(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)運転支援システムの構成:
(1−1)ナビゲーション端末の構成:
(1−2)運転支援システムの構成:
(2)運転支援処理:
(3)他の実施形態:
【0013】
(1)運転支援システムの構成:
図1は、本実施形態にかかる運転支援システムの構成を示すブロック図である。本実施形態における運転支援システム10は、無線通信によって車両Cに搭載されたナビゲーション端末100が備える案内部(後述するユーザI/F部450)に急減速原因に関する案内を行わせる。
【0014】
(1−1)ナビゲーション端末の構成:
ナビゲーション端末100は道路を走行する複数の車両Cに搭載されており、当該ナビゲーション端末100はCPU,RAM,ROM等を備える制御部200と記録媒体300とを備え、当該記録媒体300やROMに記憶されたプログラムを制御部200で実行することができる。本実施形態において制御部200は、このプログラムの一つとしてナビゲーションプログラム210を実行可能である。
【0015】
さらに、車両Cは、通信部220とGPS受信部410と車速センサ420とジャイロセンサ430とブレーキセンサ440とユーザI/F部450とを備えている。通信部220は、無線通信を行うための回路にて構成され、制御部200は通信部220を制御して運転支援システム10と通信を行うことができる。GPS受信部410は、GPS衛星からの電波を受信し、図示しないインタフェースを介して車両Cの現在地を算出するための信号を示す信号を出力する。制御部200は、この信号を取得して車両Cの現在地を取得する。車速センサ420は、車両Cが備える車輪の回転速度に対応した信号を出力する。制御部200は、図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、車速を取得する。ジャイロセンサ430は、車両Cの水平面内の旋回についての角加速度を検出し、車両Cの向きに対応した信号を出力する。制御部200は、この信号を取得して車両Cの進行方向を取得する。車速センサ420およびジャイロセンサ430等は、車両Cの走行軌跡を特定するために利用され、本実施形態においては、車両Cの出発地と走行軌跡とに基づいて現在地が特定され、当該出発地と走行軌跡とに基づいて特定された車両Cの現在地がGPS受信部410の出力信号に基づいて補正される。
【0016】
記録媒体300には、地図情報300aが記録されている。当該地図情報300aには車両Cが走行する道路上に設定されたノードの位置および標高等を示すノードデータ、ノード間の道路の形状を特定するための形状補間点の位置および標高等を示す形状補間データ、ノード同士の連結を示すリンクデータ、走行予定経路の目的地となり得る施設の属性や位置等を示す施設データ等が含まれている。制御部200は、地図情報300aが示すノードデータおよび形状補間データに基づいて道路形状を特定することができる。
【0017】
ブレーキセンサ440は、車両Cにおいてブレーキペダルが操作された量を検出するセンサであり、制御部200は検出された量を示す情報を取得し、単位時間あたりのブレーキペダルの操作量を特定し、ブレーキ操作が急減速に該当する操作であるか否かを判定することができる。
【0018】
ユーザI/F部450は、利用者の指示を入力し、また利用者に各種の情報を提供するためのインタフェース部であり、図示しないタッチパネルディスプレイからなる入力部を兼ねた表示部やスピーカー等の出力音の出力部を備えている。制御部200は、ナビゲーションプログラム210の機能により、ユーザI/F部450に対して車両Cの現在地および現在地周辺の地図を表示させることができる。すなわち、制御部200は、車両Cの現在地を取得し、地図情報300aに基づいて現在地周辺の地図を示す画像を生成してユーザI/F部450に対して出力する。この結果、ユーザI/F部450の表示部は、現在地を含む地図を表示する。
【0019】
さらに、本実施形態におけるナビゲーションプログラム210は、車両Cの走行過程における当該車両Cの動作の履歴である走行履歴を取得する機能を制御部200に実現させることができる。また、ナビゲーションプログラム210は、急減速の発生を防止するための案内を行う機能を制御部200に実現させることができる。このため、制御部200は、ナビゲーションプログラム210の処理により、ブレーキセンサ440の出力情報に基づいて、急減速が発生したか否かを判定する。急減速が発生したと判定された場合、制御部200は、ナビゲーションプログラム210の処理により、GPS受信部410,車速センサ420、ジャイロセンサ430の出力信号に基づいて車両Cの現在地を特定する。そして、制御部200は、当該現在地を急減速が発生した急減速地点とし、当該急減速地点を示す情報を走行履歴情報300bとして記録媒体300に記録する。さらに、制御部200は、急減速地点における車速センサ420の出力信号に基づいて急減速地点における車両Cの車速である初期車速を特定し、当該急減速地点に対応づけて走行履歴情報300bとして記録媒体300に記録する。
