特許第6202163号(P6202163)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6202163
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】金型用射出装置取付プレート及び金型
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/26 20060101AFI20170914BHJP
   B29C 45/13 20060101ALI20170914BHJP
   B29C 45/16 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   B29C45/26
   B29C45/13
   B29C45/16
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-161693(P2016-161693)
(22)【出願日】2016年8月22日
【審査請求日】2016年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】宇部興産機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】きさらぎ国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】有馬 祐一朗
(72)【発明者】
【氏名】大串 拓也
(72)【発明者】
【氏名】宮本 和明
【審査官】 ▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−008727(JP,A)
【文献】 特開平04−244821(JP,A)
【文献】 特開2012−250497(JP,A)
【文献】 特開平02−178012(JP,A)
【文献】 特開昭56−069137(JP,A)
【文献】 特開平07−227875(JP,A)
【文献】 特開2007−075999(JP,A)
【文献】 特開2004−001403(JP,A)
【文献】 特開2003−053770(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0001673(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定フレームと、該固定フレームに対して回転及び移動可能な可塑化スクリュ軸とを備えるインラインスクリュ式射出装置を金型に取り付けるための金型用射出装置取付プレートであって、
前記インラインスクリュ式射出装置の前記固定フレームを固設可能な側面と、該側面に開口し、前記可塑化スクリュ軸を収容可能なホットランナとを有し、
前記ホットランナは、前記インラインスクリュ式射出装置の前記可塑化スクリュ軸と協働して樹脂材料の可塑化及び計量を実施可能で、かつ、可塑化された樹脂材料を前記金型のキャビティに向けて流動させることが可能に構成されており、
前記ホットランナは、少なくとも前記可塑化スクリュ軸を収容可能な領域が、交換可能な筒状の別部品で構成されている
ことを特徴とする金型用射出装置取付プレート。
【請求項2】
前記ホットランナは、前記可塑化スクリュ軸を収容可能な可塑化スクリュ軸収容部と、前記金型のキャビティのゲートに連通する射出用樹脂流路とを有しており、
前記可塑化スクリュ軸収容部は、一方の端部が前記側面に開口し、他方の端部が前記射出用樹脂流路に連通するよう構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の金型用射出装置取付プレート。
【請求項3】
前記ホットランナの前記射出用樹脂流路には、前記ゲートを開閉可能なゲートバルブが配置されている
ことを特徴とする請求項2に記載の金型用射出装置取付プレート。
【請求項4】
前記金型用射出装置取付プレートは、前記金型のキャビティの少なくとも一部を形成可能なキャビティ面を有するキャビティブロックと連続して配置されるように構成されている
ことを特徴とする請求項1乃至いずれか1項に記載の金型用射出装置取付プレート。
【請求項5】
前記金型用射出装置取付プレートは、金型取付盤に取り付けられるマニホールドブロックと、前記キャビティブロックとの間に配置されるよう構成されており、
