(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
圧縮室が形成されたハウジングと、前記ハウジングに設けられ、前記圧縮室内の冷媒ガスを圧縮する圧縮機構と、前記ハウジングに形成された収容孔と、前記収容孔に開口をもって連通し、圧縮された冷媒ガスを前記収容孔に導出する吐出流路と、前記収容孔に固定されて、前記収容孔内で冷媒ガスを旋回させて潤滑油を遠心分離する分離筒とを備え、
前記吐出流路は、上方に傾斜しながら直線状に延びるように前記ハウジングに形成され、
前記分離筒は、前記収容孔に固定される固定部と、冷媒ガスをその周りで旋回させる小径部と、前記固定部と前記小径部とを接続する接続部とを有し、
前記固定部と前記接続部とが接続する部分を境界縁とし、
前記接続部は、上方に向かって徐々に拡径する接続周回面を有し、
前記境界縁と前記吐出流路の開口縁とを一致させるか、又は前記境界縁が前記吐出流路の開口縁内にあるように、前記分離筒が配置されていることを特徴とする圧縮機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
冷媒ガスから潤滑油を遠心分離する場合、冷媒ガスを分離筒の周りに発生する旋回流に沿って導出するのが油分離効率の面から望ましい。
【0007】
しかしながら、吐出流路の開口の方向によっては、冷媒ガスは、分離筒に衝突した後、乱流を発生することがあり、旋回路内で冷媒ガスが旋回する回数が減少し、油分離効率が低下する恐れがある。
【0008】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、冷媒ガスを旋回させて潤滑油を遠心分離する圧縮機において、吐出流路の構造上の制約にかかわらず、潤滑油の分離効率を向上することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の圧縮機は、圧縮室が形成されたハウジングと、前記ハウジングに設けられ、前記圧縮室内の冷媒ガスを圧縮する圧縮機構と、前記ハウジングに形成された収容孔と、前記収容孔に開口をもって連通し、圧縮された冷媒ガスを前記収容孔に導出する吐出流路と、前記収容孔に固定されて、前記収容孔内で冷媒ガスを旋回させて潤滑油を遠心分離する分離筒とを備え、
前記吐出流路は、上方に傾斜しながら直線状に延びるように前記ハウジングに形成され、
前記分離筒は、前記収容孔に固定される固定部と、冷媒ガスをその周りで旋回させる小径部と、前記固定部と前記小径部とを接続する接続部とを有し、
前記固定部と前記接続部とが接続する部分を境界縁とし、
前記接続部は、上方に向かって徐々に拡径する接続周回面を有し、
前記境界縁と前記吐出流路の開口縁とを一致させるか、又は前記境界縁が前記吐出流路の開口縁内にあるように、前記分離筒が配置されていることを特徴とする。
【0010】
潤滑油を遠心分離する分離筒を有する圧縮機では、圧縮された冷媒ガスは、収容孔に開口をもって連通する吐出流路を経て、分離筒の周りで旋回する。ここで、発明者らの確認によれば、分離筒が固定部と小径部と接続部とを有する場合、固定部と接続部とが接続する部分である境界縁よりも吐出流路の開口縁が下方に位置するように、分離筒を配置してしまうと、吐出流路から導出した冷媒ガスが収容孔内で乱流を生じ易い。このため、冷媒ガスが分離筒周りで旋回し難く、潤滑油の分離効率が低下する。
【0011】
これに対し、本発明の圧縮機では、境界縁と吐出流路の開口縁とを一致させるか、又は境界縁が吐出流路の開口縁内にあるように、分離筒を配置するため、吐出流路から導出した冷媒ガスが収容孔内で乱流を生じ難い。このため、冷媒ガスが分離筒周りで旋回し易く、潤滑油の分離効率を向上させることができる。
【0012】
したがって、本発明の圧縮機では、吐出流路の構造上の制約にかかわらず、潤滑油の分離効率を向上させることができる。
【0013】
本発明の圧縮機は以下のベーン型圧縮機に具体化可能である。すなわち、ハウジングはシリンダ室を形成し得る。圧縮機構は、ハウジングに回転軸心周りで回転可能に設けられた駆動軸と、シリンダ室内で駆動軸と同期回転可能に設けられ、複数個のベーン溝が形成されたロータと、各ベーン溝に各々出没可能に設けられる複数個のベーンとを備え得る。また、ハウジングは、第1区画壁及び第2区画壁を有し得る。第1区画壁の後面である第1面と第2区画壁の前面である第2面との間にシリンダ室が形成され得る。圧縮室は、シリンダ室の内面、ロータの外面、第1面、第2面及び各ベーンによって形成され得る。第2区画壁に吐出流路が貫設され得る。
