(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
互いに対向する2つの主面と、互いに対向する2つの端面と、互いに対向する2つの側面と、を有するセラミック素体と、前記セラミック素体の前記端面を覆うように形成された外部電極と、を有する電子部品本体と、
Snを主成分とするはんだによって前記外部電極に接続されている第1および第2の金属端子と、を有するセラミック電子部品であって、
前記外部電極の表層部分には、少なくともNiめっき膜が形成されており、
前記第1および第2の金属端子の表層部分には、少なくともNiめっき膜が形成されており、
前記端面の中央部における前記外部電極と前記第1および第2の金属端子との接合界面における少なくとも一部には、Ni−Snを含む合金層が形成されていることを特徴とする、セラミック電子部品。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(セラミック電子部品)
この発明にかかるセラミック電子部品の一実施の形態の一例について説明する。
図1は、セラミック電子部品の一例を示す外観斜視図であり、
図2は、この発明にかかるセラミック電子部品の一例を示す側面図であり、
図3は、この発明にかかるセラミック電子部品の一例を示す上面図である。
図4は、
図3のA−A線における断面を示す断面図解図を示し、
図5は、
図2のB−B線における断面図解図である。この実施の形態にかかる電子部品本体は、積層セラミックコンデンサを例として示す。
【0015】
この実施の形態にかかるセラミック電子部品1は、電子部品本体10と第1および第2の金属端子12,13とにより構成される。電子部品本体10と第1および第2の金属端子12,13とは、はんだ14を介して接続される。また、電子部品本体10は、セラミック素体16(積層体)と、セラミック素体16の表面に形成される第1および第2の外部電極18a,18bとから構成される。
【0016】
セラミック素体16は、複数の積層されたセラミック層20a,20bから構成される。そして、セラミック素体16は、直方体状に形成され、長さ方向および幅方向に沿って延びる第1主面22aおよび第2主面22bと、長さ方向および高さ方向に沿って延びる第1側面24aおよび第2側面24bと、幅方向および高さ方向に沿って延びる第1端面26aおよび第2端面26bとを有する。第1主面22aおよび第2主面22bは、セラミック電子部品1が実装される面と平行な面をさす。なお、セラミック素体16は、角部28および稜部30に丸みがつけられていることが好ましい。
【0017】
セラミック層20a,20bとしては、たとえば、BaTiO
3、CaTiO
3、SrTiO
3、CaZrO
3などの主成分からなる誘電体セラミックが用いられる。また、これらの主成分にMn化合物、Mg化合物、Si化合物、Co化合物、Ni化合物、希土類化合物などの副成分を添加したものを用いてもよい。そのほか、セラミック層20a,20bとしては、PZT系セラミックなどの圧電体セラミック、スピネル系セラミックなどの半導体セラミック、あるいは、磁性体セラミックなどが用いられる。セラミック層20a,20bの厚みは0.5μm以上10μm以下であることが好ましい。
【0018】
なお、この実施の形態にかかるセラミック素体16については、誘電体セラミックを用いるので、コンデンサとして機能する。
【0019】
セラミック素体16は、複数のセラミック層20aおよびセラミック層20bに挟まれるように複数の第1の内部電極32aおよび第2の内部電極32bを有する。第1および第2の内部電極32a,32bは、セラミック層20a,20bを挟んで対向しており、対向部分により電気特性(例えば、静電容量など)が発生する。なお、複数のセラミック層20aおよびセラミック層20bに挟まれるように複数の第1の内部電極32aおよび第2の内部電極32bは、実装面に対して平行になるように配置されていてもよく、垂直になるように配置されていてもよい。第1および第2の内部電極32a,32bの材料としては、例えば、Ni、Cu、Ag、Pd、Ag−Pd合金、Auなどを用いることができる。第1および第2の内部電極32a,32bの厚みは、0.3μm以上2.0μm以下である。なお、電子部品本体10が積層タイプでない場合には、第1および第2の内部電極32a,32bは形成されない。
