(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下部走行体の上に上部旋回体が設けられた作業機械に取り外し可能に設けられ、前記上部旋回体の上部に対して昇降するために前記上部旋回体の側面に配置される作業機械の昇降装置において、
上下方向に延びる左右一対の縦部材と、
前記一対の縦部材間に配置されて上下方向に互いに離隔された複数の横部材と、
前記一対の縦部材の一方の上部に締結部材で取り付けられ、前記上部旋回体の上面に設けられた軸部材に着脱可能に係合する第1係合部材と、
前記一対の縦部材の他方の上部に締結部材で取り付けられ、前記上部旋回体の上面に設けられた係止部材に着脱可能に係合する第2係合部材と、
を有し、
前記第1係合部材および前記第2係合部材は、前記締結部材が挿通される長穴をそれぞれ有し、
それぞれの前記長穴は、前記縦部材の長手方向に直交する方向を長手方向としており、
前記昇降装置は、前記第1係合部材が前記軸部材に係合し、前記第2係合部材が前記係止部材に係合していないときに、前記軸部材を中心に水平方向に回動可能な状態となることを特徴とする作業機械の昇降装置。
前記縦部材に対する前記第1係合部材の取り付け位置、および、前記縦部材に対する前記第2係合部材の取り付け位置がそれぞれ調整されることで、前記昇降装置が回動可能な状態における前記昇降装置の傾きが補正されていることを特徴とする請求項1に記載の作業機械の昇降装置。
前記長穴は、前記縦部材の上部から前記昇降装置の重心に向かう方向に平行な方向を前記長手方向としていることを特徴とする請求項1又は2に記載の作業機械の昇降装置。
前記係止部材は、前記挿入部材が前記係止部材に挿入される方向に前記挿入部材をガイドするガイド部材を有することを特徴とする請求項5に記載の作業機械の昇降装置。
前記軸部材は、前記軸部材に係合する前記第1係合部材の回転を規制する回転規制部材を有していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の作業機械の昇降装置。
前記第1係合部材および前記第2係合部材は、前記縦部材の長手方向に平行な中心面に対して左右対称な形状にされていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の作業機械の昇降装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0013】
[第1実施形態]
(クレーンの構成)
本発明の第1実施形態による作業機械の昇降装置(昇降装置)1は、作業機械であるクレーン20に取り外し可能に設けられている。クレーン20は、側面図である
図1に示すように、下部走行体21の上に上部旋回体23が旋回可能に設けられており、図示しないブームにより、吊荷を吊り上げる作業(荷役作業)等を行う。
【0014】
下部走行体21は、無限軌道車である。上部旋回体23は、下部走行体21の上に旋回ベアリング22を介して旋回可能に設けられている。
【0015】
上部旋回体23は、上部本体24と、キャブ(運転室)27と、カウンタウエイト25と、ブーム(図示せず)と、ブームを起伏させるマスト(図示せず)と、を備える。以下、キャブ27側を前側、カウンタウエイト25側を後ろ側とする。
【0016】
上部本体24は、下部走行体21に対して旋回可能に搭載される(取り付けられる)。上部本体24の内部にはエンジン室が設けられている。上部本体24の上面には、エンジン室を開閉可能に覆うカバーが設けられている。また、上部本体24の側面には、エンジン室を開閉可能に覆うドア24aが設けられている。
【0017】
カウンタウエイト25は、クレーン20の吊荷とバランスをとるためのおもりである。カウンタウエイト25は、上部本体24の後端部に分解可能に取り付けられる。
【0018】
昇降装置1は、上部本体24の上部に対して昇降するためのものである。昇降装置1は、上部本体24に対して取り外し可能に取り付けられ、上部本体24の側面に設けられたドア24aに対向配置される。昇降装置1は、作業者が昇降可能な昇降状態と、水平方向に回動する回動状態との間で切り替え可能に構成されている。
【0019】
(ガード構造体)
上部本体24の上面には、斜視図である