【0014】
この場合、本発明の圧縮機をベーン型圧縮機に具体化できる。このベーン型圧縮機は、ハウジングをフロントハウジング、シリンダブロック、リヤハウジング、フロントサイドプレート、リヤサイドプレート等で必ずしも構成する必要がない。フロントハウジング、シリンダブロック及びフロントサイドプレートを一体化する等、これらの一部を一体化させることが可能である。
【0015】
第2区画壁に収容孔が形成されていることが好ましい。この場合、このベーン型圧縮機は、圧縮室を区画する第2区画壁と、分離筒を収容する収容孔を形成する壁部とが兼用されることになり、従来のものよりも小型化され得る。また、このベーン型圧縮機は、部品点数の削減により、製造コストの低廉化を実現できる。
【0016】
特に、第2区画壁が収容孔を形成しておれば、吐出流路が形成される位置が制約を受け、油分離に適した角度、例えば、旋回路内の旋回流に沿う方向で冷媒ガスを導出するように吐出流路を形成するのが困難となる場合がある。この場合、吐出流路の開口から上方の余剰空間に向かう冷媒の流れが発生し、乱流を発生させる恐れがある。しかしながら、境界縁と吐出流路の開口縁を一致させるか、又は境界縁が吐出流路の開口縁内にあるように、分離筒を配置することにより、乱流の発生を防ぐことができ、油分離効率を低下させることがない。このため、本発明はこの構成を適用する場合に適している。
【発明の効果】
【0017】
本発明の圧縮機では、吐出流路の構造上の制約にかかわらず、潤滑油の分離効率を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した実施例1〜5を比較例とともに図面を参照しつつ説明する。
【0020】
(実施例1)
実施例1の圧縮機はベーン型圧縮機である。この圧縮機は、
図1に示すように、フロントハウジング1と、リヤサイドプレート3と、リヤハウジング5とを備えている。フロントハウジング1、リヤサイドプレート3及びリヤハウジング5がハウジング6に相当する。
【0021】
フロントハウジング1は、筒状のシリンダ形成部7aと、シリンダ形成部7aの前端でシリンダ形成部7aと一体に設けられた第1区画壁2とを有している。シリンダ形成部7a内には、シリンダ室7が後方から前方に向けて凹設されている。シリンダ室7は、
図2及び
図3に示すように、駆動軸8の回転軸心Oに直交する断面が楕円形状である柱状をなしている。
図1に示すように、第1区画壁2には前方に突出するボス1aが形成されている。ボス1a内には駆動軸8の前部を挿通させる軸孔2bが形成されている。第1区画壁2の後面が回転軸心Oと直交する第1面2aとされている。
【0022】
また、シリンダ形成部7aの外周面には環状の吸入室9が吸入領域として凹設されている。吸入室9は、
図2に示すように、2個の吸入ポート9cによってシリンダ室7に連通している。
【0023】
図1に示すように、リヤサイドプレート3は、フロントハウジング1のシリンダ形成部7aの後端と当接する第2区画壁3aと、膨出部3bとを有している。第2区画壁3aの前面が回転軸心Oと直交する第2面4aとされている。第2区画壁3aには、駆動軸8の後端部8aを収納する軸孔4bが前方から後方に向けて凹設されている。
【0024】
リヤハウジング5は、フロントハウジング1のシリンダ形成部7aとリヤサイドプレート3とを収容している。リヤハウジング5には取付足5aが形成されている。取付足5aは、車両の図示しないエンジン等に取り付けられる。リヤハウジング5とリヤサイドプレート3との間には吐出室10が形成されている。第2区画壁3aはシリンダ室7と吐出室10とを区画している。
【0025】
リヤハウジング5には、吸入室9を外部に開く流入口9aと、吐出室10の上部を外部に開く流出口10aとが形成されている。シリンダ形成部7aの外周面には、吸入室9の前後にOリング13a、13bが装着されている。Oリング13aは吸入室9の前方でリヤハウジング5とフロントハウジング1との間を封止している。Oリング13bは吸入室9の後方でリヤハウジング5とフロントハウジング1との間を封止している。また、第2区画壁3aの外周面にはOリング13cが装着されている。Oリング13cは第2区画壁3aとリヤハウジング5との間を封止している。
