(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記スペーサの内周面には、前記ランド部の縮径に応じて両端部の内径寸法が縮径された第2テーパ部が軸方向の少なくとも一部に形成された請求項5に記載のボールねじ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、ボールねじ装置のねじ軸の形態としては、その表面に形成された螺旋溝が軸受設置部の端面にまで形成されているものと形成されていないものがある。
図8(a)に示すように、螺旋溝101が軸受設置部102の端面102aにまで形成されていないねじ軸100では、
図8(b)に示すように、端面102aの形状は均整な円環形状をなしている。したがって、
図8(c)に示すように、ロックナット120と軸受110の内輪111との間に設けたスペーサ130と端面102aとによって軸受110の内輪111を挟み、軸受110の軸方向の動きを制限することができる。
【0005】
一方、
図9(a)に示すように、螺旋溝201が軸受設置部202の端面202aにまで形成されたねじ軸200では、
図9(b)に示すように、端面202aの形状は不均整な円環形状をなしている。この形状は螺旋溝201の溝の間隔が小さい場合(螺旋溝201のリードが小さい場合)には顕著であり、螺旋溝201の底部201aが露出した部分が生じることがある。このような形態のねじ軸200では、
図9(c)に示すように、ロックナット220と軸受210の内輪211との間に設けたスペーサ230と、端面202aと軸受210の内輪211との間に設けたスペーサ240とによって内輪211が挟まれた軸受210の軸方向の動きを制限することになる。
【0006】
このように、軸受210の内輪211又はスペーサ240に当接するねじ軸200の端面202aの径方向の寸法が不均一なため不均整な円環形状をなしており、ロックナット220で締め付ける場合にスペーサ240が端面202aを越えて螺旋溝201に侵入したり、ねじ軸200に過大な荷重がかかった際にねじ軸200の端部がいっそう振れやすくなる。
このような状態でボールねじ装置を作動すると、ねじ軸200の変形、偏心や、乗り上げを招き、結果として、ロックナット220の締め付けによってねじ軸200の端部が曲がってしまったり、ねじ軸200の端部に対してプーリやカップリングを設置することが困難になることがあるため、検討の余地があった。
本発明は上記課題に着目してなされたものであり、ねじ軸に過大な荷重がかかった際でもねじ軸の端部の振れを低減するボールねじ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためのボールねじ装置のある態様は、表面に螺旋溝が形成されたねじ軸と、そのねじ軸の端部に形成された軸受設置部を支持する軸受とを有し、
上記螺旋溝が連通する端面に当接し、
周方向に複数
の分割体に分割可能な円環形状の拡径部材が設けられ、
上記拡径部材の少なくとも一部を覆い、上記拡径部材の軸方向の端面と上記軸受の内輪との間に嵌合するスペーサを有する。
【0008】
また、上記ボールねじ装置においては、上記スペーサが、上記拡径部材の上記軸受設置部側を覆い、上記拡径部材の軸方向の端面と上記軸受の内輪との間に嵌合することが好ましい。
また、上記ボールねじ装置においては、上記端面におけるランド部の断面積が周方向に亘って拡大された上記軸方向の領域に上記拡径部材が設けられることが好ましい。
また、上記ボールねじ装置においては、上記スペーサが、
周方向に複数の分割体に分割され、それら分割体が上記拡径部材の分割体のそれぞれと一体成形されることが好ましい。
【0009】
上記課題を解決するためのボールねじ装置の他の態様は、表面に螺旋溝及びランド部が形成された螺旋溝形成部及び軸受によって支持される軸受設置部を有するねじ軸と、上記軸受設置部を支持する軸受とを有し、
上記螺旋溝形成部には、当該螺旋溝形成部から上記軸受設置部に向かってランド部が徐々に縮径された第1テーパ部が形成され、
第1テーパ部に内周面が嵌合する円環形状のスペーサが設けられ、
上記スペーサの軸方向の端面が上記軸受の内輪に当接する。
【0010】
また、上記ボールねじ装置においては、上記スペーサは、両端部の内径寸法が軸方向に同径であることが好ましい。