【0020】
本実施形態において、制御部200は、ナビゲーションプログラム210の処理により、通信部220を介して走行履歴情報300bを運転支援システム10に対して送信することができる。運転支援システム10においては、複数の車両Cから送信される走行履歴情報300bを取得して解析し、案内対象地点を特定する。
【0021】
(1−2)運転支援システムの構成:
運転支援システム10は、CPU,RAM,ROM等を備える制御部20と記録媒体30とを備えており、制御部20は当該記録媒体30やROMに記録されたプログラムを実行することができる。さらに、運転支援システム10は通信部22を備えている。通信部22は、無線通信を行うための回路にて構成され、制御部20は通信部22を制御して車両Cと無線通信を行うことができる。さらに、記録媒体30には、車両Cから取得された走行履歴情報300bが走行履歴情報30bとして記録され、運転支援システム10の運用過程で生成された案内対象地点情報30aが記録される。
【0022】
本実施形態において制御部20は、記録媒体30に記録された運転支援プログラム21を実行可能であり、制御部20は、当該運転支援プログラム21の処理により、走行履歴情報30bを解析し、案内対象地点を記録媒体30に記録し、案内対象地点および車速推移を車両Cに対して配信する。このために、制御部20は、走行履歴取得部21aと走行履歴解析部21bと車速推移取得部21cと案内部21dとを備えている。
【0023】
走行履歴取得部21aは、複数の車両Cの走行履歴を取得する機能を制御部20に実現させるプログラムモジュールである。すなわち、制御部20は、走行履歴取得部21aの処理により、車両Cから任意のタイミングで送信される走行履歴情報300bを通信部22によって取得し、記録媒体30に走行履歴情報30bとして記録する。
【0024】
走行履歴解析部21bは、同一の急減速原因によって急減速が行われた複数の車両Cについての走行履歴情報30bに基づいて、急減速された地点である急減速地点と当該急減速地点での車両Cの車速である初期車速を取得する機能を制御部20に実現させるプログラムモジュールである。すなわち、制御部20は、走行履歴情報30bを参照し、所定の距離の範囲内に急減速地点が集中して分布している場合、各急減速地点における急減速が同一の急減速原因によって行われたと推定する。そして、制御部20は、走行履歴情報30bを参照し、当該同一の急減速原因によって急減速が行われた急減速地点と各地点に対応づけられた初期車速とを取得する。
【0025】
車速推移取得部21cは、各急減速地点において初期車速から所定の減速度で車両Cを減速させた場合に車両Cが停止するどの地点よりも手前で車両Cを停止させるための車速推移を取得する機能を制御部20に実現させるプログラムモジュールである。すなわち、制御部20は、車速推移取得部21cの処理により、急減速地点において、初期車速および所定の減速度で複数の車両Cのそれぞれを減速させた場合の推定停止地点のうち、最も進行方向後方に存在する推定停止地点に到達しないような車速推移を特定する。
【0026】
具体的には、制御部20は、車速推移取得部21cの処理により、所定の減速度での車速の変化が運動方程式等によって特定された状態で、当該車速の変化を示す減速線(地点毎の車速や時間毎の車速)に合致する急減速地点と初期車速との組み合わせであって、推定停止地点が最も手前になる急減速地点と初期車速との組み合わせを特定する。なお、運動方程式を構成する各種のパラメータ(車両の重量等)は予め決められていても良いし、走行履歴情報30bに含められるとともに当該走行履歴情報30bが参照されること等によって取得されても良い。減速度は、車両の進行方向の逆向きに作用する加速度の大きさであり、所定の減速度は、当該所定の減速度よりも絶対値が大きい減速度が過度の減速度であると見なすことができるように設定された値(例えば、固定の値(0.4G等))である。
【0027】
図3Aは、同一の急減速原因によって複数の車両Cで急減速が行われた場合の急減速地点と初期車速との組み合わせの例を示す図である。
