【実施例1】
【0025】
図1は、本発明の好ましい実施形態によるスピーカーシステム1について説明する図であり、具体的には、スピーカーシステム1の構成を示すブロック図である。なお、説明に不要な一部の構造や、内部構造等は、図示ならびに説明を省略している。
【0026】
スピーカーシステム1は、同一のキャビネットに取り付けられている動電型スピーカー2と、スイッチングアンプ10と、から構成される。スピーカーシステム1は、スイッチングアンプ10の入力端子3に入力される音声信号を増幅して出力端子16に出力し、信号線であるコードを介して動電型スピーカー2の入力端子25に入力する。その結果、スピーカーシステム1では、動電型スピーカー2が、増幅された音声信号を音波に変換して音声再生を行なう。
【0027】
なお、図示するスピーカーシステム1では、音声入力信号は、1チャンネルのみのモノラル信号について説明するが、2チャンネルのステレオ信号であってもよく、また、3チャンネル以上のマルチチャンネル信号であってもよい。また、動電型スピーカー2と、スイッチングアンプ10と、は同一のキャビネットに取り付けられているが、それぞれ別のキャビネット又は筐体に収納されていてもよい。
【0028】
動電型スピーカー2は、例えば、
図1にその断面が図示されるようなキャビネットに取り付けられる外磁型の動電型スピーカーである。動電型スピーカー2は、磁気回路22の磁気空隙に振動可能なように配置されるボイスコイル20および振動板21およびエッジ24並びにダンパーを含む一自由度の振動系を有し、磁気回路42および振動系は、フレーム23に支えられて、キャビネットに取り付けられる。
【0029】
図1に図示する動電型スピーカー2の磁気回路22は、磁気空隙の外側にマグネットが位置する外磁型の磁気回路であるが、内磁型の磁気回路、あるいは、反発型、等の他の磁気回路であってもよい。また、磁気回路22は、好ましくは磁気空隙の内部、あるいは、磁気空隙の近傍にショートリングを備えるようにしてもよい。動電型スピーカー2は、ショートリングを備えることでボイスコイル20のインダクタンスを等価的に低下させ、磁気回路22を構成する磁性材料に渦電流が流れにくくなるようにすれば、電流歪の発生を低減できる。
【0030】
動電型スピーカー2は、ボイスコイル20が一層巻のコイルを含む動電型スピーカーであって、入力端子25には、ボイスコイル20の一方端/他方端に対応して接続する2つの接続端子S1およびS2が備わる。入力端子25とボイスコイル20は、後述するような錦糸線またはリード線を介して接続されるが、
図1では、錦糸線の図示は省略されている。なお、入力端子25は、フレーム23に取り付けるように設けられているのが好ましい。
【0031】
図2および
図3は、ボイスコイル20について説明する図である。具体的には、
図2はボイスコイル20を磁気回路側から見た斜視図であり、
図3はボイスコイル20の一部を側面視した場合の一部拡大図である。ボイスコイル20は、略円筒形状に形成されるボビン30と、ボビン30に絶縁被膜電線が一層で巻回されて形成されるコイル31と、中継箔部材34、35と、コイル31の一方端が接続される錦糸線36と、コイル31の他方端が接続される錦糸線37と、を備える。
【0032】
本実施例のボイスコイル20のボビン30は、ポリイミド樹脂のフィルムで形成されている。ボビン30は、他にクラフト紙、スパイラル紙の紙材料、もしくは、キャプトン、シルター、ティル等の樹脂材料、もしくは、アルミ、または、チタンを含む金属材料、のいずれかの材料で形成されていればよい。ボビン30は、略円筒形状に形成される。
【0033】
コイル31を形成する絶縁被膜電線は、断面が丸または平角の銅線、アルミ線、又は、銅クラッドアルミ線のいずれかから選択すればよい。コイル31は一層巻のコイルであるが、平角線であるエッジワイズ線を採用するのが好ましい。コイル31は一層巻のコイルであるので、巻き初め/巻き終わりに対応する一方端32と他方端33とが、コイル31の上部側と下部側とにそれぞれ現れる。
