(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年深刻化してきている水環境の悪化に伴い、これまで以上に水処理技術が重要になってきており、とくに分離膜利用技術が非常に幅広く適用されてきている。
飲料水、工業用水、農業用水などを得るためには、河川水、湖沼水などの浄化が主であるが、水資源が極端に少なく、かつ、石油による熱資源が非常に豊富である中東地域では、蒸発法を中心に海水淡水化が進められてきた。しかし、中東以外の熱資源が豊富でない地域でも海水淡水化のニーズが高まり、とくに1990年以降、所要動力が小さい半透膜(とくに逆浸透膜)を用いた淡水化プロセスが採用され、カリブ諸島や地中海エリアなどで多数のプラントが建設され実用運転されている。
【0003】
逆浸透膜設備では圧力エネルギーを有する濃縮海水が排出されるため、エネルギー回収ユニットによって圧力回収を行うのが一般的であり、これによってさらに所要動力が低減できる仕組みになっている。
最近では、逆浸透法の技術進歩による信頼性の向上やコストダウンに加え、エネルギー回収技術の著しい向上によって、多くの逆浸透法海水淡水化プラントが建設されるに至っている。
【0004】
逆浸透膜による海水淡水化プロセス自体も技術開発、改良が重ねられている。
逆浸透膜とはその名の由来のとおり、膜面の濃度差に起因する浸透圧に逆らって圧力を加えることによって淡水を得るものである。なお、分離の有効圧力は操作圧力から供給水濃度に基づく浸透圧が差し引かれたものである。
【0005】
特許文献1や非特許文献1には、途中で運転圧力を上げて後段の濃縮された高浸透圧に対抗して淡水を効率的に取り出す方法が開示されている。また非特許文献2には、逆浸透膜よりも分離サイズが大きく、通常、海水淡水化に不向きとされるナノろ過膜を用いて透過水を2回処理することによる処理コスト低減技術が開示されている。また非特許文献3には、河川水と海水を併用することによって、エネルギー効率を高めたりするといった処理コスト低減技術が開示されている。これらの技術の中には、実用化されているものも少なくない。
【0006】
しかし、海水を被処理水とする上記プロセスは、浸透圧の分だけ圧力エネルギーを余計に必要とするため、一般には非常にエネルギーコストが高い。さらには、海水淡水化プラントの使用部材は、高圧海水に対する耐圧性・耐腐食性を要求されるので、設備コストも高くなる場合が多い。
【0007】
そこで、続く技術として、これまで利用されてこなかった下廃水の再利用が注目を浴びている。
下廃水やその処理水を再利用するための低圧逆浸透膜としては、膜表面の親水性向上、荷電制御、平滑性向上等によって微生物の付着を抑制した有機物汚染に耐性のある製品(例えば、東レ社製TMLシリーズ、非特許文献6)が開発されている。また、非特許文献4や非特許文献5に示すような下廃水を再利用するというプロセスが実用化されている。
【0008】
しかし、下廃水再利用の濃縮水は、濃縮水であるが故に不純物、特に有機物を多く含んでおり、濃縮水を系外に排水する場合に注意が必要となる。
すなわち、濃縮水が環境中への排水水質基準などを満たさない場合には、濃縮倍率を落とすか、もしくは、濃縮水を排出する前に排水水質基準などに関して問題がないように後処理をする必要がある。
【0009】
そこで近年、下水や河川水などの比較的低浸透圧の水が十分に利用できない場合の新規技術として、海水に下水や低圧逆浸透膜の濃縮水を混合して、浸透圧を下げるというプロセスが提案されている(特許文献2、非特許文献7及び8)。
とくに、非特許文献7及び8に記載された、低圧逆浸透膜の濃縮水を混合して浸透圧を下げるというプロセスは、従来の海水淡水化プロセスに比べて大きく所要エネルギーを低減させることができるため、非常に期待されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、海水に下水や低圧逆浸透膜の濃縮水を混合して浸透圧を下げるというプロセスでは、下廃水を再利用した濃縮水を海水などに混合して利用するという点において、従来と同様に濃縮水中の不純物量が課題となる。
すなわち、低圧逆浸透膜の濃縮水中に含まれる不純物は、当該濃縮水をそのまま海水などに混合して海水混合水とし、再度高圧逆浸透膜を通して淡水を取り出した場合に、前記不純物を全て含有したまま、再度濃縮されて系外に排出されることとなる。したがって、前記海水混合水の濃縮水も前記低圧逆浸透膜の濃縮水と同様に、排水水質基準を超える可能性がある。
【0013】
そこで、本発明の目的は、複数種類の被処理水から処理水を得る水処理装置の運転方法であって、低コストで、安定運転可能な水処理装置の運転方法に関する。とくに半透膜を適用した淡水製造用の水処理装置を運転するに際して、環境に悪影響を及ぼさないような運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するために、本発明の水処理装置は次の<1>〜<17>のいずれかの構成をとる。
<1>
第1の被処理水Aを前処理により処理水A0とする前処理ユニットXと、前記処理水A0を透過水A2と濃縮水A3とに分離する膜分離ユニットYと、前記濃縮水A3及び前記濃縮水A3の処理水A4の少なくともいずれか一方と、第2の被処理水B及び前記被処理水Bの処理水B0の少なくともいずれか一方とを含む混合水B1を、透過水B2と濃縮水B3とに分離する膜分離ユニットZと、を有する水処理装置の運転方法であって、
前記濃縮水B3の水質指標C
B3又は前記濃縮水B3の処理水B4の水質指標C
