(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の仕切付き閉断面構造は、例えばセンターピラーとサイドシルとの連結部などに採用されている。このような連結部は、車両の振動によって生じる閉断面部分の変形や振動の抑制の要請が特に高い。
【0006】
本発明の目的は、仕切付き閉断面構造の車体部分において、閉断面部分の変形を防止しつつ、減衰部材が効果的に振動の減衰機能を発揮することができる車体構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に係る車両の車体構造は、所定方向に延びる閉断面部を形成する第1パネル及び第2パネルと、前記所定方向に延び、前記閉断面部を仕切る仕切パネルと、前記閉断面部内において前記第1パネルと前記仕切パネルとの間に配置され、前記第1パネルと接合されるパネル接合部と、前記仕切パネルと接合されるフランジ部とを備える補強体と、を備え、前記補強体によって形成される接合部は、前記第1パネルと前記パネル接合部とが互いに当接した状態で結合された剛結合部と、前記仕切パネルとフランジ部との間に減衰部材が介在された状態で結合された柔結合部とを含み、前記仕切パネルは、前記柔結合部の近傍から前記第2パネルに向けて延び、前記第2パネルに接合される延長部を備えていることを特徴とする。
【0008】
この車体構造によれば、閉断面部内において、第1パネルと仕切パネルとの間には補強体が配置されると共に、前記仕切パネルと第2パネルとの間には当該仕切パネルから延び出す延長部が配置される。これにより、前記閉断面部の変形耐性を前記補強体及び前記延長部によって高めることができる。また、前記補強体は、第1パネルとの剛結合部と、仕切パネルとの柔結合部とを形成している。従って、前記柔結合部に配置される減衰部材によって、車体の振動を効果的に減衰させることができる。
【0009】
上記の車体構造において、前記延長部が前記第2パネルと形成する接合は、前記延長部の一部と前記第2パネルとが互いに当接した状態で結合された剛結合部であることが望ましい。
【0010】
前記延長部は、前記仕切パネルから延び出した部分であり、当該仕切パネルに対しては、実質的に剛結合部を形成している。そして、上記の車体構造によれば、前記第2パネルに対して前記延長部の一部が剛結合部を形成する。このため、車両の振動により発生した応力は、変形可能な柔結合部に集中するようになり、減衰部材によって前記振動が効果的に減衰される。
【0011】
上記の車体構造において、前記仕切パネルは、前記所定方向における端部を備え、該端部付近の前記仕切パネルに対して前記フランジ部が接合され、前記延長部は、前記端部から前記第2パネルに向けて延びる延長本体部と、前記延長本体部の端縁に形成され、前記第2パネルに接合される延長接合部とを備えることが望ましい。
【0012】
閉断面部内において仕切パネルが端部を持つ場合、当該端部は振動に基づく変形が発生し易い部分となる。上記の車体構造によれば、このような仕切パネルの端部付近に前記フランジ部が接合されるので、比較的大きな歪み応力を減衰部材に与えることができ、振動減衰効果を高めることができる。また、延長部は、前記端部から前記第2パネルに向けて延びる延長本体部及びその端縁の延長接合部とからなる。このため、当該延長部を、仕切パネルに対する簡易な折り曲げ加工等により容易に、また仕切パネルと一体的に形成することができる利点がある。
【0013】
上記の車体構造において、前記延長本体部は平板状であり、前記補強体は、前記パネル接合部と前記フランジ部との間に延在する平板状の補強本体部を備え、前記第1パネルと前記第2パネルとの間において前記延長本体部と前記補強本体部とが直線状に並ぶように、前記補強体及び前記延長部が配設されていることが望ましい。
【0014】
この車体構造によれば、前記延長本体部と前記補強本体部とが直線状に並んでいるので、閉断面部の、第1パネルと第2パネルとが互いに接近する方向に対する機械的な強度を高めることができる。従って、振動の減衰機能を発揮させつつ、前記閉断面部の変形耐性を一層高めることができる。
【0015】
この場合、前記仕切パネルに対し、前記延長本体部及び前記補強本体部が直交するように延在させれば、より機械的強度を高めることができる。
【0016】
上記の車体構造において、前記第1パネルがサイドシルインナであり、前記第2パネルがサイドシルアウタレインであり、前記仕切パネルがセンターピラーインナであって、前記延長部は、前記サイドシルアウタレインに接合されていることが望ましい。