【0034】
中継箔部材34および35は、それぞれボビン30の外側円曲面に貼り付けられて、コイル31の両端(一方端32、他方端33)および錦糸線36または37の一端を、ハンダ付けによりそれぞれ相互に電気的及び機械的に接続する。中継箔部材34および35は、例えば銅箔のような導通性を有する薄い金属箔で形成される。ボイスコイル20は、中継箔部材34および35を設けることで、錦糸線36または37を強固に取り付けることでき、コイル31を形成する絶縁被膜電線の断線を防止する。
【0035】
図示するように、略円筒形状のボビン30の下部側にコイル31が巻回され、略円筒形状のボビン30の上部側に中継箔部材34および錦糸線36と、中継箔部材35の第2電極部352および錦糸線37が取り付けられる。これは、動電型スピーカー2の磁気回路22の磁気空隙が、振動板21を含む振動系が取り付けられる一方側からのみ、ボイスコイル20のコイル31を挿入できる構造になっていることに対応した構造である。
【0036】
つまり、中継箔部材34および35は、ボイスコイル20のコイル31を磁気回路の磁気回路22の磁気空隙に挿入した場合に、コイル31に接続する錦糸線36および37が磁気回路22に接触しないような位置に、コイル31の両端(一方端32、他方端33)を導き出して錦糸線36または37に接続及び固定している。磁気回路22の磁気空隙は非常に狭い間隔の空間なので、当然にボイスコイル20は、ボビン30、コイル31、および、中継箔部材35が磁気回路22に接触しないで磁気空隙中を振動可能なように設計する必要がある。
【0037】
そこで、中継箔部材35は、略円筒形状のボビン30の下部側に出現する一層巻のコイル31の他方端33を、電気的並びに機構的に略円筒形状のボビン30の上部側に出現するコイル31の一方端32側に近づけるようにする。具体的には、中継箔部材35は、コイル31の他方端33が接続される第1電極部351と、錦糸線37が接続される第2電極部352と、ボビン30に一層で巻回されたコイル31と略直交するように配置されて第1電極部351と第2電極部352とを接続する交差部350と、を備える。したがって、図示するように、コイル31は、ボビン30および中継箔部材35の交差部350の上に絶縁被膜電線を巻回すようにして形成される。
【0038】
一方で、中継箔部材34は、コイル31に巻回されるような交差部を有する必要は無く、中継箔部材35の第2電極部352に相当するような最小の必要面積を有していればよい。本実施例のボイスコイル20では、中継箔部材34および中継箔部材35の第2電極部352に、あらかじめ錦糸線36および37が予備加工によって取り付けられているが、あらかじめ錦糸線36および37を取り付けていない場合には、動電型スピーカー2の製造工程において、錦糸線36および37又は相当するリード線等を取り付けてもよい。ボイスコイル20は、通常のボイスコイルの製造方法に準じて製造可能なので、ボイスコイルとしての製造が容易であり、これを用いる動電型スピーカー2としても品質が安定する。
【0039】
スイッチングアンプ10は、入力端子3に入力される音声信号を増幅して出力端子16に出力するスイッチング増幅部を内部に含む。スイッチング増幅部は、グランドされた接地電位を基準電位として、基準電位よりも大きな第1電位V1を有する第1電源11と、基準電位よりも小さく第1電源とは極性が異なる第2電位V2(=−V1)を有する第2電源12と、キャリア信号に基づいて入力音声信号をパルス幅変調するパルス変調回路13と、2つのMOSFET14および15を含む。第1MOS−FET14は、ゲート端子がパルス変調回路13に接続され、ソース端子が第1電源11に接続され、ドレイン端子が出力端子16の端子T1に接続するスイッチング増幅部の出力端子に接続される。また、第2MOS−FET15は、ゲート端子がパルス変調回路13に接続され、ソース端子が第2電源12に接続され、ドレイン端子が出力端子16の端子T1に接続するスイッチング増幅部の出力端子16に接続される。