B4が予め定められた基準値を超えた場合に、次の方法(1)〜(8)から選ばれる少なくとも1の方法を実施することを特徴とする水処理装置の運転方法。
方法(1)前記膜分離ユニットYにおける前記透過水A2の回収率R
Yを下げる
方法(2)前記膜分離ユニットZにおける前記透過水B2の回収率R
Zを下げる
方法(3)前記混合水B1における前記濃縮水A3及び前記処理水A4の少なくともいずれか一方と前記被処理水B及び前記処理水B0の少なくともいずれか一方との混合比率を変える
方法(4)前記濃縮水A3を前記被処理水B及び前記処理水B0の少なくともいずれか一方と混合する前に、前記濃縮水A3の少なくとも一部を吸着又は分解処理する
方法(5)前記濃縮水B3を排出する前に、前記濃縮水B3の少なくとも一部を吸着又は分解処理する
方法(6)前記混合水B1を、前記処理水A4と前記処理水B0と第3の被処理水Cとを含む混合水とする
方法(7)前記混合水B1を、前記処理水A4と前記処理水B0と前記処理水A0の一部とを含む混合水とする
方法(8)前記濃縮水A3の少なくとも一部を前記前処理ユニットXに還流する
<2>
前記水質指標C
B3又は前記水質指標C
B4の基準値が、生物学的酸素要求量、化学的酸素要求量、全有機炭素、全窒素、全リン、又は吸光光度により定められていることを特徴とする前記<1>に記載の水処理装置の運転方法。
<3>
前記水質指標C
B3又は前記水質指標C
B4が下記式のいずれかで表されることを特徴とする前記<1>又は<2>に記載の水処理装置の運転方法。
C
A3×100/(100−R
Z)
又は、
C
A4×100/(100−R
Z)
式中、C
A3は前記濃縮水A3の水質指標、C
A4は前記処理水A4の水質指標であり、R
Zは前記膜分離ユニットZにおける前記透過水B2の回収率(%)である。
<4>
前記方法(1)又は(2)において、前記濃縮水A3、前記濃縮水B3及び前記処理水B4からなる群より選ばれる少なくとも1の流量を予め定められた範囲内に維持することを特徴とする前記<1>〜<3>のいずれか1に記載の水処理装置の運転方法。
<5>
前記方法(3)において、前記濃縮水A3の水質指標C
A3(=C
A0×100/(100−R
Y))又は前記処理水A4の水質指標C
A4(=C
A0×100/(100−R
Y))を求め、前記第2の被処理水Bの水質指標C
B又は前記処理水B0の水質指標C
B0を測定し、
前記水質指標C
A3又は前記水質指標C
A4が前記水質指標C
B又は前記水質指標C
B0よりも大きい場合は、前記第2の被処理水B又は前記処理水B0の流量に対する前記濃縮水A3又は前記処理水A4の流量の比率を下げ、
前記水質指標C
A3又は前記水質指標C
A4が前記水質指標C
B又は前記水質指標C
B0よりも小さい場合は、前記第2の被処理水B又は前記処理水B0の流量に対する前記濃縮水A3又は前記処理水A4の流量の比率を上げることを特徴とする前記<1>〜<4>のいずれか1に記載の水処理装置の運転方法。
<6>
前記方法(4)及び(5)を共に実施することを特徴とする前記<1>〜<5>のいずれか1に記載の水処理装置の運転方法。
<7>
前記方法(4)又は(5)を実施する前に、前記濃縮水A3又は前記濃縮水B3を除濁処理することを特徴とする前記<1>〜<6>のいずれか1に記載の水処理装置の運転方法。
<8>
前記方法(6)において、前記膜分離ユニットZの運転圧力が予め設定された基準値を上回らないように、前記被処理水Cの供給量を決定することを特徴とする前記<1>〜<7>のいずれか1に記載の水処理装置の運転方法。
<9>
前記方法(7)において、前記処理水A0を混合した流量の分だけ、前記透過水A2の流量を減じることを特徴とする前記<1>〜<8>のいずれか1に記載の水処理装置の運転方法。
<10>
前記方法(8)において、前記濃縮水A3から前記前処理ユニットXに還流する間に化学処理を施すことを特徴とする前記<1>〜<9>のいずれか1に記載の水処理装置の運転方法。
<11>
前記被処理水A及び前記被処理水Cの少なくともいずれか一方が前記被処理水Bよりも浸透圧が低いことを特徴とする前記<1>〜<10>のいずれか1に記載の水処理装置の運転方法。
<12>
前記被処理水Aの水質指標C
Aが前記被処理水Bの水質指標C
Bよりも高いとともに、前記被処理水Bの塩分濃度が前記被処理水Aの塩分濃度よりも高いことを特徴とする前記<1>〜<11>のいずれか1に記載の水処理装置の運転方法。
<13>
前記被処理水Aが下廃水または前記下廃水の処理水を含むとともに、前記被処理水Bが海水を含むことを特徴とする前記<1>〜<12>のいずれか1に記載の水処理装置の運転方法。
<14>
前記前処理ユニットXが、生物処理と固液分離処理の組み合わせからなるユニットであることを特徴とする前記<1>〜<13>のいずれか1に記載の水処理装置の運転方法。
<15>
前記膜分離ユニットY及び前記膜分離ユニットZの少なくともいずれか一方が半透膜ユニットであることを特徴とする前記<1>〜<14>のいずれか1に記載の水処理装置の運転方法。
<16>
前記膜分離ユニットZの最大運転圧力が、前記膜分離ユニットYの最大運転圧力よりも高いことを特徴とする前記<1>〜<15>のいずれか1に記載の水処理装置の運転方法。
<17>