【0017】
既述の通り、センターピラーとサイドシルとの連結部においては、車両の振動によって大きな歪みが発生し易く、外力に対する耐性もより求められる。従って、本発明に係る車体構造を適用するには好適である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、仕切付き閉断面構造の車体部分において、閉断面部分の変形を防止しつつ、減衰部材が効果的に振動の減衰機能を発揮することができる車体構造を提供することができる。従って、閉断面部分の強度を高めると共に、車両の乗心地を改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき詳細に説明する。
【0021】
[車体の全体的な説明]
図1は、本発明が適用される車両の車体1の一部を示す斜視図である。図中には、車両の前方を示す「前」の矢印と、後方を示す「後」の矢印を付記している。以下の図に付している「前」「後」などの矢印は、
図1に示す車両の前後に相当する。
【0022】
車体1は、車両の左右側面を構成するサイドフレーム10を含む。
図1では、一方の側面のサイドフレーム10だけを図示している。サイドフレーム10は、車両の側面部分の外装となるサイドフレームアウタ100と、このサイドフレームアウタ100の車内側に配置されたルーフレール11、フロントピラー12、センターピラー13、リアピラー14、及びサイドシル15とを備える。
【0023】
サイドフレームアウタ100は、プレス成型にて、一枚の鋼鈑を所定形状に成型すると共に前後のドア開口を打ち抜くことによって形成された板材である。サイドフレームアウタ100の外表面は、車両の外装塗装面となる。ルーフレール11は車両の上部において、サイドシル15は車両の下部において、それぞれ車両の前後方向に延びている。ルーフレール11とサイドシル15との間は、前側においてはフロントピラー12で、後側においてはリアピラー14で、そして前後方向の中央付近においてはセンターピラー13で、各々上下方向に連結されている。
【0024】
前後方向(所定方向)に延びるサイドシル15と、上下方向に延びるセンターピラー13とは、センターピラー13の下端部がサイドシル15の前後方向中間部分に連結される態様の、略T字状に交差する連結部Jを形成している。本実施形態では、この連結部Jに本発明に係る車体構造が適用される例を示す。
【0025】
一方のサイドフレーム10のルーフレール11と他方のサイドフレームのルーフレール(図略)との間には、車幅方向に延びる複数のレインフォースメント(以下、本明細書では単に「レイン」と言う)及びヘッダが架設される。本実施形態では、センターピラー13の配設位置に、ルーフレイン16が架設され、その前後に3つのルーフレイン173、174、175が架設されている。さらに、車両の前側にはフロントヘッダ171が、後側にはリアヘッダ172が各々架設されている。これらルーフレイン173〜175及びヘッダ171、172の上を覆うように、図略のルーフパネルが、一対のサイドフレーム10間に取り付けられる。また、一方のサイドシル15と他方のサイドシル(図略)との間には、複数のクロスメンバが架設される。
図1では、連結部Jに架設されるクロスメンバ18だけを示している。
【0026】
[連結部Jの構造]
図2は、
図1のII−II線の概略的な断面図、
図3は、サイドシル15とセンターピラー13との連結部Jの、車幅方向の断面図である。連結部Jの車外側はサイドフレームアウタ100で覆われている。連結部Jの車内側、つまり車室の底部は、フロアパネル102で覆われている。フロアパネル102の上には、上述のクロスメンバ18及びその構成部材であるシートブラケット103が配置されている。また、連結部Jにおけるサイドシル15の閉断面部内には、バルクヘッド2(補強体)と、センターピラー13の構成部材と一体の延長部3が配設されている。以下、各部材を説明する。
【0027】
サイドシル15は、前後方向(所定方向)に延びる閉断面部を有する車体剛性部材であり、断面形状が略コ字型のサイドシルアウタレイン151(第2パネル)と、同じく断面形状が略コ字型のサイドシルインナ152(第1パネル)とからなる。サイドシルアウタレイン151は、前記コ字型形状の開口部分と略平行な第1側板1511と、この第1側板1511の上縁及び下縁から各々車内方向に延びる第1上板1512及び第1下板1513とを含む。他の部材との接合を行うため、第1上板1512の開口側端縁には第1上フランジ部1514が、第1下板1512の開口側端縁には第1下フランジ部1515が、各々設けられている。
