(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1金属ポスト、前記第2金属ポスト、前記第1線状導体パターンおよび前記第2線状導体パターンを含むコイルに対して、磁芯を構成する磁性体をさらに備える、請求項2から4のいずれかに記載の無線ICデバイス。
前記ヘリカル状のコイルは、前記Y軸方向から視て内外径の異なる複数種のループを含み、前記ヘリカル状のコイルの2つの開口面位置のループは、前記複数種のループのうち内外径の最も大きいループである、請求項8に記載の無線ICデバイス。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者等は、上記小型のRFIDタグを開発する過程で、特許文献1,2に示されるようなRFIDタグにおいては、次のような課題があることを見いだした。
【0005】
(a)特許文献1,2に示されるRFIDタグは、RFICチップがコイルアンテナの中心軸上またはそのコイル開口内に配置されたものである。そのため、RFICチップを実装するための電極(ランドパターン)がコイルアンテナの巻回軸と交差する。その結果、RFICチップ実装用電極およびRFICチップが、コイルアンテナによる磁界の形成を妨げてしまう傾向にある。なお、RFICチップをコイル開口の外側に配置すれば、磁界の形成を妨げにくくなるが、占有面積が大きくなってしまう。
【0006】
(b)RFICチップがコイルアンテナの中心軸上またはそのコイル開口内に配置されたものであるため、RFICチップが備える各種回路が磁界の影響を受け、RFICチップの誤動作を引き起こす可能性がある。また、コイルアンテナが微弱な磁界を送受信している場合には、RFICチップが備えるデジタル回路部から発生するノイズにより、コイルアンテナの性能劣化(感度劣化)を引き起こす可能性がある。
【0007】
(c)特に、コイルアンテナをシート積層工法で製造する場合に、シートの積みずれ(積層位置精度)や積層体の平坦性を考慮する必要があり、シートの積層数の増加やコイルパターンの厚膜化には限界がある。そのため、得られるインダクタンス値には制限があるし、特に直流抵抗(DCR:direct current resistance)の小さなコイルアンテナを得ることは難しい。なお、シートの面方向にコイル巻回軸が向くようにコイルパターンを形成することは可能であるが、この場合には上記シートの積層数の限界により、コイル開口面積を大きくすることは困難であるし、直流抵抗の小さなコイルアンテナを得ることは難しい。
【0008】
そこで、本発明の目的は、優れた電気特性を有する、特に直流抵抗の低減が可能なコイルアンテナを備え、RFICチップとコイルアンテナとの相互干渉が少ない無線ICデバイス、および上記無線ICデバイスを備える樹脂成型体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の無線ICデバイスは、
樹脂成型体に内蔵される無線ICデバイスであって、
第1面および前記第1面に対向する第2面を有する樹脂部材と、
第1主面および前記第1主面に対向する第2主面を有し、前記第2主面側が前記樹脂部材の前記第2面側となるように、前記樹脂部材の前記第2面側寄りに埋設された基板と、
前記基板の前記第1主面に搭載されたRFIC素子と、
前記RFIC素子に接続されたコイルアンテナと、
を備え、
前記コイルアンテナは、前記樹脂部材の前記第1面および前記第2面に沿った巻回軸を有し、
前記RFIC素子は、前記コイルアンテナの内側に配置され、前記基板に形成された層間導体を介して前記コイルアンテナに接続されていることを特徴とする。
【0010】
この構成により、RFIC素子等の表面実装チップ部品と給電端子等との間の接続部や表面実装部品に、大きな熱的負荷が加わり難くなる。そのため、無線ICデバイスを樹脂成型物体(玩具や容器等)に埋め込んだ場合でも、表面実装チップ部品の動作信頼性を確保でき、表面実装部品と給電端子等との間の接続部の信頼性を高めることもできる。すなわち、樹脂成型体に内蔵可能な、つまり、射出成型時の高温下にも耐えられる、高耐熱性の無線ICデバイスを実現できる。
【0011】
また、コイルアンテナの内側にRFIC素子等の表面実装チップ部品が配置されるので、無線ICデバイス全体は堅牢である。特にRFIC素子が無線ICデバイスの外方へ露出しないように容易に構成できるため、RFIC素子の保護機能が高くなり、RFIC素子を外部に搭載することによる大型化が避けられる。
【0012】
(2)上記(1)において、前記コイルアンテナは、前記樹脂部材の前記第2面に形成される第1線状導体パターンと、前記樹脂部材の前記第1面および前記第2面に達する第1端と第2端とを有し、かつ、前記第1端が前記第1線状導体パターン接続される第1金属ポストと、前記樹脂部材の前記第1面および前記第2面に達する第1端と第2端とを有し、かつ、前記第1端が前記第1線状導体パターンに接続される第2金属ポストと、前記樹脂部材の前記第1面に形成され、前記第1金属ポストの前記第2端と前記第2金属ポストの前記第2端とを接続する第2線状導体パターンと、を有することが好ましい。この構成によれば、コイルアンテナを構成するパターンの一部には金属ポストを利用するため、比較的大きな高さ寸法を持ち、コイル開口サイズの設計上の自由度に優れたコイル構造を容易に実現できる。また、コイルアンテナの低抵抗化が可能であるので、高感度の無線ICデバイス、または高感度の割に小型の無線ICデバイスが得られる。
【0013】
さらに、第1線状導体パターンおよび第2線状導体パターンは樹脂部材の表面に導体パターンを形成するだけで容易に構成でき、第1金属ポストおよび第2金属ポストへの第1線状導体パターンの接続が容易となる。また、比較的大きな高さ寸法を持った部分を金属ポストによって形成できるので、たとえば層間導体を有する複数の基材層を積層して高さ方向の接続部を形成する場合に比べて、接続箇所を減らすことができ、コイルアンテナの電気的信頼性が高まる。
【0014】
(3)上記(2)において、前記第1金属ポストおよび前記第2金属ポストは、前記第1線状導体パターンまたは前記第2線状導体パターンよりも長いことが好ましい。この構成では、コイルアンテナに対して金属ポストが占める割合が大きい。そのため、コイルアンテナ全体のDCRを小さくでき、Q値が高い(低損失の)コイルアンテナを得ることができる。
【0015】
(4)上記(2)または(3)において、前記基板は、前記基板の第2主面と前記樹脂部材の第2面とが同一面になるように前記樹脂部材に埋設され、前記第1線状導体パターンは、前記基板の前記第2主面と前記樹脂部材の前記第2面とに跨って形成されることが好ましい。これにより、基板の層間導体と第1線状導体パターンとの接続が容易になり、基板の層間導体と第1線状導体パターンとの接続の信頼性も高めることができる。
【0016】
(5)上記(2)から(4)のいずれかにおいて、前記第1金属ポスト、前記第2金属ポスト、前記第1線状導体パターンおよび前記第2線状導体パターンを含むコイルに対して、磁芯を構成する磁性体(例えば磁性フェライト材)をさらに備えることが好ましい。この構成により、コイルアンテナを大型化することなく、所定のインダクタンス値のコイルアンテナが得られる。
【0017】
(6)上記(2)から(5)のいずれかにおいて、前記第1線状導体パターンの数、前記第2線状導体パターンの数、前記第1金属ポストの数、前記第2金属ポストの数、はそれぞれ複数であり、
複数の前記第1線状導体パターンは、直交X,Y,Z座標系のX軸方向にそれぞれ延び、
複数の前記第2線状導体パターンは、前記直交X,Y,Z座標系のX軸方向にそれぞれ延び、
複数の前記第1金属ポストは、前記直交X,Y,Z座標系のY軸方向にそれぞれ配列され、前記直交X,Y,Z座標系のZ軸方向に延び、
複数の前記第2金属ポストは、前記直交X,Y,Z座標系のY軸方向にそれぞれ配列され、前記直交X,Y,Z座標系のZ軸方向に延び、
前記第1金属ポスト、前記第2金属ポスト、前記第1線状導体パターン、前記第2線状導体パターン、によってヘリカル状のコイルが構成されることが好ましい。
【0018】
上記構成により、ターン数の多いコイルを容易に構成できる。
【0019】
(7)上記(6)において、複数の前記第1線状導体パターンのうち少なくとも1つは、前記Z軸方向から視て前記基板の前記第2主面と重なる領域を通って、複数の前記第1金属ポストのうちの少なくとも1つの前記第1端と複数の前記第2金属ポストのうちの少なくとも1つの前記第1端とを接続していることが好ましい。つまり、RFIC素子が搭載された第1主面とは反対側の第2主面を利用して、ブリッジパターン(ジャンパー配線)を形成することができる。
【0020】
(8)上記(6)または(7)において、前記第1金属ポストの数および前記第2金属ポストの数はそれぞれ3以上であり、
複数の前記第1金属ポストおよび複数の前記第2金属ポストは、それぞれ前記Y軸方向に配列され、且つ前記Z軸方向に視て千鳥状に配置されることが好ましい。
【0021】
上記構成により、ターン数の割にはY軸方向の寸法を小さくできる。
【0022】
(9)上記(8)において、前記ヘリカル状のコイルは、前記Y軸方向から視て内外径の異なる複数種のループを含み、前記ヘリカル状のコイルの2つの開口面位置のループは、前記複数種のループのうち内外径の最も大きいループであることが好ましい。この構成により、ヘリカル状のコイルに対して磁束が出入りする実質的なコイル開口の面積を大きくできる。
【0023】
