(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
巻線(221)を含む固定子(22)と、回転子(21)とを備え、前記巻線のインダクタンス(L)が前記回転子の位置に応じて変化する電動機(2)の回転の有無を検出する回転検出装置であって、
前記電動機へと高調波の交流電圧を印加する電圧出力部(1)と、
前記電動機に流れる交流電流を検出する電流検出部(4)と、
前記交流電流のボトム値からピーク値までの幅(Ipp)の、所定期間における最小値(Ipp_min)と最大値(Ipp_max)との間の相違量が、基準値よりも大きいときに、前記電動機が回転していると判断する、判断部(32)と
を備える、回転検出装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<構成>
図1は回転検出装置の構成の一例を概略的に示す図である。回転検出装置は電圧出力部1と制御部3と電流検出部4とを備えている。電圧出力部1は電動機2に対して交流電圧を出力する。電圧出力部1は例えばインバータである。この電圧出力部1には、例えば直流電圧が入力される。電圧出力部1は、入力された直流電圧を交流電圧に変換し、変換後の交流電圧を電動機2に出力する。
【0018】
図2は電圧出力部1の内部構成の一例を示す図である。例えば電圧出力部1は三相のインバータであって、U相のスイッチング素子Sup,Sunと、V相のスイッチング素子Svp,Svnと、W相のスイッチング素子Swp,Swnとを有している。スイッチング素子Sup,Sunは直流母線LH,LLの間で出力端Puを介して相互に直列に接続され、スイッチング素子Svp,Svnは直流母線LH,LLの間で出力端Pvを介して相互に直列に接続され、スイッチング素子Swp,Swnは直流母線LH,LLの間で出力端Pwを介して相互に直列に接続されている。直流母線LH,LLには直流電圧が印加される。
【0019】
スイッチング素子Sup,Svp,Swp,Sun,Svn,Swnが制御部3によって適宜に制御されることにより、電圧出力部1は直流電圧を例えば三相交流電圧に変換し、この三相交流電圧を出力端Pu,Pv,Pwから出力する。
【0020】
電動機2は回転子21と固定子22とを備えている。固定子22は巻線221を有している。
図1の例示では、三相の巻線221が設けられている。つまり三相の電動機2が示されている。
図1の例示では、各相の巻線221の一端はそれぞれ出力端Pu,Pv,Pwに接続され、また、他端同士が接続されている。この巻線221に三相交流電圧が印加されると、三相交流電流が流れて、三相の巻線221が回転子21へと回転磁界を印加する。
【0021】
回転子21は永久磁石を有しており、この永久磁石が固定子22へと界磁磁束を供給する。回転子21は、固定子22から印加される回転磁界に応じて回転する。この電動機2は例えば圧縮機またはファンを駆動する。
【0022】
また電動機2は、固定子22からの回転磁界とは別の原因で回転することもある。例えば固定子22が回転磁界を印加していない状態で電動機2に外力が発生することで、電動機2が回転することがある。例えば電動機2がファンを駆動する場合、風によってファンから外力を受けて、電動機2が回転することがある。或いは、電動機2が圧縮機を駆動する場合、吸入側の低圧と吐出側の高圧との間の差圧によって、圧縮機から外力を受けて、電動機2が回転することがある。
【0023】
このような回転は電圧出力部1の出力電圧に基づく回転ではないので、この回転を知るにはこの回転を検出する必要がある。本回転検出装置は、後述するように、この回転を検出する。
【0024】
なお電動機2は例えば磁石埋込型の電動機であり、逆突極性を有している。つまり、巻線221のインダクタンスは回転子21の回転位置に応じて変化する。具体的には、当該インダクタンスのq軸の成分(以下、q軸インダクタンスとも呼ぶ)はそのd軸の成分(以下、d軸インダクタンスとも呼ぶ)よりも大きい。ここでいうd軸およびq軸とは、回転子21の回転に応じて回転するd−q回転座標系を構成する軸であり、電気角において互いに直交する。例えばd軸は界磁磁束と同相に設定される。q軸はd軸に対して90度進相してもよい。後に述べるように、本回転検出装置は、インダクタンスが回転子21の回転位置に応じて変化することを利用して、外力による電動機2の回転を検出する。