【0028】
サイドシルインナ152は、前記コ字型形状の開口部分と略平行な第2側板1521と、この第2側板1521の上縁及び下縁から各々車外方向に延びる第2上板1522及び第2下板1523とを含む。他の部材との接合を行うため、第2上板1522の開口側端縁には第2上フランジ部1524が、第2下板1522の開口側端縁には第2下フランジ部1525が、各々設けられている。
【0029】
センターピラー13は、上下方向に延びる閉断面を有する車体剛性部材であり、車外側のセンターピラーアウタレイン131と、車内側のセンターピラーインナ132とからなる。センターピラーアウタレイン131及びセンターピラーインナ132は、共に前後方向の端部に突合せ接合用のフランジ部を有し、スポット溶接にて前記フランジ部同士を接合することによって、両者は一体化されている。
【0030】
図4は、車両の車外側から連結部Jを見た側面図であって、サイドフレームアウタ100が取り除かれた状態を示す図である。
図6は、
図4と同じ状態の、連結部Jの拡大斜視図である。センターピラーアウタレイン131は、ルーフレール11に接合される上端部133と、サイドシル15(サイドシルアウタレイン151)に接合される下端部134とを備える。下端部134は、センターピラーアウタレイン131の本体部分よりも前後方向の幅が幅広とされた部分であり、その幅広部分の前端及び後端に、前端縁134F及び後端縁134Bを備える。また、下端部134は、車外方向に膨らみを持つよう、
図2に示す通り車幅方向の断面においてL字型に折り曲げられている。下端部134の内面はサイドシルアウタレイン151の外面に当接しており、第1側板1511にスポット溶接にて固着されている。
【0031】
図5は、
図4の状態から、センターピラーアウタレイン131が取り除かれた状態を示す側面図である。センターピラーインナ132は、上下方向に延びる、概ね平板状の部材であり、その下端に、サイドシル15の閉断面部に配設される仕切板部135(仕切パネル)を備えている。
図2に示す通り、仕切板部135によってサイドシル15の閉断面部は、第1閉断面部C1と第2閉断面部C2とに仕切られている。第1閉断面部C1は、仕切板部135とサイドシルインナ152とによって区画された空間、第2閉断面部C2は、仕切板部135とサイドシルアウタレイン151とによって区画された空間である。
【0032】
サイドシルアウタレイン151とサイドシルインナ152とは、その突合せ面部分に仕切板部135を介在させて、互いに接合されている。詳しくは、第1上フランジ部1514と第2上フランジ部1524とは、仕切板部135の上端部分を挟んで互いに突き合わされ、スポット溶接にて固着されている。また、第1下フランジ部1515と第2下フランジ部1525とは、仕切板部135の下端部分を挟んで互いに突き合わされ、サイドフレームアウタ100の下端部分101と共にスポット溶接にて固着されている。
【0033】
仕切板部135は、
図8に示されているように、センターピラーインナ132の本体部分よりも前後方向(所定方向)の幅が幅広とされた部分であり、その幅広部分の前端及び後端に、前端縁135F及び後端縁135Bを備える。この前端縁135Fから後端縁135Bまでの範囲において、サイドシル15の閉断面部は前後方向に延びる2つの閉断面部C1、C2に分割されている。また、前端縁135F及び後端縁135Bからは、サイドシル15の剛性を補強する補強体として機能する延長部3がそれぞれ延設されている。延長部3は、第2閉断面部C2の前後に1個ずつ配設されている。
【0034】
バルクヘッド2は、連結部Jの近傍においてサイドシル15の剛性を補強する補強体である。
図7は、
図6のVII−VII線断面図、
図8は、
図5の状態から、サイドシルアウタレイン151が取り除かれた状態を示す斜視図、
図9は、
図8の状態から、センターピラーインナ132が取り除かれた状態を示す斜視図である。バルクヘッド2は第1閉断面部C1に前後1個ずつ配設されている。
【0035】
前側のバルクヘッド2は、仕切板部135の前端縁135F付近に配置され、後側のバルクヘッド2は、後端縁135B付近に配置されている。すなわち、バルクヘッド2は、前端縁135F及び後端縁135B付近において、サイドシルインナ152と仕切板部135との間に配置され、両者に対する接合部を有している。延長部3は、前端縁135F及び後端縁135Bから前後方向に延び出した余長部分を車外側へ折り曲げて形成されており、サイドシルアウタレイン151に対する接合部を有している。