前記マニホールドブロックに形成されたメイン射出用樹脂流路と、前記キャビティブロックに形成されたメイン射出用樹脂流路とを連通させるメイン射出用樹脂流路を有する
ことを特徴とする請求項に記載の金型用射出装置取付プレート。
【請求項6】
前記インラインスクリュ式射出装置が取り付けられている
ことを特徴とする請求項1乃至いずれか1項に記載の金型用射出装置取付プレート。
【請求項7】
請求項1乃至いずれか1項に記載の金型用射出装置取付プレートを備える
ことを特徴とする金型。
【請求項8】
前記金型のキャビティの少なくとも一部を形成可能なキャビティ面を有するキャビティブロックを更に備え、
前記金型用射出装置取付プレートは、前記キャビティブロックと連続して配置されるように構成されている
ことを特徴とする請求項に記載の金型。
【請求項9】
金型取付盤に取り付けられるマニホールドブロックを更に備え、
前記金型用射出装置取付プレートは、前記マニホールドブロックと前記キャビティブロックとの間に設けられており、
前記マニホールドブロック、前記金型用射出装置取付プレート及び前記キャビティブロックには、それぞれ、メイン射出ユニットから射出充填された溶融樹脂をキャビティに向けて流動させるメイン射出用樹脂流路が形成されている
ことを特徴とする請求項に記載の金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型にインラインスクリュ式射出装置を取り付けるための金型用射出装置取付プレート及び金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数色又は複数種類の樹脂材料を使用して積層成形品を成形する積層成形品専用の射出成形装置として、略同サイズの複数の射出ユニットを有する多色多材射出成形装置が広く用いられている。このような従来の多色多材射出成形装置は、1つの積層成形品に使用される複数色又は複数種類の樹脂材料が略同じ射出充填量である場合には、好適に用いることができる。一方、例えば主材料及び副材料の様に、複数色又は複数種類の樹脂材料間の射出充填量に明確な差異があり、主材料の射出充填量に対して、それ以外の副材料の射出充填量が少ない場合には、副材料を射出充填させる射出ユニット内で、副材料が主材料に対して長く可塑化状態で保持されるため、副材料の品質の低下を招くおそれがある。また、副材料が射出充填される金型キャビティは、主材料が射出充填される金型キャビティよりも複数個所に偏在する場合が多く、この場合には副材料用の金型キャビティへの樹脂流路(ホットランナ)が長くなるため、金型の構造が複雑になるという問題や、副材料用の樹脂流路長の増加に起因して、樹脂流路内における可塑化状態での保持時間が増加し、副材料の品質の低下を招くおそれがあるという更なる問題が生じる。
【0003】
そのため、従来、主材料の射出充填量に対して、それ以外の副材料の射出充填量が少ない場合には、1つのメイン射出ユニットを備える汎用の射出成形装置に小型のサブ射出ユニットを後付けした射出成形装置が好適に用いられている(特許文献1)。
【0004】
特許文献1には、図6及び図7に示すように、主材料用のメイン射出ユニット(第1射出機。図示せず)と、副材料用のサブ射出ユニット(第2射出機)110とを備えた射出成形装置が開示されている。特許文献1の射出成形装置において、サブ射出ユニット110は、スクリュ111を内蔵した加熱バレル(加熱筒)112と、加熱バレル112の後端に一体形成された鍔部113と、鍔部113に複数のタイバー114を介して取り付けられた射出シリンダ115と、射出シリンダ115と鍔部113との間を移動可能な状態でタイバー114に取り付けられたスライダ116と、スライダ116に設けられた計量モータ117と、加熱バレル112内に材料を供給するための材料供給管(ホッパ)118を備えたスクリュ式射出機である。金型100には、図6に示すように、サブ射出ユニット110の加熱バレル112を収容可能な大径の孔102が形成されており、該大径孔102の底部に樹脂供給口104が形成されている。
【0005】