【0020】
第1の内部電極32aは、対向部34aと引出し部36aとを有する。対向部34aは、第2の内部電極32bと対向する。引出し部36aは、対向部34aからセラミック素体16の第1端面26aに引出される。そして、第1の内部電極32aの引出し部36aの端部がセラミック素体16の第1端面26aに延びて露出するように形成される。
【0021】
また、第2の内部電極32bは、第1の内部電極32aと同様に、第1の内部電極32aと対向する対向部34bと、対向部34bからセラミック素体16の第2端面26bに引出された引出し部36bとを有する。第2の内部電極32bの引出し部36bの端部がセラミック素体16の第2端面26bに延びて露出するように形成される。
【0022】
セラミック素体16の第1端面26aには、第1の外部電極18aが第1の内部電極32aに電気的に接続され、第1端面26a及び第1の内部電極32aを覆うように形成される。同様に、セラミック素体16の第2端面26bには、第2の外部電極18bが第2の内部電極32bに電気的に接続され、第2端面26b及び第2の内部電極32bを覆うように形成される。
【0023】
第1の外部電極18aは、下地層38aと下地層38aの表面に形成されるめっき層40aとを有する。また、第2の外部電極18bは、下地層38bと下地層38bの表面に形成されるめっき層40bとを有する。
【0024】
下地層38a,38bの材料には、たとえば、Cu、Ni、Ag、Pd、Ag−Pd合金、Au等を用いることができる。このうち、例えば、Cu、Ni等の卑金属を用いることが好ましい。下地層38a,38bは、第1および第2の内部電極32a,32bと同時焼成したコファイアによるものでもよく、導電性ペーストを塗布して焼き付けたポストファイアによるものでもよい。また、直接めっきにより形成されていてもよく、熱硬化性樹脂を含む導電性樹脂を硬化させることにより形成されていてもよい。下地層38a,38bの厚みは、最も厚い部分において、10μm以上50μm以下であることが好ましい。
【0025】
一方、めっき層40a,40bは、2以上のめっき膜を有し、たとえば、下層めっき膜42a,42bと上層めっき膜44a,44bとを有する。
【0026】
下層めっき膜42a,42bは、下地層38a,38bの上に形成されており、上層めっき44a,44bは、下層めっき膜42a,42bの上に形成されている。下層めっき膜42a,42bの材料は、Niめっきが用いられる。Niめっきを形成することにより、はんだ食われを防止することができ、バリア層として機能する。上層めっき膜44a,44bの材料は、Snめっきが用いられる。Snめっきを形成することにより、はんだ濡れ性を向上することが可能になり、第1および第2の金属端子12,13との接合性が向上する。下層めっき膜42a,42bおよび上層めっき膜44a,44bのそれぞれの厚みは、1μm以上10μm以下であることが好ましい。なお、上層めっき膜44a,44bは、必ずしも形成されていなくてもよい。
【0027】
第1および第2の金属端子12,13は、セラミック電子部品1を実装基板に実装するために設けられる。第1および第2の金属端子12,13には、例えば、板状のリードフレームが用いられる。この板状のリードフレームにより形成される第1の金属端子12は、第1の外部電極18aと接続される第1主面48、第1主面48と対向する第2主面50および第1主面48と第2主面50との間の厚みを形成する周囲面52を有する。また、この板状のリードフレームにより形成される第2の金属端子13は、第2の外部電極18bと接続される第1主面48、第1主面48と対向する第2主面50および第1主面48と第2主面50との間の厚みを形成する周囲面52を有する。そして、この板状のリードフレームにより形成される第1および第2の金属端子12,13は、断面の形状がL字形状に形成されている。このように、第1および第2の金属端子12,13の断面の形状がL字形状に形成されると、セラミック電子部品1を実装基板に実装したとき、実装基板のたわみに対する耐性を向上させることができる。