図3Aにおいては、横軸を位置、縦軸を車速としたグラフに急減速地点と初期車速との組み合わせをプロットしている。また、破線および実線の曲線が上述の減速線である。このように、所定の減速度での車速の変化を示す減速線は、
図3Aのようなグラフ上で一定の形状である。従って、当該減速線をグラフ上で横軸に平行に移動させてグラフ上のプロット点に合致させると、当該プロット点が示す急減速地点において初期車速から所定の減速度で減速を行った場合の車速の変化が特定されることになる。そこで、制御部20は、
図3Aに示すグラフ上で最も左側(手前側)において減速線に合致する急減速地点と初期車速との組み合わせを特定する。
【0028】
制御部20は、このようにして特定された急減速地点と初期車速との組み合わせを着目地点Psおよび着目車速Vsとする。そして、制御部20は、着目地点より所定のマージンMだけ手前の地点P
1において着目車速Vsから所定の減速度で車両Cを減速させた場合の地点毎の車速の変化を車速推移として取得する。すなわち、制御部20は、着目地点より所定のマージンだけ手前の地点に減速線を合致させた場合の地点毎の車速の変化を車速推移として取得する。
図3Aにおいては、実線によって車速推移Vtを示している。なお、当該所定のマージンMの量は予め決められていれば良く、例えば、案内タイミング後に案内に応じた運転操作を行うまでの空走距離等とすることが可能である。
【0029】
以上の処理によって、各急減速地点において初期車速から所定の減速度で車両Cを減速させた場合に車両Cが停止するどの地点よりも手前で車両Cを停止させるための車速推移が取得されると、制御部20は、案内対象地点を示す情報を生成し、車速推移を示す情報を対応づけて案内対象地点情報30aとして記録媒体30に記録する。案内対象地点は、急減速原因に関する案内を行うべき地点であれば良く、複数の急減速地点の統計値や急減速原因が存在する地点(車速推移において車速が0になる地点)等で定義することが可能である。なお、車速推移を示す情報が特定できない場合(詳細は後述)、制御部20は、案内対象地点を示す情報を生成し、車速推移を示す情報を対応づけることなく案内対象地点情報30aとして記録媒体30に記録する。
【0030】
案内部21dは、車速推移取得部21cの処理によって取得された車速推移を超える車速で急減速原因に接近する車両Cに走行の注意を促す案内を行う機能を制御部20に実現させるプログラムモジュールである。すなわち、制御部20は、当該車速推移を超える車速で急減速原因の存在地点に接近する車両Cにおいては過度の減速が必要になり得ると見なし、当該車両Cに走行の注意を促す案内を行うための処理を実行する。
【0031】
具体的には、制御部20は、任意のタイミングで(例えば、車両Cからの要求に応じて)案内対象地点情報30aを車両Cに配信する。案内対象地点情報30aが配信されると、車両Cにおいては、制御部200が当該案内対象地点情報30aを取得して記録媒体300等に記録する。案内対象地点情報30aが記録媒体300等に記録されると、制御部200は、ナビゲーションプログラム210の処理により、GPS受信部410,車速センサ420,ジャイロセンサ430の出力信号に基づいて車両Cの現在地を特定する。当該現在地が案内対象地点に接近すると、制御部200は、案内対象地点情報30aに基づいて案内を行う。
【0032】
すなわち、案内対象地点情報30aに車速推移が対応づけられている場合、制御部200は、車両Cの現在地における現在の車速が上述の車速推移が示す当該現在地での車速を超えているか否か判定する。そして、車両Cの現在地における現在の車速が上述の車速推移が示す当該現在地での車速を超えている場合、制御部200は、過度の減速が必要になると見なし、当該車両Cの運転者に過度の減速に対する注意を促すための制御信号をユーザI/F部450に対して出力する。この結果、ユーザI/F部450の表示部に過度の減速に対する注意を促す画像が表示され、ユーザI/F部450の出力部から過度の減速に対する注意を促す音声が出力される。以上の処理により、車両Cの運転者に対して、案内対象地点到達前における過大な車速に注意すべきと言う案内を行うことができる。
【0033】
以上の構成によれば、過度の減速を行うことなく急減速原因に到達する前に停止させることができるように、適切なタイミングで案内を行うことができる。すなわち、
