(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
熱可塑性樹脂を含有するシール層(A)、熱可塑性樹脂と鉄粉とを含有する酸素吸収層(B)、熱可塑性樹脂と無機塩基とを含有する臭気吸収層(C)、並びに、酸素バリア性を有する酸素バリア層(D)を、この順に積層して備える多層体。
前記酸素吸収層(B)は、その全体量に対して、前記鉄粉を5.0質量%以上60.0質量%以下含有し、かつ、前記臭気吸収層(C)は、その全体量に対して、前記無機塩基を0.10質量%以上20.0質量%以下含有する、請求項1又は2に記載の多層体。
前記酸素吸収層(B)に含有される前記鉄粉の平均粒径が10μm以上40μm以下であり、かつ、前記臭気吸収層(C)に含有される酸化カルシウム及び/又は水酸化カルシウムの平均粒径が5μm以上25μm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の多層体。
請求項1〜4のいずれか1項に記載の多層体を、熱可塑性樹脂を含有するシール層(A)を内側にし、かつ、酸素バリア性を有する酸素バリア層(D)を外側にして備える、包袋容器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の積層フィルムを食品の保存用途に用いると、食品から放出される水分が酸素吸収層と接する前に臭気吸収層と接するため、臭気吸収層に水分が吸収されてしまい、その分、酸素吸収層に供給される水分量が減少する。その結果、酸素吸収量が減少し、酸素吸収速度も遅くなってしまう。
また、特許文献2に記載の脱酸素性多層体は、酸素吸収層に用いる酸素を吸収する物質が有機高分子化合物であるため、酸素を吸収する物質が鉄粉である場合に比べて、酸素吸収層からの臭気発生量が多い。その結果、臭気吸収剤層を設けても臭気が除去できずに残存するおそれがある。また、有機高分子化合物は酸素を吸収するにつれ分解する傾向にあるため、酸素吸収層の物理的強度(シール強度、落袋強度及び層間剥離強度)が低下するおそれがある。また、引用文献2において、塩基性化合物は、臭気吸収層(C)ではなく食品と接触する最内層である隔離層(A)に酸性ガス吸収剤として含まれるが、食品から放出される水分が多い場合には塩基性化合物が水に溶出してしまう恐れがある。
結局、いずれのフィルムも、優れた酸素吸収性を持たせると共に臭気を減少させるには更に改善の余地がある。
【0006】
さらに、脱酸素剤を使用する場合、食品はガスバリア性の容器に密閉される。そのため、臭気は容器内に閉じ込められ、臭気に由来する異臭や食品の味の悪化が問題になる。臭気の発生原因としては、食品からの臭気の発生、脱酸素剤が酸素を吸収する際に伴う脱酸素剤物質の分解による臭気の発生、食品中の物質が脱酸素剤と接触することによる臭気の発生等が考えられる。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、優れた酸素吸収性を備えると共に、臭気を十分に抑制することのできる多層体、その多層体を用いた包装容器、及びその包装容器を用いた食品の保存方法を提供することを目的の一つとする。
【0008】
また、本発明は、食品を封入して保管する時に、臭気を吸収し、かつ外気からの酸素の透過を抑制することで、食品の風味を高く維持することのできる多層体、その多層体を用いた包装容器、及びその包装容器を用いた食品の保存方法を提供することを目的の別の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の成分を含む酸素吸収層及び臭気吸収層を用いると共に、多層体における各層の積層順を特定の順にすることにより、優れた酸素吸収性を保持すると共に、臭気を十分に抑制することのできる多層体、その多層体を用いた包装容器、及びその包装容器を用いた食品の保存方法を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。さらに、そのような多層体等を食品の保管に用いることにより、臭気を減少させ、しかも外気からの酸素の透過を抑制することで、食品の風味を高く維持することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は下記のとおりである。
(1)熱可塑性樹脂を含有するシール層(A)、熱可塑性樹脂と鉄粉とを含有する酸素吸収層(B)、熱可塑性樹脂と無機塩基とを含有する臭気吸収層(C)、並びに、酸素バリア性を有する酸素バリア層(D)を、この順に積層して備える多層体。
(2)前記無機塩基は、カルシウムを有する無機塩基である、(1)に記載の多層体。
(3)前記酸素吸収層(B)は、その全体量に対して、前記鉄粉を5.0質量%以上60.0質量%以下含有し、かつ、前記臭気吸収層(C)は、その全体量に対して、前記無機塩基を0.10質量%以上20.0質量%以下含有する、(1)又は(2)に記載の多層体。
(4)前記酸素吸収層(B)に含有される前記鉄粉の平均粒径が10μm以上40μm以下であり、かつ、前記臭気吸収層(C)に含有される酸化カルシウム及び/又は水酸化カルシウムの平均粒径が5μm以上25μm以下である、(1)〜(3)のいずれかに記載の多層体。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載の多層体を、熱可塑性樹脂を含有するシール層(A)を内側にし、かつ、酸素バリア性を有する酸素バリア層(D)を外側にして備える、包袋容器。
