特許第6202178号(P6202178)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202178
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】切断刃及びテープディスペンサー
(51)【国際特許分類】
   B65H 35/07 20060101AFI20170914BHJP
   B26D 1/02 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   B65H35/07 K
   B26D1/02 F
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-210397(P2016-210397)
(22)【出願日】2016年10月27日
(62)【分割の表示】特願2014-545724(P2014-545724)の分割
【原出願日】2013年11月6日
(65)【公開番号】特開2017-24914(P2017-24914A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2016年10月28日
(31)【優先権主張番号】特願2012-245722(P2012-245722)
(32)【優先日】2012年11月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(72)【発明者】
【氏名】増山 正明
【審査官】 西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−054451(JP,U)
【文献】 実開昭59−002752(JP,U)
【文献】 実開昭50−059189(JP,U)
【文献】 実開昭63−021663(JP,U)
【文献】 特開2008−297068(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0230163(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 35/00−35/10
B26D 1/00− 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻回された状態から繰り出されたテープに挿入するための板体状をなすものであり、前記板体の端面側から緊張した状態で繰り出された前記テープに挿入することにより前記テープを所望の長さに切断するための切断刃であって、
前記繰り出されたテープの先端側において当該先端側の端縁をテープの面方向に直交する方向に向けて立ち上がらせて設けた立ち上がり部と、
この立ち上がり部から前記テープの基端側へ隣接して設けられ前記端縁が前記テープを切断するときに前記テープの表面に当接し得る当接部とを具備してなり、
前記立ち上がり部及び前記当接部が、前記テープの幅方向に連続して形成されたものであり、前記立ち上がり部の端縁を正面視湾曲波形状をなすようにしている切断刃。
【請求項2】
前記立ち上がり部の前記当接部から立ち上がる立ち上がり寸法が、0.02mm〜0.2mmに設定されている請求項1記載の切断刃。
【請求項3】
前記立ち上がり部と前記当接部とを一体に形成している請求項1又は2記載の切断刃。
【請求項4】
前記当接部が、前記テープの面方向に平行な平坦面と前記立ち上がり部に連続して横断面視一本の曲線を形成し得る湾曲面を有している請求項3記載の切断刃。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれかに記載の切断刃を具備してなることを特徴とするテープディスペンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻回された状態から繰り出されたテープを所望の長さに切断するための切断刃及びテープディスペンサーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、粘着テープやラップフィルム等の巻回されたテープを繰り出した状態で当該テープを所望の長さに切断するための切断刃が種々提案されている。そして近年では、従来のような正面視に鋭利な角を有する形状とは異なった先端部分の形状を有する種々の態様をなす切断刃が開示されている。(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
