(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
画像形成装置から出射された光が入射される光学装置の領域まで延びている調光装置の第1基板の部分の、光学装置と対向していない面上に遮光部材が形成されている請求項1に記載の表示装置。
画像形成装置から出射された光が入射される光学装置の領域まで延びている調光装置の第1基板の部分の、光学装置と対向した面上に遮光部材が形成されている請求項1に記載の表示装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本開示を説明するが、本開示は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本開示の第1の態様及び第2の態様に係る表示装置、全般に関する説明
2.実施例1(本開示の第1の態様に係る表示装置)
3.実施例2(実施例1の変形)
4.実施例3(実施例1の別の変形)
5.実施例4(実施例1〜実施例3の変形)
6.実施例5(本開示の第2の態様に係る表示装置、及び、実施例4の変形)
7.実施例6(実施例1〜実施例5の変形)
8.実施例7(実施例1〜実施例5の別の変形)
9.実施例8(実施例1〜実施例5の更に別の変形)
10.実施例9(実施例1〜実施例5の更に別の変形)
11.実施例10(実施例1〜実施例5の更に別の変形)
12.実施例11(実施例1〜実施例5の更に別の変形)
13.実施例12(本開示における第1Aの表示装置〜第1Bの表示装置)
14.実施例13(本開示における第1Cの表示装置)
15.実施例14(実施例12〜実施例13の変形)
16.実施例15(実施例14の変形)
17.実施例16(本開示における第3Aの表示装置)
18.実施例17(本開示における第3Bの表示装置)
19.実施例18(本開示における第3Cの表示装置)
20.実施例19(本開示における第3Dの表示装置)
21.実施例20(本開示における第2Aの表示装置)
22.実施例21(本開示における第2Bの表示装置)
23.実施例22(本開示における第2Cの表示装置)
24.実施例23(本開示における第2Dの表示装置)
25.実施例24(実施例20〜実施例23の変形)
26.実施例25(実施例20〜実施例24の変形)、その他
【0018】
[本開示の第1の態様及び第2の態様に係る表示装置、全般に関する説明]
本開示の第1の態様に係る表示装置にあっては、遮光部材の光学装置への射影像内に、画像形成装置から出射された光が入射される光学装置の領域が含まれる形態とすることが好ましい。
【0019】
このような好ましい形態を含む本開示の第1の態様に係る表示装置において、遮光部材は、光学装置の画像形成装置が配された側とは反対側に、光学装置と離間して配されている構成とすることができる。尚、このような構成にあっては、遮光部材を、例えば、不透明なプラスチック材料から作製すればよく、このような遮光部材は、画像表示装置の筐体から一体に延び、あるいは又、画像表示装置の筐体に取り付けられ、あるいは又、フレームから一体に延び、あるいは又、フレームに取り付けられている形態とすることができる。更には、このような好ましい形態、構成を含む本開示の第1の態様に係る表示装置において、遮光部材は、画像形成装置が配された側とは反対側の光学装置の部分に配されている構成とすることができるし、遮光部材は、調光装置に配されている構成とすることもできる。尚、このような構成にあっては、不透明な材料から成る遮光部材を、例えば、光学装置の面上に物理的気相成長法(PVD法)や化学的気相成長法(CVD法)に基づき形成してもよいし、印刷法等によって形成してもよいし、不透明な材料(プラスチック材料や金属材料、合金材料等)から成るフィルムやシート、箔を貼り合わせてもよい。
【0020】
更には、以上に説明した好ましい形態、構成を含む本開示の第1の態様に係る表示装置において、遮光部材の光学装置への射影像内に、調光装置の端部の光学装置への射影像が含まれる構成とすることが好ましい。
【0021】
更には、以上に説明した好ましい形態、構成を含む本開示の第1の態様に係る表示装置において、調光装置は、
光学装置と対向する第1基板、及び、第1基板と対向する第2基板、
第1基板及び第2基板のそれぞれに設けられた電極、並びに、
第1基板と第2基板との間に封止された光透過制御材料層、
から成る形態とすることができ、この場合、第2基板は第1基板よりも薄い形態とすることができ、更には、これらの場合、第1基板は、光学装置の構成部材を兼ねている形態とすることができる。
【0022】
本開示の第2の態様に係る表示装置において、第2基板は第1基板よりも薄い構成とすることができる。
【0023】
以上に説明した好ましい形態、構成を含む本開示の第1の態様、第2の態様に係る表示装置において、調光装置は、光透過制御材料層が液晶材料層から成る光シャッタから構成されていることができるし、あるいは又、調光装置は、光透過制御材料層が無機エレクトロルミネッセンス材料層から成る光シャッタから構成されていることができる。但し、調光装置は、これらに限定するものではなく、その他、帯電した多数の電気泳動粒子及び電気泳動粒子とは異なる色の分散媒から構成された電気泳動分散液によって構成される光シャッタ、金属(例えば、銀粒子)の可逆的な酸化還元反応によって発生する電着・解離現象を応用した電着方式(エレクトロデポジション・電界析出)による光シャッタ、エレクトロクロミック材料の酸化還元反応によって発生する物質の色変化を応用した光シャッタ、エレクトロウェッティング現象によって光透過率を制御する光シャッタを用いることもできる。
【0024】
ここで、調光装置を、光透過制御材料層が液晶材料層から成る光シャッタから
構成する場合、光透過制御材料層を構成する材料として、限定するものではないが、TN(ツイステッド・ネマチック)型液晶材料、STN(スーパー・ツイステッド・ネマチック)型液晶材料を例示することができる。また、調光装置を、光透過制御材料層が無機エレクトロルミネッセンス材料層から成る光シャッタから
構成する場合、光透過制御材料層を構成する材料として、限定するものではないが、酸化タングステン(WO
3)を例示することができる。
【0025】
以上に説明した好ましい形態、構成を含む本開示の第1の態様あるいは第2の態様に係る表示装置において、観察者側から、光学装置、調光装置の順に配することが好ましいが、調光装置、光学装置の順に配してもよい。
【0026】
本開示の第1の態様あるいは第2の態様に係る表示装置において、第1基板及び第2基板を構成する材料として、具体的には、ソーダライムガラス、白板ガラス等の透明なガラス基板や、プラスチック基板、プラスチック・シート、プラスチック・フィルムを挙げることができる。ここで、プラスチックとして、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、酢酸セルロース等のセルロースエステル、ポリフッ化ビニリデンあるいはポリテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体等のフッ素ポリマー、ポリオキシメチレン等のポリエーテル、ポリアセタール、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、メチルペンテンポリマー等のポリオレフィン、ポリアミドイミドあるいはポリエーテルイミド等のポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフッ化ビニリデン、テトラアセチルセルロース、ブロム化フェノキシ、ポリアリレート、ポリスルフォン等を挙げることができる。プラスチック・シート、プラスチック・フィルムは、容易に曲がらない剛性を有していてもよいし、可撓性を有していてもよい。第1基板及び第2基板を透明なプラスチック基板から構成する場合、基板内面に無機材料あるいは有機材料から成るバリア層を形成しておいてもよい。
【0027】
第1電極及び第2電極として、所謂透明電極を挙げることができ、具体的には、インジウム−スズ複合酸化物(ITO,Indium Tin Oxide,SnドープのIn
2O
3、結晶性ITO及びアモルファスITOを含む)、フッ素ドープSnO
2(FTO)、IFO(FドープのIn
2O
3)、アンチモンドープSnO
2(ATO)、SnO
2、ZnO(AlドープのZnOやBドープのZnOを含む)、インジウム−亜鉛複合酸化物(IZO,Indium Zinc Oxide)、スピネル型酸化物、YbFe
2O
4構造を有する酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性高分子等を挙げることができるが、これらに限定されるものではなく、また、これらを2種類以上組み合わせて用いることもできる。第1電極及び第2電極は、真空蒸着法やスパッタリング法等の物理的気相成長法(PVD法)、各種化学的気相成長法(CVD法)、各種塗布等に基づき形成することができる。電極のパターニングは、基本的には、不要であるが、所望に応じてパターニングする場合、エッチング法、リフトオフ法、各種マスクを用いる方法等、任意の方法で行うことができる。
【0028】
第1基板と第2基板とは、外縁部において封止剤によって封止され、接着されている。シール剤とも呼ばれる封止剤として、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エン−チオール系樹脂、シリコーン系樹脂、変性ポリマー樹脂等の、熱硬化型、光硬化型、湿気硬化型、嫌気硬化型等の各種樹脂を用いることができる。
【0029】
以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本開示の第1の態様あるいは第2の態様に係る表示装置(以下、これらを総称して、『本開示の表示装置等』と呼ぶ場合がある)にあっては、
表示装置の置かれた環境の照度を測定する照度センサ(便宜上、『環境照度測定センサ』と呼ぶ場合がある)を更に備えており、
照度センサ(環境照度測定センサ)の測定結果に基づき、調光装置の光透過率を制御する形態とすることができる。
【0030】
また、上記の好ましい形態を含む本開示の表示装置等にあっては、
表示装置の置かれた環境の照度を測定する照度センサ(環境照度測定センサ)を更に備えており、
照度センサ(環境照度測定センサ)の測定結果に基づき、画像形成装置によって形成される画像の輝度を制御する形態とすることができる。
【0031】
更には、以上に説明した好ましい形態を含む本開示の表示装置等にあっては、
外部環境から調光装置を透過した光に基づく照度を測定する第2の照度センサ(便宜上、『透過光照度測定センサ』と呼ぶ場合がある)を更に備えており、
第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)の測定結果に基づき、調光装置の光透過率を制御する形態とすることができる。
【0032】
更には、以上に説明した好ましい形態を含む本開示の表示装置等にあっては、
外部環境から調光装置を透過した光に基づく照度を測定する第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)を更に備えており、
第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)の測定結果に基づき、画像形成装置によって形成される画像の輝度を制御する形態とすることができる。
【0033】
以上のように、照度センサ(環境照度測定センサ)の測定結果に基づき調光装置の透過率を制御し、また、照度センサ(環境照度測定センサ)の測定結果に基づき画像形成装置によって形成される画像の輝度を制御し、また、第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)の測定結果に基づき調光装置の透過率を制御し、また、第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)の測定結果に基づき画像形成装置によって形成される画像の輝度を制御すれば、観察者が観察する画像に高いコントラストを与えることができるだけでなく、表示装置の置かれた周囲の環境の照度に依存して画像の観察状態の最適化を図ることができる。照度センサ(環境照度測定センサ、透過光照度測定センサ)は、周知の照度センサから構成すればよいし、照度センサの制御は周知の制御回路に基づき行えばよい。
【0034】
ここで、第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)を備えている本開示の表示装置等にあっては、第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)は、光学装置よりも観察者側に配置されている形態とすることが望ましい。
【0035】
以上に説明した種々の好ましい形態を含む本開示の表示装置等において、調光装置の最高光透過率は50%であり、調光装置の最低光透過率は30%以下である構成とすることができる。尚、調光装置の最低光透過率の下限値として1%を挙げることができる。
【0036】
また、以上に説明した種々の好ましい形態、構成を含む本開示の表示装置等において、照度センサ(環境照度測定センサ)の測定結果が所定値(便宜上、『第1の照度測定値』と呼ぶ場合がある)以上になったとき、調光装置の光透過率を所定の値(便宜上、『第1の光透過率』と呼ぶ場合がある)以下とする構成とすることができる。あるいは又、照度センサ(環境照度測定センサ)の測定結果が所定値(便宜上、『第2の照度測定値』と呼ぶ場合がある)以下になったとき、調光装置の光透過率を所定の値(便宜上、『第2の光透過率』と呼ぶ場合がある)以上とする構成とすることができる。更に、環境照度測定センサの照度から鑑みて、透過光照度測定センサの測定結果が所望の照度になっていない場合、若しくは、更に一層の微妙な照度調整が望まれる場合には、第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)の値をモニターしながら調光装置の光透過率を調整すればよい。ここで、第1の照度測定値として10ルクスを挙げることができるし、第1の光透過率として1%乃至30%のいずれかの値を挙げることができるし、第2の照度測定値として0.01ルクスを挙げることができるし、第2の光透過率として51%乃至99%のいずれかの値を挙げることができる。また、環境照度測定センサの照度測定値が1×10
-3ルクス以下であった場合、例えば、調光装置の駆動電圧を制御して、駆動時間を短縮し、出来る限り迅速に調光装置の光透過率を増加させることが好ましい。
【0037】
更には、以上に説明した種々の好ましい形態、構成を含む本開示の表示装置等において、場合によっては、調光装置を通過する光は調光装置によって所望の色に着色される構成とすることができる。そして、この場合、調光装置によって着色される色は可変である形態とすることができるし、あるいは又、調光装置によって着色される色は固定である形態とすることができる。尚、前者の場合、例えば、赤色に着色される調光装置と、緑色に着色される調光装置と、青色に着色される調光装置とを積層する形態とすればよい。また、後者の場合、調光装置によって着色される色として、限定するものではないが、茶色を例示することができる。
【0038】
更には、以上に説明した種々の好ましい形態、構成を含む本開示の表示装置等において、場合によっては、調光装置が着脱自在に配設されている形態とすることができる。調光装置を着脱自在に配設するためには、例えば、透明なプラスチックから作製されたビスを用いて調光装置を例えばフレームに取り付け、あるいは又、フレームに溝を切っておき、この溝に調光装置を係合させ、あるいは又、フレームに磁石を取り付けることで調光装置をフレームに取り付けることができるし、フレームにスライド部を
設け、このスライド部に調光装置を嵌め込んでもよい。また、調光装置にコネクタを取り付け、調光装置の光透過率を制御するための制御回路(例えば、画像形成装置を制御するための制御装置に含まれている)にこのコネクタ及び配線を介して調光装置を電気的に接続すればよい。
【0039】
更には、以上に説明した種々の好ましい形態、構成を含む本開示の表示装置等において、光学装置は、
(a)入射された光が内部を全反射により伝播した後、出射される導光板、
(b)導光板に入射された光が導光板の内部で全反射されるように、導光板に入射された光を偏向させる第1偏向手段、及び、
(c)導光板の内部を全反射により伝播した光を導光板から出射させるために、導光板の内部を全反射により伝播した光を複数回に亙り偏向させる第2偏向手段、
を備えている形態とすることができる。尚、「全反射」という用語は、内部全反射、あるいは、導光板内部における全反射を意味する。以下においても同様である。そして、この場合、調光装置の射影像内に第2偏向手段が位置する形態とすることができ、あるいは又、第2偏向手段の射影像内に調光装置が位置する形態とすることもできる。そして、更には、前述したように、調光装置を構成する基板の一方(第1基板)によって第1偏向手段及び第2偏向手段が被覆されている形態とすることができる。
【0040】
以上に説明した種々の好ましい形態、構成を含む本開示の表示装置等において、光学装置は半透過型(シースルー型)である。具体的には、少なくとも観察者の両眼に対向する光学装置の部分を半透過(シースルー)とし、これらの光学装置の部分を通して外景を眺めることができる。表示装置は、画像表示装置を1つ備えていてもよいし、2つ備えていてもよい。
【0041】
ここで、第1偏向手段は、導光板に入射された光を反射し、第2偏向手段は、導光板の内部を全反射により伝播した光を、複数回に亙り、透過、反射する構成とすることができる。そして、この場合、第1偏向手段は反射鏡として機能し、第2偏向手段は半透過鏡として機能する構成とすることができる。
【0042】
このような構成において、第1偏向手段は、例えば、合金を含む金属から構成され、導光板に入射された光を反射させる光反射膜(一種のミラー)や、導光板に入射された光を回折させる回折格子(例えば、ホログラム回折格子膜)から構成することができる。また、第2偏向手段は、誘電体積層膜が多数積層された多層積層構造体や、ハーフミラー、偏光ビームスプリッター、ホログラム回折格子膜から構成することができる。そして、第1偏向手段や第2偏向手段は、導光板の内部に配設されている(導光板の内部に組み込まれている)が、第1偏向手段においては、導光板に入射された平行光が導光板の内部で全反射されるように、導光板に入射された平行光が反射又は回折される。一方、第2偏向手段においては、導光板の内部を全反射により伝播した平行光が複数回に亙り反射又は回折され、導光板から平行光の状態で出射される。
【0043】
あるいは又、第1偏向手段は、導光板に入射された光を回折し、第2偏向手段は、導光板の内部を全反射により伝播した光を、複数回に亙り、回折する構成とすることができる。そして、この場合、第1偏向手段及び第2偏向手段は回折格子素子から成る形態とすることができ、更には、回折格子素子は、反射型回折格子素子から成り、あるいは又、透過型回折格子素子から成り、あるいは又、一方の回折格子素子は反射型回折格子素子から成り、他方の回折格子素子は透過型回折格子素子から成る構成とすることができる。尚、反射型回折格子素子として、反射型体積ホログラム回折格子を挙げることができる。反射型体積ホログラム回折格子から成る第1偏向手段を、便宜上、『第1回折格子部材』と呼び、反射型体積ホログラム回折格子から成る第2偏向手段を、便宜上、『第2回折格子部材』と呼ぶ場合がある。
【0044】
本開示における画像表示装置によって、単色(例えば、緑色)の画像表示を行うことができるが、カラーの画像表示を行う場合、第1回折格子部材あるいは第2回折格子部材を、異なるP種類(例えば、P=3であり、赤色、緑色、青色の3種類)の波長帯域(あるいは、波長)を有するP種類の光の回折反射に対応させるために、反射型体積ホログラム回折格子から成るP層の回折格子層が積層されて成る構成とすることができる。各回折格子層には1種類の波長帯域(あるいは、波長)に対応する干渉縞が形成されている。あるいは又、異なるP種類の波長帯域(あるいは、波長)を有するP種類の光の回折反射に対応するために、1層の回折格子層から成る第1回折格子部材あるいは第2回折格子部材にP種類の干渉縞が形成されている構成とすることもできる。あるいは又、画角を例えば三等分して、第1回折格子部材あるいは第2回折格子部材を、各画角に対応する回折格子層が積層されて成る構成とすることができる。あるいは又、例えば、第1導光板に、赤色の波長帯域(あるいは、波長)を有する光を回折反射させる反射型体積ホログラム回折格子から成る回折格子層から構成された第1回折格子部材及び第2回折格子部材を配し、第2導光板に、緑色の波長帯域(あるいは、波長)を有する光を回折反射させる反射型体積ホログラム回折格子から成る回折格子層から構成された第1回折格子部材及び第2回折格子部材を配し、第3導光板に、青色の波長帯域(あるいは、波長)を有する光を回折反射させる反射型体積ホログラム回折格子から成る回折格子層から構成された第1回折格子部材及び第2回折格子部材を配し、これらの第1導光板、第2導光板及び第3導光板を隙間を開けて積層する構造を採用してもよい。そして、これらの構成を採用することで、各波長帯域(あるいは、波長)を有する光が第1回折格子部材あるいは第2回折格子部材において回折反射されるときの回折効率の増加、回折受容角の増加、回折角の最適化を図ることができる。反射型体積ホログラム回折格子が直接大気と接しないように、保護部材を配することが好ましい。
【0045】
第1回折格子部材及び第2回折格子部材を構成する材料として、フォトポリマー材料を挙げることができる。反射型体積ホログラム回折格子から成る第1回折格子部材及び第2回折格子部材の構成材料や基本的な構造は、従来の反射型体積ホログラム回折格子の構成材料や構造と同じとすればよい。反射型体積ホログラム回折格子とは、+1次の回折光のみを回折反射するホログラム回折格子を意味する。回折格子部材には、その内部から表面に亙り干渉縞が形成されているが、係る干渉縞それ自体の形成方法は、従来の形成方法と同じとすればよい。具体的には、例えば、回折格子部材を構成する部材(例えば、フォトポリマー材料)に対して一方の側の第1の所定の方向から物体光を照射し、同時に、回折格子部材を構成する部材に対して他方の側の第2の所定の方向から参照光を照射し、物体光と参照光とによって形成される干渉縞を回折格子部材を構成する部材の内部に記録すればよい。第1の所定の方向、第2の所定の方向、物体光及び参照光の波長を適切に選択することで、回折格子部材の表面における干渉縞の所望のピッチ、干渉縞の所望の傾斜角(スラント角)を得ることができる。干渉縞の傾斜角とは、回折格子部材(あるいは回折格子層)の表面と干渉縞の成す角度を意味する。第1回折格子部材及び第2回折格子部材を、反射型体積ホログラム回折格子から成るP層の回折格子層の積層構造から構成する場合、このような回折格子層の積層は、P層の回折格子層をそれぞれ別個に作製した後、P層の回折格子層を、例えば、紫外線硬化型接着剤を使用して積層(接着)すればよい。また、粘着性を有するフォトポリマー材料を用いて1層の回折格子層を作製した後、その上に順次粘着性を有するフォトポリマー材料を貼り付けて回折格子層を作製することで、P層の回折格子層を作製してもよい。
【0046】
あるいは又、本開示における画像表示装置において、光学装置は、画像形成装置から出射された光が入射され、観察者の瞳に向かって出射される半透過ミラーから構成されている形態とすることができる。尚、画像形成装置から出射された光は、空気中を伝播して半透過ミラーに入射する構造としてもよいし、例えば、ガラス板やプラスチック板等の透明な部材(具体的には、後述する導光板を構成する材料と同様の材料から成る部材)の内部を伝播して半透過ミラーに入射する構造としてもよい。尚、半透過ミラーを、この透明な部材を介して画像形成装置に取り付けてもよいし、半透過ミラーを、この透明な部材とは別の部材を介して画像形成装置に取り付けてもよい。
【0047】
以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本開示における画像表示装置において、画像形成装置は、2次元マトリクス状に配列された複数の画素を有する形態とすることができる。尚、このような画像形成装置の構成を、便宜上、『第1の構成の画像形成装置』と呼ぶ。