【0026】
フロントハウジング1の軸孔2b内には軸封装置11及び滑り軸受12aが設けられ、リヤサイドプレート3の軸孔4b内には滑り軸受12bが設けられている。これら軸封装置11及び滑り軸受12a、12bにより、駆動軸8が回転軸心O周りで回転可能に設けられている。第1区画壁2には、吸入室9と軸封装置11とを連通させる連通路9bが形成されている。
【0027】
図2及び
図3に示すように、駆動軸8にはロータ15が圧入されている。ロータ15は、回転軸心Oに直交する断面が円形状である柱状をなしており、シリンダ室7内で駆動軸8と同期回転可能に設けられている。ロータ15の外周面には、5個のベーン溝15aが回転軸心Oに向かってやや傾斜しながら凹設されている。各ベーン溝15aには各ベーン17が出没可能に収納されている。各ベーン17の底面と各ベーン溝15aとの間は背圧室15dとされている。これら駆動軸8、ロータ15及び各ベーン17により圧縮機構20が構成されている。背圧室15dには図示しない背圧供給路によって吐出室10内の潤滑油が供給されるようになっている。
【0028】
隣り合う2枚のベーン17、ロータ15の外周面、シリンダ室7の内周面、第1面2a及び第2面4aによって5個の圧縮室19が形成されている。圧縮室19は、駆動軸8の回転によって容積を変更し、冷媒ガスの吸入行程、圧縮行程及び吐出行程を行う。吸入行程にある圧縮室19と吸入室9とは、吸入ポート9cによって連通するようになっている。
【0029】
図3に示すように、フロントハウジング1のシリンダ形成部7aとリヤハウジング5との間には第1、2吐出空間14a、14bが形成されている。吐出行程にある圧縮室19と第1、2吐出空間14a、14bとは、各吐出ポート10cによって連通するようになっている。第1、2吐出空間14a、14b内には、吐出ポート10cを閉鎖する吐出弁10dと、吐出弁10dのリフト量を規制するリテーナ10eとが設けられている。
【0030】
図1及び
図4に示すように、リヤサイドプレート3の中央には、一定の厚みを持って吐出室10側に膨出する膨出部3bが形成されている。膨出部3b内には上下に円筒状に延びて分離筒23を収容する収容孔21が形成されている。収容孔21は油分離室として機能する。収容孔21の上部が圧入口21aとされている。圧入口21aには分離筒23が圧入されている。収容孔21は下端の連通孔21cによって吐出室10と連通している。
【0031】
分離筒23は大径部23aとテーパ部23bと小径部23cとからなる。大径部23aは、圧入口21aとほぼ同径をなす円筒状をなしている。テーパ部23bは、大径部23aと同軸であり、大径部23aと連続する接続部を構成している。テーパ部23bはテーパ状の筒状をなしている。小径部23cは、テーパ部23bと接続し、大径部23a及びテーパ部23bと同軸である。小径部23cは、大径部23aより小径の円筒状をなしている。
図6及び
図7に示すように、大径部23aが上端位置P1から下端位置P2までの圧入代で圧入口21aに圧入固定されており、固定部を構成している。大径部23aの下端位置P2は、テーパ部23bの上端位置に相当する。大径部23aとテーパ部23bが下端位置P2で接続する部分を境界縁としている。
【0032】
収容孔21の内周面は、下端位置P2より下方が円筒状をなす外側周回面31aとされている。他方、分離筒23における小径部23cの外周面は内側周回面31bとされている。内側周回面31bは、外側周回面31aの内側に位置し、外側周回面31aと同軸の円筒状をなしている。分離筒23におけるテーパ部23bの外周面は接続周回面31cとされている。接続周回面31cは、内側周回面31bの上端から連続して上方に向かって徐々に拡径して外側周回面31aに接続している。これら外側周回面31a、内側周回面31b及び接続周回面31cが旋回路31を形成している。大径部23aの上端が排出口23dである。排出口23dは、
図1及び
図4に示すように、吐出室10の上部に連通し、流出口10aに対面している。
【0033】
