(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ワーク載置部材までワークを前進させて搬送するワーク搬入機構と、該ワーク載置部材を通過したワークをセンタレス研磨装置の外部に搬出するワーク搬出機構と、を備えるワーク搬送機構をさらに備え、
前記ワーク搬入機構は、ワークを前進させる力を発生するワーク搬入フィーダと、V字形の溝を有するワーク搬入部材であって、その一端が前記ワーク載置部材の該ワーク搬入フィーダが配置された側の端部側に配置されたワーク搬入部材と、を備え、
前記ワーク搬出機構は、V字形の溝を有するワーク搬出部材であって、該ワーク載置部材の他端近傍に位置するように配置されたワーク搬出部材と、を備えることを特徴とする請求項1に記載のセンタレス研磨装置。
前記ロールブラシおよび該ロールブラシを回転させる機構を備える研磨機構と前記ワーク回転車および該ワーク回転車を回転させる機構を備えるワーク回転機構と、で構成される研磨ユニットを、ワークの前進方向に2つ以上連設したことを特徴とする請求項1に記載のセンタレス研磨装置。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のセンタレス研磨装置の一例を実施形態として、図を参照して説明する。本発明のセンタレス研磨装置は実施形態に限定されず、適宜変更できる。なお、実施形態の説明において、「上・下・左・右」方向は、特に断りのない限り図における方向を示す。
【0021】
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態のセンタレス研磨装置01は、
図1に示すように、研磨機構10と、ワーク回転機構20と、ワーク載置部材30と、切り込み量調整機構40と、隙間調整機構50と、ワーク搬送機構60と、筐体70と、クーラント液循環機構80と、制御手段90と、を備える。
【0022】
研磨機構10は、ロールブラシ11と、ロールブラシ11を回転させる機構と、を備える。ロールブラシ11は、
図2に示すように、円筒形状のコア部材11aと、該コア部材11aの軸心に固定された回転軸11bと、該コア部材11aの外周面に固定されたブラシ毛材11fと、を備える。
【0023】
コア部材11aは円筒形状であり、その縦断面の中央で且つ円形断面の中心にはボス部材11cが固定されている。ボス部材11cには回転軸11bの端部が固定される。このような構造とすることで、ロールブラシ11の重量が軽くなるので、出力の小さなモータ12を用いることができる。
また、回転軸11bは一端側のみがコア部材11aから突出するようにした。ロールブラシ11は回転軸11bの突出した部分で軸支されるが、コア部材11aが軽いので、ロールブラシ11の片側のみで軸支することができる。
【0024】
また、ロールブラシ11が回転する際にぶれが生じる場合は、重量バランスを調整する為の重り(バランスウェイト11d)をコア部材11aの内側に取り付けることができる。
【0025】
ブラシ毛材11fの前記コア部材11aへの固定方法について、更に
図2を用いて説明する。まず、複数本のブラシ毛材11fを溝型材(本実施形態では断面がコ字状である電気亜鉛鍍金鋼板製(SECC)のチャンネル材11h)の上端にあてがうように整列させた後、その上に芯線11gを載置する。そして、芯線11gを溝型材の溝に押し込んでブラシ毛材11fの中心を該溝に装入する。そして、該溝型材の両側面から圧力をかけてかしめた後、ブラシ毛材11fを所定の長さに切断する。以上の方法でブラシ帯11eを形成する。(
図2(B)を参照)
【0026】
次に、該ブラシ帯11eを前記コア部材11aの外周に螺巻して固定する。この際、
図2(A)に示す、前記コア部材11aに螺巻した前記ブラシ帯11eが形成する上下方向のラインのうちの少なくとも左端(ワークの進入側端)のラインが、
図2(A)に示すコア部材11aの左端と平行となるように、前記ブラシ帯11eの端部を予め斜めに切断しておく。また、斜めに切断した箇所のブラシ帯11eでは、ブラシ毛材11fが前記ブラシ帯11eの長手方向先端に向かって徐々に短くなるようにブラシ毛材11fを予め斜めに切断する。こうして、ブラシ毛材11fの先端がコア部材11aの外周面に露出しているロールブラシ11(本実施形態では直径300mm×長さ200mm)を形成する。ワークが前進し、該ワークの端部がブラシ毛材11fに接触する際に、該ワークの端部に対してブラシ毛材11fは段差がないので、ワークを押し返すことなくワークをさらに前進させることができる。なお、前記コア部材11aに螺巻したブラシ帯11eは、左右両端共にコア部材の左右端と平行としてもよい。