図3Aに示すように、複数の車両Cによって急減速が行われた急減速地点が所定の範囲に集中している場合、各車両Cは同一の急減速原因によって急減速したと推定されるため、当該急減速原因に関して事前に案内されることが好ましい。しかし、複数の車両Cで急減速が行われた地点が所定の範囲に集中していたとしても、各地点は異なる位置に分布するし、各地点での初期車速もそれぞれ異なり得る。そして、急減速地点のみならず過度の車速であるか否かにも着目して案内を行う場合、従来の技術においては、どの車両Cの走行履歴に着目すべきであるのか、必ずしも明らかではない。
【0034】
例えば、複数の急減速地点において各初期速度から所定の減速度で車両Cを減速させて停止させることを想定した場合、最も手前の急減速地点から減速を開始した場合に最も手前に車両が停止するとは限らない。
図3Aに示す例であれば、最も手前に存在する急減速地点Pmは着目地点Psよりも手前に存在するが、所定の減速度で車両Cを減速させた場合、着目地点Psよりも進行方向前方に停止させることができる。従って、所定の減速度で車両を減速させた場合における急減速原因への接近度合いが最も小さくするための基準として、最も手前の急減速地点が適切であるとは限らない。
【0035】
しかし、本実施形態において制御部20は、所定の減速度で車両を減速させた場合における車両の推定停止地点のどれよりも手前で停止させることができるように車両Cの車速推移を取得する。そして、制御部20は、推定停止地点が最も手前となる場合が、複数の走行履歴の中で最も安全な減速であると見なし、当該推定停止地点よりさらに手前で車両Cを停止させるための車速推移を取得する。従って、当該車速推移を超える車速で急減速原因に接近する車両Cの利用者に走行の注意を促すことで、過度の減速を行うことなく当該急減速原因に到達する前に安全に停止させることが可能なタイミングで案内を行うことができる。
【0036】
なお、案内対象地点情報30aに車速推移が対応づけられていない場合、制御部200は、案内対象地点より所定の距離だけ手前の地点で、車両Cの運転者に走行の注意を促すための制御信号をユーザI/F部450に対して出力する。この結果、ユーザI/F部450の表示部に案内対象地点における走行の注意を促す画像が表示され、ユーザI/F部450の出力部から案内対象地点における走行の注意を促す音声が出力される。以上の処理により、車両Cの運転者に対して、案内対象地点到達前における過大な車速に注意すべきと言う案内を行うことができる。
【0037】
(2)運転支援処理:
次に、運転支援プログラム21によって制御部20が実行する運転支援処理を詳細に説明する。
図2は、運転支援処理を示すフローチャートであり、当該運転支援処理は、車両Cから走行履歴情報300bが送信されるたびに実行される。すなわち、車両Cに搭載されたナビゲーション端末100は、車両Cの利用者の指示に応じてまたは定期的に車両Cの走行履歴情報300bを運転支援システム10に対して送信する。
【0038】
走行履歴情報300bが送信されると、制御部20は、走行履歴取得部21aの処理により、通信部22を介して走行履歴情報300bを取得し、記録媒体30に対して走行履歴情報30bとして記録する。(ステップS100)。この結果、記録媒体30には、車両Cが急減速された急減速地点と、当該急減速地点における初期車速を示す情報が走行履歴情報30bとして記録される。
【0039】
次に、制御部20は、走行履歴解析部21bの処理により、急減速地点および初期車速を取得する(ステップS105)。すなわち、制御部20は、ステップS100で取得した走行履歴情報30bを参照し、急減速地点および初期車速を取得する。
【0040】
次に、制御部20は、走行履歴解析部21bの処理により、急減速地点が狭い範囲に集中しているか否かを判定する(ステップS110)。すなわち、運転支援処理は、車両Cから走行履歴情報300bが送信されるたびに実行されるため、時間の経過とともに走行履歴情報30bの蓄積量が増加する。そして、走行履歴情報30bが示す急減速地点が狭い範囲に集中する場合、当該急減速地点は、同一の急減速原因に関して急減速が行われた地点であると推定される。そこで、制御部20は、ステップS105で取得された急減速地点を中心とした予め決められた距離の範囲を定義し、当該範囲に急減速地点が所定数以上存在する場合に、急減速地点が狭い範囲に集中していると見なす。
【0041】
ステップS110において、急減速地点が狭い範囲に集中していると判定されない場合、制御部20は、運転支援処理を終了する。一方、ステップS110において、急減速地点が狭い範囲に集中していると判定された場合、制御部20は、走行履歴解析部21bの処理により、案内対象地点を特定する(ステップS115)。すなわち、制御部20は、狭い範囲に集中している複数の急減速地点に基づいて統計処理によって案内対象地点を特定する。なお、統計処理としては、例えば、複数の急減速地点の重心を案内対象地点とする処理等が挙げられる。
