特許第6202122号(P6202122)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202122
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】格納ルーフ付き自動車用の上部車体構造
(51)【国際特許分類】
   B60J 7/12 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
   B60J7/12 G
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-54765(P2016-54765)
(22)【出願日】2016年3月18日
(65)【公開番号】特開2017-165355(P2017-165355A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2017年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】篠原 三和
(72)【発明者】
【氏名】高橋 知希
(72)【発明者】
【氏名】古川 敬俊
(72)【発明者】
【氏名】西浦 啓一郎
(72)【発明者】
【氏名】堀田 与支彦
(72)【発明者】
【氏名】久保 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】奥田 紗千
【審査官】 山尾 宗弘
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−061334(JP,U)
【文献】 特開2011−88606(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第19714125(DE,A1)
【文献】 特開平05−169978(JP,A)
【文献】 実開平07−024618(JP,U)
【文献】 特開2016−150587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 7/12、7/19、7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室上方を覆う開閉ルーフと、開閉可能な後側開閉部材が設けられた格納ルーフ付き自動車用の上部車体構造であって、
前記後側開閉部材が、ルーフ閉鎖状態の前記開閉ルーフに上方から弾性的に当接し、前記開閉ルーフとは独立して起立可能とされ、
前記後側開閉部材と車体との間に、該後側開閉部材の前部と後部を弾性的に支持するべく弾性部材が少なくとも1つ設けられ、
前記後側開閉部材の前部と車体との間に、前記後側開閉部材から受ける前記弾性部材の負荷が無負荷となる無負荷位置より下方に前記後側開閉部材の前記弾性部材との当接部が位置する高さで前記後側開閉部材を支持する上下位置ストッパが設けられた
格納ルーフ付き自動車用の上部車体構造。
【請求項2】
前記上下位置ストッパが支持位置調整手段を有する
請求項1に記載の格納ルーフ付き自動車用の上部車体構造。
【請求項3】
前記上下位置ストッパが、開閉ルーフがルーフ閉鎖状態において乗員により前記支持位置調整手段の調整操作が可能な位置に配される
請求項2に記載の格納ルーフ付き自動車用の上部車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車室を開閉可能に覆う開閉ルーフと、該開閉ルーフよりも後方で開閉可能に備えたデッキカバー或いは後側ルーフ等の後側開閉部材とが設けられた格納ルーフ付き自動車用の上部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上述したデッキカバーや後側ルーフ等の後側開閉部材は、一般に車体本体、開閉ルーフ等との各間に、シール性を確保するためのウェザストリップを介在させており、これらウェザストリップにより弾性支持されている。
【0003】
ところが、ルーフ開放時においては開閉ルーフが格納空間に格納されるため、後側開閉部材の前部は、該前部と、該開閉ルーフとの間に備えたウェザストリップにより弾性支持されない状態となる。
【0004】
そうすると、ルーフ開放時においては後側開閉部材の主に前部における、ウェザストリップによる弾性支持力が低下することになり、デッキカバーはルーフ閉鎖時と比較して前傾した姿勢になるおそれがあった。これにより、ルーフ開放時に車体側面視した際の車体のサイドボディ上端と後側開閉部材の下端との間に形成される車両前後方向に延びる稜線(ベルトライン)が、ルーフ閉鎖時に車体側面視した際における稜線に対してズレるなどして外観上の見栄えを確保できないおそれがあった。
【0005】
ところで、格納式ルーフ付き自動車の上部車体構造として例えば、特許文献1の自動車のルーフ構造が知られている。特許文献1のルーフ構造は、フロントウインドフレームの後方に位置したセンタールーフ部(1)と、その後方に位置したリアルーフ部(2)と、バックウインド部(3)とに分割可能に構成されており、これら部材(1),(2),(3)のうち、例えば、センタールーフ部(1)のみをルーフ格納空間に格納したタルガトップ状態とすることが可能な構成としたものである(特許文献1中の図4参照)。
【0006】
そして、特許文献1のルーフ構造において、センタールーフ部(1)のみをルーフ格納空間に格納したタルガトップ状態としたとき、リアルーフ部(2)の前部はセンタールーフ部(1)の後端に備えたウェザストリップによって弾性支持されない状態となり、リアルーフ部(2)はその前部の弾性支持力が低下して前傾姿勢になるおそれがあった。
【0007】