【0028】
第1および第2の金属端子12,13は、たとえば、矩形板状の端子接合部54と、端子接合部54から実装面方向に延びる延長部56と、延長部56から第1端面26aおよび第2端面26bを結んだ方向に延びる実装部58により構成される。
【0029】
第1の金属端子12の端子接合部54は、電子部品本体10の第1端面26a側に位置して接続される部分である。また、第2の金属端子13の端子接合部54は、電子部品本体10の第2端面26b側に位置して接続される部分である。第1の金属端子12の端子接合部54は、たとえば電子部品本体10の第1の外部電極18aの幅と同等の大きさの矩形板状に形成され、第1の金属端子12の第1主面48側が第1の外部電極18aにはんだ14で接続される。また、第2の金属端子13の端子接合部54は、たとえば電子部品本体10の第2の外部電極18bの幅と同等の大きさの矩形板状に形成され、第2の金属端子13の第1主面48側が第2の外部電極18bにはんだ14で接続される。
【0030】
第1および第2の金属端子12,13の延長部56は、電子部品本体10を実装する実装基板から浮かせるために設けられ、実装基板に接するまでの部分である。第1および第2の金属端子12,13の延長部56は、たとえば、長方形板状をしており、端子接合部54から実装面方向にセラミック素体16の第2主面22bと直交する高さ方向に延び、端子接合部54と一平面状に形成されている。
【0031】
第1の金属端子12の実装部58は、第1の金属端子12の延長部56の端部から第2主面22bに平行する長さ方向に延びて、実装基板に接するように折り曲げられて形成される。なお、実装部58の折り曲げられる方向は、電子部品本体10側に曲げられている。また、第2の金属端子13の実装部58は、第2の金属端子13の延長部56の端部から第2主面22bに平行する長さ方向に延びて、実装基板に接するように折り曲げられて形成される。なお、実装部58の折り曲げられる方向は、電子部品本体10側に曲げられている。
【0032】
第1および第2の金属端子12,13の実装部58の長さは、セラミック素体16の第2主面22b(実装面側)に形成される第1および第2の外部電極18a,18bの長さ方向の長さよりも長く形成されていてもよい。これによって、セラミック電子部品1を実装する際において、セラミック電子部品1を下方からカメラで画像認識して部品の位置を検出する場合、電子部品本体10の第1および第2の外部電極18a,18bを第1および第2の金属端子12,13として誤認識することを防止することができ、検出ミスを防止することができる。
【0033】
第1および第2の金属端子12,13の実装部58の長さは、第1および第2の金属端子12,13の延長部56の長さよりも長く形成されていてもよい。また、第1および第2の金属端子12,13の延長部56と第1および第2の金属端子12,13の実装部58とが交わる角部は、丸みがつけられていてもよい。
【0034】
第1および第2の金属端子12,13は、端子本体60と端子本体60の表面に形成されるめっき膜62とを有する。
【0035】
端子本体60は、Ni、Fe、Cu、Ag、Crまたはこれらの金属のうちの一種以上の金属を主成分として含む合金からなる。端子本体60は、Ni、Fe、Crまたはこれらの金属のうちの一種以上の金属を主成分として含む合金からなることが好ましい。具体的には、たとえば、端子本体60の母材の金属をFe−42Ni合金やFe−18Cr合金とするのが好ましい。端子本体60の厚みは、0.05mm以上0.5mm以下程度であることが好ましい。端子本体60を、高融点のNi、Fe、Crまたはこれらの金属のうちの一種以上の金属を主成分として含む合金により形成することにより、第1および第2の外部電極18a,18bの耐熱性を向上させることができる。
【0036】
一方、めっき膜62は、2以上のめっき膜を有し、たとえば、下層めっき膜64と上層めっき膜66とを有する。
【0037】
