(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202076
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】音声処理装置
(51)【国際特許分類】
H04R 3/00 20060101AFI20170914BHJP
H04S 7/00 20060101ALI20170914BHJP
H04R 1/34 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
H04R3/00 310
H04S7/00 380
H04R1/34 310
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-238756(P2015-238756)
(22)【出願日】2015年12月7日
(65)【公開番号】特開2017-108213(P2017-108213A)
(43)【公開日】2017年6月15日
【審査請求日】2016年12月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】710014351
【氏名又は名称】オンキヨー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 進
【審査官】
下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−159518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00 − 3/14
H04R 1/34
H04S 1/00 − 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井に向けて音声を再生する天井反射型スピーカーを含むスピーカーにアナログ音声信号を出力する音声処理装置であって、
デジタル音声信号に音声信号処理を行うデジタル信号処理部と、
前記デジタル信号処理部から出力されるデジタル音声信号を、アナログ音声信号に変換するD/Aコンバーターと、を備え、
前記デジタル信号処理部は、前記音声信号処理として、前記天井反射型スピーカー用のデジタル音声信号に対して、
デジタル音声信号から低周波成分を抽出するローパスフィルター処理と、
デジタル音声信号から高周波成分を抽出するハイパスフィルター処理と、
前記ローパスフィルター処理により抽出されたデジタル音声信号の低周波成分を遅延する遅延処理と、
前記遅延処理により遅延されたデジタル音声信号の低周波成分と、前記ハイパスフィルター処理により抽出されたデジタル音声信号の高周波成分と、を合成する合成処理と、
を行うことを特徴とする音声処理装置。
【請求項2】
前記デジタル信号処理部は、前記遅延処理において、前記天井反射型スピーカーから音声が前記天井に反射して前記聴取者に到達する時間と、前記天井反射型スピーカーから音声が聴取者に直接到達する時間と、の時間差、デジタル音声信号の低周波成分を遅延させることを特徴とする請求項1に記載の音声処理装置。
【請求項3】
前記デジタル信号処理部は、前記天井反射型スピーカーから音声が前記天井に反射して前記聴取者に到達する反射経路の距離をLr、前記天井反射型スピーカーから音声が聴取者に直接到達する直接経路の距離をLd、音速をVsとした場合、(Lr−Ld)/Vs×100の計算を行って、前記時間差を算出することを特徴とする請求項2に記載の音声処理装置。
【請求項4】
前記デジタル信号処理部は、音場補正により、前記直接経路の距離Ldを測定することを特徴とする請求項3に記載の音声処理装置。
【請求項5】
前記デジタル信号処理部は、前記天井反射型スピーカーから前記天井までの距離をLcとした場合、2×((Lc2+(Ld/2)2))1/2の計算を行って、前記反射経路の距離Lrを算出することを特徴とする請求項3又は4に記載の音声処理装置。
【請求項6】
前記天井までの距離Lcの設定を受け付ける制御部をさらに備えことを特徴とする請求項5に記載の音声処理装置。
【請求項7】
前記デジタル信号処理部は、
前記ローパスフィルター処理において、デジタル音声信号から2.5kHz以下の低周波成分を抽出し、
前記ハイパスフィルター処理において、デジタル音声信号から2.5kHz以上の高周波成分を抽出することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の音声処理装置。
【請求項8】
天井に向けて音声を再生する天井反射型スピーカーにアナログ音声信号を出力する音声処理装置であって、
デジタル音声信号に音声信号処理を行うデジタル信号処理部と、
前記デジタル信号処理部から出力されるデジタル音声信号を、アナログ音声信号に変換するD/Aコンバーターと、を備え、