以上の構成を備えるサブ射出ユニット110は、加熱バレル112が金型100の大径孔102の内部に挿入され、射出ノズル119が金型100の樹脂供給口104に密着するようスプリング等の弾性部材122によって付勢された状態において、取り付け機構120を介して金型100に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−053770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の射出成形装置は、サブ射出ユニット110と金型100との間に弾性部材122が介在する構成であるため、サブ射出ユニット110を金型100に対して強固に固定することができないものである。また、特許文献1の射出成形装置は、弾性部材122によってサブ射出ユニット110の射出ノズル119を押圧する構成であることにより、関連部材の摺動部に、関連部材間の摺動のためのクリアランスが必要となるため、サブ射出ユニット110が、弾性部材122の付勢方向以外の方向にも移動するおそれがある。そして、これらの要因により、特許文献1の射出成形装置では、型開閉動作、型締動作及び射出充填動作等により発生する振動によって、サブ射出ユニット110の金型100への固定部位や弾性部材122に、サブ射出ユニット110の静的な負荷に加えて、動的な負荷が繰り返し作用することとなるため、固定部位や弾性部材122の破損が発生するおそれがあるという問題がある。また、特許文献1の射出成形装置では、上述した振動により、金型100の樹脂供給口104に押し付けられた状態の射出ノズル119が樹脂供給口104に対して意図しない方向に摺動するため、射出ノズル119及び金型100の樹脂供給口104の磨耗や破損が発生するおそれがあるという問題がある。
【0008】
また、特許文献1の射出成形装置では、金型100に対して、サブ射出ユニット100の加熱バレル112を収容可能な長さ及び径を有する非常に大きな孔(大径孔102)を形成する必要があるため、金型100が大型化すると共に、キャビティの配置に制約が生じるという問題がある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、金型に対してインラインスクリュ式射出装置を強固に取り付けることが可能で、かつ、該射出装置の取り付けに関連する金型側の制約が少ない金型用射出装置取付プレート及び金型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る金型用射出装置取付プレートは、固定フレームと、該固定フレームに対して回転及び移動可能な可塑化スクリュ軸とを備えるインラインスクリュ式射出装置を金型に取り付けるための金型用射出装置取付プレートであって、前記インラインスクリュ式射出装置の前記固定フレームを固設可能な側面と、該側面に開口し、前記可塑化スクリュ軸を収容可能なホットランナとを有し、前記ホットランナは、前記インラインスクリュ式射出装置の前記可塑化スクリュ軸と協働して樹脂材料の可塑化及び計量を実施可能で、かつ、可塑化された樹脂材料を前記金型のキャビティに向けて流動させることが可能に構成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る金型用射出装置取付プレートにおいて、前記ホットランナは、前記可塑化スクリュ軸を収容可能な可塑化スクリュ軸収容部と、前記金型のキャビティのゲートに連通する射出用樹脂流路とを有しており、前記可塑化スクリュ軸収容部は、一方の端部が前記側面に開口し、他方の端部が前記射出用樹脂流路に連通するよう構成されることが好ましい。この場合において、前記ホットランナの前記射出用樹脂流路には、前記ゲートを開閉可能なゲートバルブが配置されるとしても良い。
【0012】
また、本発明に係る金型用射出装置取付プレートにおいて、前記ホットランナは、少なくとも前記可塑化スクリュ軸を収容可能な領域が、交換可能な筒状の別部品で構成されることが好ましい。
【0013】
さらに、本発明に係る金型用射出装置取付プレートは、前記金型のキャビティの少なくとも一部を形成可能なキャビティ面を有するキャビティブロックと連続して配置されるように構成されるとしても良い。この場合において、本発明に係る金型用射出装置取付プレートは、金型取付盤に取り付けられるマニホールドブロックと、前記キャビティブロックとの間に配置されるよう構成されており、前記マニホールドブロックに形成されたメイン射出用樹脂流路と、前記キャビティブロックに形成されたメイン射出用樹脂流路とを連通させるメイン射出用樹脂流路を有することが好ましい。