【0042】
次に、制御部20は、車速推移取得部21cの処理により、車速推移を特定する(ステップS120)。本実施形態において、制御部20は、ステップS110において狭い範囲に集中していると見なされた急減速地点の数が統計的に有意な数として予め決められた所定の閾値以上存在する場合に、車速推移を特定する。すなわち、所定の減速度で車両Cを減速させた場合の減速線によって、最も手前に停止可能な急減速地点(着目地点)および初期車速(着目車速)を特定し、当該着目地点より所定のマージンだけ手前の地点に合致するように減速線を移動させて車速推移として取得する。一方、急減速地点の数が所定の閾値未満である場合、制御部20は、車速推移を特定しない。
【0043】
次に、制御部20は、案内部21dの処理により、車速推移が特定できたか否かを判定する(ステップS125)。ステップS125において、車速推移が特定できたと判定された場合、制御部20は、案内部21dの処理により、案内対象地点および車速推移を配信対象として設定する(ステップS130)。すなわち、制御部20は、ステップS115で特定された案内対象地点とステップS120で特定された車速推移を配信対象として設定し、記録媒体30に配信対象として記録する。この状態において、制御部20は、車両Cからの配信要求等に応じて当該配信対象である案内対象地点および車速推移を配信する。
【0044】
ステップS125において、車速推移が特定できたと判定されない場合、制御部20は、案内部21dの処理により、案内対象地点を配信対象として設定する(ステップS135)。すなわち、制御部20は、ステップS115で特定された案内対象地点を配信対象として設定し、記録媒体30に配信対象として記録する。この状態において、制御部20は、車両Cからの配信要求等に応じて当該配信対象である案内対象地点および車速推移を配信する。
【0045】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、急減速地点において初期車速から所定の減速度で車両を減速させた場合に車両が停止するどの地点よりも手前で車両を停止させるための車速推移を取得し、当該車速推移を超える車速の車両に走行の注意を促す限りにおいて、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、ナビゲーション端末100は、車両に固定的に搭載されていても良いし、持ち運び可能なナビゲーション端末100が車両内に持ち込まれて利用される態様であっても良い。また、走行履歴取得部21a、走行履歴解析部21b、車速推移取得部21c、案内部21dの少なくとも一部が上述の実施形態と異なる制御主体で実現されても良い。例えば、各部がナビゲーション端末100に備えられていても良い。さらに、急減速の発生を検出するための構成はブレーキセンサ440に限定されず、例えば、車速センサ420の出力信号やABS制御の作動状態に基づいて検出しても良い。
【0046】
走行履歴取得手段は、複数の車両の走行履歴を取得することができればよく、走行履歴は、車両における急減速の発生と、急減速が発生した地点における車両の車速である初期車速を特定できるように定義されていれば良い。従って、例えば、車両の位置毎の動作(車速、加速度等)を走行履歴とする構成であってもよいし、車両の位置毎の運転操作(急ブレーキ等の急減速操作)の履歴が含まれていても良い。なお、減速度は、車両の進行方向の逆向きに作用する加速度の大きさである。
【0047】
走行履歴解析手段は、同一の急減速原因によって急減速が行われた複数の車両についての走行履歴に基づいて、急減速された地点である急減速地点と当該急減速地点での車両の車速である初期車速を取得することができればよい。急減速は、通常の走行では発生しない偶発的な減速であり、例えば、基準単位(単位距離や単位時間等)あたりの車速変化が所定の変化量以上であるような減速や、基準単位当たりの操作量が閾値以上である運転操作による減速が挙げられる。従って、走行履歴に基づいて、このような急減速の行われた地点を特定し、当該地点における車速の履歴に基づいて初期車速を特定すれば良い。同一の急減速原因によって急減速が行われたか否かの判定は、種々の手法で実施可能である。例えば、所定の距離の範囲内に急減速地点が分布している場合、各急減速が同一の急減速原因によって行われたと推定する構成等を採用可能である。
【0048】