【0027】
また、ブラシ帯11eの螺巻する回数を適宜選択することで、隣り合うブラシ帯11eの間隔を任意に設定することができる。即ち、ブラシ毛材11fの密度を適宜選択することができるので、ワークの性状および研磨目的に合わせて、ロールブラシ11の研磨力を任意に設定することができる。
【0028】
ブラシ毛材11fは砥粒を含有した断面円形の樹脂製のモノフィラメントを用いるのが好ましい。樹脂の種類は、ブラシ毛材11fに求められる柔軟性や砥粒の保持性能や価格等を考慮して適宜選択することができる。例えば、ポリエステル樹脂やポリアミド樹脂を用いることができる。ポリエステル樹脂の一例として、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリメチレンナフタレート、ポリテトラメチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレート、又はこれらを主成分とする共重合ポリエステル、等が挙げられる。ポリアミド樹脂の一例として、ナイロン(重縮合反応で合成される「n―ナイロン」や、共縮重合反応で合成される「n,m−ナイロン」)、全芳香族ポリアミド(アラミド)、等が挙げられる。剛性が強いと研磨能力が高い反面、研磨時にワークが受傷したり、研磨時にブラシ毛材11fが折損したりする。本実施形態では、適度な柔軟性と適度な研磨力を兼ね備えるために、ナイロン612を用いた。
【0029】
また、砥粒はアルミナ系砥粒(アランダム)、炭化珪素系砥粒(カーボランダム)、ジルコニアアルミナ砥粒、ダイヤモンド砥粒、CBN砥粒、等を、ワークの性状や加工目的等に合わせて適宜選択することができる。本実施形態では、炭化珪素系砥粒を用いた。このとき、砥粒の粒度はJIS R6001:1998 にて規定されるF60〜F240または#240〜#2,000、望ましくは#240〜#500から適宜選択することができる。砥粒の粒度が小さすぎるとブラシ毛材11fの研磨能力が不足し、粒度が大きすぎると砥粒の保持力が弱くなって、研磨時に砥粒が脱落する。
【0030】
ブラシ毛材11fは、モノフィラメントを構成する樹脂に所定量の砥粒を混合した後に溶融紡出して作成した。砥粒を表面より露出させてブラシ研磨を行うことができるので、研磨力を大きくすることができる。樹脂に含有させる砥粒の量は、ブラシ毛材100重量部に対して10〜40重量部、望ましくは20〜30重量部であることが好ましい。砥粒の量が少なすぎるとブラシ毛材11fの研磨能力が不足し、砥粒の量が多すぎるとブラシ毛材11fの強度が低下して折損しやすくなる。
【0031】
また、ブラシ毛材11fの線径が小さすぎると柔軟性が強くなりすぎて研磨力が不足し、線径が大きすぎるとブラシ毛材11fの柔軟性が低くなりすぎて折れやすくなる。このため、ブラシ毛材11fの線径は0.3mm〜2.0mmとするのが好ましく、0.4mm〜1.0mmの範囲とすることがより好ましい。
【0032】
ロールブラシ11を回転させる機構は、モータ12と、前記ロールブラシ11の回転軸11bおよび前記モータ12の回転軸に設けられたプーリ13と、前記プーリ13同士を連結し、前記モータ12の回転を前記ロールブラシ11に伝導するベルト14と、を備える。前記コア部材11aに固定された回転軸11bにはプーリ13が固定され、回転軸11bは軸受(図示せず)によって筐体70内の架台(図示せず)に回転可能に軸止されている。また、前記モータ12も前記架台に固定されており、モータ12の回転軸にはプーリ13が固定されている。ロールブラシ11の回転軸11bに固定されたプーリ13とモータ12の回転軸に固定されたプーリ13とにはベルト14が架け渡されており、モータ12を作動させることでベルト14を介してロールブラシ11を、回転軸11bを軸心に回転させることができる。
【0033】
研磨機構10が設置されている架台は、ロールブラシ11を
図1(A)における左右方向に移動させるための切り込み量調整機構40が連結されている。ロールブラシ11を左右方向に移動させることで、切り込み量(ブラシ毛材11fをワークに押し付ける量)を変更することができる。本実施形態の切り込み量調整機構40はボールネジ機構を備えており、筐体70の外部に設けられた切り込み量調整ハンドル41に連結されている。切り込み量調整ハンドル41を回転することで、前記架台を同図左右方向に移動させ、切り込み量を任意に設定することができる。
【0034】
ワーク回転機構20は、円筒形状のワーク回転車21と、ワーク回転車21を回転させる機構と、を備える。ワーク回転車21は、