(6)(5)に記載の包袋容器により食品を封入して保存する、食品の保存方法。
(7)前記食品は、水分活性(Aw)が0.3以上1.0以下である、(6)に記載の保存方法。
(8)前記食品は、脂質を1質量%以上50質量%以下含むチョコレート菓子及び食肉類のいずれかである、(6)又は(7)に記載の保存方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、優れた酸素吸収性を備えると共に、臭気を十分に抑制することのできる多層体、その多層体を用いた包装容器、及びその包装容器を用いた食品の保存方法を提供することができる。また、本発明によれば、食品を封入して保管する時に、食品から発生する臭気を吸収し、かつ外気からの酸素の透過を抑制することで、食品の風味を高く維持することのできる多層体、その多層体を用いた包装容器、及びその包装容器を用いた食品の保存方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明は下記本実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0014】
(多層体)
図1は、本実施形態の多層体の一例を模式的に示す部分断面図である。この多層体は、熱可塑性樹脂を含有するシール層(A)、熱可塑性樹脂と鉄粉とを含有する酸素吸収層(B)、熱可塑性樹脂と無機塩基とを含有する臭気吸収層(C)、並びに、酸素バリア性を有する酸素バリア層(D)をこの順に積層して備える。
このような多層体を用いると、食品から放出される水分が、臭気吸収層(C)と接する前に酸素吸収層(B)と接するので、酸素吸収層(B)に供給される水分量が減少せず、その結果、酸素吸収量が減ったり酸素吸収速度が遅くなったりすることを防止できる。
また、酸素吸収層(B)に含まれる酸素吸収性の物質が鉄粉であるため、酸素吸収性の物質が有機高分子化合物である場合とは異なり、酸素を吸収しても分解せず、臭気が発生したり、酸素吸収層(B)の物理的強度が低下したりすることを抑制できる。さらに、本実施形態の多層体は、酸素吸収層(B)及び無機塩基を含有する臭気吸収層(C)よりも外側にシール層(A)を備えているため、酸素吸収層(B)や無機塩基を含有する臭気吸収層(C)が食品に直接接触し水に溶出することはなく、それらの層に含まれる鉄粉や無機塩基のような物質に起因する食品の風味低下を防止することができる。
【0015】
多層体は、その用途により適宜厚さを設定すればよく、例えば、厚さが30μm以上250μm以下の多層フィルムであってもよく、厚さが250μm超3000μm以下の多層シートであってもよい。より具体的には、例えば後述のチョコレート菓子を保存する軟包装容器に本実施形態の多層体を用いる場合、薄く柔軟性を保つ必要性がある観点から、多層体は、厚さが30μm以上250μm以下の多層フィルムであると好ましい。また、後述の食肉類を保存するブリスターやトレー形状の硬質包装容器に本実施形態の多層体を用いる場合、ブリスターやトレー等の特定の形状を保つために硬さが必要である観点から、多層体は、厚さが250μm超3000μm以下の多層シートであると好ましい。
【0016】
(シール層(A))
本実施形態に係るシール層(A)は、少なくとも熱可塑性樹脂を含有する。シール層(A)はシーラントとしての役割を果たすと共に、本実施形態の多層体を用いた包装容器において、食品のような収納物と酸素吸収層(B)とを接触させずに隔離する役割をも果たし得る。また、酸素吸収層(B)による速やかな酸素吸収を妨げないように、効率的な酸素透過を行う役割をも果たし得る。
【0017】
シール層(A)の酸素透過度は1000cc/(m
2・24h・atm)以上であると好ましい。これにより、本実施形態の多層体が酸素を吸収する速度をより高めることができる。酸素透過度は、「OX−TRAN−2/21(MOCON社製)」を用いて、測定温度25℃、セル面積50cm
2の条件下で測定される。
【0018】
シール層(A)に含まれる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、エチレン−環状オレフィン共重合体等のポリオレフィン樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のエチレン系共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体等の合成ゴム系樹脂及びその水添樹脂、軟質ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリメチルペンテン、シリコーン樹脂、及びポリシロキサンと他の樹脂との共重合体が挙げられる。熱可塑性樹脂は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0019】