車速推移取得手段は、各急減速地点において初期車速から所定の減速度で車両を減速させた場合に車両が停止するどの地点よりも手前で車両を停止させるための車速推移を取得することができればよい。すなわち、急減速地点において、初期車速および所定の減速度で複数の車両のそれぞれを減速させた場合の推定停止地点のうち、最も進行方向後方に存在する推定停止地点に到達しないような車速推移を特定し、当該車速推移を超える車速であれば推定停止地点に停止させるために過度の減速が必要になると見なすことができればよい。
【0049】
なお、所定の減速度は、当該所定の減速度よりも絶対値が大きい減速度が過度の減速度であると見なすことができればよく、例えば、固定の値(0.4G等)を所定の減速度とする構成を採用可能である。むろん、所定の減速度は、車両毎に異なる値としても良い。例えば、急減速中に車両に作用する減速度である平均減速度や最大限速度等を所定の減速度としても良い。
【0050】
さらに、急減速地点において初期車速から所定の減速度で車両を減速させた場合の停止地点である推定停止地点は、特定されても良いし、推定停止地点が特定されることなく、各推定停止地点のどれよりも手前で車両を停止させるための車速推移が取得されても良い。後者としては、車速推移取得手段が、所定の減速度で車両を減速させた場合に最も手前で車両を停止させることが可能な急減速地点と初期車速との組み合わせを着目地点および着目車速として特定し、着目地点より手前の地点において着目車速から所定の減速度で車両を減速させた場合の地点毎の車速を車速推移として取得する構成を採用可能である。すなわち、少なくとも、所定の減速度で車両を減速させた場合に最も手前で車両を停止させることが可能な着目地点および着目車速が特定されれば良い。着目地点および着目車速が特定されるためには、例えば、所定の減速度での車速の変化が運動方程式等によって特定された状態で、当該車速の変化を示す減速線(地点毎の車速や時間毎の車速)に合致する急減速地点と初期車速との組み合わせであって、推定停止地点が最も手前になる急減速地点と初期車速との組み合わせを、グラフ等によって特定すれば良い。
【0051】
いずれにしても、複数の車両について想定される最も手前の推定停止地点よりも手前で車両を停止させるための車速推移を特定すれば、複数の車両についての履歴のどれよりも小さい減速度で急減速原因まで減速させることが可能なタイミングで案内できるように車速推移を特定することができる。車速推移を特定する際には、最も手前の推定停止地点よりも手前で車両を停止させるようにできればよい。例えば、上述の着目地点より手前の地点において着目車速から所定の減速度で車両を減速させた場合の地点毎の車速を車速推移として取得すればよい。すなわち、着目地点から所定の減速度で車両を減速させた場合の地点毎の車速にマージンを設けることで車速推移を決定することができればよい。当該マージンの量は予め決められていれば良く、例えば、案内タイミング後に案内に応じた運転操作を行うまでの空走距離等とすることが可能である。
【0052】
案内手段は、車速推移取得手段の処理によって取得された車速推移を超える車速で急減速原因に接近する車両に走行の注意を促す案内を行うことができればよい。すなわち、当該車速推移を超える車速で急減速原因の存在地点に接近する車両においては過度の減速が必要になり得ると見なし、当該車両に走行の注意を促す案内を行うことができればよい。
【0053】
さらに、車速推移取得手段が、車両が走行する道路の摩擦係数が小さいほど所定の減速度を小さくするように構成しても良い。すなわち、悪天候等によって道路の摩擦係数が低下している状態においては、摩擦係数が低下していない状態よりも絶対値が大きい減速度が発生しにくくなり、同一の初期車速で減速を開始した場合に必要とされる距離が長くなる。そこで、摩擦係数が小さいほど所定の減速度を小さくするように構成すれば、過度の減速度であると見なす値を小さくすることができ、早期に案内が行われるように構成することができる。
【0054】
例えば、
図3Aにおける所定の減速度である0.4Gを晴天時の場合の減速度とした場合、悪天候時の所定の減速度を0.2Gとする構成を採用可能である。
図3Bは
図3Aと同様の車速推移を示すグラフに0.2Gの場合の車速推移を一点鎖線で追記したグラフを模式的に示す図である。すなわち、制御部20が、0.4Gの減速線を取得する際の運動方程式等において減速度を0.2Gに置換して0.2Gにおける減速線を仮定し、当該減速線が、晴天時の車速推移における推定停止地点(車速が0になる地点:
図3Bに示すP
0)を通るように移動させた場合の車速の変化を悪天候時の車速推移として取得する。
【0055】