図3に示すように、円筒形状のコア部材21aと、該コア部材21aの軸心に固定された回転軸21bと、該コア部材21aの外周面に固定された回転伝達部材21eと、を備える。なお、ワーク回転車21の長さ(
図1(B)における左右方向)はロールブラシ11の長さと略同一とした。
【0035】
コア部材21aは円筒形状であり、その縦断面の中央で且つ円形断面の中心にはボス部材21cが固定されている。ボス部材21cには回転軸21bの端部が固定される。このような構造とすることで、ワーク回転車21の重量が軽くなるので、出力の小さなモータ22を用いることができる。
また、回転軸21bは一端側のみがコア部材21aから突出するようにした。ワーク回転車21は回転軸21bの突出した部分で軸支されるが、コア部材21aが軽いので、ワーク回転車21の片側のみで軸支することができる。
【0036】
また、ワーク回転車21が回転する際にぶれが生じる場合は、重量バランスを調整する為の重り(バランスウェイト21d)をコア部材21aの内側に取り付けることができる。
【0037】
ワーク回転車21の外周には、回転伝達部材21eが固定されている。回転伝達部材21eによって、ワーク回転車21の回転力がワークに伝導して、ワークが回転する。回転伝達部材21eは、ワーク回転車21の回転を効率よくワークに伝達するために、高い摩擦係数が必要である。そのため、一般的にはゴムが用いられている。本実施形態のセンタレス研磨装置は、ゴムのような極めて高い摩擦係数の物質を用いなくても、ワーク回転車の回転をワークに良好に伝導することができる。本実施形態では回転伝達部材21eに不織布(具体的にはグリッドバフと呼ばれる、砥粒(例えば#2,500程度)が含浸されている羽布)を用いた。ゴム製の回転伝達部材21eを用いた場合、使用に伴い劣化した回転伝達部材21eを交換する際にはゴムを消失または溶剤で溶かして交換する必要がある。本実施形態のように不織布を用いることで、回転伝達部材21eを容易に交換することができるので、メインテナンス性が向上する。
【0038】
ワーク回転車21を回転させる機構は、モータ22と、前記ワーク回転車21の回転軸21bおよび前記モータ22の回転軸に設けられたプーリ23と、前記プーリ23同士を連結し、前記モータ22の回転を前記ワーク回転車21に伝導するベルト24と、を備える。前記コア部材21aに固定された回転軸21bにはプーリ23が固定され、回転軸21bは軸受(図示せず)によって筐体70内の架台(図示せず)に、回転可能に軸止されている。この時、ロールブラシ11とワーク回転車21との間に隙間が形成されるようにする。また、前記モータ22も前記架台に固定されており、モータ22の回転軸にはプーリ23が固定されている。ワーク回転車21の回転軸21bに固定されたプーリ23とモータ22の回転軸に固定された23とにはベルト24が架け渡されており、モータ22を作動させることでベルト24を介してワーク回転車21を回転させることができる。
【0039】
ワーク回転機構20が設置されている架台は、ワーク回転車21を
図1(A)における左右方向に移動させるための隙間調整機構50が連結されている。ワーク回転車21を左右方向に移動させることで、ロールブラシ11との間隔を変更することができる。本実施形態の隙間調整機構50はボールネジ機構を備えており、筐体70の外部に設けられた隙間調整ハンドル51に連結されている。隙間調整ハンドル51を回転することで、前記架台を同図左右方向に移動させて、ロールブラシ11とワーク回転車21との間隔を任意に設定することができる。
【0040】
ワーク載置部材30は細長い平板であり、ロールブラシ11とワーク回転車21との間に立設している。研磨中にワークが載置されるワーク載置部材30の長手方向(ワークの進行方向)に直交する縦断面の上端は水平である。一般的に、側面方向から見たワーク載置部材30の上端は、
図8に示すようにワークを載置した際に該ワークの重心が右方向(即ちワーク回転車21の方向)に向かうように傾いている。剛性の高い金属製のワイヤをブラシ毛材11fとした場合は、研磨時にブラシ毛材11fの先端がワークへ食い込む、またはブラシ毛材11fがワークを叩きつけるので、ワークの回転が妨げられる。そのため、ワーク回転車21の回転力をワークに十分に伝導させるために、ワーク載置部材30を傾けて、ワークを自重でワーク回転車21に押し付ける。ワークをワーク回転車21に十分に押し付ける力は、ワーク載置部材30の上端の傾いている角度とワークの径とのバランスが重要である。そのため、複数の径のワークを研磨する場合は、ワークの径に合わせて、都度ワーク載置部材30を交換する必要がある。本実施形態のロールブラシ11のブラシ毛材11fは砥粒が含有されナイロン製のモノフィラメントであるので、ワークを研磨するのに十分な研磨力と柔軟性との双方を備えている。よって、ブラシ毛材11fの先端のワークへの食い込みや、ブラシ毛材11fのワークへの叩きつけ等によりワークの回転が妨げられることがない。よって、ワークの回転がロールブラシ11によって妨げられることがないので、ワーク載置部材30の上端をワーク回転車に向けて傾ける必要がない。