シール層(A)における熱可塑性樹脂の含有量は、シール層(A)の全体量(100質量%)に対して、70質量%以上100質量%以下であると好ましく、80質量%以上100質量%以下であるとより好ましく、90質量%以上100質量%以下であるとさらに好ましい。熱可塑性樹脂の含有量が上記範囲内にあることにより、シール層(A)の上記役割をより有効かつ確実に果たすことができる。
【0020】
シール層(A)の厚さは、1μm以上100μm以下が好ましく、5μm以上30μm以下がより好ましい。シール層(A)の厚さが上記範囲内にあることにより、多層体が酸素を吸収する速度をより速めると共に、上記の収納物と酸素吸収層(B)とを接触させずに隔離する役割をより有効かつ確実に果たすことができる。
【0021】
シール層(A)は、上記の役割を果たすのを阻害しない限り、熱可塑性樹脂以外の材料を含有してもよい。そのような材料としては、例えば、炭酸カルシウム、クレー、マイカ、シリカ等の充填剤、乾燥剤、顔料、染料、酸化防止剤、スリップ剤、帯電防止剤、安定剤、及び可塑剤が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0022】
(酸素吸収層(B))
本実施形態に係る酸素吸収層(B)は、熱可塑性樹脂と鉄粉とを含有する。酸素吸収層(B)は、多層体を透過しようとする酸素、例えば、本実施形態の多層体を用いた包装容器の内部に外気から浸入しようとする酸素、及び該包装容器内部に残存する酸素を吸収する役割を果たす。
【0023】
熱可塑性樹脂としては、公知のものを適宜用いることができ、特に限定されないが、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、あるいはエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同士のランダム又はブロック共重合体等のポリオレフィン、あるいはこれらの混合物が挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0024】
酸素吸収層(B)における熱可塑性樹脂の含有量は、特に限定されず、酸素吸収層(B)の全体量(100質量%)に対して、45質量%以上85質量%以下であってもよく、50質量%以上80質量%以下であってもよく、55質量%以上75質量%以下であってもよい。
【0025】
鉄粉としては、鉄の表面が露出したものであれば特に限定されるものではなく、当業界で公知の鉄粉、例えば、還元鉄粉、電解鉄粉、及び噴霧鉄粉が好適に用いられる。その他、鋳鉄などの粉砕物、切削品などを用いることもできる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。鉄粉は、酸素吸収層(B)に浸入する水と反応することにより、酸素吸収能を有するようになる。
【0026】
鉄粉の平均粒径は、0.1μm以上200μm以下であると好ましく、1μm以上50μm以下であるとより好ましい。鉄粉の平均粒径を上記範囲内にすることにより、酸素との接触がより良好になり酸素吸収層(B)における酸素吸収能が高まると共に、酸素吸収層(B)のフィルム形成能をより高めることができる。鉄粉の平均粒径は、日機装株式会社製のマイクロトラックMT3000II(商品名)や株式会社島津製作所製のレーザー回折式粒度分布測定器SALD−3000(商品名)等の粒子径測定装置により測定される。
【0027】
鉄粉の含有量は、特に限定されないが、酸素吸収層(B)の全体量(100質量%)に対して、5.0質量%以上60質量%以下であると好ましく、15質量%以上50質量%以下であるとより好ましく、20質量%以上40質量%以下であると更に好ましい。これにより、酸素吸収層(B)の酸素吸収能をより高めると共に、鉄粉による食品由来の油などの分解を更に抑制するので、異臭の原因となるガスの発生をより少なくできる。
【0028】
酸素吸収層(B)は、上記の役割を果たすのを阻害しない限り、熱可塑性樹脂及び鉄粉以外の材料を含んでもよい。そのような材料としては、例えば、乾燥剤、吸着剤、抗菌剤、着色剤及び脱臭剤が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0029】
乾燥剤とは、空気中から水分を吸収する剤を意味し、例えば、シリカゲル、生石灰(酸化カルシウム)、塩化カルシウム、五酸化二リン及び酸化アルミニウムが挙げられる。また、吸着剤とは、その表面に原子、分子、微粒子などを物理的に固定させる剤を意味し、具体的には、活性炭、ゼオライト、シリカゲル、及び酸化アルミニウムを例示できる。なかでもシリカゲルや酸化アルミニウムは、乾燥剤としての機能も有しているため好ましい。なお、酸素吸収層(B)が乾燥剤や吸着剤を含む場合、その含有量は、鉄粉よりも少ないこと(例えば、酸素吸収層(B)の全体量に対して0.0%超5.0%未満)が好ましい。乾燥剤や吸着剤は通常吸水性を有するため、それらの含有量を鉄粉よりも少なくすることで、鉄粉の水との反応性を高めることができる。
【0030】
酸素吸収層(B)の厚さは、特に限定されず、1μm以上300μm以下であると好ましく、10μm以上200μm以下であるとより好ましい。これにより、多層体が酸素を吸収する速度をより速めることができると共に、多層体の柔軟性が損なわれることを防止することができる。