下層めっき膜64は、端子本体60の上に形成されており、上層めっき膜66は、下層めっき膜64の上に形成されている。下層めっき膜64は、Niめっきからなる。下層めっき膜64の厚みは0.2μm以上5.0μm以下程度であることが好ましい。
【0038】
上層めっき膜66は、Snめっきからなる。上層めっき膜66をSnまたはSnを主成分として含む合金により形成することにより、第1および第2の金属端子12,13と第1および第2の外部電極18a,18bとのはんだ付き性を向上させることができる。上層めっき膜66の厚みは、1.0μm以上5.0μm以下程度であることが好ましい。なお、上層めっき膜66は、必ずしも形成されていなくてもよい。
【0039】
はんだ14は、第1の外部電極18aと第1の金属端子12の端子接合部54とを接合するために用いられる。また、はんだ14は、第2の外部電極18bと第2の金属端子13の端子接合部54とを接続するために用いられる。はんだ14には、Snを主成分とするはんだが用いられ、たとえば、Sn−Sb系、Sn−Ag−Cu系、Sn−Cu系、Sn−Bi系などのLFはんだを用いることができる。特に、Sn−Sb系のはんだの場合は、Sbの含有率が5%以上15%以下程度であることが好ましい。
【0040】
上述したように、第1および第2の外部電極18a,18bは、はんだ14によって、第1および第2の金属端子12,13が接続されている。そして、第1および第2の外部電極18a,18bの端面側の中央部における第1および第2の外部電極18a,18bと第1および第2の金属端子12,13との接合界面の一部には、第1および第2の外部電極18a,18b側の下層めっき膜42a,42bおよび上層めっき膜44a,44b、はんだ14、ならびに第1および第2の金属端子12,13側の下層めっき膜64および上層めっき膜66による、Ni−Snを含む合金層46が配置されている。
【0041】
具体的には、
図4、
図5に示すように、第1および第2の外部電極18a,18bと第1および第2の金属端子12,13、はんだ14からなる接合部の中央部にのみに、第1および第2の外部電極18a,18b側の下層めっき膜42a,42bおよび上層めっき膜44a,44b、はんだ14、ならびに第1および第2の金属端子12,13側の下層めっき膜64および上層めっき膜66による、Ni−Snを含む合金層46が配置されている。なお、合金層46の周囲には、はんだ14が配置される。この合金層46は、第1および第2の金属端子12,13を第1および第2の外部電極18a,18bに接合する際にはんだコテあるいはヒーター治具を押圧しながら加熱される部分に形成される。
【0042】
なお、接合界面とは、第1および第2の外部電極18a,18bと第1および第2の金属端子12,13とがはんだ14により接合される接合面をさす。また、合金層46とは、エネルギー分散型X線分析(EDX分析)において、第1および第2の外部電極18a,18bと第1および第2の金属端子12,13との接合界面にNiとSnの双方が検出され得るものである。
【0043】
Ni−Snを含む合金層46におけるNiの比率は13%以上であることが好ましい。これにより、より効果的に電子部品本体10に第1および第2の金属端子12,13が取り付けられたセラミック電子部品1において、そのセラミック電子部品1を実装基板にリフロー処理により実装する際に、第1および第2の金属端子12,13から電子部品本体10が脱落することを防止しうるセラミック電子部品1が得られる。
【0044】
また、合金層46におけるNiの比率の測定方法は、以下のように測定することができる。
まず、セラミック電子部品1の側面に沿って、セラミック電子部品1の中央(セラミック電子部品1の幅方向における長さの1/2)まで断面研磨し、断面を露出させる。続いて、走査型電子顕微鏡(SEM)に付帯されたエネルギー分散型X線分析(EDX分析)を用いて、露出させた断面における第1および第2の外部電極18a,18bと第1および第2の金属端子12,13との接合界面の中央部において、Cr、Fe、Ni、Cu、Snの元素の定量分析を行い、Ni/(Ni+Sn)によりNiの比率を算出する。
【0045】
