特許第6201854号(P6201854)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6201854地点情報収集システム、方法およびプログラム
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  • 特許6201854-地点情報収集システム、方法およびプログラム 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6201854
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】地点情報収集システム、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20170914BHJP
   G08G 1/01 20060101ALI20170914BHJP
   G08G 1/0969 20060101ALI20170914BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   G08G1/00 D
   G08G1/01 A
   G08G1/0969
   G01C21/26 C
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-63594(P2014-63594)
(22)【出願日】2014年3月26日
(65)【公開番号】特開2015-185111(P2015-185111A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2016年11月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners 特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100117466
【弁理士】
【氏名又は名称】岩上 渉
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼原 昌俊
【審査官】 相羽 昌孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−69247(JP,A)
【文献】 特開2013−164735(JP,A)
【文献】 特開2008−210058(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00−99/00
B60R 21/00−21/13
B60R 21/34−21/38
G07C 1/00−15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行履歴を取得する走行履歴取得手段と、
前記走行履歴に基づいて前記車両が急減速された場合における前記車両の減速度を取得する減速度取得手段と、
前記減速度で前記車両を停止させる場合の推定停止地点を取得する推定停止地点取得手段と、
前記推定停止地点に基づいて案内対象地点を特定し、所定の記録媒体に記録する案内対象地点記録手段と、
を備える地点情報収集システム。
【請求項2】
前記減速度取得手段は、
前記車両が急減速されていた期間における前記車両の平均減速度または前記車両の最大減速度を前記減速度として取得する、
請求項1に記載の地点情報収集システム。
【請求項3】
前記案内対象地点記録手段は、
前記車両が前記推定停止地点を回避した場合に、前記推定停止地点に基づいて前記案内対象地点を特定し、前記所定の記録媒体に記録する、
請求項1または請求項2のいずれかに記載の地点情報収集システム。
【請求項4】
車両の走行履歴を取得する走行履歴取得工程と、
前記走行履歴に基づいて前記車両が急減速された場合における前記車両の減速度を取得する減速度取得工程と、
前記減速度で前記車両を停止させる場合の推定停止地点を取得する推定停止地点取得工程と、
前記推定停止地点に基づいて案内対象地点を特定し、所定の記録媒体に記録する案内対象地点記録工程と、
を含む地点情報収集方法。
【請求項5】
車両の走行履歴を取得する走行履歴取得機能と、
前記走行履歴に基づいて前記車両が急減速された場合における前記車両の減速度を取得する減速度取得機能と、
前記減速度で前記車両を停止させる場合の推定停止地点を取得する推定停止地点取得機能と、
前記推定停止地点に基づいて案内対象地点を特定し、所定の記録媒体に記録する案内対象地点記録機能と、
