【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明品の不定形耐火物を更に説明する。
以下の表1〜3に示す配合割合にて本判明品を、表4〜6に示す配合割合にて比較品の不定形耐火物を製造した。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】
【表4】
【0042】
【表5】
【0043】
【表6】
【0044】
上記表中、
電融アルミナ:純度95質量%の褐色電融アルミナ;
ボーキサイト:純度85質量%の中国産ボーキサイト;
仮焼アルミナ:粒径20μm以下品;
電融スピネル:理論組成のMgO−Al
2O
3系電融スピネル;
スピネル超微粉:理論組成のMgO−Al
2O
3系電融スピネル、粒径20μm以下品;
炭化珪素:純度95質量%の炭化珪素;
なお、耐火性原料の粒度の表示において、「粗粒」は粒径1mm以上、「中粒」は粒径0.3mm以上1mm未満、「微粉」粒径0.3mm未満をそれぞれ表す;
カーボンブラック(1):ファーネス法で製造された窒素吸着比表面積15m
2/g品;
カーボンブラック(2):ファーネス法で製造された窒素吸着比表面積74m
2/g品;
カーボンブラック(3):ファーネス法で製造された窒素吸着比表面積130m
2/g品;
カーボンブラック(4):ファーネス法で製造された窒素吸着比表面積165m
2/g品;
ビニロン繊維(1):繊維径0.003mm品;
ビニロン繊維(2):繊維径0.005mm品;
ビニロン繊維(3):繊維径0.008mm品;
ビニロン繊維(4):繊維径0.048mm品;
ビニロン繊維(5):繊維径0.1mm品;
ビニロン繊維(6):繊維径0.15mm品;
木材パルプ:繊維径0.008mm品;
アクリル繊維:繊維径0.008mm品(非親水性有機繊維);
アルミナセメント:CaO含有量20質量%品;
コロイダルシリカ:濃度20質量%のアルカリ安定化品;
粘土:ボールクレー;
添加剤:分散剤であるポリリン酸塩及びナフタリンスルホン酸縮合物塩、爆裂防止剤である金属アルミニウム粉、セメント硬化遅延剤である酸化ホウ素、及び酸化防止剤である炭化ホウ素を合計で耐火性原料100質量%に対して外掛けで1質量%添加;
水添加量:不定形耐火物全量100質量%に対する外掛け量;
【0045】
混練及び流動性の評価
混練は、JIS R 2521に準じた試験方法により、タップフロー値が130〜150となるように水、液体バインダー(コロイダルシリカ)添加量を調整してミキサーにより行った。流動性の評価は、タップフロー値が130〜150になるように水、液体バインダー添加量を調整可能なものを「○」、調整が不可能なものを「×」とした。
【0046】
鏝塗り性の評価
鏝塗り性の評価は、(1)鏝による材料の持ち上げ易さ(持ち上げ性指数)、(2)材料のダレ難さ(保形性指数)の2つの基準を規定して総合的に鏝塗り性を評価したものである:
「持ち上げ性指数」は、
図1に示す装置を用いて測定した。装置は、バネ秤(1)、バット(2)、試料皿(φ80mm×9mm)(3)、バネ秤(1)と試料皿(3)を繋げる糸(φ1mm)(4)からなる。バット(2)の底部にバネ秤(1)に直結した試料皿(3)をセットし、そこへ供試材料を乗せて振動テーブルで5秒間振動を掛けて材料厚みを35mmにした後、バネ秤(1)を引いたときに試料皿(3)の供試材料が持ち上がったときの最大の荷重(N)を測定して材料の持ち上げ性を評価した。すなわち、荷重(N)が小さいほど鏝塗り施工時に材料を持ち上げ易いことを示している。表中の持ち上げ性指数は、本発明品1の供試材料の荷重を100としたときの指数で表しており、数値が小さいほど持ち上げ性が良いことを示す;
「持ち上げ性」は、本発明品1を基準として、持ち上げ性指数が130以下の場合を「○」、131以上199以下の場合を「△」、200以上の場合を「×」とした。
【0047】
保形性の評価
「保形性指数」は、