【0025】
電流検出部4は巻線221を流れる交流電流を検出する。
図1の例示では、3つの電流検出部4が設けられており、それぞれ巻線221を流れる交流電流iu,iv,iwを検出する。なお理想的には三相の交流電流iu,iv,iwの和は零であるので、二相の交流電流を検出し、これらに基づいて残りの一相の交流電流を算出してもよい。また、電圧出力部1に流れる直流電流を検出し、電圧出力部1のスイッチングパターンに基づいて、この直流電流を交流電流として検出してもよい。この検出方法は1シャント方式とも呼ばれる。
【0026】
制御部3は出力制御部31と判断部32と算出部33とを備えている。なおここでは、制御部3はマイクロコンピュータと記憶装置を含んで構成される。マイクロコンピュータは、プログラムに記述された各処理ステップ(換言すれば手順)を実行する。上記記憶装置は、例えばROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、書き換え可能な不揮発性メモリ(EPROM(Erasable Programmable ROM)等)、ハードディスク装置などの各種記憶装置の1つ又は複数で構成可能である。当該記憶装置は、各種の情報やデータ等を格納し、またマイクロコンピュータが実行するプログラムを格納し、また、プログラムを実行するための作業領域を提供する。なお、マイクロコンピュータは、プログラムに記述された各処理ステップに対応する各種手段として機能するとも把握でき、あるいは、各処理ステップに対応する各種機能を実現するとも把握できる。また、制御部3はこれに限らず、制御部3によって実行される各種手順、あるいは実現される各種手段又は各種機能の一部又は全部をハードウェアで実現しても構わない。
【0027】
出力制御部31は電圧出力部1の出力電圧を制御する。例えば出力制御部31はスイッチング素子Sup,Svp,Swp,Sun,Svn,Swnへとそれぞれスイッチング信号を出力して、電圧出力部1が出力する交流電圧の振幅および周波数を制御する。このようなスイッチング信号の生成は公知であるものの、例えば次のように生成できる。すなわち、電圧出力部1が出力する交流電圧についての電圧指令値を例えば正弦波で生成し、この電圧指令値と三角波との比較に基づいて、スイッチング信号を生成する。
【0028】
算出部33には、電流検出部4によって検出される交流電流iu,iv,iwが入力される。算出部33は交流電流iu,iv,iwに基づいて後に詳述する演算を行って、その演算結果を判断部32へと出力する。
【0029】
判断部32は、後に詳述するように、電動機2が外力によって回転しているか否かの判断を、算出部33からの演算結果に基づいて行う。
【0030】
<回転検出>
出力制御部31は、電圧出力部1に高調波の交流電圧を出力させる。ここでいう高調波の交流電圧とは、静止した電動機2を回転させることができない程度に高い周波数の交流電圧をいう。ただしこのような高調波の交流電圧が出力された状態であっても、電動機2は外力によって回転し得る。
【0031】
かかる高調波の交流電圧によって、巻線221には高調波の交流電流が流れる。
図3は当該電流の模式的な一例を固定座標系で示している。
図3の固定座標系は、電気角において互いに直交するα軸およびβ軸によって構成されている。固定座標系は例えば固定子22に固定された座標であり、α軸は例えばU相の巻線221が発生する磁束と同相に設定される軸である。
【0032】
図3の例示では、電流の軌跡が示される。
図3は電動機2が静止しているときの電流を示しており、その軌跡は楕円を呈している。かかる楕円において、その長軸が回転子21の回転位置を示すことになる。具体的には、電気角において、回転子21の永久磁石の極中心(つまりd軸)が楕円の長軸に重なるように、回転子21が静止している。
【0033】
電動機2が静止しているときには、電流のα軸の成分(以下、α軸電流とも呼ぶ)のボトム値からピーク値までの幅Ippは略一定である。
図4はα軸電流の一例を概略的に示している。
図4に示すように、α軸電流は時間の経過と共に正弦波状に変化し、その幅Ippはほぼ一定となる。
【0034】
図5は、電動機2が回転しているときの電流の模式的な一例を、固定座標系で示している。電動機2が回転していれば、電流の軌跡は長軸の方向が異なる複数種の楕円を形成する。したがって、α軸電流の幅は最小値Ipp_minと最大値Ipp_maxとの間で変動する。