(10)上記(1)から(9)のいずれかにおいて、前記RFIC素子は、前記基板の前記第1主面に形成された配線導体パターンを介して、前記層間導体に接続されていることが好ましい。RFIC素子は、直接的に層間導体に接続してもよいが、引回し用の配線導体パターンを介して層間導体に接続することで、基板の第2主面のうちの任意の位置に層間導体を引き出すことができる。特に、これにより、上記ブリッジパターンの形成が容易になる。
【0024】
また、前記配線導体パターンの一部に、前記RFIC素子に接続するための給電端子が形成されることが好ましい。この場合、RFIC素子や実装用電極がコイルアンテナの磁界の形成を妨げにくくなり、コイルアンテナとRFIC素子との相互干渉を最小限に抑制することができる。
【0025】
(11)上記(1)から(10)のいずれかにおいて、前記RFIC素子に接続されるキャパシタをさらに備えることが好ましい。この構成により、RFIC素子とコイルアンテナとの整合用または共振周波数設定用の回路を容易に構成でき、外部の回路を無くしたり、簡素化したりできる。
【0026】
(12)本発明の樹脂成型体は、無線ICデバイスを埋め込んでなり、
前記無線ICデバイスは、
第1面および前記第1面に対向する第2面を有する樹脂部材と、
第1主面および前記第1主面に対向する第2主面を有し、前記第2主面側が前記樹脂部材の前記第2面側となるように、前記樹脂部材の前記第2面側寄りに埋設された基板と、
前記基板の前記第1主面に搭載されたRFIC素子と、
前記RFIC素子に接続されたコイルアンテナと、
を備え、
前記コイルアンテナは、前記樹脂部材の前記第1面および前記第2面に沿った巻回軸を有し、
前記RFIC素子は、前記コイルアンテナの内側に配置され、前記基板に形成された層間導体を介して前記コイルアンテナに接続されている、ことを特徴とする。
【0027】
この構成では、小型の割に高感度の無線ICデバイス、または高感度の割に小型の無線ICデバイスを埋め込んだ樹脂成型体を実現できる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、直流抵抗値が小さい等、優れた電気特性を持ったコイルアンテナを有し、かつ堅牢性や耐熱性の高い無線ICデバイスを実現することができる。また、コイル巻回軸方向の寸法制限やコイル開口面積の大きさの制限が実質的に無く、高い設計自由度をもったコイルアンテナを備える無線ICデバイスおよびその無線ICデバイスを備える樹脂成型体を容易に構成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以降、図を参照して幾つかの具体的な例を挙げて、本発明を実施するための複数の形態を示す。各図中には同一箇所に同一符号を付す。第2の実施形態以降では第1の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点について説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0031】
《第1の実施形態》
図1は第1の実施形態に係るチップ状の無線ICデバイス101の斜視図である。
図2(A)は無線ICデバイス101の平面図であり、
図2(B)は無線ICデバイス101の底面図であり、
図2(C)は基板1の平面図(第1主面PS1を視た図)である。
【0032】
無線ICデバイス101は、樹脂部材70と、第1主面PS1および第2主面PS2を有する平板状の基板1と、コイルアンテナ(後に詳述する)と、RFIC素子61とを備える。
【0033】
樹脂部材70は、
図1等に示すように、長手方向が直交X,Y,Z座標系のX軸方向に一致する直方体状である。樹脂部材70は、第1面VS1と、第1面VS1に対向する第2面VS2と、第1面VS1と第2面VS2に連接する第1側面VS3および第2側面VS4を有する。基板1は、平面形状が矩形状の平板である。基板1は例えばプリント配線板であり、代表的には両面スルーホール基板である。基板1の第1主面PS1には配線導体パターン10A,10BおよびNC端子14が形成される。これらの配線導体パターン10A,10BおよびNC端子14は、例えばCu箔のエッチング等によりパターニングされたものである。
【0034】
基板1の第1主面PS1は、樹脂部材70の第1面VS1と平行である。基板1の第1主面PS1の面積は、樹脂部材70の第1面VS1の面積よりも小さい。また、基板1の第2主面PS2の面積は、樹脂部材70の第2面VS2の面積よりも小さい。
図1等に示すように、基板1は、第2主面PS2が露出しており、第1主面PS1や側面が樹脂部材70に接するように、樹脂部材70に埋設されている。また、
図1に示すように、基板1は、基板1の第2主面PS2と樹脂部材70の第2面VS2とが同一面になるように樹脂部材70に埋設されている。この同一面となる基板1の第2主面PS2および樹脂部材70の第2面VS2に第1線状導体パターン20A,20B,20C,20D,20E,20F,20Gが形成される。
【0035】
基板1は層間接続導体11A,12Aを備える。層間接続導体11A,12Aは、基板1の第1主面PS1と第2主面PS2とを接続するための層間導体であり、スルーホールで形成されている。第1線状導体パターン20Aと配線導体パターン10Aとは層間接続導体11Aを介してそれぞれ電気的に接続され、第1線状導体パターン20Gと配線導体パターン10Bとは層間接続導体12Aを介してそれぞれ電気的に接続される。つまり、第1線状導体パターン20Aは、給電端子13を含む配線導体パターン10Aに対して直列に接続され、第1線状導体パターン20Gは、給電端子13を含む配線導体パターン10Bに対して直列に接続される。なお、層間接続導体11A,12Aは、上記のようなスルーホール導体型の層間導体であってもよいが、基板の端面に塗布等により導体を形成した端面導体型の層間導体であってもよいし、基板に貫通孔を形成し、ここに導電性ペースト等を充填してなるビアホール型の層間導体であってもよい。
【0036】
また、無線ICデバイス101は第1金属ポスト30A,30B,30C,30D,30E,30Fおよび第2金属ポスト40A,40B,40C,40D,40E,40Fを有する。これらの金属ポストは柱状の金属塊である。より具体的には、第1金属ポスト30A,30B,30C,30D,30E,30Fおよび第2金属ポスト40A,40B,40C,40D,40E,40Fは、いずれも例えば円柱状のCu製ピンである。例えば、断面円形のCuワイヤーを所定長単位で切断することで得られる。なお、この断面形状は必ずしも円形である必要は無い。そのアスペクト比(高さ/底面の直径)は、ハンドリング性の点から5〜30が好ましい。
【0037】
第1金属ポスト30A〜30Fは、樹脂部材70の第2面VS2に対して法線方向へ延びるように配置され、かつ、樹脂部材70の第1面VS1および第2面VS2に達する。また、第1金属ポスト30A〜30Fは、
図1に示すように、樹脂部材70の第1側面VS3の近傍に配置されている。第1金属ポスト30A〜30Fの第1端は、第1線状導体パターン20A〜20Gに接続される。
【0038】
より詳しく説明すると、第1金属ポスト30Aの第1端は第1線状導体パターン20Aに接続される。第1金属ポスト30Bの第1端は第1線状導体パターン20Bに接続される。第1金属ポスト30Cの第一端は第1線状導体パターン20Cに接続される。第1金属ポスト30Dの第1端は第1線状導体パターン20Dに接続される。第1金属ポスト30Eの第1端は第1線状導体パターン20Eに接続される。第1金属ポスト30Fの第1端は第1線状導体パターン20Fに接続される。
【0039】
第2金属ポスト40A〜40Fは、樹脂部材70の第2面VS2に対して法線方向へ延びるように配置され、かつ、樹脂部材70の第1面VS1および第2面VS2に達する。また、第2金属ポスト40A〜40Fは、
図1に示すように、樹脂部材70の第2側面VS4の近傍に配置されている。第2金属ポスト40A〜40Fの第1端は、第1線状導体パターン20A〜20Gに接続される。
【0040】
より詳しく説明すると、第2金属ポスト40Aの第1端は第1線状導体パターン20Bに接続される。第2金属ポスト40Bの第1端は第1線状導体パターン20Cに接続される。第2金属ポスト40Cの第一端は第1線状導体パターン20Dに接続される。第2金属ポスト40Dの第1端は第1線状導体パターン20Eに接続される。第2金属ポスト40Eの第1端は第1線状導体パターン20Fに接続される。第2金属ポスト40Fの第1端は第1線状導体パターン20Gに接続される。
【0041】
また、無線ICデバイス101は、樹脂部材70の第1面VS1に形成される第2線状導体パターン50A,50B,50C,50D,50D,50E,50Fを有する。第2線状導体パターン50A〜50Fの第1端は第1金属ポスト30A〜30Fの第2端に接続され、第2線状導体パターン50A〜50Fの第2端は第2金属ポスト40A〜40Fの第2端に接続される。
【0042】
より詳しく説明すると、第2線状導体パターン50Aの第1端は第1金属ポスト30Aの第2端に接続され、第2線状導体パターン50Aの第2端は第2金属ポスト40Aの第2端に接続される。第2線状導体パターン50Bの第1端は第1金属ポスト30Bの第2端に接続され、第2線状導体パターン50Bの第2端は第2金属ポスト40Bの第2端に接続される。第2線状導体パターン50Cの第1端は第1金属ポスト30Cの第2端に接続され、第2線状導体パターン50Cの第2端は第2金属ポスト40Cの第2端に接続される。第2線状導体パターン50Dの第1端は第1金属ポスト30Dの第2端に接続され、第2線状導体パターン50Dの第2端は第2金属ポスト40Dの第2端に接続される。第2線状導体パターン50Eの第1端は第1金属ポスト30Eの第2端に接続され、第2線状導体パターン50Eの第2端は第2金属ポスト40Eの第2端に接続される。第2線状導体パターン50Fの第1端は第1金属ポスト30Fの第2端に接続され、第2線状導体パターン50Fの第2端は第2金属ポスト40Fの第2端に接続される。