【0041】
ワーク載置部材30の上端の位置(高さ位置)は、ロールブラシ11の軸心と同じとした。しかし、ワークの径が大きすぎると、ブラシ毛材11fがワークに接触する機会が減少するため、研磨力が低下する。このような場合(例えば、本実施形態の場合φ30mm以上)、ワークの中心点の高さ位置がロールブラシ11の軸心と同一となるようにワーク載置部材30の高さ位置を調整することが望ましい。
【0042】
ワーク回転車21およびロールブラシ11は、例えば1〜5°の範囲で、ワークの前進方向に向けて下方に傾けて配置する。ワーク回転車21を傾けることでワークが前進する。ワーク回転車21およびロールブラシ11の傾斜角度が小さすぎるとワークが前進しづらくなり、ワークの前進速度が一定とならず、仕上がりにムラが生じる恐れがある。傾斜角度が大きすぎるとワークの前進速度が必要以上に速くなり、研磨不足となる恐れがある。
【0043】
ワーク載置部材30の長さ(
図1(B)における左右方向の長さ)は、研磨中にワークを載置できさえすれば特に限定されない。
【0044】
ワーク搬送機構60は、
図1(B)におけるワーク載置部材30の左側に配置したワーク搬入機構61と、ワーク載置部材30の右側に配置したワーク搬出機構62と、を備える。ワーク搬入機構61は、ワーク搬入フィーダ61a(本実施形態では振動フィーダ)と、前記ワーク搬入フィーダ61aに載置し、ワーク載置部材30の左側に隣接して配置したワーク搬入部材61b(本実施形態では断面がV字形状となるように配置した等辺山形鋼(アングル鋼))と、で構成されている。ワークをワーク搬入フィーダ61aに載置した後、ワーク搬入フィーダ61aを作動すると、ワークは右方向に向かって前進する。ワークは、ワーク搬入部材61bによって、前進方向に対する左右方向のぶれが生じることなく前進を続け、ワーク載置部材30に載置される。
【0045】
ワーク搬出機構62は、ワーク搬出フィーダ62a(本実施形態では、振動フィーダ)と、前記ワーク搬出フィーダ62aに載置し、ワーク載置部材30の右側に隣接して配置したワーク搬出部材62b(本実施形態では断面がV字形状となるように配置した等辺山形鋼(アングル鋼))と、で構成されている。ワーク載置部材30上を前進して端部に到達したワークは、ワーク搬出部材62bに転置され、ワーク搬出フィーダ62aによりさらに前進を続ける。ワークは、該ワーク搬出部材62bによって、前進方向に対する左右方向のぶれが生じることなく前進できる。ワークがワーク回転車21の回転力のみで、ワーク搬出部材62b上を十分に前進できて後述の研磨室Rより搬出できる場合は、ワーク搬出フィーダ62aを用いなくてもよい。
【0046】
ワーク載置部材30の両端近傍に、ワークガイド部材63を配置した。ワークガイド部材63は、ワークのワーク載置部材30の載置位置を調整するための部材である。本実施形態では、2枚の平板をワーク載置部材30を挟んで対象になるように、それぞれ立設した。前記平板の間隔(
図1(B)における上下方向)は例えばボールネジ機構によって、ワークの径に応じて調整できる。ワークガイド部材63によって、ワークはワーク載置部材30の中央に載置される。
【0047】
筐体70は、上部ケーシング71と、下部ケーシング72と、制御部ケーシング73と、で構成される。上部ケーシング71と下部ケーシング72とで箱体を形成している。筐体70には研磨機構10とワーク回転機構20とワーク載置部材30と切り込み量調整機構40と隙間調整機構50と、が収納されており、筐体70の内部で研磨室Rを形成している。上部ケーシング71は、蝶番Hを支点として開閉可能である。また、上部ケーシング71には透明の板である窓部71aが設けられており、研磨中のワークを窓部71aから確認することができる。
【0048】
前記筐体70の左側面には搬入口74が開口しており、前記ワーク搬入部材61bが貫通している。また、筐体70の右側面には搬出口75が開口しており、ワーク搬出部材62bが貫通している。
【0049】