【0031】
(臭気吸収層(C))
臭気吸収層(C)は、熱可塑性樹脂と無機塩基とを含有する。臭気吸収層(C)は、多層体と接触する臭気を吸収する役割を果たす。本実施形態の多層体を用いた包装容器においては、食品のような収納物から発生する臭気を吸収することができる。
【0032】
熱可塑性樹脂としては、公知のものを適宜用いることができ、特に限定されないが、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、あるいはエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同士のランダム又はブロック共重合体等のポリオレフィン、あるいはこれらの混合物が挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0033】
臭気吸収層(C)における熱可塑性樹脂の含有量は、特に限定されず、臭気吸収層(C)の全体量(100質量%)に対して、70質量%以上98質量%以下であってもよく、75質量%以上98質量%以下であってもよく、80質量%以上95質量%以下であってもよい。
【0034】
無機塩基は、塩基性を示す無機化合物であり、臭気の原因となるガスを吸収する。無機塩基としては、例えば、周期表第1族及び第2族の金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩及び酸化物が挙げられる。より具体的には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム、酸化カルシウム、及び酸化マグネシウムが挙げられる。これらの中では、本発明による作用効果をより有効かつ確実に奏する観点から、周期表第2族の金属を有する無機塩基が好ましく、カルシウム又はマグネシウムを有する無機塩基がより好ましく、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム及び水酸化カルシウムからなる群より選ばれる1種以上の無機塩基がさらに好ましく、酸化カルシウム及び水酸化カルシウムからなる群より選ばれる1種以上の無機塩基が特に好ましい。
【0035】
無機塩基の平均粒径は、0.1μm以上200μm以下であると好ましく、1μm以上50μm以下であるとより好ましく、5μm以上25μm以下が特に好ましい。無機塩基の平均粒径を上記範囲内にすることにより、臭気との接触がより良好になり臭気吸収層(C)における臭気吸収能が高まると共に、臭気吸収層(C)のフィルム形成能をより高めることができる。無機塩基の平均粒径は、日機装株式会社製のマイクロトラックMT3000II(商品名)や株式会社島津製作所製のレーザー回折式粒度分布測定器SALD−3000(商品名)等の粒子径測定装置により測定される。
【0036】
臭気吸収層(C)における無機塩基の含有量は、臭気吸収層(C)の全体量(100質量%)に対して、0.10質量%以上20.0質量%以下であると好ましく、0.50質量%以上17.0質量%以下であるとより好ましく、1.0質量%以上15.0質量%以下であると更に好ましい。無機塩基の含有量が上記範囲内にあると、臭気吸収層(C)における臭気吸収能が更に高まると共に、臭気吸収層(C)が水分を吸収することに伴う酸素吸収層(B)の酸素吸収能の低下を更に抑制することができる。
【0037】
臭気吸収層(C)は、上記の役割を果たすのを阻害しない限り、熱可塑性樹脂及び無機塩基以外の材料を含んでもよい。そのような材料としては、例えば、乾燥剤、吸着剤、抗菌剤、着色剤及び脱臭剤(ただし、無機塩基に該当するものを除く。)が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。乾燥剤及び吸着剤は、上記と同様のものを例示できる。なお、臭気吸収層(C)が乾燥剤や吸着剤を含む場合、その含有量は、無機塩基よりも少ないことが好ましい。これにより、無機塩基が臭気吸収層(C)内で偏在することによって、その臭気吸収層(C)内で存在しない部位が生じるのを、より抑制することができる。
【0038】
臭気吸収層(C)の厚さは、特に限定されず、1μm以上300μm以下であると好ましく、10μm以上200μm以下であるとより好ましい。これにより、多層体の臭気吸収能をより高めることができると共に、多層体の柔軟性が損なわれることを防止することができる。
【0039】
(酸素バリア層(D))
酸素バリア層(D)は、酸素バリア性を有する層であり、例えば酸素バリア性物質を含むことにより、その酸素バリア性を備えることができる。酸素バリア性物質とは、酸素透過度が100cc/(m
2・24h・atm)以下の物質を意味する。酸素バリア層(D)に含まれ得る酸素バリア性物質としては、例えば、シリカ若しくはアルミナを蒸着したポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート)、ポリアミド、ナイロンMXD6、エチレン−ビニルアルコール共重合体、及び塩化ビニリデンが挙げられる。また、酸素バリア層(D)は、アルミニウム箔などの金属箔であってもよい。酸素バリア層(D)の厚さは、1μm以上300μm以下であると好ましく、1μm以上100μm以下であるとより好ましい。酸素バリア層(D)の厚さが上記範囲内にあることにより、酸素バリア効果をより高めることができると共に、柔軟性が損なわれることを防止することができる。