上記特許文献に記載したようなものは、切断刃の先端の形状をプレス等の技術により適宜形成することで正面視で鋭利な角を設けずとも小さい操作力でテープを切断し得るようにするとともに、正面視で鋭利な角が無いため誤って切断刃に手を触れてしまった場合でも手を傷つけることが回避されるようになっている。
【0004】
しかしながら、このような切断刃が切断する対象であるテープの材質は、たとえばオフィスや家庭において好適に使用され得るテープディスペンサーに限定してもセロファンを主体としたテープのみならず、ポリプロピレン(PP)やポリエチレンテレフタレート(PET)など、種々の素材が適用されている。そして現状では、これらテープの素材によっては切断する際に使用者が違和感を覚えるほどの操作力を要したり、テープを大きくひねるなどしてテープへの応力を意図的に集中させるといった特定の操作を使用者に強いたりする場合もあるのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−30031号公報
【特許文献2】特開2012−56772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような不具合に着目したものであり、テープの素材に拘わらずに小さな操作力でテープを切断し得る切断刃及び当該切断刃を具備したテープティスペンサーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。すなわち本発明に係る切断刃は、巻回された状態から繰り出されたテープに挿入するための板体状をなすものであり、前記板体の端面側から緊張した状態で繰り出された前記テープに挿入することにより前記テープを所望の長さに切断するための切断刃であって、前記繰り出されたテープの先端側において当該先端側の端縁をテープの面方向に直交する方向に向けて立ち上がらせて設けた立ち上がり部と、この立ち上がり部から前記テープの基端側へ隣接して設けられ前記端縁が前記テープを切断するときに前記テープの表面に当接し得る当接部とを具備してなり、前記立ち上がり部及び前記当接部が、前記テープの幅方向に連続して形成されたものであり、前記立ち上がり部の端縁を正面視湾曲波形状をなすようにしていることを特徴とする。そして本発明に係るテープディスペンサーは、当該切断刃を具備してなることを特徴とする。
【0008】
ここで、テープの「表面」とは、粘着テープにおける粘着剤が塗布された面に限られず、表裏何れの面をも含む概念である。つまりテープの表面とは巻回された内方の表面も、外方の表面をも含まれる。また、立ち上がり部と当接部は、「隣接」していればよい。すなわち本明細書における「隣接」とは、立ち上がり部及び当接部が一体に設けられた態様のみならず、隙間なく添設している態様も含まれる。
【0009】
このようなものであれば、テープが当接部に当接したときには立ち上がり部による突出した箇所に位置付けられた端縁によってテープをスムーズに切断することができる。そして手指が触れた場合にはテープが当接部に当接するのと同様に、手指は立ち上がり部と同時に当接部に当接することで立ち上がり部が手指の皮膚に深く入り込むことが有効に回避される。すなわち本発明によれば、テープの素材に拘わらずに小さな操作力でテープを切断し得る切断刃及び当該切断刃を具備したテープティスペンサーを提供することができる。
【0010】
当接部が確実にテープに当接したり、場合によっては手指に当接したりすることにより上記効果をより確実に奏するようにするためには、前記立ち上がり部と前記当接部とを一体に形成しておくことが望ましい。
【0011】
強度が高く耐久性にも優れた立ち上がり部を構成し得るとともにスムーズなテープの切断を担保するためには、前記当接部が、前記テープの面方向に平行な平坦面と前記立ち上がり部に連続して横断面視一本の曲線を形成し得る湾曲面を有したものとすることが好ましい。
【0012】
ここで「平坦面」とは、刃の断面視において平坦であればよく、正面視において平坦である態様に限定されない。
【0013】
立ち上がり部が好適なテープの切断と使用者の手指等を誤って傷つけることを確実に回避するための具体的な構成として、前記立ち上がり部が前記当接部から立ち上がる立ち上がり寸法を0.02〜0.2mmに設定しているものを挙げることができる。ここで、立ち上がり寸法が0.02mmよりも小さいとテープを切断し難くなる。
【0014】