研磨室Rにはクーラント液循環機構80が連結されている。研磨を行う際は、研磨によって発熱したワークを冷却するためのクーラント液(本実施形態では、ソリュブル・ソリューションタイプの水溶性研削液)をクーラント液噴射ノズル(図示せず)より噴射する。クーラント液循環機構80は、前記クーラント液噴射ノズルから噴射されたクーラント液を回収し、再びクーラント液噴射ノズルに送ることができる。
【0050】
ブラシ毛材11fを金属製のワイヤとした場合、前記クーラント液によってブラシ毛材11fが腐食する。この腐食は、研磨時にワークに転写されるので、ワークの品質が低下する。また、腐食によってブラシ毛材11fの強度が低下するので、研磨中にブラシ毛材11fが折損する。研磨中にブラシ毛材11fが折損するとロールブラシ11の研磨力が変化するので、ワークの仕上がり品質を制御するのが困難である。本発明のロールブラシでは、これらの問題は発生せずに良好にワークを研磨できる。
【0051】
なお、クーラント液噴射ノズルより噴射されたクーラント液にワークの切削粉等の粒子が多く含まれる場合は、研磨室Rとクーラント液循環機構80との間に、クーラント液に含まれる前記粒子を除去するための濾過機構(図示せず)を配置しても良い。
【0052】
前記クーラント液がロールブラシ11と接触することで、クーラント液が霧状になって研磨室Rに充満する。この霧状のクーラント液を除去するためのミストコレクタ(図示せず)を研磨室Rに連結させても良い。
【0053】
制御手段90は、研磨条件の記憶、記憶した研磨条件に基づいて各機構を作動させるための信号の出力、等を行うことができる。例えば、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)やデジタルシグナルプロセッサ(DSP)等のモーションコントローラ、パーソナルコンピュータ、多機能携帯端末、多機能携帯電話、等を用いることができる。本実施形態では、研磨条件の記憶および各機構を作動させる信号の出力を行う制御部91と、センタレス研磨装置01の作動のON・OFFを行う操作部92からなる。前記制御部91は前記制御部ケーシング73に収納されている。
【0054】
次に、本実施形態のセンタレス研磨装置01を用いた研磨方法を説明する。本実施形態ではφ20×40mmの炭素鋼の丸棒(材質は、JIS G4051にて規定されるS45C)を連続して研磨した場合を例に説明する。
【0055】
(研磨方法;運転準備工程)
研磨を行う前に、以下の運転準備工程を行う。まず、制御部91に研磨条件を以下の研磨条件を入力し、記憶させる。
<研磨条件>
ワーク回転車の回転速度
ワーク搬送機構でのワークの送り速度
【0056】
次いで、上部ケーシング71を開けて、各機構の位置調整を行う。まず、ワーク搬入部材61bに載置したワークの下端位置とワーク載置部材30の高さ位置とが略同一となるように、ワーク搬入部材61bの高さ位置を調整する。同様に、ワーク搬出部材62bに載置したワークの下端位置とワーク載置部材30の高さ位置とが略同一となるように、ワーク搬出部材62bの高さ位置を調整する。
【0057】
次いで、ワーク載置部材30の両端近傍に配置したワークガイド部材63の間隔をワークの径となるように、それぞれ調整する。
【0058】
次いで、隙間調整ハンドル51を回してワーク回転車21を
図1(A)における左右方向に動かして、ロールブラシ11とワーク回転車21との間隔(隙間)がワークの径になるように調整する。
【0059】
次いで、切り込み量調整ハンドル41を回してロールブラシ11を、目的の切り込み量(本実施形態では1.0mm)だけ
図1(A)における左方向、すなわち切り込み量の分だけワーク回転車21との間隔が狭くなる方向に移動する。
【0060】
次いで、クーラント液循環機構80内のクーラント液の量を所定量となるように調整する。また、研磨室Rに配置されたクーラント液噴射ノズルの向きを調整する。
【0061】
以上の調整が終了したら上部ケーシング71を閉めて、運転準備工程が完了する。次いで、研磨工程を説明する。
【0062】
(研磨方法;研磨工程)
操作部92の「運転釦」をONにすると、モータ12が作動してロールブラシ11が回転する。本実施形態では、ロールブラシ11を2,000min
−1で回転させた。
【0063】
次いで、制御部91に入力された研磨条件に基づいてモータ22が作動し、ワーク回転車21が回転する。ワーク回転車21の回転速度によって、ワークがロールブラシ11とワーク回転車21との間を通過する際の前進速度およびワークの回転速度が決定される。即ち、ワークの加工速度をワーク回転車21の回転速度によって調整することができる。
【0064】
次いで、クーラント液循環機構80が作動し、クーラント液の噴射および循環が行われる。
【0065】