【0040】
パルス変調回路13は、キャリア信号に基づいて入力音声信号をパルス幅変調して、第1パルス変調信号を第1MOS−FET14に出力し、第1パルス変調信号と異なる第2パルス変調信号を第2MOS−FET15に出力する。キャリア信号は、音声信号の周波数帯域(約20Hz〜20kHz)よりも遙かに高い周波数(例えば、約300kHz以上)の変調信号である。第1MOS−FET14は、パルス変調回路13からの第1パルス変調信号に応答してオン状態またはオフ状態になり、第1電位V1をスイッチング増幅部の出力端子に出力するか、または解放状態となる。また、第2MOS−FET15は、パルス変調回路13からの第2パルス変調信号に応答してオン状態またはオフ状態になり、第2電位V2をスイッチング増幅部の出力端子に出力するか、または解放状態となる。
【0041】
スイッチング増幅部からの出力信号は、コイル/コンデンサから構成されるような低域通過フィルタを経ることなく、出力端子16の端子T1に出力される。したがって、スイッチングアンプ10の出力端子16の端子T1には、音声信号よりも遙かに周波数帯域が高いキャリア信号成分を含み、第1電位V1と第2電位V2との間でスイングする増幅されたパルス変調信号が出力される。増幅されたパルス変調信号は、増幅された入力音声信号を含み、(図示しない)低域通過フィルタを通過させると、入力された音声信号を電力増幅した出力信号として取り出すことができる。スイッチングアンプ10の出力端子16の端子T2は、端子T1と組になる出力端子であり、スイッチングアンプ10内において基準電位に接地されている。
【0042】
なお、スイッチングアンプ10のスイッチング増幅部は、上記構成の構成に限らず、可聴音域よりも高いキャリア周波数成分を含むスイッチング出力信号を出力する他の変調方式によるD級アンプであればよい。例えば、スイッチング増幅部のパルス変調回路13は、キャリア信号に基づいて入力音声信号をパルス密度変調する変調回路であってもよい。スイッチング増幅部は、第1電位V1と第2電位V2との間でスイングする増幅された2値のパルス変調信号を出力するものでもよく、基準電位を含む3値のパルス変調信号を出力するものでもよい。
【0043】
したがって、このスピーカーシステム1では、スイッチングアンプ10からの可聴音域よりも高いキャリア周波数成分を含む出力信号は、コイル/コンデンサから構成されるような低域通過フィルタを経ることなく、動電型スピーカー2のボイスコイル20に入力されることになる。スイッチングアンプ10の効率を考慮すると、ボイスコイル20を含む動電型スピーカー2の電気インピーダンスは、キャリア信号の周波数帯域において十分に高い値になることが望ましく、ボイスコイル20の線間容量を低減して、電気インピーダンスが局所的に低下するような共振現象を発生させないようにする必要がある。
【0044】
ボイスコイル20の中継箔部材35は、略円筒形状のボビン30の下部側に出現する一層巻のコイル31の他方端33を、電気的並びに機構的にコイル31の一方端32側である略円筒形状のボビン30の上部側に近づけるようにするのに、ボビン30に一層で巻回されたコイル31と略直交するように配置される交差部350を備える。
図3に示すように、交差部350は、その長さ方向においてコイル31の絶縁被膜電線を横切るように、コイル31の巻線高さを規定するH寸法よりも長くなるように長さL1が設定される。
【0045】
また、交差部350の幅寸法W0は、錦糸線37を固定するのにある程度の面積が必要な第2電極部352の幅寸法W2よりも、細く形成される。第1電極部351の幅寸法W1は、コイル31の他方端33を固定するのにある程度の面積が必要になるので、交差部350の幅寸法W0よりも太く広くなる。ただし、場合によっては交差部350の幅寸法W0と同程度かそれ以上の寸法であればよい。