【0036】
バルクヘッド2は、サイドシルインナ152(第1パネル)と接合される接合部21(パネル接合部)と、仕切板部135(仕切パネル)と接合されるフランジ部22とを備えている。延長部3は、仕切板部135と一体の部分であり、前端縁135F又は後端縁135Bから車外側(サイドシルアウタレイン151)に延び出している延長本体部31と、延長本体部31の端縁に形成され、サイドシルアウタレイン151(第2パネル)と接合される延長接合部32とを備えている。
【0037】
バルクヘッド2によって形成される接合部は、サイドシルインナ152と接合部21とが互いに当接した状態で結合された剛結合部2Aと、仕切板部135とフランジ部22との間に減衰部材4が介在された状態で結合された柔結合部2Bとを含む。一方、延長部3の延長接合部32によって形成される接合部は剛結合部3Aである。
【0038】
[バルクヘッドの詳細説明]
続いて、バルクヘッド2について詳述する。
図10は、バルクヘッド2の斜視図、
図11(A)はバルクヘッド2の側面図、
図11(B)はその上面図である。バルクヘッドは、節部材とも呼ばれ、鋼材等の優れた剛性を有する板材に、打ち抜き及び折り曲げ加工等を施して形成された部材である。
【0039】
バルクヘッド2は、概ね台形の平板状部分からなる補強本体部20と、上述の接合部21及びフランジ部22とを備える。補強本体部20は、接合部21とフランジ部22との間に延在している。ここでは、接合部21として4つの接合片、すなわち第1接合片211、第2接合片212、第3接合片213及び第4接合片214が備えられている。補強本体部20の外周縁には、折り曲げ加工によって形成された第1稜線部201及び第2稜線部202が存在する。第2稜線部202は、台形形状の補強本体部20の下底辺に沿う直線状の稜線であり、第1稜線部201は前記下底辺を除く辺に沿うコ字型の稜線である。
【0040】
第1〜第4接合片211〜214は、第1稜線部201に連設された前方への曲げ起こし部分であり、各々が独立した舌片状の形状有している。これらの、補強本体部20に対する曲げ起こし角は略90°である。第1〜第4接合片211〜214は、サイドシルインナ152と剛結合部2Aを形成する部分であり、スポット溶接を行い得るサイズを有している。フランジ部22は、第2稜線部202に連設された後方への曲げ起こし部分であり、同様に補強本体部20に対する曲げ起こし角は略90°である。フランジ部22は、仕切板部135と柔結合部2Bを形成する部分であり、十分なサイズの減衰部材4を担持し得るサイズを有している。なお、フランジ部22には、当該フランジ部22の剛性を向上させるため、前後方向に延びる段差部221が形成されている。
【0041】
補強本体部20は、仕切板部135とサイドシルインナ152とによって作られる第1閉断面部C1を、前後方向に仕切る仕切面部として機能する部分である。すなわち、補強本体部20は、第1閉断面部C1が延びる方向に対して概ね直交する方向に延びる面を、当該第1閉断面部C1内において形成する。従って、バルクヘッド2の組込によって、第1閉断面部C1を圧潰させる変形力、すなわちサイドシルインナ152と仕切板部135とが接近するように潰れる変形力に対する耐性を高めることができる。
【0042】
補強本体部20の中央には、概ね補強本体部20の外形形状と相似の形状を備えた絞り加工部23が備えられている。絞り加工部23は、補強本体部20において、周辺部203よりも後方に突出した平板状の部分である。絞り加工部23には、前後方向に貫通する2つの孔である円形孔24と長孔25とが、上下方向に並んで穿孔されている。
【0043】
円形孔24及び長孔25は、種々の機能を持つ孔である。これらは、第1に、バルクヘッド2の配置位置を通して前後方向に流体を良好に流通させるための孔として機能し、第2に、バルクヘッド2を金属板の折り曲げ加工により形成する際の加工基準孔として機能し、第3に、バルクヘッド2を第1閉断面部C1内に組み付けるに際しての位置決め基準孔として機能する。前記第1の機能において、円形孔24及び長孔25は、専ら車体1に防錆剤を電着塗装する際に、サイドシル15内に電着液を行き渡らせるための通過孔として利用される。前記第2、第3の機能においては、例えば円形孔24は加工又は位置決めの際の固定孔として、長孔25は逃がし孔として利用される。
【0044】