図2に示すように、ガード構造体31がボルトで取り外し可能に取り付けられている。ガード構造体31は、クレーン20の前後方向に延びるパイプ32と、パイプ32の一端側に設けられた軸部材33と、パイプ32の他端側に設けられた係止部材34と、を有している。軸部材33には、後述する第1係合部材が着脱可能に係合する。係止部材34には、後述する第2係合部材が着脱可能に係合する。ガード構造体31は、上部本体24の上面の側縁に沿って設けられる。ガード構造体31は、めっき処理されている。
【0020】
パイプ32は、上部本体24の側面のドア24aの上方に配置される。パイプ32は、昇降装置1を昇る作業者の足場として機能する。これにより、ドア24aの上端が作業者に踏まれて破損するのが防止される。
【0021】
ガード構造体31は、パイプ32の軸を中心に、水平方向に左右対称な形状にされている。よって、ガード構造体31の左右を反転させても、ガード構造体31の機能はそのままである。即ち、ガード構造体31の左右を反転させても、パイプ32はドア24aの上方に位置し、軸部材33には第1係合部材が着脱可能に係合し、係止部材34には第2係合部材が着脱可能に係合する。
【0022】
(軸部材)
軸部材33は、上下方向に延びる円筒状の円筒部材41を有している。円筒部材41の外周に後述する第1係合部材の円筒部材が嵌め込まれることで、第1係合部材が軸部材33に着脱可能に係合する。円筒部材41に嵌った第1係合部材の円筒部材は円筒部材41の軸を中心に回転可能となる。
【0023】
また、軸部材33は、円筒部材41の外周に設けられたリング状の止め部材42を有している。止め部材42は、円筒部材41に嵌る第1係合部材の円筒部材を受け止めて、第1係合部材の円筒部材が円筒部材41に嵌り込みすぎないようにするためのストッパである。
【0024】
また、軸部材33は、リング状の止め部材42から径方向外方に突出した回転規制部材43を有している。円筒部材41に嵌った第1係合部材の円筒部材を回転させたときに、第1係合部材の後述するブラケットの下端部が水平方向から回転規制部材43に当接することで、第1係合部材の円筒部材の回転が規制される。
【0025】
(係止部材)
係止部材34は、上下方向に面した板状の板状部材44を有している。板状部材44は、パイプ32との間に隙間をあけながら水平方向に延びている。板状部材44とパイプ32との隙間には、後述する第2係合部材の挿入部材を挿入することが可能にされている。板状部材44には、上下方向に貫通する穴44aが設けられている。また、穴44aの下方において、パイプ32にも穴が設けられている。板状部材44とパイプ32との隙間に第2係合部材の挿入部材を挿入し、板状部材44が備える穴44a、挿入部材が備える穴、および、パイプ32が備える穴に、後述する棒部材を貫通させることで、第2係合部材が係止部材34に着脱可能に係合する。
【0026】
また、係止部材34は、パイプ32の側方に配置されたガイド部材45を有している。ガイド部材45は、第2係合部材の挿入部材が板状部材44とパイプ32との隙間に挿入される方向に挿入部材をガイドするものである。ガイド部材45は、パイプ32の軸を中心に、水平方向に左右対称に一対設けられている。ガイド部材45は、パイプ32の上端と同じ高さで水平方向に延びた板で形成されており、板のパイプ32とは反対側の部分は下方に折り曲げられている。ガイド部材45は、挿入部材を下方から支持して挿入部材の挿入方向への移動をサポートする。
【0027】
(昇降装置)
昇降装置1は、斜視図である
図3に示すように、上下方向に延びる左右一対の縦部材2と、一対の縦部材2間に配置されて上下方向に互いに離隔された複数の横部材3と、を有する金属製の梯子である。一対の縦部材2の上部には、上下方向に延びる手すり部4がそれぞれ設けられている。手すり部4同士の間隔は、縦部材2同士の間隔よりも広くされている。
【0028】
手すり部4は、縦部材2の上部から斜め上方に延びたパイプを下方に折り曲げ、パイプの下端を縦部材2よりも上方に配置することで形成されている。以降、手すり部4において、縦部材2から離隔した下端を含む部分を、手すり部4の下部4aという。なお、本実施形態において、手すり部4は必須の構成ではない。手すり部4の下部4aは、縦部材2の上部の一形態である。
【0029】
手すり部4の下部4aには、水平方向に延びて水平方向に面した板状のブラケット5が溶接により取り付けられている。一対のブラケット5の一方には、後述する第1係合部材がボルト(締結部材)で取り外し可能に取り付けられ、他方には、後述する第2係合部材がボルト(締結部材)で取り外し可能に取り付けられる。なお、一対のブラケット5から第1係合部材および第2係合部材を取り外し、第1係合部材と第2係合部材とを逆に取り付けることが可能である。