このような課題に対して特許文献1の自動車のルーフ構造は、ストッパ部材として、リアルーフ部(2)(デッキカバー)の後側下端にリアルーフロック(204)を設けるとともに、車体側のリアルーフロック(204)に隣接する部位に、リアルーフロック(204)と係合するリアルーフロックアウター(124)を設けている(同図24図26参照)。
【0008】
そして、特許文献1のルーフ構造は、リアルーフ部(2)が閉鎖時にこれらストッパ部材(204),(124)を相互に係合することによってリアルーフ部(2)を車体に対して上下方向および車幅方向に位置決め固定するものである。
【0009】
しかしながら特許文献1のルーフ構造の場合、リアルーフロックアウター(124)とリアルーフロック(204)とは、互いの係合部分を傾斜面で形成しているため(同図26参照)、上下方向についてしっかりと位置決めできず、これらストッパ部材(204),(124)を設けても車両走行時の振動等によって弾性支持力が低いリアルーフ部(2)の前部が下方へズレるおそれがあった。
【0010】
しかも、特許文献1のストッパ部材(204),(124)は、リアルーフ部(2)の後側下端に設けられ、該リアルーフ部(2)を後側から位置決め固定して支持するものである。すなわち、特許文献1のストッパ部材(204),(124)は、弾性支持力が低下したリアルーフ部(2)の前部を効率よく適切に支持する構造とは言い難く、リアルーフ部(2)の前部を後側からしっかりと支持しようとするとストッパ部材(204),(124)を頑強で大掛かりな構成とする必要があるなど上下方向について位置決め可能なストッパ部材(上下位置ストッパ)について改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−261297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこでこの発明は、上下位置ストッパの負担軽減と後側開閉部材の位置精度を両立できる格納ルーフ付き自動車用の上部車体構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明の自動車用の上部車体構造は、車室上方を覆う開閉ルーフと、開閉可能な後側開閉部材が設けられ、前記後側開閉部材が、ルーフ閉鎖状態の前記開閉ルーフに上方から弾性的に当接し、前記開閉ルーフとは独立して起立可能とされ、前記後側開閉部材と車体との間に、該後側開閉部材の前部と後部を弾性的に支持するべく弾性部材が少なくとも1つ設けられ、前記後側開閉部材の前部と車体との間に、前記後側開閉部材から受ける前記弾性部材の負荷が無負荷となる無負荷位置より下方に前記後側開閉部材の前記弾性部材との当接部が位置する高さで前記後側開閉部材を支持する上下位置ストッパが設けられたものである。
【0014】
上記構成によれば、上下位置ストッパと弾性部材とで後側開閉体の重量負荷を分担できるので、上下位置ストッパの負担軽減と後側開閉部材の位置精度を両立できる。
【0015】
前記後側開閉部材は、例えば、デッキカバーに限らず、例えば、ワゴン、ミニバン或いはハッチバックなどの車両に備えた後側ルーフをも含む。
【0016】
前記弾性部材には、例えば、弾性ストッパ、ウェザストリップ或いはマウントを含む。また前記弾性部材は、前記後側開閉部材と車体との間に設けた構成であれば、前記後側開閉部材と車体とのうちいずれの側に備えてもよい。
【0017】
この発明の態様として、前記上下位置ストッパが支持位置調整手段を有するものである。
【0018】
上記構成によれば、ウェザストリップの弾性が変化しても上下位置ストッパによる後側開閉部材の支持位置を支持位置調整手段によって調整することで、後側開閉部材の位置精度とストッパ負担軽減を両立することができる。
【0019】
またこの発明の態様として、前記上下位置ストッパが、開閉ルーフがルーフ閉鎖状態において乗員により前記支持位置調整手段の調整操作が可能な位置に配されるものである。
【0020】
上記構成によれば、上下位置ストッパによるデッキカバーの支持位置の調整を車室内からでも容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、上下位置ストッパの負担軽減と後側開閉部材の位置精度を両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施例の自動車を開閉ルーフの開放状態にて示す側面図
図2】本実施例の自動車を開閉ルーフの閉鎖状態にて示す側面図
図3】本実施例の自動車を開閉ルーフの閉鎖状態にて示す平面図
図4】開閉ルーフを閉鎖状態から開放状態に移行する時の側面図
図5図3のA−A線矢視の要部断面図
図6図3のB−B線矢視の要部断面図
図7】車体ボディの一部を省略して示した車体後部の側面図
図8図7のC−C線矢視断面図
図9図7のD−D線矢視の要部断面図
図10】ルーフ開閉機構の車体側の概略構造の要部を車幅方向外側から見た側面図
図11】ルーフ開閉機構の車体側の概略構造を示す説明図。
図12】他の実施例の上下位置ストッパの構成説明図
【発明を実施するための形態】
【0023】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
なお、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印INは車幅方向内方を示し、矢印OUTは車幅方向外方を示し、矢印Uは車両上方を示す。
【0024】
図面は開閉ルーフ構造20(図7参照)とデッキカバー構造70(図1参照)を備えた本実施形態のオープンカー10の車体構造を示し、図1は本実施例の自動車を開閉ルーフの開放状態にて示す側面図、図2は本実施例の自動車を開閉ルーフの閉鎖状態にて示す側面図、図3は本実施例の自動車を開閉ルーフの閉鎖状態にて示す平面図、図4は開閉ルーフを閉鎖状態から開放状態に移行する時の側面図、図5図3のA−A線矢視の要部断面図、図6図3のB−B線矢視の要部断面図であり、詳しくは、図6はリヤウインド、センタールーフ後部、デッキカバーの一部を示す車幅方向に直交する断面図である。図7は車体ボディの一部を省略して示した車体後部の側面図、図8図7のC−C線矢視断面図、図9図7のD−D線矢視の要部断面図、図10はルーフ開閉機構の車体側の概略構造の要部を車幅方向外側から見た側面図、図11(a)は図10のE−E線矢視の要部断面図、図11(b)はルーフ開閉機構の車体側の構造の要部の平面図である。