【0014】
またさらに、本発明に係る金型用射出装置取付プレートは、前記インラインスクリュ式射出装置が取り付けられる構成としても良い。
【0015】
また、本発明に係る金型は、上述した金型用射出装置取付プレートを備えることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る金型は、前記金型のキャビティの少なくとも一部を形成可能なキャビティ面を有するキャビティブロックを更に備え、前記金型用射出装置取付プレートは、前記キャビティブロックと連続して配置されるように構成されるとしても良い。この場合において、本発明に係る金型は、金型取付盤に取り付けられるマニホールドブロックを更に備え、前記金型用射出装置取付プレートは、前記マニホールドブロックと前記キャビティブロックとの間に設けられており、前記マニホールドブロック、前記金型用射出装置取付プレート及び前記キャビティブロックには、それぞれ、メイン射出ユニットから射出充填された溶融樹脂をキャビティに向けて流動させるメイン射出用樹脂流路が形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、金型に対してインラインスクリュ式射出装置を強固に取り付けることが可能で、かつ、該射出装置の取り付けに関連する金型側の制約が少ない金型用射出装置取付プレート及び金型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る射出成形装置の構成を概略的に示す正面図である。
図2】本実施形態に係る金型の構成を概略的に示す一部切欠き断面図である。
図3】本実施形態に係るサブ射出ユニットの構成を概略的に示す断面図である。
図4】本実施形態に係る金型用射出装置取付プレートの組み立て方法を示す図である。
図5】本発明の他の実施形態に係る金型の構成を概略的に示す一部切欠き断面図である。
図6】従来の射出成形装置の構成を概略的に示す図である。
図7】従来の射出成形装置におけるサブ射出ユニット部分の構成を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0020】
本実施形態に係る射出成形装置は、メイン射出ユニット3を備える射出成形装置本体2に、小型のサブ射出ユニット30が取り付けられた金型用射出装置取付プレート20を追加することにより構成されている。
【0021】
射出成形装置本体2は、図1に示すように、主材料用のメイン射出ユニット3と、ベース11に固設された固定盤(金型取付盤)4及びエンドプラテン8と、固定盤4及びエンドプラテン8の間において固定盤4に対して進退可能に設けられた可動盤(金型取付盤)5と、固定盤4に取り付けられた固定金型(金型)6と、可動盤5に取り付けられた可動金型(金型)7と、固定盤4、可動盤5及びエンドプラテン8の四隅を貫通して設けられた4本のタイバー9と、可動盤5及びエンドプラテン8の間に設けられ、可動盤5を固定盤4に対して進退させる型締機構10とを備えている。
【0022】
固定盤4には、背面から正面(金型取付面)に亘る貫通孔が形成されており、固定金型6には、固定盤4の貫通孔と整合する位置にメイン射出ユニット用の樹脂供給口6aが形成されている。メイン射出ユニット3は、そのノズル部が固定盤4の貫通孔を介して固定金型6の樹脂供給口6aと接続されており、固定金型6及び可動金型7のメインキャビティ部6b(キャビティ)に対して主材料となる溶融樹脂を射出可能に構成されている。なお、本実施形態に係る射出成形装置において、メイン射出ユニット3、固定盤4、エンドプラテン8、可動盤5、可動金型7、タイバー9及び型締機構10は、種々の公知の構成を任意に採用することが可能であるため、その詳細な説明を省略する。
【0023】
固定金型6は、図1及び図2に示すように、金型取付板22を介して固定盤4に取り付けられるマニホールドブロック24と、可動金型7との間においてメインキャビティ部6bを形成可能なキャビティ面を有するキャビティブロック26と、マニホールドブロック22及びキャビティブロック26の間に設けられる金型用射出装置取付プレート20とを備えている。
【0024】