前記第1の機能について説明を加える。補強本体部20は、既述の通り第1閉断面部C1を仕切る仕切面部として機能する。このため、前後方向に延びるサイドシル15の閉断面部C1を、補強本体部20は塞ぐことになる。車体1の製造工程の一つに、車体1の組み立て後に該車体1に防錆剤を電着塗装する工程があり、該工程においては車体1が電着液に浸漬される。ここで、補強本体部20が第1閉断面部C1を塞いでいると、電着液がサイドシル15の内面(サイドシルインナ152の内面及び仕切板部135の片面)に良好に行き渡らない場合がある。円形孔24及び長孔25の形成により、前記電着液は円形孔24及び長孔25を通して流通できるようになり、良好な電着塗装が行うことができる。
【0045】
補強本体部20の周辺部203と絞り加工部23との境界には、絞り加工により形成される絞り稜線部26が形成されている。絞り稜線部26は、フランジ部22と円形孔24及び長孔25との間において、フランジ部22が延在する方向に沿う直線部分27を含む。絞り稜線部26は、円形孔24及び長孔25の穿孔によって脆弱となりがちな補強本体部20の剛性を補強する、高剛性部として機能する。とりわけ、直線部分27は、フランジ部22の剛性を高めることに貢献する。
【0046】
剛結合部2Aを形成する接合部21の、サイドシルインナ152への接合態様について、
図2も参照して説明する。接合部21の第1接合片211及び第2接合片212は、サイドシルインナ152の第2上板1522の内面に当接され、それぞれスポット溶接によって当該第2上板1522に固着される。第3接合片213は第2側板1521に、また第4接合片214は第2下板1523にそれぞれ当接され、スポット溶接にて固着される。
【0047】
フランジ部22は、センターピラーインナ132の仕切板部135の、車内側の面と対向する部分である。本実施形態のフランジ部22は、
図11(A)に示すように側面視で上下方向に長い長方形であり、上面視の
図11(B)から判る通り、やや車内側に湾曲した形状を有している。段差部221は、第1フランジ部22の上下方向の中央付近において、前後方向へ直線状に延びている。
【0048】
フランジ部22は、仕切板部135に対向する第1面22Xと、その反対側の第2面22Yとを有する。第1面22Xは、柔結合部2Bにおいて減衰部材4に接する接合領域となる。つまり、第1面22Xは、仕切板部135の車内側の面に対して所定距離の隙間を置いて対向し、前記隙間に減衰部材4が介在される。換言すると、フランジ部22と仕切板部135とは、減衰部材4を挟んで接合される。
【0049】
本実施形態では、上記の通り剛結合部2Aとして、接合部21としての4つの接合片211〜214をサイドシルインナ152にスポット溶接する態様を例示している。接合片の個数、すなわちスポット溶接箇所の数は一例であり、サイドシルインナ152の形状等に応じて適宜設定することができる。また、剛結合部用の接合片を形成することなく、第1稜線部201をサイドシルインナ152に溶接しても良い。
【0050】
剛結合部2Aは、スポット溶接に以外でも形成可能であり、例えばボルト、ナット等を用いた機械的な結合部であってもよい。この場合、第1〜第4接合片211〜214及びサイドシルインナ152には、ボルト挿通用の孔が穿孔される。あるいは、剛結合部2Aは、接着剤による接着部であってもよい。この場合、前記接着剤としては、一般的に車体の接着用に使用されている接着剤を用いることができる。例えば、温度が20℃、かつ加振力の周波数が30Hzである条件下において、貯蔵弾性率が2000MPa以上で、かつ、損失係数が0.05以下である接着剤を好適に用いることができる。
【0051】
柔結合部2Bを構成する減衰部材4は、振動を減衰させる能力を有する部材である。減衰部材4は、所定の粘弾性を有する部材であれば特に限定はなく、例えば、シリコーン系材料またはアクリル系材料からなる粘弾性部材を使用することができる。粘弾性部材の物性としては、温度が20℃、かつ加振力の周波数が30Hzである条件下において、貯蔵弾性率が500MPa以下で、かつ、損失係数が0.2以上のものが、振動の伝達を効果的に抑制できる点で好ましい。このような粘弾性部材からなる減衰部材4は、振動エネルギーをひずみエネルギーとして吸収し、これを熱エネルギーに変換して散逸することにより、振動を減衰する。
【0052】
フランジ部22の第1面22Xへ減衰部材4を配設する方法は、特に限定はない。例えば、ペースト状の粘弾性部材をフランジ部22に所定厚さだけ塗布することにより、減衰部材4となる層を形成することができる。あるいは、減衰部材4となるバルク片を準備し、これをフランジ部22に貼り付けるようにしても良い。なお、フランジ部22は、接合部21のように複数に分割されたものであっても良く、この場合、分割されたフランジ部22の各々に減衰部材4となる層が形成される。