図6は、この発明にかかるセラミック電子部品の断面を示すSEM画像である。
図6に示すように、第1および第2の外部電極18a,18bと第1および第2の金属端子12,13との接合界面には、第1および第2の外部電極18a,18b側の下層めっき膜42a,42bおよび上層めっき膜44a,44b、はんだ14、ならびに第1および第2の金属端子12,13側の下層めっき膜64および上層めっき膜66による、Ni−Snを含む合金層46が配置されている。
【0046】
合金層46の厚みは、0.2μm以上4.0μm以下が好ましい。これにより、リフロー処理時におけるチップの脱落を防止することができる。なお、合金層46を4.0μmよりも厚く形成する場合は、加熱時の総熱量が大きくなるため、第1および第2の金属端子12,13の実装部58まで熱が伝わり、大気中の高温放置になることから、第1および第2の金属端子12,13表面のめっき膜62が劣化し、実装基板にセラミック電子部品1の実装時のはんだ付性が困難になる場合がある。
【0047】
また、第1および第2の金属端子12,13の端子本体60の材料の金属および第1および第2の外部電極18a,18bの下地層38a,38bの金属は合金層46には拡散していないことが好ましい。すなわち、端子本体60の金属および第1および第2の外部電極18a,18bの下地層38a,38bの金属を合金層46に拡散させるためには、非常に大きな総熱量が必要となり、過剰な拡散は、第1および第2の外部電極18a,18bに微小なボイドやクラックが生成する危険性がある。特に、第1および第2の外部電極18a,18bの下地層38a,38bの主成分がCuであり、はんだ14の主成分がSnの場合、Cuが必要以上にSnに拡散(溶け込む)ことで、一般的には銅食われという不具合を起こす危険性が高まる。よって、本発明では、第1および第2の金属端子12,13の端子本体60の材料の金属および第1および第2の外部電極18a,18bの下地層38a,38bの金属を合金層46に拡散させることなく、接合部分の強度と第1および第2の外部電極18a,18bの強度の両立を図っている。また、同様に、第1および第2の金属端子12,13の上層めっき膜66、第1および第2の外部電極18a,18bの上層めっき膜44a,44b、およびはんだ14の金属は、第1および第2の金属端子12,13の端子本体60の金属には拡散していないことが好ましい。
【0048】
(セラミック電子部品の製造方法)
次に、以上の構成からなるセラミック電子部品の製造方法の一実施の形態について、セラミック電子部品1を例にして説明する。
【0049】
まず、セラミックグリーンシート、第1および第2の内部電極32a,32bを形成するための内部電極用導電性ペーストおよび第1および第2の外部電極18a,18bを形成するための外部電極用導電性ペーストが準備される。なお、セラミックグリーンシート、内部電極用導電性ペーストおよび外部電極用導電性ペーストには、有機バインダおよび溶剤が含まれるが、公知の有機バインダや有機溶剤を用いることができる。
【0050】
そして、セラミックグリーンシート上に、例えば、所定のパターンで内部電極用導電性ペーストを印刷し、セラミックグリーンシートには、内部電極のパターンが形成される。なお、内部電極用導電性ペーストは、スクリーン印刷法などの公知の方法により印刷することができる。
【0051】
次に、内部電極パターンが印刷されていない外層用セラミックグリーンシートが所定枚数積層され、その上に、内部電極パターンが印刷されたセラミックグリーンシートが順次積層され、その上に、外層用セラミックグリーンシートが所定枚数積層され、マザー積層体が作製される。必要に応じて、このマザー積層体は、静水圧プレスなどの手段により積層方向に圧着させてもよい。
【0052】
その後、マザー積層体が所定の形状寸法に切断され、生のセラミック積層体が切り出される。このとき、バレル研磨などにより積層体の角部や稜部に丸みをつけてもよい。続いて、切り出された生のセラミック積層体が焼成され、積層体であるセラミック素体が生成される。なお、生のセラミック積層体の焼成温度は、セラミックの材料や内部電極用導電性ペーストの材料に依存するが、900℃以上1300℃以下であることが好ましい。