【0043】
このように、無線ICデバイス101の第1線状導体パターン20A〜20Gの数、第2線状導体パターン50A〜50Fの数、第1金属ポスト30A〜30Fの数、第2金属ポスト40A〜40Fの数はそれぞれ複数である。
【0044】
第1線状導体パターン20A〜20Gは、直交X,Y,Z座標系のX軸方向に延び、第2線状導体パターン50A〜50Fは直交X,Y,Z座標系のX軸方向に延びる。ここで、「X軸方向に延びる」の意味は、第1線状導体パターン20A〜20Gおよび第2線状導体パターン50A〜50Fがすべて平行であることに限るものではなく、第1線状導体パターン20A〜20Gおよび第2線状導体パターン50A〜50Fが延びる方向が概略的にX軸方向を向くこと、すなわち実質的にX軸方向に延びること、をも含む。
【0045】
第1金属ポスト30A〜30Fは、直交X,Y,Z座標系のY軸方向に配列され、直交X,Y,Z座標系のZ軸方向に延びる。同様に、第2金属ポスト40A,40B,40C,40D,40E,40Fは、直交X,Y,Z座標系のY軸方向に配列され、直交X,Y,Z座標系のZ軸方向に延びる。つまり、これらの金属ポストは互いに平行である。
【0046】
なお、本実施形態に係る無線ICデバイス101において、第1金属ポスト30A〜30Fおよび第2金属ポスト40A〜40Fは、円柱状の側部が樹脂部材70の第1側面VS3および第2側面VS4に埋設されているが、この構成に限るものではない。第1金属ポスト30A〜30Fおよび第2金属ポスト40A〜40Fの側部が、樹脂部材70の第1側面VS3および第2側面VS4から一部露出する構成であってもよい。
【0047】
第1線状導体パターン20A〜20G、第1金属ポスト30A〜30F、第2線状導体パターン50A〜50Fおよび第2金属ポスト40A〜40Fによって6ターンのヘリカル状コイルアンテナが構成される。なお、上記コイルアンテナのコイル開口は、
図1に示すように、長手方向が直交X,Y,Z座標系のX軸方向に一致する矩形状である。
【0048】
また、本実施形態では、樹脂部材70および基板1等によって形成される無線ICデバイス101本体は、長手方向が直交X,Y,Z座標系のX方向に一致する直方体状であり、コイル軸方向の端面(Y軸方向の両端面)の面積は、第1面VS1および第2面VS2(
図1におけるZ軸方向の両端面)に比べて大きい。
【0049】
配線導体パターン10Aの給電端子13および配線導体パターン10Bの給電端子13には、RFICチップ(ベアチップ)がパッケージングされたRFIC素子61が接続される(実装される)。
図1に示すように、RFIC素子61は、基板1の第1主面PS1に搭載され、樹脂部材70に埋設される。RFIC素子61は、ベアチップ状のRFICチップであってもよい。この場合、RFICチップはAu電極端子を持ち、給電端子13のAuメッキ膜に対して超音波接合により接続される。RFICチップと給電端子13(ランドパターン)とはワイヤーで接続されていてもよい。
【0050】
また、無線ICデバイス101には、基板1にRFIC素子61だけでなくチップキャパシタ62,63が実装される。チップキャパシタ62,63は、RFIC素子61と同様に、配線導体パターン10Aおよび配線導体パターン10Bに接続されており、基板1の第1主面PS1に搭載され、樹脂部材70に埋設される。
【0051】
図3は無線ICデバイス101の回路図である。RFIC素子61に上記コイルアンテナANTが接続され、コイルアンテナANTにチップキャパシタ62,63が並列接続される。コイルアンテナANTとチップキャパシタ62,63とRFIC素子61自身が持つ容量成分とでLC共振回路が構成される。チップキャパシタ62,63のキャパシタンスは上記LC共振回路の共振周波数がRFIDシステムの通信周波数と実質的に等しい周波数(例えば13.56MHz)となるように選定される。チップキャパシタ62,63の一方は粗調整用のキャパシタ、他方は微調整用のキャパシタである。なお、共振周波数設定用のキャパシタは1つでもよい。
【0052】
「RFIC素子」は、RFICチップそのものであってもよいし、整合回路等を設けた基板にRFICチップを搭載し、一体化したRFICパッケージであってもよい。また、「RFIDタグ」は、RFIC素子とRFIC素子に接続されたコイルアンテナとを有したものであって、電波(電磁波)または磁界を用いて、内蔵したメモリのデータを非接触で読み書きする情報媒体と定義する。つまり、本実施形態の無線ICデバイスはRFIDタグとして構成される。
【0053】
RFIC素子61はHF帯RFIDシステム用の例えばHF帯の高周波無線ICチップを備える。無線ICデバイス101は、例えば管理対象の物品に設けられる。その物品に取り付けられた無線ICデバイス101(つまりRFIDタグ)をリーダ/ライタ装置に近接させることで、無線ICデバイス101のコイルアンテナとRFIDのリーダ/ライタ装置のコイルアンテナとが磁界結合する。このことで、RFIDタグとリーダライタ装置との間でRFID通信がなされる。
【0054】
本実施形態によれば次のような効果を奏する。
【0055】
(a)コイルアンテナを構成するパターンの一部には金属ポストを利用するため、多層基板にコイルを形成する必要がなく、複雑な配線を引回す必要もない。また、この構成により、比較的大きな高さ寸法を持ち、コイル開口サイズの設計上の自由度に優れたコイル構造を容易に実現できる。さらに、コイルアンテナの低抵抗化が可能であるので、高感度の無線ICデバイス、または高感度の割に小型の無線ICデバイスが得られる。
【0056】
(b)RFIC素子61の実装面はコイルアンテナの巻回軸(Y軸)に平行方向であるため、RFIC素子61の実装用電極(ランドパターン)がコイルアンテナの磁界の形成を妨げにくい。また、コイルアンテナの磁界によるRFIC素子61への悪影響(誤動作や不安定動作等)が小さい。さらにRFIC素子61のデジタル回路部から発生するノイズによるコイルアンテナへの悪影響(受信感度の低下・送信信号の受信回路への回り込み等)が小さい。
【0057】
(c)コイルの一部は金属ポストで構成されるが、この金属ポストは、ポスト自身が持つ直流抵抗成分を、導電性ペーストの焼成による焼結金属体や、導電性薄膜のエッチングによる薄膜金属体等の導体膜のDCRより十分に小さくできるので、Q値が高い(低損失の)コイルアンテナが得られる。
【0058】
(d)後に詳述するように、コイルを構成するパターンのうち、X軸方向に延びる第1線状導体パターン20A〜20Gおよび第2線状導体パターン50A〜50Fは、全てCu等のめっき膜を形成することにより、膜厚を厚くできる。そのため、コイルの直流抵抗成分をさらに低減できる。
【0059】
(e)RFIC素子に接続されるキャパシタを備えるため、RFIC素子とコイルアンテナとの整合用または共振周波数設定用の回路を容易に構成でき、外部の回路を無くしたり、簡素化したりできる。
【0060】
(f)このチップ状の無線ICデバイス101は、RFIC素子61、チップキャパシタ62,63等の表面実装チップ部品および金属ポスト30A〜30F、40A〜40Fは樹脂部材70で保護されるので、無線ICデバイス全体は堅牢である。特に、この無線ICデバイスを樹脂成型物品に埋設する際、射出成型時に流動する高温の樹脂(例えば300℃以上の高温樹脂)に対して上記表面実装チップ部品のはんだ接続部が保護される。また、RFIC素子61、チップキャパシタ62,63等は、コイルアンテナを構成する金属ポスト30A〜30F、40A〜40F、配線導体パターン10A,10Bおよび第1線状導体パターン20A〜20G等によって囲まれたエリアに配置され、且つ、樹脂部材70および基板1によって囲まれている。この構成により、表面実装チップ部品(RFIC素子61およびチップキャパシタ62,63)と給電端子13等(配線導体パターン10A,10B)との間の接続部や表面実装部品に、大きな熱的負荷が加わり難くなる。そのため、無線ICデバイス101を樹脂成型物体(玩具や容器等)に埋め込んだ場合でも、表面実装チップ部品の動作信頼性を確保でき、表面実装部品と給電端子13(配線導体パターン10A,10B)との間の接続部の信頼性を高めることもできる。すなわち、樹脂成型体に内蔵可能な、つまり、射出成型時の高温下にも耐えられる、高耐熱性の無線ICデバイスを実現できる。また、はんだ接合部は高温化で一旦溶融する場合でも、樹脂部材70と基板1は樹脂同士の接合により接着しており、実装部品や金属ポストが外れたり変形したりしないので、冷却後、はんだ接合部の接合状態は正常に戻る。また、そのため、コイルアンテナのインダクタンス値を維持できる。
【0061】
(g)コイルアンテナの内側にRFIC素子61、チップキャパシタ62,63等の表面実装チップ部品が配置されるので、無線ICデバイス全体は堅牢である。特にRFIC素子61が無線ICデバイス101の外方へ露出しないように容易に構成できるため、RFIC素子61の保護機能が高くなり、RFIC素子61を外部に搭載することによる大型化が避けられる。
【0062】
(h)第1線状導体パターン20A〜20Gおよび第2線状導体パターン50A〜50Fは、樹脂部材70の表面および基板1の表面にパターニングすればよいので、その形成が容易である。また、第1金属ポスト30A〜30Cおよび第2金属ポスト40A〜40Cへの第1線状導体パターン20A〜20Gの接続が容易であり、第1金属ポスト30A〜30Cおよび第2金属ポスト40A〜40Cへの第2線状導体パターン50A〜50Fの接続が容易である。さらに、基板の層間導体と第1線状導体パターンとの接続を容易にすることができる。また、比較的大きな高さ寸法を持った部分を金属ポストによって形成できるので、たとえば層間導体を有する複数の基材層を積層して高さ方向の接続部を形成する場合に比べて、接続箇所を減らすことができ、コイルアンテナの電気的信頼性が高まる。