【0048】
第1の構成の画像形成装置として、例えば、反射型空間光変調装置及び光源から構成された画像形成装置;透過型空間光変調装置及び光源から構成された画像形成装置;有機EL(Electro Luminescence)、無機EL、発光ダイオード(LED)等の発光素子から構成された画像形成装置を挙げることができるが、中でも、反射型空間光変調装置及び光源から構成された画像形成装置とすることが好ましい。空間光変調装置として、ライト・バルブ、例えば、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)等の透過型あるいは反射型の液晶表示装置、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を挙げることができ、光源として発光素子を挙げることができる。更には、反射型空間光変調装置は、液晶表示装置、及び、光源からの光の一部を反射して液晶表示装置へと導き、且つ、液晶表示装置によって反射された光の一部を通過させて光学系へと導く偏光ビームスプリッターから成る構成とすることができる。光源を構成する発光素子として、赤色発光素子、緑色発光素子、青色発光素子、白色発光素子を挙げることができるし、あるいは又、赤色発光素子、緑色発光素子及び青色発光素子から出射された赤色光、緑色光及び青色光をライトパイプを用いて混色、輝度均一化を行うことで白色光を得てもよい。発光素子として、例えば、半導体レーザ素子や固体レーザ、LEDを例示することができる。画素の数は、画像表示装置に要求される仕様に基づき決定すればよく、画素の数の具体的な値として、320×240、432×240、640×480、1024×768、1920×1080等を例示することができる。
【0049】
あるいは又、以上に説明した好ましい形態、構成を含む本開示における画像表示装置において、画像形成装置は、光源、及び、光源から出射された平行光を走査する走査手段を備えた形態とすることができる。尚、このような画像形成装置の構成を、便宜上、『第2の構成の画像形成装置』と呼ぶ。
【0050】
第2の構成の画像形成装置における光源として発光素子を挙げることができ、具体的には、赤色発光素子、緑色発光素子、青色発光素子、白色発光素子を挙げることができるし、あるいは又、赤色発光素子、緑色発光素子及び青色発光素子から出射された赤色光、緑色光及び青色光をライトパイプを用いて混色、輝度均一化を行うことで白色光を得てもよい。発光素子として、例えば、半導体レーザ素子や固体レーザ、LEDを例示することができる。第2の構成の画像形成装置における画素(仮想の画素)の数も、画像表示装置に要求される仕様に基づき決定すればよく、画素(仮想の画素)の数の具体的な値として、320×240、432×240、640×480、1024×768、1920×1080等を例示することができる。また、カラーの画像表示を行う場合であって、光源を赤色発光素子、緑色発光素子、青色発光素子から構成する場合、例えば、クロスプリズムを用いて色合成を行うことが好ましい。走査手段として、光源から出射された光を水平走査及び垂直走査する、例えば、二次元方向に回転可能なマイクロミラーを有するMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)やガルバノ・ミラーを挙げることができる。
【0051】
第1の構成の画像形成装置あるいは第2の構成の画像形成装置において、光学系(出射光を平行光とする光学系であり、『平行光出射光学系』と呼ぶ場合があり、具体的には、例えば、コリメート光学系やリレー光学系)にて複数の平行光とされた光を導光板に入射させるが、このような、平行光であることの要請は、これらの光が導光板へ入射したときの光波面情報が、第1偏向手段と第2偏向手段を介して導光板から出射された後も保存される必要があることに基づく。尚、複数の平行光を生成させるためには、具体的には、例えば、平行光出射光学系における焦点距離の所(位置)に、例えば、画像形成装置の光出射部を位置させればよい。平行光出射光学系は、画素の位置情報を光学装置の光学系における角度情報に変換する機能を有する。平行光出射光学系として、凸レンズ、凹レンズ、自由曲面プリズム、ホログラムレンズを、単独、若しくは、組み合わせた、全体として正の光学的パワーを持つ光学系を例示することができる。平行光出射光学系と導光板との間には、平行光出射光学系から不所望の光が出射されて導光板に入射しないように、開口部を有する遮光部を配置してもよい。
【0052】
導光板は、導光板の軸線(X軸)と平行に延びる2つの平行面(第1面及び第2面)を有している。光が入射する導光板の面を導光板入射面、光が出射する導光板の面を導光板出射面としたとき、第1面によって導光板入射面及び導光板出射面が構成されていてもよいし、第1面によって導光板入射面が構成され、第2面によって導光板出射面が構成されていてもよい。導光板を構成する材料として、石英ガラスやBK7等の光学ガラスを含むガラスや、プラスチック材料(例えば、PMMA、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、非晶性のポリプロピレン系樹脂、AS樹脂を含むスチレン系樹脂)を挙げることができる。導光板の形状は、平板に限定するものではなく、湾曲した形状を有していてもよい。
【0053】
本開示の表示装置等において、フレームは、観察者の正面に配置されるフロント部と、フロント部の両端に蝶番を介して回動自在に取り付けられた2つのテンプル部とから成る構成とすることができる。尚、各テンプル部の先端部にはモダン部が取り付けられている。画像表示装置はフレームに取り付けられているが、具体的には、例えば、画像形成装置をテンプル部に取り付ければよい。また、フロント部と2つのテンプル部とが一体となった構成とすることもできる。即ち、本開示の表示装置等の全体を眺めたとき、フレームは、概ね通常の眼鏡と略同じ構造を有する。パッド部を含むフレームを構成する材料は、金属や合金、プラスチック、これらの組合せといった、通常の眼鏡を構成する材料と同じ材料から構成することができる。更には、フロント部にノーズパッドが取り付けられている構成とすることができる。即ち、本開示の表示装置等の全体を眺めたとき、フレーム及びノーズパッドの組立体は、リムが無い点を除き、通常の眼鏡と略同じ構造を有する。ノーズパッドも周知の構成、構造とすることができる。
【0054】
また、本開示の表示装置等にあっては、デザイン上、あるいは、装着の容易性といった観点から、1つあるいは2つの画像形成装置からの配線(信号線や電源線等)が、テンプル部、及び、モダン部の内部を介して、モダン部の先端部から外部に延び、制御装置(制御回路あるいは制御手段)に接続されている形態とすることが望ましい。更には、各画像形成装置はヘッドホン部を備えており、各画像形成装置からのヘッドホン部用配線が、テンプル部、及び、モダン部の内部を介して、モダン部の先端部からヘッドホン部へと延びている形態とすることもできる。ヘッドホン部として、例えば、インナーイヤー型のヘッドホン部、カナル型のヘッドホン部を挙げることができる。ヘッドホン部用配線は、より具体的には、モダン部の先端部から、耳介(耳殻)の後ろ側を回り込むようにしてヘッドホン部へと延びている形態とすることが好ましい。また、フロント部の中央部分に撮像装置が取り付けられている形態とすることもできる。撮像装置は、具体的には、例えば、CCDあるいはCMOSセンサーから成る固体撮像素子とレンズから構成されている。撮像装置からの配線は、例えば、フロント部を介して、一方の画像表示装置(あるいは画像形成装置)に接続すればよく、更には、画像表示装置(あるいは画像形成装置)から延びる配線に含ませればよい。
【0055】
以上に説明した種々の好ましい形態、構成を含む本開示の表示装置等の更なる変形例を、以下、説明する。
【0056】
ところで、表示装置が、フレームに取り付けられた右眼用及び左眼用の2つの画像表示装置を備えている場合、観察者が外界の像と、画像表示装置において表示された字幕等の画像とを重畳して見るとき、外界の像(実像)に対する輻輳角(水平面における主光線交差角。以下においても同じ)と画像(画像表示装置において表示された虚像)に対する輻輳角との間に大きな差異があると、観察者に疲労が生じる。即ち、舞台やスクリーンといった観察対象物に対する観察者の観察位置に依存した輻輳角を調整することが必要とされる。
【0057】
また、人間の目の視細胞には、錐体細胞と桿体細胞の2種類があり、解像度良く情報を取り入れることが可能な錐体細胞は中心窩に高密度に分布し、この位置で視力は最良となり、一方、桿体細胞が分布する網膜周辺の視力は中心視力に比べて低いことが知られている。そのため、注視している部分の視力は高いが、その周辺の視力は低くなる。ここで、外界の像に字幕等の画像を重畳する際、注視する外界の像と画像の表示位置が大きく離れていると、画像を視認し難くなり、また、逆に、画像に注視すると、外界の像を視認し難くなる。例えば、演劇において台詞を発する出演者の位置とその台詞を表示する字幕の表示位置とが大きく離れて重畳されると、このような問題が発生してしまう。
【0058】
外界の像の色と字幕等の画像の表示色とが似ている場合、あるいは又、外界の像が複雑あるいは細かい場合(云い換えれば、外界の像の空間周波数が高い場合)、画像を視認し難くなるといった問題が生じる。このような問題を解決する手段が、例えば、特許第3744984号から周知である。ところで、演劇における演者は、常時、台詞を述べている訳ではないし、映画にあっても、出演者は、常時、台詞を述べている訳ではない。然るに、この特許公報に開示された手段を字幕表示に適用したとすれば、字幕を、常時、情報表示装置に表示することになり、情報表示装置における電力の浪費といった問題が生じる。
【0059】
それ故、観察対象物に対する観察者の観察位置に依存した輻輳角の最適化を図り得ためには、フレームに取り付けられた右眼用及び左眼用の2つの画像表示装置を備えた表示装置において、少なくとも一方の画像表示装置を構成する画像形成装置への画像信号を制御することで、観察者の観察位置に依存して輻輳角を調整すればよい。尚、このような表示装置を、便宜上、『本開示における第1Aの表示装置』と呼ぶ。
【0060】
本開示における第1Aの表示装置にあっては、あるいは又、後述する本開示における第2Aの表示装置〜第2Dの表示装置にあっては、観察者の観察位置に依存して輻輳角の調整を行うが、即ち、表示装置から観察対象物までの距離に対応した輻輳角の調整を行うが、これによって、観察対象物と観察者(観客)との間の距離と、画像表示装置によって表示される画像の虚像距離とを等しくすることができ、あるいは又、出来るだけ等しくすることができる。それ故、観察対象物を眺める観察者(観客)が、左程、焦点を変更、変化させること無く、自然に画像表示装置によって表示される画像を眺める(観察する)ことができ、観察者に疲労が生じ難い。云い換えれば、このような状態が達成される限り、観察対象物と観察者(観客)との間の距離と、画像表示装置によって表示される画像の虚像距離とは等しいと云える。
【0061】
また、観察対象物に対する観察者の観察位置に依存した表示装置における表示位置の最適化を図るためには、フレームに取り付けられた右眼用及び左眼用の2つの画像表示装置を備えた表示装置において、少なくとも一方の画像表示装置を構成する画像形成装置への画像信号を制御することで、該少なくとも一方の画像表示装置を構成する光学装置において表示される画像の位置を観察者の観察位置に依存して調整する。尚、このような表示装置を、便宜上、『本開示における第1Bの表示装置』と呼ぶ。
【0062】
本開示における第1Bの表示装置にあっては、光学装置において表示される画像の位置を観察者の観察位置に依存して調整するので、観察者が外界の像に画像を重畳して見るとき、注視する外界の像と画像の表示位置が大きく離れることが無くなり、画像を容易に視認することが可能となる。
【0063】
また、エネルギーの浪費を抑制し得る表示装置のためには、画像形成装置へ画像信号が入力されてから所定の時間が経過した後、画像形成装置における画像形成を停止する。尚、このような表示装置を、便宜上、『本開示における第1Cの表示装置』と呼ぶ。
【0064】
本開示における第1Cの表示装置にあっては、画像形成装置へ画像信号が入力されてから所定の時間が経過した後、画像形成装置における画像形成を停止する。即ち、所定の時間経過後に表示装置における省電力モード、あるいは、スタンバイ及び休止モードへ移行するので、表示装置における電力の浪費といった問題が生じることがない。
【0065】
あるいは又、観察対象物に対する観察者の観察位置に依存した輻輳角の最適化を図り得ためには、フレームに取り付けられた右眼用及び左眼用の2つの画像表示装置を備えた表示装置において、各画像表示装置は、画像形成装置から出射された光を平行光とする光学系(平行光出射光学系)を更に備え、
少なくとも一方の画像表示装置(即ち、右眼用の画像表示装置、あるいは、左眼用の画像表示装置、あるいは、右眼用及び左眼用の2つの画像表示装置。以下においても同様)は、画像形成装置の光軸と光学系の光軸とを水平方向に相対的に移動させる移動装置を更に備えており、観察者の観察位置に依存して、移動装置によって画像形成装置の光軸と光学系の光軸とを水平方向に相対的に移動させることで、輻輳角を調整する。尚、このような表示装置を、便宜上、『本開示における第2Aの表示装置』と呼ぶ。
【0066】
あるいは又、観察対象物に対する観察者の観察位置に依存した輻輳角の最適化を図り得ためには、フレームに取り付けられた右眼用及び左眼用の2つの画像表示装置を備えた表示装置において、各画像表示装置は、画像形成装置から出射された光を平行光とする光学系(平行光出射光学系)を更に備え、少なくとも一方の画像表示装置は、画像形成装置及び光学系を回動させる回動装置を更に備えており、観察者の観察位置に依存して、回動装置によって画像形成装置及び光学系を回動させることで、光学系から出射され、光学装置に入射する平行光の光学装置に対する入射角を変更し、以て、輻輳角を調整する。尚、このような表示装置を、便宜上、『本開示における第2Bの表示装置』と呼ぶ。
【0067】
あるいは又、観察対象物に対する観察者の観察位置に依存した輻輳角の最適化を図り得ためには、フレームに取り付けられた右眼用及び左眼用の2つの画像表示装置を備えた表示装置において、少なくとも一方の画像表示装置を構成する光学系は液体レンズを備えており、観察者の観察位置に依存して、液体レンズの作動によって輻輳角を調整する。尚、このような表示装置を、便宜上、『本開示における第2Cの表示装置』と呼ぶ。
【0068】
あるいは又、観察対象物に対する観察者の観察位置に依存した輻輳角の最適化を図り得ためには、フレームに取り付けられた右眼用及び左眼用の2つの画像表示装置を備えた表示装置において、少なくとも一方の画像表示装置を構成する光学系は液体プリズムを備えており、観察者の観察位置に依存して、液体プリズムの作動によって輻輳角を調整する。尚、このような表示装置を、便宜上、『本開示における第2Dの表示装置』と呼ぶ。
【0069】
本開示における第1Aの表示装置あるいは第1Bの表示装置にあっては、少なくとも一方の画像表示装置を構成する画像形成装置への画像信号を制御することで、該少なくとも一方の画像表示装置を構成する光学装置において表示される画像の左右への移動、上下への移動、及び、回転移動の任意の組合せを達成する形態とすることができる。画像のこれらの移動にあっては、例えば、光学装置に非表示領域を確保し、その部分を画像の移動用に割り当てればよい。
【0070】
また、本開示における第2Aの表示装置〜第2Dの表示装置にあっては、少なくとも一方の画像表示装置を構成する画像形成装置への画像信号を制御することで、更に、輻輳角を調整する形態とすることができる。ここで、少なくとも一方の画像表示装置を構成する画像形成装置への画像信号を制御することで、少なくとも一方の画像表示装置を構成する光学装置において表示される画像の左右への移動、上下への移動、及び、回転移動の任意の組合せを達成する形態とすることができる。画像のこれらの移動にあっては、例えば、光学装置に非表示領域を確保し、その部分を画像の移動用に割り当てればよい。このように、少なくとも一方の画像表示装置を構成する光学装置において表示される画像の位置を制御し、以て、2つの画像表示装置の相互の光学的な位置を調整する場合、具体的には、左眼用画像表示装置及び右眼用画像表示装置によって表示される画像が、所望の虚像距離あるいは虚像位置で一致するように、少なくとも一方の画像表示装置を構成する光学装置において表示される画像の位置を制御すればよい。より具体的には、観察者が表示装置を装着し、左眼用画像表示装置及び右眼用画像表示装置によって表示される画像が、所望の虚像距離あるいは虚像位置で一致するように、元々の画像信号に表示位置補正信号を加えればよい。そして、係る表示位置補正信号を表示装置(具体的には、表示装置に備えられた制御装置)に記憶させればよい。このような構成を採用することで、光学装置において表示される画像の位置を観察者の観察位置に依存して調整することが可能となり、観察者が外界の像に画像を重畳して見るとき、注視する外界の像と画像の表示位置が大きく離れることが無くなり、より一層容易に画像を視認することが可能となる。
【0071】
そして、上記の好ましい形態を含む本開示における第1Aの表示装置あるいは第1Bの表示装置にあっては、画像形成装置への画像信号に加え、観察者の観察位置に関する情報(以下、『観察者の観察位置情報』と呼ぶ)が、外部から表示装置に送出される形態とすることができるし、あるいは又、観察者の観察位置を測定する位置測定手段を更に備えている形態とすることもできる。
【0072】
また、以上に説明した好ましい形態を含む本開示における第2Aの表示装置〜第2Dの表示装置にあっては、画像形成装置への画像信号に加え、観察者の観察位置情報が、予め表示装置に与えられている形態とすることができる。あるいは又、観察者の観察位置情報が、外部から表示装置に送出される形態とすることができるし、あるいは、観察者の観察位置を測定する位置測定手段を更に備えている形態とすることもできる。
【0073】
ここで、観察者の観察位置情報が外部から表示装置に送出される形態にあっては、無線によって観察者の観察位置情報を表示装置(具体的には、表示装置に備えられた制御装置)に送出すればよい。観察者の観察位置を測定する位置測定手段を更に備えている形態においては、位置測定手段として、具体的には、オートフォーカス機能付きカメラや撮像装置(例えば、観察対象物に赤外線・超音波などを照射し、その反射波が戻るまでの時間や照射角度により距離を検出するアクティブ方式の距離測定装置や、パッシブ方式の距離測定装置を有するカメラや撮像装置)、オートフォーカス機能付きカメラ用の距離測定装置(アクティブ方式の距離測定装置)を挙げることができる。あるいは又、表示装置にボタンやスイッチを設け、手動にて表示装置から観察対象物までの距離を設定してもよい。あるいは又、予め、観察者の観察位置情報を表示装置に設定しておく形態を採用することもできる。あるいは又、パーソナルコンピュータから観察者の観察位置情報を表示装置に与えてもよいし、例えば、チケットに印刷されたバーコード形式の座席情報や劇場情報(ホール情報やシアター情報等。以下においても同じ)、携帯電話に表示されたチケット情報に含まれる座席情報や劇場情報を適切な手段・方法で読み取り、係る座席情報や劇場情報に基づく観察者の観察位置情報を適切な手段によって表示装置に与えてもよい。
【0074】
本開示における第1Cの表示装置において、画像形成装置における画像形成を停止するためには、即ち、表示装置における省電力モード、あるいは、スタンバイ及び休止モード(以下、これらのモードを総称して、『省電力モード等』と呼ぶ場合がある)への移行のためには、例えば、画像信号に、画像表示装置における画像表示時間を表す信号や、画像形成装置における画像形成の停止を指示する信号を加重すればよい。所定の時間として、例えば、画像形成装置に表示された字幕を通常の人が読む時間、あるいは、予め台詞の長さに応じて決められた字幕表示時間を挙げることができる。
【0075】
以上に説明した好ましい形態を含む本開示における第2Aの表示装置〜第2Dの表示装置にあっても、更には、画像形成装置へ画像信号が入力されてから所定の時間が経過した後、画像形成装置における画像形成を停止する形態とすることができる。そして、これによって、所定の時間経過後に表示装置における省電力モード、あるいは、スタンバイ及び休止モードへ移行することができるので、表示装置における電力、エネルギーの浪費といった問題が生じることがない。
【0076】
更には、上記の各種の好ましい形態を含む本開示における第1Aの表示装置〜第1Cの表示装置、第2Aの表示装置〜第2Dの表示装置にあっては、画像形成装置への画像信号に加え、光学装置において表示すべき画像の輝度信号が、外部から表示装置に送出される形態とすることができる。このような形態にあっては、無線によって輝度信号を外部から表示装置に送出すればよい。
【0077】
以上に説明した好ましい各種の形態を含む本開示における第1Aの表示装置〜第1Cの表示装置、本開示における第2Aの表示装置〜第2Dの表示装置において、画像信号によって光学装置において表示される画像は文字から構成されている。ここで、画像としての文字を表示するための画像信号(『文字データ』と呼ぶ場合がある)は、デジタル化されたデータであり、作業者によって、あるいは又、コンピュータ等による処理に基づき、予め作成しておけばよい。文字データのフォーマットは、使用する表示装置やシステムに依存して、適宜、選択すればよく、例えば、文字列から成るテキストデータとすることもできるし、文字列を画像とした画像データとすることもできる。
【0078】
本開示における第1Aの表示装置〜第1Cの表示装置、本開示における第2Aの表示装置〜第2Dの表示装置にあっては、一定の位置に表示されている画像(例えば、字幕や虚像)を見続けることにより発生することによる観察者の瞳疲労の軽減のため、2つの光学装置によって形成される画像の位置(画像位置)、あるいは、2つの光学装置によって形成される画像(例えば、字幕や虚像)の2つの光学装置からの距離(画像距離)を、経時的に変化させる構成とすることができる。ここで、経時的に変化させるとは、例えば、5分乃至10分に1回、画像の水平方向の位置を、例えば、画像形成装置における+2画素分あるいは−1画素分、例えば、1分間乃至3分間に亙り、変化させた後、元に戻すことを意味する。
【0079】
本開示における第1Aの表示装置あるいは第1Bの表示装置にあっては、観察者が表示装置を装着し、左眼用画像表示装置及び右眼用画像表示装置によって表示される画像が、所望の虚像距離あるいは虚像位置で一致するように、元々の画像信号に表示位置補正信号を加えればよい。そして、係る表示位置補正信号を表示装置(具体的には、表示装置に備えられた制御装置)に記憶させてもよいし、元々の画像信号に表示位置補正信号を加重した画像信号を表示装置に送出してもよい。そして、上記の各種の好ましい形態を含む本開示における第1Aの表示装置〜第1Cの表示装置、第2Aの表示装置〜第2Dの表示装置において、画像信号は、無線によって表示装置に送られてくる形態とすることができる。ここで、このような形態において、画像信号は、例えば、制御装置にて受け取られ、画像表示のための処理が制御装置においてなされる。あるいは又、画像信号は、表示装置(制御装置)に記憶されている形態とすることもでき、この場合には、表示位置補正信号を表示装置に送出すればよい。そして、少なくとも一方の画像表示装置を構成する光学装置において表示される画像の位置を制御し、以て、2つの画像表示装置の相互の光学的な位置を調整するが、具体的には、左眼用画像表示装置及び右眼用画像表示装置によって表示される画像が、所望の虚像距離あるいは虚像位置で一致するように、少なくとも一方の画像表示装置を構成する光学装置において表示される画像の位置を制御すればよい。制御装置(制御回路、制御手段)は、周知の回路から構成することができる。
【0080】
以上に説明した好ましい各種の形態、構成を含む本開示における第1Aの表示装置〜第1Cの表示装置、本開示における第2Aの表示装置〜第2Dの表示装置においては、
表示装置に備えられた制御装置は記憶手段を有し、この記憶手段には、画像を表示するための複数の画像信号(例えば、文字データ)から構成されたデータ群が記憶されており、
データ群を構成する各画像信号にはデータ識別符号が付されており、