【0040】
(その他の層)
本実施形態の多層体は、上記のシール層(A)、酸素吸収層(B)、臭気吸収層(C)、及び酸素バリア層(D)に加えて、本発明の目的達成を阻害しない範囲で、それら以外の層を備えてもよい。そのような層としては、例えば、接着層、遮光層、易剥離層及び易引裂層が挙げられる。
【0041】
本実施形態の多層体は、例えば、隣接する2つの層の間の接着強度をより高める観点から、当該2つの層の間に接着層を備えてもよい。接着層は、接着性を有する熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。接着性を有する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂;ポリエステル系ブロック共重合体を主成分としたポリエステル系熱可塑性エラストマーが挙げられる。なお、接着層の厚さは、特に限定されないが、実用的な接着強度を発揮しつつ成形加工性を確保するという観点から、2μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0042】
また、本実施形態の多層体は、遮光性をより高める観点から、特に上記酸素バリア層(D)として金属を有しない層を用いる場合、酸素バリア層(D)の臭気吸収層(C)とは反対側に遮光層を備えてもよい。遮光層としては、例えば、金属箔及び蒸着膜が挙げられる。ここで、金属箔としては、特に限定されないが、アルミニウム箔が好ましい。また、金属箔の厚さは、遮光性及び耐屈曲性等の観点から、3μm以上50μm以下が好ましく、より好ましくは3μm以上30μm以下、さらに好ましくは5μm以上15μm以下である。蒸着膜としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウムやアルミナ等の金属又は金属酸化物のような金属化合物の膜が蒸着された樹脂フィルムが挙げられる。なお、蒸着膜の形成方法としては、例えば、樹脂フィルム上に、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法や、PECVD等の化学蒸着法等により、金属又は金属化合物を蒸着する方法が挙げられる。蒸着膜の厚さは、遮光性及び耐屈曲性等の観点から、5nm以上500nm以下が好ましく、より好ましくは5nm以上200nm以下である。
【0043】
さらに、本実施形態の多層体を後述の包装容器等として用いる場合、その包装容器の開封を容易にするために、多層体が易剥離層又は易引裂層を含んでもよい。易剥離層としては、例えば、2種類以上の異なるポリオレフィンをブレンドして、シール強度と剥離強度を制御したフィルムが一般的に知られている。また、易引裂層としては、例えば、ナイロン6にナイロンMXD6をブレンドした易引裂性フィルムが一般的に知られている。
【0044】
(多層体の製造方法)
本実施形態の多層体は、例えば、シール層(A)の材料を含む樹脂組成物、酸素吸収層(B)の材料を含む樹脂組成物、臭気吸収層(C)の材料を含む樹脂組成物及び酸素バリア層(D)の材料を含む組成物の順に積層した多層構造を含む積層体を、多層膜製造装置により共押出して製造することができる。あるいは、シール層(A)の材料を含む樹脂組成物、酸素吸収層(B)の材料を含む樹脂組成物及び臭気吸収層(C)の材料を含む樹脂組成物の順に積層した多層構造を含む積層体を、多層膜製造装置により共押出して製造した後、臭気吸収層(C)に接着剤を用いて酸素バリア層(D)を接着してもよい。また、共押出では、各層間で必要があれば接着層を設けてもよい。
【0045】
(包装容器)
本実施形態の多層体は、脱酸素性の包装材料として包装袋などの包装容器の一部又は全部に用いることができる。
図2は、本実施形態に係る脱酸素性の包装容器の一例を示す部分断面図であり、
図1に示す多層体を用いた例を示している。
図2に示すように、包装容器100は、2つの多層体10を備えている。2つの多層体10は、互いにシール層(A)を内側にした状態で貼り合わされている。包装容器100は、例えば多層体10の縁部同士をヒートシールすることによって製造することができる。この包装容器100は、シール層(A)を内側(すなわち収容物と接触する側)にし、かつ、酸素バリア層(D)を外側(すなわち外気に直接触れる側)にしている。なお、
図2は、多層体を、包装容器の全部に用いた例を示すものであるが、例えば容器の蓋材やパウチ袋の片面のみのような包装容器の一部に用いてもよい。
【0046】
さらに、本実施形態の多層体は、シート状又はフィルム状に加工した脱酸素剤、または、これを通気性小袋に入れた形態の脱酸素剤包装体として用いることができる。また、本実施形態の多層体は、ラベル、カード、及びパッキングなどの形態に成形して、脱酸素体として用いることができる。
【0047】
本実施形態の多層体の用途に制限はなく、食品、飲料、医薬品、医療品、化粧品、金属製品、及び電子製品などの保存及び品質保持の分野において実用性の高い脱酸素性能及び臭気吸収能を発揮する。これらの中でも食品の保存の分野において、特に有効に高い脱酸素性能及び臭気吸収能を発揮することができる。