これらマニホールドブロック24、金型用射出装置取付プレート20及びキャビティブロック26には、図2に示すように、それぞれ、メイン射出ユニット3から射出充填された溶融樹脂をキャビティに向けて流動させるメイン射出用樹脂流路24a,20a,26aが形成されており、キャビティブロック26には、メイン射出用樹脂流路26aのメインゲート26b(ゲート)が形成されている。メイン射出用樹脂流路24a,20a,26aは、加熱温度制御された所謂ホットランナであり、メイン射出ユニット3から射出充填された溶融樹脂を溶融状態で保持可能に構成されている。なお、本実施形態に係る射出成形装置において、メイン射出用樹脂流路24a,20a,26aは、種々の公知のホットランナを任意に採用することが可能であるため、その詳細な説明を省略する。
【0025】
金型用射出装置取付プレート20には、メイン射出用樹脂流路20aとは別に、サブ射出ユニット30の後述する可塑化スクリュ軸35aが収容される可塑化スクリュ軸収容部20bと、可塑化スクリュ軸収容部20bにおいて可塑化された溶融樹脂を後述する拡張キャビティ部6c(キャビティ)に向けて流動させるサブ射出用樹脂流路(射出用樹脂流路)20cとが形成されており、キャビティブロック26には、拡張キャビティ部6cと整合する位置にサブゲート26c(ゲート)が形成されている。
【0026】
可塑化スクリュ軸収容部20b及びサブ射出用樹脂流路20cは、いずれも、加熱温度制御された所謂ホットランナである。本実施形態において、可塑化スクリュ軸収容部20b及びサブ射出用樹脂流路20cは、金型用射出装置取付プレート20に形成された孔に埋設された筒状の別部品で構成されており、樹脂材料の種類並びにサブ射出ユニット30の可塑化スクリュ軸35aの外径及びピッチ等に応じて、異なる内周径等を有する他のホットランナと交換可能に構成されている。本実施形態では、このようにホットランナが交換可能な別部品で構成されることにより、様々な樹脂材料への対応を、サブ射出ユニット30の可塑化スクリュ軸35aの交換による対応に加え、ホットランナの交換によっても実現することが可能となる。なお、本実施形態に係る射出成形装置において、可塑化スクリュ軸収容部20b及びサブ射出用樹脂流路20cの加熱手段は、種々の公知のホットランナが備える加熱手段を任意に採用することが可能であるため、その詳細な説明を省略する。
【0027】
可塑化スクリュ軸収容部20bは、サブ射出ユニット30の可塑化スクリュ軸35aの外径と略同じ又は僅かに大きい内径を有する円筒状に形成されており、一方の端部が金型用射出装置取付プレート20の側面に開口し、他方の端部がサブ射出用樹脂流路20cに連通するよう形成されている。本実施形態では、可塑化スクリュ軸収容部20bは、金型用射出装置取付プレート20の側面から金型用射出装置取付プレート20の中心部に向けて、可動金型7の型開閉方向と交差する方向に沿って形成されている。可塑化スクリュ軸収容部20bには、サブ射出ユニット30の可塑化スクリュ軸35aが軸線を中心として回転可能かつ軸線方向に沿って摺動可能に配置されており、可塑化スクリュ軸35aと共に、樹脂材料を可塑化(溶融化)するよう構成されている。なお、図2では、後述する射出充填が完了した状態の可塑化スクリュ軸35aを示している。可塑化スクリュ軸収容部20b又はサブ射出ユニット30は、副材料となるペレット状の樹脂材料を可塑化スクリュ軸収容部20b内に投入するための図示しないホッパ(材料供給口)を有している。また、ホットランナとして構成される可塑化スクリュ軸収容部20bは、特に、一般的なインラインスクリュ式射出装置の加熱バレル(加熱筒)外周に配置されるバンドヒータ等の加熱手段と同様に、図示しないホッパ(材料供給口)から供給されるペレット状の樹脂材料を、可塑化スクリュ軸35aの回転により軸線方向に流動させる間に可塑化させるための加熱温度制御が可能に構成されている。なお、本実施形態において、金型用射出装置取付プレート20の側面には、右側面及び左側面に加え、上面及び下面を含むこととする。
【0028】
サブ射出用樹脂流路20cは、可塑化スクリュ軸収容部20bと交差する方向、本実施形態では可動金型7の型開閉方向に沿って延びる円筒状に形成されており、一方の端部がキャビティブロック26のサブゲート26cに連通している。サブ射出用樹脂流路20cには、サブゲート26cを開閉させることが可能なゲートバルブ21が配置されている。なお、ゲートバルブ21は、種々の公知の構成を採用可能であるため、その詳細な説明を省略する。また、図示の例ではニードル弁であるが、これに限定されず、種々の公知のゲートバルブ機構を採用することが可能である。