外部から指定識別符号及び表示時間情報が所定の時間間隔で制御装置に送られ、
制御装置において、送られてきた指定識別符号とデータ識別符号が一致する画像信号を記憶手段から読み出し、送られてきた表示時間情報に相当する時間の間、該画像信号に基づく画像を表示装置において表示する構成とすることもできる。尚、「表示時間情報に相当する時間」を、本開示における第1Cの表示装置における『所定の時間』とすればよい。係る構成を、便宜上、『本開示における第3Aの表示装置』と呼ぶ場合がある。
【0081】
このような本開示における第3Aの表示装置にあっては、外部から指定識別符号及び表示時間情報が所定の時間間隔で制御装置に送られ、制御装置において、送られてきた指定識別符号とデータ識別符号が一致する画像信号を記憶手段から読み出し、送られてきた表示時間情報に相当する時間の間、この画像信号に基づく画像を画像形成装置において表示する。従って、外部から送られてきた指定識別符号及び/又は表示時間情報の受信が制御装置において何らかの理由で失敗した場合でも、再度、あるいは、繰り返し、指定識別符号及び表示時間情報の受信を試行することができるので、指定識別符号及び表示時間情報を確実に受信することができる。その結果、例えば、複数の表示装置において指定識別符号及び表示時間情報を受信する場合でも、複数の表示装置において、確実に、同時に同じ画像の表示が可能となるし、表示装置において画像が表示できないという問題の発生を確実に回避することができる。
【0082】
あるいは又、以上に説明した好ましい各種の形態、構成を含む本開示における第1Aの表示装置〜第1Cの表示装置、本開示における第2Aの表示装置〜第2Dの表示装置においては、
表示装置に備えられた制御装置は記憶手段を有し、この記憶手段には、画像を表示するための複数の画像信号(例えば、文字データ)から構成されたデータ群が記憶されており、
データ群を構成する各画像信号にはデータ識別符号が付されており、
各画像信号は、表示サイズが異なる複数の異サイズ・表示データから構成されており、
外部から指定識別符号が制御装置に送られ、
制御装置において、送られてきた指定識別符号とデータ識別符号が一致する画像信号の内、観察対象物と表示装置との間の距離に依存して、複数の異サイズ・表示データから1つの異サイズ・表示データを記憶手段から読み出し、該1つの異サイズ・表示データに基づく画像を表示装置において表示する構成とすることもできる。尚、係る構成を、便宜上、『本開示における第3Bの表示装置』と呼ぶ場合がある。
【0083】
このような本開示における第3Bの表示装置にあっては、制御装置において、送られてきた指定識別符号とデータ識別符号が一致する画像信号の内、観察対象物と表示装置との間の距離に依存して、複数の異サイズ・表示データから1つの異サイズ・表示データを記憶手段から読み出し、この1つの異サイズ・表示データに基づく画像を画像形成装置において表示するので、観察対象物の目視される大きさと画像の大きさとの間に不釣り合いが生じ難い。
【0084】
あるいは又、以上に説明した好ましい各種の形態、構成を含む本開示における第1Aの表示装置〜第1Cの表示装置、本開示における第2Aの表示装置〜第2Dの表示装置においては、
表示装置に備えられた制御装置は記憶手段を有し、この記憶手段には、画像を表示するための複数の画像信号(例えば、文字データ)から構成されたデータ群が記憶されており、
データ群を構成する各画像信号にはデータ識別符号が付されており、
各画像信号は、表示言語が異なる複数の異言語・表示データから構成されており、
外部から指定識別符号が制御装置に送られ、
制御装置において、送られてきた指定識別符号とデータ識別符号が一致する画像信号の内、複数の異言語・表示データから1つの異言語・表示データを記憶手段から読み出し、該1つの異言語・表示データに基づく画像を表示装置において表示する構成とすることもできる。尚、係る構成を、便宜上、『本開示における第3Cの表示装置』と呼ぶ場合がある。どのような言語を表示言語として選択するかの方法として、例えば、制御装置にボタンやスイッチを設け、手動にて表示言語として選択する方法を挙げることができる。
【0085】
このような本開示における第3Cの表示装置にあっては、制御装置において、送られてきた指定識別符号とデータ識別符号が一致する画像信号の内、複数の異言語・表示データから1つの異言語・表示データを記憶手段から読み出し、この1つの異言語・表示データに基づく画像を画像形成装置において表示するので、観察者(観客)の使用する言語での画像表示を容易に行うことができる。
【0086】
あるいは又、以上に説明した好ましい各種の形態、構成を含む本開示における第1Aの表示装置〜第1Cの表示装置、本開示における第2Aの表示装置〜第2Dの表示装置においては、
表示装置に備えられた制御装置は記憶手段を有し、この記憶手段には、画像を表示するための複数の画像信号(例えば、文字データ)から構成されたデータ群が記憶されており、
データ群を構成する各画像信号にはデータ識別符号が付されており、
外部から指定識別符号が制御装置に送られ、
制御装置において、送られてきた指定識別符号とデータ識別符号が一致する画像信号を記憶手段から読み出し、観察対象物と表示装置との間の距離に依存してデータ処理を行うことで、例えば輻輳角を制御した状態で該画像信号(データ処理が施された画像信号)に基づく画像を表示装置において表示する構成とすることもできる。尚、係る構成を、便宜上、『本開示における第3Dの表示装置』と呼ぶ場合がある。ここで、表示装置から観察対象物までの距離に基づき、少なくとも一方の画像表示装置を構成する画像形成装置への画像信号に対する画像処理を行えばよい。
【0087】
このような本開示における第3Dの表示装置にあっては、表示装置から観察対象物までの距離に対応した輻輳角の調整を行うが、これによって、観察対象物と観察者(観客)との間の距離と、画像表示装置によって表示される画像の虚像距離とを等しくすることができ、あるいは又、出来るだけ等しくすることができ、観察対象物を眺める観察者(観客)が、左程、焦点を変更、変化させること無く、自然に画像表示装置によって表示される画像を眺める(観察する)ことができる。
【0088】
以上に説明した好ましい各種の形態、構成を含む本開示における第2Aの表示装置〜第2Dの表示装置においては、観察者の観察位置に依存して、また、観察対象物と表示装置との間の距離に依存して、光学装置において表示される表示画面(画像表示領域)の大きさ、表示画面(画像表示領域)の画角、表示画面の解像度を変更してもよい。尚、係る構成を、便宜上、『本開示における第2Eの表示装置』と呼ぶ場合がある。
【0089】
尚、これらの本開示における第2Aの表示装置〜第2Eの表示装置を、適宜、組み合わせることもできる。また、本開示における第3Aの表示装置〜第3Dの表示装置を、適宜、組み合わせることもできる。これらの本開示における第2Aの表示装置〜第2Eの表示装置、本開示における第3Aの表示装置〜第3Dの表示装置において、制御装置それ自体は周知の回路構成とすればよいし、記憶手段それ自体も周知の記憶手段、例えば、メモリカードとすればよい。また、送信装置から指定識別符号及び表示時間情報が無線で送られてくる構成とすることができ、更には、送信装置は表示装置を備えており、表示装置には、指定識別符号、データ群、及び、各画像信号又は各表示データの全表示時間が表示される構成とすることができる。但し、これに限定するものではなく、有線とすることもできる。指定識別符号を制御装置に送るための送信装置それ自体は周知の送信装置とすればよいし、送信装置に備えられた表示装置も周知の表示装置とすればよい。
【0090】
観察者の観察位置に依存して、本開示における第2Aの表示装置においては移動装置を作動させ、本開示における第2Bの表示装置においては回動装置を作動させ、本開示における第2Cの表示装置においては液体レンズを作動させ、本開示における第2Dの表示装置においては液体プリズムを作動させるが、これらの作動は、観察者の観察位置情報に基づき、制御装置からの制御信号によって制御される。
【0091】
本開示における第2Aの表示装置においては、移動装置によって画像形成装置の光軸と光学系の光軸とを水平方向(X軸方向)に相対的に移動させるが、具体的には、一方の画像表示装置における画像形成装置の光軸と光学系の光軸との位置関係を固定したまま、他方の画像表示装置における画像形成装置の光軸と光学系の光軸の位置を水平方向(X軸方向)に相対的に移動させる形態を挙げることができる。あるいは又、両方の画像表示装置のそれぞれにおける画像形成装置の光軸と光学系の光軸の位置を水平方向(X軸方向)に相対的に移動させる形態を挙げることができる。このような形態にあっては、光学系から出射され、光学装置に入射する平行光の光学装置に対する入射角(後述する中心入射光線とYZ平面の成す角度であり、以下、『YZ平面・入射角』と呼ぶ)に変化が生じる。そして、このような形態にあっては、画像形成装置及び光学系のいずれか一方を、例えばラックギア部から構成された移動用ガイド部に載置し、画像形成装置及び光学系のいずれか一方を、モータ及びピニオンギアによって移動用ガイド部上を移動させる方式を採用すればよいし、あるいは、画像形成装置及び光学系のいずれか一方を移動用ガイド部に載置し、画像形成装置及び光学系のいずれか一方を、圧電素子や超音波モータによって移動用ガイド部上を移動させる方式を採用すればよい。
【0092】
本開示における第2Bの表示装置においては、回動装置によって画像形成装置及び光学系を回動させるが、具体的には、2つの画像表示装置のそれぞれにおける画像形成装置の光軸と光学系の光軸との位置関係を固定したまま、少なくとも一方の画像表示装置を、Z軸を回動軸として、圧電素子やモータ、超音波モータを作動させることで、回動させればよい。このような形態にあっても、光学系から出射され、光学装置に入射する平行光の光学装置に対するYZ平面・入射角に変化が生じる。
【0093】
本開示における第2Cの表示装置においては液体レンズを作動させるが、光学系を構成する係る液体レンズは、エレクトロウェッティング現象を利用した周知の液体レンズから構成すればよい。液体レンズの作動によって、光学系の光軸とY軸との関係を一定に保持したまま、光学系の光軸を水平方向(X軸方向)に移動させることができるし、あるいは又、YZ平面に対する光学系の光軸の角度を変更することができる。このような形態にあっても、光学系から出射され、光学装置に入射する平行光の光学装置に対するYZ平面・入射角に変化が生じる。
【0094】
本開示における第2Dの表示装置においては液体プリズムを作動させるが、光学系の一部を構成する係る液体プリズムは、エレクトロウェッティング現象を利用した周知の液体プリズムから構成すればよい。液体プリズムの作動によって、YZ平面に対する光学系の光軸の角度を変更することができる。このような形態にあっても、光学系から出射され、光学装置に入射する平行光の光学装置に対するYZ平面・入射角に変化が生じる。
【0095】
ここで、データ群の数は本質的に任意であるし、データ群を構成する画像信号(例えば、文字データ)の数、画像信号(文字データ)を構成する表示データの数も本質的に任意である。画像信号あるいは表示データのデータ構造として、例えば、文字列から成るテキストデータとすることもできるし、文字列を画像とした画像データとすることもできる。表示サイズが異なる表示データとして、フォントサイズの異なる文字列から成るテキストデータとすることもできるし、フォントサイズの異なる文字列を画像とした画像データとすることもできる。表示データにおける表示言語は、本質的には任意である。画像信号あるいは表示データに所定の信号処理を施すことで、画像信号を得ることができる。
【0096】
指定識別符号及びデータ識別符号は、画像信号を識別できる符号であれば、如何なる符号とすることもでき、例えば、数字やアルファベット、数字とアルファベットの組合せを例示することができる。
【0097】
外部から指定識別符号及び表示時間情報が所定の時間間隔で制御装置に送られるが、ここで、全表示時間をT
total、表示時間情報をT
Inf、所定の時間間隔をT
intとすると、
T
Inf(m)=T
total−(m−1)×T
int
で表すことができる。尚、『m』は正の整数であり、外部から指定識別符号及び表示時間情報が制御装置に送られてくる回数を表す。例えば、
T
total=10.0秒
T
int =0.1秒
とすると、第1回目(m=1)に外部から指定識別符号及び表示時間情報が制御装置に送られてきたときの表示時間情報T
Inf(m)は、
T
Inf(1)=10.0秒
である。また、第2回目(m=2)、第11回目(m=11)に外部から指定識別符号及び表示時間情報が制御装置に送られてきたときの表示時間情報T
Inf(m)は、
T
Inf(2) =9.9秒
T
Inf(11)=9.0秒
である。そして、これらの表示時間情報T
Inf(m)に相当する時間の間、画像信号あるいは1つの表示データに基づく画像を画像形成装置において表示する。
【0098】
ここで、一旦、画像形成装置において画像の表示が開始された場合には、それ以降に外部から同じ指定識別符号及び異なる表示時間情報が制御装置に送られてきても、制御装置はこれらの指定識別符号及び表示時間情報を無視して、画像を表示し続ければよい。このような動作にあっては、制御装置において、一種のフラグ(受信完了フラグ)を立てればよい。一方、第1回目から第(m’−1)回目まで、外部からの指定識別符号及び/又は表示時間情報の受信に制御装置が何らかの理由で失敗し、第m’回目に、初めて、外部からの指定識別符号及び表示時間情報の受信に制御装置が成功した場合、
T
Inf(m’)=T
total−(m’−1)×T
int
の時間の間、画像信号あるいは1つの表示データに基づく画像を画像形成装置において表示すればよい。
【0099】
第1回目(m=1)の指定識別符号及び表示時間情報の送出の指示は、例えば、作業者が行ってもよいし、コンピュータ等の制御に基づき行ってもよいし、観察対象物の動きや、観察対象物である演劇者の声の変化、観察対象物の占める環境の変化(例えば、照明や音響の変化)等に基づき行ってもよい。
【0100】
画像形成装置の中心から出射され、光学系の画像形成装置側節点を通過した光線を『中心光線』と呼び、中心光線の内、光学装置に垂直に入射するものを『中心入射光線』と呼ぶ。そして、中心入射光線が光学装置に入射する点を光学装置中心点とし、光学装置中心点を通過し、光学装置の軸線方向と平行な軸線をX軸、光学装置中心点を通過し、光学装置の法線と一致する軸線をY軸とする。本開示の表示装置等における水平方向とは、X軸と平行な方向であり、以下、『X軸方向』と呼ぶ場合もある。ここで、光学系は、画像形成装置と光学装置との間に配置され、画像形成装置から出射された光を平行光とする。そして、光学系にて平行光とされた光束が、光学装置に入射され、導光され、出射される。また、第1偏向手段の中心点を、『光学装置中心点』とする。
【0101】
第1Aの表示装置〜第1Cの表示装置、本開示における第2Aの表示装置〜第2Dの表示装置にあっては、画像表示装置において、限定するものではないが、中心入射光線は、XY平面と0度以外の角度(θ)で交わる構成とすることができ、これによって、画像表示装置を眼鏡型のフレームの取付部に取り付けるときの画像表示装置の取付け角度に対する制限が少なくなり、高いデザイン自由度を得ることができる。そして、この場合、中心入射光線はYZ平面に含まれる形態とすることが、画像表示装置の取り扱いや設定、取付けの容易さといった観点から、好ましい。また、光学系の光軸は、YZ平面に含まれ、且つ、XY平面と0度以外の角度で交わる構成とすることができ、あるいは又、光学系の光軸は、YZ平面と平行であり、且つ、XY平面と平行であり、且つ、画像形成装置の中心から外れた位置を通過する構成とすることができる。また、XY平面が水平面と一致すると仮定したとき、中心入射光線がXY平面と交わる角度θは仰角である構成とすることができる。即ち、XY平面の下側から中心入射光線がXY平面に向い、XY平面と衝突する構成とすることができる。そして、この場合、XY平面は垂直面と0度以外の角度で交わることが好ましく、更には、XY平面は垂直面と角度θ’で交わることが好ましい。尚、θ’の最大値として、限定するものではないが、5度を挙げることができる。ここで、水平面とは、観察者が、水平の方向に位置する対象物(例えば、水平方向、無限遠方の対象物、地平線や水平線)を眺めたときの視線(『観察者の水平方向視線』)が含まれ、且つ、水平に位置する観察者の2つの瞳が含まれる平面である。また、垂直面は、この水平面に対して垂直な平面である。あるいは又、観察者が、水平の方向に位置する対象物(例えば、水平方向、無限遠方の対象物、地平線や水平線)を眺めたとき、光学装置から出射され、観察者の瞳に入射する中心入射光線は俯角をなす形態とすることができる。水平面に対する係る俯角として、例えば、5度乃至45度を例示することができる。
【0102】
以上に説明した種々の変形例を含む本開示の表示装置等は、例えば、動画や静止画の表示;映画等の字幕の表示;映像に同期した映像に関する説明文やクローズド・キャプションの表示;芝居や歌舞伎、能、狂言、オペラ、音楽会、バレー、各種演劇、遊園地(アミューズメントパーク)、美術館、観光地、行楽地、観光案内等における観察対象物に関する各種説明、その内容や進行状況、背景等を説明するための説明文等の表示に用いることができるし、また、文字表示装置としても機能し、各種装置等の観察対象物の運転、操作、保守、分解時等における各種説明や、記号、符号、印、標章、図案等の表示;人物や物品等の観察対象物に関する各種説明や、記号、符号、印、標章、図案等の表示;クローズド・キャプションの表示に用いることができる。芝居や歌舞伎、能、狂言、オペラ、音楽会、バレー、各種演劇、遊園地(アミューズメントパーク)、美術館、観光地、行楽地、観光案内等にあっては、適切なタイミングで観察対象物に関連した画像としての文字を表示装置において表示すればよい。具体的には、例えば、映画等の進行状況に応じて、あるいは又、芝居等の進行状況に応じて、所定のスケジュール、時間配分に基づき、作業者の操作によって、あるいは、コンピュータ等の制御下、画像信号が表示装置に送出され、あるいは又、指定識別符号が制御装置に送出され、画像が表示装置にて表示される。また、各種装置、人物や物品等の観察対象物に関する各種説明の表示を行う場合、表示装置に撮像装置を配設し、撮像装置によって各種装置、人物や物品等の観察対象物を撮影し、表示装置において撮影内容を解析することで、予め作成しておいた各種装置、人物や物品等の観察対象物に関する各種説明の表示を表示装置にて行うことができる。あるいは又、本開示の表示装置等は、立体視ディスプレイ装置として用いることもできる。この場合、必要に応じて、光学装置に偏光板や偏光フィルムを着脱自在に取り付け、あるいは、光学装置に偏光板や偏光フィルムを貼り合わせればよい。
【0103】
画像形成装置への画像信号には、上述したとおり、画像信号(例えば、文字データ)だけでなく、例えば、表示すべき画像に関する輝度データ(輝度情報)、又は、色度データ(色度情報)、又は、輝度データ及び色度データを含めることができる。輝度データは、光学装置を通して眺めた観察対象物を含む所定の領域の輝度に対応した輝度データとすることができるし、色度データは、光学装置を通して眺めた観察対象物を含む所定の領域の色度に対応した色度データとすることができる。このように、画像に関する輝度データを含めることで、表示される画像の輝度(明るさ)の制御を行うことができるし、画像に関する色度データを含めることで、表示される画像の色度(色)の制御を行うことができるし、画像に関する輝度データ及び色度データを含めることで、表示される画像の輝度(明るさ)及び色度(色)の制御を行うことができる。画像表示装置を通して眺めた観察対象物を含む所定の領域の輝度に対応した輝度データとする場合、画像表示装置を通して眺めた観察対象物を含む所定の領域の輝度の値が高くなるほど、画像の輝度の値が高くなるように(即ち、画像がより明るく表示されるように)、輝度データの値を設定すればよい。また、画像表示装置を通して眺めた観察対象物を含む所定の領域の色度に対応した色度データとする場合、画像表示装置を通して眺めた観察対象物を含む所定の領域の色度と、表示すべき画像の色度とが、おおよそ補色関係となるように色度データの値を設定すればよい。補色とは、色相環(color circle)で正反対に位置する関係の色の組み合わせ指す。赤に対しての緑、黄に対しての紫、青に対しての橙など、相補的な色のことでもある。或る色に別の色を適宜の割合で混合して、光の場合は白、物体の場合は黒というように、彩度低下を引き起こす色についても云うが、並列した際の視覚的効果の相補性と混合した際の相補性は異なる。余色、対照色、反対色ともいう。但し、反対色は補色が相対する色を直接に指示するのに対し、補色の指示する範囲はやや広い。補色同士の色の組み合わせは互いの色を引き立て合う相乗効果があり、これは補色調和といわれる。
【実施例1】
【0104】
実施例1は、本開示の第1の態様に係る表示装置に関する。実施例1の画像表示装置の概念図を
図1に示し、実施例1の表示装置(具体的には、頭部装着型ディスプレイ,HMD)を上方から眺めた模式図を
図2に示し、側方から眺めた模式図を
図3の(A)に示し、光学装置及び調光装置の部分を正面から眺めた模式図を
図3の(B)に示し、実施例1の表示装置における調光装置の挙動を模式的に示す調光装置の模式的な断面図を
図4の(A)及び(B)に示す。尚、
図3の(A)において、遮光部材を点線で示す。
【0105】
実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例11の表示装置は、
(イ)観察者(例えば、観客)の頭部に装着される眼鏡型のフレーム10、及び、
(ロ)フレーム10に取り付けられた画像表示装置100,200,300,400,500、
を備えている。尚、実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例11の表示装置は、具体的には、2つの画像表示装置を備えた両眼型としたが、1つ備えた片眼型としてもよい。また、画像形成装置111,211は、例えば、単色の画像を表示する。
【0106】
そして、実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例11における画像表示装置100,200,300,400,500は、
(A)画像形成装置111,211、及び、
(B)画像形成装置111,211から出射された光が入射され、導光され、出射される光学装置120,320,520、
を備えている。更には、
(C)画像形成装置111,211から出射された光を平行光とする光学系(平行光出射光学系)112,254、
を備えており、光学系112,254にて平行光とされた光束が光学装置120,320,520に入射され、導光され、出射される。
【0107】
そして、実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例11において、光学装置120,320,520の画像形成装置111,211が配された側とは反対側には、外部から入射する外光の光量を調整する調光装置700が配設されている。具体的には、一種の光シャッタである調光装置700は、接着剤707を用いて、光学装置120,320,520(具体的には、導光板121,321を保護する保護部材(保護板)126,326あるいは半透過ミラー520)に固定されている。また、調光装置700は、観察者とは反対側の光学装置120,320,520の領域に配置されている。尚、保護部材(保護板)126,326は、接着部材127,327によって導光板121,321の第2面123,323に接着されている。
【0108】
実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例8、実施例10〜実施例11における光学装置120,320は、
(a)入射された光が内部を全反射により伝播した後、出射される導光板121,321、
(b)導光板121,321に入射された光が導光板121,321の内部で全反射されるように、導光板121,321に入射された光を偏向させる第1偏向手段130,330、及び、
(c)導光板121,321の内部を全反射により伝播した光を導光板121,321から出射させるために、導光板121,321の内部を全反射により伝播した光を複数回に亙り偏向させる第2偏向手段140,340、