【0030】
昇降装置1の上面図である
図4に示すように、一対のブラケット5は、手すり部4の下部4aから昇降装置1の重心Gに向かう方向(矢印方向)に平行又はほぼ平行となるように、手すり部4の下部4aにそれぞれ取り付けられている。
【0031】
図3に戻って、一対の縦部材2の両方の下部は、水平方向に折り曲げられており、これら下部には、緩衝部材6がそれぞれ取り付けられている。緩衝部材6は、ゴムなどからなる。昇降装置1が上部本体24に取り付けられた際に、緩衝部材6は、上部本体24の側面に当接する。
【0032】
(第1係合部材)
第1係合部材7は、上面図である
図5Aおよび側面図である
図5Bに示すように、円筒状の円筒部材11と、円筒部材11の側面から水平方向に延びて水平方向に面した板状のブラケット12とを有している。ブラケット12には、ボルト(図示せず)が挿通される長穴12aが、上下方向に間隔をあけて2つ設けられている。長穴12aは、縦部材2に対する第1係合部材7の取り付け位置を縦部材2の長手方向に直交する方向に調整可能なように、縦部材2の長手方向に直交する方向(水平方向)を長手方向としている。第1係合部材7は、めっき処理されている。円筒部材11の軸方向(上下方向)において、ブラケット12の長さは、円筒部材11の長さよりも長く、ブラケット12の下端部は円筒部材11の下端よりも下方に突出している。
【0033】
ブラケット12の長穴12aに挿通されたボルトにより、ブラケット12が一対のブラケット5の一方に取り外し可能に取り付けられる。これにより、第1係合部材7が一対の縦部材2の一方の上部に取り付けられる。
【0034】
ここで、
図4に示すように、一対のブラケット5は、手すり部4の下部4aから昇降装置1の重心Gに向かう方向(矢印方向)に平行又はほぼ平行となるように、手すり部4の下部4aに取り付けられている。そのため、ブラケット5に取り付けられるブラケット12の長穴12aの長手方向は、手すり部4の下部4aから昇降装置1の重心Gに向かう方向(矢印方向)に平行又はほぼ平行な方向となる。
【0035】
円筒部材11の内径は、軸部材33の円筒部材41(
図2参照)の外径よりも僅かに大きくされている。円筒部材11が、軸部材33の上方から軸部材33の円筒部材41の外周に嵌め込まれることで、第1係合部材7が軸部材33に着脱可能に係合する。
【0036】
第1係合部材7は、
図5Aに示すように、円筒部材11の中心およびブラケット12の中心を通る仮想線A(縦部材2の長手方向に平行な中心面)に対して左右対称な形状にされている。よって、第1係合部材7の左右を反転させても、第1係合部材7の機能はそのままである。なお、第1係合部材7は、左右対称な形状にされているだけでなく、縦部材2の長手方向に直交する中心面に対して上下対称な形状にされている。よって、第1係合部材7の上下を反転させても、第1係合部材7の機能はそのままである。
【0037】
(第2係合部材)
第2係合部材8は、上面図である
図6Aおよび側面図である
図6Bに示すように、上下方向に面した板状の挿入部材13と、挿入部材13の上面から上下方向に延びて水平方向に面した板状のブラケット14とを有している。ブラケット14には、ボルト(図示せず)が挿通される長穴14aが、上下方向に間隔をあけて2つ設けられている。長穴14aは、縦部材2に対する第2係合部材8の取り付け位置を縦部材2の長手方向に直交する方向に調整可能なように、縦部材2の長手方向に直交する方向(水平方向)を長手方向としている。第2係合部材8は、めっき処理されている。
【0038】
ブラケット14の長穴14aに挿通されたボルトにより、ブラケット14がブラケット5に取り付けられる。これにより、第2係合部材8が一対の縦部材2の他方の上部に取り付けられる。
【0039】
ここで、
図4に示すように、一対のブラケット5は、手すり部4の下部4aから昇降装置1の重心Gに向かう方向(矢印方向)に平行又はほぼ平行となるように、手すり部4の下部4aに取り付けられている。そのため、ブラケット5に取り付けられるブラケット14の長穴14aの長手方向は、手すり部4の下部4aから昇降装置1の重心Gに向かう方向(矢印方向)に平行又はほぼ平行な方向となる。
【0040】
挿入部材13には、上下方向に貫通する穴13aが設けられている。挿入部材13は、係止部材34の板状部材44とパイプ32との隙間(
図2参照)に対して、水平方向から挿抜される。
【0041】