前記処理水A0の一部を前記濃縮水B3及び前記処理水B4の少なくともいずれか一方に混合することを特徴とする前記<1>〜<16>のいずれか1に記載の水処理装置の運転方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の水処理装置の運転方法によれば、複数種類の被処理水から処理水を得るに際し、環境に対する排水水質基準を遵守しながら、低コストかつ安定した運転を可能にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の望ましい実施の形態を、図面を用いて説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
図1は、本発明における方法(1)〜(3)を実施可能な水処理装置(淡水製造装置)の運転方法の一例を示す概略フロー図である。
【0018】
本発明は、第1の被処理水Aを前処理により処理水A0とする前処理ユニットXと、前記処理水A0を透過水A2と濃縮水A3とに分離する膜分離ユニットYと、前記濃縮水A3及び前記濃縮水A3の処理水A4の少なくともいずれか一方と、第2の被処理水B及び前記被処理水Bの処理水B0の少なくともいずれか一方とを含む混合水B1を、透過水B2と濃縮水B3とに分離する膜分離ユニットZと、を有する水処理装置の運転方法であって、前記濃縮水B3の水質指標C
B3又は前記濃縮水B3の処理水B4の水質指標C
B4が予め定められた基準値を超えた場合の水処理装置の運転方法に関する。
【0019】
この水処理装置により、2種の互いに異なる第1の被処理水Aと第2の被処理水Bが、それぞれ第1の被処理水ライン1と第2の被処理水ライン21を通して処理される。
被処理水Aは、必要に応じて、第1の被処理水タンク2に一旦貯留された後、第1の取水ポンプ3を通って、前処理ユニットX(第1の前処理ユニット4)で処理され、処理水A0が排出される。処理水A0は、供給ポンプ5、加圧ポンプ6によって、膜分離ユニットY(第1の膜分離ユニット7)に送られる。
前処理ユニットXにおいて被処理水Aから処理水A0に処理する方法については、前処理ユニットXと共に後述する。
【0020】
膜分離ユニットYは、処理水A0、又は、該処理水A0を供給ポンプ5で汲み上げ膜分離ユニットYへ供するための供給水A1(以後、処理水A0と供給水A1とは区別せずに同一のものを表すものとする。)を透過水A2と濃縮水A3に分離し、前記透過水A2は、第1の生産水タンク10に貯留される。ここで、透過水A2と濃縮水A3の流量および流量の比率は、加圧ポンプ6の出力とバルブV1の開度によって制御することが出来る。
すなわち、基本的な制御としては、全体流量を上げるためには加圧ポンプ6の出力を上げ、透過水A2の流量比を上げたいときは、バルブV1の開度を減じることによって、目標流量および流量比に到達させることができる。
【0021】
濃縮水A3及び該濃縮水A3を処理した処理水A4の少なくともいずれか一方と、被処理水B及び該被処理水Bを処理した処理水B0の少なくともいずれか一方とを混合し、混合水B1とする。混合水B1はその他に第3の被処理水Cを含んでいてもよい。
混合水B1は
図1では混合タンク25で混合されるが、各々の水が流れるラインが合流した径の太いライン等で混合されてもよく、混合水B1が得られれば混合される形態には限定されない。
これにより得られた混合水B1は、第2の加圧ポンプ26によって膜分離ユニットZ(第2の膜分離ユニット27)に送られ、透過水B2と濃縮水B3に分離される。
【0022】
濃縮水A3を処理水A4にする処理方法としては吸着や分解処理が挙げられる。吸着手段としては活性炭、凝集剤、イオン交換樹脂等に吸着させる方法が挙げられる。また、分解処理としてはオゾン等による促進酸化、超臨界酸化、電気分解等により分子量を小さくする処理方法が挙げられる。
被処理水Bを処理水B0にする処理方法は上記濃縮水A3を処理水A4にする処理方法と同様の方法が挙げられる。
【0023】
透過水B2は、第2の生産水タンク28に貯留される。このときの透過水B2と濃縮水B3の流量および流量の比率は、先述した膜分離ユニットYと同様に、加圧ポンプ26の出力とバルブV7の開度によって制御することが出来る。
このとき濃縮水B3の圧力エネルギーを回収するために、エネルギー回収ユニット29を有することができる。
【0024】
エネルギー回収ユニット29としては、特に制約はなく、逆転ポンプ、ペルトン水車といった旧来のユニットから、ターボチャージャー、圧力交換式といった高効率のものまで適用できるが、膜分離ユニットZの運転圧力変動を抑えられれば、これらのエネルギー回収効率を高く維持することが容易になる。
とくに、逆転ポンプやペルトン水車は、圧力や流量変動に対して高効率を維持することができないため、運転圧力変動を抑えることはエネルギー回収の面からも非常に効果が高い。
【0025】
濃縮水B3は系外に排水されるが、排水される前に処理して処理水B4として排水してもよい。濃縮水B3を処理水B4にする処理方法としては、上記濃縮水A3を処理水A4にする処理方法と同様の方法が挙げられる。
【0026】
本発明においては、被処理水Aとして、下水、産業廃水、又は汚濁した河川水・地下水・湖沼水などを主成分とする下廃水又は前記下廃水の処理水であり、後述する被処理水Bよりも汚濁した水を適用することが好ましい。
なお、本明細書において、主成分とは、最も含有体積割合が多い成分を意味する。
前記汚濁の具合は、対象となる水質指標の値をもとに知ることができるが、被処理水Aの水質指標C
Aの方が被処理水Bの水質指標C
Bよりも高いことが好ましい。またさらに、被処理水Bの塩分濃度が被処理水Aの塩分濃度よりも高いことがより好ましい。
なお、水質指標については後述する。
【0027】