また、上記ボールねじ装置においては、上記スペーサの内周面には、上記ランド部の縮径に応じて両端部の内径寸法が縮径された第2テーパ部が軸方向の少なくとも一部に形成されたことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、ねじ軸に過大な荷重がかかった際でもねじ軸の端部の振れを低減するボールねじ装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の詳細な説明では、本発明の実施形態の完全な理解を提供するように多くの特定の細部について記載される。しかしながら、かかる特定の細部がなくても1つ以上の実施態様が実施できることは明らかであろう。他にも、図面を簡潔にするために、周知の構造及び装置が略図で示されている。
以下、本発明に係るボールねじ装置の実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、ボールねじ装置の第1実施形態における構成を示す図であり、(a)はねじ軸の左側面図、(b)はねじ軸の部分断面図、(c)はボールねじ装置の軸方向に沿う断面図である。また、
図2は、ボールねじ装置の第1実施形態における拡径部材の設置プロセスを示す図である。
図1(c)に示すように、ボールねじ装置1は、ボールねじのねじ軸10と、このねじ軸10の端部を支持する複列の転がり軸受20,20とを有する。ねじ軸10の表面には螺旋溝11が形成されている。この転がり軸受20はねじ軸10の端部に形成された軸受設置部10aに嵌合してねじ軸10と一体に回転する2つの内輪21,21を有しており、これら内輪21,21の外周には、複数の転動体22を介して内輪21を回転自在に支持する外輪23がそれぞれ設けられている。
【0015】
また、ボールねじ装置1は、転がり軸受20を収容する円筒状のハウジング30を備えており、転がり軸受20の外周面(外輪23の外周面)はハウジング30の内周面と摺動自在に嵌合している。
転がり軸受20の内輪21は、ねじ軸10に形成された段部12とロックナット40とにより所定位置に位置決めされている。このロックナット40はねじ軸10の端部に螺嵌されており、ロックナット40と内輪21との間のねじ軸10の外周にはスペーサ41が設けられている。このスペーサ41は、例えば皿バネ又はコイルバネあるいは縦弾性係数の金属等からなる。
ここで、ねじ軸10の軸受設置部10aには、
図1(
b)に示すように、円環形状の拡径部材50が嵌合して設けられる。この拡径部材50の一方の端面50aは端面13aに当接している。この拡径部材50は、
周方向に複数の分割体50Aに分割可能とされる(
図2(b)参照)。
【0016】
さらに、拡径部材50の外周面には、その拡径部材50の少なくとも一部を覆い、拡径部材50の軸方向の端面(端面13aに当接する端面50aと反対側の端面)50bに係合する段部61が形成されたスペーサ60が設けられている。この端面50bが段部12を形成している。なお、スペーサ60は、拡径部材50の軸受設置部10a側の少なくとも一部を覆ってもよい。
このスペーサ60は、端面50bと内輪21との間のねじ軸10の外周に嵌合して設けられる。すなわち、転がり軸受20の内輪21はロックナット40の締付け力により端面50bに押圧されることとなる。このスペーサ60は、例えば皿バネ又はコイルバネあるいは縦弾性係数の金属等からなる。
【0017】
次に、このように構成されたねじ軸10の製造プロセスについて説明する。まず、
図2(a)〜(c)に示すように、ねじ軸10の軸受設置部10aにおける螺旋溝11が形成されている側に、2つ以上に分割した分割体50A,50Aよりなる拡径部材50を嵌める。なお、
図2(b)では拡径部材50を2分割としている。ここで、拡径部材50(分割体50A)の外径寸法は、軸受20の内輪21の内径寸法より大きいことが好ましい。
次に、
図2(b),(c)に示すように、拡径部材50(分割体50A)の端面50bに係合する内周面の形状を有するスペーサ60を軸受20の内輪21との間に嵌合するように設ける(
図1(c)参照)。すなわち、
図1(c)に示すように、スペーサ60の軸受設置部10a側の端面60aが軸受20の内輪21と拡径部材50(分割体50A)の端面50bとの間に嵌合され、軸受20の軸方向の移動を制限している。