【0029】
キャビティブロック26は、メインキャビティ部6bにおいて、メイン射出ユニット3から射出充填された溶融樹脂によって一次成形体を成形した後、可動中子又は金型交換等の種々の公知の手段により拡張キャビティ部6cを形成し、該拡張キャビティ部6cにおいて、サブ射出ユニット30により射出充填された溶融樹脂によって、一次成形体上に二次成形体を積層成形することが可能に構成されている。
【0030】
サブ射出ユニット30は、図3に示すように、固定フレーム32と可動フレーム33とを備える2プレート方式のインラインスクリュ式射出ユニットであり、メイン射出ユニット3よりも小型に形成されている。具体的には、サブ射出ユニット30は、固定フレーム32と、固定フレーム32に対して進退可能に設けられた可動フレーム33と、可動フレーム33を固定フレーム32に対して進退させる可動フレーム駆動機構34と、副材料となる樹脂材料を可塑化させる可塑化スクリュ軸35aを有するシリンダアッセンブリ35と、可塑化スクリュ軸35aを回転させる可塑化スクリュ駆動機構36とを備えている。なお、図1図2図4及び図5では、図の簡略化のため、サブ射出ユニット30を可塑化スクリュ軸35aに相当する突出部分を有する直方体で図示するものとする。
【0031】
固定フレーム32は、図1及び図2に示すように、金型用射出装置取付プレート20の側面にボルト等の締結手段(図示せず)によって固設されている。一方、可動フレーム33は、固定フレーム32に対して、後述するように摺動可能な状態で支持されている。
【0032】
可動フレーム駆動機構34は、図3に示すように、固定フレーム32に設けられた射出モータ(図示せず)と、可動フレーム33に埋設された一対のボールねじナット34aと、一端部がベアリング34bを介して固定フレーム32に連結され、他端部がボールねじナット34aに螺合された一対のボールねじ軸34cと、射出モータの出力軸及び一対のボールねじ軸34cに取り付けられた複数の射出プーリ34dと、複数の射出プーリ34dに掛け渡されたプーリベルト34eとを備えている。この可動フレーム駆動機構34は、射出モータの回転力をプーリベルト34e及び複数の射出プーリ34fを介して一対のボールねじ軸34cに伝達させ、一対のボールねじ軸34cを正方向又は逆方向に回転させることにより、可動フレーム33を固定フレーム32に対して進退させるよう構成されている。
【0033】
シリンダアッセンブリ35は、先端部側の所定領域にスクリュフライト35bが形成され、基端部がベアリング35cを介して可動フレーム33に連結された可塑化スクリュ軸35aを備えている。可塑化スクリュ軸35aの先端部には、可塑化した溶融樹脂を可塑化スクリュ軸収容部20bからサブ射出用樹脂流路20cに向けて射出する際の逆流を防止するためのチェックリング35dが設けられている。なお、チェックリング35dは、種々の公知の構成を採用可能であるため、その詳細な説明を省略する。
【0034】
可塑化スクリュ駆動機構36は、可動フレーム33に設けられた可塑化モータ(図示せず)と、可塑化モータの出力軸及び可塑化スクリュ軸35aに取り付けられた複数の可塑化プーリ36aと、複数の可塑化プーリ36aに掛け渡されたプーリベルト36bとを備えている。この可塑化スクリュ駆動機構36は、可塑化モータの回転力をプーリベルト36b及び複数の可塑化プーリ36aを介して可塑化スクリュ軸35aに伝達させることにより、可塑化スクリュ軸35aを回転させるよう構成されている。
【0035】
なお、サブ射出ユニット30は、上述した説明及び図示の態様に限定されるものではなく、メイン射出ユニット3よりも小型かつ金型用射出装置取付プレート20に取り付け可能なものであれば、種々の公知の射出ユニットを任意に採用することが可能である。
【0036】