【0048】
(食品の保存方法)
本実施形態の食品の保存方法は、上記本実施形態の包装容器により食品を封入して保存する方法である。本実施形態において、酸素の吸収(脱酸素)は、酸素吸収層(B)において水分と反応した鉄粉によりなされるため、食品が所定量の水分を含むことが好ましい。具体的には、食品は、水分活性(Aw)が0.3以上1.0以下であると好ましい。ここで、水分活性とは、物品中の自由水含有量を示す尺度であり、0.0以上1.0以下の数字で示され、水分のない物品は0.0、純水は1.0となる。すなわち、ある物品の水分活性(Aw)は、その物品を密封し平衡状態に到達した後の空間内の水蒸気圧をP、純水の水蒸気圧をP0、同空間内の相対湿度をRH(%)、とした場合、下記式で定義される。
Aw=P/P0=RH/100
【0049】
本実施形態の食品の保存方法において、保存対象となる食品としては、例えば、チョコレート菓子、果肉入りゼリー、羊羹、プリン等の菓子類、パイン、みかん、桃、あんず、なし、りんご等のフルーツ類、レタス、大根、キュウリ等の野菜類、牛肉、豚肉、鶏肉等の食肉類、液体だし、マヨネーズ、味噌、すり下ろし香辛料等の調味料、ジャム、クリーム、チョコレートペースト等のペースト状食品、カレー、液体スープ、煮物、漬物、シチュー等の液体加工食品に代表される液体系食品、飲料水、茶飲料、コーヒー飲料、清涼飲料水、アルコール飲料、牛乳に代表される飲料、そば、うどん、ラーメン等の生麺及びゆで麺、精米、調湿米、無洗米等の調理前の米類や調理された炊飯米、五目飯、赤飯、米粥等の加工米製品類、粉末スープ、だしの素等の粉末調味料、等に代表される水分含有食品が挙げられる。
【0050】
これらの中では、脂質を1質量%以上50質量%以下含む食品が好ましい。このような食品は、酸素により変質しやすいことに加えて、臭気を発生しやすい。しかも発生した臭気は、本実施形態の多層体を包装容器等として用いることより、より有効かつ確実に吸収される。そのような食品として、より具体的には、脂質を1質量%以上50質量%以下含むチョコレート菓子、及び脂質を1質量%以上50質量%以下含む食肉類(例えば牛肉)が挙げられる。上記チョコレート菓子の場合、常温で保存する際に本実施形態の包装容器等が特に有用であり、食肉類の場合、冷蔵条件(例えば5℃以上10℃以下)で保存する際に本実施形態の包装容器等が特に有用である。
【実施例】
【0051】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0052】
(多層体の評価方法1)
多層体から
図2に示すような袋状の包装容器を作製した。次いで、その包装容器に、チョコレート、スポンジケーキ及び生クリームを含むチョコレート菓子を、空気と共に収容した後、密封した。チョコレート菓子入りの包装容器を25℃で7日間、暗所にて保存した。その後、包装容器を開封し、チョコレート菓子を取り出し、そのチョコレート菓子のチョコレート部分を口に含んで、そのときの風味を確認した。口に含んだ際の香り及び味が共に良好である場合、すなわち、保存前との変化がほとんど認められない場合を「−」と評価し、チョコレートの味は保持されていたものの、チョコレートの香りが弱くなり、アーモンドを想起させる異臭が目立つ場合を「+」と評価し、チョコレートの風味(香り及び味)はするものの、それらがいずれも弱くなった場合を「++」と評価し、チョコレートとは異質な味がした場合を「+++」と評価した。
【0053】
(多層体の評価方法2)
多層体から
図2に示すような袋状の包装容器を作製した。次いで、その包装容器に、チョコレート、スポンジケーキ及び生クリームを含むチョコレート菓子を、空気と共に収容した後、密封した。チョコレート菓子入りの包装容器を25℃で7日間、暗所にて保存した。保存後の包装容器の開封口から、包装容器内のガスをシリンジで採取し、酸素濃度分析計(Dansensor社製商品名「CheckMate2」)を用いて酸素濃度(%)を測定した。
【0054】
(実施例1)
ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製商品名「ノバテックLD:LC8001)67.5質量部、鉄粉(ヘガネスジャパン株式会社製商品名「海綿状鉄粉」、平均粒径30μm)30.0質量部、及び酸化カルシウム(カルファイン株式会社製、平均粒径5μm)2.5質量部を、直径37mmのスクリューを2本有する2軸混練押出機を用いて、200℃で溶融混練し、押出機ヘッドからストランドを押し出し、冷却後、ペレタイジングすることにより、酸素吸収層(B1)用の樹脂組成物(b1)を得た。
【0055】
また、ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製商品名「ノバテックLD:LC606」)94.2質量部、及び酸化カルシウム(カルファイン株式会社製、平均粒径5μm)5.9質量部を、上記の2軸混練押出機を用いて、200℃で溶融混練し、押出機ヘッドからストランドを押し出し、冷却後、ペレタイジングすることにより、臭気吸収層(C1)用の樹脂組成物(c1)を得た。