前記デジタル信号処理部は、前記音声信号処理として、
デジタル音声信号から低周波成分を抽出するローパスフィルター処理と、
デジタル音声信号から高周波成分を抽出するハイパスフィルター処理と、
前記ローパスフィルター処理により抽出されたデジタル音声信号の低周波成分を遅延する遅延処理と、
前記遅延処理により遅延されたデジタル音声信号の低周波成分と、前記ハイパスフィルター処理により抽出されたデジタル音声信号の高周波成分と、を合成する合成処理と、
を行うことを特徴とする音声処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル音声信号に音声信号処理を行う音声処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル音声信号に、D/A変換、増幅等の音声信号処理を行う音声処理装置がある。音声処理装置の中には、天井に設置されたスピーカーを含む複数のスピーカーに、アナログ音声信号を出力するものがある(例えば、特許文献1参照。)。近年、天井にスピーカーを設置するのは高価であるため、天井に設置されるスピーカーに替えて、天井に向かって音声を再生する天井反射型スピーカーが設置される場合がある。天井反射型スピーカーが再生した音声は、天井で反射し、聴取者に到達する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−077379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような、天井で音声を反射させる天井反射型スピーカーから音声を再生させる場合、天井反射型スピーカーから聴取者に直接到達する音声(直接経路)と、天井に反射してから聴取者に到達する音声(反射経路)とで、聴取者が優勢だと感じる周波数帯域が異なる。直接経路では、所定の周波数以下の周波数の音声が優勢となる。反射経路では、所定の周波数以上の周波数の音声が優勢となる。従って、低い周波数の音声と、高い周波数の音声と、の間に、直接経路と反射経路との経路差分の時間のずれが生じる。このため、聴取者が、天井反射型スピーカーから出力された音声を聴いた場合、定位感、他のチャンネルとのつながり感が損なわれているように感じるという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、天井で音声を反射させる天井反射型スピーカーを含むスピーカーにアナログ音声信号を出力する音声処理装置において、聴取者が、天井反射型スピーカーから出力された音声を聴いた場合、定位感、他のチャンネルとのつながり感が損なわれているように感じるという問題を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明の音声処理装置は、天井に向けて音声を再生する天井反射型スピーカーを含むスピーカーにアナログ音声信号を出力する音声処理装置であって、デジタル音声信号に音声信号処理を行うデジタル信号処理部と、前記デジタル信号処理部から出力されるデジタル音声信号を、アナログ音声信号に変換するD/Aコンバーターと、を備え、前記デジタル信号処理部は、前記音声信号処理として、前記天井反射型スピーカー用のデジタル音声信号に対して、デジタル音声信号から低周波成分を抽出するローパスフィルター処理と、デジタル音声信号から高周波成分を抽出するハイパスフィルター処理と、前記ローパスフィルター処理により抽出されたデジタル音声信号の低周波成分を遅延する遅延処理と、前記遅延処理により遅延されたデジタル音声信号の低周波成分と、前記ハイパスフィルター処理により抽出されたデジタル音声信号の高周波成分と、を合成する合成処理と、を行うことを特徴とする。
【0007】
本発明では、遅延処理により遅延されたデジタル音声信号の低周波成分と、ハイパスフィルター処理により抽出されたデジタル音声信号の高周波成分と、が合成される。そして、合成されたデジタル音声信号が、アナログ音声信号に変換され、天井反射型スピーカーに出力される。従って、低い周波数の音声と、高い周波数の音声と、の間の到達経路の差から生じる時間のずれが解消される。これにより、聴取者が、定位感、他のチャンネルとのつながり感が損なわれているように感じるという問題を解消することができる。
【0008】
第2の発明の音声処理装置は、第1の発明の音声処理装置において、前記デジタル信号処理部は、前記遅延処理において、前記天井反射型スピーカーから音声が前記天井に反射して前記聴取者に到達する時間と、前記天井反射型スピーカーから音声が聴取者に直接到達する時間と、の時間差、デジタル音声信号の低周波成分を遅延させることを特徴とする。
【0009】