【0046】
ボイスコイル20は、中継箔部材35の交差部350の導体としての幅寸法W0が、細く狭く形成されているので、コイル31と交差する投影面積が、従来のように交差部350の幅寸法を細く狭くしない場合に比べて、小さくなる。したがって、ボイスコイル20の線間に寄生して発生する容量の値を、従来よりも小さくすることができる。
【0047】
交差部350の幅寸法W0が、細く狭いほどボイスコイル20の容量は小さくできるが、ボイスコイル20の製造品質を安定的に高める上で中継箔部材35を用いるという前提では、安定的に製造可能な寸法範囲で、交差部350の幅寸法W0を、錦糸線37を取り付けるのにある程度の広さが必要な第2電極部352の幅寸法W2よりも細く形成すればよい。つまり、交差部350の幅寸法W0は、通常に用いられる単純な短冊状の本実施例のような交差部350を備えない中継箔部材の幅寸法に比べて、細く狭くすればよい。
【0048】
なお、本実施例のボイスコイル20の中継箔部材35は、導通性を有する薄い金属箔である銅箔であるが、可撓性を有するフレキシブルプリント基板等で構成してもよい。例えば、中継箔部材35をフレキシブルプリント基板で構成する場合には、ボイスコイル20の容量を小さくするように交差部350の導体の幅寸法W0を、第2電極部352の幅寸法W2よりも細く形成すればよいのであって、交差部350のフレキシブルプリント基板の絶縁体の幅寸法は、制限されない。
【0049】
また、ボイスコイル20は、一方の中継箔部材35を備えていればよく、他方の中継箔部材34は、コイル31の一方端32と錦糸線36を接続してボビン30に固定できれば、他の手段で実現しても、省略しても良い。
【0050】
図4および
図5は、ボイスコイル単体での電気インピーダンス特性について説明するグラフである。具体的には、グラフは、それぞれ横軸の周波数に対して縦軸がボイスコイルの電気インピーダンスの絶対値を示す。なお、グラフの周波数帯域は、可聴周波数帯域である20Hz〜20kHzよりも遙かに高い100kHz〜100MHzであって、スイッチングアンプ10のキャリア信号の周波数帯域であることに留意すべきである。
【0051】
図4は、本実施例のボイスコイル20の場合と、中継箔部材35の交差部350の幅寸法W0が第2電極部352の幅寸法W2に等しい従来の場合を想定する比較例1の(図示しない)ボイスコイル20aを示している。また、
図5は、他の比較例として、中継箔部材35を取り除いて、コイル31から離隔させた他のリード線によりコイル31の他方端33を錦糸線37と接続させて、コイル31の線間の寄生容量を最小化した理想的な場合を想定する比較例2の(図示しない)ボイスコイル20bと、中継箔部材35を本来的に必要としない2層巻のコイルを想定する比較例3の(図示しない)ボイスコイル20cと、を示している。
【0052】
本実施例のボイスコイル20は、比較例1のボイスコイル20aに比べて容量値を小さくできるので、
図4に示すように、動電型スピーカー2のボイスコイル20の容量値に起因する電気インピーダンスの共振周波数を、比較的に高く設定できる。また、ボイスコイル20は、最初の共振周波数以上で発生する電気インピーダンスの乱れであるリンギングを抑制でき、キャリア信号の周波数帯域でスイッチングアンプ10から見た負荷である動電型スピーカー2の電気インピーダンスの絶対値が低下することを防ぐことができる。
【0053】
一方で、比較例1のボイスコイル20aは、寄生容量が本実施例のボイスコイル20よりも大きくなる。比較例1のボイスコイル20aの場合に出現する10MHz付近の電気インピーダンス特性のディップでは、ボイスコイル20aの容量値に起因する共振で電気インピーダンスの絶対値が、ボイスコイル20の場合に比べて極端に低下することを示している。複数の電気インピーダンス特性のディップが存在する場合には、全体的な電気インピーダンスの絶対値が低下することになる。本実施例のボイスコイル20では、電気インピーダンスの絶対値の低下を防ぐことができるので、キャリア信号の電流が増えて消費電力が増加することがなくなり、スイッチングアンプ10からみると結果的に、音声再生の効率が比較例1の場合よりも改善することになる。