図6はα軸電流の一例を概略的に示している。
図6に示すように、α軸電流の幅は最小値Ipp_minと最大値Ipp_maxとの間で変動する。
【0035】
なおβ軸電流についても同様である。つまり、電動機2が回転していないときには、β軸電流の幅は略一定であり、電動機2が回転しているときには、β軸電流の幅は時間の経過と共に変動する。以下では、代表的にα軸電流について述べる。
【0036】
以上のように、α軸電流の幅が最小値Ipp_minと最大値Ipp_maxとの間で変動する。したがって、その最小値Ipp_minと最大値Ipp_maxとの間の相違量が基準値よりも大きいときに、電動機2が回転していると判断する。相違量としては、例えば最小値Ipp_minに対する最大値Ipp_maxの比RIを採用することができる。
【0037】
次に、上述の動作を行うための各構成について述べる。算出部33は、検出された交流電流iu,iv,iwに対して周知の座標変換を施して、α軸電流を算出する。そして算出部33は所定期間におけるα軸電流の幅Ippの最大値Ipp_maxと最小値Ipp_minとを算出し、これらに基づいて比RIを算出する。算出部33は、算出した比RIを判断部32へと出力する。
【0038】
判断部32は比RIが基準値よりも大きいか否かを判断する。この基準値は例えば予め設定されて記憶部に記憶される。そして、判断部32は、比RIが基準値よりも大きいと判断したときに、電動機2が回転していると判断する。
【0039】
これによれば、電動機2の回転を、比RIに基づいて簡易に検出することができる。例えば本実施の形態と異なって、電流の軌跡の長軸を検出して回転位置を検出し、その回転位置の時間変化に基づいて電動機2の回転を検出することも考えられる。しかるに、電動機2が回転しているときには、特にその回転速度が高いほど、適切な楕円状の電流の軌跡を得ることができず、長軸の算出が困難となる。一方で、本実施の形態では、回転速度が高まっても電流の幅の最小値Ipp_minと最大値Ipp_maxとを得ることができるので、簡易に電動機2の回転を検出できる。
【0040】
<基準値の設定方法>
ところで、この幅Ippは、巻線221のインダクタンス、電圧出力部1が出力する交流電圧の振幅および周波数をそれぞれL,V,fと表すと、簡易的には以下の式で表される。
【0042】
交流電圧の振幅Vおよび周波数fはそれぞれ一定となるように制御される。電動機2が静止していれば、インダクタンスLは一定であると考えてよいので、電流の幅Ippは一定である。これは
図3および
図4とも整合する。一方で、電動機2が回転しているときには、インダクタンスLはその回転角度に応じて変化するので、交流電流の幅Ippも時間の経過と共に変化すると考えることができる。
【0043】
したがって、交流電流の幅Ippの最小値Ipp_minと、交流電流の幅Ippの最大値Ipp_maxとに基づいて、電動機2が回転しているか否かを判断することができる。ここでは、最小値Ipp_minに対する最大値Ipp_maxの比RIを考える。式(1)に鑑みると、この比RIは以下の式で表される。
【0045】
Lminは、幅Ippが最大値Ipp_maxと等しいときのインダクタンスLを示しており、Lmaxは、幅Ippが最小値Ipp_minと等しいときのインダクタンスLを示している。そこで、比RLと比較される基準値として、インダクタンスLの最小値Lminに対する最大値Lmaxの比RLを考察する。
【0046】
図7はインダクタンスLの一例を模式的に示す図である。
図7の例示では、電気角に対するインダクタンスLの変動を示している。インダクタンスLは正弦波に沿って変動しており、その1周期は電気角において180度である。
図7の例示では、電動機2が逆突極性を有する場合のインダクタンスLが示されており、q軸インダクタンスLqはd軸インダクタンスLdよりも大きい。q軸インダクタンスLqは正弦波の最大値(ピーク値)であり、d軸インダクタンスLdは正弦波の最小値(ボトム値)である。なお正弦波の最大値は波高値とも呼ばれる。
【0047】
ところで、電動機2が電気角において角度幅θthで回転したときの、インダクタンスLの最大値Lmaxは、回転した角度範囲に応じて変化する。
図7の例示では、角度範囲A1,A2が示されている。角度範囲A1は、インダクタンスLが最大値(ピーク値)をとるときの電気角を中心とした角度範囲であって、例えばその角度幅θthは40度程度である。
