(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面等を参照して、本発明の各実施形態について説明する。
【0009】
<第1実施形態>
図1を参照して、本発明の第1実施形態による燃料電池システム100について説明する。
【0010】
図1に示す燃料電池システム100は、燃料電池車両等の移動体に搭載される燃料電池システムである。燃料電池システム100は、燃料電池スタック1と、カソードガス給排装置2と、アノードガス給排装置3と、電力システム4と、コントローラ50と、を備える。
【0011】
燃料電池スタック1は、燃料電池(単セル)を複数積層して構成される電池である。燃料電池スタック1は、アノードガス及びカソードガスの供給を受けて、車両の走行に必要な電力を発電する。
【0012】
カソードガス給排装置2は、燃料電池スタック1にカソードガス(空気)を供給するとともに、燃料電池スタック1から排出されるカソードオフガスを外部に排出する。カソードガス給排装置2は、カソードガス供給通路21と、カソードガス排出通路22と、カソードコンプレッサ23と、カソード圧力センサ24と、カソード調圧弁25と、を備える。
【0013】
カソードガス供給通路21は、燃料電池スタック1に供給されるカソードガスが流れる通路である。カソードガス供給通路21の一端は開口端として形成されており、カソードガス供給通路21の他端は燃料電池スタック1のカソードガス入口部に接続される。カソードガス供給通路21の先端開口は、車両前方に臨んで形成され、外気を取り込みやすい構造となっている。
【0014】
カソードガス排出通路22は、燃料電池スタック1から排出されるカソードオフガスが流れる通路である。カソードガス排出通路22の一端は燃料電池スタック1のカソードガス出口部に接続され、他端は開口端として形成される。カソードオフガスは、カソードガスや電極反応によって生じた水蒸気等を含む混合ガスである。
【0015】
カソードコンプレッサ23は、カソードガス供給通路21の先端部分に設けられる。カソードコンプレッサ23は、カソードガスとしての空気を取り込み、燃料電池スタック1にカソードガスを供給する。カソードコンプレッサ23は、駆動が停止された状態であっても、カソードガスがコンプレッサ内を通過できるように構成されている。カソードコンプレッサ23の動作は、後述するコントローラ50によって制御される。
【0016】
カソード圧力センサ24は、燃料電池スタック1のカソードガス入口部近傍のカソードガス供給通路21に設けられる。カソード圧力センサ24は、燃料電池スタック1に供給されるカソードガスの圧力を検出する。カソード圧力センサ24で検出されたカソードガス圧力は、燃料電池スタック1のカソードガス流路等を含むカソード系全体の圧力を代表する。
【0017】
カソード調圧弁25は、カソードガス排出通路22に設けられる。カソード調圧弁25は、コントローラ50によって開閉制御され、燃料電池スタック1に供給されるカソードガスの圧力を調整する。
【0018】
次に、アノードガス給排装置3について説明する。アノードガス給排装置3は、燃料電池スタック1にアノードガス(水素ガス)を供給するとともに、燃料電池スタック1から排出されるアノードオフガスをカソードガス排出通路22に排出する。
【0019】
アノードガス給排装置3は、アノードガス供給通路31と、アノードガス排出通路32と、高圧タンク33と、アノード調圧弁34と、アノード圧力センサ35と、パージ弁36と、を備える。
【0020】
高圧タンク33は、燃料電池スタック1に供給するアノードガスを高圧状態に保って貯蔵する容器である。
【0021】
アノードガス供給通路31は、高圧タンク33から排出されるアノードガスを燃料電池スタック1に供給する通路である。アノードガス供給通路31の一端は高圧タンク33に接続され、他端は燃料電池スタック1のアノードガス入口部に接続される。
【0022】
アノード調圧弁34は、高圧タンク33よりも下流のアノードガス供給通路31に設けられる。アノード調圧弁34は、コントローラ50によって開閉制御され、燃料電池スタック1に供給されるアノードガスの圧力を調整する。
【0023】
アノード圧力センサ35は、燃料電池スタック1のアノードガス入口部近傍のアノードガス供給通路31に設けられる。アノード圧力センサ35は、燃料電池スタック1に供給されるアノードガスの圧力を検出する。アノード圧力センサ35で検出されたアノードガス圧力は、燃料電池スタック1のアノードガス流路等を含むアノード系全体の圧力を代表する。
【0024】
アノードガス排出通路32は、燃料電池スタック1から排出されたアノードオフガスを流す通路である。アノードガス排出通路32の一端は燃料電池スタック1のアノードガス出口部に接続され、他端はカソード調圧弁25よりも下流のカソードガス排出通路22に接続される。
【0025】
パージ弁36は、アノードガス排出通路32に設けられる。パージ弁36は、コントローラ50によって開閉制御され、アノードガス排出通路32からカソードガス排出通路22に排出されるアノードオフガスのパージ流量を制御する。
【0026】
パージ弁36が開かれてパージ制御が実行されると、アノードオフガスは、アノードガス排出通路32及びカソードガス排出通路22を通じて外部に排出される。この時、アノードオフガスは、カソードガス排出通路22内でカソードオフガスと混合される。このようにアノードオフガスとカソードオフガスとを混合させて外部に排出することで、混合ガス中の水素濃度が排出許容濃度以下の値に設定される。
【0027】
電力システム4は、走行モータ41と、インバータ42と、バッテリ43と、DC/DCコンバータ44と、電流センサ45と、電圧センサ46と、を備える。
【0028】