【0025】
但し、図5は、開閉ルーフ構造は省略し、図7はストッパ受止めブラケット111は省略しているものとし、図10図11(a)、(b)はルーフ開閉機構の構成を模式的に示すものとする。
【0026】
なお、以下の実施例においては開閉ルーフ構造20とデッキカバー構造70について車両右側の構造を中心に説明するが、特に示す場合を除き、車両左側の構造は右側のそれと左右対称に構成されている。
【0027】
本実施形態のオープンカー10は、図1に示すように、乗員が着座するシート12(乗員用シート12)として運転席12a及び助手席12bが配置された車室1が画成された車体本体11を備え、該車体本体11には車室1の上方、及び後方を覆う開閉ルーフ21を閉鎖するルーフ閉鎖状態(図2図3参照)と、開閉ルーフ21を折り畳んで開放したルーフ開放状態(図1参照)とに選択的に変更可能な開閉ルーフ構造20(図7参照)が組み付けられている。
【0028】
図1図4に示すように、車体本体11の後部にはトランクルーム13が形成されており、その開口13a(図4参照)はトランクリッド14によって開閉可能に閉塞されている。車室1とトランクルーム13との間には、開閉ルーフ21が格納される格納室15が上方に開口して形成されている(図4図5図7参照)。なお、図1図4中の符号16は車両本体11後部の幅方向両側の車体ボディを形成するリヤフェンダ16であり、該リヤフェンダ16の上端辺部16uは、車両前後方向に沿って延びている。
【0029】
格納室15の上端に有する開口15A(図4参照)には、デッキカバー構造70の一部としてのデッキカバー71が配設され、このデッキカバー71は、図1、及び図2に示すように、開閉ルーフ21が閉鎖状態と開放状態において、格納室15の上端開口15Aを閉塞する閉位置(定位置)に配置される一方で、開閉ルーフ21を閉鎖状態と開放状態との間で変更する際には、図4に示すように、格納室15の後側上方に開閉ルーフ21とは独立して起立して格納室15の開口15Aを開口する開放位置に配置される。
【0030】
開閉ルーフ構造20は、図3に示すように、車室1上部から後部を形成する開閉ルーフ21と、図7図9に示すように、該開閉ルーフ21を閉鎖状態と開放状態の間で作動させる駆動ユニット25と、該駆動ユニット25の駆動を開閉ルーフ21に伝達するリンク機構40と、該リンク機構40を車体本体11側のピラーインナーパネル(図示省略)に組み付けている。なお、駆動ユニット25に備えたモータ26(図7図11(a)、(b)参照)は車幅方向の各側において同期駆動するように構成されている。
【0031】
開閉ルーフ21は、図2図3に示すように、車幅方向に延びて車室1前部のフロントウインドガラス17(フロントウインド部材)の上辺を支持する強度部材であるフロントヘッダ18から車室1の後方に連なって車室1の天井となるセンタールーフ22と車室1の後部側のリヤルーフ23(図3参照)とで構成し、それぞれ前後方向に配設している。これらセンタールーフ22およびリヤルーフ23は共にハードルーフ部材にて形成されている。
【0032】
センタールーフ22は、センタールーフ本体部22Fと、該センタールーフ本体部22Fの後方に配置されたセンタールーフ後部22Rとを備えるとともに(図2図3参照)、互いの対向部分を枢支連結して構成している。
【0033】
これにより、開閉ルーフ21は、センタールーフ本体部22Fとセンタールーフ後部22Rとリヤルーフ23とが3分割に折り畳み可能に構成しており、ルーフ開放状態の時、折り畳まれた状態で格納室15に格納される(図2図4参照)。
【0034】
開閉ルーフ構造20のリンク機構40は、図8図9に示すように、車幅方向の両側位置それぞれに配置される複数のリンク41で構成され、これら複数のリンク41は、互いに連動するように各リンク41同士の連結部分において枢支結合されている。このようなリンク機構40は、開閉ルーフ21の底部と車体本体11側のメインブラケット30との間で夫々に対して枢支結合されている。
【0035】
なお、図8図9中の符号41Aは、複数のリンク41のうち基端側(車両本体11)側がメインブラケット30に枢支結合された作動リンクを示している。
【0036】
開閉ルーフ構造20に備えた駆動ユニット25は、本実施形態では電動式に構成されている。図7図10に示すように、駆動ユニット25は、ボルト等によってメインブラケット30に固定され、モータ26、および該モータ26の駆動力を所定の減速比で増幅してリンク機構40へ伝達する適宜のギヤ等の動力伝達機構27を備えている。
【0037】
図7図11(a)、(b)に示すように、メインブラケット30は、剛性に優れた略板状の部材であり、車両本体11に取り付ける車体取付フランジ部31が形成され、該車体取付フランジ部31を介して車両本体11の不図示のピラーインナーパネルに車幅方向内面から該ボルト等により一体に取り付けられている(図7図9参照)。
【0038】
なお、車体取付フランジ部31は、メインブラケット30の下部から下方へ脚状に突出したフランジ部31aやBピラー50(センターピラー50)に沿って上方へ延設したフランジ部31bで形成している(図10参照)。
【0039】
また、図10図11(b)に示すように、メインブラケット30の上部かつ後部位置には、後方へ延出する後方延出部32を形成している。またメインブラケット30の上部かつ車両前後方向の中間位置には、ギヤ等の動力伝達機構27を枢支する上方へ延出する上方延出部101を形成している。