【0048】
例えば電動機2が角度範囲A1に亘って回転すれば、その回転に伴ってインダクタンスLは、角度範囲A1における最小値Lmin1から最大値Lmax1まで変化する。このインダクタンスLの変化に応じて、α軸電流の幅Ippも変動することになる(式(1)参照)。よってこの回転における比RIは(Lmax1/Lmin1)で表される。
【0049】
角度範囲A2の角度幅は角度範囲A1の角度幅θthと同じであるものの、
図7の例示では、角度範囲A2は角度範囲A1とは重なっていない。角度範囲A2は例えば、インダクタンスLが電気角の増加に対して単調に増加する範囲である。電動機2が角度範囲A2に亘って回転すると、その回転に伴ってインダクタンスLは角度範囲A2におけるインダクタンスLの最小値Lmin2から最大値Lmax2まで変化する。よってこの回転における比RIは(Lmax2/Lmin2)で表される。以下では、角度範囲におけるインダクタンスLの最小値Lminに対する最大値Lmaxとの比を比RLと呼ぶ。式(2)から、比RIは比RLと等しい。
【0050】
図7には、角度範囲A1における最大値Lmax1(=q軸インダクタンスLq)および最小値Lmin1と、角度範囲A2における最大値Lmax2および最小値Lmin2とが示されている。
図7から直感的に、あるいは、後の説明から理解できるように、角度範囲A1における比RL(=Lmax1/Lmin1)は、角度範囲A2における比RL(=Lmax2/Lmin2)よりも小さい。
【0051】
以上のように、角度幅θthが一定であっても比RLは一定ではなく、その角度範囲に応じて変化することが分かる。つまり、電動機2が一定の角度幅θthの分、回転したとしても、そのときの比RLは、電動機2がどの回転位置から回転したかに応じて変化するのである。
【0052】
しかしながら、おおよそ角度幅θthに亘る回転を検出する場合には、その角度幅θthを有する任意の角度範囲における比RLを基準値に採用してもよい。つまり、電動機2を流れる電流の比RIが、この基準値よりも大きいときには、電動機2はおおよそ角度幅θthに亘って回転していると考えるのである。これによれば、基準値をその角度幅に応じて設定することができる。つまり、基準値の設定する指針が示される。
【0053】
その一方で、角度幅θthに亘る回転をより確実に検出するには、その角度幅θthを有する角度範囲における比RLとして、より小さい値を採用することが望ましい。例えば比RLの最小値を基準値に採用する。電動機2が角度幅θthに亘って回転すれば、どの位置から回転しようとも、そのときに算出される比RI(=RL)は理論的には必ず当該最小値よりも大きい。よって、比RIが基準値よりも大きいときには、電動機2は理論的には少なくとも角度幅θthに亘って回転していると判断できる。そこで、電動機2が角度幅θthの分、回転したときの比RLの最小値を求める。
【0054】
結論を述べると、電動機2が角度幅θthの分、回転したときの比RLの最小値は、角度範囲A1における比RL(=Lmax1/Lmin1)である。これを説明すべく、角度範囲A1以外の角度範囲を、次の3種の角度範囲A11,A2,A3に大別する。角度範囲A11,A2,A3の角度幅は角度範囲A1と同じく角度幅θthである。角度範囲A11はインダクタンスLのピーク値(=q軸インダクタンスLq)を含むものの、角度範囲A1とは異なる範囲である(
図8参照)。角度範囲A2はインダクタンスLが電気角に対して単調に変化する範囲である(
図7参照)。角度範囲A3はインダクタンスLの最小値(ボトム値)を含む範囲である(
図9参照)。ただし
図9では、0度から180度までの電気角が示されているので、角度範囲A3は2つに分割されて示されている。角度範囲A1における比RLが、これら角度範囲A11,A2,A3における比RLよりも小さければ、角度範囲A1における比RLが最小となる。
【0055】
まず、角度範囲A2における比RLと、角度範囲A1における比RLとの大小について述べる。角度範囲A2においてインダクタンスLは単調に変化するのに対して、角度範囲A1においてインダクタンスLは上に凸の形状を有する。しかも、インダクタンスLは正弦波を呈するので、いずれも同じ角度幅θthに亘る変動であっても、角度範囲A1における最大値Lmax1と最小値Lmin1との差は小さく、角度範囲A2における最大値Lmax2と最小値Lmin2との差は大きい。したがって、角度範囲A1における比RLは、角度範囲A2における比RLよりも小さくなる。