【0063】
(i)無線ICデバイス101では、基板1の第2主面PS2と樹脂部材70の第2面VS2とが同一面になるように基板1を樹脂部材70に埋設され、第1線状導体パターン20A,20Gが基板1の第2主面PS2と樹脂部材70の第2面VS2とに跨って形成される構造である。これにより、基板1の層間導体11A,12Aと第1線状導体パターン20A,20Gとの接続が容易になり、基板1の層間導体11A,12Aと第1線状導体パターン20A,20Gとの接続の信頼性も高めることができる。
【0064】
(j)基板1に金属ポスト(第1金属ポスト30A〜30F、第2金属ポスト40A〜40F)を実装する構成ではないため、基板1に金属ポストを実装するためのランドを形成する必要がなく、狭いピッチで金属ポストを配列することができる。そのため、ターン数の割には(つまり金属ポストの本数が増えても)、小型化できる。
【0065】
(k)また、第1線状導体パターン20B〜20Fは、Z軸方向から視て基板1の第2主面PS2と重なる領域を通って、第1金属ポスト30A〜30Fの第1端と第2金属ポスト40A〜40Fの第1端とを接続している。つまり、RFIC素子60が搭載された第1主面PS1とは反対側の第2主面PS2を利用して、ブリッジパターン(ジャンパー配線)を形成することができる。
【0066】
(l)無線ICデバイス101のRFIC素子60は、基板1の第1主面PS1に形成された配線導体パターン10A,10Bを介して、層間導体11A,12Aに接続されている。そのため、上記ブリッジパターンの形成が容易になる。なお、RFIC素子60は、直接的に層間導体11A,12Aに接続してもよいが、引回し用の配線導体パターン10A,10Bを介して層間導体11A,12Aに接続することで、基板1の第2主面PS2のうちの任意の位置に層間導体11A,12Aを引き出すことができる。
【0067】
(m)配線導体パターン10A,10Bに給電端子13が形成され、給電素子にRFIC素子60が接続されているため、RFIC素子60や実装用電極がコイルアンテナの磁界の形成を妨げにくくなり、コイルアンテナとRFIC素子60との相互干渉を最小限に抑制することができる。
【0068】
図4は無線ICデバイス101の、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fの中央高さでの横断面図である。
図5は参考例の無線ICデバイスの金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fの中央高さでの横断面図である。本実施形態の無線ICデバイス101と参考例の無線ICデバイスとは、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fの配置が異なる。
【0069】
本実施形態の無線ICデバイス101および参考例の無線ICデバイスのいずれも複数の第1金属ポスト30A〜30Fおよび複数の第2金属ポスト40A〜40Fは、それぞれY軸方向に配列され、且つZ軸方向に視て千鳥状に配置される。本実施形態の無線ICデバイス101では、ヘリカル状のコイルは、内径寸法の異なる2種のループを含む。
図4に表れるように、第1金属ポスト30Aと第2金属ポスト40Aを含むループ、第1金属ポスト30Cと第2金属ポスト40Cを含むループ、第1金属ポスト30Dと第2金属ポスト40Dを含むループ、第1金属ポスト30Fと第2金属ポスト40Fを含むループ、のそれぞれの開口幅はWwである。また、第1金属ポスト30Bと第2金属ポスト40Bを含むループ、第1金属ポスト30Eと第2金属ポスト40Eを含むループ、のそれぞれの開口幅はWnである。そして、Wn<Wwである。一方、参考例の無線ICデバイスでは、
図5に表れるように、いずれのループの開口幅はWで同じである。
【0070】
本実施形態の無線ICデバイス101では、ヘリカル状のコイルアンテナの2つの開口面位置のループ(第1金属ポスト30Aと第2金属ポスト40Aを含むループ、および、第1金属ポスト30Fと第2金属ポスト40Fを含むループ)の内径寸法は、2種のループのうち内径寸法の大きい方のループである。
【0071】
換言すると、複数の第1金属ポスト30A〜30Fのうち、Y軸方向での第1端位置の第1金属ポスト30Aと、複数の第2金属ポスト40A〜40Fのうち、Y軸方向での第1端位置の第2金属ポスト40Aと、を含むループを「第1ループ」と表し、複数の第1金属ポスト30A〜30Fのうち、Y軸方向での第2端位置の第1金属ポスト30Fと、複数の第2金属ポスト40A〜40Fのうち、Y軸方向での第2端位置の第2金属ポスト40Fと、を含むループを「第2ループ」と表すと、第1ループ、第2ループの内径寸法は、2種のループのうち内径寸法の大きいループである。
【0072】
図4および
図5において、破線はヘリカル状のコイルアンテナに対して磁束が出入りする磁束の概念図である。参考例では、ヘリカル状のコイルアンテナの2つの開口面位置のループの実質的な内径寸法は上記ループの開口幅はWより小さい。また、磁束は隣接する金属ポストの間隙から漏れやすい。本実施形態によれば、ヘリカル状のコイルアンテナの2つの開口面位置のループの内径寸法は、2種のループのうち内径寸法の大きいループであるので、コイルアンテナに対して磁束が出入りする実質的なコイル開口は参考例に対して大きい。また、磁束は隣接する金属ポストの間隙から漏れ難い。そのため、コイルアンテナは通信相手のアンテナに対して相対的に広い位置関係で磁界結合できる。つまり、3つ以上のターン数を持つヘリカル状のコイルアンテナを形成する場合、金属ポストを、コイル軸方向の両端側のループ面積が大きくなるように配置することが好ましい。
【0073】
なお、上記ヘリカル状のコイルは、内径寸法の異なる3種以上の複数種のループを含んでもよい。その場合でも、コイルアンテナの2つの開口面位置のループの内径寸法は、複数種のループのうち内径寸法の最も大きいループであればよい。
【0074】
図4に示すような上記構成によれば次のような効果を奏する。
【0075】
(n)コイルアンテナの実質的な開口径が大きいので、通信相手のアンテナに対して相対的に広い位置関係で通信できる。
【0076】
(o)複数の第1金属ポストおよび複数の第2金属ポストは、少なくともコイル軸方向の端部においてそれぞれ配列方向に千鳥状に配置されることにより、ターン数の割には(つまり金属ポストの本数が増えても)、小型化できる。
【0077】
本実施形態に係る無線ICデバイス101は、例えば次の工程で製造される。
図6は無線ICデバイス101の製造工程を順に示す断面図である。
【0078】
まず、
図6中の(1)に示すように、基板1を準備する。具体的には、基板1の第1主面PS1に配線導体パターン10A,10BやRFIC素子を実装するためのランド(給電端子13やNC端子14)、チップキャパシタを実装するためのランド、これらランド同士を接続するための引回しパターン等を形成する。さらに、基板1の厚み方向には、配線導体パターン10A,10Bを第1線状導体パターン20A,20Gに接続するための層間接続導体を形成する(
図2(B),
図2(C)参照)。このとき、基板1の第2主面側に導体パターンは形成されていない。
【0079】
次に、基板1の配線導体パターン10A,10Bに、RFIC素子61、チップキャパシタ62,63をそれぞれはんだ等の導電性接合材を介して実装する。すなわち、はんだを使う場合、基板1の第1主面PS1の各電極(配線導体パターン10A,10B)にはんだペーストを印刷し、各部品をマウンターで実装した後、これら部品をリフロープロセスではんだ付けする。この構成により、RFIC素子61、チップキャパシタ62,63を基板1に電気的に導通させ、且つ構造的に接合する。
【0080】
基板1は、例えばガラスエポキシ基板や樹脂基板等のプリント配線板である。基板1の第1主面PS1上に形成された配線導体パターンやランドは、銅箔をパターンニングしたものである。基板1は、セラミック基板に厚膜パターンを形成したものであってもよい。層間接続導体は、例えば基板1を貫通する貫通孔の内壁にめっき膜を付与したスルーホールである。
【0081】
例えば、配線導体パターン10A,10Bの断面寸法は、厚み18μm×幅100μmである。これらのパターンニングを行った後に、Cu等のめっきを施してトータル膜厚を例えば40〜50μmに厚くすることが好ましい。
【0082】
RFIC素子61はRFIDタグ用のRFICチップをセラミック基板に実装し、パッケージングしたものである。チップキャパシタ62,63は例えば積層型セラミックチップ部品である。
【0083】
次に、
図6中の(2)に示すように、粘着層2を有する台座3上の粘着層2に基板1、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fをそれぞれ実装する。基板1は、第2主面PS2側が粘着層2を介して台座3に実装される。金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fの第1端側を台座3側にして、立てた状態で実装される。この構成により、基板1、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fを台座3に強固に固定した状態で実装する。
【0084】