を備えている。そして、調光装置700の射影像内に第2偏向手段140,340が位置する。更には、調光装置700を構成する基板の一方(第1基板701)によって、第1偏向手段130,330及び第2偏向手段140,340は被覆されている。光学装置120,320は、シースルー型(半透過型)である。
【0109】
ここで、実施例1にあっては、第1偏向手段130及び第2偏向手段140は導光板121の内部に配設されている。そして、第1偏向手段130は、導光板121に入射された光を反射し、第2偏向手段140は、導光板121の内部を全反射により伝播した光を、複数回に亙り、透過、反射する。即ち、第1偏向手段130は反射鏡として機能し、第2偏向手段140は半透過鏡として機能する。より具体的には、導光板121の内部に設けられた第1偏向手段130は、アルミニウム(Al)から成り、導光板121に入射された光を反射させる光反射膜(一種のミラー)から構成されている。一方、導光板121の内部に設けられた第2偏向手段140は、誘電体積層膜が多数積層された多層積層構造体から構成されている。誘電体積層膜は、例えば、高誘電率材料としてのTiO
2膜、及び、低誘電率材料としてのSiO
2膜から構成されている。誘電体積層膜が多数積層された多層積層構造体に関しては、特表2005−521099に開示されている。図面においては6層の誘電体積層膜を図示しているが、これに限定するものではない。誘電体積層膜と誘電体積層膜との間には、導光板121を構成する材料と同じ材料から成る薄片が挟まれている。尚、第1偏向手段130においては、導光板121に入射された平行光が導光板121の内部で全反射されるように、導光板121に入射された平行光が反射(又は回折)される。一方、第2偏向手段140においては、導光板121の内部を全反射により伝播した平行光が複数回に亙り反射(又は回折)され、導光板121から平行光の状態で、観察者の瞳21に向かって出射される。
【0110】
第1偏向手段130は、導光板121の第1偏向手段130を設ける部分124を切り出すことで、導光板121に第1偏向手段130を形成すべき斜面を設け、係る斜面に光反射膜を真空蒸着した後、導光板121の切り出した部分124を第1偏向手段130に接着すればよい。また、第2偏向手段140は、導光板121を構成する材料と同じ材料(例えば、ガラス)と誘電体積層膜(例えば、真空蒸着法にて成膜することができる)とが多数積層された多層積層構造体を作製し、導光板121の第2偏向手段140を設ける部分125を切り出して斜面を形成し、係る斜面に多層積層構造体を接着し、研磨等を行って、外形を整えればよい。こうして、導光板121の内部に第1偏向手段130及び第2偏向手段140が設けられた光学装置120を得ることができる。
【0111】
ここで、実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例8、実施例10〜実施例11において、光学ガラスやプラスチック材料から成る導光板121,321は、導光板121,321の内部全反射による光伝播方向(X軸)と平行に延びる2つの平行面(第1面122,322及び第2面123,323)を有している。第1面122,322と第2面123,323とは対向している。そして、光入射面に相当する第1面122,322から平行光が入射され、内部を全反射により伝播した後、光出射面に相当する第1面122,322から出射される。但し、これに限定するものではなく、第2面123,323によって光入射面が構成され、第1面122,322によって光出射面が構成されていてもよい。
【0112】
実施例1あるいは後述する実施例7において、画像形成装置111は、第1の構成の画像形成装置であり、2次元マトリクス状に配列された複数の画素を有する。具体的には、画像形成装置111は、反射型空間光変調装置150、及び、白色光を出射する発光ダイオードから成る光源153から構成されている。各画像形成装置111全体は、筐体113(
図1では、一点鎖線で示す)内に納められており、係る筐体113には開口部(図示せず)が設けられており、開口部を介して光学系(平行光出射光学系,コリメート光学系)112から光が出射される。反射型空間光変調装置150は、ライト・バルブとしてのLCOSから成る液晶表示装置(LCD)151、及び、光源153からの光の一部を反射して液晶表示装置151へと導き、且つ、液晶表示装置151によって反射された光の一部を通過させて光学系112へと導く偏光ビームスプリッター152から構成されている。液晶表示装置151は、2次元マトリクス状に配列された複数(例えば、640×480個)の画素(液晶セル)を備えている。偏光ビームスプリッター152は、周知の構成、構造を有する。光源153から出射された無偏光の光は、偏光ビームスプリッター152に衝突する。偏光ビームスプリッター152において、P偏光成分は通過し、系外に出射される。一方、S偏光成分は、偏光ビームスプリッター152において反射され、液晶表示装置151に入射し、液晶表示装置151の内部で反射され、液晶表示装置151から出射される。ここで、液晶表示装置151から出射した光の内、「白」を表示する画素から出射した光にはP偏光成分が多く含まれ、「黒」を表示する画素から出射した光にはS偏光成分が多く含まれる。従って、液晶表示装置151から出射され、偏光ビームスプリッター152に衝突する光の内、P偏光成分は、偏光ビームスプリッター152を通過し、光学系112へと導かれる。一方、S偏光成分は、偏光ビームスプリッター152において反射され、光源153に戻される。光学系112は、例えば、凸レンズから構成され、平行光を生成させるために、光学系112における焦点距離の所(位置)に画像形成装置111(より具体的には、液晶表示装置151)が配置されている。
【0113】
フレーム10は、観察者の正面に配置されるフロント部11と、フロント部11の両端に蝶番12を介して回動自在に取り付けられた2つのテンプル部13と、各テンプル部13の先端部に取り付けられたモダン部(先セル、耳あて、イヤーパッドとも呼ばれる)14から成る。また、ノーズパッド(図示せず)が取り付けられている。即ち、フレーム10及びノーズパッドの組立体は、基本的には、通常の眼鏡と略同じ構造を有する。更には、各筐体113が、取付け部材19によって、着脱自在に、テンプル部13に取り付けられている。フレーム10は、金属又はプラスチックから作製されている。尚、各筐体113は、取付け部材19によってテンプル部13に着脱できないように取り付けられていてもよい。また、眼鏡を所有し、装着している観察者に対しては、観察者の所有する眼鏡のフレームのテンプル部に、各筐体113を取付け部材19によって着脱自在に取り付けてもよい。また、各筐体113を、テンプル部13の外側に取り付けてもよいし、テンプル部13の内側に取り付けてもよい。
【0114】
更には、一方の画像形成装置111Aから延びる配線(信号線や電源線等)15が、テンプル部13、及び、モダン部14の内部を介して、モダン部14の先端部から外部に延び、制御装置(制御回路、制御手段)18に接続されている。更には、各画像形成装置111A,111Bはヘッドホン部16を備えており、各画像形成装置111A,111Bから延びるヘッドホン部用配線17が、テンプル部13、及び、モダン部14の内部を介して、モダン部14の先端部からヘッドホン部16へと延びている。ヘッドホン部用配線17は、より具体的には、モダン部14の先端部から、耳介(耳殻)の後ろ側を回り込むようにしてヘッドホン部16へと延びている。このような構成にすることで、ヘッドホン部16やヘッドホン部用配線17が乱雑に配置されているといった印象を与えることがなく、すっきりとした表示装置とすることができる。
【0115】
実施例1における調光装置700は、光透過制御材料層705が液晶材料層から成る光シャッタから構成されている。即ち、調光装置700は、
光学装置120と対向する透明な第1基板701、及び、第1基板701と対向する透明な第2基板703、
第1基板701及び第2基板703のそれぞれに設けられた電極702,704、並びに、
第1基板701と第2基板703との間に封止された光透過制御材料層705、
から構成されている。ここで、第1基板701及び第2基板703はプラスチック材料から成る。また、第1電極702及び第2電極704は、インジウム−スズ複合酸化物(ITO)から構成された透明電極から成り、スパッタリング法といったPVD法とリフトオフ法との組合せに基づき形成されている。また、光透過制御材料層705は、具体的には、TN(ツイステッド・ネマチック)型液晶材料から成る液晶材料層から構成されている。第1電極702及び第2電極704はパターニングされておらず、所謂ベタ電極である。第1電極702及び第2電極704は、図示しないコネクタ、配線を介して制御装置18に接続されている。2枚の基板701,703の外縁部は、封止剤706によって封止されている。更には、調光装置700の第1基板701と保護部材126(導光板121を保護する)とは、接着剤707によって接着されている。また、第1基板701の外面、第2基板
703の外面には偏光フィルムが貼り合わされているが、これらの偏光フィルムの図示は省略した。尚、調光装置700の第1基板701を導光板121よりも短い長さとし、調光装置700の第1基板701を保護部材126に対して接着剤707によって固定する。接着剤707は、第1基板701の外縁部に配されている。以下に説明する実施例1〜実施例4においても同様とする。尚、観察者側から、光学装置120、調光装置700の順に配されている。
【0116】
実施例1の表示装置にあっては、画像形成装置111A,111Bから出射された光が入射される光学装置120の領域、具体的には、第1偏向手段130が設けられた領域には、光学装置120への外光の入射を遮光する遮光部材710が配されている。ここで、
遮光部材710の光学装置120への射影像内に、画像形成装置111A,111Bから出射された光が入射される光学装置120の領域が含まれる。また、遮光部材710の光学装置120への射影像内に、調光装置700の端部の光学装置120への射影像が含まれる。
【0117】
実施例1において、遮光部材710は、光学装置120の画像形成装置111A,111Bが配された側とは反対側に、光学装置120と離間して配されている。遮光部材710は、例えば、不透明なプラスチック材料から作製されており、遮光部材710は、画像表示装置111A,111Bの筐体113から一体に延び、あるいは又、画像表示装置111A,111Bの筐体113に取り付けられ、あるいは又、フレーム10から一体に延び、あるいは又、フレーム10に取り付けられている。尚、図示した例では、遮光部材710は、画像表示装置111A,111Bの筐体113から一体に延びている。
【0118】
調光装置700の光透過率は、第1電極702及び第2電極704に印加する電圧によって制御することができる。具体的には、例えば、第2電極704を接地した状態で、第1電極702に電圧を印加すると、光透過制御材料層705を構成する液晶材料層における液晶の配列状態が変化し、液晶材料層の光透過率が変化する。(
図4の(A)及び(B)参照)。第1電極702及び第2電極704に印加する電圧は制御装置18に設けられた制御ノブを観察者が操作することにより行うことができる。即ち、光学装置120,320からの画像を観察者が観察し、調光装置700の光透過率を調整することで、画像のコントラスト向上を図ればよい。尚、種々の試験の結果、調光装置700の最高光透過率は50%であり、最低光透過率は30%以下(好ましくは、1%以上、30%以下)であることが望ましいことが判った。
【0119】
実施例1の表示装置にあっては、画像形成装置から出射された光が入射される光学装置の領域には、光学装置への外光の入射を遮光する遮光部材が配されている。従って、調光装置の作動によって外光の入射光量に変化が生じても、そもそも、画像形成装置から出射された光が入射される光学装置の領域、具体的には、第1偏向手段130には外光が入射しないので、不所望の迷光等が発生し、表示装置における画像表示品質の低下を招くことが無い。
【実施例2】
【0120】
実施例2は、実施例1の変形である。概念図を
図5に示すように、実施例2の表示装置においては、実施例1と異なり、遮光部材720は、画像形成装置111A,111Bが配された側とは反対側の光学装置120の部分に配されている。具体的には、不透明なインクを、光学装置120(具体的には、保護部材126の内面)に印刷することで、遮光部材720を形成することができる。以上の点を除き、実施例2の表示装置は、実施例1の表示装置と同様の構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。尚、実施例2の遮光部材720と実施例1の遮光部材710とを組み合わせることもできる。尚、遮光部材720を、保護部材126の外面に形成してもよい。
【実施例3】
【0121】
実施例3も、実施例1の変形である。概念図を
図6あるいは
図7に示すように、実施例3の表示装置においては、実施例1、実施例2と異なり、遮光部材730は、調光装置700に配されている。具体的には、不透明なインクを、調光装置700に印刷することで、遮光部材730を形成することができる。尚、
図6に示す例では、遮光部材730は、調光装置700の第1基板701の外面に形成されており、
図7に示す例では、遮光部材730は、調光装置700の第1基板701の内面に形成されている。以上の点を除き、実施例3の表示装置は、実施例1の表示装置と同様の構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。尚、実施例3の遮光部材730と実施例1の遮光部材710とを組み合わせることもできるし、実施例3の遮光部材730と実施例2の遮光部材720とを組み合わせることもできるし、実施例3の遮光部材730と実施例1の遮光部材710と実施例2の遮光部材720とを組み合わせることもできる。
【実施例4】
【0122】
実施例4は、実施例1〜実施例3の変形である。実施例1〜実施例3にあっては、光透過制御材料層705を液晶材料層から構成した。一方、概念図を
図8に示すように、実施例4の表示装置にあっては、調光装置700’は、光透過制御材料層705’が無機エレクトロルミネッセンス材料層から成る光シャッタから構成されている。ここで、無機エレクトロルミネッセンス材料層を構成する材料として、酸化タングステン(WO
3)を用いた。また、調光装置700’を構成する第1基板701’及び第2基板703’を、ソーダライムガラス、白板ガラス等の透明なガラス基板から構成し、第2基板703’を第1基板701’よりも薄くした。具体的には、第2基板703’の厚さを0.2mm、第1基板701’の厚さを0.4mmとした。以上の点を除き、実施例4の表示装置は、実施例1〜実施例3の表示装置と同様の構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。尚、調光装置700’の第1基板701’と保護部材126とは、実施例1と同様に接着剤707によって接着されている。
【実施例5】
【0123】
実施例5は、本開示の第2の態様に係る表示装置に関し、また、実施例4の変形に関する。概念図を
図9に示すように、実施例5の表示装置において、調光装置700”は、
光学装置120と対向する第1基板701”、及び、第1基板701”と対向する第2基板703”、
第1基板701”及び第2基板703”のそれぞれに設けられた電極702”,704”、並びに、
第1基板701”と第2基板703”との間に封止された光透過制御材料層705”、
から成る。そして、第1基板701”は、光学装置120の構成部材(具体的には、保護部材126)を兼ねている。即ち、第1基板701”と保護部材126とは共通の部材であり、共用されている。
【0124】
このように、実施例5にあっては、調光装置700”を構成する第1基板701”が光学装置120の構成部材(保護部材126)を兼ねているので、表示装置全体の重量の減少を図ることができ、表示装置の使用者に不快感を感じさせる虞が無い。
【0125】
以上の点を除き、実施例5の表示装置は、実施例4の表示装置と同様の構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。また、実施例5の表示装置における遮光部材は、実施例1〜実施例3の表示装置における調光装置と同様の構成、構造とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【実施例6】
【0126】
実施例6は、実施例1〜実施例5の変形である。実施例6の表示装置(頭部装着型ディスプレイ)における画像表示装置200の概念図を
図10に示すように、実施例6にあっては、画像形成装置211は、第2の構成の画像形成装置から構成されている。即ち、光源251、及び、光源251から出射された平行光を走査する走査手段253を備えている。より具体的には、画像形成装置211は、
(イ)光源251、
(ロ)光源251から出射された光を平行光とするコリメート光学系252、
(ハ)コリメート光学系252から出射された平行光を走査する走査手段253、及び、
(ニ)走査手段253によって走査された平行光をリレーし、出射するリレー光学系254、
から構成されている。尚、画像形成装置211全体が筐体213(
図10では、一点鎖線で示す)内に納められており、係る筐体213には開口部(図示せず)が設けられており、開口部を介してリレー光学系254から光が出射される。そして、各筐体213が、取付け部材19によって、着脱自在に、テンプル部13に取り付けられている。
【0127】
光源251は、白色を発光する発光素子から構成されている。そして、光源251から出射された光は、全体として正の光学的パワーを持つコリメート光学系252に入射し、平行光として出射される。そして、この平行光は、全反射ミラー256で反射され、マイクロミラーを二次元方向に回転自在とし、入射した平行光を2次元的に走査することができるMEMSから成る走査手段253によって水平走査及び垂直走査が行われ、一種の2次元画像化され、仮想の画素(画素数は、例えば、実施例1と同じとすることができる)が生成される。そして、仮想の画素からの光は、周知のリレー光学系から構成されたリレー光学系(平行光出射光学系)254を通過し、平行光とされた光束が光学装置120に入射する。
【0128】
リレー光学系254にて平行光とされた光束が入射され、導光され、出射される光学装置120は、実施例1にて説明した光学装置と同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。また、実施例6の表示装置も、上述したとおり、画像形成装置211が異なる点を除き、実質的に、実施例1〜実施例5の表示装置と同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。
【実施例7】
【0129】
実施例7も実施例1〜実施例5の変形である。実施例7の表示装置(頭部装着型ディスプレイ)における画像表示装置300の概念図を
図11に示す。また、反射型体積ホログラム回折格子の一部を拡大して示す模式的な断面図を
図12に示す。実施例7にあっては、画像形成装置111は、実施例1と同様に、第1の構成の画像形成装置から構成されている。また、光学装置320は、第1偏向手段及び第2偏向手段の構成、構造が異なる点を除き、基本的な構成、構造は、実施例1の光学装置120と同じである。
【0130】
実施例7にあっては、第1偏向手段及び第2偏向手段は、導光板321の表面(具体的には、導光板321の第2面323)に配設されている。そして、第1偏向手段は、導光板321に入射された光を回折し、第2偏向手段は、導光板321の内部を全反射により伝播した光を、複数回に亙り、回折する。ここで、第1偏向手段及び第2偏向手段は、回折格子素子、具体的には反射型回折格子素子、より具体的には反射型体積ホログラム回折格子から成る。以下の説明において、反射型体積ホログラム回折格子から成る第1偏向手段を、便宜上、『第1回折格子部材330』と呼び、反射型体積ホログラム回折格子から成る第2偏向手段を、便宜上、『第2回折格子部材340』と呼ぶ。
【0131】
そして、実施例7あるいは後述する実施例8にあっては、第1回折格子部材330及び第2回折格子部材340は、1層の回折格子層が積層されて成る構成としている。尚、フォトポリマー材料から成る各回折格子層には、1種類の波長帯域(あるいは、波長)に対応する干渉縞が形成されており、従来の方法で作製されている。回折格子層(回折光学素子)に形成された干渉縞のピッチは一定であり、干渉縞は直線状であり、Z軸に平行である。尚、第1回折格子部材330及び第2回折格子部材340の軸線はX軸と平行であり、法線はY軸と平行である。
【0132】
図12に反射型体積ホログラム回折格子の拡大した模式的な一部断面図を示す。反射型体積ホログラム回折格子には、傾斜角φを有する干渉縞が形成されている。ここで、傾斜角φとは、反射型体積ホログラム回折格子の表面と干渉縞の成す角度を指す。干渉縞は、反射型体積ホログラム回折格子の内部から表面に亙り、形成されている。干渉縞は、ブラッグ条件を満たしている。ここで、ブラッグ条件とは、以下の式(A)を満足する条件を指す。式(A)中、mは正の整数、λは波長、dは格子面のピッチ(干渉縞を含む仮想平面の法線方向の間隔)、Θは干渉縞へ入射する角度の余角を意味する。また、入射角ψにて回折格子部材に光が侵入した場合の、Θ、傾斜角φ、入射角ψの関係は、式(B)のとおりである。
【0133】
m・λ=2・d・sin(Θ) (A)
Θ=90°−(φ+ψ) (B)
【0134】
第1回折格子部材330は、上述したとおり、導光板321の第2面323に配設(接着)されており、第1面322から導光板321に入射されたこの平行光が導光板321の内部で全反射されるように、導光板321に入射されたこの平行光を回折反射する。更には、第2回折格子部材340は、上述したとおり、導光板321の第2面323に配設(接着)されており、導光板321の内部を全反射により伝播したこの平行光を、複数回、回折反射し、導光板321から平行光のまま第1面322から出射する。
【0135】
そして、導光板321にあっても、平行光が内部を全反射により伝播した後、出射される。このとき、導光板321が薄く導光板321の内部を進行する光路が長いため、各画角によって第2回折格子部材340に至るまでの全反射回数は異なっている。より詳細に述べれば、導光板321に入射する平行光のうち、第2回折格子部材340に近づく方向の角度をもって入射する平行光の反射回数は、第2回折格子部材340から離れる方向の角度をもって導光板321に入射する平行光の反射回数よりも少ない。これは、第1回折格子部材330において回折反射される平行光であって、第2回折格子部材340に近づく方向の角度をもって導光板321に入射する平行光の方が、これと逆方向の角度をもって導光板321に入射する平行光よりも、導光板321の内部を伝播していく光が導光板321の内面と衝突するときの導光板321の法線と成す角度が小さくなるからである。また、第2回折格子部材340の内部に形成された干渉縞の形状と、第1回折格子部材330の内部に形成された干渉縞の形状とは、導光板321の軸線に垂直な仮想面に対して対称な関係にある。第1回折格子部材330及び第2回折格子部材340の導光板321とは対向していない面は、保護部材(保護板)326で覆われており、第1回折格子部材330及び第2回折格子部材340に損傷が生じることを防止している。尚、導光板321と保護部材326とは、外周部において、接着剤327によって接着されている。また、第1面322に透明な保護フィルムを貼り合わせ、導光板321を保護してもよい。
【0136】
後述する実施例8における導光板321も、基本的には、以上に説明した導光板321の構成、構造と同じ構成、構造を有する。
【0137】
実施例7の表示装置は、上述したとおり、光学装置320が異なる点を除き、実質的に、実施例1〜実施例5の表示装置と同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。
【実施例8】
【0138】
実施例8は、実施例7の変形である。実施例8の表示装置(頭部装着型ディスプレイ)における画像表示装置の概念図を