【0054】
また、ボイスコイルの寄生容量を低減するという意味では理想的な比較例2のボイスコイル20bの場合には、容量が小さくなることで共振周波数が高くなり、共振周波数よりも高い周波数での電気インピーダンスの乱れであるリンギングが最も抑制され、電気インピーダンスの絶対値が低下しにくくできる。しかしながら、1層巻ボイスコイルでは、略円筒形状のボビン30の下部側に出現する一層巻のコイル31の他方端33を上部側に導出しなければならない。つまり、比較例2のボイスコイル20bは、磁気回路22の磁気空隙にコイル31を配置すると、コイル31の他方端33に入力信号を供給できない、あるいは、コイル31の他方端33に入力信号を供給するリード線が磁気回路22に接触するのを防げないので、良好に動作する動電型スピーカー2を構成することができず、現実的ではない。
【0055】
また、比較例3の中継箔部材35を本来的に必要としない2層巻のボイスコイル20cの場合は、ボイスコイルが2層巻にされることで線間の寄生容量が大きくなる。したがって、共振周波数が低くなり、共振周波数よりも高い周波数での電気インピーダンスの乱れであるリンギングが激しくなり、電気インピーダンスの絶対値が低下する。したがって、2層巻のボイスコイル20cを用いて動電型スピーカー2を構成する場合には、キャリア信号の電流が増えて消費電力が増加することになるので、スイッチングアンプ10からみると結果的に、音声再生の効率が低下することになる。
【0056】
本実施例のボイスコイル20を含む動電型スピーカー2の電気インピーダンスは、動電型スピーカー2の最低共振周波数f0の共振ピークが出現するほかに、金属の磁性体を含む磁気回路22の磁気空隙にコイル31が挿入されるので、コイル31のインダクタンスが大きくなるように変化し、その結果としてコイル31の寄生容量による共振周波数を含む電気インピーダンス特性は、
図4および
図5に示す特性から変化することになる。比較例のボイスコイル20a、20cの場合も同様である。
【0057】
しかし、コイル31の寄生容量は、磁気回路22の磁気空隙に挿入されるか否かでは、基本的に変化しない。スイッチングアンプ10のキャリア信号の周波数帯域において、上述したボイスコイル単体での電気インピーダンス特性が示す傾向は、たとえ動電型スピーカー2の電気インピーダンスとして比べても、本実施例のボイスコイル20と、比較例のボイスコイル20a、20cとの場合とで、同じ傾向を示して相対的な関係が変わることはない。また、比較例のボイスコイル20bは、磁気回路22の磁気空隙に挿入するとコイル31の他方端33に信号を供給できなくなるので、動電型スピーカーに組み入れられない。
【0058】
したがって、スイッチングアンプ10からみると、本実施例のボイスコイル20を含む動電型スピーカー2が、他の比較例1または3の場合よりも最も音声再生の効率が改善したスピーカーシステム1を実現することができる。
【0059】
図6は、本発明の実施例のスピーカーシステム1の効率について説明するグラフであり、また、
図7は比較例の(図示しない)スピーカーシステムの効率について説明するグラフである。横軸は、規定距離での基準化した音圧レベルであり、縦軸は、電源からスイッチングアンプへの基準化した入力電力である。したがって、横軸が同じ音圧レベルを示す場合には、縦軸である入力電力が小さいほど、スピーカーシステム1の効率が良いことを示す。
【0060】