以上の構成を備える金型用射出装置取付プレート20及びサブ射出ユニット30は、ホットランナである可塑化スクリュ軸収容部20bによる加熱温度制御及び可塑化スクリュ軸35aの回転によるせん断熱によって、ホッパから投入された樹脂材料を可塑化(溶融)させるよう構成されている。すなわち、本実施形態に係る固定金型6は、通常のインラインスクリュ式射出ユニットが備える加熱バレル(加熱シリンダ)の機能、すなわち、可塑化スクリュ軸35aに対する寸法関係や、先に説明した加熱温度制御を、金型側のホットランナ(金型用射出装置取付プレート20の可塑化スクリュ軸収容部20b)に持たせるよう構成されている。また、シリンダアッセンブリ35は、可塑化スクリュ駆動機構36により可塑化スクリュ軸35aを回転させながら可動フレーム駆動機構34により可動フレーム33及び可塑化スクリュ軸35aを後退させることで計量を行い、計量完了後に、計量完了位置(後退位置)から可動フレーム駆動機構34により可動フレーム33及び可塑化スクリュ軸35aを前進させることで、可塑化された溶融樹脂を可塑化スクリュ軸収容部20bからサブ射出用樹脂流路20cに向けて射出充填させるよう構成されている。
【0037】
以上の構成を備える金型用射出装置取付プレート20は、図4に示すように、加熱バレルを備えない、スクリュフライト35bの形成領域が露出された状態のサブ射出ユニット30の可塑化スクリュ軸35aを可塑化スクリュ軸収容部20b内に挿入させ、サブ射出ユニット30を一体化(ビルトイン)させることにより、製造される。また、固定金型6は、金型取付板22と、ホットランナ(メイン射出用樹脂流路24a)を有するマニホールドブロック24と、ホットランナに連通するゲート(メインゲート26b)を有するキャビティブロック26とを備える通常の金型に対して、マニホールドブロック24とキャビティブロック26との間に位置することとなるよう、サブ射出ユニット30が一体化された金型用射出装置取付プレート20を挿入すると共に、キャビティブロック26にサブゲート26cを形成することにより、製造される。
【0038】
以上のとおり、本実施形態に係る金型用射出装置取付プレート20は、サブ射出ユニット30(インラインスクリュ式射出装置)の固定フレーム32を固設可能な側面と、該側面に開口し、可塑化スクリュ軸35aを収容可能なホットランナ(可塑化スクリュ軸収容部20b)とを有し、このホットランナが、可塑化スクリュ軸35aと協働して樹脂材料の可塑化及び計量を実施可能で、かつ、可塑化された樹脂材料をキャビティに向けて流動させることが可能に構成されている。
【0039】
このように、本実施形態に係る金型用射出装置取付プレート20は、その側面(上面、下面、左側面又は/及び右側面)にサブ射出ユニット30の固定フレーム32が固設されるため、特許文献1の射出成形装置のように、サブ射出ユニット110と金型100との間にスプリング等の弾性部材122を介在させる必要がない。このため、本実施形態に係る金型用射出装置取付プレート20によれば、固定金型6(金型)に対してサブ射出ユニット30(インラインスクリュ式射出装置)を強固に取り付けることが可能となるため、特許文献1の射出成形装置と比較して、型開閉動作、型締動作及び射出充填動作等による振動に起因した構成部品の破損及び摩耗が生じにくいという利点を有する。
【0040】
また、本実施形態に係る金型用射出装置取付プレート20は、通常のインラインスクリュ式射出ユニットが備える加熱バレル(加熱シリンダ)の機能を可塑化スクリュ軸収容部20b(ホットランナ)に持たせることにより、可塑化スクリュ軸収容部20bの長さ及び径を最小限に抑えることが可能となるため、特許文献1の射出成形装置と比較して、固定金型6(金型)を小型化することが可能となると共に、キャビティの配置に関する制約が少ないという利点を有する。
【0041】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に記載の範囲には限定されない。上記各実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0042】
例えば、上述した実施形態では、金型用射出装置取付プレート20が固定金型6に組み込まれるものとして説明したが、これに限定されず、例えば図5に示すように、可動金型7´に組み込まれる構成としても良い。この場合、上述した実施形態のような、金型用射出装置取付プレート20´へのメイン射出用樹脂流路の配置は必ずしも必要ではなく、可動金型7´を、マニホールドブロックを配置させずに、キャビティブロック、金型用射出装置取付プレート20´及び金型取付板を組み合わせる構成としても良い。また、固定金型と可動金型の双方に金型用射出装置取付プレート20が組み込まれる構成としても良い。