また、第2係合部材8は、長穴14aの長手方向に直交する方向に進退可能な棒部材15と、棒部材15をその軸方向に進退可能に支持する支持部材16と、を有している。棒部材15は、その上部においてその軸方向に直交する方向に突出した突出部15aを有している。支持部材16は、突出部15aを下方から支持することが可能な載置部16aを有している。載置部16aの上に突出部15aが載置されることで、棒部材15の軸方向下方への移動が不能となる。一方、載置部16aの上から突出部15aが外れることで、棒部材15の軸方向下方への移動が可能となる。
【0042】
係止部材34の板状部材44とパイプ32との隙間に挿入部材13が挿入された状態において、棒部材15が挿入部材13の方に移動されると、板状部材44が備える穴44aと、挿入部材13が備える穴13aと、パイプ32を備える穴とを、棒部材15が貫通する。これにより、第2係合部材8が係止部材34に着脱可能に係合する。
【0043】
第2係合部材8は、
図6Aに示すように、穴13aの中心およびブラケット14の中心を通る仮想線B(縦部材2の長手方向に平行な中心面)に対して左右対称な形状にされている。よって、第2係合部材8の左右を反転させても、第2係合部材8の機能はそのままである。
【0044】
(係合状態)
以上の構成において、説明図である
図7に示すように、第1係合部材7の円筒部材11を、軸部材33の上方から軸部材33の円筒部材41の外周に嵌め込む。これにより、第1係合部材7が軸部材33に着脱可能に係合する。なお、
図7においては、上部本体24に向かって右側(
図3の左側)のブラケット5に第1係合部材7が取り付けられている場合を図示している。
【0045】
仮に、第1係合部材7の円筒部材11を軸部材33の円筒部材41の内周に嵌める場合には、円筒部材41の内側に溜まったごみや雨水により嵌合が阻害される恐れがある。これに対して、第1係合部材7の円筒部材11を円筒部材41の外周に嵌めることで、円筒部材41の内側に溜まったごみや雨水による影響を受けることなく両者を嵌合させることができる。
【0046】
また、説明図である
図8に示すように、係止部材34の板状部材44とパイプ32との隙間に挿入部材13を挿入する。このとき、係止部材34のガイド部材45が、挿入部材13を下方から支持して挿入部材13の挿入方向への移動をサポートする。
【0047】
次に、挿入部材13を挿入した状態で、板状部材44が備える穴44aと、挿入部材13が備える穴13aと、パイプ32を備える穴とに棒部材15を貫通させる。これにより、第2係合部材8が係止部材34に着脱可能に係合する。なお、
図8においては、上部本体24に向かって左側(
図2の右側)のブラケット5に第2係合部材8が取り付けられている場合を図示している。
【0048】
第2係合部材8を係止部材34に係合させた状態で、昇降装置1に上下方向に力が加わっても、挿入部材13は係止部材34に上下方向に挟み込まれているため、挿入部材13は係止部材34から外れない。また、昇降装置1に水平方向に力が加わっても、棒部材15により挿入部材13の水平方向への移動が禁止されているので、挿入部材13は係止部材34から外れない。よって、あらゆる方向から昇降装置1に力が加わっても、第2係合部材8と係止部材34との係合状態を確実に維持することができる。
【0049】
また、ガイド部材45で、挿入部材13が係止部材34に挿入される方向に挿入部材13をガイドすることで、係止部材34に挿入部材13を挿入しやすくすることができる。
【0050】
昇降装置1は、第1係合部材7が軸部材33に係合するとともに、第2係合部材8が係止部材34に係合しているときに、回動不能で昇降可能な状態となる。作業者は、昇降装置1を用いて昇降し、上部旋回体の上部に昇ってエンジン室内に配備された機器を保守・点検する作業を行う。
【0051】
一方、昇降装置1は、第1係合部材7が軸部材33に係合し、第2係合部材8が係止部材34に係合していないときに、軸部材33を中心に水平方向に回動可能な状態となる。作業者は、昇降装置1を回動させて上部本体24の側面に設けられたドア24aへのアクセスが可能な状態にし、ドア24aを開いて、エンジン室内に配備された機器を保守・点検する作業を行う。
【0052】
昇降装置1を回動させたときに、
図7に示すように、第1係合部材7のブラケット12の下端部が水平方向から回転規制部材43に当接することで、昇降装置1の回動が規制される。これにより、昇降装置1が上部本体24の側面に衝突するのを防止することができる。
【0053】
また、
図2に示すように、ガード構造体31は、パイプ32の軸を中心に、水平方向に左右対称な形状にされている。また、