図13に示す。実施例8の画像表示装置400における光源251、コリメート光学系252、走査手段253、平行光出射光学系(リレー光学系254)等は、実施例6と同じ構成、構造(第2の構成の画像形成装置)を有する。また、実施例8における光学装置320は、実施例7における光学装置320と同じ構成、構造を有する。実施例8の表示装置は、以上の相違点を除き、実質的に、実施例1〜実施例5の表示装置と同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。
【実施例9】
【0139】
実施例9も、実施例1〜実施例8における画像表示装置の変形である。実施例9の表示装置を正面から眺めた模式図を
図14に示し、上方から眺めた模式図を
図15に示す。尚、
図14においては、遮光部材の図示を省略した。
【0140】
実施例9にあっては、画像表示装置500を構成する光学装置520は、画像形成装置111A,111Bから出射された光が入射され、観察者の瞳21に向かって出射される半透過ミラーから構成されている。尚、実施例9にあっては、画像形成装置111A,111Bから出射された光は、ガラス板やプラスチック板等の透明な部材521の内部を伝播して光学装置520(半透過ミラー)に入射する構造としているが、空気中を伝播して光学装置520に入射する構造としてもよい。また、画像形成装置は、実施例6において説明した画像形成装置211とすることもできる。
【0141】
各画像形成装置111A,111Bは、フロント部11に、例えば、ビスを用いて取り付けられている。また、部材521が各画像形成装置111A,111Bに取り付けられ、光学装置520(半透過ミラー)が部材521に取り付けられ、調光装置700が光学装置520(半透過ミラー)に取り付けられている。また、
遮光部材はフレームに取り付けられている。実施例9の表示装置は、以上の相違点を除き、実質的に、実施例1〜実施例8の表示装置と同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。
【実施例10】
【0142】
実施例10も、実施例1〜実施例5の変形である。実施例10の表示装置を上方から眺めた模式図を
図16の(A)に示す。また、照度センサを制御する回路の模式図を
図16の(B)に示す。
【0143】
実施例10の表示装置は、表示装置の置かれた環境の照度を測定する照度センサ(環境照度測定センサ)801を更に備えており、照度センサ(環境照度測定センサ)801の測定結果に基づき、調光装置700の光透過率を制御する。併せて、あるいは、独立して、照度センサ(環境照度測定センサ)801の測定結果に基づき、画像形成装置111,211によって形成される画像の輝度を制御する。周知の構成、構造を有する環境照度測定センサ801は、例えば、遮光部材710の外面、あるいは又、遮光部材710を設けずに遮光部材720等を設ける場合には、光学装置120,320の外側端部や、調光装置の外側端部に配置すればよい。環境照度測定センサ801は、図示しないコネクタ及び配線を介して制御装置18に接続されている。制御装置18には、環境照度測定センサ801を制御する回路が含まれる。この環境照度測定センサ801を制御する回路は、環境照度測定センサ801からの測定値を受け取り、照度を求める照度演算回路、照度演算回路によって求められた照度の値を標準値の比較する比較演算回路、比較演算回路によって求められた値に基づき、調光装置700及び/又は画像形成装置111,211を制御する環境照度測定センサ制御回路から構成されているが、これらの回路は周知の回路から構成することができる。調光装置700の制御にあっては、調光装置700の光透過率の制御を行い、一方、画像形成装置111,211の制御にあっては、画像形成装置111,211によって形成される画像の輝度の制御を行う。尚、調光装置700における光透過率の制御と画像形成装置111,211における画像の輝度の制御は、それぞれ、独立して行ってもよいし、相関を付けて行ってもよい。
【0144】
例えば、照度センサ(環境照度測定センサ)801の測定結果が所定値(第1の照度測定値)以上になったとき、調光装置700の光透過率を所定の値(第1の光透過率)以下とする。一方、照度センサ(環境照度測定センサ)801の測定結果が所定値(第2の照度測定値)以下になったとき、調光装置700の光透過率を所定の値(第2の光透過率)以上とする。ここで、第1の照度測定値として10ルクスを挙げることができるし、第1の光透過率として1%乃至30%のいずれかの値を挙げることができるし、第2の照度測定値として0.01ルクスを挙げることができるし、第2の光透過率として51%乃至99%のいずれかの値
を挙げることができる。
【0145】
尚、実施例10における照度センサ(環境照度測定センサ)801を、実施例2〜実施例9において説明した表示装置に適用することができる。また、表示装置が撮像装置を備えている場合、撮像装置に備えられた露出測定用の受光素子から照度センサ(環境照度測定センサ)801を構成することもできる。
【0146】
実施例10あるいは次に述べる実施例11の表示装置にあっては、照度センサ(環境照度測定センサ)の測定結果に基づき、調光装置の光透過率を制御し、また、照度センサ(環境照度測定センサ)の測定結果に基づき、画像形成装置によって形成される画像の輝度を制御し、また、第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)の測定結果に基づき、調光装置の光透過率を制御し、また、第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)の測定結果に基づき、画像形成装置によって形成される画像の輝度を制御するので、観察者が観察する画像に高いコントラストを与えることができるだけでなく、表示装置の置かれた周囲の環境の照度に依存して画像の観察状態の最適化を図ることができる。
【実施例11】
【0147】
実施例11も、実施例1〜実施例5の変形である。実施例11の表示装置を上方から眺めた模式図を
図17の(A)に示す。また、照度センサを制御する回路の模式図を
図17の(B)に示す。
【0148】
実施例11の表示装置は、外部環境から調光装置を透過した光に基づく照度を測定する、即ち、環境光が調光装置を透過して所望の照度まで調整されて入射しているかを測定する第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)802を更に備えており、第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)802の測定結果に基づき、調光装置700の光透過率を制御する。併せて、あるいは、独立して、また、第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)802の測定結果に基づき、画像形成装置111,211によって形成される画像の輝度を制御する。周知の構成、構造を有する透過光照度測定センサ802は、光学装置120,320,520よりも観察者側に配置されている。具体的には、透過光照度測定センサ802は、例えば、導光板121,321の観察者側の面に配置すればよい。透過光照度測定センサ802は、図示しないコネクタ及び配線を介して制御装置18に接続されている。制御装置18には、透過光照度測定センサ802を制御する回路が含まれる。この透過光照度測定センサ802を制御する回路は、透過光照度測定センサ802からの測定値を受け取り、照度を求める照度演算回路、照度演算回路によって求められた照度の値を標準値の比較する比較演算回路、比較演算回路によって求められた値に基づき、調光装置700及び/又は画像形成装置111,211を制御する透過光照度測定センサ制御回路から構成されているが、これらの回路は周知の回路から構成することができる。調光装置700の制御にあっては、調光装置700の光透過率の制御を行い、一方、画像形成装置111,211の制御にあっては、画像形成装置111,211によって形成される画像の輝度の制御を行う。尚、調光装置700における光透過率の制御と画像形成装置111,211における画像の輝度の制御は、それぞれ、独立して行ってもよいし、相関を付けて行ってもよい。更に、透過光照度測定センサ802の測定結果が環境照度測定センサ801の照度から鑑みて所望の照度まで制御できていない場合、即ち、透過光照度測定センサ802の測定結果が所望の照度になっていない場合、若しくは、更に一層の微妙な照度調整が望まれる場合には、透過光照度測定センサ802の値をモニターしながら調光装置の光透過率を調整すればよい。
【0149】
尚、実施例11における第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)802を、実施例2〜実施例9において説明した表示装置に適用することができる。あるいは又、実施例11における第2の照度センサ(透過光照度測定センサ)802と実施例10における環境照度測定センサ801とを組み合わせてもよく、この場合、種々の試験を行い、調光装置700における光透過率の制御と画像形成装置111,211における画像の輝度の制御を、それぞれ、独立して行ってもよいし、相関を付けて行ってもよい。
【実施例12】
【0150】
以下の実施例12〜実施例25においては、実施例1〜実施例11の表示装置の変形例を説明する。尚、実施例12〜実施例25に関する図面において、調光装置の図示は省略した。
【0151】
実施例12は、実施例1〜実施例11の表示装置の変形であり、具体的には、本開示における第1Aの表示装置〜第1Bの表示装置、より具体的には、字幕を表示する表示装置(字幕表示装置)に関する。実施例12の表示装置において、例えば画像表示装置を構成する導光板における光の伝播を模式的に
図18に示す。更には、実施例12の表示装置を観察者の頭部に装着した状態を上方から眺めた図(但し、画像表示装置のみを示し、フレーム等の図示は省略)を
図19に示し、実施例12の表示装置を使用している状態の概念図を
図20及び
図21に示す。また、実施例12の表示装置を構成する制御装置18の概念図を
図22に示し、実施例12における画像信号の一例を
図23の(A)に示す。
【0152】
尚、実施例12あるいは後述する実施例13〜実施例19において、画像形成装置111,211の中心から出射され、光学系112,254の画像形成装置側節点を通過した光線(中心光線)の内、光学装置120,320,520に垂直に入射する中心入射光線CLが光学装置120,320,520に入射する点を光学装置中心点Oとし、光学装置中心点Oを通過し、光学装置120,320,520の軸線方向と平行な軸線をX軸、光学装置中心点Oを通過し、光学装置120,320,520の法線と一致する軸線をY軸とする。尚、第1偏向手段130,330の中心点が、光学装置中心点Oである。
【0153】
フロント部11の中央部分には、CCDあるいはCMOSセンサーから成る固体撮像素子とレンズ(これらは図示せず)とから構成された撮像装置(図示せず)が、適切な取付部材(図示せず)によって取り付けられている。撮像装置からの信号は、撮像装置から延びる配線(図示せず)を介して、画像形成装置111A,211に送出される。
【0154】
配線(信号線や電源線等)15は、上述したとおり、制御装置(制御回路)18に接続されている。制御装置18には、画像信号(例えば、文字データ)が無線によって送られてくる。そして、制御装置18において、画像信号(文字データ)には画像表示(例えば、字幕表示)のための処理がなされる。制御装置18は周知の回路から構成することができる。
【0155】
図22に示すように、制御装置18は、後述する文字データ無線送信装置32を介して無線によって送られてくる画像信号(コマンドを含む)を受信するコマンド受信回路18A、コマンド受信回路18Aからの画像信号を受け取り、各種の解析及び処理を行う信号処理回路18B、信号処理回路18Bからの各種データを受け取り、各種の信号を送出するタイミング調整回路18C、タイミング調整回路18Cからの各種の信号を受け取り、表示位置から画像を再生するようタイミングを調整し、配線15を介して画像信号を各画像形成装置111(111A,111B),211へと送出する送信回路18Dから構成されている。制御装置18は、更に、受信した画像信号を表示するためのタイミング信号を発生するタイミング発生回路18Eを備えており、タイミング発生回路18Eからの各種タイミングクロック、タイミング信号に基づいて、タイミング調整回路18Cにおいてタイミングの調整が図られる。
【0156】
図23の(A)に示すように、画像信号は、例えば、コマンド開始フラグである「SYNC」、コマンド種別特定IDである「MSG_ID」、コマンド全体の長さを示すデータ「LENG」、画像の水平方向表示開始位置を示すデータ「POS_X」、画像の垂直方向表示開始位置を示すデータ「POS_Y」、表示すべき画像のデータ「DATA」、及び、コマンドエラーチェック「FCS」から構成されている。
【0157】
実施例12の表示装置における画像(例えば、字幕)の表示について、以下、説明する。
【0158】
即ち、実施例12の表示装置にあっては、少なくとも一方の画像表示装置(実施例12においては、右眼用及び左眼用の2つの画像表示装置100,200,300,400,500)を構成する画像形成装置111,211への画像信号(文字データ、入力画像信号、入力画像データ)を制御することで、観察者の観察位置に依存して輻輳角を調整し、あるいは又、この少なくとも一方の画像表示装置を構成する光学装置において表示される画像の位置を観察者の観察位置に依存して調整する。尚、実施例12においては、輻輳角の調整と、観察者の観察位置に依存した画像の位置の調整の両方を行うが、いずれか一方のみを行ってもよい。
【0159】
具体的には、無線で(場合によっては有線で)、画像信号を制御装置18に送る。そして、制御装置18において、画像信号に対して画像表示のための処理が行われ、データ「DATA」に基づき、画像形成装置111,211において画像(字幕)を生成する。この画像は、光学系112,254、光学装置120,320,520を介して、最終的に、表示装置を装着した観察者(観客)の両眼に到達する。
【0160】
そして、左眼用及び右眼用の画像表示装置100,200,300,400,500によって表示される画像が、所望の位置(例えば、舞台の所望の位置やスクリーン)と一致するように(重なり合うように)、制御装置18を介して、具体的には、制御装置18に配置されたスイッチ(図示せず)を用いて、光学装置120,320,520に表示された画像を左右、上下に移動させ、また、回転移動させる。即ち、例えば、
図19における点「A」が所望の位置となるように、光学装置120,320,520に表示された画像を左右、上下に移動させ、また、回転移動させる。このように、制御装置18に配置されたスイッチの操作によって、画像信号の制御が行われる。即ち、制御装置18内で表示位置補正信号が生成され、画像信号に表示位置補正信号が加えられる。
【0161】
左眼用及び右眼用の画像表示装置100,200,300,400,500によって表示される画像が、所望の位置において、左右にずれている状態を模式的に
図24の(A)に示し、上下にずれている状態を模式的に
図24の(B)に示し、回転した状態でずれている状態を模式的に
図24の(C)に示す。ここで、
図24の(A)、(B)及び(C)における右手側の図は、右眼用の画像表示装置100,200,300,400,500によって表示される画像を示し、
図24の(A)、(B)及び(C)における左手側の図は、左眼用の画像表示装置100,200,300,400,500によって表示される画像を示す。また、
図24の(A)、(B)及び(C)における右手側の図における点線は、左眼用の画像表示装置100,200,300,400,500によって表示される画像を重ね合わせて示すものである。
【0162】
ここで、画像(文字)の水平方向の移動のためには、表示位置補正信号として、画像信号に基づく画像の水平方向の位置を+i画素あるいは−i画素分、変える信号を制御装置18において生成すればよい。あるいは又、水平同期信号のタイミングを+i画素あるいは−i画素分、変える信号を制御装置18において生成すればよい。また、画像(文字)の垂直方向の移動のためには、表示位置補正信号として、画像信号に基づく画像の垂直方向の位置を+j画素あるいは−j画素分、変える信号を制御装置18において生成すればよく、あるいは又、垂直同期信号のタイミングを+j画素あるいは−j画素分、変える信号を制御装置18において生成すればよい。即ち、画像のメモリ読み出し位置を、タイミング的に、遅らす、又は、早めることにより実現することができ、あるいは、垂直同期信号と水平同期信号のタイミングをずらすことによって実現することができる。更には、画像(文字)の回転移動のためには、周知の方法に基づく画像の回転のための信号を表示位置補正信号として、制御装置18において生成すればよい。
【0163】
そして、左眼用及び右眼用の画像表示装置100,200,300,400,500によって表示される画像が所望の位置で一致したときの(重なり合ったときの)表示位置補正信号を制御装置18に記憶させる。このような操作は、例えば、制御装置18に設けられたボタン(図示せず)を用いることで行うことができる。そして、このような操作は、例えば、観察者が座席に着席した後、一度、行えばよい。また、このような操作には、例えば、
図24に示したような水平の方向に延びる線、垂直方向に延びる線、斜め方向に延びる線の組合せといった、一種のテストパターンを用いればよい。こうして、少なくとも一方の画像表示装置100,200,300,400,500を構成する光学装置120,320,520において表示される画像の位置を制御し、以て、2つの画像表示装置100,200,300,400,500における2つの画像の相互の位置を調整することができる。即ち、輻輳角の調整と、観察者の観察位置に依存した画像の位置の調整の両方を行うことができる。
【0164】
表示位置補正信号は、上述したとおり、制御装置(制御回路、制御手段)18に記憶される。制御装置18には、例えば、周知の構成を有する文字データ再生装置31や画像データ及び文字データ再生装置31’によって再生された画像信号(文字データ)が、文字データ無線送信装置32を介して無線によって送られてくる。画像信号の送出の開始は、例えば、映画等の進行状況に応じて、あるいは又、芝居等の進行状況に応じて、所定のスケジュール、時間配分に基づき、作業者の操作によって、あるいは、コンピュータ等の制御下、行えばよい。そして、制御装置18において、画像信号に対して画像表示のための処理がなされる。即ち、制御装置18において画像信号(具体的には、データ「POS_X」,「POS_Y」)に表示位置補正信号が加えられる。こうして、表示装置から観察対象物までの距離に基づき、少なくとも一方の画像表示装置(実施例12においては、右眼用及び左眼用の2つの画像表示装置100,200,300,400,500)を構成する画像形成装置111,211への画像信号を制御することで、即ち、右眼用及び左眼用の2つの画像表示装置100,200,300,400,500によって得られる2つの画像の水平方向の距離(間隔)を調整することで、表示装置から観察対象物までの距離に対応した輻輳角の調整を行うことができる。具体的には、例えば、表示装置から観察対象物までの距離が遠くなるほど、輻輳角を小さくすればよい。また、右眼用及び左眼用の2つの画像表示装置100,200,300,400,500によって得られる2つの画像を平行移動させることで、画像表示装置100,200,300,400,500を構成する光学装置120,320,520において表示される画像の位置を観察者の観察位置に依存して調整することができる。具体的には、例えば、表示装置に対して観察対象物が垂直方向に或る角度を持った位置にある場合(例えば、映画館で前の席の方に座るとスクリーンを見上げる格好になる場合)、表示される画像(字幕)の位置を上方に移動させることで、観察者が外界の像(観察対象物)に画像を重畳して見るとき、注視する外界の像と画像の表示位置が大きく離れることが無くなり、画像を容易に視認することが可能となる。あるいは又、映画や舞台等では予め決められたシナリオに即して公演が進行する。従って、画像を重畳するときのスクリーンや舞台の像(観察対象物)を予測することが可能である。また、台詞を述べる登場人物等といった音声発生源に基づき、スクリーンや舞台における登場人物等の位置を予測することも可能である。それ故、このような予測に基づき、画像表示装置100,200,300,400,500を構成する光学装置120,320,520において表示される画像の位置を観察者の観察位置に依存して調整することで、光学装置120,320,520において、視認性の良い位置に画像(字幕)を表示することが可能となる。
【0165】
あるいは又、画像形成装置111,211への画像信号に加え、観察者(表示装置)から観察対象物までの観察位置情報(距離情報)が、外部から表示装置に送出される構成としてもよい。このような信号のフォーマットの概念図の一例を
図25の(A)に示す。そして、このような構成にあっては、この観察位置情報(距離情報)に基づき、画像信号に基づく画像の水平方向の位置を+k画素分あるいは−k画素分、変える信号(表示位置補正信号、輻輳角制御信号)を制御装置18において生成すればよい。画像の水平方向の位置を1画素、変化させると、輻輳角がどの程度、変化し、あるいは又、虚像距離がどの程度、変化するかを、予め、調べておき、制御装置18にこれらの関係を記憶しておけばよい。尚、この信号に、画像の水平方向の位置を+i画素あるいは−i画素分、変える表示位置補正信号、画像の垂直方向の位置を+j画素あるいは−j画素分、変える表示位置補正信号、更には、画像の回転のための表示位置補正信号が加重されて、画像形成装置111,211へ送出される構成とすることもできる。このように、観察位置情報(あるいは、左右の画像シフト量)によって、右眼用及び左眼用の2つの画像表示装置100,200,300,400,500によって得られる2つの画像を移動させることで、虚像を所望の位置に配することができる。即ち、画像表示装置100,200,300,400,500を構成する光学装置120,320,520において表示される2つの画像の水平方向の距離(間隔)を調整することで、表示装置から観察対象物までの距離に対応した輻輳角の調整を行うことができる。また、右眼用及び左眼用の2つの画像表示装置100,200,300,400,500によって得られる2つの画像を平行移動させることで、虚像を所望の位置に配することができる。即ち、画像表示装置100,200,300,400,500を構成する光学装置120,320,520において表示される画像の位置を観察者の観察位置に依存して調整することができる。
【0166】
図25の(B)に基づき、表示装置から観察対象物までの距離に対応した輻輳角の調整の説明を行う。ここで、画像表示装置によって表示される画像信号に基づく画像(文字)の虚像距離を『a』とし、このときの画像に対する輻輳角(X軸方向)を『α』とする。また、『γ』を、虚像距離aから『c』だけ遠ざかった場合の画像における輻輳角とし、『β』を、虚像距離aから『b』だけ近づいた場合の画像における輻輳角とする。更には、左右の瞳間距離を『D』とする。ここで、仮に、
D=61.5mm
a=4000mm
とすると、
α=53分(53’)
となる。
【0167】
画像形成装置における1画素を、3分(3’)と定義する。ここで、画像表示位置を、所定の位置から水平方向に1画素分、内側にずらしたとすると、
β=56分(56’)
となり、
b=225mm
となる。一方、画像表示位置を、所定の位置から水平方向に1画素分、外側にずらしたとすると、
γ=50分(50’)
となり、
c=228mm
となる。また、
a=8000mm
とした場合は、1画素分、画像をシフトさせると、虚像距離を約1m、シフトさせることができる。
【0168】
このように、画像表示位置を所定の位置から水平方向に所望の画素分、ずらすことで、輻輳角の調整を行うことができる。云い換えれば、右眼用及び左眼用の2つの画像表示装置100,200,300,400,500を構成する画像形成装置111,211への画像信号を、表示位置補正信号によって制御することで、表示装置から観察対象物までの距離に対応した輻輳角の正確な調整を行うことができ、その結果、観察対象物と観察者(観客)との間の距離と、画像表示装置によって表示される画像(字幕)の虚像距離とを等しくすることができ、あるいは又、出来るだけ等しくすることができ、観察対象物を眺める観察者(観客)が、左程、焦点を変更、変化させること無く、自然に画像表示装置によって表示される画像を眺めることができる。