ここで、スペーサ60は、拡径部材50と同様に、
周方向に複数の分割体に分割され、それら分割体が拡径部材50の分割体50Aのそれぞれと一体成形されてもよい。
【0018】
(第2実施形態)
図3は、ボールねじ装置の第2実施形態における構成を示す図であり、(a)はねじ軸の左側面図、(b)はねじ軸の正面図、(c)はねじ軸の部分断面図、(d)はボールねじ装置の軸方向に沿う断面図である。また、
図4は、ボールねじ装置の第2実施形態における拡径部材の設置プロセスを示す図である。
図3(d)に示すように、ボールねじ装置1は、ボールねじのねじ軸10と、このねじ軸10の端部を支持する複列の転がり軸受20,20とを有する。ねじ軸10の表面には螺旋溝11が形成されている。この転がり軸受20はねじ軸10の端部に形成された軸受設置部10aに嵌合してねじ軸10と一体に回転する2つの内輪21,21を有しており、これら内輪21,21の外周には、複数の転動体22を介して内輪21を回転自在に支持する外輪23がそれぞれ設けられている。
【0019】
また、ボールねじ装置1は、転がり軸受20を収容する円筒状のハウジング30を備えており、転がり軸受20の外周面(外輪23の外周面)はハウジング30の内周面と摺動自在に嵌合している。
転がり軸受20の内輪21は、ねじ軸10に形成された段部12とロックナット40とにより所定位置に位置決めされている。このロックナット40はねじ軸10の端部に螺嵌されており、ロックナット40と内輪21との間のねじ軸10の外周にはスペーサ41が設けられている。このスペーサ41は、例えば皿バネ又はコイルバネあるいは縦弾性係数の金属等からなる。
【0020】
ここで、ねじ軸10の軸受設置部10aには、
図3(a)に示すように、螺旋溝11に連通して軸方向に所定の寸法で縮径された縮径部13が形成されている。この縮径部13は、ねじ軸10の強度を損なわない程度に端面13aにおけるランド部11aの断面積を周方向に亘って拡大(増加)させるように設けられる。
そして、この縮径部1
3には、
図3(b),(c)に示すように、円環形状の拡径部材50が嵌合して設けられる。この拡径部材50の一方の端面50aは縮径部13の端面13aに当接している。この拡径部材50は、
周方向に複数の分割体50Aに分割可能とされる(
図4(b)参照)。
【0021】
さらに、拡径部材50の外周面には、その拡径部材50の少なくとも一部を覆い、拡径部材50の軸方向の端面(端面13aに当接する端面50aと反対側の端面)50bに係合する段部61が形成されたスペーサ60が設けられている。この端面50bが段部12を形成している。
このスペーサ60は、端面50bと内輪21との間のねじ軸10の外周に嵌合して設けられる。すなわち、転がり軸受20の内輪21はロックナット40の締付け力により端面50bに押圧されることとなる。このスペーサ60は、例えば皿バネ又はコイルバネあるいは縦弾性係数の金属等からなる。
【0022】
次に、このように構成されたねじ軸10の製造プロセスについて説明する。まず、
図4(a)〜(c)に示すように、ねじ軸10の軸受設置部10aにおける螺旋溝11が形成されている側に、螺旋溝11に連通し、軸方向に所定の寸法を有する縮径部13が切削法などによって形成される。このとき、螺旋溝11に連通する端面13aは、縮径部13が形成されることにより、軸受設置部10aの径から縮径部13の径に縮径された分、軸方向の荷重を受ける端面13aの面積が大きくなっている。なお、この縮径部13を形成する際の切削量は、ねじ軸10の強度を損なわない程度に螺旋溝11の底部より小さな径となるように切削される。
【0023】
次に、縮径部13に、2つ以上に分割した分割体50A,50Aよりなる拡径部材50を嵌める。なお、
図4(b)では拡径部材50を2分割としている。ここで、拡径部材50(分割体50A)の軸方向の寸法は、縮径部13の軸方向の寸法にほぼ等しいことが好ましい。また、拡径部材50(分割体50A)の内径寸法は、縮径部の外径寸法にほぼ等しいことが好ましい。さらに、拡径部材50(分割体50A)の外径寸法は、軸受20の内輪21の内径寸法より大きいことが好ましい。
次に、
図4(b),(c)に示すように、拡径部材50(分割体50A)の端面50bに係合する内周面の形状を有するスペーサ60を軸受20の内輪21との間に嵌合するように設ける(