図5Aに示すように、第1係合部材7は、仮想線Aに対して左右対称な形状にされている。さらに、
図6Aに示すように、第2係合部材8は、仮想線Bに対して左右対称な形状にされている。よって、ガード構造体31を左右逆にして上部本体24に取り付け、一対の縦部材2に対して第1係合部材7と第2係合部材8とを逆に取り付けた場合に、昇降状態と回動状態とを切り替え可能な構成はそのままで、昇降装置1の回動方向のみを反転させることができる。これにより、保守・点検作業の作業性を向上させることができる。
【0054】
また、ガード構造体31、第1係合部材7、および、第2係合部材8はめっき処理されている。よって、昇降装置1の回動による摺動に対して傷がつきにくくなっている。また、これらに傷がついても、めっきの犠牲棒食作用により錆の発生を抑制することができる。また、上部本体24に対して取り外し可能なガード構造体31、および、縦部材2に対して取り外し可能な第1係合部材7及び第2係合部材8に対してめっき処理を行うことで、めっき処理が容易であるとともに、めっき加工する面積を小さく抑えることができる。
【0055】
昇降装置1は、第2係合部材8と係止部材34との係合が解除されるとともに、第1係合部材7と軸部材33との係合が解除されたときに、上部本体24に対して取り外される。作業者は、輸送時に昇降装置1を上部本体24から取り外して、クレーン20を移動させる。
【0056】
(昇降装置の傾き補正)
ここで、昇降装置1が回動可能な状態においては、一対の縦部材2の一方の上部は、第1係合部材7と軸部材33との係合により支持されているが、一対の縦部材2の他方の上部は支持されていない。そのため、この状態で昇降装置1を回動させると、回動時に昇降装置1が自重で傾斜し、支持されていない他方の縦部材2の下端が、支持されている一方の縦部材2の下端よりも下方に位置した状態になる。この状態から、再び昇降装置1を昇降可能な状態にするためには、傾斜した昇降装置1の他方の縦部材2側を作業者が持ち上げて、昇降装置1の昇降方向が上下方向と平行になるようにしながら、第2係合部材8を係止部材34に係合させなければならず、作業者の負担が大きい。
【0057】
そこで、本実施形態では、第1係合部材7のブラケット12に設けられた長穴12aにボルトを挿通させて、手すり部4の下部4aのブラケット5に第1係合部材7を取り付ける構成を採用している。そのため、長穴12aに対するボルトの挿通位置を調整すれば、縦部材2に対する第1係合部材7の取り付け位置を縦部材2の長手方向に直交する方向に調整することが可能である。同様に、第2係合部材8のブラケット14に設けられた長穴14aにボルトを挿通させて、手すり部4の下部4aのブラケット5に第2係合部材8を取り付ける構成を採用している。そのため、長穴14aに対するボルトの挿通位置を調整すれば、縦部材2に対する第2係合部材8の取り付け位置を縦部材2の長手方向に直交する方向に調整することが可能である。
【0058】
そして、本実施形態では、縦部材2に対する第1係合部材7の取り付け位置、および、縦部材2に対する第2係合部材8の取り付け位置がそれぞれ調整されることで、昇降装置1が回動可能な状態における昇降装置1の傾きが補正されている。
【0059】
具体的には、回動時に他方の縦部材2の下端の高さが一方の縦部材2の下端の高さよりも低くなるのであれば、予め他方の縦部材2の下端の位置が一方の縦部材2の下端の高さよりも高くなるように、第1係合部材7をブラケット5に取り付ける。即ち、回動時に昇降装置1が斜めになるのを見越して、昇降装置1がその逆に斜めとなるように第1係合部材7をブラケット5に取り付ける。これにより、昇降装置1を回動させたときに、昇降装置1の傾きを低減させることができる。よって、昇降装置1を再び昇降可能な状態にする際に、他方の縦部材2側を持ち上げる量が少なくても、係止部材34に第2係合部材8を容易に係合させることができる。
【0060】
ここで、回動時に昇降装置1は重心Gに向かって傾斜する。そこで、昇降装置1の傾きを好適に補正するためには、重心Gに対して第1係合部材7および第2係合部材8の取り付け位置を調整する必要がある。即ち、クレーン20の前後方向や左右方向に平行に取り付け位置を調整しても、昇降装置1の傾きを有効に補正することはできない。
【0061】