粘着層2は、例えば、粘着性を有する樹脂である。金属ポスト30A〜30F,40A〜40FはそれぞれCu製のポストである。また、これら金属ポストは、例えば直径0.3mm、長さ7mm程度の円柱状である。金属ポストは、Cuを主成分としたものに限定されるわけではないが、導電率や加工性の点でCuを主成分としたものが好ましい。
【0085】
次に、
図6中の(3)に示すように、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fと同じ高さ(少なくともRFIC素子61および基板1が埋設する高さ)まで樹脂部材70を形成(樹脂を被覆)する。具体的には、エポキシ樹脂等を所定高さ(金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fの高さ以上)に塗布し、その後、樹脂部材70の表面を平面的に研磨(または切削)していくことで、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fの頭部を露出させる。なお、エポキシ樹脂等を所定高さ(金属ポストの高さ以下)に塗布し、その後、樹脂部材70を金属ポストごと平面的に研磨(または切削)することで、樹脂部材70の表面から金属ポストの頭部を露出させてもよい。
【0086】
樹脂部材70は、液状樹脂の塗布により設けてもよいし、半硬化シート状樹脂の積層によって設けてもよい。
【0087】
次に、
図6中の(4)に示すように、樹脂部材70の表面に第2線状導体パターン50A〜50Fを形成する。具体的には、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fの頭部が露出する樹脂部材70の第1面VS1にめっき法等によってCu膜等の導体膜を形成し、これをフォトレジスト膜形成およびエッチングによってパターニングする。また、導電性ペーストをスクリーン印刷することによって第2線状導体パターン50A〜50Fを形成してもよい。これにより、第2線状導体パターン50A〜50Fは金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fに接続される。
【0088】
次に、
図6中の(5)に示すように、樹脂部材70から、粘着層2を有する台座3を取り除き、樹脂部材70の第2面VS2および基板1の第2主面PS2に第1線状導体パターン20A〜20Gを形成する。
【0089】
具体的には、樹脂部材70の第2面VS2および基板1の第2主面PS2から台座3を取り除き、樹脂部材70(粘着層2および基板1ごと)を第2面VS2側から平面的に研磨(または切削)していくことで、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fの頭部および層間接続導体11A,12Aを露出させる。その後、層間接続導体11A,12Aおよび金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fの頭部が露出する樹脂部材70の第2面VS2および基板1の第2主面PS2に、めっき法等によってCu膜等の導体膜を形成し、これをフォトレジストおよびエッチングによってパターニングする。また、導電性ペーストをスクリーン印刷することによって第1線状導体パターン20A〜20Gを形成してもよい。これにより、第1線状導体パターン20A〜20Gは、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fおよび配線導体パターン10A,10Bに接続される。
【0090】
なお、その後、Cu等のめっきによって、第1線状導体パターン20A〜20Gおよび第2線状導体パターン50A〜50Fにめっき膜を形成することが好ましい。Cuめっき膜の場合は、Cu等のめっき膜の表面にAuめっき膜をさらに形成してもよい。これらのことで、第1線状導体パターン20A〜20Gおよび第2線状導体パターン50A〜50Fの膜厚が厚くなり、それらのDCRが小さくなって、導体損失が低減できる。このことにより、金属ポスト30A〜30F,40A〜40FのDCRと同等程度にまで、第1線状導体パターン20A〜20Gおよび第2線状導体パターン50A〜50FのDCRを小さくできる。すなわち、この段階の素体は、外表面に第1線状導体パターンおよび第2線状導体パターンが露出したものであるため、この素体をめっき液に浸漬することにより、第1線状導体パターンおよび第2線状導体パターンの厚みを選択的に厚くすることができる(配線導体パターンの厚みに比べて、第1線状導体パターンの厚みを増やすことができる)。
【0091】
その後、必要に応じて、基板1の外面(第2主面PS2)の第1線状導体パターン20A〜20Gおよび第2線状導体パターン50A〜50Fの形成面に酸化防止用の保護用樹脂膜(ソルダーレジスト膜等)を形成する。
【0092】
なお、上記の工程は、マザー基板状態のまま処理される。最後に、マザー基板を個々の無線ICデバイス単位(個片)に分離する。
【0093】
また、無線ICデバイス101は例えば次の工程で製造されてもよい。
図7は、
図6に示す製造工程とは別の、無線ICデバイス101の製造工程を順に示す断面図である。
【0094】
まず、
図7中の(1)に示すように、RFIC素子61、チップキャパシタ62,63等を搭載した基板1を準備する。RFIC素子61、チップキャパシタ62,63は、基板1の配線導体パターン10A,10Bにそれぞれはんだ等の導電性接合材を介して実装される。
【0095】
基板1には、配線導体パターン10A,10B、ランド(給電端子13やNC端子14、チップキャパシタを実装するため)、引回しパターンや層間接続導体(スルーホール)が形成されている。
【0096】
次に、
図7中の(2)に示すように、粘着層2を有する台座3上の粘着層2に基板1、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fをそれぞれ実装する。基板1は、第2主面PS2側が粘着層2を介して台座3上に実装される。金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fの第1端側を台座3側にして、立てた状態で実装される。この構成により、基板1、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fを台座3に強固に固定した状態で実装する。
【0097】
次に、
図7中の(3)に示すように、台座3上に、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fの高さ以上の(少なくともRFIC素子61および基板1が埋設する高さまで)樹脂部材70を形成(樹脂を被覆)する。
【0098】
次に、
図7中の(4)に示すように、樹脂部材70から台座3を取り除き、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fの頭部および層間接続導体11A,12Aを樹脂部材70の表面から露出させる。
【0099】
具体的には、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fの高さ以上に塗付した樹脂部材70を金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fごと、
図7中の(3)に示した研磨線SL1まで平面的に研磨(または切削)していく。これによって、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fの頭部を樹脂部材70の表面から露出させる。なお、台座3上に形成される樹脂部材70は、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fの高さ以下であってもよい。また、樹脂部材70を台座3、基板1および金属ポストごと、
図7中の(3)に示した研磨線SL2まで平面的に研磨(または切削)していくことで、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fの頭部および層間接続導体11A,12Aを樹脂部材70の表面から露出させる。
【0100】
次に、
図7中の(5)に示すように、樹脂部材70の第1面VS1に第2線状導体パターン50A〜50Fを形成し、樹脂部材70の第2面VS2および基板1の第2主面PS2に第1線状導体パターン20A〜20Gを形成する。その後、Cu等のめっきによって、第1線状導体パターン20A〜20Gおよび第2線状導体パターン50A〜50Fにめっき膜を形成する。
【0101】
次に、
図7中の(6)に示すように、基板1の外面(第2主面PS2)の第1線状導体パターン20A〜20Gおよび第2線状導体パターン50A〜50Fの形成面に酸化防止用の保護用樹脂膜6(ソルダーレジスト膜等)を形成する。
【0102】
最後に、マザー基板を個々の無線ICデバイス単位(個片)に分離する。
【0103】
また、無線ICデバイス101は例えば次の工程で製造されてもよい。
図8は、
図6および
図7に示す製造方向とは別の、無線ICデバイス101の製造工程を示す断面図である。
【0104】
まず、
図8中の(1)に示すように、RFIC素子61、チップキャパシタ62,63等を搭載した基板1を準備する。
【0105】
次に、
図8中の(2)に示すように、台座3A上に基板1を実装する。その後、台座3A上に、少なくともRFIC素子61および基板1が埋設する高さまで樹脂部材70を形成(樹脂を被覆)する。基板1は、粘着層を介して台座3Aに実装されていてもよい。台座3Aは例えばエキポシ系樹脂である。
【0106】
次に、