被処理水Aに上述した水を用いることにより、膜分離ユニットYの濃縮水A3及び/又はその処理水A4と、被処理水B及び/又はその処理水B0とを混合し、高圧で処理することになる。海水淡水化などに用いられる高圧用半透膜は、一般的な下廃水を再利用する場合よりも阻止性能が高く、全体の生産水質が良好になることから好ましい。
【0028】
本発明においては、被処理水Bとして海水、高濃度かん水、又は汽水を主成分とする水が好ましい。すなわち、被処理水Aが下廃水または下廃水の処理水を含むとともに、被処理水Bが海水を含むことが好ましい。
被処理水Aと被処理水Bとは、被処理水Aが被処理水Bよりも浸透圧が低いことが好ましい。なお、後述する方法(6)においては、被処理水A及び第3の被処理水Cの少なくともいずれか一方が被処理水Bよりも浸透圧が低いことが好ましい。これは、膜分離ユニットYにより分離された濃縮水A3及び/又は被処理水Cによって被処理水Bの浸透圧を低減でき、膜分離ユニットZの運転圧力を下げることが出来るためである。以上により、膜分離ユニットZの運転圧力を低減できるようになる。
【0029】
このような使用方法であることを鑑みると、膜分離ユニットZの方が高い塩分濃度の水に曝されて浸透圧が高いために、高圧運転が必要になるという理由により、膜分離ユニットZの最大運転圧力を膜分離ユニットYの最大運転圧力よりも高くすることが好ましい。
【0030】
次に膜分離ユニット及び前処理ユニットについて詳述する。
本発明の方法に用いられる水処理装置は、前処理ユニットX、膜分離ユニットYおよび膜分離ユニットZを必ず有する。膜分離ユニットYおよび膜分離ユニットZは、前処理ユニットXによって処理された処理水をさらに浄化できれば特に制約はない。
膜分離ユニットYおよび膜分離ユニットZは、好ましくは、精密ろ過膜や限外ろ過膜よりもさらに小さな分子を分離できるナノ濾過膜、逆浸透膜などの半透膜ユニット、表面荷電を強めて分離性能を高めた荷電型限外ろ過膜等が用いられる。
中でも、膜分離ユニットYおよび膜分離ユニットZの少なくともいずれか一方は半透膜ユニットであることが生産水を再利用するための水質が良好であるという点から好ましい。
なお、膜の形状は平膜、中空糸膜など特に制約はない。
【0031】
被処理水Aとして下廃水又は下廃水の処理水を含む水を適用する場合、膜分離ユニットYとしては、有機物によるファウリング耐性が優れたものが好ましい。具体的には、東レ株式会社製逆浸透膜TMLシリーズのように、耐ファウリング性を有する分離膜が好ましく例示される。
また、被処理水Bとして海水を含む水を適用する場合、膜分離ユニットZとしては、一般に海水仕様の逆浸透膜を適用することが可能である。また、被処理水Bに他の水を混合することによって膜分離ユニットZの運転圧力を低く抑えることができれば、かん水用の比較的低圧仕様の逆浸透膜を適用することも可能である。
【0032】
本発明における水処理装置において、膜分離ユニットYと膜分離ユニットZに接続される加圧ポンプや配管の耐圧性などは、膜分離ユニットYよりも膜分離ユニットZの方が、最大運転圧力が高くできるように設計することが好ましい。さらに、材質としても、膜分離ユニットZの方が高い塩分濃度にさらされるため、腐食耐久性も高いことが好ましい。
具体的には、膜分離ユニットYよりも膜分離ユニットZの方に腐食耐久性(耐腐食性)の高い高級ステンレスを用いることが好ましい。より具体的には、膜分離ユニットY周辺部材としては、SUS304L、SAF2304などの標準的な耐腐食性を有するもの、もしくは、SUS316、SUS317などの耐腐食性が少し高められたものを用い、膜分離ユニットZ周辺部材には、さらに耐腐食性を高めたSUS316L、SUS317Lや、SAF2507、SUS836L、SUS890L、SUS329J3L、SUS329J4Lといった高級ステンレスを使用することが好ましい。
【0033】
ここで、膜分離ユニットZの濃縮水B3は、通常環境中に放出されるため、水処理装置を設置する国、州、自治体などの排水水質基準を満足する必要がある。なお、日本の排水水質基準の一部として、生物学的酸素要求量(BOD)の最大値として120mg/L、溶解性鉄の最大値として10mg/Lが定められている。
【0034】
ここで、被処理水Aが下廃水又は当該下廃水の処理水を含み、被処理水Bが海水を含む場合を想定し、本発明の水処理装置の運転方法を述べる。
被処理水Aは、通常、排水水質基準に定められている成分が基準値以上に含有されているため、前処理ユニットXにおいて、それらを除去することが好ましい。
前処理ユニットXとしては特に制約はなく、凝集沈殿や加圧浮上といった化学的処理、沈降槽、スクリーン、砂ろ過、膜ろ過、遠心分離といった物理的な固液分離処理、生物処理もしくは、それらの組み合わせから適宜選ぶことができる。
中でも後述する膜分離ユニットYへの負荷を鑑みると、有機物濃度と懸濁物濃度を低減できる点から、生物処理と固液分離処理(物理処理)の組み合わせからなるユニットであることが好ましい。
前処理ユニットXによる被処理水Aの処理によって、排水水質基準を満足する処理水A0を得ることが出来る。
被処理水Bや被処理水Cを処理するための、前処理ユニット24、34についても、特に制約はなく、前処理ユニット4と同様、化学処理、物理処理、生物処理やそれらの組み合わせからなるユニットなどを適宜選択することが出来る。
【0035】
ここでいう生物処理法としては、活性汚泥法が代表的である。活性汚泥法は、活性汚泥に含まれる微生物により、廃水中の有機物や窒素・リンなどの汚濁物質の分解を行うものである。