【0043】
また、上述した実施形態では、金型用射出装置取付プレート20に可塑化スクリュ軸収容部20b及びサブ射出用樹脂流路20cが1つずつ形成され、1つのサブ射出ユニット30が取り付けられる構成を例に挙げて説明したが、これに限定されず、例えば図5に示すように、可塑化スクリュ軸収容部20b及びサブ射出用樹脂流路20cが2以上形成され、2以上のサブ射出ユニット30,30が金型用射出装置取付プレート20´に取り付けられる構成としても良い。なお、図5では、ゲートバルブの図示を省略している。
【0044】
さらに、上述した実施形態では、サブ射出用樹脂流路20cにゲートバルブ21が配置されるものとして説明したが、これに限定されず、ゲートバルブ21が配置されない構成としても良い。この場合には、サブ射出用樹脂流路20cを排して、可塑化スクリュ軸収容部20bが直接キャビティブロック26のサブゲート26cに連通する構成や、ごく短いサブ射出用樹脂流路を介して、可塑化スクリュ軸収容部20bがキャビティブロック26のサブゲート26cに連通する構成としても良い。
【0045】
また、上述した実施形態では、固定金型6がマニホールドブロック24、キャビティブロック26及び金型用射出装置取付プレート20を備えるものとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、マニホールドブロック24の機能を金型用射出装置取付プレート20に組み込むことで、キャビティブロック26及び金型用射出装置取付プレート20のみによって金型を形成する構成としても良い。また、マニホールドブロック24の機能とキャビティブロック26の機能を金型用射出装置取付プレート20に組み込むことで、金型用射出装置取付プレート20のみによって金型を形成する構成としても良い。
【0046】
さらに、金型用射出装置取付プレート20は、図1に示す横型射出成形装置タイプの射出成形装置本体2に組み込まれる構成に限定されるものではなく、例えば、竪型締機構を有する射出成形装置の上型又は/及び下型や、これと同様の竪型締機構を有するプレス装置の上型又は/及び下型に組み込まれる構成としても良い。なお、竪型射出成形装置及びプレス装置は、種々の公知の構成を任意に採用することが可能であるため、その詳細な説明を省略する。
【0047】
また、上述した実施形態では、金型が固定金型6,6´及び可動金型7,7´からなる二枚金型であるものとして説明したが、これに限定されず、固定金型6,6´及び可動金型7,7´に1又は複数の中間金型を加えた三枚以上の金型であるとしても良い。また、この場合において、金型用射出装置取付プレート20は、中間金型に取り付けられる構成としても良い。
【符号の説明】
【0048】
6 固定金型(金型)、6b メインキャビティ部(キャビティ)、6c 拡張キャビティ部(キャビティ)、7´ 可動金型(金型)、20 金型用射出装置取付プレート、20b 可塑化スクリュ軸収容部(ホットランナ)、20c サブ射出用樹脂流路(ホットランナ、射出用樹脂流路)、21 ゲートバルブ、26b メインゲート(ゲート)、26c サブゲート(ゲート)、30 サブ射出ユニット(インラインスクリュ式射出装置)、32 固定フレーム、35a 可塑化スクリュ軸
【要約】
【課題】金型に対してインラインスクリュ式射出装置を強固に取り付けることが可能で、かつ、該射出装置の取り付けに関連する金型側の制約が少ない金型用射出装置取付プレート及び金型を提供する。
【解決手段】固定フレームと、固定フレームに対して回転及び移動可能な可塑化スクリュ軸とを備えるインラインスクリュ式射出装置を金型に取り付けるための金型用射出装置取付プレートであって、インラインスクリュ式射出装置の固定フレームを固設可能な側面と、側面に開口し、可塑化スクリュ軸を収容可能なホットランナとを有し、ホットランナは、インラインスクリュ式射出装置の可塑化スクリュ軸と協働して樹脂材料の可塑化及び計量を実施可能で、かつ、可塑化された樹脂材料を金型のキャビティに向けて流動させることが可能に構成されている。
【選択図】図2
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図2
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