図8中の(3)に示すように、樹脂部材70に、台座3Aに対して法線方向に延びる孔7を形成する。具体的には、孔7はドリルまたはレーザーによって形成され、樹脂部材70の表面から台座3Aにまで達している。なお、孔7の径は、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fの外形よりも大きく、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fを挿入することができる大きさとする。
【0107】
次に、
図8中の(4)に示すように、孔7の内部に金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fを挿入する。これにより、樹脂部材70内に、台座3Aに対して法線方向に延びるように金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fを配置することができる。
【0108】
次に、
図8中の(4)に示すように、樹脂部材70から台座3Aを取り除き、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fの頭部および層間接続導体11A,12Aを樹脂部材70の表面から露出させる。その後、樹脂部材70の第1面VS1に第2線状導体パターン50A〜50Fを形成し、樹脂部材70の第2面VS2および基板1の第2主面PS2に第1線状導体パターン20A〜20Gを形成する。
【0109】
具体的には、樹脂部材70を金属ポストごと、
図8中の(4)に示した研磨線SL1まで平面的に研磨(または切削)していくことで、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fの頭部を樹脂部材70の表面から露出させる。なお、孔7に挿入される金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fは、樹脂部材70の高さ以下であってもよい。また、樹脂部材70を台座3A、基板1および金属ポストごと、
図8中の(4)に示した研磨線SL2まで平面的に研磨(または切削)していくことで、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fの頭部および層間接続導体11A,12Aを樹脂部材70の表面から露出させる。その後、樹脂部材70の第1面VS1に第2線状導体パターン50A〜50Fを形成し、樹脂部材70の第2面VS2および基板1の第2主面PS2に第1線状導体パターン20A〜20Gを形成する。
【0110】
次に、
図8中の(6)に示すように、基板1の外面(第2主面PS2)の第1線状導体パターン20A〜20Gおよび第2線状導体パターン50A〜50Fの形成面に酸化防止用の保護用樹脂膜6(ソルダーレジスト膜等)を形成する。
【0111】
最後に、マザー基板を個々の無線ICデバイス単位(個片)に分離する。
【0112】
なお、上記製造方法に示した孔7は、樹脂部材70の表面から台座3Aにまで達する構成であるが、この構成に限定されるものではない。孔7は、樹脂部材70および台座3Aを貫通する構成であってもよく、樹脂部材70と台座3Aとの界面まで達する構成であってもよい。また、孔7が台座3Aにまで達していない構成であってもよい。上述の通り、樹脂部材70を台座3A、基板1および金属ポストごと、平面的に研磨(または切削)していくことで、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fの頭部および層間接続導体11A,12Aを樹脂部材70の表面から露出させることができればよい。すなわち、孔7が台座3Aにまで達していない構成の場合、孔7は樹脂部材70の表面から第1主面PS1よりも第2主面PS2寄りの位置にまで達している必要がある。
【0113】
さらに、無線ICデバイス101は例えば次の工程で製造されてもよい。
図9は、
図6、
図7および
図8に示す製造方法とは別の、無線ICデバイス101の製造工程を示す断面図である。
【0114】
まず、
図9中の(1)に示すように、RFIC素子61、チップキャパシタ62,63等を搭載した基板1を準備する。
【0115】
次に、
図9中の(2)に示すように、台座3Bに基板1を実装する。その後、台座3B上に樹脂部材71を形成(樹脂を被覆)する。台座3Bは所定の厚みを有し、クッション性を有する部材である。樹脂部材71は例えば半硬化状(Bステージ)のエキポシ系の樹脂である。
【0116】
次に、
図9中の(3)に示すように、樹脂部材71の表面から台座3Bに向かって金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fを刺し込む。具体的には、樹脂部材71に、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fを、台座3Bに対して法線方向へ延びるように刺し込む。金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fは、樹脂部材71の表面から台座3Aにまで達する。なお、
図9中の(3)では円錐状の金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fの例を示しているが、金属ポストはこの構成に限定されるものではない。
【0117】
次に、
図8中の(4)に示すように、樹脂部材71を硬化(半硬化状の樹脂部材71から、硬化した樹脂部材70に変化)させる。これにより、樹脂部材70内に、台座3Aに対して法線方向に延びるように金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fを配置することができる。その後、樹脂部材70から台座3Bを取り除き、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fの頭部および層間接続導体11A,12Aを樹脂部材70の表面から露出させる。
【0118】
具体的には、樹脂部材70を金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fごと、
図9中の(4)に示した研磨線SL1まで平面的に研磨(または切削)していくことで、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fの頭部を樹脂部材70の表面から露出させる。また、樹脂部材70を台座3A、基板1および金属ポストごと、
図9中の(4)に示した研磨線SL2まで平面的に研磨(または切削)していくことで、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fの頭部および層間接続導体11A,12Aを樹脂部材70の表面から露出させる。
【0119】
次に、
図9中の(5)に示すように、樹脂部材70の第1面VS1に第2線状導体パターン50A〜50Fを形成し、樹脂部材70の第2面VS2および基板1の第2主面PS2に第1線状導体パターン20A〜20Gを形成する。
【0120】
次に、
図9中の(6)に示すように、基板1の外面(第2主面PS2)の第1線状導体パターン20A〜20Gおよび第2線状導体パターン50A〜50Fの形成面に酸化防止用の保護用樹脂膜6(ソルダーレジスト膜等)を形成する。
【0121】
最後に、マザー基板を個々の無線ICデバイス単位(個片)に分離する。
【0122】
なお、上記製造方法に示す金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fは、樹脂部材70の表面から台座3Bにまで達する構成であるが、この構成に限定されるものではない。金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fは、樹脂部材70および台座3Bを貫通する構成であってもよく、樹脂部材70と台座3Bとの界面まで達する構成であってもよい。また、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fが台座3Bにまで達していない構成であってもよい。その場合には、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fが樹脂部材70の表面から第1主面PS1よりも第2主面PS2寄りの位置にまで達している必要がある。
【0123】
上記製造方法によれば、次のような効果を奏する。
【0124】
(p)コイル開口面積が大きく、直流抵抗が小さい等、優れた電気特性を持ったコイルアンテナを有し、かつ堅牢性や耐熱性の高い無線ICデバイスを容易に製造できる。
【0125】
(q)
図6に示す製造方法では、粘着層2を有する台座3を用いることにより、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fを強固に固定することができるため、より小径の金属ポストをコイルアンテナの製造に使用することができる。したがって、コイルアンテナの巻回数が多く、インダクタンスの高いコイルアンテナを製造することができる。また、比較的大きな高さ寸法を持ち、小径の金属ポストを使用することにより、コイル開口面積をさらに大きくできる。
【0126】
(r)樹脂部材70の第1面VS1を平面的に研磨(または切削)し、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fの頭部を露出させるため、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fと第2線状導体パターンとの接続が容易になる。また、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fと第2線状導体パターンとの接続部の信頼性が高まる。
【0127】