【0169】
尚、虚像距離をa、輻輳角αは、以下の関係が成立することが望ましい。
a×tan(α/2)=D/2
ここで、D(単位:mm)は、例えば、
56≦D≦74
を満足する。αの値が0である場合、「a」の値は無限大である。但し、観察者の移動速度に応じて虚像距離aと輻輳角αとが独立して算出される訳ではなく、どちらか一方の対応関係のみが規定されることで、他方は自動的に決定される。
【0170】
表示装置から観察対象物までの距離を測定する位置測定手段(距離測定装置)を更に備えており、位置測定手段(距離測定装置)によって観察位置情報(距離情報)を得る構成としてもよい。位置測定手段(距離測定装置)として、例えば、撮像装置を、オートフォーカス機能付き撮像装置(パッシブ方式の距離測定装置を有する撮像装置)とすればよい。あるいは又、制御装置18にボタンやスイッチを設け、手動にて表示装置から観察対象物までの距離を設定してもよい。これらの構成によっても、制御装置18内で適切な表示位置補正信号が生成され、画像信号に表示位置補正信号が加えられる。あるいは又、映画館や劇場等において観察者(観客)が着席する座席の位置に応じて輻輳角や、光学装置において表示される画像(字幕)の位置、虚像位置、虚像距離が予め設定された表示装置を、観察者(観客)に貸し出してもよい。このような構成にあっては、予め、適切な表示位置補正信号が決定され、制御装置18内に記憶されており、画像信号に表示位置補正信号が加えられる。
【0171】
表示装置を例えば劇場にて使用する場合、芝居等におけるその内容や進行状況、背景等を説明するための説明文を画像として表示装置に表示すればよいが、虚像距離を所望の距離とすることが要求される。即ち、観劇者の座る位置によって、観察対象物と観察者(観客)との間の距離と、画像表示装置によって表示される画像(例えば文字)の虚像距離が変化する。従って、観劇者の位置に依存して、虚像距離の最適化を図る必要があるが、実施例12の表示装置にあっては、上述したとおり、表示装置から観察対象物までの距離に対応した輻輳角の最適化が図られているので、観劇者の位置に依存して虚像距離が最適化されている。また、場面によって、虚像距離を変化させたい場合があるが、このような場合、観察者(表示装置)から観察対象物までの観察位置情報(距離情報)を外部から表示装置に送出することで、容易に対処することができる。
【0172】
あるいは又、観察者(観客、使用者)が、虚像距離を所望の距離に設定したり、虚像位置を所望の位置に設定することも可能である。具体的には、制御装置18にスイッチやボタンを配し、これを観察者が操作することにより、所望の距離あるいは位置に虚像を配置させることが可能である。例えば、背景が変化した場合、任意に虚像距離や虚像位置を変更することが可能である。このような操作は、例えば、画像信号に基づき自動的に行うことができるし、あるいは又、観察対象物の観察時、適宜、観察者が行えばよく、このような操作は、具体的には、制御装置18において画像信号に表示位置補正信号、輻輳角制御信号を加える操作である。あるいは又、後述する移動装置40を作動させる操作である。そして、これによって、観客が視線を余り動かさずに、例えば、画像(例えば、字幕等の文字)を確実に読むことが可能となるし、観客のそれぞれに適した画像(例えば、字幕等、より具体的には、例えば、異なる言語に基づく字幕等)を、容易に、同時に表示することができる。
【0173】
画像信号はデジタル化されたデータであり、表示の前に、予め、作成されている。画像の表示位置は、観察対象物を眺めたときに邪魔にならない位置とすればよい。また、画像の表示は、具体的には、上述したとおり、例えば、所定のスケジュール、時間配分等に基づき、あるいは又、観察対象物の進行状況に応じて、文字データ再生装置31や画像データ及び文字データ再生装置31’に備えられたコンピュータ(図示せず)の制御下、文字データ無線送信装置32によって制御装置18に無線にて送出される。
【0174】
実施例12の表示装置において、画像信号として、文字データだけでなく、表示すべき文字に関する輝度データや色度データを含めれば、画像(例えば、字幕等)の文字が、文字の背景に依存して視認し難くなることを確実に防止することができる。尚、輝度データとして、画像表示装置を通して眺めた観察対象物(登場人物や背景等)を含む所定の領域(例えば、舞台全体の下方三分の一に相当する領域)の輝度に対応した輝度データを例示することができる。また、色度データとして、画像表示装置を通して眺めた観察対象物を含む所定の領域の色度に対応した色度データとすることができる。特に、半透過型(シースルー型)の光学装置越しに見るスクリーンや舞台等の明るさと、光学装置に表示される文字の明るさや色のバランスが一定の範囲にないと、字幕やスクリーン、舞台等を良好に観察することが困難となる場合があるが、表示すべき文字の明るさや色をスクリーンや舞台等に合わせることができ、文字を良好に視認することができる。即ち、観察者(観客)が眺めた観察対象物等の説明等のための文字が、文字の背景に依存して視認し難くなることを確実に防止することが可能である。そして、実施例12の表示装置の使用においては、例えば、観劇にあっては、適切なタイミングで観察対象物に関連した文字(例えば、劇の状況や背景に関する説明文、登場人物の説明文、登場人物の会話等)を画像表示装置100,200,300,400,500において表示すればよい。具体的には、例えば、芝居の進行状況に応じて、作業者の操作によって、あるいは、コンピュータ等の制御下、文字データを画像表示装置100,200,300,400,500に送出し、文字を画像表示装置100,200,300,400,500にて表示すればよい。
【0175】
更には、虚像位置が固定されると、目が疲れると云われている。焦点が固定されると、眼球の動きが少なくなるためである。それ故、適度に虚像距離を変化させ、あるいは、虚像位置を動かすことにより、目の疲れを低減させる効果がある。即ち、2つの光学装置によって形成される虚像位置、あるいは、2つの光学装置によって形成される虚像の2つの光学装置からの距離(虚像距離)を、経時的に変化させてもよい。具体的には、例えば、5分に1回、画像の水平方向の位置を、例えば、画像形成装置における+2画素分、例えば、1分間に亙り、変化させた後、元に戻せばよい。
【実施例13】
【0176】
実施例13は、本開示における第1Cの表示装置に関する。実施例13の表示装置の基本的な構成、構造は、実施例12の表示装置の基本的な構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【0177】
実施例13の表示装置にあっては、画像形成装置へ画像信号が入力されてから所定の時間が経過した後、画像形成装置における画像形成を停止する。画像形成装置における画像形成を停止するためには、即ち、表示装置における省電力モード等への移行のためには、画像信号に、画像表示装置における画像表示時間を表す信号や、画像形成装置における画像形成の停止を指示する信号を加重する。
【0178】
このような実施例13における画像信号の一例を
図23の(B)に示すが、
図23の(A)に示した実施例12における画像信号に、画像表示装置における画像表示時間を表す信号である画像表示時間を示すデータ「TIME」が加わっている。制御装置18においては、データ「TIME」の時間長さ(T秒)だけ、画像表示装置において画像(字幕)を表示し、その後、画像表示装置において画像(字幕)の表示を中止し、更には、コマンド受信回路18Aのみを動作させ、コマンド受信回路18Aからの指令に基づき、信号処理回路18B、タイミング調整回路18C、送信回路18D及びタイミング発生回路18Eの動作を停止させる省電力モード等へ移行する。そして、コマンド受信回路18Aが再び画像信号を受け取ったならば、コマンド受信回路18Aからの指令に基づき、信号処理回路18B、タイミング調整回路18C、送信回路18D及びタイミング発生回路18Eの動作を再開する。
【0179】
このように、実施例13の表示装置にあっては、画像形成装置へ画像信号が入力されてから所定の時間が経過した後、画像形成装置における画像形成を停止する。即ち、所定の時間経過後に表示装置における省電力モード等へ移行するので、表示装置における電力の浪費といった問題が生じることがない。
【実施例14】
【0180】
実施例14は、実施例12〜実施例13における画像表示装置の変形である。実施例14の表示装置において、画像表示装置を構成する導光板等の配置状態を示す概念図を、
図26(A)及び(B)に示し、実施例14における表示装置を横から眺めた模式図を
図27に示す。尚、
図27において、調光装置や遮光部材の図示を省略した。
【0181】
実施例12〜実施例13にあっては、
図18に示したように、画像表示装置100,300において、画像形成装置111,211の中心から出射され、光学系112,254の画像形成装置側節点を通過した中心入射光線CLは、導光板121,321に垂直に衝突する設計となっている。即ち、中心入射光線CLは、導光板121,321へ、入射角0度で入射する設計となっている。そして、この場合、表示される画像の中心は、導光板121,321の第1面122,322の垂線方向に一致する。
【0182】
即ち、画像表示装置100で代表させるこのような画像表示装置にあっては、
図18に示したように、コリメート光学系112の光軸上にある画像形成装置111,211の中心から出射する中心入射光線CLは、コリメート光学系112にて略平行光に変換された後、導光板121の第1面(入射面)122に垂直に入射する。そして、第1偏向手段130により第1面122と第2面123との間で全反射されながら、伝播方向Aに沿って進む。続いて、この中心入射光線CLは、第2偏向手段140により反射、回折され、導光板121の第1面122から垂直に出射され、観察者(観客)の瞳21に達する。
【0183】
シースルー型の表示装置において、観察者(観客)が、水平の方向に位置する観察対象物を眺めたときに、光学装置120,320,520が邪魔にならないようにするためには、観察者の水平の方向の視線(観察者の水平方向視線)よりも、光学装置120,320,520を下側にずらして配置することが好ましい。このような場合、画像表示装置100,300、全体を、観察者の水平方向視線の下側に配置する。ところで、このような構成にあっては、
図29に示すように、画像表示装置100、全体を、角度θ”だけ傾ける必要があり、観察者の頭部への装着のための眼鏡型のフレームの取付部(テンプル部)との関係から、画像表示装置100を傾けることができる角度θ”が制限されたり、デザイン自由度が低くなる場合がある。それ故、観察者の水平方向視線の邪魔にならないように、高い自由度での配置を可能とし、しかも、高いデザイン自由度を有する画像表示装置とすることが、一層、望ましい。
【0184】
実施例14にあっては、中心入射光線CLは、XY平面と0度以外の角度(θ)で交わる構成とした。更には、中心入射光線CLはYZ平面に含まれる構成とした。更には、実施例14あるいは後述する実施例15において、光学系112,254の光軸は、YZ平面に含まれ、且つ、XY平面と0度以外の角度、具体的には、角度θで交わる(
図26の(A)及び(B)参照)。また、実施例14あるいは後述する実施例15において、XY平面が水平面と一致すると仮定したとき、中心入射光線CLがXY平面と交わる角度θは仰角である。即ち、XY平面の下側から中心入射光線CLがXY平面に向い、XY平面と衝突する。そして、XY平面は垂直面と0度以外の角度、具体的には、角度θで交わる。
【0185】
実施例14にあっては、θ=5度とした。より具体的には、このような構成にあっては、中心入射光線CL(
図27では、点線で示す)は、水平面に含まれる。そして、光学装置120,320,520は、垂直面に対して角度θだけ傾いている。云い換えれば、光学装置120,320,520は、水平面に対して角度(90−θ)度だけ傾いている。また、光学装置120,320,520から出射される中心入射光線CL’(
図27では、一点鎖線で示す)は、水平面に対して角度2θだけ傾いている。即ち、観察者が、水平の方向、無限遠方の対象物を眺めたとき、光学装置120,320,520から出射され、観察者の瞳に入射する中心入射光線CL’は俯角θ’(=2θ)をなす(
図27参照)。中心入射光線CL’が光学装置120,320,520の法線と成す角度はθである。
図26の(A)あるいは後述する
図28の(A)においては、光学装置120,320,520から中心入射光線CL’が出射される点を「O’」で示し、点O’を通過するX軸、Y軸、Z軸と平行な軸線をX’軸、Y’軸、Z’軸で表している。
【0186】
実施例14の画像表示装置にあっては、中心入射光線CLは、XY平面と0度以外の角度(θ)で交わる。ここで、光学装置から出射され、観察者(観客)の瞳に入射する中心入射光線CL’は俯角θ’をなすが、
θ’=2θ
の関係にある。一方、
図29に示した例にあっては、同じ俯角を得ようとする場合、画像表示装置の全体を角度θ”だけ傾ける必要があるが、ここで、θ”とθの関係は、
θ”=2θ
であり、結局、
図29に示した例にあっては、光学装置を垂直面に対して2θだけ、傾けなければならない。一方、実施例14にあっては、光学装置を垂直面に対してθだけ、傾ければよいし、画像形成装置を水平に保持すればよい。従って、画像表示装置を眼鏡型のフレームの取付部に取り付けるときの画像表示装置の取付け角度に対する制限が少なく、高いデザイン自由度を得ることができる。また、光学装置の垂直面に対する傾きが、
図29に示した例よりも小さいので、外光が光学装置にて反射し、観察者(観客)の瞳に入射するといった現象が生じ難い。それ故、より高品質の画像の表示を行うことができる。
【0187】
実施例14の表示装置は、以上の相違点を除き、実施例12〜実施例13の表示装置と同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。
【実施例15】
【0188】
実施例15は、実施例14における画像表示装置の変形である。実施例15における画像表示装置を構成する導光板等の配置状態を示す概念図を
図28の(A)及び(B)に示す。ここで、実施例15にあっては、光学系(平行光出射光学系,コリメート光学系)112の光軸は、YZ平面と平行であり、XY平面と平行であり、且つ、画像形成装置111,211の中心から外れた位置を通過する。このような構成とすることで、中心入射光線CLは、YZ平面に含まれ、しかも、XY平面と仰角θをなして交わる。実施例15の表示装置は、以上の相違点を除き、実施例12〜実施例14の表示装置と同じ構成、構造を有するので、詳細な説明は省略する。
【実施例16】
【0189】
実施例16〜実施例19は、実施例12〜実施例15にて説明した表示装置の変形であり、実施例16は、本開示における第3Aの表示装置に関する。実施例16あるいは後述する実施例17〜実施例19の表示装置の基本的な構成、構造は、実施例12〜実施例15にて説明した表示装置の基本的な構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【0190】
実施例16の表示装置にあっても、演劇において演劇者の会話等を字幕として表示装置において表示する。周知の回路構成から構成された制御装置618に備えられたメモリカードから成る記憶手段(図示せず)にはデータ群が記憶されている。ここで、実施例16において、データ群は、演劇での演劇者の会話等を、例えば、1場面、1場面、編集した、文字列を画像とした画像データである文字データの集合体とした。画像データ(画像信号)のファイル形式は本質的に任意である。
図30に、データ群を構成する画像信号(文字データ)のデータ構造を概念的に図示する。ここで、データ群を構成する各文字データには指定識別符号が付されている。指定識別符号は、例えば数字から成る。
【0191】
実施例16における送信装置(送信手段)651のシステム構成ブロック図、及び、表示装置における制御装置618のシステム構成ブロック図を、それぞれ、
図31の(A)及び(B)に示し、実施例16における送信装置651での送信処理の流れを説明する図を
図32に示し、実施例16における制御装置618での受信処理の流れを説明する図を
図33に示す。
【0192】
周知の回路構成から成る送信装置651には、例えば、パーソナルコンピュータ652、及び、周知の液晶表示装置から成る表示装置653が備えられている。そして、この表示装置653には、
図34に示すように、例えば、指定識別符号、データ群を構成する複数の文字データ、及び、各文字データの全表示時間、更には、輝度情報が表示されている。尚、この表示装置653には、更に、文字データを構成する表示データ(異サイズ・表示データや異言語・表示データ)を表示する領域が設けられているし、送信装置651からの各種情報を受信する表示装置の台数を表示する領域も設けられている。更には、全表示時間T
totalに対する表示時間情報T
Infの割合を「横棒」によって表示する領域も設けられている。「指定識別符号等の表示領域」において、斜線を付した部分はカーソルが置かれ、表示色が反転した行を示している。
【0193】
そして、演劇において演劇者の或る会話が開始する直前、外部から指定識別符号及び表示時間情報が所定の時間間隔で制御装置618に送られる。尚、表示時間情報に相当する時間は、本開示における第1Cの表示装置あるいは本開示における第3Aの表示装置における所定の時間に相当する。具体的には、例えば、パーソナルコンピュータ652に備えられたポインティングデバイスやキーボード(これらは図示せず)を作業者が操作することで、表示装置653に表示された指定識別符号、データ群を構成する複数の文字データ、及び、各文字データの全表示時間が表示された行を指定することで、パーソナルコンピュータ652は、指定された指定識別符号及び全表示時間を読み出し、表示時間情報を求め、表示パケットを作成し、同期信号と共に、指定識別符号及び表示時間情報を、表示装置における制御装置618に向けて送信する。尚、ポインティングデバイスとして、例えば、ジョイスティック、ポインティング・スティック(トラックポイント)、タッチパッド、タッチパネル、スタイラスペン、データグローブ、トラックボール、ペンタブレット、マウス、ライトペン、ジョイパッドを例示することができる。
【0194】
具体的には、前述したとおり、表示時間情報T
Infは、全表示時間T
total及び所定の時間間隔T
intを用いて、
T
Inf(m)=T
total−(m−1)×T
int
で表すことができる。そして、外部(送信装置651)から、指定識別符号及び表示時間情報T
Infが所定の時間間隔T
intで制御装置618に送られる。例えば、
T
total=10.0秒
T
int =0.1秒
とすると、第1回目(m=1)に外部(送信装置651)から指定識別符号及び表示時間情報が制御装置618に送られてきたときの表示時間情報T
Inf(m)は、
T
Inf(1)=10.0秒
である。
【0195】
送信装置651内では、T
Inf=0(秒)となったかを調べ、T
Infが0秒ではない場合、タイマー待ちとして、T
InfをT
int(具体的には、0.1秒)だけ減じ、T
int(具体的には、0.1秒)が経過した後、再び、今度は、
T
Inf(2)=9.9秒
として、指定識別符号及び表示時間情報T
Inf(2)を送出する。これを、T
Inf=0(秒)となるまで、繰り返す。
【0196】
制御装置618においては、指定識別符号及びデータ識別符号を受信すると、送られてきた指定識別符号とデータ識別符号が一致する文字データを記憶手段から読み出す。そして、送られてきた表示時間情報T
Infに相当する時間の間、この文字データに基づく画像を画像形成装置111,211において表示する。ここで、画像形成装置111,211において画像の表示が開始された場合には、それ以降に外部(送信装置651)から同じ指定識別符号及び異なる表示時間情報T
Infが制御装置618に送られてきても、制御装置618はこれらの指定識別符号及び表示時間情報T
Infを無視して、画像を表示し続ける。このような動作にあっては、制御装置618において、フラグ(受信完了フラグ)を立てればよい。一方、第1回目から第(m’−1)回目まで、送信装置651からの指定識別符号及び/又は表示時間情報T
Infの受信に制御装置618が何らかの理由で失敗し、第m’回目に、初めて、送信装置651からの指定識別符号及び表示時間情報T
Inf(m’)の受信に制御装置618が成功した場合、
T
Inf(m’)=T
total−(m’−1)×T
int
の時間の間、文字データに基づく画像を画像形成装置111,211において表示する。
【0197】
このように、実施例16にあっては、外部から送られてきた指定識別符号及び/又は表示時間情報の受信が制御装置18において失敗した場合でも、再度、あるいは、繰り返し、指定識別符号及び表示時間情報の受信を試行することができる。それ故、指定識別符号及び表示時間情報を確実に受信することができる。その結果、例えば、複数の表示装置において指定識別符号及び表示時間情報を受信する場合でも、複数の表示装置において、確実に、同時に同じ画像の表示が可能となるし、表示装置において画像が表示できないという問題の発生を確実に回避することができる。
【0198】
実施例16においては、更に、輝度情報によって輝度を制御した状態で、画像を画像形成装置111,211において表示することができる。具体的には、指定識別符号及び表示時間情報に加え、光学装置において表示すべき画像の輝度情報を、外部(送信装置651)から表示装置に送出することで、表示される画像の視認性を高めることができる。
【0199】
尚、実施例16にあっては(あるいは後述する実施例17〜実施例19の表示装置にあっては、必要に応じて)、
制御装置18に備えられた記憶手段には、画像(例えば、字幕)を表示するための複数の文字データから構成されたデータ群が記憶されており、
データ群を構成する各文字データにはデータ識別符号が付されており、
制御装置18は、外部から所定の時間間隔で送られてきた指定識別符号及び表示時間情報を受け取り、送られてきた指定識別符号とデータ識別符号が一致する文字データを記憶手段から読み出し、
送られてきた表示時間情報に相当する時間の間、この文字データに基づく画像が画像形成装置において表示される構成とすることができる。
【実施例17】
【0200】
実施例17は、本開示における第3Bの表示装置に関する。実施例17にあっては、実施例16において説明した表示装置、画像表示装置を適用することができる。但し、実施例17においては、観察対象物と表示装置との間の距離を設定するために、制御装置618に切換えボタン(
図31の(B)参照)やスイッチが設けられている。そして、観察者(観客)の座る座席に応じて、手動にて、即ち、切換えボタンやスイッチを操作することで、表示装置から観察対象物までの距離を設定する。一例として、表示装置から観察対象物までの距離として、「近距離」、「中距離」、「遠距離」、「遠々距離」といった4種類の距離の設定を例示することができる。
【0201】
実施例17の表示装置にあっては、実施例16と同様に、制御装置618に備えられた記憶手段には、複数の文字データから構成されたデータ群が記憶されており、データ群を構成する各文字データにはデータ識別符号が付されている。
【0202】
但し、実施例16と異なり、各文字データは、表示サイズが異なる複数の異サイズ・表示データから構成されている。具体的には、実施例17にあっては、表示サイズが異なる表示データとして、フォントサイズの異なる文字列を画像とした画像データとする。尚、1つの異サイズ・表示データのデータ構造は、
図30に示したと同様とすることができ、各文字データには、実施例16と同様に、データ識別符号が付されている。
【0203】
実施例17にあっても、実施例16と同様に、外部(送信装置651)から指定識別符号が制御装置618に送られる。そして、制御装置618において、送られてきた指定識別符号とデータ識別符号が一致する文字データの内、観察対象物と表示装置との間の距離に依存して、具体的には、制御装置618に設けられた切換えボタンやスイッチを操作することで設定された表示装置から観察対象物までの距離に依存して、複数の異サイズ・表示データから1つの異サイズ・表示データを記憶手段から読み出し、この1つの異サイズ・表示データに基づく画像を画像形成装置において表示する。