本実施形態では、上述したように、第1係合部材7のブラケット12の長穴12aの長手方向は、手すり部4の下部4aから昇降装置1の重心Gに向かう方向(矢印方向)に平行又はほぼ平行である。また、第2係合部材8のブラケット14の長穴14aの長手方向は、手すり部4の下部4aから昇降装置1の重心Gに向かう方向(矢印方向)に平行又はほぼ平行である。そのため、重心Gに対して第1係合部材7および第2係合部材8の取り付け位置を調整することができる。これにより、クレーン20の前後方向や左右方向に平行に取り付け位置を調整するのに比べて、昇降装置1の傾きを好適に補正することができる。
【0062】
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係る作業機械の昇降装置1によると、第1係合部材7が有する長穴12aにボルトを挿通させて第1係合部材7を縦部材2に取り付けることで、縦部材2に対する第1係合部材7の取り付け位置を縦部材2の長手方向に直交する方向に調整することができる。同様に、第2係合部材8が有する長穴14aにボルトを挿通させて第2係合部材8を縦部材2に取り付けることで、縦部材2に対する第2係合部材8の取り付け位置を縦部材2の長手方向に直交する方向に調整することができる。そして、縦部材2に対する第1係合部材7の取り付け位置、および、縦部材2に対する第2係合部材8の取り付け位置をそれぞれ調整することで、昇降装置1が回動可能な状態における昇降装置1の傾きを補正することができる。これにより、回動時の昇降装置1の傾きを低減させることができるので、昇降装置1を再び昇降可能な状態にする際に、他方の縦部材2側を持ち上げる量が少なくても、係止部材34に第2係合部材8を容易に係合させることができる。よって、昇降装置1を昇降可能な状態にする作業に伴う作業者の負担を軽減させることができる。
【0063】
また、回動時に昇降装置1は重心Gに向かって傾斜する。そこで、長穴12a,14aの長手方向を、縦部材2の上部から昇降装置1の重心Gに向かう方向に平行又はほぼ平行にすることで、重心Gに対して第1係合部材7および第2係合部材8の取り付け位置を調整することができる。これにより、クレーン20の前後方向や左右方向に平行に取り付け位置を調整するのに比べて、昇降装置1の傾きを好適に補正することができる。
【0064】
また、第1係合部材7の円筒部材11を軸部材33の円筒部材41の外周に嵌めることで、第1係合部材7が軸部材33に係合する。仮に、第1係合部材7の円筒部材11を円筒部材41の内周に嵌める場合には、円筒部材41の内側に溜まったごみや雨水により嵌合が阻害される恐れがある。これに対して、第1係合部材7の円筒部材11を円筒部材41の外周に嵌めることで、円筒部材41の内側に溜まったごみや雨水による影響を受けることなく両者を嵌合させることができる。
【0065】
また、第2係合部材8の挿入部材13を水平方向から係止部材34に挿入し、係止部材34が備える穴44aと、挿入部材13が備える穴13aと、パイプ32を備える穴とに棒部材15を貫通させることで、第2係合部材8が係止部材34に係合する。第2係合部材8を係止部材34に係合させた状態で、昇降装置1に上下方向に力が加わっても、挿入部材13は係止部材34に上下方向に挟み込まれているため、挿入部材13は係止部材34から外れない。また、昇降装置1に水平方向に力が加わっても、棒部材15により挿入部材13の水平方向への移動が禁止されているので、挿入部材13は係止部材34から外れない。よって、あらゆる方向から昇降装置1に力が加わっても、第2係合部材8と係止部材34との係合状態を確実に維持することができる。
【0066】
また、ガイド部材45で、挿入部材13が係止部材34に挿入される方向に挿入部材13をガイドすることで、係止部材34に挿入部材13を挿入しやすくすることができる。
【0067】
また、昇降装置1が、軸部材33を中心に回動可能な状態となっているときに、回転規制部材43で第1係合部材7の回転を規制することで、昇降装置1の回動が規制される。これにより、昇降装置1が上部本体24の側面に衝突するのを防止することができる。
【0068】
また、第1係合部材7および第2係合部材8を、縦部材2の長手方向に平行な中心面に対して左右対称な形状にすることで、一対の縦部材2に対して第1係合部材7と第2係合部材8とを逆に取り付けた場合に、昇降状態と回動状態とを切り替え可能な構成はそのままで、昇降装置1の回動方向のみを反転させることができる。これにより、保守・点検作業の作業性を向上させることができる。
【0069】
[第2実施形態]
(作業機械の昇降装置)