図2に示すコーン形状の型枠を用いて供試材料を静置し、30秒後の形状の変化を自己流動性の指標と見なして、自己流動し難い性質を保形性として評価した。すなわち、30秒静置後の底辺の直径をRmmとした場合、形状変化(R/100)が小さいほど鏝塗り施工時にダレ難く保形性が良いことを示している。表中の保形性指数は、本発明品1の供試材料の形状変化(R/100)を100としたときの指数で表しており、数値が小さいほど保形性が良いことを示す;
「保形性」は、本発明品1を基準として、保形性指数が110以下の場合を「○」、111以上119以下の場合を「△」、120以上の場合を「×」とした。
【0048】
「鏝塗り施工性」は、持ち上げ性と保形性の両方が「○」の場合を「○」、片方あるいは両方が「△」の場合を「△」、片方あるいは両方が「×」の場合を「×」とした。
【0049】
耐食性の評価
耐食性の評価は、回転ドラム法によるスラグ侵食試験による耐スラグ性(耐スラグ性指数)の評価と高周波誘導炉内張り法による溶銑侵食試験による耐溶銑性(耐溶銑性指数)にて行ったものである:
スラグ侵食試験は、本発明品及び比較品の各材料を流し込み成形した供試体に対し、回転ドラム法により実施したものである。侵食剤として高炉スラグ(CaO/SiO
2質量比約1.2)を1時間あたり1.2kg使用し、1600℃で4時間行った。高炉スラグは1時間ごとに排出し、新しい高炉スラグと交換した。加熱方法はアーク加熱による。試験終了後に供試体の溶損深さを測定し、本発明品1の溶損深さを100として指数表示した。耐スラグ性指数は、数値が小さいほど溶損量が少なく耐スラグ性に優れることを示している;
溶銑侵食試験は、本発明品及び比較品の各材料を流し込み成形した供試体に対し、高周波誘導炉内張り法により実施したものである。侵食剤として銑鉄13kgを使用し、1600℃で4時間行った。試験終了後に供試体の溶損深さを測定し、本発明品1の溶損深さを100として耐溶銑性指数として表示したものである。耐溶銑性指数は、数値が小さいほど溶損量が少なく耐溶銑性に優れることを示している;
「耐溶銑性」及び「耐スラグ性」は、本発明品1を基準として、耐食性指数が70以下の場合を「◎」、71以上119以下の場合を「○」、120以上129以下の場合を「△」、130以上の場合を「×」とした;
「耐食性」は、「耐溶銑性」及び「耐スラグ性」の両方が「◎」ないし「○」の場合を「○」、どちらか片方あるいは両方が「△」の場合を「△」、どちらか片方あるいは両方が「×」の場合を「×」とした。
【0050】
耐スポーリング性の評価
「耐スポーリング性指数」は、本発明品及び比較品を並型形状(230mm×114mm×65mm)に流し込み成形した供試体を使用して、105℃で24時間乾燥した後、「電気炉にて加熱1500℃、30分間−自然冷却30分間」を1サイクルとして12サイクル繰り返し、発生した亀裂の本数を測定し、本発明品1の亀裂発生本数を100として指数表示したものである。耐スポーリング性指数は小さいほど亀裂の発生が少なく耐スポーリング性に優れることを示している;
「耐スポーリング性」は、本発明品1を基準として,耐スポーリング性指数が70以下の場合を「◎」、71以上119以下の場合を「○」、120以上129以下の場合を「△」、130以上の場合を「×」とした。
【0051】
「総合評価」は、「流動性」、「鏝塗り施工性」、「耐食性」及び「耐スポーリング性」のうち、すべてが「◎」ないし「○」のものを「○」、1つ以上「×」があるものは「×」、それ以外を「△」とした。
【0052】
上記表から、本発明品1〜27は、いずれも流し込み材としての流動性と鏝塗り材としての鏝塗り施工性を両立し、かつ、充分な耐食性を有する不定形耐火物であることが判る。
更に詳述すると、本発明品1〜3は、カーボンブラックの窒素吸着比表面積を本発明の範囲内で変化させたものであり、流し込み施工性と鏝塗り施工性の両立が可能であり、耐食性及び耐スポーリング性も必要基準を満たしている。
本発明品4〜7は、カーボンブラックの配合量を本発明の範囲内で変化させたものであり、流し込み施工性と鏝塗り施工性の両立が可能であり、耐食性及び耐スポーリング性も必要基準を満たしている。
本発明品8及び9は、炭素質原料として本発明の範囲外の窒素吸着比表面積を有するカーボンブラックを併用したものであり、流し込み施工性と鏝塗り施工性の両立が可能であり、耐食性及び耐スポーリング性も必要基準を満たしている。