【0040】
メインブラケット30の上部の上方延出部101と上方へ延設したフランジ部31bとの間には、下方へ凹んだ溝部30cを形成している(図10参照)。
【0041】
また、図1図5図7図8に示すように、サイドドア110のドアガラス111後端よりも僅かに後側には、ルーフ閉鎖状態、或いはルーフ開放状態に関わらず、リヤフェンダ16の上端辺部16uよりも上方へ突出するようにBピラー50(センターピラー50)を車体本体11から立設している。
【0042】
Bピラー50は、下部に対して上部が車幅方向内側に僅かに傾きながらサイドドア110のドアガラス111後端に当接するように上方へ突出している(図3参照)。Bピラー50は、アルミ等の押出しにより閉断面構造で形成したピラー芯材51と、該ピラー芯材51に装着されたピラーシール部材としてのウェザストリップ52等で構成している(図8参照)。
【0043】
ウェザストリップ52は、ピラー芯材51の前側の縁辺に沿って装着された前側ウェザストリップ52Fと、ピラー芯材51の後側の縁辺に沿って装着された後側ウェザストリップ52Rとを備えている。
【0044】
図8に示すように、デッキカバー71が閉位置にあるとき、該デッキカバー71の車幅方向の左右各側面の前部は、Bピラー50の後側ウェザストリップ52Fに対して車幅方向外側から当接ししており(図5図8参照)、このデッキカバー71の後側ウェザストリップ52Rとの当接部位71A(図8参照)は、該後側ウェザストリップ52Rの弾性力によって車幅方向外側へ付勢されている。
【0045】
また、上述したデッキカバー構造70は、図7図8に示すように、上述したデッキカバー71と、該デッキカバー71を作動させて格納室15を開閉する四節リンク機構80(図8参照)と駆動ユニット85を備えている。
デッキカバー構造70は、図7図8に示すように、本実施形態ではモータ86を駆動源とする電動式に構成され、デッキカバー71を開閉変位させる四節リンク機構80と駆動ユニット85とは、デッキカバー71の車幅方向の両側に備えた突出部75の前部における下方に設けられている。
【0046】
四節リンク機構80は、メインブラケット81と、カバーブラケット82と、モータ86からの駆動力を直接的に受けて動く原動リンク83(図7参照)と、原動リンク83に連動する従動リンク84とを備えている。
【0047】
また、デッキカバー71は、図1図3に示すように、車室1とトランクルーム13との間の車体ボディを構成し、幅方向に延びて格納室15を閉塞するプレート状のデッキカバーベース部72と、該デッキカバーベース部72の車幅方向の両側において、閉止時には車両本体11の後側上部外観面を形成するようにデッキカバー71の主に前部側が上方に突出する突出部75,75と、該突出部75,75間に架設したデッキカバーヘッダ76とで一体に形成している。
【0048】
デッキカバーベース部72は、図1図2に示すように、デッキカバー71が閉位置において、トランクリッド14の上面と略フラットになる略平坦な上面を有する。
【0049】
図1図3に示すように、突出部75は、その後部が、デッキカバーベース部72の後端よりもさらに後方すなわち、トランクルーム13の車幅方向両側において該トランクルーム13の前部相当部位まで延設している。突出部75は、その前端がデッキカバーヘッダ76と略同じ高さまで上方に突出し、後端がトランクリッド14の上面と略同じ高さとなるまで前高後低状に緩やかに傾斜する突出形状で形成している(同図参照)。
デッキカバーヘッダ76は、車幅方向に直線状に延びる閉断面構造で構成し、車幅方向の両側の突出部75の前部上端の間に横架している(図1図3参照)。
すなわち、デッキカバー71は、一対の突出部75,75とデッキカバーヘッダ76とで正面視門型に構成している。
【0050】
図1図3に示すように、車両本体11の車室1の後側部分には、デッキカバーベース部72と、幅方向の両側のBピラー50及び突出部75と、デッキカバーヘッダ76とで囲まれた部位には、車室1側と車室1外側とを車両前後方向に連通するように前方視略四角形状に開口してリヤルーフ23が取り外し可能に配設されるリヤウインド配置開口部19を構成している。
【0051】
また、図1図3に示すように、突出部75の前部の車幅方向外面には、前端から後方へ凹状としたガーニッシュ取付凹部74を形成し(図8参照)、ガーニッシュ取付凹部74には、突出部75の車幅方向の外面と略面一となるプレート状のガーニッシュ77を装着している(同図参照)。
【0052】
また、デッキカバー71の断面構造について図9を用いて説明すると、デッキカバー71は、樹脂製のインナパネル78とデッキカバー71の外面ボディを構成する樹脂製のアウタパネル79と、デッキカバー71を補強すべくインナパネル78とアウタパネル79との間に設けられた金属製の補強プレート73とで構成し、デッキカバー71のインナパネル78の車幅方向両左右両側の下端部には、車幅方向内端から車幅方向外側へ延設された略水平な下端外側延出部171が設けられている(図9参照)。このインナパネル78の下端外側延出部171についても上方に配置された補強プレート73によって補強されている。
【0053】
上述したデッキカバー71は、図2図3に示すように、ルーフ閉鎖状態のとき、車両後部を側面視すると、該デッキカバー71の下縁辺と、リヤフェンダ16の上端辺部16uとで車体サイドボディのベルトライン位置に車両前後方向に沿って滑らかに連続して延びるボディラインを形成している。
【0054】
さらに、上述したデッキカバー71は、閉位置において車体本体11側との対向縁部が車体本体11側へ備えたゴム等の弾性部材で形成したウェザストリップ52R,91,92,93,94に付勢された状態で当接し、この間の止水性を確保している。