他方、前記立ち上がり寸法を0.2mmよりも大きい寸法に設定したものであれば、上記した立ち上がり寸法が0.2mm以下に設定されたものよりも、より小さな操作力でテープを切断することができる。ここで、通常人の手指の表皮の厚みはおよそ0.2mm程度とされている。それ故に0.2mmを超えてしまうと手指等の皮膚が当接部に触れずに立ち上がり部に触れるのみで表皮を切ってしまい、手指等を傷つけてしまう可能性を招来してしまう。しかし実際に立ち上がり部に手指が触れる角度は皮膚の厚み方向に厳密に沿うとは限られない。また手指の皮膚の柔らかさを勘案すれば、立ち上がり寸法が0.2mmを超えたとしても、手指に傷つけることがない安全性を担保することも可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、テープの素材に拘わらずに小さな操作力でテープを切断し得る切断刃及び当該切断刃を具備したテープティスペンサーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第一実施形態に係る全体斜視図。
図2】同要部の斜視図。
図3】同拡大斜視図。
図4】同実施形態に係る要部の背面図。
図5図4の要部に係るA−A線拡大断面図。
図6】同拡大正面図。
図7図3に対応した作用説明図。
図8】同上。
図9】同上。
図10】同実施形態の変形例に係る要部の斜視図。
図11】同変形例に係る図5に対応した拡大横断面図。
図12】同実施形態の他の変形例に係る説明図。
図13】同上。
図14】同上。
図15】同上。
図16】本発明の第二実施形態に係る要部の拡大横断面図。
図17】同実施形態に係る比較例における要部の拡大横断面図。
図18】同実施形態に係る製造工程を示す説明図。
図19】同実施形態の製造工程を示す経過説明図。
図20】同実施形態の変形例に係る要部の拡大横断面図。
図21】同変形例の製造工程を示す経過説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第一実施形態>
以下、本発明の第一実施形態について図面を参照して説明する。
【0018】
本実施形態に係るテープディスペンサー1は、オフィスや家庭において好適に使用されるものである。またテープディスペンサー1は、例えば基材としてセロファンや他の樹脂を用いた粘着テープ等のテープTを紙製の芯材R1に巻回したリフィルRを保持し、粘着テープを使用する際に所望の長さのみ引き出し、切断するためのものである。
【0019】
このテープディスペンサー1は、図1乃至図9に示すように、リフィルRを保持し得る本体と、テープTを切断するための切断刃と、リフィルRを保持しつつ前記本体に回転可能に支持される回転体4とを有している。本体は、テープTを切断するテープ切断部21と、回転体4を軸支する軸支部22と、リフィルRを収容する収容部23と、切断刃を固定する刃固定部24とを有している。
【0020】
切断刃3は、本実施形態では一体に成形された金属板を主体としてなる板体状のものであり、刃固定部24に圧入したりやネジ止めしたりする等、適宜の手段で固定されている。この切断刃3は、巻回された状態から繰り出されたテープTに挿入するためのものであり、前記板体の端面側から緊張した状態で繰り出された前記テープTに挿入することにより前記テープTを所望の長さに切断するためものである。
【0021】
しかして本実施形態に係る切断刃3は、繰り出されたテープTの先端側において当該先端側の端縁34をテープTの面方向に直交する方向に向けて立ち上がらせて設けた立ち上がり部31と、この立ち上がり部31から前記テープTの基端側へ連続して設けられ前記端縁34を前記テープTに挿入したときに前記テープTの表面に当接し得る当接部32とを具備している。以下、この切断刃3の具体的な構成について説明する。
【0022】
切断刃3は、図1乃至図9に示すように、前記立ち上がり部31と前記当接部32とを一体に形成したものとしている。
【0023】
立ち上がり部31は、本実施形態では引き出したテープTの先端側の端縁34から一定寸法をなす領域を指すものであり、当該端縁34と、この端縁34から基端側に連続してテープTの切断時にテープTに挿入され得る角度で立ち上がる立ち上がり面33とを有している。この立ち上がり面33の高さ寸法、すなわち立ち上がり部31の立ち上がり寸法は、本実施形態では0.02〜0.2mm、具体的には0.08mmに設定している。立ち上がり面33が横断面視において立ち上がる角度は上述の通りテープTの切断時にテープTに当接せずに挿入され得る角度であれば具体的な角度は問わないが、例えば45°以上の角度であれば好適にテープTを切断し得る。そして本実施形態では、図2乃至4、及び図6に示すように、前記端縁34を正面視湾曲波形状、換言すれば概略正弦波状をなすようにしている。そして当該波が正面視で振幅する振幅寸法を、前記立ち上がり部31が前記当接部32から立ち上がる寸法よりも大きく設定している。具体的には、0.26mmに設定している。そして端縁34は正面視最も突出している尖端縁37と、この尖端縁37に向かって傾斜方向に延びる傾斜縁38とを有している。本実施形態では、この傾斜縁38が尖端縁37へ向けて延びる角度を、60°に設定している。
