(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コネクタ本体は、アクチュエータへの電力供給用の複数の電力端子と、信号伝送用の複数の信号端子とを有し、前記複数の電力端子は前記コネクタ本体の外周側に配置されている、請求項1記載の制御装置。
前記シェルの内周面のうち、前記基板側の部分には、前記基板側に向かうに従って外側に広がるように案内面が形成されている、請求項1〜3のいずれか一項記載の制御装置。
前記カバー部材の外周面のうち、前記開口側の部分には、前記開口側に向かうに従って内側に縮まるように案内面が形成されている、請求項1〜4のいずれか一項記載の制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0011】
まず、本実施形態に係るロボットコントローラ1を備えるロボットシステム100について説明する。
図1に示すように、ロボットシステム100は、ロボットコントローラ1と多関節ロボット2とを備える。多関節ロボット2は、例えばロボットハンドや溶接トーチ等のツール3を保持して様々な作業を実行する。ロボットコントローラ1は多関節ロボット2の制御装置であり、外部ケーブル5を介して多関節ロボット2に接続される。
【0012】
多関節ロボット2の周囲には、多関節ロボット2の作業領域の内外を仕切るフェンス6が設けられる。ロボットコントローラ1のうち、外部ケーブル5の接続部分はフェンス6に近接するように配置される。これにより、多関節ロボット2からロボットコントローラ1への配線が容易となる。
【0013】
図2に示すように、ロボットコントローラ1は、ドライバ10と、電源部20と、中央演算部50と、これらを収容する筐体60とを備える。ドライバ10は、外部ケーブル5を介して多関節ロボット2に接続され、多関節ロボット2の各関節のアクチュエータを駆動する。電源部20は、ドライバ10や中央演算部50等に電力を供給する。中央演算部50は、多関節ロボット2に所望の動作を行わせるのに必要な各アクチュエータの駆動量等を演算するコンピュータである。
【0014】
筐体60は、例えば鉄、ステンレス又はアルミ合金等の金属板により構成された直方体状の収容箱である。筐体60の一面側には、電源スイッチ74等の入力スイッチ及び各種表示器が設けられている。以下、入力スイッチ及び各種表示器が設けられた面を「正面」とし、逆側の面を「背面」とする。また、「前後左右」は、「正面」側を前側、「背面」側を後側とした方向を意味する。
【0015】
筐体60内の下部領域Abには電源部20が収容され、筐体60内の上部領域Atには中央演算部50が収容され、下部領域Abと上部領域Atとの間の中間領域Amにはドライバ10が収容される。下部領域Abと中間領域Amとは、隔壁(不図示)により仕切られる。
【0016】
その他に、筐体60にはファンやスリット、熱交換機等、外気によってドライバ10、電源部20、中央演算部50等を適宜冷却するための機器が備わっているが、
図2はこれらの冷却機器の図示を省略している。
【0017】
図2及び
図3に示すように、ドライバ10は、基板11A,11Bと、保護板12と、放熱板13とを有する。基板11Aは、筐体60内に水平に配置される。基板11Aには、複数のアクチュエータをそれぞれ駆動する複数の駆動素子(不図示)が設けられている。複数の駆動素子は、基板11Aの下側で水平方向に並んでいる。
【0018】
一例として、ドライバ10は9軸のアクチュエータを駆動可能であり、これに対応して基板11Aには9個の駆動素子が設けられている。例えば多関節ロボット2が6軸のアクチュエータを有する場合には、9個のうち6個の駆動素子が多関節ロボット2のアクチュエータの駆動用に割り当てられる。残りの3個の駆動素子は、その他のアクチュエータ(以下、「外部軸アクチュエータ」という。)の駆動用とすることができる。外部軸アクチュエータとしては、ツール3のアクチュエータ、ワークの搬送装置のアクチュエータ等が挙げられる。
【0019】
基板11Bは基板11Aに対して平行であり、スペーサ14を介して基板11Aの上に固定される。基板11Bには、基板11Aの各駆動素子に指令信号を出力する指令回路が設けられている。
【0020】
保護板12は、基板11A,11Bの上面を覆うように広がり、基板11A,11B上の素子及び配線を保護する。保護板12は、スペーサ14を介して基板11Bの上に固定される。
【0021】
放熱板13はアルミ等の金属材料からなり、基板11Aの下に配置される。放熱板13は、基板11Aの下面を覆うように広がり、基板11Aの各駆動素子に密着した状態で基板11Aに固定される。放熱板13の下側には、互いに平行な複数のフィン13aが設けられている。複数のフィン13aは、それぞれ前後方向に沿うと共に下方に突出し、下部領域Ab内に進入している。基板11Aの各駆動素子で発生した熱は、放熱板13に伝わって放出される。従って、各駆動素子が効率よく冷却される。