図3(d)参照)。すなわち、
図3(d)に示すように、スペーサ60の軸受設置部10a側の端面60aが軸受20の内輪21と拡径部材50(分割体50A)の端面50bとの間に嵌合され、軸受20の軸方向の移動を制限している。
【0024】
ここで、スペーサ60は、拡径部材50と同様に、
周方向に複数の分割体に分割され、それら分割体が拡径部材50の分割体50Aのそれぞれと一体成形されてもよい。
このように、ねじ軸10に縮径部13を形成して荷重を受ける端面13aの面積を増やすと共に、縮径部13に拡径部材50を組み付けることでねじ軸10の端部の振れを軽減することができる。
なお、このように構成されたねじ軸10は、ボールねじ装置以外に台形ねじ等に用いることができる。
【0025】
(第3実施形態)
図5は、ボールねじ装置の第3実施形態における構成を示す図であり、(a)はボールねじ装置の軸方向に沿う断面図、(b)はねじ軸の斜視図、(c)はねじ軸にスペーサを組み込むプロセスを示す側面図、(d)はねじ軸の左側面図である。
図5(a)に示すように、ボールねじ装置1は、ねじ軸10と、このねじ軸10の端部を支持する複列の転がり軸受20,20とを有する。ねじ軸10は、軸方向に軸受設置部10aと螺旋溝形成部10bとに構成される。ねじ軸10の螺旋溝形成部10bにおける表面には螺旋溝11が形成されている。転がり軸受20はねじ軸10の端部に形成された軸受設置部10aに嵌合してねじ軸10と一体に回転する2つの内輪21,21を有している。これら内輪21,21の外周には、複数の転動体22を介して内輪21を回転自在に支持する外輪23がそれぞれ設けられている。
【0026】
また、ボールねじ装置1は、転がり軸受20を収容する円筒状のハウジング30を備えており、転がり軸受20の外周面(外輪23の外周面)はハウジング30の内周面と摺動自在に嵌合している。
転がり軸受20の内輪21は、ねじ軸10に形成されたランド部1
1aとロックナット40とにより所定位置に位置決めされている。このロックナット40はねじ軸10の端部に螺嵌されており、ロックナット40と内輪21との間のねじ軸10の外周にはスペーサ41が設けられている。このスペーサ41は、例えば皿バネ又はコイルバネあるいは縦弾性係数の金属等からなる。
【0027】
また、ねじ軸10には、
図5(a),(b)に示すように、円環形状のスペーサ70が設けられる。
このスペーサ70は、端部70aの端面と内輪21との間のねじ軸10の外周に嵌合して設けられる。すなわち、転がり軸受20の内輪21はロックナット40の締付け力により端部70aの端面に押圧されることとなる。このスペーサ70は、例えば皿バネ又はコイルバネあるいは縦弾性係数の金属(鉄・非鉄)等や樹脂からなる。
【0028】
[テーパ部]
図5(c)に示すように、ねじ軸10の螺旋溝形成部10bには、軸受設置部10aと螺旋溝形成部10bとの境界部分である段部13
bから螺旋溝形成部10b側に向かって軸方向の所定の寸法で徐々に拡径された第1テーパ部10cが形成されている。この第1テーパ部10cは、螺旋溝形成部10bから軸受設置部10aに向かってランド部1
1aが徐々に縮径されるように設けられる。
一方、スペーサ70の内周面70cには、
図5(c)に示すように、軸受設置部10aに係合する係合部71と、ねじ軸10の第1テーパ部10cに嵌合する第2テーパ部72とが形成されている。すなわち、係合部71は、軸受設置部10aと螺旋溝形成部10bとの境界部分の段部13
bと、軸受設置部10aとに係合する内周面の形状をなす部分である。そして、このスペーサ70の軸方向の端部70aの端面が軸受20の内輪21に当接する。
ここで、第2テーパ部72は、ねじ軸10の第1テーパ部10cの形状に対応して形成される。例えば、
図5(c)に示すように、スペーサ70の軸方向に沿う断面形状において、スペーサ70の軸方向に対する第2テーパ部72の傾斜角θと、ねじ軸10の軸方向に対する第1テーパ部10cの傾斜角θとがほぼ同じ角度で設けられる。
【0029】
次に、このように構成されたねじ軸10の製造プロセスについて説明する。