【0024】
当接部32は、前記当接部32が、前記テープTの面方向に平行な平坦面35と前記立ち上がり部31に連続して横断面視一本の曲線を形成し得る湾曲面36とを有している。本実施形態では、これら当接部32の形状を、上記立ち上がり部31と同様に湾曲波形状としている。これは、当該切断刃3の製造工程において湾曲波線、換言すれば概略正弦波状に同時に成形されるためである。
【0025】
しかして本実施形態に係る切断刃3は、テープT切断時に端縁34にテープTが接した際には略同時に当接部32にもテープTの表面が接した状態となるように、立ち上がり部31の立ち上がり寸法が調整されている。そして図7乃至図9に模式的に示すようにテープTが切断される。すなわち同7に示す状態から使用者がテープTを切断すべく下方又は下斜め方向にテープTを引っ張ると、端縁34が正面視湾曲波形状をなすことにより、図8に示すように突出している各尖端縁37及びその近傍の領域において優先的にテープTが切断される。しかる後に図9に示すように、当接部32にテープTが接した状態が維持されながら尖端縁37間の一部の領域のみがテープTを引っ張る操作力により引き裂かれる。これにより小さな操作力でテープTを切断することができる。
【0026】
以上のような構成とすることにより、本実施形態に係る切断刃3は、小さい操作力でテープTを切断することができる。特に本実施形態では、図示の場合とは異なり端縁34に手指が触れた場合にはテープTが当接部32に当接するのと同様に、手指は立ち上がり部31と同時に当接部32に当接する。これにより立ち上がり部31が手指の皮膚に深く入り込むことが有効に回避される。これは、通常、皮膚の表皮の厚みが0.2mmよりも薄いことが希である点に基づくものであり、例え端縁34が立ち上がり部31の寸法だけ表皮に進入しても当接部32がその状態で表皮に当接するために端縁34は立ち上がり部31の寸法以上に表皮に進入することができず、表皮自体が切られてしまう事が無い。
【0027】
また本実施形態では当接部32が確実にテープTに当接することにより上記効果をより確実に奏するようにするために、前記立ち上がり部31と前記当接部32とを一体に形成している。
【0028】
強度が高く耐久性にも優れた立ち上がり部31を構成し得るとともにスムーズなテープTの切断を担保するために本実施形態では、前記当接部32を、前記テープTの面方向に平行な平坦面35と前記立ち上がり部31に連続して横断面視一本の曲線を形成し得る湾曲面36を有したものとしている。
【0029】
テープTをより少ない操作力で切断できるようにするための具体的な態様として本実施形態では、前記端縁34が正面視湾曲波状をなす形状とし、優先的にテープTを切断する箇所を設定している。
【0030】
そして、より小さな操作力にテープTを切断し得るようにするために本実施形態では、波の立ち上がり方向の振幅寸法を、前記立ち上がり部31が前記当接部32から立ち上がる寸法よりも大きく設定している。
【0031】
立ち上がり部31が好適なテープTの切断と使用者の手指等を誤って傷つけることを確実に回避するための具体的な構成としては、上述の通り通常の皮膚の表皮の厚みを鑑み、立ち上がり部31が前記当接部32から立ち上がる立ち上がり寸法を0.02〜0.2mmに設定している。
【0032】
<変形例>
以下に、本実施形態の各変形例について説明する。本変形例において上記実施形態の構成要素に相当するものについては同じ符号を付すとともに、具体的な説明を省略するものとする。
【0033】
本変形例に係る切断刃3は図10及び図11に示すように、上記実施形態とは異なり、立ち上がり部31を構成する金属部分3aと、当接部32を構成する樹脂部分3bとを構成要素とする。つまり当該切断刃3は、立ち上がり部31と当接部32とを別体に形成している。
【0034】