(s)樹脂部材70の第2面VS2および基板1の第2主面PS2を平面的に研磨(または切削)し、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fの頭部および層間接続導体11A,12Aを露出させる。そのため、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fと第1線状導体パターンとの接続が容易になり、層間接続導体11A,12Aと第1線状導体パターンとの接続が容易になる。また、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fと第1線状導体パターンとの接続部の信頼性が高まり、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fと層間接続導体11A,12Aとの接続部の信頼性が高まる。したがって、結果的に、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fと層間接続導体11A,12Aとの間の接続の信頼性を高めることができる。
【0128】
なお、樹脂部材70は、フェライト粉等の磁性体粉を含む構成であってもよい。その場合において、樹脂部材70は磁性を有するため、所定のインダクタンスのコイルアンテナを得るに要する全体のサイズを小さくできる。また、樹脂部材70が磁性を有する場合には、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fの側部を樹脂部材70の側面から露出させてもよい。そのことで、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fが露出する樹脂部材70の表面へも磁界が広がり、これらの方向での通信も可能となる。
【0129】
《第2の実施形態》
図10は、第2の実施形態に係る無線ICデバイス102の斜視図である。
図11は無線ICデバイス102の断面図である。
【0130】
本実施形態では、コイルアンテナに対する磁芯として作用するフェライト焼結体等の焼結体系の磁性体コア4を備える。また、樹脂層70A,70B,70Cで非磁性体の樹脂部材が構成される。その他の全体的な構成は第1の実施形態で示したとおりである。
【0131】
本実施形態に係る無線ICデバイス102は、例えば次の工程で製造される。
図12は無線ICデバイス102の製造工程を順に示す断面図である。
【0132】
図12中の(1)に示すように、基板1を製作し、基板1の第1主面PS1にRFIC素子61を実装する。
【0133】
次に、粘着層2を有する台座3の粘着層2に基板1、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fをそれぞれ実装する。基板1は、第2主面PS2側が粘着層2を介して台座3に実装され、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fの第1端側を粘着層2側にして、台座3に立てた状態で実装される。
【0134】
その後、台座3にエポキシ樹脂等の非磁性体の樹脂層70Aを被覆する。これにより、基板1のRFIC素子61の実装面(第1主面PS1)が樹脂層70Aに埋設される。
【0135】
図12中の(3)に示すように、樹脂層70Aの硬化後、直方体形状の磁性体コア4を載置する。この磁性体コア4は、小型で高い透磁率(例えば比透磁率50〜300程度)を有するフェライト焼結体であることが好ましい。磁性体コア4の載置は、樹脂層70Aの硬化前であってもよい。
【0136】
次に、
図12中の(4)に示すように、磁性体コア4の厚みまでエポキシ樹脂等の樹脂層70Bを被覆する。
【0137】
続いて、
図12中の(5)に示すように、金属ポスト30A〜30F,40A〜40F等の高さまでエポキシ樹脂等の樹脂層70Cを被覆する。具体的には、エポキシ樹脂等を所定高さ(金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fの高さ以上)に塗布し、その後、樹脂層70Cの表面を平面的に研磨していくことで、金属ポスト30A〜30F,40A〜40F等の頭部を露出させる。
【0138】
その後、樹脂層70Cの表面に第2線状導体パターン50A〜50Fを形成する。具体的には、金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fの頭部が露出する樹脂層70Cの表面にめっき法等によってCu膜等の導体膜を形成し、これをフォトレジスト膜形成およびエッチングによってパターニングする。また、導電性ペーストをスクリーン印刷することによって第2線状導体パターン50A〜50Fを形成してもよい。これにより、第2線状導体パターン50A〜50Fは金属ポスト30A〜30F,40A〜40Fに接続される。
【0139】
次に、
図12中の(6)に示すように、粘着層2を有する台座3を取り除き、樹脂層70Aの第2面VS2および基板1の第2主面PS2に第1線状導体パターン20A〜20Gを形成する。この第1線状導体パターン20A等の形成方法は第1の実施形態で示した通りである。
【0140】
以降のCuめっき、Auめっき、第2線状導体パターン50A〜50F側の保護用樹脂膜の形成、個片分離の各工程についても第1の実施形態で示したとおりである。基板1の裏面側の保護用樹脂膜(ソルダーレジスト膜)は、他の基板への接続部分を除いた部分を覆うように形成すればよい。
【0141】
図13は、本実施形態の別の構成例である無線ICデバイス102Aを示す断面図である。
図11と対比すれば明らかなように、磁性体コア4と第2線状導体パターン50Aとの間に樹脂層70Cは無く、樹脂層70A,70Bで樹脂部材が構成される。この構成によれば、サイズが大きく、透磁率が高い(例えば比透磁率50〜300程度)磁性体コアを埋設することができる。または、樹脂部材全体の厚みが小さくすることで低背化できる。
【0142】
本実施形態では、第1金属ポスト30A〜30F、第2金属ポスト40A〜40F、第1線状導体パターン20A〜20Gおよび第2線状導体パターン50A〜50Fでコイルアンテナが構成され、このコイルアンテナの内部(コイル巻回範囲内)に磁性体コアを備える。
【0143】
本実施形態によれば、次のような効果を奏する。
【0144】
(a)コイルアンテナを大型化することなく、所定のインダクタンスを有するコイルアンテナが得られる。また、コイルアンテナを低背にしても所定のインダクタンスを得ることができる。
【0145】
(b)磁性体コアの集磁効果により、通信相手のアンテナとの磁界結合を高めることができる。
【0146】
(c)第1線状導体パターン20A〜20G、第2線状導体パターン50A〜50Fおよび配線導体パターン10A,10Bは磁性体に埋設されないので、基板1の表面および樹脂層70Cの表面に磁界が広がり、これらの方向での通信距離が大きくなる。
【0147】
(d)RFIC素子61のデジタル信号の入出力によるノイズがコイルアンテナに殆ど重畳されない。この理由は以下に述べるとおりである。
【0148】
RFIC素子61がコイルアンテナと最短距離で接続される構造であるので、上記デジタル信号の伝搬により生じる磁界(ノイズ)はコイルアンテナと不要結合することが少なく、非常に微弱なアナログ信号回路に上記ノイズが重畳されず、無線通信に悪影響がほとんど生じない。
【0149】
《第3の実施形態》
図14は、第3の実施形態に係る無線ICデバイス103の斜視図である。本実施形態に係る無線ICデバイス103は、第1の実施形態に係る無線ICデバイス101に対して、樹脂部材70の一方の側面に磁性体シート5が貼付されている点で異なる。磁性体シート5は例えばフェライト粉等の磁性体粉がエポキシ樹脂等の樹脂中に分散された樹脂シートである。他の構成については、第1の実施形態に係る無線ICデバイス101と同じである。
【0150】
本実施形態では、第1線状導体パターン20A〜20G、第1金属ポスト30A〜30F、第2線状導体パターン50A〜50Fおよび第2金属ポスト40A〜40Fによって6ターンのヘリカル状コイルアンテナが構成される。このコイルアンテナの一方のコイル開口に磁性体シート5が存在する。
【0151】
本実施形態によれば、コイルアンテナを大型化することなく、所定のインダクタンスを有するコイルアンテナが得られる。また、このRFIDデバイスを物品(特に物品の金属表面)に貼り付ける場合、磁性体シートを設けた側を物品への貼り付け面とすることで、コイルアンテナに対する物品の影響を抑制できる。また、磁性体コアの集磁効果により、通信相手のアンテナとの磁界結合を高めることができる。
【0152】
《第4の実施形態》
図15は第4の実施形態に係る無線ICデバイス104の斜視図である。
図16(A)は無線ICデバイス104の平面図であり、
図16(B)は無線ICデバイス104の底面図であり、
図16(C)は基板1の平面図(第1主面PS1を視た図)である。
【0153】
本実施形態に係る無線ICデバイス104は、第1の実施形態に係る無線ICデバイス101に対して、樹脂部材70の長手方向が直交X,Y,Z座標系のZ軸方向に一致する直方体状である点で異なる。その他の構成については、第1の実施形態に係る無線ICデバイス101と実質的に同じである。
【0154】
本実施形態における第1金属ポスト30A〜30Fおよび第2金属ポスト40A〜40Fは、第1の実施形態に比べて、高さ寸法(直交X,Y,Z座標系のZ軸方向の高さ)が大きい。すなわち、本実施形態における第1金属ポスト30A〜30Fおよび第2金属ポスト40A〜40Fは、第1の実施形態と比べて、アスペクト比(高さ/底面の直径)が大きい。
【0155】