活性汚泥は、廃排水処理等に一般に利用されるものである。活性汚泥法では、汚泥濃度として2,000mg/L〜5,000mg/L程度で被処理水Aの滞留時間は通常1時間〜24時間で運転される。また、後述する膜分離活性汚泥法では、汚泥濃度として2,000mg/L〜20,000mg/L程度で被処理水Aの滞留時間は通常1時間〜24時間で運転される。
いずれの場合も被処理水Aの性状に応じて最適なものを採択するのがよい。また、凝集剤を添加する装置を設置して、活性汚泥を含む被処理水Aに凝集剤を添加することも、リンや溶解性の有機物を膜分離活性汚泥処理液から削減できるという点で好ましい。
【0036】
このようにして、生物処理された中間処理水を固液分離処理することによって清澄な処理水として得ることができる。
固液分離処理として、従来からの最も簡便な手法としては、重力沈降分離処理が挙げられる。この処理はエネルギーがほとんどかからないという点で好適であるが、沈降させるために広大な面積が必要となることと、水質によっては沈降不良を起こし、処理水質が悪化することがある。
【0037】
そこで、近年は、固液分離性能が優れたプロセスとして、
図5に例示するように、前処理タンク13において活性汚泥法を実施し、その処理水を精密ろ過膜や限外ろ過膜などの第1の前処理ユニット4によって固液分離処理する、いわゆる膜分離活性汚泥法が好適に用いられる。
【0038】
精密ろ過膜や限外ろ過膜は、明確な定義なしに呼称されている場合が多いが、本明細書においては、IUPACで定められた定義に従う。すなわち、精密ろ過膜は0.1μm以上の粒子が除去できる圧力を駆動力とする分離膜と定義される。また、限外ろ過膜は、通常0.001〜0.1μmの細孔を有した膜と定義される。
生物処理された水を精密ろ過膜により、または限外ろ過膜により分離する場合、水を加圧ポンプで膜分離ユニットに供給する加圧ろ過や、膜分離ユニットを生物処理槽に浸漬して吸引ろ過分離する浸漬ろ過法など、様々な方法が適用可能である。
【0039】
中でも、高濃度活性汚泥が入った水を処理する点から、安定運転しやすく、エネルギーコストも比較的小さい、浸漬ろ過法を適用することが好ましい。なお、浸漬ろ過法で適用される膜は中空糸膜、平膜など制約されるものではないが、ユニット構造がシンプルで、高濃度の処理に適しているという観点からは平膜が好適である。
【0040】
前処理ユニットXに精密ろ過膜や限外濾過膜を適用した場合、被処理水A中の懸濁物質をほぼ100%除去することはできるものの、有機物濃度をゼロにすることは困難である。このため、処理水A0を膜分離ユニットYで処理した場合、濃縮水A3における対象物質濃度が濃縮されて、排水水質基準濃度を超える可能性がある。
このような場合、このまま濃縮水A3を環境中に排出するのは環境上問題となる場合があるため、特開2002−306930号公報に記載されているように、酸化処理を行ったり、前処理である下廃水処理ユニットへ還流するという方法を採ることが出来る。しかしながら、本発明における水処理装置の場合、濃縮水A3及び/又は処理水A4を被処理水B及び/又は処理水B0と混合処理するため、濃縮水A3における対象物質濃度のまま高濃度で、直接環境中に排出されることはない。
【0041】
濃縮水A3及び/又は処理水A4は、被処理水B及び/又は処理水B0と混合され、混合タンク25から膜分離ユニットZに供給され、透過水B2と濃縮水B3とに分離される。すなわち、濃縮水A3及び/又は処理水A4から持ち込まれた対象物質は、膜分離ユニットZでさらに濃縮され、濃縮水B3又は処理水B4として、排出されることになる。なお、
図1では濃縮水A3と処理水A4とを区別せずにA4として表記し、被処理水Bと処理水B0とを区別せずにB0と表記し、濃縮水B3と処理水B4とを区別せずにB4と表記している。
図2〜
図5についても同様である。
ここで、濃縮水B3又は処理水B4に含まれる対象物質の最大濃度(以下、「水質指標」と称することもある。)C
B3又はC
B4は、以下の式で示すことが出来る。
【0043】
式中、C
A0は処理水A0中の水質指標[mg/L]、C
B0は処理水B0中の水質指標[mg/L]、F
A0は前処理水A0中の水質指標[m
3/d]、F
B0は前処理水B0中の水質指標[m
3/d]、R
Yは膜分離ユニットYにおける透過水A2の回収率[%]、R
Zは膜分離ユニットZにおける透過水B2の回収率[%]をそれぞれ表す。
処理水A0の水質指標と処理水B0の水質指標はオンラインセンサーやオフラインの計測器等により求めることができる。
【0044】
なお、前記濃縮水B3が処理水B4に処理される場合の水質指標C
B4は、処理によって水質指標の対象となる物質の濃度が変わらない場合には上記のC
B3と同様の式で表される。一方、処理によって水質指標の対象となる物質の濃度が変わる場合には、C
B4はオンラインセンサーやオフラインの計測器等により求められる。
【0045】
本発明では、水処理装置の運転方法において、環境中に排出する濃縮水B3又は処理水B4の水質指標C
B3又はC
B4が予め定められた基準値(排水水質基準)を超えた場合に、以下に示す方法(1)〜(8)から選ばれる少なくとも1の方法を実施することを特徴とする。
<方法(1)〜(3)>
方法(1)膜分離ユニットYにおける透過水A2の回収率R
Y(=透過水A2の流量/処理水A0の流量×100(%))を下げる。
方法(2)膜分離ユニットZにおける透過水B2の回収率R
Z(=透過水B2の流量/混合水B1の流量×100(%))を下げる。
方法(3)混合水B1における濃縮水A3及び処理水A4の少なくともいずれか一方と被処理水B及び処理水B0の少なくともいずれか一方との混合比率を変える。
【0046】