具体的に説明すると、金属部分3aは、その先端に立ち上がり部31を設けており、当該立ち上がり部31は前記実施形態同様に端縁34と立ち上がり面33とを有している。そして立ち上がり部31の正面視形状が直線を屈曲させた波形形状をなしている。加えて前記波の振幅寸法を上記実施形態よりも大きく形成している。これにより、尖端縁37が形成される数が上記実施形態よりも少なく構成されている。また本変形例では傾斜縁38が傾斜する正面視の角度を、例えば45°程度に設定している。
【0035】
樹脂部分3bは、先端部分に平坦に構成した当接部32を設けており、当該当接部32は平坦面35のみを有している。そして当接部32はその正面視形状が前記端縁34同様の波形形状をなしている。そしてこの当接部32は、端縁34に対し、上記実施形態同様0.08mm下方に位置付けられている。換言すれば、立ち上がり部31が当接部32に対し0.08mmの寸法で立ち上がるよう、樹脂部分3bと金属部分3aとが互いに正確に位置決めされている。
【0036】
このようなものであっても上記実施形態同様、テープTを小さな操作力で切断し得るとともに、使用者の手指が触れてしまっても手指を傷つけることが無い。つまり本発明に係る切断刃3は当接部32及び立ち上がり部31が一体となる構造に限られず、別体に構成しても同様の効果を得ることができる。
【0037】
また、上記実施形態並びに変形例では切断刃3の正面視形状を何れも波状に形成したが勿論、図12及び図13に示すように、正面視直線状に切断刃3の形状を設定しても良い。図12に示す切断刃3は、テープTを切断するときには使用者の手指の癖や操作により少しでも端縁34の延伸方向とは異なる向きからテープを端縁34に当接させると、端縁34は立ち上がり部31による立ち上がり寸法だけテープTに進入することで、テープTが当接部32に当接した状態を維持しながらテープTを速やかに切断することができる。また図13に示す切断刃3は、端縁34の延伸方向を傾斜させて設けているため、使用者は引き出したテープTの先端を鉛直方向に下げる通常の操作によりテープTは一方の側縁から端縁34によって切断されはじめ、速やかに切断される。
【0038】
これらのようなものであっても、上記実施形態同様に速やかなテープTの切断と手指を傷つけ難くすることを両立させている。
【0039】
そして、上記実施形態では正面視において形成した波形状の角度、つまり傾斜縁38が傾斜する正面視の角度は何れの角度であっても良い。すなわち、図14に示すように傾斜縁の傾斜角度θ1を上記実施形態に係る傾斜角度θすなわち60°よりも大きい角度に設定したり、図15に示すように、傾斜縁38の傾斜角度θ2を前記傾斜角度θよりの小さい角度、詳細には45°よりも小さい角度に設定したりしてもよい。
【0040】
すなわち上記実施形態並びに各変形例のように、切断刃3は、端縁34を有する立ち上がり部31とこの立ち上がり部31に隣接して端縁34がテープTを切断したときにテープTに当接する当接部32さえ有していれば、速やかなテープTの切断と手指を傷つけ難くすることを両立させ得る。
【0041】
<第二実施形態>
以下に、本発明の第二実施形態及び変形例について図16図21を参照して説明する。本実施形態及び変形例においても、上記実施形態の構成要素に相当するものについては同じ符号を付すとともに、具体的な説明を省略するものとする。
【0042】
本実施形態に係る切断刃は、図16に示すように、立ち上がり部が立ち上がる前記立ち上がり寸法αを0.2mmよりも大きい寸法に設定したものである。当該立ち上がり寸法α以外の構成については上記第一実施形態に係る切断刃3と同様である。
【0043】
斯かる構成により上記した立ち上がり寸法が0.2mm以下に設定されたものよりも、より小さな操作力でテープTを切断することができる。ここで、通常人の手指の表皮の厚みはおよそ0.2mm程度とされている。それ故に0.2mmを超えてしまうと手指等の皮膚が当接部32に触れずに立ち上がり部に触れるのみで表皮を切ってしまい、手指等を傷つけてしまう可能性を招来してしまう。しかし実際に立ち上がり部に手指が触れる角度は皮膚の厚み方向に厳密に沿うとは限られない。また手指の皮膚の柔らかさを勘案すれば、立ち上がり寸法αが0.2mmを超えたとしても、より小さな操作力でのテープTの切断を可能としつつも、手指に傷つけることがない安全性を併せて担保することも可能である。そして斯かる構成をなす切断刃3であれば、基材の素材としてはセロファンのみならず、さらに強度が増した種々の素材を適用したテープTを用いても、小さな操作力で好適に切断することができる。換言すれば、テープTに用いられる素材に拘わらず好適に使用し得る細断刃3を提供することができる。
【0044】