【0053】
次に、焼成後のセラミック素体16の両端面に外部電極用導電性ペーストを、たとえばディップ工法等によって塗布し、焼き付け、第1および第2の外部電極18a,18bの下地層38a,38bが形成される。焼き付け温度は、700℃以上900℃以下であることが好ましい。下地層38a,38bの表面にめっき層40a,40bが形成される。めっき層40a,40bは、下地層38a,38bの表面に形成される。めっき層40a,40bは、2層に形成されており、下地層38a,38bの表面に下層めっき膜42a,42bが形成され、下層めっき膜42a,42bの表面に上層めっき膜44a,44bが形成され、電子部品本体10が得られる。
【0054】
なお、外部電極用導電性ペーストの焼成および生のセラミック積層体の焼成は、たとえば、大気中、N
2雰囲気中、水蒸気+N
2雰囲気中などにおいて行われる。また、ディップ工法とは、外部電極用導電性ペースト中にセラミック素体を浸漬させることにより、そのセラミック素体に外部電極を形成する塗布方法のことである。
【0055】
続いて、本発明にかかるセラミック電子部品の製造方法における金属端子の取り付け工程について、説明する。
まず、所望の第1および第2の金属端子12,13が準備される。この第1および第2の金属端子12,13は、第1および第2の金属端子12,13の端子本体60の表面に、下層めっき膜64としてNiめっき膜、上層めっき膜66としてSnめっき膜が形成されている。
【0056】
次に、電子部品本体10の第1および第2の外部電極18a,18bの端面にはんだ14が塗布される。
【0057】
その後、はんだ14が塗布された第1および第2の外部電極18a,18bに第1および第2の金属端子12,13の第1主面48を当接させ、はんだコテ(あるいはヒーター治具)を押圧しながら加熱することで、第1および第2の外部電極18a,18bと第1および第2の金属端子12,13とを、はんだ14を介して仮固定する。加熱温度は、250℃〜500℃が好ましい。
【0058】
そうすると、第1および第2の外部電極18a,18bと第1および第2の金属端子12,13との接合界面の一部には、第1および第2の外部電極18a,18b側の下層めっき膜42a,42bおよび上層めっき膜44a,44b、はんだ14、ならびに第1および第2の金属端子12,13側の下層めっき膜64および上層めっき膜66による、Ni−Snを含む合金層46が形成される。この合金層46は、第1および第2の金属端子12,13を第1および第2の外部電極18a,18bに取り付ける際にはんだコテあるいはヒーター治具を押圧しながら加熱される部分に形成される。
【0059】
続いて、仮固定された電子部品本体10は、リフロー処理されることにより、第1および第2の外部電極18a,18bと第1および第2の金属端子12,13とが接合され、本固定される。
【0060】
上述のようにして、
図1に示すセラミック電子部品1が得られる。
【0061】
なお、上述したように、仮固定の工程において、第1および第2の金属端子12,13を外部電極18a,18bに接合する際に、はんだコテ等を押圧しながら加熱(熱圧着)することで、第1および第2の金属端子12,13と外部電極18a,18bとの接合界面において部分的に高融点の合金層46が形成されるが、この熱圧着による仮固定の工程の後に実施される本固定の工程におけるリフロー処理時にも十分な熱が与えられていることから、この領域はNi−Snを含む合金層46が生成しており、Sn単独層は存在しない。つまり、第1および第2の金属端子12,13と外部電極18a,18bとを熱圧着により接合して仮固定し、リフロー処理により本固定することにより、はんだ14の主成分として含まれるSnは、Niと反応して合金層46を生成し、その結果、Sn単独層が存在しない領域が形成される。また、合金層46が形成されている部分においては、はんだ14は実質的に存在せず、合金層46が存在している。
【0062】