【0055】
すなわち図3図6図7図9に示すように、ウェザストリップ52R,91,92,93,94の夫々は、Bピラー50の後辺部と、Bピラー50の基端部におけるベルトライン位置と、リヤルーフ23の周縁部と、センタールーフ後部22Rの後端と、格納室15の上端開口15Aの縁部とに設けられている。
【0056】
詳しくは、図7図8に示すように、Bピラー50の後辺部に設けたウェザストリップ52Rは、上述したようにピラー芯材51に後側から装着された上述した後側ウェザストリップ52Rであり、デッキカバー71との間の止水性を確保している。
【0057】
図3図5図7に示すように、Bピラー50の基端部におけるベルトライン位置に設けられたウェザストリップ91は、ピラー50の基端部およびリヤフェンダ16の上端辺部16の前端に装着されている。このウェザストリップ91の上端部には、上方に向けて突出する弾性支持部91aを備え(図5参照)、該弾性支持部91aがデッキカバー71の車幅方向の左右各側の外側延出部171の前端に当接し、この間の止水性を確保するとともにデッキカバー7の前部を下側から弾性支持している。
【0058】
図3図6に示すように、リヤルーフ23の周縁部に設けられたウェザストリップ92は、該リヤルーフ23に備えたリヤウインドガラス102の周縁に枠状に設けられた枠状メンバ103の上部に沿って装着されている。
【0059】
なお、この枠状メンバ103は、リヤルーフ23の前縁辺部103f、後縁辺部103r、右縁辺部(図示省略)および左縁辺部(図示省略)とで正面視略矩形の枠状に構成され、内部に配置したリヤウインドガラス102を保持するメンバである。このウェザストリップ92は、枠状メンバ103の上方に向けて突出する弾性支持部92aを備えている。
【0060】
これにより、デッキカバー7が閉位置のときデッキカバー71に設けたリヤウインド配置開口部19の周縁部は、リヤルーフ23がルーフ閉鎖状態のとき、該リヤルーフ23に備えたウェザストリップ92の弾性支持部92aに対して上方から当接し、この間の止水性を確保するとともにデッキカバー71の前部を下側から弾性支持している。
【0061】
図3図6に示すように、センタールーフ後部22Rの後端に設けたウェザストリップ93は、該センタールーフ後部22Rの後端辺部104に車幅方向に沿って装着され、上方に向けて突出する弾性支持部93aを備えている。デッキカバー71のデッキカバーヘッダ76は、センタールーフ後部22Rがルーフ閉鎖状態のとき、該センタールーフ後部22Rに備えたウェザストリップ93の弾性支持部93aに対して上方から当接し、この間の止水性を確保するとともにデッキカバー7の前部を下側から弾性支持している。
【0062】
図3図5図7図9に示すように、格納室15の上端開口15Aの縁部に設けられたウェザストリップ94は、上端開口15Aの左右両縁辺と、後縁辺すなわちトランクルーム13と格納室15との間とで平面視前方へ開口したコ字状に設けられている(図3中の仮想線で示したウェザストリップ94参照)。
【0063】
このコ字状のウェザストリップ94は、その長さ方向に沿って上方に突出する弾性支持部94aを備え、このウェザストリップ94の弾性支持部94aに対してデッキカバー71が上方から当接し、この間の止水性を確保するとともにデッキカバー71の全体を下側から弾性支持している。
【0064】
このようなウェザストリップ94のうち格納室15の左右両縁辺に前後方向に沿って設けた縁辺部194は、図5図8図9に示すように、リヤフェンダ16の上端辺部16の前端、すなわちBピラー50の基端部に装着した上述したウェザストリップ91と前後方向に連続するようにリヤフェンダ16の上端辺部16uに沿って形成された上端フランジ部161に装着されている。そしてこのウェザストリップ94の左右各側の縁辺部194は、デッキカバー71の車幅方向左右各側の下端部に設けた上記下端外側延出部171に当接し、この間の止水性を確保するとともにデッキカバー71を下側から弾性支持している(図9参照)。
【0065】
なおリヤフェンダ16は、図9に示すように、車幅方向外側に配置されたリヤフェンダアウタパネル16aと車幅方向内側に配置されたリヤフェンダインナパネル16b等を備え、リヤフェンダ16の上端辺部16uに有する上端フランジ部161は、これらリヤフェンダアウタパネル16aとリヤフェンダインナパネル16bの上端部に形成した各フランジ部同士を溶接等により接合したものである。
【0066】
デッキカバー71は、開閉ルーフ21がルーフ閉鎖状態においては上述したように、上記ウェザストリップ52R,91〜94のうち、Bピラー50の基端部のベルトライン位置と、リヤルーフ23の周縁部と、センタールーフ後部22Rの後端と、格納室15の上端開口15Aの縁部とに設けられた各ウェザストリップ52R,91,92,93,94によって下側から弾性支持されている。
【0067】
さらに、デッキカバー71は、開閉ルーフ21がルーフ閉鎖状態においては上記ウェザストリップ52R,91,92,93,94に加えて弾性ストッパ105によっても下側から弾性支持される(図4図5図7参照)。
【0068】
この弾性ストッパ105は、図5に示すように、デッキカバー71の後部、具体的には車幅方向の両側に備えた突出部75の後部に備え、トランクサイドパネル106の上面に先端部(下部)に備えた弾性体105aが当接可能に下方に向けて突設されている。
この弾性ストッパ105は、閉位置にあるデッキカバー71の特に後部を下側から弾性支持するものである。
【0069】
ここでルーフ開放状態においては、センタールーフ後部22Rやリヤルーフ23が格納室15に格納されるため、閉位置にあるデッキカバー71は、これら部材22R,23に備えたウェザストリップ92,93によって弾性支持されない状態になる。
【0070】