【0053】
上述の通り、車体1には防錆剤が電着塗装される。電着塗装工程の後、防錆剤層を乾燥させるために、車体1が加熱炉内に導入され、車体1が所定の温度で一定期間だけ加熱する乾燥工程が実行される。この乾燥工程の熱を、減衰部材4の固着に用いることが望ましい。すなわち、電着塗装工程の前に、上述の通りペースト状の粘弾性部材をフランジ部22に塗布することによって、減衰部材4となる塗布層を予め担持させたバルクヘッド2を、サイドシルインナ152に剛結合(スポット溶接)しておく。そして、前記乾燥工程において車体1に与えられる熱を利用して、前記塗布層を仕切板部135に固着させることが望ましい。
【0054】
以上の通り、バルクヘッド2は、補強本体部20が第1閉断面部C1の仕切り面となるように配設され、その接合部21においてサイドシルインナ152と剛結合部2Aを形成し、また、フランジ部22においてセンターピラーインナ132の仕切板部135と、減衰部材4を介して柔結合部2Bを形成する。これにより、第1閉断面部C1の変形耐性は高められ、サイドシル15の剛性は向上する。また、車両の振動により発生した応力は、変形可能な柔結合部2Bに集中するようになり、減衰部材4によって振動が減衰される。
【0055】
また、バルクヘッド2は、自身の剛性を高めるために、補強本体部20に絞り稜線部26を、フランジ部22に段差部221を、それぞれ有している。絞り稜線部26は、種々の理由で穿孔せねばならない円形孔24及び長孔25を有する補強本体部20の剛性を高める。段差部221は、上下方向に長い帯状のフランジ部22の剛性を高める。従って、バルクヘッド2の剛性は高いものとなり、第1閉断面部C1の補強能力を向上することができる。
【0056】
さらに、バルクヘッド2の高剛性化を図ることによって、バルクヘッド2と減衰部材4との剛性差がより大きくなり、車体1に振動が発生したときに、減衰部材4に対する応力集中度合いが一層高められる。バルクヘッド2の剛性が低い場合、例えば円形孔24及び長孔25の穿孔によって脆弱化した補強本体部20が比較的容易に曲げ変形してしまうような場合、バルクヘッド2に振動が加わった時に減衰部材4へ全ての振動応力が伝達されず、一部の振動応力が前記曲げ変形に消費されてしまう。このため、減衰部材4による振動減衰効果が低下する。これに対し本実施形態では、絞り稜線部26、とりわけ直線部分27と、段差部221とによって、減衰部材4の周辺においてバルクヘッド2の高剛性化が図られているので、振動応力をロスなく減衰部材4へ伝達することが可能となる。従って、減衰部材4による振動減衰効果をより高めることができる。
【0057】
[延長部の詳細説明]
続いて、延長部3について説明する。
図3、
図7、
図8に示す通り、延長部3は、仕切板部135に一体的に備えられた部分であり、第2閉断面部C2に配設され、延長本体部31及び延長接合部32を備える。延長部3は、センターピラーインナ132の仕切板部135が本来必要な前後方向の長さ(前端縁135Fから後端縁135Bまでの長さ)に加えて、前端縁135F及び後端縁135Bから各々延設された余長部分に、折り曲げ加工を施すことによって形成された部分である。
【0058】
延長本体部31は、前端縁135F又は後端縁135Bからサイドシルアウタレイン151に向けて延びるよう、前後方向に延びる仕切板部135から曲げ起こされた平板状の部分である。延長本体部31の仕切板部135に対する曲げ起こし角は略90°である。延長接合部32は、延長本体部31の車外側の端縁部分を略90°折り曲げることによって形成された部分である。前側の延長部3においては、延長接合部32は前側に折り曲げられ、後側の延長部3においては、延長接合部32は後側に折り曲げられている。
【0059】
延長本体部31は、仕切板部135とサイドシルアウタレイン151とによって作られる第2閉断面部C2を、前後方向に仕切る仕切面部として機能する部分である。つまり、延長本体部31は、第2閉断面部C2の断面に応じたサイズを有している。また、延長本体部31には孔33が穿孔されている。この孔33は、専ら上述の電着塗装工程において電着液を第2閉断面部C2内に流通させるために穿孔された孔である。
【0060】