本実施形態では、第1線状導体パターン20A〜20G、第1金属ポスト30A〜30F、第2線状導体パターン50A〜50Fおよび第2金属ポスト40A〜40Fによって6ターンのヘリカル状アンテナコイルコイルアンテナが構成される。なお、上記コイルアンテナのコイル開口は、
図15に示すように、長手方向が直交X,Y,Z座標系のZ軸方向に一致する矩形状である。
【0156】
また、本実施形態では、樹脂部材70および基板1等によって形成される無線ICデバイス104本体は、長手方向が直交X,Y,Z座標系のZ軸方向に一致する直方体状である。なお、本実施形態に係る無線ICデバイス104の第1面VS1の面積は、第1の実施形態に係る無線ICデバイス101の第1面VS1の面積と、略同じである。
【0157】
本実施形態によれば、次のような効果を奏する。
【0158】
(a)本実施形態では、コイルアンテナに対して金属ポストが占める割合が大きい。そのため、本実施形態におけるコイルアンテナのコイル開口面積が、第1の実施形態におけるコイルアンテナと同じ場合、コイルアンテナ全体のDCRを小さくでき、Q値が高い(低損失の)コイルアンテナを得ることができる。逆に、本実施形態では、コイルアンテナ全体のDCRが第1の実施形態におけるコイルアンテナと同じ場合、第1の実施形態におけるコイルアンテナに比べて、コイルアンテナのコイル開口面積を大きくなる。そのため、通信相手のアンテナに対して相対的に広い位置関係で通信できる。
【0159】
(b)上述した通り、本実施形態に係る無線ICデバイス104の第1面VS1の面積は、第1の実施形態に係る無線ICデバイス101の第1面VS1の面積と、略同じである。すなわち、第1の実施形態に係る無線ICデバイス101と同じ個数の無線ICデバイス104を、マザー基板から分離することができる。逆に、本実施形態では、第1の実施形態に係る無線ICデバイス101に比べて、無線ICデバイスの第1面VS1の面積が小さくても、無線ICデバイス101と略同じ大きさのコイル開口面積を有する無線ICデバイスを構成できる。したがって、本実施形態によれば、無線ICデバイス101と略同じ大きさのコイル開口面積を有する無線ICデバイスを同じ面積(XY平面上の面積)のマザー基板から、より多く分離することができる。
【0160】
《第5の実施形態》
図17は、第5の実施形態に係るRFIDタグ付き物品301の斜視図である。
図18はRFIDタグ付き物品301の正面図である。このRFIDタグ付き物品301は樹脂成型によるミニチュアカー等の玩具である。このRFIDタグ付き物品301が本発明の「樹脂成型体」に相当する。
【0161】
RFIDタグ付き物品301は無線ICデバイス103Aを備える。この無線ICデバイス103Aは、第3の実施形態で示した無線ICデバイス103と基本構成は同じである。本実施形態の無線ICデバイス103Aのコイルアンテナは第1金属ポスト30A〜30Eを含み、コイルアンテナのターン数は“5”である。この無線ICデバイス103AはRFIDタグとして用いられる。
【0162】
無線ICデバイス103Aは樹脂成型体201内に埋設され、物品301の外部には露出しない。無線ICデバイス103Aは、樹脂成型体201の射出成型用金型内に固定された状態で樹脂が射出成型される。無線ICデバイス103Aは玩具の底部(
図17の視点で、RFIDタグ内蔵物品301の上面付近)に埋設される。また、無線ICデバイス103Aの磁性体シート5は、コイルアンテナより樹脂成型体201の内部(奥部)に位置する。樹脂成型体201の内部には、例えばバッテリーパック130や金属部材131等の導電体を備える。これらの導電体とコイルアンテナとの間に磁性体シート5が介在することで、コイルアンテナは上記導電体の影響を受け難く、また渦電流による損失も低く抑えられる。
【0163】
RFIC素子61等は、他の実施形態に係る無線ICデバイスと同様に、樹脂部材70で保護されるので、無線ICデバイス103Aは堅牢である。そして、射出成型時に高熱にて流動する樹脂に対して上記表面実装チップ部品のはんだ接続部が保護される。すなわち、射出成型時の熱によって上記表面実装チップ部品のはんだ接続部のはんだは一旦溶融しても、RFIC素子61等の表面実装チップ部品と基板との位置関係は樹脂部材70で固定されたままである。例えば射出成型金型の温度は100数十℃であるが、射出成型用ノズル先端部の温度は300数十℃にも達する。そのため、上記表面実装チップ部品のはんだ接続部のはんだは一旦溶融する可能性がある。しかし、たとえはんだが一旦溶融しても、上記表面実装チップ部品と基板1との位置関係は樹脂部材70で保持・固定されたままであるので、冷却後は上記表面実装チップ部品のはんだ接続部は、射出成型前の接続状態に戻る。因みに、ポリイミド系の樹脂膜で被覆されたCuワイヤーが巻回された、通常の巻線型コイル部品であると、射出成型時の熱で被覆が溶けてCuワイヤー間が短絡してしまう。そのため、従来の通常の巻線型コイル部品をコイルアンテナとして利用することは困難である。
【0164】
無線ICデバイス103Aのコイルアンテナの巻回軸は、ミニチュアカー等の玩具の底面に対する法線方向を向く。そのため、この玩具の底面をリーダ/ライタ装置の読み取り部に対向させることで、リーダ/ライタ装置は無線ICデバイス103Aと通信する。このことで、リーダ/ライタ装置またはリーダ/ライタ装置に接続されるホスト装置は所定の処理を行う。
【0165】
なお、本実施形態では、RFIDタグ付き物品301が樹脂成型による玩具である例を示したが、これに限定されるものではない。RFIDタグ付き物品は、樹脂成型により無線ICデバイスを埋設した食品等の容器であってもよい。
【0166】
《第6の実施形態》
図19はRFIDタグ内蔵物品302の断面図である。
図20は
図19の部分拡大図である。
【0167】
RFIDタグ内蔵物品302は例えばスマートフォン等の携帯電子機器であり、無線ICデバイス102および共振周波数を持つブースターアンテナ120を備える。
図19の視点でRFIDタグ内蔵物品302の上面側に下部筐体202があって、下面側に上部筐体203がある。下部筐体202と上部筐体203とで囲まれる空間の内部に、回路基板200、無線ICデバイス102および共振周波数を持つブースターアンテナ120を備える。
【0168】
無線ICデバイス102は第2の実施形態で示したとおりである。無線ICデバイス102は、
図20に表れるように、粘着シート150を介してブースターアンテナ120に貼付される。回路基板200にはバッテリーパック130や、それ以外の部品が実装される。
【0169】
共振周波数を持つブースターアンテナ120は下部筐体202の内面に貼付される。このブースターアンテナ120はバッテリーパック130と重ならない位置に配置される。ブースターアンテナ120は、絶縁体基材123および絶縁体基材123に形成されるコイルパターン121,122を含む。
【0170】
無線ICデバイス102は、そのコイルアンテナおよびブースターアンテナ120に対して磁束が鎖交するように配置される。すなわち、無線ICデバイス102のコイルアンテナはブースターアンテナ120のコイルと磁界結合するように、無線ICデバイス102とブースターアンテナ120は配置される。
図20中の破線はその磁界結合に寄与する磁束を概念的に表す。
【0171】
無線ICデバイス102のコイルアンテナはブースターアンテナ120側を向き(近接し)、RFIC素子はブースターアンテナ120と反対側に位置する。そのため、無線ICデバイス102のコイルアンテナとブースターアンテナ120との結合度は高い。また、RFIC素子61と他の回路素子とをつなぐ配線(特にデジタル信号ラインや電源ライン)はコイルアンテナの磁束と実質的に平行に配線されるのでコイルアンテナとの結合は小さい。
【0172】
図21はブースターアンテナ120の斜視図である。
図22はブースターアンテナ120の回路図である。ブースターアンテナ120は、第1コイルパターン121と第2コイルパターン122はそれぞれ矩形渦巻状にパターン化された導体であり、平面視で同方向に電流が流れる状態で容量結合するようにパターン化される。第1コイルパターン121と第2コイルパターン122の間には浮遊容量が形成される。第1コイルパターン121および第2コイルパターン122のインダクタンスと浮遊容量のキャパシタンスとでLC共振回路が構成される。このLC共振回路の共振周波数は、このRFIDシステムの通信周波数と実質的に等しい。通信周波数は例えば13.56MHz帯である。
【0173】
本実施形態によれば、ブースターアンテナの大きなコイル開口を利用して通信できるので、通信可能最長距離を拡張できる。
【0174】
最後に、上述の各実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能であることは明らかである。例えば異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0175】
例えば、コイルアンテナ(さらにはRFIDタグ)は、HF帯に限定されるものではなく、LF帯やUHF帯、SHF帯にも適用できる。また、RFIDタグが付される物品は玩具に限定されるものではなく、たとえば携帯電話等の携帯型情報端末であってもよいし、足場材のような建材、ガスボンベ等の産業材であってもよい。
【0176】
なお、RFIC素子61は第1基板1の第1主面PS1に搭載されていることが好ましいが、この構成に限定されるものではない。RFIC素子61は、例えば第1基板1に内蔵されていてもよい。また、第1基板1の第1主面PS1または第2主面PS2のいずれかにキャビティが形成され、このキャビティ内にRFIC素子が収容される構成であってもよい。