そうするとルーフ開放状態においては、ルーフ閉鎖状態の場合と比較して閉位置にあるデッキカバー71の前部は、後部よりも弾性支持力が低下し、リヤフェンダ16の上端辺部16の前端および格納室15の上端開口15Aの縁部に装着されたウェザストリップ91,94によるデッキカバー71の前部を下側から弾性支持する負担が大きくなるとともにデッキカバー71が前傾姿勢になるおそれがあった。
【0071】
そこで本実施例においては、ウェザストリップ91,94の弾性支持部の無負荷位置より下方位置で支持する上下位置ストッパ構造110を設けている。
【0072】
この上下位置ストッパ構造110は、図5図7図9に示すように、デッキカバー71の前部における車幅方向の左右各側位置においてデッキカバー71と車体本体11との間に設けられている。換言すると、上下位置ストッパ構造110は、車両前後方向における運転席12a及び助手席12bの各シートバック部120a,120b(図1参照)の位置に相当する位置、且つ閉位置にあるデッキカバー71の下部に相当する高さに配置され、デッキカバー71が閉位置にある状態において車室1側から調整操作可能な位置に配置されている。すなわち、上下位置ストッパ構造110は、運転席12aや助手席12bに座った状態で上下位置の調整操作が可能な位置に配置されている。
【0073】
上下位置ストッパ構造110はデッキカバー71側に設けたストッパ受止めブラケット111と、車体本体11側に設けた上下位置ストッパ112とで構成されている(同図参照)。
【0074】
ストッパ受止めブラケット111は、図9に示すように、取付部113と、上下方向に延びる本体部114と、ストッパ受け部115とで一体に形成し、取付部113は、デッキカバー71のインナパネル78の内面に沿って本体部114の上端から車幅方向内側かつ上方へ延設しており、デッキカバー71のインナパネル78の内面に重合させた状態で溶接等により一体に接合している。ストッパ受け部115は、本体部114の下端から車幅方向外側へフランジ状に延設し、その下面115aには、デッキカバー71が閉位置の状態において上下位置ストッパ112の後述の支持部116aを受け止め可能な平坦な面を形成している。
【0075】
一方、上下位置ストッパ112は、図9図10図11(a)、(b)に示すように、支持部116aを備えた調整ボルト116と、ケース117と、ロックナット118と、調整ナット119とで構成し、支持部116aの上下方向の位置(高さ)を調整可能に構成している。
【0076】
調整ボルト116は、上端に樹脂等の緩衝材を備えた頭部を、ストッパ受け部115の下面115aに当接して閉位置にあるデッキカバー71を支持可能な支持部116aとして形成したものであり、該支持部116aから下方へ延設部分の外周にはネジ部116aが形成されている。ケース117は、車体側へ取り付けるフランジ部117cを上端部に形成し、内部には、上面中央部が開口するようにネジ孔117bを形成している。ネジ孔117bの内周面には、調整ボルト116のネジ部116aと螺合可能なネジ部117aを有している。
【0077】
ロックナット118と調整ナット119とは、調整ボルト116のケース117からの上方への突出部分に螺合された状態で上下各側に配置されているとともに、下側に位置する調整ナット119は、ケース117の上面に支持された状態で配置されている。
【0078】
このような上下位置ストッパ112は、図10図11(a)、(b)に示すように、ストッパ取付ブラケット121を介してメインブラケット30に取り付けられている。
ストッパ取付ブラケット121は、上下方向に延びるフランジ状の車体側取付部122と該車体側取付部122の上端から車幅方向外側へフランジ状に延出したストッパ取付部123とで一体に形成している。
【0079】
ストッパ取付ブラケット121は、メインブラケット30の上方延出部101に対して車幅方向外面から車体側取付部122を重合させた状態でボルトB等により締結固定している。ストッパ取付部123は、ケース117を嵌め込み可能に上下方向に貫通する貫通孔124(図9参照)が形成され、この貫通孔124にケース117を嵌め込んだ状態で貫通孔124の周縁部によってケース117のフランジ部117cを支持している。
【0080】
上下位置ストッパ112は、ストッパ取付部123の前後方向の中間位置に対して前側、すなわちメインブラケット30の上部に形成した溝部30c側に寄せてストッパ取付部123に取り付けられている(図10参照)。
【0081】
これにより、メインブラケット30の上部に形成した上記の溝部30cを、ストッパ取付部123によるデッキカバー71の支持位置調整操作を車室1側から行う際の作業スペースとして活かすことができ、乗員により上下位置ストッパ112を用いたデッキカバー71の支持位置の調整操作が可能な位置に配置されたものである。
【0082】
なお、本実施例では上述したように調整ボルト116の支持部116aに緩衝材を備えたが、このように、ストッパ受け部115の下面115aと上下位置ストッパ112の支持部116aとのうち少なくともいずれか一方には樹脂材料や弾性材料により形成した緩衝部材を備えることが好ましい。
【0083】
上述した上下位置ストッパ構造110は、リヤフェンダ16の上端辺部16の前端および格納室15の上端開口15Aの縁部に装着されたウェザストリップ91,94とともに、開閉ルーフ21がルーフ開放状態である時のデッキカバー71の前部を支持することができるとともに、デッキカバー71の上下位置を調整することができるものである。
【0084】
上下位置ストッパ構造110を用いたデッキカバー71の上下位置の調整操作の要領について説明する。まず、車室1の車幅方向内側側面を覆うように配置された不図示のトリム(化粧パネル)を剥いで車室1側から上下位置ストッパ構造110を露出させた状態としておくとともに、デッキカバー71を開放位置にした状態で支持部116aの位置を下げておく。