【0056】
次いで、第1〜第3押出機、フィードブロック、Tダイ、冷却ロール及びシート引取機を備えた3層多層シート成形装置を用い、第1押出機からシール層(A)用のポリエチレン(住友化学株式会社製商品名「スミカセンL705」)、第2押出機から上記樹脂組成物(b1)、第3押出機から上記樹脂組成物(c1)をそれぞれ押し出し、フィードブロックを介して、3層フィルムを得た。その3層フィルムの層構成は、内層より、シール層(A)(20μm)/酸素吸収層(B1)(45μm)/臭気吸収層(C1)(23μm)であった。得られた3層フィルムの臭気吸収層(C1)側にシリカ蒸着ポリエチレンテレフタレート(東レフィルム加工株式会社製商品名「バリアロックス」)からなる厚さ12μmの酸素バリア層(D)を、シリカ蒸着面を接着面としてドライラミネーションにより接着し、多層体を得た。
【0057】
得られた多層体について、上記「多層体の評価方法1」及び「多層体の評価方法2」により評価した。結果を多層体の構成と共に表1に示す。
【0058】
(実施例2)
ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製商品名「ノバテックLD:LC606」)94.8質量部、酸化カルシウム(カルファイン株式会社製、平均粒径5μm)2.9質量部、及びシリカゲル(富士シリシア化学株式会社製商品名「サイリシア710」)2.3質量部を、上記の2軸混練押出機を用いて、200℃で溶融混練し、押出機ヘッドからストランドを押し出し、冷却後、ペレタイジングすることにより、臭気吸収層(C2)用の樹脂組成物(c2)を得た。樹脂組成物(c1)に代えて樹脂組成物(c2)を用いた以外は実施例1と同様にして、臭気吸収層(C1)に代えて臭気吸収層(C2)を備える多層体を得た。得られた多層体について、上記「多層体の評価方法1」及び「多層体の評価方法2」により評価した。結果を多層体の構成と共に表1に示す。
【0059】
(実施例3)
ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製商品名「ノバテックLD:LC606」)88.3質量部、及び酸化カルシウム(カルファイン株式会社製、平均粒径5μm)11.7質量部を、上記の2軸混練押出機を用いて、200℃で溶融混練し、押出機ヘッドからストランドを押し出し、冷却後、ペレタイジングすることにより、臭気吸収層(C3)用の樹脂組成物(c3)を得た。樹脂組成物(c1)に代えて樹脂組成物(c3)を用いた以外は実施例1と同様にして、臭気吸収層(C1)に代えて臭気吸収層(C3)を備える多層体を得た。得られた多層体について、上記「多層体の評価方法1」及び「多層体の評価方法2」により評価した。結果を多層体の構成と共に表1に示す。
【0060】
(実施例4)
ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製商品名「ノバテックLD:LC606」)89.7質量部、酸化カルシウム(カルファイン株式会社製、平均粒径5μm)5.9質量部、及びシリカゲル(富士シリシア化学株式会社製商品名「サイリシア710」)4.5質量部を、上記の2軸混練押出機を用いて、200℃で溶融混練し、押出機ヘッドからストランドを押し出し、冷却後、ペレタイジングすることにより、臭気吸収層(C4)用の樹脂組成物(c4)を得た。樹脂組成物(c1)に代えて樹脂組成物(c4)を用いた以外は実施例1と同様にして、臭気吸収層(C1)に代えて臭気吸収層(C4)を備える多層体を得た。得られた多層体について、上記「多層体の評価方法1」及び「多層体の評価方法2」により評価した。結果を多層体の構成と共に表1に示す。
【0061】
(比較例1)
臭気吸収層(C)用の樹脂組成物(c1)に代えてポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製商品名「ノバテックLD:LC606」)を用いた以外は実施例1と同様にして、臭気吸収層(C1)に代えてポリエチレン層(PE)を備える多層体を得た。得られた多層体について、上記「多層体の評価方法1」及び「多層体の評価方法2」により評価した。結果を多層体の構成と共に表1に示す。
【0062】
(比較例2)
ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製商品名「ノバテックLD:LC8001」)64.6質量部、鉄粉(ヘガネスジャパン株式会社製商品名「海綿状鉄粉」、平均粒径30μm)30.0質量部、及び酸化カルシウム(カルファイン株式会社製、平均粒径5μm)5.4質量部を、上記2軸混練押出機を用いて、200℃で溶融混練し、押出機ヘッドからストランドを押し出し、冷却後、ペレタイジングすることにより、樹脂組成物(e2)を得た。酸素吸収層(B1)用の樹脂組成物(b1)に代えて樹脂組成物(e2)を用い、臭気吸収層(C1)用の樹脂組成物(c1)に代えてポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製商品名「ノバテックLD:LC606」)を用いた以外は実施例1と同様にして、酸素吸収層(B1)に代えて層(E2)を備え、臭気吸収層(C1)に代えてポリエチレン層(PE)を備える多層体を得た。得られた多層体について、上記「多層体の評価方法1」及び「多層体の評価方法2」により評価した。結果を多層体の構成と共に表1に示す。