【0204】
実施例17にあっても、実施例16と同様に、外部(送信装置651)から指定識別符号及び表示時間情報T
Infが所定の時間間隔T
intで制御装置618に送られ、送られてきた表示時間情報T
Infに相当する時間の間、画像を画像形成装置において表示する画像表示方法とすることもできる。
【0205】
表示装置から観察対象物までの距離情報が、外部から表示装置に無線によって送出される構成とすることもできる。あるいは又、表示装置から観察対象物までの距離を測定する距離測定装置を表示装置は更に備えており、距離測定装置によって距離情報を得る構成とすることもできる。距離測定装置として、例えば、撮像装置を、オートフォーカス機能付き撮像装置(パッシブ方式の距離測定装置を有する撮像装置)とすればよい。
【0206】
このように、実施例17の表示装置にあっては、制御装置18において、送られてきた指定識別符号とデータ識別符号が一致する文字データの内、観察対象物と表示装置との間の距離に依存して、複数の異サイズ・表示データから1つの異サイズ・表示データを記憶手段から読み出し、この1つの異サイズ・表示データに基づく画像を画像形成装置において表示するので、観察対象物の目視される大きさと画像の大きさとの間に不釣り合いが生じ難い。
【0207】
尚、実施例17の表示装置にあっては、
制御装置18に備えられた記憶手段には、複数の文字データから構成されたデータ群が記憶されており、
データ群を構成する各文字データにはデータ識別符号が付されており、
各文字データは、表示サイズが異なる複数の異サイズ・表示データから構成されており、
制御装置18は、外部から送られてきた指定識別符号を受け取り、送られてきた指定識別符号とデータ識別符号が一致する文字データの内、観察対象物と表示装置との間の距離に依存して、複数の異サイズ・表示データから1つの異サイズ・表示データを記憶手段から読み出し、
この1つの異サイズ・表示データに基づく画像が画像形成装置において表示される構成とすることができる。
【0208】
また、実施例16にて説明した表示装置と実施例17にて説明した表示装置とを組み合わせることができる。即ち、実施例16にて説明した表示装置において、
各文字データは、表示サイズが異なる複数の異サイズ・表示データから構成されており、
制御装置18は、送られてきた指定識別符号とデータ識別符号が一致する文字データの内、観察対象物と表示装置との間の距離に依存して、複数の異サイズ・表示データから1つの異サイズ・表示データを記憶手段から読み出し、
この1つの異サイズ・表示データに基づく画像が画像形成装置において表示される構成とすることができる。
【実施例18】
【0209】
実施例18は、本開示における第3Cの表示装置に関する。実施例18にあっても、実施例16において説明した表示装置、画像表示装置を適用することができる。そして、実施例18の表示装置にあっても、実施例16と同様に、制御装置618に備えられた記憶手段には、複数の文字データから構成されたデータ群が記憶されており、データ群を構成する各文字データにはデータ識別符号が付されている。
【0210】
但し、実施例16と異なり、各文字データは、表示言語が異なる複数の異言語・表示データから構成されている。例えば、言語として、中国語、韓国語、英語等を挙げることができる。具体的には、実施例18にあっては、表示言語が異なるが異なる表示データとして、異なる言語の文字列を画像とした画像データとする。尚、1つの異言語・表示データのデータ構造は、
図30に示したと同様とすることができ、各文字データには、実施例16と同様に、データ識別符号が付されている。
【0211】
実施例18にあっても、実施例16と同様に、外部(送信装置651)から指定識別符号が制御装置618に送られる。そして、制御装置618において、送られてきた指定識別符号とデータ識別符号が一致する文字データの内、複数の異言語・表示データから1つの異言語・表示データを記憶手段から読み出し、この1つの異言語・表示データに基づく画像を画像形成装置において表示する。制御装置618に切換えボタン(
図31の(B)参照)やスイッチを設け、手動にて表示言語を選択すればよい。
【0212】
このように、実施例18の表示装置にあっては、制御装置18において、送られてきた指定識別符号とデータ識別符号が一致する文字データの内、複数の異言語・表示データから1つの異言語・表示データを記憶手段から読み出し、この1つの異言語・表示データに基づく画像を画像形成装置において表示するので、観察者(観客)の使用する言語での画像表示を容易に行うことができる。
【0213】
実施例18にあっても、実施例16にて説明した表示装置を適用することができる。具体的には、実施例18において、実施例16と同様に、制御装置618において、送られてきた指定識別符号とデータ識別符号が一致する文字データの内、複数の異言語・表示データから1つの異言語・表示データを記憶手段から読み出し、この1つの異言語・表示データに基づく画像を画像形成装置において表示する。即ち、外部(送信装置651)から指定識別符号及び表示時間情報T
Infが所定の時間間隔T
intで制御装置618に送られ、送られてきた表示時間情報T
Infに相当する時間の間、画像を画像形成装置において表示する。
【0214】
また、実施例18の表示装置と実施例17の表示装置とを組み合わせることもできる。即ち、各異サイズ・表示データは、表示言語が異なる複数の異言語・表示データから構成されており、制御装置618において、送られてきた指定識別符号とデータ識別符号が一致する文字データの内、観察対象物と表示装置との間の距離に依存して、複数の異サイズ・表示データから1つの異サイズ・表示データを選択し、更に、この1つの異サイズ・表示データにおいて、複数の異言語・表示データから1つの異言語・表示データを記憶手段から読み出し、この1つの異言語・表示データに基づく画像を画像形成装置において表示してもよい。そして、この場合、外部(送信装置651)から指定識別符号及び表示時間情報T
Infが所定の時間間隔T
intで制御装置618に送られ、送られてきた表示時間情報T
Infに相当する時間の間、画像を画像形成装置において表示する。
【0215】
尚、実施例18の表示装置にあっては、
制御装置18に備えられた記憶手段には、複数の文字データから構成されたデータ群が記憶されており、
データ群を構成する各文字データにはデータ識別符号が付されており、
各文字データは、表示言語が異なる複数の異言語・表示データから構成されており、
制御装置18は、外部から送られてきた指定識別符号を受け取り、送られてきた指定識別符号とデータ識別符号が一致する文字データの内、複数の異言語・表示データから1つの異言語・表示データを記憶手段から読み出し、
この1つの異言語・表示データに基づく画像が画像形成装置において表示される構成とすることができる。
【0216】
また、実施例16にて説明した表示装置と実施例18にて説明した表示装置とを組み合わせることができる。即ち、実施例16にて説明した表示装置において、
各文字データは、表示言語が異なる複数の異言語・表示データから構成されており、
制御装置18は、送られてきた指定識別符号とデータ識別符号が一致する文字データの内、複数の異言語・表示データから1つの異言語・表示データを記憶手段から読み出し、
この1つの異言語・表示データに基づく画像が画像形成装置において表示される構成とすることができる。
【0217】
また、実施例17にて説明した表示装置と実施例18にて説明した表示装置とを組み合わせることができる。即ち、実施例17にて説明した表示装置において、
各異サイズ・表示データは、表示言語が異なる複数の異言語・表示データから構成されており、
制御装置18は、送られてきた指定識別符号とデータ識別符号が一致する文字データの内、観察対象物と表示装置との間の距離に依存して、複数の異サイズ・表示データから1つの異サイズ・表示データを選択し、更に、この1つの異サイズ・表示データにおいて、複数の異言語・表示データから1つの異言語・表示データを記憶手段から読み出し、
この1つの異言語・表示データに基づく画像が画像形成装置において表示される構成とすることができる。
【0218】
また、実施例16にて説明した表示装置と実施例17、実施例18にて説明した表示装置とを組み合わせることができる。即ち、実施例16にて説明した表示装置において、
各異サイズ・表示データは、表示言語が異なる複数の異言語・表示データから構成されており、
制御装置18は、送られてきた指定識別符号とデータ識別符号が一致する文字データの内、観察対象物と表示装置との間の距離に依存して、複数の異サイズ・表示データから1つの異サイズ・表示データを選択し、更に、この1つの異サイズ・表示データにおいて、複数の異言語・表示データから1つの異言語・表示データを記憶手段から読み出し、
この1つの異言語・表示データに基づく画像が画像形成装置において表示される構成とすることができる。
【実施例19】
【0219】
実施例19は、本開示における第3Dの表示装置に関する。実施例19にあっても、実施例16において説明した表示装置、画像表示装置を適用することができる。
【0220】
そして、実施例19の表示装置にあっても、実施例16と同様に、制御装置618に備えられた記憶手段には、複数の文字データから構成されたデータ群が記憶されており、データ群を構成する各文字データにはデータ識別符号が付されている。尚、各文字データは、実施例16にて説明したと同様のデータ構造を有し、実施例16と同様に、データ識別符号が付されている。
【0221】
実施例19にあっても、実施例16と同様に、外部(送信装置651)から指定識別符号が制御装置618に送られる。そして、制御装置618において、送られてきた指定識別符号とデータ識別符号が一致する文字データを記憶手段から読み出し、観察対象物と表示装置との間の距離に依存してデータ処理を行うことで、輻輳角を制御した状態でこの文字データに基づく画像を画像形成装置において表示する。尚、表示装置から観察対象物までの距離に基づき、少なくとも一方の画像表示装置を構成する画像形成装置への文字データに対する画像処理を行えばよいが、実施例19においては、両方の画像表示装置を構成する画像形成装置への文字データに対する画像処理を行う。
【0222】
即ち、実施例19の表示装置にあっては、
制御装置18に備えられた記憶手段には、複数の文字データから構成されたデータ群が記憶されており、
データ群を構成する各文字データにはデータ識別符号が付されており、
制御装置18は、外部から送られてきた指定識別符号を受け取り、送られてきた指定識別符号とデータ識別符号が一致する文字データを記憶手段から読み出し、観察対象物と表示装置との間の距離に依存してデータ処理を行い、
輻輳角を制御した状態で、この文字データに基づく画像が画像形成装置において表示される構成とすることができる。
【0223】
実施例19にあっても、実施例16にて説明した表示装置を適用することができる。具体的には、実施例19において、実施例16と同様に、制御装置618において、送られてきた指定識別符号とデータ識別符号が一致する文字データを記憶手段から読み出し、この文字データに基づく画像を画像形成装置において表示するが、外部(送信装置651)から指定識別符号及び表示時間情報T
Infが所定の時間間隔T
intで制御装置618に送られ、送られてきた表示時間情報T
Infに相当する時間の間、画像を画像形成装置において表示する。
【0224】
また、実施例17にて説明した表示装置と実施例19にて説明した表示装置とを組み合わせることができる。即ち、実施例17にて説明した表示装置において、
各文字データは、表示サイズが異なる複数の異サイズ・表示データから構成されており、
制御装置18は、送られてきた指定識別符号とデータ識別符号が一致する文字データの内、観察対象物と表示装置との間の距離に依存して、複数の異サイズ・表示データから1つの異サイズ・表示データを記憶手段から読み出し、観察対象物と表示装置との間の距離に依存したデータ処理を行い、
輻輳角を制御した状態で、この1つの異サイズ・表示データに基づく画像が画像形成装置において表示される構成とすることができる。
【0225】
また、実施例17にて説明した表示装置と実施例18、実施例19にて説明した表示装置とを組み合わせることができる。即ち、実施例17にて説明した表示装置において、
各異サイズ・表示データは、表示言語が異なる複数の異言語・表示データから構成されており、
制御装置18は、送られてきた指定識別符号とデータ識別符号が一致する文字データの内、観察対象物と表示装置との間の距離に依存して、複数の異サイズ・表示データから1つの異サイズ・表示データを選択し、更に、この1つの異サイズ・表示データにおいて、複数の異言語・表示データから1つの異言語・表示データを記憶手段から読み出し、観察対象物と表示装置との間の距離に依存したデータ処理を行い、
輻輳角を制御した状態で、この1つの異言語・表示データに基づく画像が画像形成装置において表示される構成とすることができる。
【0226】
また、実施例18にて説明した表示装置と実施例19にて説明した表示装置とを組み合わせることができる。即ち、実施例18にて説明した表示装置において、
各文字データは、表示言語が異なる複数の異言語・表示データから構成されており、
制御装置18は、送られてきた指定識別符号とデータ識別符号が一致する文字データの内、観察対象物と表示装置との間の距離に依存して、複数の異言語・表示データから1つの異言語・表示データを記憶手段から読み出し、観察対象物と表示装置との間の距離に依存したデータ処理を行い、
輻輳角を制御した状態で、この1つの異言語・表示データに基づく画像が画像形成装置において表示される構成とすることができる。
【実施例20】
【0227】
実施例20も、実施例1〜実施例11の表示装置の変形であり、具体的には、本開示における第2Aの表示装置、より具体的には、字幕を表示する表示装置(字幕表示装置)に関する。実施例20の表示装置における表示装置及び画像表示装置の概念図を
図35の(A)、(B)に示す。尚、画像形成装置の光軸と光学系の光軸を水平方向(X軸方向)に移動させる前の状態を模式的に
図35の(A)に示し、移動させた後の状態を模式的に
図35の(B)に示す。また、実施例20の表示装置において、画像表示装置を構成する導光板における光の伝播を模式的に
図36に示す。尚、実施例20の表示装置を使用している状態の概念図は
図20及び
図21に示したと同様であるし、実施例20の表示装置を構成する制御装置の概念図は
図22に示したと同様である。更には、実施例20における画像信号の一例は、
図23の(A)に示したと同様である。
【0228】
実施例20の表示装置(字幕表示装置)あるいは後述する実施例21〜実施例25の表示装置にあっては、観察者の観察位置に依存して、移動装置40を作動させ、回動装置43を作動させ、液体レンズ44を作動させ、液体プリズム45を作動させるが、これらの作動は、観察者の観察位置情報(あるいは、左右の画像シフト量)に基づき、制御装置18からの制御信号によって制御される。ここで、観察者の観察位置情報として、例えば、映画館や劇場等において観察者(観客)が着席する座席の位置や劇場情報を例示することができる。
【0229】
そして、実施例20あるいは後述する実施例21の表示装置100,200,300,400,500においては、移動装置40によって画像形成装置111(111A,111B),211の光軸と光学系112,254の光軸とを水平方向(X軸方向)に相対的に移動させる。具体的には、
図35の(A)、(B)及び
図36に概念図を示すように、2つの画像表示装置100,200,300,400,500のそれぞれにおける画像形成装置111,211の光軸と光学系112,254の光軸の位置を水平方向(X軸方向)に相対的に移動させればよい。即ち、画像形成装置111,211及び光学系112,254のいずれか一方(例えば、光学系112,254)を、ラックギア部から構成された移動用ガイド部42に載置し、画像形成装置111,211及び光学系112,254のいずれか一方(例えば、光学系112,254)を、モータ及びピニオンギア41によって移動用ガイド部42上を移動させる。あるいは、画像形成装置及び光学系のいずれか一方を移動用ガイド部に載置し、画像形成装置及び光学系のいずれか一方を圧電素子や超音波モータによって移動用ガイド部上を移動させればよい。このような構成にあっては、光学系112,254から出射され、光学装置120,320,520に入射する平行光の光学装置120,320,520に対するYZ平面・入射角に変化が生じる。即ち、YZ平面に対する光学系112,254の光軸の角度に変化が生じる。尚、
図36において、画像形成装置111,211の光軸と光学系112,254の光軸を水平方向(X軸方向)に移動させる前の中心入射光線を実線で示し、移動させた後の中心入射光線を点線で示す。ここで、
図35の(A)から
図35の(B)に示す状態に画像形成装置111,211、光学系112,254を移動させることで、輻輳角の値は大きくなり、虚像距離は短くなる。即ち、虚像が観察者(観客)に近づく。即ち、例えば、
図19における点「A」が所望の位置となるように、画像形成装置111,211又は光学系112,254を水平方向(X軸方向)に相対的に移動させる。尚、画像形成装置111,211の移動にあっては、画像形成装置111,211の全体を移動させてもよいし、画像形成装置111,211の構成要素の一部(例えば、液晶表示装置151や走査手段253等)を移動させてもよい。
【0230】
ここで、観察者の観察位置に関する情報(観察者の観察位置情報)が、例えば、予め、パーソナルコンピュータから表示装置に与えられている。あるいは又、例えば、チケットに印刷されたバーコード形式の座席情報や劇場情報、携帯電話に表示されたチケット情報に含まれる座席情報や劇場情報を適切な手段・方法で読み取り、座席情報や劇場情報に基づく観察者の観察位置情報を適切な手段によって表示装置に与えてもよい。そして、この観察者の観察位置情報に基づき、制御装置18は、モータ及びピニオンギア41等を作動させて、画像形成装置111,211及び/又は光学系112,254を水平方向(X軸方向)に相対的に移動させることで、輻輳角を調整する。具体的には、例えば、表示装置から観察対象物までの距離が遠くなるほど、輻輳角を小さくすればよい。表示装置から観察対象物までの距離が無限大のとき、輻輳角は0度である。
【0231】
このように、観察位置情報(あるいは、左右の画像シフト量)に基づき、右眼用及び左眼用の2つの画像表示装置100,200,300,400,500によって得られる2つの画像を移動させることで、虚像を所望の位置に配することができる。即ち、画像表示装置100,200,300,400,500を構成する光学装置120,320,520において表示される2つの画像の水平方向の距離(間隔)、あるいは、YZ平面・入射角を調整することで、表示装置から観察対象物までの距離に対応した輻輳角の調整を行うことができる。
【実施例21】
【0232】
実施例21は、本開示における第2Bの表示装置に関する。実施例21の表示装置の概念図を
図37の(A)及び(B)に示す。実施例21の表示装置にあっては、少なくとも一方の画像表示装置(実施例21にあっては、右眼用及び左眼用の2つの画像表示装置のそれぞれ)は、画像形成装置111,211及び光学系112,254を回動させる回動装置43を更に備えており、観察者の観察位置に依存して、回動装置43によって画像形成装置111,211及び光学系112,254を回動させることで、光学系112,254から出射され、光学装置120,320に入射する平行光の光学装置120,320に対する入射角(YZ平面・入射角)を変更し、即ち、YZ平面に対する光学系112,254の光軸の角度を変更し、以て、輻輳角(水平面における主光線交差角)を調整する。ここで、
図37の(A)から
図37の(B)に示す状態に画像形成装置111,211、光学系112,254を移動させることで、輻輳角の値は大きくなり、虚像距離は短くなる。即ち、虚像が観察者(観客)に近づく。
【0233】
尚、回動装置43によって画像形成装置111,211及び光学系112,254を回動させるが、具体的には、2つの画像表示装置のそれぞれにおける画像形成装置111,211の光軸と光学系112,254の光軸との位置関係を固定したまま、少なくとも一方の画像表示装置を、適切な位置に配置したZ軸を回動軸として、圧電素子やモータ、超音波モータを作動させることで、回動させればよい。このような形態にあっては、光学系112,254から出射され、光学装置120,320に入射する平行光の光学装置120,320に対するYZ平面・入射角に変化が生じる。即ち、YZ平面に対する光学系112,254の光軸の角度に変化が生じる。場合によっては、光学装置120,320も併せて回動させてもよい。
【実施例22】
【0234】
実施例22は、本開示における第2Cの表示装置に関する。実施例22の表示装置にあっては、少なくとも一方の画像表示装置(実施例22にあっては、右眼用及び左眼用の2つの画像表示装置のそれぞれ)を構成する光学系112,254は液体レンズ44を備えており、観察者の観察位置に依存して、液体レンズ44の作動によって輻輳角(水平面における主光線交差角)を調整する。光学系112,254を構成する係る液体レンズ44は、エレクトロウェッティング現象を利用した周知の液体レンズから構成されている。液体レンズ44の作動によって、光学系112,254の光軸とY軸との関係を一定に保持したまま、光学系112,254の光軸を水平方向(X軸方向)に移動させることができるし、あるいは又、YZ平面に対する光学系の光軸の角度を変更することができる。これによって、光学系112,254から出射され、光学装置120,320に入射する平行光の光学装置120,320に対するYZ平面・入射角に変化が生じる。即ち、YZ平面に対する光学系112,254の光軸の角度に変化が生じる。
【0235】
液体レンズ44の原理を、
図38及び
図39の原理図を参照して説明する。尚、
図38の(A)は、
図38の(B)の矢印A−Aに沿った模式的な断面図であり、
図38の(B)は、
図38の(A)の矢印B−Bに沿った模式的な断面図(但し、第1の液体の図示は省略)であり、
図38の(C)、
図39の(A)〜(C)は、
図38の(A)の矢印C−Cに沿った模式的な断面図である。尚、液体レンズのxy平面で切断したときの形状は模式的な形状であり、実際の形状とは異なっている。
【0236】
図38及び
図39に示す原理図を示す液体レンズ(便宜上、『原理的液体レンズ』と呼ぶ)は、ハウジングを備えている。このハウジングは、
第1側面部材51、
第1側面部材51と対向した第2側面部材52、
第1側面部材51の一端部と第2側面部材52の一端部とを結ぶ第3側面部材53、
第1側面部材51の他端部と第2側面部材52の他端部とを結ぶ第4側面部材54、
第1側面部材51、第2側面部材52、第3側面部材53及び第4側面部材54の頂面に取り付けられた天板55、及び、
第1側面部材51、第2側面部材52、第3側面部材53及び第4側面部材54の底面に取り付けられた底板56、
から成り、このハウジングによって1つのレンズ室が構成されている。レンズ室は、軸線が第1側面部材51及び第2側面部材52の延びる方向(z方向)に延びる円柱レンズとしての液体レンズを構成する第1の液体65及び第2の液体66によって占められている。
【0237】
そして、天板55の部分の内面には、液体レンズを構成する第1電極(以下、単に、『第1電極61』と呼ぶ)が設けられており、第1側面部材51の内面には、液体レンズを構成する第2電極(以下、単に、『第2電極62』と呼ぶ)が設けられており、第2側面部材52の内面には、液体レンズを構成する第3電極(以下、単に、『第3電極63』と呼ぶ)が設けられている。ここで、
図38に示す状態にあっては、第1電極61、第2電極62、第3電極63には電圧を印加していない。
【0238】
この状態から、第1電極61、第2電極62、第3電極63に適切な電圧を印加すると、
図39の(A)、(B)あるいは(C)に示す状態に第1の液体65と第2の液体66の界面の状態が変化する。ここで、
図39の(A)に示す状態は、第2電極62と第3電極63に同じ電圧を印加したときの状態を示し、レンズ室内で形成される液体レンズのxy平面で切断したときの形状は、光軸OAに対して対称である。また、