第1、2吐出流路25a、25b、収容孔21、分離筒23及び旋回路31によって遠心分離式のセパレータ30が構成されている。吐出領域は、第1、2吐出空間14a、14bと、第1、2吐出流路25a、25bと、旋回路31と、吐出室10とを有している。
【0034】
リヤサイドプレート3には、第1吐出空間14a内の冷媒ガスを導出する第1吐出流路25aと、第2吐出空間14b内の冷媒ガスを導出する第2吐出流路25bとが形成されている。第1吐出流路25aは、第1吐出空間14aからやや上方に傾斜しながら直線状に旋回路31まで延びている。第2吐出流路25bも、第2吐出空間14bからやや上方に傾斜しながら直線状に旋回路31まで延びている。第1吐出流路25aと第2吐出流路25bとは、
図5に示すように、旋回路31周りで90°程度ずれた位置において、それぞれ旋回路31に接線方向で接続されている。
【0035】
図6及び
図7に示すように、第1、2吐出流路25a、25bが収容孔21に開く開口の縁を開口縁26a、26bとすると、開口縁26a、26bの上端T1、T2は、接続周回面31cの上縁、すなわち下端位置P2と一致する。
【0036】
図示はしないが、流出口10aは配管によって凝縮器に接続され、凝縮器は配管によって膨張弁に接続され、膨張弁は配管によって蒸発器に接続され、蒸発器は配管によって流入口9aに接続されている。凝縮器、膨張弁及び蒸発器が外部の冷凍回路を構成している。実施例1のベーン型圧縮機を含む冷凍回路は車両用空調装置を構成している。
【0037】
実施例1のベーン型圧縮機では、エンジン等によって駆動軸8が駆動されると、ロータ15が駆動軸8と同期回転し、各圧縮室19が容積変化を生じる。このため、蒸発器を経た冷媒ガスは、流入口9aから吸入室9に吸入され、吸入ポート9cを経て各圧縮室19に吸入される。そして、各圧縮室19で圧縮された冷媒ガスは吐出ポート10cを経て第1、2吐出空間14a、14bに吐出され、第1、2吐出流路25a、25bから旋回路31に導出される。冷媒ガスは、外側周回面31aと内側周回面31bとの間で旋回して潤滑油を遠心分離する。分離された潤滑油は、油分離室としての収容孔21から連通孔21cを経て吐出室10の下方に貯留され、潤滑が必要な種々の箇所に供給される。冷媒ガスは、分離筒23内を上昇し、排出口23dから流出口10aを経て凝縮器に向けて吐出される。
【0038】
この間、このベーン型圧縮機では、第1、2吐出流路25a、25bの開口縁26a、26bの上端T1、T2が大径部23aとテーパ部23bとの境界縁が形成される下端位置P2と一致するため、第1、2吐出流路25a、25bから導出した冷媒ガスが旋回路31内で乱流を生じ難い。このため、このベーン型圧縮機は、冷媒ガスが旋回路31を旋回し易く、潤滑油を遠心分離し易い。
【0039】
したがって、このベーン型圧縮機では、吐出通路の構造上の制約にかかわらず、潤滑油の分離効率を向上させることができる。
【0040】
また、このベーン型圧縮機では、リヤサイドプレート3に圧入口21aが形成され、圧入口21aに分離筒23が圧入されているため、分離筒23の圧入代を規定することにより、上記作用効果を奏することができる。
【0041】
さらに、このベーン型圧縮機では、圧縮室19を区画するリヤサイドプレート3は、分離筒23を収容する収容孔21の外側周回面31aを形成している。このため、このベーン型圧縮機は、従来のものよりも小型化され得る。また、このベーン型圧縮機は、部品点数の削減により、製造コストの低廉化を実現できる。
【0042】
特に、このベーン型圧縮機では、リヤサイドプレート3が収容孔21を形成しておれば、
第1、2吐出流路25a、25bの形成される位置が制約され、分離筒23に対して斜め方向に冷媒ガスを導出している。しかしながら、このベーン型圧縮機では、
第1、2吐出流路25a、25bの開口縁26a、26bの上端T1、T2を大径部23aとテーパ部23bとの境界縁が形成される下端位置P2と一致させるように、分離筒23を収容孔21に配置しているため、
第1、2吐出流路25a、25bの上方に余剰空間が形成されることがない。このため、リヤサイドプレート3とセパレータ30の一部を一体構造とした上で、冷媒ガスの乱流の発生を防ぐことができる。
【0043】
(実施例2)
実施例2のベーン型圧縮機は、
図8に示すように、大径部23aが上端位置P1から下端位置P2までの圧入代で圧入口21aに圧入されている。第1、2吐出流路25a、25bは、実施例1より径を大きくされている。そして、第1、2吐出流路25a、25bは、収容孔21に開いており、第1