【0085】
続いて、開閉ルーフ21をルーフ閉鎖状態としつつデッキカバー71を閉位置にしてセンタールーフ後部22Rやリヤルーフ23に備えたウェザストリップ92,93も含めたウェザストリップ52R,91〜94等によって該デッキカバー71がその前部も含めて弾性支持された状態とする。この状態において調整ナット119を回動操作させながら支持部116aをストッパ受け部115に下側から当接するまで上げ、調整ナット119が動かないようにロックナット118で軽くロックして仮止めする。
【0086】
この調整ナット119を仮止めしたときにおける調整ボルト116の支持部116aがストッパ受け部115を支持する位置は、デッキカバー71からウェザストリップ91,94が受ける負荷が無負荷となる無負荷位置より下方位置でデッキカバー71を支持することができる位置である。
【0087】
なお、上述したロックナット118や調整ナット119の回動操作は、車室1側から開閉ルーフ構造20のリンク機構40の隙間に手を差し入れるなどして素手で行うことができる。
【0088】
さらに、再度、デッキカバー71を開放位置とした状態で工具等を用いてロックナット118を本締めすることでデッキカバー71の上下位置の調整操作が完了する。
【0089】
上述した本実施例のオープンカー10は、車室1の上方を開閉可能に覆う開閉ルーフ21と、該開閉ルーフ21を格納する格納室15を開閉可能に覆うデッキカバー71とを備え(図1図4参照)、デッキカバー71が、ルーフ閉鎖状態の開閉ルーフ21に上方から弾性的に当接し、開閉ルーフ21とは独立して起立可能とされ、デッキカバー71と車体との間に、該デッキカバー71の前部と後部を弾性的に支持するべく弾性部材としてウェザストリップ52R,91〜94、弾性ストッパ105が設けられ(図5図9参照)、デッキカバー71の前部と車体との間に、リヤフェンダ16の上端辺部16の前端および格納室15の上端開口15Aの縁部に装着されたウェザストリップ91,94がデッキカバー71から受ける負荷が、無負荷となる無負荷位置より下方にデッキカバー71のウェザストリップ91,94との当接部が位置する高さでデッキカバー71を支持する上下位置ストッパ構造110が設けられたものである(図9図11(a)、(b)参照)。
【0090】
上記構成によれば、上下位置ストッパ構造110とウェザストリップ52R,91〜94の相互の負担軽減とデッキカバー71の位置精度を両立できる。
【0091】
詳述すると、開位置にあるデッキカバー71は、ルーフ閉鎖状態の開閉ルーフ21に上方から当接するため、デッキカバー71の後部を弾性支持する弾性ストッパ105、並びに、リヤフェンダ16の上端辺部16の前端および格納室15の上端開口15Aの縁部に装着されたウェザストリップ91,94だけでなく、リヤルーフ23の周縁部に装着されたウェザストリップ92およびセンタールーフ後部22Rの後端に装着されたウェザストリップ93等によっても下側から弾性支持することができる。
【0092】
ところが、開閉ルーフ21がルーフ開放状態においては、開閉ルーフ21とリヤルーフ23が格納室15に格納されるため、閉位置にあるデッキカバー71は、これら開閉ルーフ21とリヤルーフ23との夫々の間に備えたウェザストリップ92,93によって弾性支持されない状態となる。
【0093】
これにより、開閉ルーフ21がルーフ開放状態においては、デッキカバー71の前部は、弾性ストッパ105等によって弾性支持される後部と比較して弾性支持力が低下する。そうすると、リヤフェンダ16の上端辺部16の前端および格納室15の上端開口15Aの縁部に装着されたウェザストリップ91,94によるデッキカバー71の前部を下側から弾性支持する負担が大きくなる。さらに、デッキカバー71が前傾した姿勢になるおそれがあり、車体両側面においてリヤフェンダ16の上端辺部16uとデッキカバー71の下端との隙間が前後方向において異なるなどして外観上の見栄えを確保できないおそれがあった。
【0094】
なお、このような課題に対して例えば、デッキカバー71下部において、車体との間に介在したウェザストリップ91,94の内部に硬質の部材を埋設して該ウェザストリップ91,94自体の弾性支持力を高めることも考えられるが、生産コスト、材料コストが嵩むとともに、支持力の調整が困難であった。
【0095】
これに対して本実施例においては、上述したように、デッキカバー71の車幅方向の左右各側の前部と車体との間に、デッキカバー71から受けるウェザストリップ91,94の負荷が無負荷となる無負荷位置より下方位置でデッキカバー71を支持するように上下位置ストッパ構造110を設けたため、該上下位置ストッパ構造110は、ウェザストリップ91,94や弾性ストッパ105の弾性力と協働でデッキカバー71を支持することができる。
【0096】
これにより、上下位置ストッパ構造110によりデッキカバー71の前部を支持することができるため、開閉ルーフ21がルーフ開放状態においてもデッキカバー71の位置精度を確保することができる。すなわち、上下位置ストッパ構造110とウェザストリップ91,94とでデッキカバー71の重量負荷を分担できるので、デッキカバー71が前傾することがない。
【0097】
従って、リヤフェンダ16の上端辺部16uとデッキカバー71の下端との間の隙間が前後方向においてズレることがなく外観上の見栄えを確保することができるとともに、車体本体11とデッキカバー71との間のシール性(閉鎖性)も確保することができる。
【0098】
しかも、上述したように、上下位置ストッパ構造110は、ウェザストリップ91,94や弾性ストッパ105の弾性力と協働でデッキカバー71を支持することができるため、デッキカバー71を支持する際の上下位置ストッパ112の負担を軽減することができる。これにより、上下位置ストッパ112を頑強に構成せずともコンパクトな構成とすることができる一方で、ウェザストリップ91,94の負担も軽減できるため、これらウェザストリップ91,94の寿命を向上させることができる。