次いで、ワーク搬入フィーダ61aおよびワーク搬出フィーダ62aが作動する。ワーク搬入フィーダ61aおよびワーク搬出フィーダ62aの運転条件(ワークの前進速度)は、制御部91に入力した「ワーク搬送機構でのワークの送り速度」に基づいて作動する。
【0066】
ワーク搬入フィーダ61aが作動したら、ワークをワーク搬入部材61bに載置する。ワークはワーク搬入フィーダ61aの振動によって
図1(B)における右方向に前進し、搬入口74より研磨室Rへ搬入される。そして、ワークはワーク搬入部材61bの右端に到達する。ワークはワークガイド部材63によって同図上下方向の位置が調整された後、ワーク載置部材30に転置される。
【0067】
ワークはワーク回転車21の回転によって、ワーク回転車21と逆回転に回転する。また、ワークは回転しているロールブラシ11のブラシ毛材11fと接触するので、外周面および端部が研磨される。
【0068】
ワーク載置部材30はワークの進行方向(
図1(B)における右方向)に向けて下向きに傾いているので、ワークは研磨されながらさらに右方向に前進する。ワーク載置部材30の右端まで到達したワークは、ワークガイド部材63によって
図1(B)における上下方向の位置が調整された後、ワーク搬出部材62bに転置される。転置されたワークは、ワーク搬出フィーダ62aの振動によって右方向に前進し、搬出口75より研磨室Rの外に搬出される。
【0069】
以上の工程でワークの研磨が完了する。ワーク搬入部材61b上にワークを連続的に載置すると、複数のワークを連続して研磨することができる。
【0070】
(実施例)
本実施形態のセンタレス研磨装置を用いて研磨を行った結果を実施例として説明する。実施例では、ブラシ毛材11fを、砥粒(粒度;F60〜2000)をブラシ毛材全体量に対して10〜40wt%含有させた、径がφ0.55mmのナイロン612とし、硬度が異なる二種類の円柱状のワーク(ワークA;JIS G4051にて規定されるS45Cの未焼き入れ品,φ20×40mm ワークB;JIS G4053にて規定されるSCM430の焼き入れ品,φ10×30mm)を、外周面の平滑化と端部の丸み付け(R付け)を目的として、以下の条件で加工した。
ロールブラシの回転数;2,000min
−1
切り込み量 ;1.0mm
ワークの送り速度 ;0.5および1.0m/min
【0071】
また、比較例として、ブラシ毛材を金属のワイヤ(径が0.175mmの硬鋼線材;JIS G3506に規定されるSWRH70、径が0.10mmのステンレス線材;JIS G3409に規定されるSUS304およびSUS430)として同様の加工を行った。
【0072】
研磨したワークAおよびワークBは、外周面については表面粗さRa(JIS B0601:1994)を表面粗さ輪郭測定器(株式会社東京精密製;surfcom 1500DX)にて外周面を測定し、また輪郭形状測定器(株式会社東京精密製;contourecord 2600E)にて端部のバリやダレの有無および半径寸法(R寸法)を測定することで評価した。なお、ワークAおよびワークBは各条件で3本ずつ研磨を行い、測定結果の平均値を算出して評価した。
【0073】
表1に研磨した結果を示す。以下、表1、
図4、
図5を用いて結果について考察を記載する。
【0075】
1.ワークの外周面の評価(表1、
図4を参照)
ナイロン樹脂のモノフィラメントをブラシ毛材とした場合、硬度が低いワークAを研磨した場合は、何れの条件でも研磨前より研磨後の表面粗さRaが小さくなっていた(実施例1〜11)すなわち、研磨によってワークAの外周面が平滑化されたのが分かる。また、硬度の高いワークBを研磨した場合、研磨前と研磨後の表面粗さRaに変化は殆どなかった(実施例12〜13))。すなわち、この研磨条件ではワークBの外周面を研磨する能力が不足していることが分かる。しかし、実施例1〜11の結果からも明らかなように、砥粒の粒度および含有量を適宜選択することで、ワークBを良好に研磨できることが容易に推察できる。
【0076】
剛性の高い金属製のワイヤ(硬鋼線材)をブラシ毛材としてワークを研磨した場合、いずれも研磨前より研磨後の表面粗さRaが大きくなっていた(比較例1〜4)。すなわち、研磨によって外周面が傷ついたのがわかる。このワイヤは先端以外に研磨能力がなく、かつ剛性が高い。そのため、ワークの表面はブラシ毛材の先端で研磨されても、該ブラシ毛材の側面がワークに叩きつけられてワーク表面が傷つけられる。また、剛性の低い金属製のワイヤ(ステンレス線材)をブラシ毛材としてワークを研磨した場合、いずれも研磨前と研磨後で表面粗さRaに変化は殆どなかった(比較例5〜6)。このワイヤは先端以外に研磨能力がないが、剛性が低いので研磨能力が低い。よって、ワークを研磨することができない。