ここで図17に比較例として示すように、切断刃3Hの断面視において端縁34をより鋭利なものとしたいのであれば、切断刃3Hを鋭利に研磨する等により傾斜面31Hを形成することも考えられる。しかしながらこのようなものは端縁34を支持する金属部分が立ち上がり方向の寸法において薄肉なものとなってしまう。それ故に上記図16に記載の切断刃3に比べて耐久性に乏しいものと考えられる。
【0045】
そして、本実施形態に係る切断刃3は、板金素材に対し例えばエッチング処理を施すことによって、立ち上がり寸法αが0.2mmを超えるまでの形状に成形することが可能である。勿論上記第一実施形態における図5等に図示した切断刃3も当該エッチング処理によって製造可能であることは云うまでもない。
【0046】
図18及び図19は、板金素材に対しエッチング処理を行う態様及び当該エッチング処理の経過の一例を示している。同実施形態に係る切断刃3は、板金素材の表面に対し腐食させることによって、立ち上がり部31、当接部32を成形したい箇所であるエッチング部E以外の部分をマスキング剤を塗布したマスキング部Mとしている。また同実施形態に係る切断刃3は板金素材の延出方向両端にマスキング処理を施すことにより、当該両端にそれぞれ立ち上がり部31、当接部32を形成している。これにより、一枚の切断刃3であっても取付方向を変更することで、一枚の切断刃3としての耐久性を有効に向上せしめている。また同実施形態では図示しないが、切断刃3の裏面側に塗布するマスキング部Mは、その一部を欠損させるようにしてもよい。これにより、エッチング処理の処理時間を短縮せしめるのみならず、種々の形状に成形された切断刃3の提供が可能となる。
【0047】
<変形例>
上述した通り、本実施形態に係る切断刃3はエッチング処理により、良好なテープTの切断を実現せしめている。ここで、エッチング処理を応用すれば裏面側に塗布するマスキング部Mを表面側と同様に欠損させることにより、図20及び図21に示す切断刃3のような成形も可能である。また、本変形例は表裏同じ位置のマスキン部Mを欠損させているが勿論、図示しないが表裏のマスキング部Mの位置や大きさを変えることで、種々の切断刃3の形状を形成し得る。
【0048】
すなわち本変形例に係る切断刃3は、上記実施形態同様の当接部32、立ち上がり部31のみならず、端縁34よりもテープTの引き出し先端側にも上記当接部32、立ち上がり部31に略対照となる形状を有した第二立ち上がり部31a、第二当接部32aを形成している。同図に示す切断刃3は、図21に示すように、板金素材の両面にマスキング剤を塗布したマスキング部Mを形成し、一面側のエッチング部Eに対してエッチング処理を行い、しかる後に他面側にエッチング部Eに対してエッチング処理を行うものである。
【0049】
このようなものであっても、上記実施形態及び変形例同様、より小さな操作力でのテープTの切断を可能としつつも、手指に傷つけることがない安全性を併せて担保することが可能である。
【0050】
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0051】
例えば、上記実施形態では切断刃を板状である態様のうち、平板状の態様のみを開示したが勿論、平面視すなわち厚み方向に正弦波状つまり湾曲波形形状をなすものや屈曲波形形状、又は全体的に湾曲或いは屈曲させたような、いわゆる三次元形状をなす態様としても良い。このようなものであれば、切断刃自体に撓みに対する剛性を付与することも可能となる。
【0052】
また例えば、上記実施形態では立ち上がり部及び当接部がそれぞれ正面視波状をなす態様を開示したが、勿論、立ち上がり部のみが波状に形成され、当接部の平坦面は直線状となるように湾曲面を三次元形状に形成したものであってもよい。また巻回されるテープの材質や用途の具体的な態様は上記実施形態のものに限定されることはなく、既存のものを含め、種々の態様のものを適用することができる。
【0053】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は巻回された状態から繰り出されたテープを所望の長さに切断するための切断刃及びテープディスペンサーとして利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1…テープディスペンサー
3…切断刃
34…端縁
31…立ち上がり部
32…当接部
37…尖端縁
38…傾斜縁
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