図5(c)に示すように、ねじ軸10の軸受設置部10aにおける螺旋溝形成部10bとは反対側から、第2テーパ部72,係合部71の向きでねじ軸10に対向させた円筒形状のスペーサ70を挿嵌させる。第2テーパ部72を第1テーパ部10cに対して圧入し、嵌合させて、スペーサ70をねじ軸10に固定する。
ここで、本実施形態のボールねじ装置では、第2テーパ部72と第1テーパ部10cとの嵌合により、スペーサ70がねじ軸10に強固に固定されている。そのため、過大な軸方向の荷重を段部13
bの端面ではなく第1テーパ部10cで均等に受けることになり、ねじ軸10の端部の振れを軽減することができる。
なお、このように構成されたねじ軸10は、ボールねじ装置以外に台形ねじ等に用いることができる。
【0030】
(第4実施形態)
次に、ボールねじ装置の第4実施形態について図面を参照して説明する。
図6(a),(b)は、ボールねじ装置の第4実施形態における構成を示す図であり、
図5(c),(d)に対応する左側面図である。本実施形態のボールねじ装置1は、スペーサ70の内周面70cの態様が異なる以外は第1実施形態と同様の構成である。以下、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略又は簡略にし、異なる構成を中心に説明する。
【0031】
図6(a)に示すように、本実施形態のボールねじ装置は、ねじ軸10に、第1実施形態と同様に、傾斜角θの第1テーパ部10cが形成されている。そして、この第1テーパ部10cに嵌合するスペーサ70の内周面70cには、第1テーパ部10cの傾斜角θに併せて一方の端部70aの内径寸法と他方の端部70bの内径寸法とが単調に拡径された第2テーパ部72が形成されている。言い換えれば、軸方向に沿って他方の端部70bの内径寸法と一方の端部70aの内径寸法とが単調に縮径された第2テーパ部72がスペーサ70の内周面70cに形成されている。すなわち、本実施形態のボールねじ装置に用いられるスペーサ70には係合部71が設けられていない。このように、スペーサ70には、係合部71が設けられてもよいし、設けられなくともよい。また、係合部71が設けられる場合には、その軸方向の形成範囲は、ボールねじ装置の用途等によって適宜設定される。
このようなスペーサ70をねじ軸10に組み込んだ場合、
図6(b)に示すように、第1実施形態よりも、スペーサ70が軸受設置部10aを基準として螺旋溝形成部10b側に深く設置されるため、ねじ軸10に対してスペーサ70がより強固に固定される。
【0032】
(第5実施形態)
次に、ボールねじ装置の第5実施形態について図面を参照して説明する。
図7(a),(b)は、ボールねじ装置の第5実施形態における構成を示す図であり、
図1(c),(d)に対応する右側面図である。本実施形態のボールねじ装置1は、第1テーパ部10c及びスペーサ70の内周面70cの態様が異なる以外は第1実施形態と同様の構成である。以下、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略又は簡略にし、異なる構成を中心に説明する。
【0033】
図7(a)に示すように、本実施形態のボールねじ装置は、第1実施形態とは異なり、ねじ軸10に傾斜角ψ(ψ<θ)の第1テーパ部10cが形成されている。そして、この第1テーパ部10cに嵌合するスペーサ70の内周面70cは、一方の端部の内径寸法と他方の端部の内径寸法とが軸方向に同径である。すなわち、本実施形態のボールねじ装置に用いられるスペーサ70には第2テーパ部72が設けられていない。
このようなスペーサ70をねじ軸10に組み込んだ場合、
図7(b)に示すように、第1実施形態よりも、スペーサ70が螺旋溝形成部10bを基準として軸受設置部10a側に浅く設置されるため、スペーサ70による内輪21への付勢力がより強固となる。また、スペーサ70の内周面70cに第2テーパ部72を加工する必要がないので、製造コストの削減を図ることができる。
【0034】
以上で、特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、これら説明によって発明を限定することを意図するものではない。本発明の説明を参照することにより、当業者には、開示された実施形態の種々の変形例とともに本発明の別の実施形態も明らかである。従って、特許請求の範囲は、本発明の範囲及び要旨に含まれるこれらの変形例または実施形態も網羅すると解すべきである。