をコンピュータに実現させる地点情報収集プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行の注意を促す地点を収集するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路上での車両の動作に基づいて注意喚起等を行うべき地点を特定する技術が知られている。例えば、特許文献1においては、緊急時に行われた操作が発生したと推定されると、道路の交通規則情報や車両周辺の状況に関する状況を考慮して前記操作が実際に緊急的に行われた可能性が高いと判断される場合に、操作が発生した地点を収集する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−323281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術においては、同一地点に存在する急減速原因について収集された地点が広範囲に分布し、案内の基になる地点を高精度に特定することができなかった。すなわち、緊急時の操作が発生した地点は、当該操作が行われた車両の車速等に応じて変動し得るため、同一地点に存在する急減速原因(例えば、渋滞の末尾)に関して急減速操作が行われた地点を収集したとしても、収集された地点は広範囲に分布してしまう。従って、同一地点に存在する急減速原因に関連した地点を正確に特定することはできず、例えば、過度の減速を行うことなく急減速原因に到達できるか否かを判定するような正確な位置特定を必要とする処理を行うことができない。
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、急減速原因に関連した正確な地点を取得することが可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、地点情報収集システムは、車両の走行履歴を取得する走行履歴取得手段と、走行履歴に基づいて車両が急減速された場合における車両の減速度を取得する減速度取得手段と、減速度で車両を停止させる場合の推定停止地点を取得する推定停止地点取得手段と、推定停止地点に基づいて案内対象地点を特定し、所定の記録媒体に記録する案内対象地点記録手段と、を備える。
【0006】
また、上記の目的を達成するため、地点情報収集方法は、車両の走行履歴を取得する走行履歴取得工程と、走行履歴に基づいて車両が急減速された場合における車両の減速度を取得する減速度取得工程と、減速度で車両を停止させる場合の推定停止地点を取得する推定停止地点取得工程と、推定停止地点に基づいて案内対象地点を特定し、所定の記録媒体に記録する案内対象地点記録工程と、を含むように構成される。
【0007】
さらに、上記の目的を達成するため、地点情報収集プログラムは、車両の走行履歴を取得する走行履歴取得機能と、走行履歴に基づいて車両が急減速された場合における車両の減速度を取得する減速度取得機能と、減速度で車両を停止させる場合の推定停止地点を取得する推定停止地点取得機能と、推定停止地点に基づいて案内対象地点を特定し、所定の記録媒体に記録する案内対象地点記録機能と、をコンピュータに実現させる。
【0008】
以上のように、地点情報収集システム、方法、プログラムは、車両が急減速された場合における車両の減速度を取得し、当該減速度で車両を停止させる場合の推定停止地点に基づいて案内対象地点を特定し、所定の記録媒体に記録する。すなわち、急減速時において、通常の運転者であれば、急減速時の車速に応じて減速度を調整し、急減速原因よりも前の地点で停止するような減速度を発生させることはないし、急減速原因の遥か手前で停止するような過剰な減速度を発生させることも少ない。従って、車両がどのような車速であったとしても、急減速された場合の減速度で車両を停止させる場合の推定停止地点は、急減速が行われた地点に比較して狭い範囲に分布する。そこで、推定停止地点に基づいて案内対象地点特定すれば、急減速原因に関連した正確な地点を取得することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】地点情報収集システムのブロック図である。
図2】(2A)は地点情報収集処理のフローチャート、(2B)は異なる減速度で車両を停止させる場合の車速の推移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)地点情報収集システムの構成:
(1−1)ナビゲーション端末の構成:
(1−2)地点情報収集システムの構成:
(2)地点情報収集処理:
(3)他の実施形態:
【0011】
(1)地点情報収集システムの構成:
図1は、本実施形態にかかる地点情報収集システムの構成を示すブロック図である。本実施形態における地点情報収集システム10は、無線通信によって車両Cに搭載されたナビゲーション端末100が備える案内部(後述するユーザI/F部450)に案内対象地点に関する案内を行わせる。
【0012】
(1−1)ナビゲーション端末の構成:
ナビゲーション端末100は道路を走行する複数の車両Cに搭載されており、当該ナビゲーション端末100はCPU,RAM,ROM等を備える制御部200と記録媒体300とを備え、当該記録媒体300やROMに記憶されたプログラムを制御部200で実行することができる。本実施形態において制御部200は、このプログラムの一つとしてナビゲーションプログラム210を実行可能である。
【0013】
さらに、車両Cは、通信部220とGPS受信部410と車速センサ420とジャイロセンサ430とブレーキセンサ440とユーザI/F部450とを備えている。通信部220は、無線通信を行うための回路にて構成され、制御部200は通信部220を制御して地点情報収集システム10と通信を行うことができる。GPS受信部410は、GPS衛星からの電波を受信し、図示しないインタフェースを介して車両Cの現在地を算出するための信号を示す信号を出力する。制御部200は、この信号を取得して車両Cの現在地を取得する。車速センサ420は、車両Cが備える車輪の回転速度に対応した信号を出力する。制御部200は、図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、車速を取得する。ジャイロセンサ430は、車両Cの水平面内の旋回についての角加速度を検出し、車両Cの向きに対応した信号を出力する。制御部200は、この信号を取得して車両Cの進行方向を取得する。車速センサ420およびジャイロセンサ430等は、車両Cの走行軌跡を特定するために利用され、本実施形態においては、車両Cの出発地と走行軌跡とに基づいて現在地が特定され、当該出発地と走行軌跡とに基づいて特定された車両Cの現在地がGPS受信部410の出力信号に基づいて補正される。
【0014】
記録媒体300には、地図情報300aが記録されている。当該地図情報300aには車両Cが走行する道路上に設定されたノードの位置および標高等を示すノードデータ、ノード間の道路の形状を特定するための形状補間点の位置および標高等を示す形状補間データ、ノード同士の連結を示すリンクデータ、走行予定経路の目的地となり得る施設の属性や位置等を示す施設データ等が含まれている。制御部200は、地図情報300aが示すノードデータおよび形状補間データに基づいて道路形状を特定することができる。
【0015】
ブレーキセンサ440は、車両Cにおいてブレーキペダルが操作された量を検出するセンサであり、制御部200は検出された量を示す情報を取得し、単位時間あたりのブレーキペダルの操作量を特定し、ブレーキ操作が急減速に該当する操作であるか否かを判定することができる。
【0016】
ユーザI/F部450は、利用者の指示を入力し、また利用者に各種の情報を提供するためのインタフェース部であり、図示しないタッチパネルディスプレイからなる入力部を兼ねた表示部やスピーカー等の出力音の出力部を備えている。制御部200は、ナビゲーションプログラム210の機能により、ユーザI/F部450に対して車両Cの現在地および現在地周辺の地図を表示させることができる。すなわち、制御部200は、車両Cの現在地を取得し、地図情報300aに基づいて現在地周辺の地図を示す画像を生成してユーザI/F部450に対して出力する。この結果、ユーザI/F部450の表示部は、現在地を含む地図を表示する。
【0017】
さらに、本実施形態におけるナビゲーションプログラム210は、車両Cの走行過程における当該車両Cの動作の履歴である走行履歴を取得する機能を制御部200に実現させることができる。また、ナビゲーションプログラム210は、急減速の発生を防止するための案内を行う機能を制御部200に実現させることができる。このため、制御部200は、ナビゲーションプログラム210の処理により、ブレーキセンサ440の出力情報に基づいて、急減速が発生したか否かを判定する。急減速が発生したと判定された場合、制御部200は、ナビゲーションプログラム210の処理により、GPS受信部410,車速センサ420、ジャイロセンサ430の出力信号に基づいて車両Cの現在地を特定する。そして、制御部200は、当該現在地を急減速が発生した急減速地点とし、当該急減速地点を示す情報を走行履歴情報300bとして記録媒体300に記録する。さらに、制御部200は、急減速地点以後、車両が停止するまでまたは車両が再加速するまでの間における地点毎の車速の履歴を車速センサ420の出力信号に基づいて特定し、当該急減速地点に対応づけて走行履歴情報300bとして記録媒体300に記録する。
【0018】
本実施形態において、制御部200は、ナビゲーションプログラム210の処理により、通信部220を介して走行履歴情報300bを地点情報収集システム10に対して送信することができる。地点情報収集システム10においては、複数の車両Cから送信される走行履歴情報300bを取得して解析し、案内対象地点を特定する。
【0019】