【0063】
(比較例3)
ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製商品名「ノバテックLD:LC8001」)66.3質量部、鉄粉(ヘガネスジャパン株式会社製商品名「海綿状鉄粉」、平均粒径30μm)30.0質量部、酸化カルシウム(カルファイン株式会社製、平均粒径5μm)2.5質量部、及びシリカゲル(富士シリシア化学株式会社製商品名「サイリシア710」)1.3質量部を、上記2軸混練押出機を用いて、200℃で溶融混練し、押出機ヘッドからストランドを押し出し、冷却後、ペレタイジングすることにより、樹脂組成物(e3)を得た。酸素吸収層(B1)用の樹脂組成物(b1)に代えて樹脂組成物(e3)を用い、臭気吸収層(C1)用の樹脂組成物(c1)に代えてポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製商品名「ノバテックLD:LC606」)を用いた以外は実施例1と同様にして、酸素吸収層(B1)に代えて層(E3)を備え、臭気吸収層(C1)に代えてポリエチレン層(PE)を備える多層体を得た。得られた多層体について、上記「多層体の評価方法1」及び「多層体の評価方法2」により評価した。結果を多層体の構成と共に表1に示す。
【0064】
(比較例4)
ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製商品名「ノバテックLD:LC606」)95.5質量部、及びシリカゲル(富士シリシア化学株式会社製商品名「サイリシア710」)4.5質量部を、上記の2軸混練押出機を用いて、200℃で溶融混練し、押出機ヘッドからストランドを押し出し、冷却後、ペレタイジングすることにより、樹脂組成物(e4)を得た。臭気吸収層(C1)用の樹脂組成物(c1)に代えて樹脂組成物(e4)を用いた以外は実施例1と同様にして、臭気吸収層(C1)に代えて層(E4)を備える多層体を得た。得られた多層体について、上記「多層体の評価方法1」及び「多層体の評価方法2」により評価した。結果を多層体の構成と共に表1に示す。
【0065】
(比較例5)
ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製商品名「ノバテックLD:LC606」)91.0質量部、及びシリカゲル(富士シリシア化学株式会社製商品名「サイリシア710」)9.0質量部を、上記の2軸混練押出機を用いて、200℃で溶融混練し、押出機ヘッドからストランドを押し出し、冷却後、ペレタイジングすることにより、樹脂組成物(e5)を得た。臭気吸収層(C1)用の樹脂組成物(c1)に代えて樹脂組成物(e5)を用いた以外は実施例1と同様にして、臭気吸収層(C1)に代えて層(E5)を備える多層体を得た。得られた多層体について、上記「多層体の評価方法1」及び「多層体の評価方法2」により評価した。結果を多層体の構成と共に表1に示す。
【0066】
(比較例6)
ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製商品名「ノバテックLD:LC606」)97.1質量部、及び酸化カルシウム(カルファイン株式会社製、平均粒径5μm)2.9質量部を、上記の2軸混練押出機を用いて、200℃で溶融混練し、押出機ヘッドからストランドを押し出し、冷却後、ペレタイジングすることにより、臭気吸収層(C6)用の樹脂組成物(c6)を得た。
【0067】
次いで、第2押出機から上記樹脂組成物(c6)、第3押出機から上記樹脂組成物(b1)をそれぞれ押し出した以外は実施例1と同様にして3層フィルムを得た。その3層フィルムの層構成は、内層より、シール層(A)(20μm)/臭気吸収層(C6)23μm/酸素吸収層(B1)(45μm)であった。得られた3層フィルムの酸素吸収層(B1)側にシリカ蒸着ポリエチレンテレフタレート(東レフィルム加工株式会社製商品名「バリアロックス」)からなる厚さ12μmの酸素バリア層(D)を、シリカ蒸着面を接着面としてドライラミネーションにより接着し、多層体を得た。
【0068】
得られた多層体について、上記「多層体の評価方法1」及び「多層体の評価方法2」により評価した。結果を多層体の構成と共に表1に示す。
【0069】
(比較例7)
酸素吸収層(B1)用の樹脂組成物(b1)に代えて易酸化性熱可塑性樹脂(Sealed Air社製商品名「Cryovac(登録商標) OS Films」)を用いた以外は実施例3と同様にして、酸素吸収層(B1)に代えて易酸化性熱可塑性樹脂層(EO)を備える多層体を得た。得られた多層体について、上記「多層体の評価方法1」及び「多層体の評価方法2」により評価した。結果を多層体の構成と共に表1に示す。
【0070】
【表1】
【解決手段】熱可塑性樹脂を含有するシール層(A)、熱可塑性樹脂と鉄粉とを含有する酸素吸収層(B)、熱可塑性樹脂と無機塩基とを含有する臭気吸収層(C)、並びに、酸素バリア性を有する酸素バリア層(D)を、この順に積層して備える多層体。