【0077】
また、実施例1および比較例1において、研磨によるワークの径の変化を測定した。実施例1の場合は−1.5μmであり、比較例1の場合は−3.8μmであった。この結果、金属製のワイヤをブラシ毛材とすると、ワークの寸法管理が困難であることが示唆された。
【0078】
2.ワークの端面の評価(表1、
図5を参照)
研磨前のワークの端部はいずれもバリが存在していた。ナイロン樹脂のモノフィラメントをブラシ毛材とした場合、研磨後のワークの端部はいずれもバリがなく、また、研磨によって縁ダレが発生することがなかった。そして、該ワークの端部はいずれも
図7における縦軸方向および横軸方向の曲率が均一なR形状を形成していた。
剛性の高い金属製のワイヤ(硬鋼線材)をブラシ毛材としてワークを研磨した場合、研磨によって二次バリが発生した(比較例1〜2)。硬鋼線材のワイヤの剛性が高いため、研磨の際にワークにブラシ毛材が叩きつけられることで、ワークが塑性変形して二次バリが発生したと推測される。また、このワイヤをブラシ毛材としてワークBを研磨した場合、研磨によって縁ダレが発生していた(比較例3〜4)。これは、研磨によってワークBがワークAの場合と同様に塑性変形したが、ワークAより硬度が高いために縁ダレとなったと推測される。例えばワークが油圧部品の場合、縁ダレがあると油のリークが発生する等、このように、ワークの縁ダレにより様々な問題が発生するので好ましくない。
剛性の低い金属製のワイヤ(ステンレス線材)をブラシ毛材としてワークを研磨した場合、いずれも研磨前と研磨後で表面粗さRaに変化は殆どなかった(比較例5〜6)。このワイヤは先端以外に研磨能力がないが、剛性が低いので研磨能力が低い。よって、ワークを研磨することができない。
【0079】
(第二実施形態)
次に、本発明のセンタレス研磨装置における別の形態を、第二実施形態として
図6を用いて説明する。第二実施形態のセンタレス研磨装置は研磨機構およびワーク回転機構からなる研磨ユニットを複数台連設したタイプである。本実施形態では、2台の研磨ユニットを連接した場合について説明する。なお、以下の説明では第一実施形態のセンタレス研磨装置と異なる点のついてのみ説明する。なお、以下の説明において、便宜上第一実施形態と同じ符号を一部用いる。
【0080】
第二実施形態に係るセンタレス研磨装置101は、第一研磨機構110aと、第一ワーク回転機構120aと、第二研磨機構110bと、第二ワーク回転機構120bと、ワーク載置部材130と、第一切り込み量調整機構140aと、第二切り込み量調整機構140bと、第一隙間調整機構150aと、第二隙間調整機構150bと、ワーク搬送機構160と、筐体170と、クーラント液循環機構180と、制御手段190と、を備える。
【0081】
第一研磨機構110aおよび第二研磨機構110bは、共に第一実施形態における研磨機構10と同じ構成である。
【0082】
また、第一研磨機構110aには第一切り込み量調整機構140aが連結されている。第二研磨機構110bには第二切り込み量調整機構140bが連結されている。前記第一切り込み量調整機構140aおよび前記第二切り込み量調整機構140bは共に第一実施形態における切り込み量調整機構40と同じ構成である。筐体170の外部に設けられた第一切り込み量調整ハンドル141aおよび第二切り込み量調整ハンドル141bを回転させてそれぞれのロールブラシ11を
図6(A)における左右方向に移動することで、該ロールブラシ11の切り込み量を調整することができる。
【0083】
第一ワーク回転機構120aおよび第二ワーク回転機構120bは、共に第一実施形態におけるワーク回転機構20と同じ構成である。
【0084】
また、第一ワーク回転機構120aには第一隙間調整機構150aが連結されている。第二ワーク回転機構120bには第二隙間調整機構150bが連結されている。前記第一隙間調整機構150aおよび前記第二隙間調整機構150bは共に第一実施形態における隙間調整機構50と同じ構成である。筐体170の外部に設けられた第一隙間調整ハンドル151aおよび第二隙間調整ハンドル151bを回転させてそれぞれのワーク回転車21を
図6(A)における左右に移動することで、それぞれのロールブラシ11とワーク回転車21との隙間を調整することができる。
【0085】