(1−2)地点情報収集システムの構成:
地点情報収集システム10は、CPU,RAM,ROM等を備える制御部20と記録媒体30とを備えており、制御部20は当該記録媒体30やROMに記録されたプログラムを実行することができる。さらに、地点情報収集システム10は通信部22を備えている。通信部22は、無線通信を行うための回路にて構成され、制御部20は通信部22を制御して車両Cと無線通信を行うことができる。さらに、記録媒体30には、車両Cから取得された走行履歴情報300bが走行履歴情報30bとして記録され、地点情報収集システム10の運用過程で生成された案内対象地点情報30aが記録される。
【0020】
本実施形態において制御部20は、記録媒体30に記録された地点情報収集プログラム21を実行可能であり、制御部20は、当該地点情報収集プログラム21の処理により、走行履歴情報30bを解析し、案内対象地点を記録媒体30に記録し、案内対象地点および車速推移を車両Cに対して配信する。このために、制御部20は、走行履歴取得部21aと減速度取得部21bと推定停止地点取得部21cと案内対象地点記録部21dとを備えている。
【0021】
走行履歴取得部21aは、車両Cの走行履歴を取得する機能を制御部20に実現させるプログラムモジュールである。すなわち、制御部20は、走行履歴取得部21aの処理により、車両Cから任意のタイミングで送信される走行履歴情報300bを通信部22によって取得し、記録媒体30に走行履歴情報30bとして記録する。
【0022】
減速度取得部21bは、走行履歴に基づいて車両Cが急減速された場合における車両Cの減速度を取得する機能を制御部20に実現させるプログラムモジュールである。本実施形態において、制御部20は、減速度取得部21bの処理により、車両Cが急減速されていた期間における車両Cの平均減速度を、車両Cが急減速された場合における車両Cの減速度として取得する。
【0023】
このため、制御部20は、走行履歴情報30bを参照して急減速地点を特定する。さらに、制御部20は、特定された急減速地点以後の車速の履歴に基づいて車速の変化度合いを特定し、車両に作用している減速度(車両の進行方向の逆向きに作用する加速度の大きさ)を取得する。そして、制御部20は、当該減速度の大きさが所定の閾値以上である状態を急減速されている状態と見なし、当該急減速されている状態における減速度の平均値を平均減速度として取得する。
【0024】
推定停止地点取得部21cは、車両Cが急減速された場合における車両Cの減速度で車両Cを停止させる場合の推定停止地点を取得する機能を制御部20に実現させるプログラムモジュールである。本実施形態において、制御部20は、減速度取得部21bの処理によって取得した減速度で車両Cを減速させる場合における車速推移を推定する。具体的には、急減速地点における車速を初速として当該急減速地点から当該減速度による等加速度直線運動を行う場合の地点毎の車速を運動方程式等によって取得し、当該地点毎の車速を車速推移として取得する。このように車速推移が取得されると、制御部20は、車速が0となる地点を推定停止地点として取得する。なお、運動方程式を構成する各種のパラメータ(車両の重量等)は予め決められていても良いし、走行履歴情報30bに含められるとともに当該走行履歴情報30bが参照されること等によって取得されても良い。
【0025】
案内対象地点記録部21dは、推定停止地点に基づいて案内対象地点を特定し、記録媒体30に記録する機能を制御部20に実現させるプログラムモジュールである。具体的には、制御部20は、案内対象地点記録部21dの処理により、案内対象地点を示す情報を案内対象地点情報30aとして記録媒体30に記録する。なお、本実施形態において、制御部20は、当該案内対象地点情報30aを記録媒体に記録する際に、所定の減速度で車両を減速させて案内対象地点で車両を停止させる際の車速推移(位置毎の車速)を示す情報を案内対象地点に対応づける。
【0026】
すなわち、通常の運転者であれば、急減速時の車速に応じて減速度を調整し、急減速原因の前方で停止するような減速度を発生させることはないし、急減速原因の遥か手前で停止するような過剰な減速度を発生させることもない。従って、車両Cがどのような車速であったとしても、急減速された場合の減速度をある程度の期間にわたって特定し、当該減速度で車両Cを停止させる場合の推定停止地点を特定すれば、当該推定停止地点は、急減速が行われた地点よりも狭い範囲に分布する。
【0027】
図2Bは、複数の地点P1,P2において初速V1,V2で急減速を開始した場合の車速の推移例を示す図である。同図2Bにおいて実線は、車速V1で走行していた車両Cが地点Psに存在する急減速原因によって地点P1で急減速を開始した場合の車速の推移を示している。また、一点鎖線は、車速V2で走行していた車両Cが地点Psに存在する急減速原因によって地点P2で急減速を開始した場合の車速の推移を示し、二点鎖線は、車速V1で走行していた車両Cが地点Psに存在する急減速原因によって地点P2で急減速を開始した場合の車速の推移を示している。