【0099】
この発明の態様として、上下位置ストッパ構造110に備えた上下位置ストッパ112が支持位置調整手段としての調整ボルト116、ケース117および調整ナット119を有するものである(図9参照)。
【0100】
上記構成によれば、ウェザストリップ91,94の弾性が変化しても上下位置ストッパ112によるデッキカバー71の支持位置を支持位置調整手段116,117,119によって調整することで、デッキカバー71の位置精度と上下位置ストッパ112の負担軽減を両立することができる。
【0101】
またこの発明の態様として、上下位置ストッパ112が、開閉ルーフ21がルーフ閉鎖状態で乗員により支持位置調整手段としての調整ボルト116、ケース117および調整ナット119の調整操作が可能な位置に配されるものである(図5図7図9参照)。
【0102】
上記構成によれば、上下位置ストッパ112は、デッキカバー71の支持位置の調整を車室1内からでも容易に行うことができる位置に配置されている。
【0103】
詳述すると、本実施例においては、上下位置ストッパ112は、開閉ルーフ構造20のメインブラケット30の上方延出部101に取り付けられている。この取付け位置は、車室1内からシート12に座っている状態から乗員の手や工具が届き易い位置としている。本実施例においては上下位置ストッパ112は、ベルトラインの高さでリンク機構40等を備えた開閉ルーフ構造20と、Bピラー50との隙間から車室1側から手や工具を入れて調整することが可能な位置に配置している(図5図7図8)。
【0104】
また、本実施例においては、上下位置ストッパ112によるデッキカバー71の支持位置の調整を容易に行うことができる。
詳しくは、開閉ルーフ21がルーフ閉鎖状態においては、例えば、デッキカバー71の前部は、車体との間に備えたウェザストリップ91,94だけでなく開閉ルーフ21に備えたウェザストリップ92,93によっても支持されているため(図6参照)、開閉ルーフ21がルーフ閉鎖状態においては、上下位置ストッパ112は、デッキカバー71からの負荷、すなわちストッパ受止めブラケット111に備えたストッパ受け部115からの負荷が殆ど加わらない無負荷の状態とすることができる。
よって、上下位置ストッパ112によるデッキカバー71の支持位置の調整を乗員によって容易に行うことができる。
【0105】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、この発明の格納式ルーフ付き自動車は本実施例のオープンカー10に対応し、以下同様に、
後側開閉部材はデッキカバー71に対応し、
弾性部材はウェザストリップ52R,91〜94および弾性ストッパ105に対応し、
支持位置調整手段は調整ボルト116、ケース117および調整ナット119に対応するも、この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【0106】
例えば、本発明の上下位置ストッパ構造は、上述した上下位置ストッパ構造110のように、ストッパ受止めブラケット111をデッキカバー71側に設けるとともに、上下位置ストッパ112を車体本体11側のメインブラケット30に設けたが、この構成に限らない。
【0107】
具体的には、図12(a)、(b)に示す上下位置ストッパ構造110Aのように、デッキカバー71側に上下位置ストッパ112Aを設け、メインブラケット30にストッパ受止めブラケット111Aを設けてもよい。
図12(a)は図9に相当する他の実施例の上下位置ストッパを説明する要部拡大図、図12(b)は図5に相当する他の実施例の上下位置ストッパを説明する要部拡大図である。また、上下位置ストッパ構造110Aの構成のうち、上述した上下位置ストッパ構造110と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0108】
この構成の場合、メインブラケット30に設けられたストッパ受止めブラケット111Aは、メインブラケット30の外面に取り付けられており、ストッパ取付ブラケット121のストッパ取付部123の代わりにストッパ受け部115Aを構成している。
【0109】
一方、上下位置ストッパ112Aは、ブラケット125を介してデッキカバー71のインナパネル78に接合固定されており、調整ボルト116の支持部116aが下側に位置するように配設されている。ブラケット125は、上下位置ストッパ112Aを前後両側から保持する一対の保持片125a,125aが設けられている(図12(b)参照)。
【0110】
上記構成により、調整ボルト116の支持部116aがストッパ受け部115Aの上面に当接することでデッキカバー71を支持することができるとともに、デッキカバー71側に備えた上下位置ストッパ112Aによりデッキカバー71の支持位置を調整することができる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
以上説明したように、本発明は、車室上方を覆う開閉ルーフと、開閉可能な後側開閉部材が設けられた格納式ルーフ付き自動車の上部車体構造について有用である。
【符号の説明】
【0112】
1…車室
10…オープンカー(格納ルーフ付き自動車)
21…開閉ルーフ
52R,91〜94…ウェザストリップ(弾性部材)
71…デッキカバー(後側開閉部材)
105…弾性ストッパ(弾性部材)
112,112A…上下位置ストッパ
116…調整ボルト(支持位置調整手段)
117…ケース(支持位置調整手段)
119…調整ナット(支持位置調整手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12