【0022】
筐体60の背面をなす背面板61には、多軸レセプタクルCN1及び3つの単軸レセプタクルCN2が設けられている。多軸レセプタクルCN1は、多関節ロボット2の全てのアクチュエータを接続するためのコネクタである。単軸レセプタクルCN2は、外部軸アクチュエータを接続するためのコネクタである。
【0023】
単軸レセプタクルCN2は、センサコネクタ72及びパワーコネクタ73を有する。センサコネクタ72及びパワーコネクタ73は、筐体60内のケーブル(不図示)を介して基板11A上の駆動素子等に接続される。
【0024】
多軸レセプタクルCN1は、コネクタ本体15と、カバー部材16と、開口61aと、レセプタクルシェル(コネクタシェル)71とを有する。すなわちロボットコントローラ1は、コネクタ本体15と、カバー部材16と、開口61aと、レセプタクルシェル71とを備える。
【0025】
コネクタ本体15は、基板11Aに設けられている。より具体的に、コネクタ本体15は、基板11A上の後側に固定され、基板11Aの後側の縁11aから後方に突出している。コネクタ本体15は樹脂からなり、後方に開口した直方体状の外形を呈する。コネクタ本体15の内部は、前後方向に沿う複数のセル17に区画されている。コネクタ本体15の外周側のセル17Aには、電力供給用の電力端子Tpが収容されている。セル17Aに囲まれるセル17Bには、信号伝送用の信号端子Tsが収容されている(
図5参照)。詳細な図示は省略するが、電力端子Tp及び信号端子Tsは、基板11A上の配線により駆動素子等に接続されている。
【0026】
カバー部材16は、銅やアルミ等の金属製の薄板であり、逆さU字の断面形状を呈してコネクタ本体15の上面及び左右の側面を覆う。すなわちカバー部材16は、コネクタ本体15の外周の少なくとも一部を覆うように設けられている。カバー部材16の後側の縁16dは、コネクタ本体15の後側の端面15aから後方に張り出している(
図4参照)。
【0027】
カバー部材16の左右の下端部には、基板11Aの下方に突出する脚部16aが設けられ、脚部16aの下端部には左右方向の外側に張り出す接続片16bが設けられている。コネクタ本体15の下方において、放熱板13は基板11Aの後側の縁11aから後方に張り出しており、接続片16bは放熱板13の上面に接している。接続片16bには、固定孔16cが形成されている。固定孔16cには、例えば固定用のビス(不図示)が挿通される。このビスを放熱板13に固定することにより、接続片16bが放熱板13に固定される。
【0028】
開口61aは、コネクタ本体15に対応する位置において背面板61に設けられ、コネクタ本体15を外部に露出させる。開口61aは、コネクタ本体15の背面形状に対応する矩形状である。
【0029】
レセプタクルシェル71は、保持部71Aとシェル本体71Bとを有し、開口61aの周縁部に装着される。レセプタクルシェル71は、後述するコネクタ本体15の温度上昇を抑制するために金属製であることが望ましい。保持部71Aは、背面板61に平行な板状体であり、背面板61の外面に装着される。保持部71Aには、後方に開口する凹部71aが形成されている。凹部71aの底部の左側部分及び右側部分には、一対のガイド突起71bがそれぞれ設けられている。ガイド突起71bは、上下方向に沿うと共に後方に突出した板状を呈する。ガイド突起71bは、後方に突出した棒状を呈するものであってもよい。
【0030】
ガイド突起71b同士の間には、開口61aに対応する開口71cが形成されている。保持部71Aのうち、凹部71a外の左右には、一対の取付孔71dがそれぞれ形成されている。取付孔71dは、縦長の楕円形状を呈する。取付孔71dには、例えばビスが挿通される。このビスを背面板61に固定することにより、保持部71Aが背面板61に取り付けられる。ビスは、保持部71Aを完全に締め付けない状態で背面板61に固定される。これにより、レセプタクルシェル71は開口61aに対する筐体60の背面に沿ったガタつきをもって背面板61に取り付けられる。上述したように取付孔71dは縦長の楕円形状を呈するので、左右方向のガタつき幅に比べ上下方向のガタつき幅が大きい。
【0031】
シェル本体71Bは、開口71cの上縁部及び左右の側縁部から前方に突出し、逆さU字の断面形状を呈する。シェル本体71Bの内周面の前側部分には、前方(基板11A側)に向かうに従って外側に広がるように案内面71eが形成されている(
図6参照)。
【0032】