【0028】
これらの例において、車速V1で走行していた車両Cが異なる地点P1,P2で急減速を開始した場合を比較すると、双方において通常は急減速原因が存在する地点Psに達しないように急減速が行われる。従って、一定の減速度で減速させることを想定すると、地点Psに近い地点P2における急減速は、地点P1における急減速よりも大きい減速度での減速となる。そして、地点Psに達するまで減速が継続されるとは限らないものの、少なくとも、急減速が行われている期間においては、地点Psより手前で車両Cを停止させることができるように減速度が調整されることになる。
【0029】
同様に、異なる車速V1,V2で走行していた車両Cが地点P2で急減速を開始した場合においても、通常は、急減速原因が存在する地点Psに達しないように急減速が行われるため、大きい初速V1から急減速された場合は小さい初速V2から急減速された場合よりも大きい減速度での減速となる。従って、この場合においても、急減速が行われている期間においては、地点Psより手前で車両Cを停止させることができるように減速度が調整されることになる。
【0030】
そして、図2Bに示すように、それぞれの急減速の結果、車両Cが停止する位置を特定すると各位置は範囲R1に分布し、当該範囲R1は、急減速が開始された地点の分布範囲R2よりも狭い。そこで、本実施形態において制御部20は、車両が急減速されていた過程における平均減速度に基づいて推定停止地点を特定し、当該推定停止地点に基づいて案内対象地点を特定する。この結果、急減速原因に関連した案内対象地点を正確に特定することが可能である。
【0031】
なお、制御部20は、地点情報収集プログラム21の処理により、任意のタイミングで(例えば、車両Cからの要求に応じて)案内対象地点情報30aを車両Cに配信することができる。案内対象地点情報30aが配信されると、車両Cにおいては、制御部200が当該案内対象地点情報30aを取得して記録媒体300等に記録する。この場合、制御部200は、ナビゲーションプログラム210の処理により、GPS受信部410,車速センサ420,ジャイロセンサ430の出力信号に基づいて車両Cの現在地を特定する。当該現在地が案内対象地点に接近すると、制御部200は、車両Cの現在地における現在の車速が上述の車速推移が示す当該現在地での車速を超えているか否か判定する。
【0032】
そして、車両Cの現在地における現在の車速が上述の車速推移が示す当該現在地での車速を超えている場合、制御部200は、過度の減速が必要になると見なし、当該車両Cの運転者に走行の注意を促すための制御信号をユーザI/F部450に対して出力する。この結果、ユーザI/F部450の表示部に案内対象地点における走行の注意を促す画像が表示され、ユーザI/F部450の出力部から案内対象地点における走行の注意を促す音声が出力される。以上の処理により、車両Cの運転者に対して、案内対象地点到達前における過大な車速に注意すべきと言う案内を行うことができる。
【0033】
(2)地点情報収集処理:
次に、地点情報収集プログラム21によって制御部20が実行する地点情報収集処理を詳細に説明する。図2Aは、地点情報収集処理を示すフローチャートであり、当該地点情報収集処理は、車両Cから走行履歴情報300bが送信されるたびに実行される。すなわち、車両Cに搭載されたナビゲーション端末100は、車両Cの利用者の指示に応じてまたは定期的に車両Cの走行履歴情報300bを地点情報収集システム10に対して送信する。
【0034】
走行履歴情報300bが送信されると、制御部20は、走行履歴取得部21aの処理により、通信部22を介して走行履歴情報300bを取得し、記録媒体30に対して走行履歴情報30bとして記録する。(ステップS100)。この結果、記録媒体30には、車両Cが急減速された急減速地点と、当該急減速地点以後の車速の履歴を示す情報が走行履歴情報30bとして記録される。
【0035】
次に、制御部20は、減速度取得部21bの処理により、急減速区間を取得する(ステップS105)。すなわち、制御部20は、ステップS100で取得した走行履歴情報30bを参照し、車両Cに作用していた減速度を特定する。また、制御部20は、当該減速度の大きさが所定の閾値以上である区間を急減速されていた区間として取得する。
【0036】
次に、制御部20は、減速度取得部21bの処理により、急減速区間における平均減速度を取得する(ステップS110)。この処理は、例えば、制御部20が、急減速区間の単位距離毎の減速度をサンプリングし、各減速度の総和をサンプル数で除すること等によって取得可能である。