第3の発明の音声処理装置は、第2の発明の音声処理装置において、前記デジタル信号処理部は、前記天井反射型スピーカーから音声が前記天井に反射して前記聴取者に到達する反射経路の距離をLr、前記天井反射型スピーカーから音声が聴取者に直接到達する直接経路の距離をLd、音速をVsとした場合、(Lr−Ld)/Vs×100の計算を行って、前記時間差を算出することを特徴とする。
【0010】
第4の発明の音声処理装置は、第3の発明の音声処理装置において、前記デジタル信号処理部は、音場補正により、前記直接経路の距離Ldを測定することを特徴とする。
【0011】
第5の発明の音声処理装置は、第3又は第4の発明の音声処理装置において、前記デジタル信号処理部は、前記天井反射型スピーカーから前記天井までの距離をLcとした場合、2×((Lc
2+(Ld/2)
2))
1/2の計算を行って、前記反射経路の距離Lrを算出することを特徴とする。
【0012】
第6の発明の音声処理装置は、第5の発明の音声処理装置において、前記天井までの距離Lcの設定を受け付ける制御部をさらに備えることを特徴とする。
【0013】
第7の発明の音声処理装置は、第1〜第6の発明のいずれかの音声処理装置において、前記デジタル信号処理部は、前記ローパスフィルター処理において、デジタル音声信号から2.5kHz以下の低周波成分を抽出し、前記ハイパスフィルター処理において、デジタル音声信号から2.5kHz以上の高周波成分を抽出することを特徴とする。
【0014】
第8の発明の音声処理装置は、天井に向けて音声を再生する天井反射型スピーカーにアナログ音声信号を出力する音声処理装置であって、デジタル音声信号に音声信号処理を行うデジタル信号処理部と、前記デジタル信号処理部から出力されるデジタル音声信号を、アナログ音声信号に変換するD/Aコンバーターと、を備え、前記デジタル信号処理部は、前記音声信号処理として、デジタル音声信号から低周波成分を抽出するローパスフィルター処理と、デジタル音声信号から高周波成分を抽出するハイパスフィルター処理と、前記ローパスフィルター処理により抽出されたデジタル音声信号の低周波成分を遅延する遅延処理と、前記遅延処理により遅延されたデジタル音声信号の低周波成分と、前記ハイパスフィルター処理により抽出されたデジタル音声信号の高周波成分と、を合成する合成処理と、を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、聴取者が、定位感、他のチャンネルとのつながり感が損なわれているように感じるという問題を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係るAVレシーバーの構成を示すブロック図である。
【
図2】天井反射型スピーカーを模式的に示す側面図である。
【
図3】天井反射型スピーカー用のデジタル音声信号に対して、DSPにより実行される音声信号処理を示す図である。
【
図4】反射経路と直接経路との距離差による遅延時間(時間差)を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るAVレシーバーの構成を示すブロック図である。AVレシーバー1(音声処理装置)は、天井に向けて音声を再生する天井反射型スピーカー11を含む複数のスピーカーにアナログ音声信号を出力する。AVレシーバー1には、例えば、Blu-ray(登録商標)・プレーヤー等の再生機器14が接続されている。
図1に示すように、AVレシーバー1は、マイクロコンピューター2、表示部3、操作部4、DSP(Digital Signal Processor)5、D/Aコンバーター6、増幅器7を備える。なお、AVレシーバー1は、デジタル音声信号の他、デジタル映像信号に映像信号処理を行って、テレビジョン受像機に出力可能である。本実施形態では、デジタル音声信号への音声信号処理に関するAVレシーバー1の構成について説明する。
【0018】
マイクロコンピューター2(制御部)は、AVレシーバー1を構成する各部を制御する。表示部3は、設定画面、音量レベルなどを表示するものである。表示部3は、LCD(液晶ディスプレイ)や蛍光表示管等から構成されている。操作部4は、ユーザー操作を受け付けるためのものである。操作部4は、AVレシーバー1の筐体に設けられた操作ボタン、リモートコントローラーにより構成されている。
【0019】
DSP5(デジタル信号処理部)は、再生機器14から出力されるデジタル音声信号からマルチチャンネルのデジタル音声信号を生成する音声デコード処理、イコライザ処理、音場処理等の音声信号処理を行う。
【0020】