延長接合部32は、サイドシルアウタレイン151と剛結合部3Aを形成する部分である。延長接合部32は、サイドシルアウタレイン151の第1側板1511における車内方向に膨出したバルジ部に当接され、スポット溶接によって当該第1側板1511に固着される。なお、サイドシルアウタレイン151の第1上板1512及び/又は第1下板1513に対して剛結合部を形成する他の延長接合部を、延長本体部31の周縁に延設するようにしても良い。なお、延長本体部31の車内側端縁は、仕切板部135の前端縁135F又は後端縁135Bに連続的に繋がっている。それゆえ、前記車内側端縁の部分も、実質的に延長部3と仕切板部135との剛結合部を形成する部分であると見なすことができる。
【0061】
以上の通り、延長部3は、延長本体部31が第2閉断面部C2の仕切り面となるように配設され、延長接合部32がサイドシルアウタレイン151と剛結合部3Aを形成する。また、延長部3は仕切板部135と一体の部分であり、実質的に仕切板部135と剛結合部を形成していると言える。このような延長部3により、第2閉断面部C2の変形耐性が高められる。従って、この延長部3による第2閉断面部C2の補強と、バルクヘッド2による第1閉断面部C1の補強とが相俟って、前後方向に延びる仕切板部135による仕切付き閉断面構造を有するサイドシル15の剛性は高められる。
【0062】
また、バルクヘッド2が形成する柔結合部2Bの近傍(前端縁135F又は後端縁135B)において、延長部3はサイドシルアウタレイン151に向けて延び出し、当該サイドシルアウタレイン151と剛結合部3Aを形成している。このため、車両の振動により発生した応力は、変形可能な柔結合部2Bに集中するようになり、減衰部材4によって前記振動が効果的に減衰される。
【0063】
また、延長部3は、前端縁135F又は後端縁135Bからサイドシルアウタレイン151に向けて延びる延長本体部31と、その端縁の延長接合部32とからなる。このため、当該延長部3を、仕切板部135に対する簡易な折り曲げ加工等により容易に、また仕切板部135と一体的に形成することができる。
【0064】
[バルクヘッド及び延長部の配置に関する説明]
続いて、バルクヘッド2と延長部3との配置関係に関して説明する。
図12は、
図3の前側のバルクヘッド2及び延長部3を拡大して示した図である。両者の配置において特徴的な点は、バルクヘッド2の平板状の補強本体部20と、延長部3の平板状の延長本体部31とが、図中の矢印L1で示すように、サイドシルアウタレイン151とサイドシルインナ152との間において車幅方向に直線状に並んでいる点である。
【0065】
詳しくは、バルクヘッド2の第2稜線部202と前端縁135Fとが、減衰部材4の配置スペースを空けて、車幅方向において対峙するよう、バルクヘッド2と延長部3とが配置されている。バルクヘッド2のフランジ部22は、前端縁135F付近の仕切板部135と対向している。このような両者の配置によって、補強本体部20と延長本体部31とが直線状に並ぶようになっている。なお、補強本体部20と延長本体部31とは、若干前後方向にオフセットしていても良い。例えば、第2稜線部202が、前端縁135Fよりもやや後方の位置に配置され、結果として柔結合部2Bが前端縁135Fよりも少々後方に形成される態様であっても良い。
【0066】
補強本体部20と延長本体部31とが直線状に並ぶようにバルクヘッド2と延長部3とが配設されることによって、サイドシル15の機械的な強度を高めることができる。サイドシル15は、連結部Jにおいて、仕切板部135にて仕切られた、車幅方向に並ぶ第1、第2閉断面部C1、C2を備えた仕切付き閉断面構造を有する。この閉断面構造において、補強本体部20と延長本体部31との両本体部が直線状に並んでいるので、一方の本体部に対して車幅方向の押圧力が作用した場合、この押圧力をダイレクトに他の本体部へ伝達することができる。従って、サイドシルアウタレイン151とサイドシルインナ152とが互いに接近する方向に対する機械的な強度、すなわち車体1の側面衝突に対する変形耐性を、一層高めることができる。なお、上記の直線状とは、直線もしくは直線に近似した線に沿って2つの部材(補強本体部20と延長本体部31)が配置されることをいい、前記2つの部材が完全な直線に沿って配置される場合に限定されない。
【0067】
さらに、本実施形態では、補強本体部20及び延長本体部31は、それぞれ仕切板部135に対して直交するように延在している。つまり、矢印L1で示す如き補強本体部20及び延長本体部31の直線体が、交差角=約90°で仕切板部135と交差している。これにより、サイドシルアウタレイン151とサイドシルインナ152とが互いに接近する方向に対する機械的な強度を、より一層高めることができる。例えば、