、2吐出流路25a、25bの開口縁26a、26bの上端T1、T2が接続周回面31cの上端、すなわち大径部23aの下端位置P2より上方に位置している。つまり、大径部23aと接続部23bとの境界縁が
第1、2吐出流路25a、25bの開口縁内にあるように、分離筒23が配置されている。このため、開口縁26a、26bの上部が大径部23aによって隠蔽されているが、開口縁26a、26bは実施例1と同様の連通面積で旋回路31と連通している。他の構成は実施例1と同様である。
【0044】
このベーン型圧縮機においても、第1、2吐出流路25a、25bから導出した冷媒ガスが旋回路31内で乱流を生じ難いため、実施例1と同様の作用効果を生じる。
【0045】
また、このベーン型圧縮機は、第1吐出流路25a、25bの径を大きくして加工し易くしているとともに、開口縁26a、26bの上端T1、T2を下端位置P2と等しくするように管理する手間が省けることから、実施例1よりも製造が容易になる。
【0046】
(比較例)
比較例のベーン型圧縮機は、
図9に示すように、大径部23aが上端位置P1から下端位置P2までの圧入代で圧入口21aに圧入されている。そして、第1、2吐出流路25a、25bは収容孔21に開いており、第1、2吐出流路25a,25bの開口縁26a、26bの上端T1、T2が接続周回面31cの上端、すなわち下端位置P2より下方に位置している。他の構成は実施例1と同様である。
【0047】
このベーン型圧縮機は、開口縁26a、26bの上端T1、T2を下端位置P2と等しくするように管理する手間が省けることから、実施例1よりも製造が容易になる。
【0048】
しかしながら、このベーン型圧縮機では、上端T1、T2と下端位置P2との間に余剰の空間Sが生じ、この空間S内の冷媒ガスの流れが旋回流とは異なる方向の流れとなるため、第1、2吐出流路25a、25bから導出した冷媒ガスが旋回路31内で乱流を生じ易い。このため、この場合には、冷媒ガスが旋回路31を旋回する回数が減少し、潤滑油の分離能力が低下する。
【0049】
(実施例3)
実施例3のベーン型圧縮機は、
図10に示すように、分離筒23が大径部23aと湾曲部23eと小径部23cとからなる。湾曲部23eは、大径部23aから小径部23cまで湾曲しつつ小径となる筒状をなし、大径部23aと小径部23cとを接続する接続部を形成している。他の構成は実施例1、2と同様である。
【0050】
このベーン型圧縮機においても、実施例1、2と同様の作用効果を奏することができる。
【0051】
(実施例4)
実施例4のベーン型圧縮機は、
図11に示すように、分離筒33が大径部33aとテーパ部33bとからなる。分離筒33におけるテーパ部33bの外周面は内側周回面31bかつ接続周回面31cとされ、小径部及び接続部を形成している。内側周回面31bかつ接続周回面31cは、外側周回面31aの内側に位置し、外側周回面31aと同軸のテーパ状をなしている。他の構成は実施例1、2と同様である。
【0052】
このベーン型圧縮機においても、実施例1、2と同様の作用効果を奏することができる。
【0053】
(実施例5)
実施例5のベーン型圧縮機は、
図12に示すように、分離筒43が大径部43aと接続部43bと小径部43cとからなる。接続部43bは、大径部43a側ではほぼ直角をなして大径部43aに接続し、小径部43c側では緩やかに小径部43cに接続している。他の構成は実施例1、2と同様である。
【0054】
このベーン型圧縮機においても、実施例1、2と同様の作用効果を奏することができる。
【0055】
以上において、本発明を実施例1〜5に即して説明したが、本発明は上記実施例1〜5に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0056】
本発明の圧縮機は、ベーン型圧縮機ばかりでなく、スクロール型圧縮機、斜板式圧縮機等に具体化可能である。
【0057】
また、本発明の圧縮機では、ハウジングをフロントハウジング、シリンダブロック、リヤハウジング、フロントサイドプレート、リヤサイドプレート等で構成してもよい。
【0058】
内側周回面は、円筒状である必要はなく、テーパ状になっていてもよい。