シェル本体71Bを背面板61の外側から開口61aに通し、保持部71Aを背面板61に取り付けることで、開口61aの周縁部にレセプタクルシェル71が設けられる。シェル本体71Bは筐体60内に位置し、コネクタ本体15の上面及び左右の側面を囲む。コネクタ本体15の外周にはカバー部材16が設けられているので、コネクタ本体15とシェル本体71Bとの間にカバー部材16が介在する。
【0033】
多軸レセプタクルCN1には、外部ケーブル5の端部に設けられたプラグ80が接続される。プラグ80は、コネクタ本体82と、プラグシェル81と、プラグカバー83とを有する。
【0034】
コネクタ本体82は、コネクタ本体15の複数のセル17にそれぞれ挿入される複数の筒状部84を有する。各筒状部84には、外部ケーブル5に接続された端子(不図示)が収容されている。コネクタ本体82の外周側に配置された筒状部84Aの端子は、セル17Aの電力端子Tpに接続される。筒状部84Aに囲まれる筒状部84Bの端子は、セル17Bの信号端子Tsに接続される。
【0035】
プラグシェル81は、外部ケーブル5の外周に設けられると共に前方に開口した収容器であり、コネクタ本体82を収容する。プラグカバー83は、プラグシェル81の開口を部分的に塞いでコネクタ本体82をプラグシェル81内に保持する蓋部材である。
【0036】
プラグカバー83の中央には、コネクタ本体82を前方に露出させる矩形の開口83aが形成されている。開口83aの周縁部には、前方に突出する凸部83bが全周に亘って形成されている。凸部83bは、保持部71Aの凹部71aに嵌合する。この嵌合により、保持部71Aがプラグ80を保持する。
【0037】
凸部83bの左側部分及び右側部分には、ガイド突起71bを受け入れるガイド開口83cが形成されている。ガイド開口83cは、ガイド突起71bが板状であるのに対応してスリット状を呈する。ガイド突起71bが棒状を呈する場合には、ガイド開口83cは孔状を呈する。ガイド突起71bとガイド開口83cとの嵌合により、多軸レセプタクルCN1に対するプラグ80の挿入方向が前後方向に沿うように案内される。このため、筒状部84をセル17内に円滑に挿入できる。
【0038】
プラグカバー83の四隅には、取付孔83dが形成されている。取付孔83dには、例えばビスが挿通される。このビスをプラグシェル81に固定することにより、プラグカバー83がプラグシェル81に取り付けられる。ビスは、プラグカバー83を完全に締め付けない状態でプラグシェル81に固定される。これにより、プラグカバー83はプラグシェル81の前側端面に沿ったガタつきをもってプラグシェル81に取り付けられる。
【0039】
以上に説明したロボットコントローラ1によれば、ドライバ10の基板11Aに設けられたコネクタ本体15が、筐体60に設けられた開口61aから外部に露出するので、外部ケーブル5のプラグ80をコネクタ本体15に直接接続可能である。このため、筐体60内部において、プラグ80と基板11Aとの間にケーブルを介在させる必要がない。従って、筐体60内部のケーブルを削減できる。
【0040】
ここで、制御対象と制御装置とを接続する外部配線を単純化するために、多くの端子をコネクタ本体に集約することが望ましい。例えばロボットコントローラ1においては、多関節ロボット2の全てのアクチュエータを接続するための端子がコネクタ本体15に集約されている。多くの端子がコネクタ本体15に集約されると、コネクタ本体15における発熱が大きくなる。これに対し、開口61aの周縁部にレセプタクルシェル71が設けられ、レセプタクルシェル71によりコネクタ本体15が囲まれている。更に、コネクタ本体15とレセプタクルシェル71との間に金属製のカバー部材16が介在している。これらにより、コネクタ本体15で発生した熱を筐体60に分散させ、コネクタ本体15の温度上昇を抑制できる。レセプタクルシェル71も金属製とすれば、コネクタ本体15で発生した熱を更に効率よく筐体60へ分散させることができる。このようにコネクタ本体15の温度上昇を抑制することが、コネクタ本体15にプラグ80を直接接続する構成の実現に大きく寄与している。
【0041】
コネクタ本体15は、複数の電力端子Tpと、複数の信号端子Tsとを有し、複数の電力端子Tpはコネクタ本体15の外周側に配置されている。電力端子Tpは信号端子Tsに比べ発熱し易い傾向がある。このため、電力端子Tpをコネクタ本体15の外周側に配置してカバー部材16及びレセプタクルシェル71に近付けることで、コネクタ本体15で発生した熱をより効率よく筐体60に分散させることができる。従って、コネクタ本体15の温度上昇をより確実に抑制できる。
【0042】