【0037】
次に、制御部20は、推定停止地点取得部21cの処理により、推定停止地点を取得する(ステップS115)。すなわち、制御部20は、ステップS100で取得した急減速地点において当該急減速地点での車速を初速とし、ステップS110で取得した平均減速度で等加速度直線運動をした場合の車速推移を特定する。そして、制御部20は、当該車速推移に基づいて車速が0となる地点を特定し、当該地点を推定停止地点として取得して記録媒体30に記録する。
【0038】
次に、制御部20は、推定停止地点が狭い範囲に集中しているか否かを判定する(ステップS120)。すなわち、地点情報収集処理は、車両Cから走行履歴情報300bが送信されるたびに実行されるため、時間の経過とともに走行履歴情報300bや推定停止地点を示す情報の蓄積量が増加する。そして、複数の車両Cからの送信された走行履歴情報300bに基づいて取得された推定停止地点が狭い範囲に集中する場合、当該推定停止地点には、急減速の発生に注意すべき原因が存在すると推定される。そこで、制御部20は、ステップS115で取得された推定停止地点を中心とした予め決められた距離の範囲を定義し、当該範囲に推定停止地点が所定数以上存在する場合に、推定停止地点が狭い範囲に集中していると見なす。なお、当該距離は、推定停止地点が同一の急減速原因(渋滞の末尾等)の存在地点であると見なすことができるように定義されていれば良い。
【0039】
ステップS120において、推定停止地点が狭い範囲に集中していると判定された場合、制御部20は、案内対象地点記録部21dの処理により、推定停止地点に基づいて案内対象地点を特定し、記録する(ステップS125)。すなわち、狭い範囲に集中している複数の推定停止地点に基づいて統計処理によって案内対象地点を特定し(例えば、複数の推定停止地点の重心等)、当該案内対象地点を示す案内対象地点情報30aを記録媒体30に記録する。なお、この場合、制御部20は、所定の減速度(例えば、過度の減速であるか否かを判定するための固定値(0.4G等))で車両を減速させて案内対象地点で車両を停止させる際の車速推移(位置毎の車速)を示す情報を案内対象地点に対応づける。一方、ステップS120において、推定停止地点が狭い範囲に集中していると判定されない場合、制御部20は、ステップS125をスキップする。
【0040】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、急減速された場合における減速度で車両を停止させる場合の推定停止地点を取得し、当該推定停止地点に基づいて案内対象地点を特定して記録媒体に記録する限りにおいて、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、ナビゲーション端末100は、車両に固定的に搭載されていても良いし、持ち運び可能なナビゲーション端末100が車両内に持ち込まれて利用される態様であっても良い。また、走行履歴取得部21a、減速度取得部21b、推定停止地点取得部21c、案内対象地点記録部21dの少なくとも一部が上述の実施形態と異なる制御主体で実現されても良い。例えば、各部がナビゲーション端末100に備えられていても良い。
【0041】
さらに、急減速の発生を検出するための構成はブレーキセンサ440に限定されず、例えば、車速センサ420の出力信号やABS制御の作動状態に基づいて検出しても良い。さらに、1個の推定停止地点を取得し、当該推定停止地点が案内対象地点として特定される構成であっても良い。
【0042】
走行履歴取得手段は、車両の走行履歴を取得することができればよく、走行履歴は、車両における急減速の発生と、車両の減速度とを特定可能であり、これらの情報から推定停止地点を取得できるように定義されていれば良い。従って、例えば、車両の位置毎の動作(車速、加速度等)を走行履歴とする構成であってもよいし、車両の位置毎の運転操作(急ブレーキ等の急減速操作)の履歴が含まれていても良い。なお、減速度は、車両の進行方向の逆向きに作用する加速度の大きさである。
【0043】
減速度取得手段は、走行履歴に基づいて車両が急減速された場合における車両の減速度を取得することができればよく、急減速中に車両に作用する減速度であって、当該減速度での車両を停止させる場合の推定停止地点が急減速原因の地点であると見なすことができるような減速度を取得することができればよい。
【0044】
このような減速度としては、例えば、車両が急減速されていた期間における車両の平均減速度または車両の最大減速度を、車両が急減速された場合における車両の減速度として取得する構成等を採用可能である。前者であれば、急減速の過程で調整された減速度の変動を加味して減速度を特定することができる。後者であれば、推定停止地点が急減速原因の地点に過度に近づくことや急減速原因の前方になることを抑制することができる。なお、急減速は、通常の走行では発生しない偶発的な減速であり、例えば、基準単位あたりの車速変化が所定の変化量以上であるような減速や、基準単位当たりの操作量が閾値以上である運転操作による減速が挙げられる。ここで、基準単位は単位距離や単位時間等である。