このように、制御部20は、摩擦係数に応じた車速推移を取得可能であるため、制御部20が、車両Cの現在地が存在する道路の摩擦係数に応じた車速推移を車両Cに配信することにより、車両Cの現在地が存在する道路の摩擦係数に適したタイミングで案内を行うことが可能である。なお、摩擦係数を推定するための天候等は、例えば、天候情報管理システムにおいて任意の地点の天候情報を管理し、運転支援システム10に送信することで運転支援システム10において特定される構成等を採用可能である。すなわち、運転支援システム10において、制御部20が、車両Cの現在地を特定し、当該現在地の天候を示す天候情報を取得し、天候に応じた摩擦係数の車速推移を取得して車両Cに配信する構成等を採用可能である。
【0056】
なお、摩擦係数が小さいほど所定の減速度を小さくするためには、摩擦係数に応じて所定の減速度が連続的に変化しても良いし、段階的に変化しても良い。また、摩擦係数は推定値であってもよく、天候の悪化度合いに応じて摩擦係数が小さくなるような構成等を採用可能である。この場合、例えば、晴天時と悪天候時(雪、雨等)とで減速度を2段階に変化させる構成や、晴天時と雨天時と降雪時とで減速度を3段階に変化させる構成等を採用可能である。むろん、摩擦係数を変化させる要素としては、天候以外にも種々の要素を想定可能であり、車両Cが走行している道路の素材等であってもよい。
【0057】
さらに、案内手段が、車速推移を超えた車速が所定の値以上である場合に急減速原因に接近する車両に走行の注意を促す案内を行う構成としても良い。すなわち、車速推移は、地点毎の車速として定義されるが、車速の絶対値が小さい場合、車両を停止させることは容易であるため、車速推移を超えた車速の発生が案内されると利用者にとって煩わしい場合もある。そこで、車速推移を超えた車速が所定の値以上である場合に案内すれば、案内が必要な利用者に案内することができる。
【0058】
図3Cは、このような構成例を説明するための図であり、
図3Aと同様の車速推移を実線の曲線で示したグラフである。ここで、所定の値をVaとする。位置毎の車速が一点鎖線のような車両Cにおいて、制御部200は、ナビゲーションプログラム210の処理により、走行過程において車速と車速推移が示す値とを比較している。そして、車両Cが位置Paに到達した段階で制御部200は、車両Cの車速が車速推移を超えたと判定する。さらに、制御部200は、当該車速推移を超えた時点での車速と所定の値Vaとを比較し、車速推移を超えた時点での車速が所定の値Va以上であると判定する。従って、この場合、制御部200は、急減速原因に接近する車両Cの利用者に走行の注意を促す案内を行う。この結果、案内が必要な利用者に案内することができる。
【0059】
また、車速推移を超えた車速が所定の値未満である場合に案内しない構成とすれば、案内の必要性が低い利用者への案内を抑制し、利用者が煩わしいと感じないようにすることが可能である。例えば、位置毎の車速が二点鎖線のような車両Cにおいて、制御部200は、ナビゲーションプログラム210の処理により、走行過程において車速と車速推移が示す値とを比較している。そして、車両Cが位置Pbに到達した段階で制御部200は、車両Cの車速が車速推移を超えたと判定する。さらに、制御部200は、当該車速推移を超えた時点での車速と所定の値Vaとを比較し、車速推移を超えた時点での車速が所定の値Va未満であると判定する。従って、この場合、制御部200は、急減速原因に接近する車両Cの利用者に走行の注意を促す案内を行わない。この結果、案内の必要性が低い利用者への案内を抑制することができる。
【0060】
さらに、本発明のように、急減速地点において初期車速から所定の減速度で車両を減速させた場合に車両が停止するどの地点よりも手前で車両を停止させるための車速推移を取得し、当該車速推移を超える車速の車両に走行の注意を促す手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のようなシステム、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合もあれば、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。例えば、以上のようなシステムを備えた情報管理システムやナビゲーションシステム、方法、プログラムを提供することが可能である。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、装置を制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。