ここで、マルチチャンネル・デジタル音声信号には、例えば、7.1チャンネルのデジタル音声信号と、天井反射型スピーカー11用の2チャンネルのデジタル音声信号と、が含まれる(7.1.2チャンネル)。7.1チャンネルのデジタル音声信号には、フロントレフト、フロントライト、センター、サブウーファー、サラウンドレフト、サラウンドライト、サラウンドバックレフト、サラウンドバックライト、のデジタル音声信号が含まれる。7.1チャンネルのデジタル音声信号は、天井に向けて音声を出力するタイプではないスピーカー12及びサブウーファー用スピーカー13用である。言い換えれば、7.1チャンネルのデジタル音声信号は、直接、聴取者に向けて音声を再生するスピーカー12用及びサブウーファー用スピーカー13用である。直接、聴取者に向けて音声を再生するスピーカーの放音方向は、略水平方向である。天井反射型スピーカー11用の2チャンネルのデジタル音声信号は、ハイトチャンネルのデジタル音声信号である。天井反射型スピーカー11用の2チャンネルのデジタル音声信号には、フロントハイトレフト、フロントハイトライト、のデジタル音声信号が含まれる。
【0021】
なお、DSP5が行うローパスフィルター(以下、「LPF」という。)処理等については後述する。D/Aコンバーター6は、デジタル音声信号をアナログ音声信号にD/A変換する。
【0022】
増幅器7は、D/Aコンバーター6がD/A変換したアナログ音声信号を増幅する。増幅器7は、それぞれ、フロントレフト、フロントライト、センター、サラウンドレフト、サラウンドライト、サラウンドバックレフト、サラウンドバックライト、フロントハイトレフト、フロントハイトライト、のアナログ音声信号を増幅する。
【0023】
増幅器7が増幅したフロントレフトのアナログ音声信号は、フロントレフト用のスピーカー12に出力される。増幅器7が増幅したフロントライトのアナログ音声信号は、フロントライト用のスピーカー12に出力される。増幅器7が増幅したセンターのアナログ音声信号は、センター用のスピーカー12に出力される。増幅器7が増幅したサラウンドレフトのアナログ音声信号は、サラウンドレフト用のスピーカー12に出力される。増幅器7が増幅したサラウンドライトのアナログ音声信号は、サラウンドライト用のスピーカー12に出力される。
【0024】
増幅器7が増幅したサラウンドバックレフトのアナログ音声信号は、サラウンドバックレフト用のスピーカー12に出力される。増幅器7が増幅したサラウンドバックライトのアナログ信号は、サラウンドバックライト用のスピーカー12に出力される。増幅器7が増幅したフロントハイトレフトのアナログ音声信号は、フロントハイトレフト用の天井反射型スピーカー11に出力される。増幅器7が増幅したフロントハイトライトのアナログ音声信号は、フロントハイトライト用の天井反射型スピーカー11に出力される。D/Aコンバーター6がD/A変換したサブウーファーのアナログ音声信号は、サブウーファー用スピーカー13に出力される。
【0025】
図2は、天井反射型スピーカー11を模式的に示す側面図である。天井反射型スピーカー11は、直接、聴取者に向けて音声を再生するスピーカー12の上に載置されて使用される。例えば、フロントハイトレフト用の天井反射型スピーカー11は、フロントレフト用のスピーカー12の上に載置されて使用される。また、例えば、フロントハイトライト用の天井反射型スピーカー11は、フロントライト用のスピーカー12の上に載置されて使用される。なお、天井反射型スピーカー11は、サラウンドレフト用のスピーカー12の上に載置し、リアハイトレフト用として使用することも可能である。また、天井反射型スピーカー11は、サラウンドライト用のスピーカー12の上に載置し、リアハイトライト用として使用することも可能である。スピーカー12の放音方向は、略水平方向である。
【0026】
以下、DSP5によるLPF処理、ハイパスフィルター(以下、「HPF」という。)処理、遅延処理、合成処理について説明する。DSP5によるLPF処理、HPF処理、遅延処理、合成処理は、天井反射型スピーカー11用のデジタル音声信号に対して行われる。天井反射型スピーカー11以外のスピーカー12、サブウーファー用スピーカー13用のデジタル音声信号(例えば、7.1チャンネルの音声信号)に対しては、DSP5によるLPF処理、HPF処理、遅延処理、合成処理は、行われない。
【0027】
図3は、天井反射型スピーカー11用のデジタル音声信号に対して、DSP5により実行される音声信号処理を示す図である。DSP5は、天井反射型スピーカー11用のデジタル音声信号から低周波成分を抽出するLPF処理を行う。具体的には、DSP5は、デジタル音声信号から2.5kHz以下の低周波成分を抽出する。また、DSP5は、デジタル音声信号から高周波成分を抽出するHPF処理を行う。具体的には、DSP5は、デジタル音声信号から2.5kHz以上の高周波成分を抽出する。
【0028】
DSP5は、LPF処理により抽出されたデジタル音声信号の低周波成分を遅延する遅延処理を行う。具体的には、DSP5は、天井反射型スピーカー11から音声が天井に反射して聴取者に到達する時間と、天井反射型スピーカー11から音声が聴取者に直接到達する時間と、の時間差(遅延時間)、デジタル音声信号の低周波成分を遅延させる。