上記方法(3)において、前記濃縮水A3の水質指標C
A3(=C
A0×100/(100−R
Y))又は処理水A4の水質指標C
A4(=C
A0×100/(100−R
Y))をオンラインのセンサーやオフラインの計測器によって求め、第2の被処理水Bの水質指標C
B又は処理水B0の水質指標C
B0を測定する。前記水質指標C
A3又は前記水質指標C
A4が前記水質指標C
B又は前記水質指標C
B0よりも大きい場合は、前記第2の被処理水B又は前記処理水B0の流量に対する前記濃縮水A3又は前記処理水A4の流量の比率を下げることが好ましい。
また逆に、前記水質指標C
A3又は前記水質指標C
A4の方が前記水質指標C
B又は前記水質指標C
B0よりも小さい場合は、前記第2の被処理水B又は前記処理水B0の流量に対する前記濃縮水A3又は前記処理水A4の流量の比率を上げることが好ましい。
上記操作を行うことによって、環境中に排出する濃縮水B3又は処理水B4の水質指標を向上、すなわち、対象物質濃度を低減させることが出来る。
【0047】
具体的な方法としては、
図1に例示するように第2の水質指標センサー36で排水基準に関わる水質指標(C
B3及び/又はC
B4)をモニターし、その値が予め設定された値を超えた場合は、制御ユニット41を介して、膜分離ユニットY及び膜分離ユニットZのうち少なくとも一方の回収率を減じる。逆に水質指標が十分に小さい場合は、回収率を上げることによって、透過水流量を増やすこともできる。さらに場合によっては、被処理水流量を増減して調整することも可能である。
【0048】
このような制御を行うことによって、膜分離によって清澄な透過水を得ながら、濃縮水B3又は処理水B4が排水水質基準を超えるのを防止することが出来る。上記方法(1)又は(2)において、膜分離ユニットYの濃縮水A3、膜分離ユニットZの濃縮水A3及び処理水A4からなる群より選ばれる少なくとも1の流量を予め定められた範囲内に維持することが好ましい。当該流量は、小さすぎると膜分離ユニット内で濃度分極を起こしたり、汚れ物質の堆積を加速させ、また、大きすぎると膜分離ユニット内での過大な圧損やダメージを生じるため、予め設定した範囲を超えないように設定することが好ましい。
すなわち、この方法は、被処理水Aや被処理水Bの水量によっては、全体の処理量を減らしたり増やしたりするなどの調整をしなければ、適用が困難な場合があるので注意が必要である。
【0049】
<方法(4)、(5)>
排出濃度を低減させるその他の手段としては、以下の方法が挙げられる。
方法(4)濃縮水A3を被処理水B及び前記処理水B0の少なくともいずれか一方と混合する前に、前記濃縮水A3の少なくとも一部を吸着もしくは分解処理する。
方法(5)濃縮水B3を排出する前に、前記濃縮水B3の少なくとも一部を吸着又は分解処理する。
具体的には、代表的な吸着手段としては、活性炭、凝集剤、イオン交換樹脂等に吸着させる方法が挙げられる。また、分解処理としては、オゾン等による促進酸化、超臨界酸化、電気分解等により分子量を小さくする処理方法が挙げられる。
なお、方法(4)において濃縮水A3から処理された水と前記処理水A4とは同一でもよく、方法(5)において濃縮水B3から処理された水と前記処理水B4とは同一でもよい。
【0050】
さらに、膜分離ユニットYや膜分離ユニットZを通った濃縮水A3又は濃縮水B3は、微量に存在する場合がある懸濁物質や、長期運転の結果生じる可能性がある錆、微生物、スケールなども併せて濃縮されている場合がある。これらは吸着や分解処理の阻害物質となり得る。そのため、上記方法(4)又は(5)を実施する前に、濃縮水A3又は濃縮水B3を除濁処理することにより、これらの物質を除去しておくことが好ましい。
【0051】
方法(4)又は(5)を実施した際のフローの一例を
図2に示す。
図2では、第1の浄化ユニット12、第2の浄化ユニット37によって膜分離ユニットYの濃縮水A3および膜分離ユニットZの濃縮水B3の対象物質濃度を低減させる。これら浄化ユニット12、37の制御は、バルブV4、V5、V8、V9によって行うことが出来る。すなわち、濃度を低減させる必要がないときは、バルブV4、V8を全閉にし、濃度が超えた場合は、V4、V8の少なくとも片方を徐々に開けることによって、対象物質濃度を低減させることが出来る。
なお、作動方法には、特に制限はないが、それぞれの処理コスト、操作性などによって適宜設定することが出来る。
【0052】
安全のためには、第1の浄化ユニット12の作動を優先させ、第1の浄化ユニット12の能力のみでは十分に水質指標C
B3又はC
B4を下げられないときは、第2の浄化ユニット37を作動させる方が好ましく、上記方法(4)及び(5)を共に実施することが好ましい。
この方法を採ることによって、第2の浄化ユニット37を第1の浄化ユニット12のバックアップにすることも出来るし、除去したい対象物質が膜分離ユニットZに悪影響を及ぼすおそれがある場合は、そのリスクを低減することも出来る。さらに、対象物質以外も除去処理できれば、膜分離ユニットZへの負荷も低減でき、透過水B2の水質向上にも貢献することが期待できるため好ましい。
【0053】
<方法(6)>
さらに、第3の被処理水Cを混合水に添加するという下記方法(6)も挙げることが出来る。
方法(6)混合水B1を、処理水A4と処理水B0と第3の被処理水Cとを含む混合水とする。
第3の被処理水Cとしては、対象物質の含有量が少ない又は含有しない水を用いることが好ましい。
方法(6)を実施した際のフローの一例を
図3に示す。