第一研磨機構110aおよび第一ワーク回転機構120a(第一研磨ユニットU1)と、第二研磨機構110bおよび第二ワーク回転機構120b(第二研磨ユニットU2)と、をそれぞれの隙間同士が同一線上に位置するように連接し、それぞれの隙間を結ぶようにワーク載置部材130を立設した。前記ワーク載置部材130は第一実施形態におけるワーク載置部材30と同様に細長い平板である。また、該ワーク載置部材130の上端面はワークが載置される面であり、その形状は特に限定されないが、本実施形態では第一実施形態と同様にロールブラシ11とワーク回転車21との間では水平とした。
【0086】
ワーク回転車21およびロールブラシ11は、第一実施形態と同様に、例えば1〜5°の範囲で、ワークの進行方向に向けて下方に傾けて配置する。ワーク回転車21を傾けることでワークが前進する。ワーク回転車21およびロールブラシ11の傾斜角度が小さすぎるとワークが前進しづらくなり、ワークの前進速度が一定とならず、仕上がりにムラが生じる恐れがある。傾斜角度が大きすぎるとワークの前進速度が必要以上に速くなり、研磨不足となる恐れがある。
【0087】
第一研磨機構110a、第一ワーク回転機構120a、第二研磨機構110b、および第二ワーク回転機構120bの位置関係は特に限定されないが、本実施形態では
図6(B)に示すように、第一研磨機構110aの右側(ワークの進行方向側)に第二ワーク回転機構120bが、第一ワーク回転機構120aの右側に第二研磨機構110bが、それぞれ位置するように配置した。
【0088】
ワーク搬送機構160は第一実施形態と同様の構成である。すなわち、前記ワーク載置部材130の左側に配置したワーク搬入機構61と、前記ワーク載置部材130の右側に配置したワーク搬出機構62と、を備える。また、第一研磨機構110aのロールブラシ11および第一ワーク回転機構120aのワーク回転車21の両端近傍と、第二研磨機構110bのロールブラシ11および第二ワーク回転機構120bのワーク回転車21の両端近傍と、にはそれぞれ第一実施形態の構成と同様のワークガイド部材63を配置した。
【0089】
筐体170は、第一研磨機構110aと、第一ワーク回転機構120aと、第二研磨機構110bと、第二ワーク回転機構120bと、ワーク載置部材130と、第一切り込み量調整機構140aと、第二切り込み量調整機構140bと、第一隙間調整機構150aと、第二隙間調整機構150bと、を囲い、内部で研磨室Rを形成している。該筐体170は天井に設けられた蝶番Hを支点として開閉可能である。また、該筐体170の天井には透明の板である窓部171aが設けられており、研磨中のワークを該窓部171aから確認することができる。
【0090】
前記筐体170の左側面には搬入口174が開口しており、前記ワーク搬入部材61bが貫通している。また、該筐体170の右側面には搬出口175が開口しており、前記ワーク搬出部材62bが貫通している。
【0091】
前記研磨室Rには第一実施形態と同様にクーラント液循環機構180が連結されている。なお、クーラント液噴射ノズルより噴射されたクーラント液にワークの切削粉等の粒子が多く含まれる場合は、研磨室Rとクーラント液循環機構80との間に、クーラント液に含まれる前記粒子を除去するための濾過機構(図示せず)を配置しても良い。
【0092】
前記クーラント液がロールブラシ11と接触することで、霧状になったクーラント液が発生する。この霧状のクーラント液を除去するためのミストコレクタ(図示せず)を研磨室Rに連結させても良い。
【0093】
制御手段190は、研磨条件の記憶、記憶した研磨条件に基づいて各機構を作動させるための信号の出力、等を行うことができる。本実施形態では、第一実施形態と同様に、研磨条件の記憶および各機構を作動させる信号の出力を行う制御部191と、センタレス研磨装置101の作動のON・OFFを行う操作部192からなる。
【0094】
ワークの外周は、第一実施形態と同様に運転準備工程および研磨工程を経て研磨される。第二実施形態のセンタレス研磨装置101では、前記搬入口174より研磨Rに搬入されたワークは第一研磨ユニットU1および第二研磨ユニットU2により研磨された後、搬出口175より研磨Rの外部に搬出される。このように、ワークは第一研磨ユニットU1および第二研磨ユニットU2により研磨されるので、ワークの前進速度を速くして、研磨時間を短くすることができる。
【0095】
また、第一研磨機構110aおよび第一ワーク回転機構120aの回転方向と、第二研磨機構110bおよび第二ワーク回転機構120bの回転方向と、を逆回転としてもよい。例えば、切り欠き加工や穴加工やボス加工等の加工を施しているワーク(
図7の例示を参照)を研磨する場合、その加工端部の研磨を均等に行うことが困難であるが、前記回転方向を逆回転とすることで、加工端部の研磨を均等に行うことができる。