【0056】
次に、角度範囲A11における比RLと角度範囲A1における比RLとの大小について述べる。
図8の例示では、角度範囲A1,A11の一例が示されている。この角度範囲A11におけるインダクタンスLの最大値Lmax11は、角度範囲A1におけるインダクタンスLの最大値Lmax1と同じく、インダクタンスLのピーク値(=q軸インダクタンスLq)である。一方で、角度範囲A11におけるインダクタンスLの最小値Lmin11は、角度範囲A1におけるインダクタンスLの最小値Lmin1よりも小さい。なぜなら、正弦波は、そのピーク値に対して左右対称となる波形をとるからである。よって、ピーク値が中央に位置しない角度範囲A11における最小値Lmin11が、ピーク値が中央に位置する角度範囲A1における最小値Lmin1よりも小さくなるのである。最大値Lmax1,Lmax11が同じであり、最小値Lmin11が最小値Lmin1よりも小さいので、角度範囲A1における比RLは角度範囲A11における比RLよりも小さい。
【0057】
次に、角度範囲A3における比RLと角度範囲A1における比RLとの大小について述べる。なお、この角度範囲A3における比RLは、インダクタンスLがボトム値をとるときの電気角が、角度範囲A3の中央に位置するときに最小となる。よって、ここでは、インダクタンスLのボトム値が中央に位置する角度範囲A3を考慮する。
図9の例示では、角度範囲A1,A3の一例が示されている。
【0058】
この角度範囲A3における比RLは、角度範囲A3の最大値Lmax3と最小値Lmin3(=q軸インダクタンスLq)とを用いて、(Lmin3/Lmax3)で表される。角度範囲A1におけるインダクタンスLの最大値Lmax1と最小値Lmin1との差ΔLは、角度範囲A3におけるインダクタンスLの最大値Lmax3と最小値Lmin3との差ΔLと等しい。一方で、角度範囲A1におけるインダクタンスLの最小値Lmin1は、角度範囲A3におけるインダクタンスLの最小値Lmin3よりも大きい。よって、以下の式が導かれる。
【0060】
式(3)から理解できるように、角度範囲A1における比RLは角度範囲A3における比RLよりも小さい。
【0061】
以上のように、角度範囲A1における比RLは、角度範囲A11,A2,A3における比RLの全てよりも小さく、比RLは角度範囲A1において最小となることが分かる。
【0062】
したがって、電動機2を流れる電流についての比RIが、比RLの最小値(角度範囲A1における比RL)よりも大きいときには、電動機2は電気角において少なくとも角度幅θthの分、回転していると判断することができる。
【0063】
ところで、インダクタンスLは、振幅(Lq−Ld)/2、1周期が180度の余弦波に、一定値(Lq+Ld)/2を加算した値である。よって、比RLの最小値(角度範囲A1における比RL)は以下のように表される。ただし、角度幅θthは180度以下である。
【0065】
図10は、回転検出装置の動作の一例を示すフローチャートである。この一連の動作は、電圧出力部1が電動機2を駆動していない状態、即ち、電動機2を回転させるための交流電圧を出力していない状態で、開始される。まず、ステップST1にて、出力制御部31は電圧出力部1を制御して、電圧出力部1に高調波の交流電圧Vhを出力させる。次にステップST2にて、電流検出部4は、電動機2に流れる交流電流iu,iv,iwを検出する。検出された交流電流iu,iv,iwは算出部33に入力される。次にステップST3にて、算出部33は、交流電流iu,iv,iwに対して周知の座標変換を施して、α軸電流を算出する。そして算出部33は所定期間におけるα軸電流の幅Ippの最大値Ipp_maxと最小値Ipp_minとを算出し、これらに基づいて第1比として比RI(=Ipp_max/Ipp_min)を算出する。次にステップST4にて、判断部32は比RIが所定の閾値たる第2比よりも大きいか否かを判断する。この閾値は角度範囲A1における比RLであり、例えば予め設定されて記憶部などに記憶されている。
【0066】
比RIが閾値よりも大きいと判断したときには、ステップST5にて、判断部32は電動機2が回転していると判断する。比RIが閾値以下であると判断したときには、ステップST6にて、判断部32は電動機2が静止していると判断する。