この実施の形態にかかるセラミック電子部品1によれば、第1および第2の外部電極18a,18bの端面側の中央部における第1および第2の外部電極18a,18bと第1および第2の金属端子12,13との接合界面には、第1および第2の外部電極18a,18b側の下層めっき膜42a,42bおよび上層めっき膜44a,44b、はんだ14、ならびに第1および第2の金属端子12,13側の下層めっき膜64および上層めっき膜66による、Ni−Snを含む合金層46が配置されるので、第1および第2の金属端子12,13と第1および第2の外部電極18a,18bとの接合強度を保つことが可能になる。高融点であるNi−Snを含む合金層46が形成されることで、低融点金属のSn単独層が存在しない領域が形成される。なお、合金層46が形成される部分においては、はんだ14は実質的に存在せず、合金層46が存在している。したがって、局所的(端面側の中央部)ではあるが、高融点の合金層46による接合部分が存在することで、基板実装におけるリフロー処理時においても電子部品本体10が第1および第2の金属端子12,13から脱落することを防止することが可能になる。
【0063】
次に、この発明にかかるセラミック電子部品の他の実施の形態の一例について説明する。
図7は、この発明にかかるセラミック電子部品の他の例を示す外観斜視図である。なお、
図7において、
図1に示したセラミック電子部品1と同一の部分には、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0064】
図7に示す実施の形態にかかるセラミック電子部品1では、第1および第2の金属端子12,13の延長部56および実装部58の周囲面52においてめっき膜が除去されているめっき除去部68が形成されている。このめっき除去部68は、端子本体60の表面が露出している部分である。
【0065】
このように、第1および第2の金属端子12,13の延長部56および実装部58における周囲面52においてめっき膜が除去されためっき除去部68が形成されることで、前述したように、端子本体60の表面が露出しているので、セラミック電子部品1を実装基板に実装用はんだにより実装する際に、実装用はんだの第1および第2の金属端子12,13への濡れ上がりを抑制することが可能となる。そのため、電子部品本体10と第1および第2の金属端子12,13との間(浮き部分)に実装用はんだが濡れ上がることを抑制することができ、浮き部分に実装用はんだが充填されることを防止することができる。よって、浮き部分の空間を十分に確保することができるため、金属端子の弾性的変形を妨げることなく、実装基板への振動の伝達を抑制することができ、より安定してセラミック電子部品の鳴き抑制を発揮することが可能になる。
なお、第1および第2の金属端子12,13の端子接合部54の周囲面52において、めっき除去部68が形成されていると、さらに、実装用はんだの第1および第2の金属端子12,13への濡れ上がりを抑制することが可能となることから、電子部品本体10と第1および第2の金属端子12,13のとの間の浮き部分に実装用はんだが濡れ上がることを、より抑制することができる。
【0066】
(実験例)
次に上述の方法により得られたセラミック電子部品を用いて部品を実装基板に実装する際のリフロー処理時において、金属端子からの電子部品本体の脱落、もしくは、ずれや回転が生じないかを確認した。今回の実験では、リフロー耐熱性の余裕度を把握するために、荷重を与えた状態(重りとなる部品を載せた状態)でリフロー処理を行い、電子部品本体と金属端子との接合部分のずれを調査した。具体的には、本発明のセラミック電子部品の上面に熱硬化型接着剤を用いて荷重となる荷重チップ(本実験においては5750サイズのチップ)を接着し、その状態で実装基板にリフロー処理により基板実装を行い、リフロー処理の前後における電子部品本体の挙動を観察した。
【0067】
(セラミック電子部品の評価)
まず、評価実験を行うために、実施例として、上述したセラミック電子部品の製造方法にしたがって、以下に示すようなセラミック電子部品を作製した。
【0068】
実験に用いたセラミック電子部品
セラミック電子部品のサイズ(設計値):L×W×T=2.0mm×1.25mm×1.25mm