本発明品10及び11は、本発明の範囲内のカーボンブラックとコールタールピッチを併用したものであり、流し込み施工性と鏝塗り施工性の両立が可能であり、耐食性および耐スポーリング性も必要基準を満たしている。
本発明品12〜15は、ビニロン繊維の配合量を本発明の範囲内で変化させたものであり、流し込み施工性と鏝塗り施工性の両立が可能であり、耐食性及び耐スポーリング性も必要基準を満たしている。
本発明品16〜18は、ビニロン繊維の繊維径を本発明の範囲内で変化させた場合であり、流し込み施工性と鏝塗り施工性の両立が可能であり、耐食性及び耐スポーリング性も必要基準を満たしている。
本発明品19は、親水性有機繊維のとして木材パルプを使用した場合であり、流し込み施工性と鏝塗り施工性の両立が可能であり、耐食性及び耐スポーリング性も必要基準を満たしている。
本発明品20及び21は、結合剤としてコロイダルシリカを用いた場合及びアルミナセメントとコロイダルシリカを併用した場合であり、流し込み施工性と鏝塗り施工性の両立が可能であり、耐食性及び耐スポーリング性も必要基準を満たしている。
本発明品22及び23は、原料に電融スピネルを使用した場合及びスピネルと電融アルミナを併用した場合であり、流し込み施工性と鏝塗り施工性の両立が可能であり、耐食性及び耐スポーリング性も必要基準を満たしている。
本発明品24は、アルミナ原料としてボーキサイトを用いた場合であり、流し込み施工性と鏝塗り施工性の両立が可能であり、耐食性及び耐スポーリング性も必要基準を満たしている。
本発明品25は、粒径0.3mm未満のボーキサイト及び炭化珪素が少ない粒度構成とした場合であり、流し込み施工性と鏝塗り施工性の両立が可能であり、耐食性及び耐スポーリング性も必要基準を満たしている。
本発明品26及び27は、ボールクレーを配合した場合であり、流し込み施工性と鏝塗り施工性の両立が可能であり、耐食性及び耐スポーリング性も必要基準を満たしている。
【0053】
比較品1は、アルミナ原料の割合が本発明範囲より多く、耐スラグ性、耐スポーリング性が不十分であった。
比較品2は、炭化珪素原料の割合が本発明範囲より多く、耐溶銑性が不十分であった。
比較品3〜7は、本発明範囲外の窒素吸着比表面積のカーボンブラックを配合した場合であり、窒素吸着比表面積が小さいために、カーボンブラックの添加効果が不十分であり、鏝塗り施工性が低下していた。
比較品8は、カーボンブラックを含まない場合であり、持ち上げ性,耐スラグ性及び耐スポーリング性に劣っていた。
比較品9は、本発明範囲内の窒素吸着比表面積を有するカーボンブラックの配合量が少ない場合であり、鏝塗り施工性及び耐スポーリング性が低下していた。
比較品10は、本発明範囲内の窒素吸着比表面積を有するカーボンブラックの配合量が多い場合であり、耐食性が低下していた。
比較品11は、炭素質原料の合計量が多い場合であり、耐食性が低下していた。
比較品12もまた、炭素質原料の合計量が多い場合であり、耐食性が低下していた。
比較品13は、配合したビニロン繊維の繊維径が小さい場合であり、持ち上げ性が低下し、鏝塗り施工性が低下していた。
比較品14は、配合したビニロン繊維の繊維径が大きい場合であり、保形性が得られておらず、鏝塗り施工性が低下していた。
比較品15は、非親水性有機繊維であるアクリル繊維を用いた場合であり、保形性に乏しいものであった。
比較品16は、親水性有機繊維を含まない場合であり、保形性に乏しいものであった。
比較品17〜20は、ビニロン繊維の配合量が少ない場合であり、保形性が得られておらず、鏝塗り施工性が低下していた。
比較品21〜24は、ビニロン繊維の配合量が多い場合であり、鏝塗り施工性及び耐スラグ性が低下していた。
比較品25は、粒径1mm以上の耐火性原料が過多の場合であり、水分調整によって流動性を確保することができなかった。
比較品26は、粒径0.3mm未満の耐火性原料が過多の場合であり、持ち上げ性及び保形性に乏しいものであった。
比較品27は、シリカ含有微粉の含有量が多い場合であり、耐スラグ性が低下し、また、耐スポーリング性の低下がみられた。