【0029】
図4は、反射経路と直接経路との距離差による遅延時間(時間差)を説明するための図である。反射経路は、天井反射型スピーカー11から音声が天井に反射して聴取者に到達する経路である。直接経路は、天井反射型スピーカー11から音声が聴取者に直接到達する経路である。反射経路の距離をLr、直接経路の距離をLd、音速をVs=340[m/s]、遅延時間をDtaとする。DSP5は、Dta=(Lr−Ld)/Vs×1000[ms]の計算を行って、遅延時間(時間差)を算出する。
【0030】
DSP5は、音場補正により、直接経路の距離Ldを測定する。音場補正は、セットアップマイクによるテストトーン測定後、DSP5によって実行される。なお、DSP5による音場補正が行われない場合、直接経路の距離Ldとして、デフォルト値(例えば、一般的な天井反射型スピーカー11と聴取者との距離)が用いられる。
【0031】
DSP5は、天井反射型スピーカー11から天井までの距離をLcとした場合、Lr=2×((Lc
2+(Ld/2)
2))
1/2の計算を行って、反射経路の距離Lrを算出する。ここで、マイクロコンピューター2は、操作部4を介して、天井までの距離Lcの設定を受け付ける。例えば、マイクロコンピューター2は、上記したテストトーンの測定前に、テレビジョン受像機に天井までの距離Lcを入力可能なOSD(On Screen Display)を表示し、リモートコントローラーで入力された天井までの距離Lcの設定を受け付ける。なお、マイクロコンピューター2が、天井までの距離Lcの設定を受け付けなかった場合、天井までの距離Lcとして、デフォルト値(例えば、天井反射型スピーカー11から平均的な高さの天井までの距離Lc)が用いられる。
【0032】
天井反射型スピーカー11から天井までの距離Lc=1.70[m]、直接経路の距離Ld=2.10[m]とした場合、反射経路の距離Lr=4.00[m]である。そして、遅延時間Dta=(4.00−2.10)/340×1000≒5.58[ms]となる。
【0033】
DSP5は、遅延処理により遅延されたデジタル音声信号の低周波成分と、HPF処理により抽出されたデジタル音声信号の高周波成分と、を合成する合成処理を行う。合成処理により合成されたデジタル音声信号は、D/Aコンバーター6に出力される。D/Aコンバーター6は、DSP5から出力されるデジタル音声信号を、アナログ音声信号に変換する。D/Aコンバーター6によってD/A変換されたアナログ音声信号は、天井反射型スピーカー11に出力される。天井反射型スピーカー11は、D/Aコンバーター6から出力されるアナログ音信号に基づいて、音声を再生する。
【0034】
以上説明したように、本実施形態では、遅延処理により遅延されたデジタル音声信号の低周波成分と、HPF処理により抽出されたデジタル音声信号の高周波成分と、が合成される。そして、合成されたデジタル音声信号が、アナログ音声信号に変換され、天井反射型スピーカー11に出力される。従って、低い周波数の音声と、高い周波数の音声と、の間の到達経路の差から生じる時間のずれが解消される。これにより、聴取者が、定位感、他のチャンネルとのつながり感が損なわれているように感じるという問題を解消することができる。
【0035】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明を適用可能な形態は、上述の実施形態には限られるものではなく、以下に例示するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることが可能である。
【0036】
上述の実施形態においては、DSP5は、LPF処理において、デジタル音声信号から2.5kHz以下の低周波成分を抽出する。LPF処理において抽出される低周波成分は、2.5kHz以下に限られず、他の周波数帯域であってもよい。また、DSP5は、HPF処理において、デジタル音声信号から2.5kHz以上の高周波成分を抽出する。HPF処理において抽出される高周波成分は、2.5kHz以上に限られず、他の周波数帯域であってもよい。
【0037】
上述の実施形態においては、音声処理装置として、AVレシーバーを例示した。これに限らず、他の音声処理装置であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、デジタル音声信号に音声信号処理を行う音声処理装置に好適に採用され得る。
【符号の説明】
【0039】
1 AVレシーバー(音声処理装置)
2 マイクロコンピューター(制御部)
5 DSP(デジタル信号処理部)
6 D/Aコンバーター
11 天井反射型スピーカー
12 スピーカー
13 サブウーファー用スピーカー