金属端子の端子本体の材料:SUS430(フェライト系ステンレス)
金属端子のめっき膜:下層めっき膜をNiめっき膜とし、上層めっき膜をSnめっき膜とした。厚みは、Niめっき膜が1.5μm、Snめっき膜が2.5μmとした(設計値)。
金属端子の延長部の長さ(電子部品本体の浮かし量):0.5mm
【0069】
また、比較例として、はんだコテによる熱圧着(仮固定の工程)を行なわずにリフロー処理のみで電子部品本体と金属端子とを接合したセラミック電子部品を準備した。
実施例および比較例の各評価数量は、それぞれ5個ずつとした。
【0070】
比較例の5つのサンプルは、はんだコテによる熱圧着(仮固定の工程)を行っていないため、そもそも合金層を有しておらず、実施例の5つのサンプルは、はんだコテによる熱圧着(仮固定の工程)を行っているため、外部電極と金属端子との接合界面における中央部にNi−Snを含む合金層が形成されている。
【0071】
なお、実施例の5つのサンプルにおいて、それぞれの合金層におけるNiの比率は、サンプル1が13%、サンプル2が20%、サンプル3が27%、サンプル4が35%、サンプル5が38%のものを準備した。また、Ni−Snを含む合金層の直径はそれぞれ約300μmとした。
【0072】
また、合金層におけるNiの比率の測定方法は、以下のように測定した。
実施例の各サンプルの側面に沿って、各サンプルの中央(サンプルの幅方向における長さの1/2)まで断面研磨し断面を露出させた。続いて、走査型電子顕微鏡(SEM)に付帯されたエネルギー分散型X線(EDX分析)分析装置を用いて、露出させた断面における外部電極と金属端子との接合界面の中央部において、Cr、Fe、Ni、Cu、Snの元素の定量分析を行い、Ni/(Ni+Sn)により、Niの比率を算出した。
【0073】
(評価方法)
図8は、セラミック電子部品を評価するための状態を示す図であり、(a)はセラミック電子部品に熱硬化型接着剤を塗布した図であり、(b)はセラミック電子部品に荷重チップを取り付けた状態を示した図である。また、評価のための各条件は、以下の通りとした。
荷重チップ固定方法:熱硬化型接着剤により荷重チップ72を取り付けた。熱硬化型接着剤の塗布位置は、セラミック電子部品1のセラミック素体における第1主面側の中央付近とした(
図8(a)を参照)。
荷重チップ:5750チップ(L×W×T=5.7mm×5.0mm×1.8mm)、265mg (実験に用いたセラミック電子部品の23倍の重さ)。
荷重チップの取り付け状態:荷重チップ72を熱硬化型接着剤により、セラミック電子部品1のセラミック素体における第1主面側の中央付近に取り付けた(
図8(b)を参照)。
リフロー処理の条件:最高温度270℃/大気雰囲気
【0074】
評価実験の結果、本発明の実施例におけるセラミック電子部品では、実験を行った5個のいずれについても、電子部品本体は金属端子から脱落しなかった。一方、比較例のセラミック電子部品では、実験を行った5個のうち1個について、外部電極と金属端子との接合部分にずれが発生したため、電子部品本体の回転(すなわち、電子部品本体の脱落)が生じた。この評価実験の結果から、電子部品本体にはんだを介して金属端子を接合する場合、熱圧着をして接合することで、外部電極と金属端子との接合界面に部分的に高融点の合金層が形成されることから、リフロー耐熱度の余裕度が向上することが確認できた。
【0075】
なお、上述の実施の形態におけるセラミック電子部品1において、電子部品本体に含まれるセラミック素体は、誘電体セラミックを用いるので、コンデンサとして機能しているが、これに限られるものではなく、圧電体セラミックを用いた場合は圧電部品として機能し、半導体セラミックを用いた場合はサーミスタとして機能し、磁性体セラミックを用いた場合は、インダクタとして機能する。また、インダクタとして機能する場合は、内部電極は、コイル状の導体となる。
【0076】
また、この発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変形される。さらに、積層セラミックコンデンサのセラミック層の厚み、層数、対向電極面積および外形寸法は、これに限定されるものではない。