次に、本発明の第2実施形態に係る作業機械の昇降装置(昇降装置)201について説明する。なお、上述した構成要素と同じ構成要素については、同じ参照番号を付してその説明を省略する。本実施形態の昇降装置201が第1実施形態の昇降装置1と異なる点は、第2係合部材8の代わりに第3係合部材が取り外し可能に取り付けられる点である。
【0070】
(ガード構造体)
上部本体24の上面には、斜視図である
図9に示すように、ガード構造体35がボルトで取り外し可能に取り付けられている。ガード構造体35は、第1実施形態と同様のパイプ32と、パイプ32の一端側に設けられた、第1実施形態と同様の軸部材33と、パイプ32の他端側に設けられた係止部材36と、を有している。係止部材36には、後述する第3係合部材が着脱可能に係合する。ガード構造体35は、パイプ32の軸を中心に、水平方向に左右対称な形状にされている。
【0071】
(係止部材)
係止部材36は、上下方向に延びる筒状の筒状部材46と、上下方向に面した板状の板状部材47と、を有している。板状部材47は、筒状部材46の上面に溶接で固定されている。板状部材47の上面には、後述する第3係合部材の板状部材を載置することが可能にされている。板状部材47には、上下方向に貫通する穴47aが設けられている。この穴47aは、筒状部材46の内部に連通している。
【0072】
また、係止部材36は、水平方向に面した板状のロック部材48を有している。ロック部材48は、板状部材47の側面に配置されている。ロック部材48は、側端から中央に向かって水平方向に延在するスリット48aを有している。スリット48aは、パイプ32の軸を中心に、左右対称に一対設けられている。
【0073】
また、係止部材36は、L字状に折れ曲がった棒部材49を有している。棒部材49は、図示しないワイヤでパイプ32に繋がれている。板状部材47の上面に第3係合部材の板状部材を載置し、第3係合部材の板状部材が備える穴、および、板状部材47の穴47aに、棒部材49の下部を貫通させる。そして、水平方向に延びる棒部材49の上部を、スリット48aに挿入する。これにより、第3係合部材が係止部材36に着脱可能に係合する。
【0074】
(第3係合部材)
第3係合部材9は、上面図である
図10Aおよび側面図である
図10Bに示すように、上下方向に面した板状の板状部材17と、板状部材17の側方において上下方向に延びて水平方向に面した板状のブラケット18とを有している。ブラケット18には、ボルト(締結部材)(図示せず)が挿通される長穴18aが、上下方向に間隔をあけて2つ設けられている。長穴18aは、縦部材2に対する第3係合部材9の取り付け位置を縦部材2の長手方向に直交する方向に調整可能なように、縦部材2の長手方向に直交する方向(水平方向)を長手方向としている。
【0075】
ブラケット18の長穴18aに挿通されたボルトにより、ブラケット18がブラケット5に取り付けられる。これにより、第3係合部材9が一対の縦部材2の他方の上部に取り付けられる。
【0076】
ここで、
図4に示すように、一対のブラケット5は、手すり部4の下部4aから昇降装置201の重心Gに向かう方向(矢印方向)に平行又はほぼ平行となるように、手すり部4の下部4aに取り付けられている。そのため、ブラケット5に取り付けられるブラケット18の長穴18aの長手方向は、手すり部4の下部4aから昇降装置1の重心に向かう方向(矢印方向)に平行又はほぼ平行な方向となる。
【0077】
板状部材17には、上下方向に貫通する穴17aが設けられている。板状部材17は、係止部材36の板状部材47の上面に載置される。
【0078】
第3係合部材9は、
図10Aに示すように、穴17aの中心およびブラケット18の中心を通る仮想線C(縦部材2の長手方向に平行な中心面)に対して左右対称な形状にされている。よって、第3係合部材9の左右を反転させても、第3係合部材9の機能はそのままである。なお、第3係合部材9は、左右対称な形状にされているだけでなく、縦部材2の長手方向に直交する中心面に対して上下対称な形状にされている。よって、第3係合部材9の上下を反転させても、第3係合部材9の機能はそのままである。
【0079】
(係合状態)
以上の構成において、説明図である
図11に示すように、第3係合部材9の板状部材17を、係止部材36の板状部材47の上面に載置する。次に、第3係合部材9の板状部材17が備える穴17a、および、板状部材47の穴47aに、棒部材49の下部を貫通させる。そして、水平方向に延びる棒部材49の上部を、スリット48aに挿入する。これにより、第3係合部材9が係止部材36に着脱可能に係合する。なお、