【0045】
推定停止地点取得手段は、車両が急減速された場合における車両の減速度で車両を停止させる場合の推定停止地点を取得することができればよい。すなわち、当該減速度によって車両を減速させる場合における車速推移を推定し、停止したと見なすことができる車速となる地点を推定停止地点として取得することができればよい。なお、車両が急減速された場合における車両の減速度によって車両を減速させる場合の車速推移は、例えば、当該減速度における等加速度直線運動での車速の推移を推定することで特定可能である。
【0046】
案内対象地点記録手段は、推定停止地点に基づいて案内対象地点を特定し、所定の記録媒体に記録することができればよい。すなわち、記録媒体に案内対象地点が利用可能に記録されればよい。案内対象地点の利用態様としては、種々の態様を想定可能であり、例えば、所定の減速度で車両を減速させて案内対象地点で車両を停止させることが可能な車速推移を想定し、当該車速推移を超える車速で案内対象地点に接近する車両においては過度の減速が必要になり得ると見なし、当該車両に走行の注意を促す案内を行う構成等を採用可能である。この構成によれば、過度の減速を行うことなく急減速原因に到達できるか否かを判定するような処理を正確に行うことができ、有用な案内を行うことが可能である。
【0047】
さらに、案内対象地点記録手段が、車両が推定停止地点を回避した場合に、推定停止地点に基づいて案内対象地点を特定し、所定の記録媒体に記録する構成としても良い。すなわち、急減速を行った車両の多くは、急減速を行ったまま推定停止地点まで減速を続けずに、ステアリング操作等によって推定停止地点を回避する。また、車両が推定停止地点まで到達して停止したのであれば、停止地点を案内対象地点とすれば良く、推定停止地点を案内対象地点とする必要性は少ない。
【0048】
そこで、車両が推定停止地点を回避した場合に、推定停止地点に基づいて案内対象地点を特定し、所定の記録媒体に記録する構成とすれば、車両が推定停止地点を回避し、急減速原因によって車両が停止していない場合であっても停止すると推定される地点を案内対象地点とすることが可能になる。なお、車両が推定停止地点を回避したか否かを判定するための手法としては、種々の手法を採用可能である。
【0049】
例えば、図1に示す構成において、制御部200が、車両Cのステアリングの操舵角を検出するステアリングセンサの出力信号に基づいて地点毎の操舵角を走行履歴情報300bに含める構成とする。そして、制御部20が走行履歴情報300bを取得し、解析し、推定停止地点に車両Cが到達する前に操舵角に所定量以上の変化があった場合に、推定停止地点の回避行動が行われたと見なす構成とする。そして、当該回避行動が行われた場合に、制御部20が推定停止地点に基づいて案内対象地点を特定する構成等を採用可能である。
【0050】
さらに、本発明のように、急減速された場合における減速度で車両を停止させる場合の推定停止地点を取得し、当該推定停止地点に基づいて案内対象地点を特定して記録媒体に記録する手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のようなシステム、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合もあれば、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。例えば、以上のようなシステムを備えた情報管理システムやナビゲーションシステム、方法、プログラムを提供することが可能である。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、装置を制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【符号の説明】
【0051】
10…地点情報収集システム、20…制御部、21…地点情報収集プログラム、21a…走行履歴取得部、21b…減速度取得部、21c…推定停止地点取得部、21d…案内対象地点記録部、22…通信部、30…記録媒体、30a…案内対象地点情報、30b…走行履歴情報、100…ナビゲーション端末、200…制御部、210…ナビゲーションプログラム、220…通信部、300…記録媒体、300a…地図情報、300b…走行履歴情報、410…GPS受信部、420…車速センサ、430…ジャイロセンサ、440…ブレーキセンサ、450…ユーザI/F部
図1
図2