図3では、被処理水Cは第3の被処理水ライン31を通り、必要に応じて第3の前処理ユニット34を経由し、混合タンク25に添加するようになっている。
しかしながら、被処理水Cは、第2の被処理水タンク22に添加して被処理水Bに混合し、結果として処理水A4に混合することも出来れば、第1の被処理水タンク2に添加して被処理水Aに混合し、結果として処理水B0に混合することもできる。さらには、タンクで混合せずに処理水A4、処理水B0、処理水A4とB0の混合水等のライン内に直接添加して混合水B1とすることも差し支えない。すなわち、処理水A4と処理水B0と被処理水Cを含む混合水B1を得ることができれば、被処理水Cの添加方法や場所には限定されない。
【0054】
方法(1)又は(2)における回収率R
Y又は回収率R
Zを減じるという方法では、透過水A2や透過水B2の量が少なくなるが、上記方法(6)では、膜分離ユニットZの濃縮倍率の制約を低減させ、透過水量を維持することが出来るので、対象物質濃度が低い被処理水Cを供給できる場合には、非常に好ましい手法である。
具体的には、濃縮水B3又は処理水B4を監視する第2の水質指標センサー36が設定値を超えた場合には、制御ユニット41を介して、第3の取水ポンプ33およびバルブV6を操作すること、及び/又は、第2の取水ポンプ23の出力を調節することによって混合タンク25中の対象物質濃度を低減させることが出来る。
【0055】
さらに、被処理水Bが海水を主成分とする場合など、膜分離ユニットZの運転圧力が高い場合は、膜分離ユニットZの運転圧力が予め設定された基準値を上回らないように、被処理水Cの供給量を決定することも好ましい。
なお、膜分離ユニットの最大運転圧力は、ユニットやモジュールの耐圧性がメーカーによって定められているものである。また、膜の透過フラックスもメーカーによってインストラクションがあり最大値が定められている。
【0056】
<方法(7)>
つづいて、方法(7)について説明する。膜分離ユニットYの濃縮水A3に含有される対象物質は、基本的に処理水A0(供給水A1)が膜分離ユニットYで濃縮されたものであるので、濃縮水A3中の対象物質の濃度を低減させるためには処理水A0(供給水A1)中の対象物質の濃度を低減させることが必要であり、すなわち、前処理ユニットXで当該対象物質を除去できることが求められる。
前処理ユニットXの除去性能が十分な場合は問題ないが、除去性能が不十分な場合は、対象物質が膜分離ユニットYで濃縮される。従って、除去性能が不十分な場合は、下記方法(7)を実施することができる。
方法(7)混合水B1を、処理水A4と処理水B0と処理水A0の一部とを含む混合水とする。
すなわち、処理水A0の全量を膜分離ユニットYで濃縮せずに、前処理水A0の一部を混合水として供給する。これによって、混合タンク25内の対象物質濃度を低減(水質指標を向上)することが出来る。
方法(6)と同様、方法(7)においても、処理水A0の一部と処理水A4と処理水B0とを含む混合水B1が得られればよく、処理水A0の一部を添加する方法や場所には限定されない。
【0057】
方法(7)において、前述のように濃縮水A3の流量を維持することが好ましく、最も簡便には、処理水A0からバイパスして、混合タンク25に送った流量の分だけ、すなわち、処理水A0を混合した流量の分だけ、透過水A2の流量を減じることが好ましい。
【0058】
<方法(8)>
さらに、本発明に係る水処理装置の運転方法では、下記に記述する方法(8)を実施することもできる。
方法(8)濃縮水A3の少なくとも一部を前処理ユニットXに還流する。
上記方法によれば、濃縮水A3の少なくとも一部を第1の被処理水タンク2に還流し、再度、前処理ユニットXで処理することによって、濃縮水A3の濃度を低減することができ、対象とする対象物質濃度を低減させることができることから、非常に好ましい。
【0059】
上記方法(7)及び(8)を実施した際のフロー例を
図4に示す。
図4では、処理水A0の一部が膜分離ユニットYをバイパスして、混合タンク25に送られるようになっている。このバイパス量を増やすことによって、対象物質濃度を低減させることが出来、その流量はバルブV3によって制御される。
【0060】
方法(8)においては、第1の被処理水タンク2への還流ライン8によって、濃縮水A3の一部を被処理水タンク2へ還流させ、前処理ユニットXで再処理することで対象物質濃度を低減することが出来る。
なお、還流する場合、前処理ユニットXでの処理性能が十分でないために当該還流が必要となるため、補助的な処理ユニットとして、化学処理ユニット11を経由することによって前処理ユニットXでの処理効率を向上させることが出来る。すなわち、濃縮水A3から前処理ユニットXに還流する間に化学処理を施すことが好ましい。
【0061】
例えば、前処理ユニットXが生物処理を含む場合、その処理水A0、また、濃縮水A3は、生物処理で分解できなかった難分解性物質を含むため、オゾンや過酸化水素などを初めとする促進酸化や薬剤による分解などの化学処理によって、生物分解性を改善することが出来る。これら化学処理は、温度、滞留時間、薬剤濃度などの処理条件を適宜調節することによって処理の強度を変えることが出来る。
【0062】
さらに、前記濃縮水B3又は処理水B4の水質指標C
B3又はC
B4が予め定められた値を上回らないようにする方法として、処理水A0の一部を濃縮水B3及び処理水B4の少なくともいずれか一方に混合する方法も好ましく用いることが出来る。とくに被処理水Aが下廃水であって、その量が膜分離ユニットYの処理可能水量よりも多い場合は、この方法を採ることが好ましい。