なお、電力端子Tpを収容するセル17Aと信号端子Tsを収容するセル17Bとの間に、銅やアルミ等の金属製の隔壁18を設けてもよい(
図7参照)。隔壁18のシールド効果により、電力端子Tpから信号端子Tsへのノイズ伝播が抑制されるので、コネクタ本体15に多くの端子を集約させ易くなる。
【0043】
カバー部材16の後側(開口61a側)の縁16dは、コネクタ本体15の後端面(開口61a側の端面)15aから張り出している。ドライバ10を筐体60内に設置するときには、筐体60内側からレセプタクルシェル71のシェル本体71Bに向かって、すなわち正面から背面の方向へとコネクタ本体15が挿入される。縁16dが端面15aから張り出した構成を採用することにより、レセプタクルシェル71にコネクタ本体15を挿入するときにコネクタ本体15の後端部を保護できる。
【0044】
シェル本体71Bの内周面の前側部分(基板11A側の部分)には、案内面71eが形成されている。このため、シェル本体71Bにコネクタ本体15を円滑に挿入できる。
【0045】
案内面71eを形成するのに代えて、カバー部材16の外周面の後側部分(開口61a側の部分)に、後側に向かうに従って内側に縮まるように案内面16eを形成してもよい(
図8参照)。この場合も、シェル本体71Bにコネクタ本体15を円滑に挿入できる。案内面71eと案内面16eの両方を形成してもよい。
【0046】
レセプタクルシェル71は、開口61aに対する筐体60の背面に沿ったガタつきをもって筐体60に取り付けられている。このため、コネクタ本体15の位置のばらつきにレセプタクルシェル71の位置を適応させることができる。これにより、レセプタクルシェル71にコネクタ本体15をより円滑に挿入できる。なお、上述したように、取付孔71dは縦長の楕円形状を呈するので、左右方向のガタつき幅に比べ上下方向のガタつき幅が大きい。このため、特に、基板11Aの厚さ方向におけるコネクタ本体15の位置のばらつきに対して、レセプタクルシェル71の位置を適応させ易い。
【0047】
また、プラグカバー83はガタつきをもってプラグシェル81に取り付けられている。このため、凸部83bが凹部71aに嵌合した状態でも、コネクタ本体82は開口83aに対するガタつきをもって保持される。これにより、コネクタ本体15の位置のばらつきにコネクタ本体82の位置を適応させることができる。従って、筒状部84をセル17に更に円滑に挿入できる。
【0048】
レセプタクルシェル71は、プラグ80を保持するための保持部71Aを有する。コネクタ本体15をプラグ80の接続用のコネクタとして用いる場合、交換のためにドライバ10を正面方向へと引き出して筐体60内から取り出すときに、プラグ80の接続先が存在しないこととなる。このため、ドライバ10の交換のために、プラグ80をロボットコントローラ1から取り外すことが必要となり、ドライバ10の交換作業が煩雑化する。これに対し、プラグ80を保持するための保持部71Aをレセプタクルシェル71に設けたことにより、プラグ80をロボットコントローラ1に取り付けたままドライバ10を交換できる(
図9参照)。すなわち、筐体60内部のケーブルの削減と、ドライバ10の交換作業の簡素化との両立を図ることができる。
【0049】
特に、ロボットコントローラ1のうち外部ケーブル5の接続部分がフェンス6内に配置されている場合、プラグ80をロボットコントローラ1から取り外すことなくドライバ10を交換できることの有効性が顕著となる。
【0050】
なお、ドライバ10の交換作業におけるプラグ80の脱落をより確実に防止するために、ビス等によりプラグ80を保持部71Aに固定するロック機構を更に設けてもよい。
【0051】
カバー部材16は、放熱板13に固定されている。これにより、コネクタ本体15の温度上昇をより確実に抑制できる。
【0052】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、カバー部材16は、コネクタ本体15の全周を覆うものであってもよいし、コネクタ本体15の一面のみを部分的に覆うものであってもよい。レセプタクルシェル71はコネクタ本体15の全周を囲むものであってもよい。
【0053】
多関節ロボット2のアクチュエータ用の多軸レセプタクルCN1と、外部軸アクチュエータ用の単軸レセプタクルCN2とを必ずしも分離しなくてよい。例えば、外部軸アクチュエータ用の端子をレセプタクルCN1に含めてもよい。
【0054】
ドライバ10が制御対象とするアクチュエータの数は9軸に限られず、単軸であってもよい。
【0055】
制御対象は、電気的に制御されるものであればどのようなものであってもよく、多関節ロボット2に限られない。制御対象としては、例えば、工作機械や搬送装置等が挙げられる。