図2に示すサイドシル15の断面は、概ね長方形が車幅方向に2つ並ぶ形状(仕切付き閉断面構造)である。この断面が、車幅方向の力がサイドシル15に作用したときに、菱形形状に変形してしまうことを抑止する効果を、補強本体部20及び延長本体部31は一層高める。なお、上記の直交とは、仕切板部135と補強本体部20及び延長本体部31の直線体とが、80度〜100度程度の交差角で交差して配置されることをいい、90度の交差角で両者が配置される場合に限定されない。
【0068】
上記の結果として、減衰部材4はその振動減衰効果を十分に発揮できる位置に配置されている。すなわち、仕切板部135は、サイドシル15の閉断面部内において端部(前端縁135F及び後端縁135B)を持っているので、当該端部は振動に基づく変形が発生し易い部分となる。このような仕切板部135の端部付近にフランジ部22が接合されているので、比較的大きな歪み応力を減衰部材4に与えることができ、振動減衰効果を高めることができる。
【0069】
加えて、補強本体部20及び延長本体部31の直線体が仕切板部135と交差する部分において、減衰部材4との剛性差を高める工夫が施されている。バルクヘッド2のフランジ部22は、補強本体部20の端縁部分の折り曲げにより形成されている。また、補強本体部20の剛性を補強する絞り稜線部26(高剛性部)は、補強本体部20の平面に対して直交する方向に、該補強本体部20を突出させるよう変形させた段差部である。フランジ部22の折り曲げ方向は、後方(後側のバルクヘッド2では前方)である。絞り稜線部26の突出方向も、後方(後側のバルクヘッド2では前方)である。つまり、両者は同じ方向である。
【0070】
これにより、フランジ部22及び絞り稜線部26の一部である直線部分27と、これらの間の補強本体部20とによって、
図12において符号L2で示す点線図形の通り、断面がコ字型の領域が形成されることになる。このため、減衰部材4が隣接する領域の剛性がより一層高められ、減衰部材4とバルクヘッド2との剛性差が顕著となる。従って、車両の振動により発生する歪み応力を減衰部材4に集中させることができ、当該減衰部材4による振動減衰効果をより高めることができる。
【0071】
[変形実施形態の説明]
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、さらに次のような変形実施形態を取ることができる。
【0072】
(1)
図13は、変形実施形態に係るサイドシル15とセンターピラー13との連結部の、車幅方向の断面図である。上記実施形態では、バルクヘッド2がサイドシルインナ152と仕切板部135との間に配置され、延長部3がサイドシルアウタレイン151に向けて延びている例を示した。これに対し、
図13の変形実施形態では、延長部3がサイドシルインナ152に向けて延びている例を示している。
【0073】
バルクヘッド2はサイドシルアウタレイン151と仕切板部135との間に配置され、その接合部21はサイドシルアウタレイン151と剛結合部3Aを形成している。フランジ部22が、仕切板部135と柔結合部2Bを形成している点は、上記実施形態と同じである。延長部3の延長本体部31は、前端縁135Fからサイドシルインナ152に向けて延び、延長接合部32はサイドシルインナ152と剛結合部3Aを形成している。当該変形実施形態では、サイドシルアウタレイン151が特許請求の範囲における第1パネル、サイドシルインナ152が第2パネルとなる。このような変形実施形態によっても、上記実施形態と同じ作用効果を奏する。
【0074】
(2)上記実施形態では、延長部3の延長接合部32が、サイドシルアウタレイン151と剛結合部3Aを形成する例を示した。これに代えて、延長接合部32が柔結合部を形成するものであっても良い。この場合、延長接合部32とサイドシルアウタレイン151との間に減衰部材4が介在される。この変形実施形態によれば、バルクヘッド2のフランジ部22と仕切板部135との間に加えて、延長接合部32とサイドシルアウタレイン151との間にも減衰部材4が配置されるので、振動減衰効果を高めることができる。
【0075】
(3)上記実施形態では、サイドシル15とセンターピラー13との連結部Jに、本発明に係る車体構造が適用される例を示した。これは一例であり、例えば、サイドシル15とフロントピラー12との連結部に本発明を適用しても良い。この他、所定方向に延びる閉断面を形成する2つのパネル(フレーム)と、前記所定方向に延び前記閉断面内に配設される仕切パネルとを備えた、仕切付き閉断面構造を有する部分に、本発明を広く適用することができる。