被処理水Aの他に、第2の被処理水Bや処理水B0、第3の被処理水C、その他系外の他の水であっても、その対象物質濃度が濃縮水B3又は処理水B4よりも低い場合、すなわちその水質指標がC
B3又はC
B4よりも良好な場合は、濃縮水B3又は処理水B4に添加することも差し支えない。
【0063】
以上、
図5に上記詳述した方法(1)〜(8)をすべて装備した水処理装置のフロー例を示す。なお、
図5では、前処理ユニットXとして、前処理タンク(生物処理槽)13を伴い、第1の前処理ユニット4をタンク内に浸漬した例を示している。
【0064】
本発明における水質指標としては、排水水質基準に記載される物質や環境中への排出によって環境汚染が危惧されるような物質が挙げられる。とくに、排水水質で多くされている、BOD(生物学的酸素要求量)、COD(化学的酸素要求量)、TOC(全有機炭素)、T−N(全窒素)、T−P(全リン)又は吸光光度により定められているものを水質指標として、適用することが好ましい。
中でも、吸光光度を用いると、それぞれのオフライン測定法よりも精度が高くない場合が多いものの、水質指標をオンラインで容易に検知することが出来るため、非常に好ましい。なお、吸光光度は、水中に含まれる成分を直接定量する手段ではないため、測定したい基準物質の濃度に応じた検量線を予め作成しておくと、概略の濃度を知るのに有効である。
【0065】
また、被処理水A、B、Cのいずれかが工業廃水の場合は、各種有害物質や有毒物を含有している場合がある。当該有害物質や有毒物の成分をある程度把握できている場合、それら成分に絞って水質を監視することも好ましい適用方法である。
有害物質や有毒物とは、具体的には、除草剤や殺菌剤、放射性物質、ウイルス、病原体、砒素、シアン、水銀等である。これらをターゲットとして水質を監視する場合は、対象成分に応じた検出器を適宜用いる。
【0066】
本発明において、水質指標を監視するポイントは、系外に排出する濃縮水B3又は処理水B4を直接監視することが最も好ましいが、水処理装置内で最も濃度が高くなるポイントでの監視も、非常に好ましい方法である。
すなわち、対象物質が被処理水Aに主に含まれる場合は、濃縮水A3やその処理水A4が高濃度になるため、
図5に例示するように、濃縮水B3の水質指標C
B3若しくは処理水B4の水質指標C
B4の代わりに、又は同時に水質指標C
A3もしくはC
A4を監視してもよい。水質指標C
A3もしくはC
A4は第1の水質指標センサー14で監視できる。
【0067】
本発明で監視すべき水質指標C
B3又はC
B4の代わりに水質指標C
A3又はC
A4を監視する場合、水質指標C
B3又はC
B4は、被処理水B又は処理水B0に混合する濃縮水A3もしくはA4の水質指標C
A3もしくはC
A4と膜分離ユニットZにおける透過水B2の回収率R
Zから、下記式により得られる。
【0068】
C
A3×100/(100−R
Z)
又は、
C
A4×100/(100−R
Z)
【0069】
上記式で得られた水質指標C
B3又はC
B4に基づき、本発明における方法(1)〜(8)から選ばれる少なくとも1の方法を実施することも好ましい実施態様である。
なお、
図5では濃縮水A3を監視しているが、浄化ユニット12を適用して濃縮水A3を除濁処理する場合は、除濁処理後の濃縮水A3の水質指標を監視することが好ましい。
また、混合水B1には濃縮水A3ではなく処理水A4が混合されていて、濃縮水A3から処理水A4へと処理する段階で水質指標が良好となる場合には、処理水A4の水質指標C
A4を水質指標センサーで監視する。
【0070】
本発明の水処理装置の運転方法において、被処理水Bの溶質濃度が海水やそれと同程度の高い値である場合、被処理水Bの温度や浸透圧の影響を受けて膜分離ユニットZの運転圧力が変動しやすい。運転圧力が変動するということは、加圧ポンプの広範囲にわたる出力制御が必要となり、加圧ポンプの大型化や制御機能装備による設備コストアップにつながる。
そこで、本発明における水処理装置の適用に際して、上記方法(6)を実施する場合には、系外に排出する濃縮水B3又は処理水B4における対象物質濃度(水質指標)に問題が生じない範囲内で、処理水A4、処理水B0及び被処理水Cの混合割合を調整することにより、膜分離ユニットZに供給する混合水B1の温度、浸透圧の変動を少なくすることが好ましい。
これにより、膜分離ユニットZの運転圧力変動を抑制することができる。
【0071】
被処理水Bに海水を用いた場合の膜分離ユニットZの運転圧力変動抑制の具体例を以下に示す。
被処理水Bの濃度が上がったり水温が下がったりすると膜分離ユニットZの運転圧力が上がる。そのため、濃縮水A3若しくは処理水A4又は被処理水Cの割合を増やして浸透圧を下げることにより有効圧力を上げ、運転圧力変動を抑制することができることから好ましい。
これによって、加圧ポンプ26の出力変動を小さく抑えることができるようになるため、加圧ポンプ26に出力制御機能、すなわち、高価なインバーターやエネルギーロスにつながる調節バルブなどを備える必要がなくなるか、最小限度に抑えることができるため、エネルギー面での効果が大きい。
【0072】
本発明を特定の態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を離れることなく様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。
なお、本出願は、2013年5月27日付けで出願された日本特許出願(特願2013−111007)に基づいており、その全体が引用により援用される。