図11においては、上部本体24に向かって左側(
図2の右側)のブラケット5に第3係合部材9が取り付けられている場合を図示している。
【0080】
第3係合部材9を係止部材36に係合させた状態で、昇降装置201に上下方向に力が加わっても、板状部材17は係止部材36の板状部材47と棒部材49とで上下方向に挟み込まれているため、板状部材17は係止部材36から外れない。また、昇降装置201に水平方向に力が加わっても、棒部材49により板状部材17の水平方向への移動が禁止されているので、板状部材17は係止部材36から外れない。よって、あらゆる方向から昇降装置201に力が加わっても、第3係合部材9と係止部材36との係合状態を確実に維持することができる。
【0081】
昇降装置201は、第1係合部材7が軸部材33に係合するとともに、第3係合部材9が係止部材36に係合しているときに、回動不能で昇降可能な状態となる。一方、昇降装置201は、第1係合部材7が軸部材33に係合し、第3係合部材9が係止部材36に係合していないときに、軸部材33を中心に水平方向に回動可能な状態となる。
【0082】
昇降装置201が回動可能な状態においては、回動時に昇降装置201が自重で傾斜し、支持されていない他方の縦部材2の下端が、支持されている一方の縦部材2の下端よりも下方に位置した状態になる。この状態から、再び昇降装置201を昇降可能な状態にするためには、傾斜した昇降装置201の他方の縦部材2側を作業者が持ち上げて、昇降装置201の昇降方向が上下方向と平行になるようにしながら、第3係合部材9を係止部材36に係合させなければならず、作業者の負担が大きい。
【0083】
そこで、本実施形態では、第1係合部材7のブラケット12に設けられた長穴12aにボルトを挿通させて、手すり部4の下部4aのブラケット5に第1係合部材7を取り付ける構成を採用している。そのため、長穴12aに対するボルトの挿通位置を調整すれば、縦部材2に対する第1係合部材7の取り付け位置を縦部材2の長手方向に直交する方向に調整することが可能である。同様に、第3係合部材9のブラケット18に設けられた長穴18aにボルトを挿通させて、手すり部4の下部4aのブラケット5に第3係合部材9を取り付ける構成を採用している。そのため、長穴18aに対するボルトの挿通位置を調整すれば、縦部材2に対する第3係合部材9の取り付け位置を縦部材2の長手方向に直交する方向に調整することが可能である。
【0084】
そして、本実施形態では、縦部材2に対する第1係合部材7の取り付け位置、および、縦部材2に対する第3係合部材9の取り付け位置がそれぞれ調整されることで、昇降装置201が回動可能な状態における昇降装置201の傾きが補正されている。これにより、昇降装置201を回動させたときに、昇降装置201の傾きを低減させることができるので、昇降装置201を再び昇降可能な状態にする際に、他方の縦部材2側を持ち上げる量が少なくても、係止部材36に第3係合部材9を容易に係合させることができる。
【0085】
また、回動時に昇降装置201は重心に向かって傾斜するが、第1係合部材7のブラケット12の長穴12aの長手方向は、縦部材2の上部から昇降装置1の重心Gに向かう方向(矢印方向)に平行又はほぼ平行である。また、第3係合部材9のブラケット18の長穴18aの長手方向は、縦部材2の上部から昇降装置201の重心Gに向かう方向(矢印方向)に平行又はほぼ平行である。そのため、重心Gに対して第1係合部材7および第3係合部材9の取り付け位置を調整することができる。これにより、昇降装置201の傾きを好適に補正することができる。
【0086】
図9に示すように、ガード構造体35は、パイプ32の軸を中心に、水平方向に左右対称な形状にされている。さらに、
図10Aに示すように、第3係合部材9は、仮想線Cに対して左右対称な形状にされている。よって、ガード構造体35を左右逆にして上部本体24に取り付け、一対の縦部材2に対して第1係合部材7と第3係合部材9とを逆に取り付けた場合に、昇降状態と回動状態とを切り替え可能な構成はそのままで、昇降装置201の回動方向のみを反転させることができる。これにより、保守・点検作業の作業性を向上させることができる。
【0087】
その他の構成については、第1実施形態と同様である。
【0088】
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施の形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。