【0067】
以上のように、本回転検出装置によれば、角度幅θthを超える回転をより確実に検出することができる。
【0068】
なお上述の例では、基準値として角度範囲A1における比RLを採用しているものの、他の角度範囲を採用してもよい。例えば上述の説明から理解できるように、インダクタンスLがピーク値をとるときの電気角を含む角度範囲A11における比RLは、角度範囲A2における比RLよりも小さい。よって、角度範囲A11における比RLを基準値に採用すれば、角度範囲A2における比RLを基準値に採用する場合に比べて、より確実に角度幅θthに亘る回転を検出できる。
【0069】
同様に、インダクタンスLがボトム値をとるときの電気角を含む角度範囲A3における比RLは、角度範囲A2における比RLよりも小さい。よって、角度範囲A3における比RLを基準値に採用すれば、角度範囲A2における比RLを基準値に採用する場合に比べて、より確実に角度幅θthに亘る回転を検出できる。
【0070】
またインダクタンスLがボトム値を採るときの電気角をその中心に含む角度範囲A3(以下、角度範囲A31と呼ぶ)における比RLは、当該電気角を中心以外に含む角度範囲A3(以下、角度範囲A32とも呼ぶ)における比RLよりも小さい。よって、角度範囲A31における比RLを基準値に採用すれば、角度範囲A32における比RLを基準値に採用する場合に比べて、より確実に角度幅θthに亘る回転を検出できる。
【0071】
また上記の例では、逆突極性の電動機2について述べたものの、突極性の電動機2についても同様である。なお突極性の電動機2の回転子21は永久磁石を有する必要はない。突極性の電動機2において、回転子21は突極構造を有している。d軸は例えば回転子21の突極方向に沿った軸に設定される。
【0072】
図11は、突極性の電動機2についてのインダクタンスLの一例を模式的に示している。突極性では、
図11に示すように、d軸インダクタンスLdがq軸インダクタンスLqよりも大きい。この場合であっても、上述の考え方を採用できる。すなわち、電流の比RIが比RLの最小値よりも大きいときには、電動機2が少なくとも角度幅θthの分、回転したと判断することができる。比RLの最小値は上述と同様に、インダクタンスLが最大値(ピーク値)を採る電気角を中央とした所定の角度範囲A4における比RLである。ただし
図11では、0度から180度までの電気角が示されているので、角度範囲A4は2つに分割されて示されている。この比RLの最小値(角度範囲A4における比RL)は以下の式で表すことができる。
【0074】
また、上述の例では、角度幅θthを180度以下として説明したが、角度幅θthが180度以上となる場合には、その角度範囲には、インダクタンスLの最大値(ピーク値)および最小値(ボトム値)の両方が含まれる。よって、この場合、比RLは角度範囲に依らず一定となる。例えば逆突極性の電動機2では、比RLは(Lq/Ld)で表され、突極性では比RLは(Ld/Lq)で表される。比RLは、d軸インダクタンスLdとq軸インダクタンスLqとの比のうち、1を超える方とも説明できる。
【0075】
なお上述の例では、α軸電流を例に挙げて説明したが、比RIとして、β軸電流の幅の最小値に対する最大値の比を採用してもよい。あるいは、U相、V相、W相電流のいずれかを用いても構わない。
【0076】
また上述の例では、相違量として比RIを採用したものの、最大値Ipp_maxと最小値Ipp_minとの間の差(=Ipp_max−Ipp_min)を採用してもよい。振幅Vおよび周波数fは既知であるので、式(1)に鑑みて、基準値を{V/(π・f・Lmin)−V/(π・f・Lmax)}で設定することができる。角度範囲は上述と同様の思想により設定すればよい。つまり、角度範囲A1,A11,A2,A3(A31,A32)を採用してもよいものの、角度範囲A11,A3を採用すれば、角度範囲A2を採用する場合に比べて基準値を小さくできる。よって回転を検出しやすい。また角度範囲A31を採用すれば、角度範囲A32を採用する場合に比べて基準値を小さくできる。角度範囲A1を採用すれば、基準値を最も小さくできる。
【0077】
また相互に矛盾しない限り、上記の種々の実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。