図6のグラフに実線で示す「2(20)」は、実施例のボイスコイル20を備える動電型スピーカー2の場合であり、破線で示す「2(20)+LPF」は、スイッチングアンプ10のドライバ回路と動電型スピーカー2のスピーカー端子との間に(図示しない)低域通過フィルタ(LPF)を挿入して設けた場合である。実施例のスピーカーシステム1は、動電型スピーカー2が実施例のボイスコイル20を備えるので、低域通過フィルタ(LPF)を挿入して設けるか否かに係わらず、入力電力に対する音圧レベル、すなわち、効率があまり変化しない。
【0061】
つまり、動電型スピーカー2の場合には、容量が小さいボイスコイル20の電気インピーダンスがスイッチングアンプ10のキャリア周波数の帯域で十分に大きいので、低域通過フィルタ(LPF)で消費される無効な電力が少ない。したがって、スイッチングアンプ10のドライバ回路と動電型スピーカー2のスピーカー端子との間に低域通過フィルタ(LPF)を有さないように、スピーカーシステム1の設計が可能である。
【0062】
図7のグラフに実線で示す「2d(20d)」は、比較例の(図示しない)2層巻のボイスコイル20dを備える動電型スピーカー2dの場合であり、破線で示す「2d(20d)+LPF」は、スイッチングアンプ10のドライバ回路と動電型スピーカー2dのスピーカー端子との間に(図示しない)低域通過フィルタ(LPF)を挿入して設けた場合である。この比較例のスピーカーシステム1dは、動電型スピーカー2dが、従来の容量の大きい2層巻のボイスコイル20dを備えるので、低域通過フィルタ(LPF)を有する構成にすることを前提としている。これらを比較して分かるように、入力電力に対する音圧レベルが、低域通過フィルタ(LPF)の有無により大きく変化している。
【0063】
比較例の動電型スピーカー2dは、低域通過フィルタ(LPF)を挿入して設ける場合には効率が高くできるが、低域通過フィルタ(LPF)を備えない場合には効率が低下してしまう。つまり、比較例の動電型スピーカー2dは、低域通過フィルタ(LPF)で消費される無効な電力が多いので、低域通過フィルタ(LPF)を備えないようにすると効率が悪く、同一の音圧レベルを実現するのに、より多くの電力が必要になることがこれらのグラフから分かる。このように比較例の動電型スピーカー2dでは、スピーカーシステム1の設計するのに際し、スイッチングアンプ10のドライバ回路と動電型スピーカー2のスピーカー端子との間に低域通過フィルタ(LPF)を設ける必要がある。
【0064】
なお、本実施例の動電型スピーカー2の場合にも、低域通過フィルタ(LPF)を挿入して設けるようにしてもよい。容量が小さいボイスコイル20は、電気インピーダンスがスイッチングアンプ10のキャリア周波数の帯域で十分に大きいので、低域通過フィルタ(LPF)を構成するコイル/コンデンサを小さな定数の素子に変更でき、小型化が可能な利点がある。したがって、スイッチングアンプ10および動電型スピーカー2を備えるスピーカーシステム1において、低域通過フィルタ(LPF)を備えていても小型化、低コスト化を図る設計が可能である。
【0065】
また、本実施例のボイスコイル20では、動電型スピーカー2の磁気回路22の磁気空隙を、一層巻のコイル31および中継箔部材35が配置されるだけでよいように十分に狭くできるので、磁気空隙中での磁束密度を高めることができ、結果的に変換効率の高い動電型スピーカー2を実現できる利点がある。ボイスコイル20は、標準的な一層巻のボイスコイル製造の工程を利用して構成することができるので、製造が容易で動電型スピーカー2の製造コストの面でも有利であって、品質が安定する利点がある。
【0066】
上記の実施例では、スイッチングアンプ10および動電型スピーカー2を備えるスピーカーシステム1について説明したが、スイッチングアンプ10は、スイッチング動作を行わない増幅器に置き換えることが可能である。動電型スピーカー2は、容量が小さいボイスコイル20を備えるので、容量リアクタンスが信号歪みの要因とならず、歪が少ない良好な音声再生が可能になる利点がある。