置部Mbに支柱20を取り付け、載置部Mbにタブ垂れ防止装置2を固定した状態で設置する。この設置する位置は、図2に示すように、タブTの一端部側(活物質層A側とは反対側の端部側)の位置である。支柱20は載置部Mbに対して垂直(鉛直方向)であり、支柱20にスライド可能な状態で取り付けられている各支持部21は載置部Mbに対して平行(水平方向)である。
【0033】
そして、各支持部21をタブT側に水平方向にそれぞれスライドさせ、タブT側にそれぞれ移動させる。すると、第1の実施の形態と同様に、各支持部21は、まず、鋭角な先端21aがタブTの下方における活物質層A側の端部部分に到達し、タブTの下方における活物質層A側の端部に差し込まれる。そして、各支持部21は、タブT側に移動するに従ってタブTの下方に深く入り込み、その略全体がタブTの下方に配置されることになる。その結果、第1の実施の形態と同様に、所定枚数の電極E毎にタブTを支持部21によって下方から支持でき、タブTの垂れを防止できる。
【0034】
このタブ垂れ防止装置2によれば、支持部21毎に支柱20において水平方向にスライドさせて、支持部21の鋭角な先端21aをタブTの下方における活物質層A側の端部に差し込むことにより、マガジンMに積層されている電極EのタブTの垂れを防止することができる。その結果、電極EのタブTの垂れによるピッキングエラー等の不具合を防止できる。
【0035】
図3を参照して、第3の実施の形態に係るタブ垂れ防止装置3について説明する。図3は、第3の実施の形態に係るタブ垂れ防止装置3と電極Eを積層したマガジンMを模式的に示す平面図である。
【0036】
タブ垂れ防止装置3は、マガジンMに積層される電極EのタブTの垂れを所定枚数毎に防止するために、マガジンMの載置部Mbに支柱30が固定され、支柱30に電極Eの所定枚数毎に取り付けられている各支持部31を水平面において回転させて、支持部31の鋭角な先端31aをタブTの下方における活物質層A側の端部に差し込む。第3の実施の形態では、支柱30が特許請求の範囲に記載する支柱に相当し、支持部31が特許請求の範囲に記載する支持部に相当する。
【0037】
支柱30は、マガジンMの載置部Mbに設けられ、複数の支持部31を水平面において回転可能な状態で所定間隔毎に配置させるための支柱である。支柱30は、第2の実施の形態に係る支柱20と同様に、載置部Mbに固定した状態で設けられる。支柱30は、直方体形状である。この直方体形状の支柱30の大きさや縦横比等については、支持部31を水平面において回転できるように設けことができ、載置部Mbに対して安定して固定できるように、適宜設定してよい。支柱30の一側面(タブT側の側面)には、支持部31を回転させるための回転軸30aが鉛直方向に沿って取り付けられている。支柱30には、各支持部31が回転軸30aを中心として水平面において回転できるように、鉛直方向の所定間隔毎に支持部31の厚さより厚い間隔の空間部(図示せず)が形成されている。この空間部は、支柱30の平面における半面程度の部分を占める広さを有している。支柱30は、マガジンMのガイド部材Maと同程度の高さを有している。
【0038】
支持部31は、所定枚数の電極E毎に支柱30に回転可能な状態で取り付けられ、電極EのタブTを支持する支持部である。支持部31は、図3に示すように、半円形状の平面形状であり、タブTの長さや幅に応じた適宜の大きさを有している。この支持部31の半円形状における円弧部分側がタブTの活物質層A側となり、直線部分側が支柱30側となる。この直線部分の中心部には、支柱30の回転軸30aで回転するための軸受部(図示せず)が設けられている。支持部31の半円形状における円弧部分と直線部分との境界点(先端31a)は、鋭角になっている。支持部31は、所定枚数の電極Eに相当する間隔ずつあけて、軸受部が支柱30の回転軸30aに回転可能な状態で取り付けられる。支持部31は、第1の実施の形態に係る支持部11と同様の所定の厚さを有している。なお、支持部31には、回転させる際に作業者が持つための部分が形成されていてもよい。
【0039】
上記構成のタブ垂れ防止装置3の作用について説明する。真空乾燥工程前に、多数の電極Eが積層されているマガジンMの載置部Mbに支柱30を取り付け、載置部Mbにタブ垂れ防止装置3を固定した状態で設置する。この設置する位置は、図3に示すように、タブTの一端部側(活物質層A側とは反対側の端部側)の位置である。支柱30は載置部Mbに対して垂直(鉛直方向)であり、支柱30に回転可能な状態で取り付けられている各支持部31は載置部Mbに対して平行(水平方向)である。
【0040】
そして、各支持部31をタブT側に水平面においてそれぞれ回転させる。すると、各支持部31は、まず、タブTの活物質層A側に位置する鋭角な先端31aがタブTの下方における活物質層A側の端部部分に到達し、この鋭角の先端31aがタブTの下方における活物質層A側の端部に差し込まれる。そして、各支持部31は、回転するに従ってタブTの下方に深く入り込み、その略半分がタブTの下方に配置されることになる。その結果、第1の実施の形態と同様に、所定枚数の電極E毎にタブTを支持部31で下方から支持でき、タブTの垂れを防止できる。
【0041】
このタブ垂れ防止装置3によれば、支持部31毎に支柱30において水平面で回転させて、支持部31の鋭角な先端31aをタブTの下方における活物質層A側の端部に差し込むことにより、マガジンMに積層されている電極EのタブTの垂れを防止することができる。その結果、電極EのタブTの垂れによるピッキングエラー等の不具合を防止できる。
【0042】
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
【0043】
例えば、本実施の形態では同極の多数の電極をマガジンに積層した状態のときに適用したが、電極組立体を生成するために正極電極と負極電極とをセパレータを介してマガジンに積層した状態のときになどに適用してもよい。また、本実施の形態では真空乾燥工程にてタブ垂れ防止装置をマガジンに設置する構成としたが、このような加熱のある工程以外のときでもタブ垂れ防止装置をマガジンに設置しておいてもよい。
【0044】
また、本実施の形態では支柱に支持部が予め取り付けられている構成としたが、支持部を支柱から取り外し/取り付け自在な構成としてもよい。このような構成の場合、支持部を支柱に取り付ける高さ位置(すなわち、支持部の配置間隔)や取り付ける支持部の個数等を適宜変えることもできる。
【0045】
また、本実施の形態では支柱をマガジンの載置部から取り外し/取り付け自在な構造として、タブ垂れ防止装置が必要なときにマガジンの載置部に支柱(タブ垂れ防止装置)を取り付ける構成としたが、少なくとも支柱がマガジンの載置部に常時取り付けられている構成としてもよい。
【0046】
また、本実施の形態では支持部の平面形状として台形状と半円形状のものを示したが、先端が鋭角であれば、他の形状でもよい。例えば、三角形状、扇形形状がある。第1、第2の実施の形態の支持部の台形状の場合は直角を持つ台形状のものを示したが、支持部の台形状としては直角を持つ台形状以外の台形状でもよい。
【0047】
また、本実施の形態では100枚、数十枚程度の電極毎に支持部を設ける構成としたが、一枚、数枚、十数程度の電極毎に支持部を設けてもよいあるいは数100枚程度の電極毎に支持部を設けてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1,2,3…タブ垂れ防止装置、10,20,30…支柱、30a…回転軸、11,21,31…支持部、11a,21a,31a…先端。
図1
図2
図3