図39の(B)及び(C)に示す状態は、第2電極62と第3電極63に異なる電圧を印加したときの状態を示し、レンズ室内で形成される液体レンズのxy平面で切断したときの形状は、光軸OAに対して非対称である。尚、第2電極62と第3電極63との間の電位差は、
図39の(C)に示す状態の方が、
図39の(B)に示す状態よりも大きい。
図39の(B)及び(C)に示すように、第2電極62と第3電極63との間の電位差に応じて、液体レンズの光学パワーを変化させることができるし、液体レンズの光軸OA(点線で表示する)をz方向と直交するy方向に移動させることができる。あるいは又、これらの原理図に示す液体レンズを複数、並置し、各液体レンズの第2電極62と第3電極63に印加する電圧を適切に制御することで、液体レンズ全体としての光軸を移動させることができるし、液体レンズ全体としての光軸の傾きを変化させることができるし、液体レンズ全体としてフレネルレンズを構成することができる。
【0239】
実施例22における実用的な液体レンズ44の模式的な断面図を、
図40及び
図41の(A)〜(C)、
図42の(A)〜(B)に示す。尚、
図40は、
図38の(B)の矢印A−Aに沿ったと同様の模式的な断面図であり、
図41の(A)〜(C)、
図42の(A)〜(B)は、
図40の矢印C−Cに沿った模式的な断面図である。また、
図40の矢印B−Bに沿った模式的な断面図は、
図38の(B)に示したと同様である。
【0240】
液体レンズ44は、
(A)第1側面部材51、
第1側面部材51と対向した第2側面部材52、
第1側面部材51の一端部と第2側面部材52の一端部とを結ぶ第3側面部材53、
第1側面部材51の他端部と第2側面部材52の他端部とを結ぶ第4側面部材54、
第1側面部材51、第2側面部材52、第3側面部材53及び第4側面部材54の頂面に取り付けられた天板55、及び、
第1側面部材51、第2側面部材52、第3側面部材53及び第4側面部材54の底面に取り付けられた底板56、
を備えたハウジング50、並びに、
(B)それぞれが、第1側面部材51と第2側面部材52との間に平行に配置された、(M−1)個の隔壁部材57、
を備えている。
【0241】
そして、実施例22における液体レンズ44にあっては、M個(=5個)のレンズ室58(58
1,58
2,58
3,58
4,58
5)が並置されている。ここで、各レンズ室58(58
1,58
2,58
3,58
4,58
5)は、軸線が隔壁部材57の延びる方向と平行な方向(z方向)である円柱レンズとしての液体レンズを構成する第1の液体65及び第2の液体66によって占められている。
【0242】
第1番目のレンズ室58
1は、第1側面部材51、第3側面部材53、第1番目の隔壁部材57、第4側面部材54、天板55、及び、底板56から構成されている。そして、第1番目のレンズ室58
1を構成する天板55の部分の内面には、第1電極61が設けられており、第1番目のレンズ室58
1を構成する第1側面部材51の部分の内面には、第2電極62が設けられており、第1番目のレンズ室58
1を構成する第1番目の隔壁部材57の部分の内面には、第3電極63が設けられている。
【0243】
また、第(m+1)番目のレンズ室58
(m+1)は、第m番目(但し、m=1,2・・・M−2)の隔壁部材57、第3側面部材53、第(m+1)番目の隔壁部材57、第4側面部材54、天板55、及び、底板56から構成されている。そして、第(m+1)番目のレンズ室58
(m+1)を構成する天板55の部分の内面には、第1電極61が設けられており、第(m+1)番目のレンズ室58
(m+1)を構成する第m番目の隔壁部材57の部分の内面には、第2電極62が設けられており、第(m+1)番目のレンズ室58
(m+1)を構成する第(m+1)番目の隔壁部材57の部分の内面には、第3電極63が設けられている。
【0244】
更には、第M番目のレンズ室58
M(=58
5)は、第(M−1)番目の隔壁部材57、第3側面部材53、第2側面部材52、第4側面部材54、天板55、及び、底板56から構成されている。そして、第M番目のレンズ室58
M(=58
5)を構成する天板55の部分の内面には、第1電極61が設けられており、第M番目のレンズ室58
M(=58
5)を構成する第(M−1)番目の隔壁部材57の部分の内面には、第2電極62が設けられており、第M番目のレンズ室58
M(=58
5)を構成する第2側面部材52の部分の内面には、第3電極63が設けられている。
【0245】
尚、図示した例では、各レンズ室毎に第1電極61が設けられているが、天板55の内面に1枚の第1電極61を設けてもよい。
【0246】
実施例22における液体レンズ44にあっては、少なくとも第1の液体65と第2の液体66との界面が位置する第1側面部材51、第2側面部材52及び隔壁部材57のそれぞれの表面には、撥水処理が施されている。また、隔壁部材57の底面は底板56まで延びており、隔壁部材57の頂面は天板55まで延びている。ハウジング50の外形形状は、z方向に長辺、y方向に短辺を有する矩形形状である。そして、底板56から光が入射し、天板55から光が出射する。
【0247】
第1の液体65と第2の液体66とは、不溶、不混合であり、第1の液体65と第2の液体66との界面がレンズ面を構成する。ここで、第1の液体65は導電性を有し、第2の液体66は絶縁性を有し、第1電極61は第1の液体65と接しており、第2電極62は絶縁膜64を介して第1の液体65及び第2の液体66と接しており、第3電極63は絶縁膜64を介して第1の液体65及び第2の液体66と接している。また、天板55、底板56、及び、第1電極61は、液体レンズ44に入射する光に対して透明な材料から構成されている。
【0248】
より具体的には、天板55、底板56、第1側面部材51、第2側面部材52、第3側面部材53、第4側面部材54及び隔壁部材57は、ガラス、あるいは、アクリル系樹脂等の樹脂から作製されている。また、導電性を有する第1の液体65は塩化リチウム水溶液から成り、密度は1.06グラム/cm
3であり、屈折率は1.34である。一方、絶縁性を有する第2の液体66はシリコーンオイル(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製TSF437)から成り、密度は1.02グラム/cm
3であり、屈折率は1.49である。また、第1電極61はITOから成り、第2電極62及び第3電極63は、例えば、金、アルミニウム、銅、銀等の金属電極から成る。更には、絶縁膜64は、ポリパラキシレンや酸化タンタル、酸化チタン等の金属酸化物から成る。尚、絶縁膜64の上に撥水処理層(図示せず)が設けられている。撥水処理層はポリパラキシリレンやフッ素系のポリマーから成る。第1電極61の表面に親水処理を施し、第3側面部材53や第4側面部材54の内面に撥水処理を施すことが好ましい。
【0249】
そして、実施例22にあっては、光学系112,254を構成するために、
図40に示した液体レンズ44を2つ、重ね合わせる。具体的には、下側の液体レンズ44のy方向と、上側の液体レンズ44のy方向とが直交するように、しかも、下側の液体レンズ44のz方向と、上側の液体レンズ44のz方向とが直交するように、重ね合わせる。そして、例えば、下側の液体レンズ44のy方向がX軸方向と平行となり、x方向がY軸の方向と平行となるように、重ね合わせた2つの液体レンズ44を、
図1に示した光学系112の所に配置させる。
【0250】
第1電極61、第2電極62及び第3電極63は、図示しない接続部を介して、外部の制御回路に接続され、所望の電圧が印加される構成、構造となっている。そして、第1電極61、第2電極62及び第3電極63に電圧を印加すると、第1の液体65と第2の液体66との界面によって構成されたレンズ面が、
図41の(A)に示す下に凸の状態から、
図41の(B)に示す上に凸の状態に向かって変化する。レンズ面の変化状態は、Lippman-Young の式に基づき、電極61,62,63に印加する電圧によって変化する。
図41の(B)に示した例においては、第2電極62と第3電極63に同じ電圧を印加している。それ故、レンズ室内で形成される液体レンズのxy平面で切断したときの形状は、液体レンズの光軸に対して対称である。重ね合わせた2つの液体レンズ44の内、上側の液体レンズ44に対して、このような制御を行えばよい。
【0251】
また、
図41の(C)、
図42の(A)及び(B)に示す状態は、第2電極62と第3電極63とに異なる電圧を印加したときの状態を示すが、レンズ室内で形成される液体レンズのxy平面で切断したときの形状は、液体レンズの光軸に対して非対称である。ここで、
図41の(C)に示す状態にあっては、液体レンズ44としてフレネルレンズが構成される。重ね合わせた2つの液体レンズ44の内、上側の液体レンズ44に対して、このような制御を行ってもよい。
【0252】
一方、
図42の(A)及び(B)に示す状態にあっては、液体レンズの光軸をz方向と直交するy方向(X軸方向)に移動させている。
図42の(A)あるいは(B)に示す状態とすることで、液体レンズ44から出射された光の進行方向を変化させることができるし、あるいは又、液体レンズ44全体としての光軸のx方向に対する傾きを制御することができる。即ち、重ね合わせた2つの液体レンズ44の内、下側の液体レンズ44に対して、このような制御を行うことで、液体レンズの光軸をX軸方向に移動させることができるし、あるいは又、液体レンズの光軸をY軸方向に対して傾けることができる。そして、第2電極62と第3電極63との間の電位差に応じて、液体レンズの光学パワーを変化させることができる。ここで、
図42の(A)に示す状態にあっては、各第2電極62には同じ電圧を印加し、各第3電極63には同じ電圧を印加している。一方、
図42の(B)に示す状態にあっては、第2電極62及び第3電極63毎に異なる電圧を印加しており、液体レンズ44全体として一種のフレネルレンズが構成される。
【0253】
尚、第1電極61、第2電極62及び第3電極63に電圧を印加し、円柱レンズが光学パワーを発揮しているとき、xz平面(あるいは、xz平面と平行な平面)における円柱レンズの光学パワーは実質的に0であり、xy平面における円柱レンズの光学パワーは有限の値である。ここで、『液体レンズ全体としての光軸』とは、液体レンズ44をxy平面において切断したときに液体レンズ44全体として得られる仮想レンズ(液体レンズ44全体としての1枚のレンズ)の2つの仮想光学表面の曲率中心を結んだ線である。
【0254】
第2電極62を共通の配線に接続し、第3電極63を共通の配線に接続し、各第2電極62には同じ電圧を印加し、各第3電極63には同じ電圧を印加する構成とすることができる。あるいは又、第2電極62を共通の配線に接続し、第3電極63を個別の配線に接続して個別に異なる電圧を印加する構成とすることもできるし、第3電極63を共通の配線に接続し、第2電極62を個別の配線に接続して個別に異なる電圧を印加する構成とすることもできるし、第2電極62、第3電極63共、個別の配線に接続して個別に異なる電圧を印加する構成とすることもできる。
【実施例23】
【0255】
実施例23は、本開示における第2Dの表示装置に関する。実施例23の表示装置にあっては、少なくとも一方の画像表示装置(実施例23にあっては、右眼用及び左眼用の2つの画像表示装置のそれぞれ)を構成する光学系112,254は液体プリズム45を備えており、観察者の観察位置に依存して、液体プリズム45の作動によって輻輳角(水平面における主光線交差角)を調整する。光学系112,254の一部を構成する係る液体プリズム45は、エレクトロウェッティング現象を利用した周知の液体プリズムから構成されている。液体プリズム45の作動によって、YZ平面に対する光学系112,254の光軸の角度を変更することができる。このような形態にあっては、光学系112,254から出射され、光学装置120,320に入射する平行光の光学装置120,320に対するYZ平面・入射角に変化が生じる。即ち、YZ平面に対する光学系112,254の光軸の角度に変化が生じる。
【0256】
図43に概念図を示すように、液体プリズム45の構成、構造は、
図38に示した原理的液体レンズと同様の構成、構造とすればよいので、詳細な説明は省略するが、原理的液体レンズと異なる点は、第1の液体65と第2の液体66との界面によってレンズ面が構成されるのではなく、プリズムの平坦な斜面が構成される点にあり、このような構成は、第1の液体65と第2の液体66との適切な選択によって達成することができる。そして、液体プリズム45を、例えば、
図1に示した表示装置における光学系112と導光板121との間に、y方向がX軸方向と平行となり、x方向がY軸の方向と平行となるように、配置すればよい。
【実施例24】
【0257】
実施例24は、実施例20〜実施例23の表示装置の変形である。実施例24の表示装置にあっては、少なくとも一方の画像表示装置(実施例24においても、右眼用及び左眼用の2つの画像表示装置100,200,300,400,500のそれぞれ)を構成する画像形成装置111(111A,111B),211への画像信号(文字データ、入力画像信号、入力画像データ)を制御することで、実施例20〜実施例23における輻輳角の調整に加えて、観察者の観察位置に依存した更に精密な輻輳角の調整を行い、あるいは又、この少なくとも一方の画像表示装置を構成する光学装置において表示される画像の位置を観察者の観察位置に依存して調整する。尚、実施例24においては、輻輳角の調整と、観察者の観察位置に依存した画像の位置の調整の両方を行うが、いずれか一方のみを行ってもよい。
【0258】
具体的には、無線で(場合によっては有線で)、テスト用の画像信号を制御装置18に送る。そして、制御装置18において、画像信号に対して画像表示のための処理が行われ、テスト用の画像信号に基づき、画像形成装置111,211において画像(字幕)を生成する。この画像は、光学系112,254、光学装置120,320,520を介して、最終的に、表示装置を装着した観察者(観客)の両眼に到達する。
【0259】
そして、左眼用及び右眼用の画像表示装置100,200,300,400,500によって表示される画像が、所望の位置(例えば、舞台の所望の位置やスクリーン)と一致するように(重なり合うように)、制御装置18を介して、具体的には、制御装置18に配置されたスイッチ(図示せず)を用いて、光学装置120,320,520に表示された画像を左右、上下に移動させ、また、回転移動させる。即ち、例えば、
図19における点「A」が所望の位置となるように、光学装置120,320,520に表示された画像を左右、上下に移動させ、また、回転移動させる。このように、制御装置18に配置されたスイッチの操作によって、画像信号の制御(補正)が行われる。即ち、制御装置18内で表示位置補正信号が生成され、画像信号に表示位置補正信号が加えられる。
【0260】
左眼用及び右眼用の画像表示装置100,200,300,400,500によって表示される画像が、所望の位置において、左右にずれている状態、上下にずれている状態、回転した状態でずれている状態は、
図24の(A)、(B)、(C)に示したと同様である。そして、画像(文字)の移動のためには、実施例12において説明したと同様の操作、処理を行えばよい。こうして、少なくとも一方の画像表示装置100,200,300,400,500を構成する光学装置120,320,520において表示される画像の位置を制御し、以て、2つの画像表示装置100,200,300,400,500における2つの画像の相互の位置を調整することができる。即ち、より精密な輻輳角の調整と、観察者の観察位置に依存した画像の位置の調整の両方を行うことができる。尚、画像形成装置111,211への画像信号に加え、観察者(表示装置)から観察対象物までの観察位置情報(距離情報)が、外部から表示装置に送出される。このような信号のフォーマットの概念図の一例は、
図25の(B)に示したと同様である。
【0261】
このように、画像表示位置を所定の位置から所望の画素分、ずらすことで、より精密な輻輳角の調整を行うことができる。云い換えれば、右眼用及び左眼用の2つの画像表示装置100,200,300,400,500を構成する画像形成装置111,211への画像信号を、表示位置補正信号によって制御することで、表示装置から観察対象物までの距離に対応した、より精密な輻輳角の調整を行うことができ、その結果、観察対象物と観察者(観客)との間の距離と、画像表示装置によって表示される画像(字幕)の虚像距離とを、より精密に等しくすることができる。
【0262】
尚、実施例24あるいは後述する実施例25にあっては、観察者の観察位置に依存して、また、観察対象物と表示装置との間の距離に依存して、制御装置18の制御下、光学装置において表示される表示画面(画像表示領域)の大きさ、表示画面(画像表示領域)の画角、表示画面の解像度を変更してもよい。
【実施例25】
【0263】
実施例25は、実施例20〜実施例24の表示装置の変形である。実施例25の表示装置の基本的な構成、構造は、実施例20〜実施例23の表示装置の基本的な構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【0264】
実施例25の表示装置にあっては、画像形成装置へ画像信号が入力されてから所定の時間が経過した後、画像形成装置における画像形成を停止する。画像形成装置における画像形成を停止するためには、即ち、表示装置における省電力モード等への移行のためには、画像信号に、画像表示装置における画像表示時間を表す信号や、画像形成装置における画像形成の停止を指示する信号を加重する。
【0265】
このような実施例25における画像信号の一例は、
図23の(B)に示したと同様であり、
図23の(A)に示した実施例20における画像信号に、画像表示装置における画像表示時間を表す信号である画像表示時間を示すデータ「TIME」が加わっている。そして、制御装置18においては、実施例13において説明したと同様の処理、操作を行う。このように、実施例25の表示装置にあっては、画像形成装置へ画像信号が入力されてから所定の時間が経過した後、画像形成装置における画像形成を停止する。即ち、所定の時間経過後に表示装置における省電力モード等へ移行するので、表示装置における電力の浪費といった問題が生じることがない。
【0266】
尚、以上に説明した実施例20〜実施例25の表示装置に対して、実施例16〜実施例19において説明した表示装置を適用することができ、これらの場合における表示装置は、本開示における第3Aの表示装置〜第3Dの表示装置に該当する。
【0267】
以上、本開示を好ましい実施例に基づき説明したが、本開示はこれらの実施例に限定するものではない。実施例において説明した表示装置(頭部装着型ディスプレイ)、画像表示装置の構成、構造は例示であり、適宜変更することができる。例えば、導光板に表面レリーフ型ホログラム(米国特許第20040062505A1参照)を配置してもよい。光学装置320にあっては、回折格子素子を透過型回折格子素子から構成することもできるし、あるいは又、第1偏向手段及び第2偏向手段の内のいずれか一方を反射型回折格子素子から構成し、他方を透過型回折格子素子から構成する形態とすることもできる。あるいは又、回折格子素子を、反射型ブレーズド回折格子素子とすることもできる。
【0268】
光学装置の光が出射される領域に、調光装置が着脱自在に配設されていてもよい。このように、調光装置を着脱自在に配設するためには、例えば、透明なプラスチックから作製されたビスを用いて調光装置を光学装置に取り付け、調光装置の光透過率を制御するための制御回路(例えば、画像形成装置を制御するための制御装置18に含まれている)にコネクタ及び配線を介して接続すればよい。
【0269】
実施例20〜実施例25において説明した移動装置、回動装置、液体レンズ、液体プリズムの構成、構造も例示であり、適宜、変更することができる。例えば、実施例20において説明した表示装置と実施例25において説明した表示装置とを組み合わせてもよい。
【0270】
輻輳角を調整すると同時に、例えば、
図19における点「A」に光学系112,254の焦点が合うように、即ち、光学系112,254の焦点距離を可変とするために、光学系112,254を液体レンズから構成してもよい。このような液体レンズの模式的な模式的な断面図を
図44に示し、平面図を
図45に示すが、液体レンズはフレネルレンズから構成され、リング状のレンズ室が同心に配置されている。
【0271】
即ち、液体レンズは、
(A)終端部を有していない、所謂エンドレスの外壁部材79、
外壁部材79の頂面に取り付けられた天板75、及び、
外壁部材79の底面に取り付けられた底板76、
を備えたハウジング、並びに、
(B)終端部を有しておらず、外壁部材79と同心に配置された(N−1)個の隔壁部材77、
を備えている。尚、ハウジングの外形形状は円形である。そして、(N−1)個の環状レンズ室、及び、第(N−1)番目の隔壁部材77によって囲まれた中央レンズ室を有している。ここで、図示した例にあっては、N=3とした。各レンズ室78(78
1.78
2,78
3)は、液体レンズを構成する第1の液体65及び第2の液体66によって占められている。
【0272】
第1番目のレンズ室(環状レンズ室)78
1は、外壁部材79、第1番目の隔壁部材77、天板75、及び、底板76から構成されている。そして、第1番目のレンズ室78
1を構成する天板75の部分の内面には、液体レンズを構成する第1電極(以下、単に、『第1電極81』と呼ぶ)が設けられており、第1番目のレンズ室78
1を構成する外壁部材79の部分の内面には、液体レンズを構成する第2電極(以下、単に、『第2電極82』と呼ぶ)が設けられており、第1番目のレンズ室78
1を構成する第1番目の隔壁部材77の部分の内面には、液体レンズを構成する第3電極(以下、単に、『第3電極83』と呼ぶ)が設けられている。
【0273】
第(n+1)番目のレンズ室(環状レンズ室)78
(n+1)は、第n番目(但し、n=1,2・・・N−2)の隔壁部材77、第(n+1)番目の隔壁部材77、天板75、及び、底板76から構成されている。そして、第(n+1)番目のレンズ室78
(n+1)を構成する天板75の部分の内面には、第1電極81が設けられており、第(n+1)番目のレンズ室78
(n+1)を構成する第n番目の隔壁部材77の部分の内面には、第2電極82が設けられており、第(n+1)番目のレンズ室78
(n+1)を構成する第(n+1)番目の隔壁部材77の部分の内面には、第3電極83が設けられている。
【0274】
第N番目のレンズ室78
Nに相当する中央レンズ室78
3を構成する天板75の部分の内面には、第1電極81が設けられており、中央レンズ室78
3を構成する第(N−1)番目の隔壁部材77の部分の内面には、第3電極83が設けられている。
【0275】
尚、図示した例では、各レンズ室毎に第1電極81が設けられているが、天板75の内面に1枚の第1電極81を設けてもよい。
【0276】
この液体レンズにおいては、少なくとも第1の液体65と第2の液体66との界面が位置する外壁部材79及び隔壁部材77のそれぞれの表面には、実施例22と同様に、撥水処理が施されている。底板76から光が入射し、天板75から光が出射する。そして、各レンズ室78
1,78
2,78
3において、第2電極82に印加する電圧と第3電極83に印加する電圧とを異ならせることで、液体レンズの光学パワーを変化させる。あるいは又、各レンズ室78
1,78
2,78
3において、第2電極82に印加する電圧と第3電極83に印加する電圧とを異ならせることで、液体レンズ全体としてフレネルレンズが構成される。
【0277】
更には、実施例1〜実施例25において説明した画像表示装置を、以下に説明するように、変形することも可能である。即ち、
図46に、例えば、実施例1あるいは実施例7の表示装置における光学装置及び調光装置の部分を正面から眺めた模式図を示すように、第2偏向手段140,340の射影像内に調光装置700が位置する形態とすることもできる。ここで、調光装置700に対向する光学装置120,320の部分に、例えば、映像に同期した映像に関する説明文やクローズド・キャプションの表示、芝居や歌舞伎、能、狂言、オペラ、音楽会、バレー、各種演劇、遊園地(アミューズメントパーク)、美術館、観光地、行楽地、観光案内等における観察対象物に関する各種説明、その内容や進行状況、背景等を説明するための説明文等の表示を行えばよい。