走行モータ41は、三相交流同期モータであって、車両の車輪を駆動するための駆動源である。走行モータ41は、燃料電池スタック1及びバッテリ43から電力の供給を受けて回転駆動する電動機としての機能と、外力によって回転駆動されることで発電する発電機としての機能とを有する。
【0029】
インバータ42は、IGBT等の複数の半導体スイッチから構成される。インバータ42の半導体スイッチはコントローラ50によってスイッチング制御され、これにより直流電流が交流電流に、又は交流電流が直流電流に変換される。走行モータ41を電動機として機能させる場合、インバータ42は、燃料電池スタック1の出力電流とバッテリ43の出力電流との合成電流を三相交流電流に変換し、走行モータ41に供給する。これに対して、走行モータ41を発電機として機能させる場合、インバータ42は、走行モータ41の回生交流電流を直流電流に変換し、バッテリ43に供給する。
【0030】
バッテリ43は、燃料電池スタック1の出力電力の余剰分及び走行モータ41の回生電力が充電されるように構成されている。バッテリ43に充電された電力は、必要に応じてカソードコンプレッサ23等の補機類や走行モータ41に供給される。
【0031】
DC/DCコンバータ44は、燃料電池スタック1の出力電圧を昇降圧させる双方向性の電圧変換機である。DC/DCコンバータ44によって燃料電池スタック1の出力電圧を制御することで、燃料電池スタック1の出力電流等が調整される。
【0032】
電流センサ45は、燃料電池スタック1から取り出される出力電流を検出する。電圧センサ46は、燃料電池スタック1の出力電圧、つまり燃料電池スタック1の端子間電圧を検出する。
【0033】
コントローラ50は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。
【0034】
コントローラ50には、カソード圧力センサ24やアノード圧力センサ35、電流センサ45、電圧センサ46からの信号の他、アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルストロークセンサ51や車両走行速度を検出する車速センサ52等の車両運転状態を検出するセンサからの信号が入力する。
【0035】
コントローラ50は、車両走行状態及び燃料電池システム100の運転状態に基づいて、燃料電池スタック1の目標出力電力を算出する。コントローラ50は、走行モータ41の要求電力や補機類の要求電力、バッテリ43の充放電要求等に基づいて、目標出力電力を算出する。コントローラ50は、目標出力電力に基づいて、予め定められた燃料電池スタック1の電流電圧特性を参照し、燃料電池スタック1の目標出力電流を算出する。そして、コントローラ50は、DC/DCコンバータ44を用いて、燃料電池スタック1の出力電流が目標出力電流となるように燃料電池スタック1の電圧を制御する。
【0036】
また、コントローラ50(アイドルストップ実行部)は、例えば低負荷走行時のように燃料電池スタック1に対する要求電力が低い場合に、燃料電池スタック1での発電を一時的に停止してバッテリ43の電力だけで走行モータ41や補機類等を駆動する、いわゆるアイドルストップ制御を実行する。アイドルストップ中に、加速要求等によって要求電力が増大したり、バッテリ43の充電量が所定の閾値を下回ったりすると、コントローラ50は、アイドルストップを終了させ、燃料電池スタック1での発電を再開させる。
【0037】
図2を参照して、アイドルストップ中における燃料電池スタック1の電圧制御について説明する。
【0038】
アイドルストップ中は、カソードコンプレッサ23の駆動が基本的に停止され、燃料電池スタック1内に残留しているカソードガスは、カソード極側に透過してきたアノードガス(水素ガス)と反応することで消費される。これにより、燃料電池スタック1の電圧は徐々に低下する。アイドルストップ成立したと判定し、アイドルストップ制御を実行する。なお、ドライバから加速要求等があった場合には、コントローラ50は、アイドルストップ時カソード供給制御等の実行を中止し、アイドルストップ制御から復帰して通常発電制御を再開する。
【0039】
そのため、アイドルストップを行う燃料電池システム100では、
図2に示すように、アイドルストップ中における燃料電池スタック1の電圧が予め設定した下限値V
Lと上限値V
Hの範囲内となるように管理される。なお、上限値V
Hは、高電位劣化を回避可能な値に設定されている。
【0040】
図2に示すように、燃料電池システム100は、アイドルストップ中に燃料電池スタック1の電圧が下限値V
Lまで低下した場合に、当該電圧が上限値V
Hとなるまで燃料電池スタック1にカソードガスを供給するように構成される。燃料電池システム100は、アイドルストップ中におけるカソードガス供給制御に特徴を有しており、環境風や走行風等を利用してカソードガスの供給を実行する。
【0041】
次に、
図3を参照して、コントローラ50が実行するアイドルストップ時カソード供給制御について説明する。
図3は、コントローラ50が実行するアイドルストップ時カソード供給制御を示すフローチャートである。アイドルストップ時カソード供給制御は、燃料電池システム100のアイドルストップ中に繰り返し実行される。
【0042】
S101では、コントローラ50は、燃料電池システム100においてアイドルストップ制御が実行中であるか否かを判定する。例えば、コントローラ50は、アイドルストップ制御に関するフラグを参照し、フラグに基づいてアイドルストップ制御が実行中であるか否かを判定する。
【0043】
アイドルストップ制御は、例えば低負荷走行時のように燃料電池スタック1に対する要求電力が低い場合に実行される。つまり、コントローラ50は、燃料電池スタック1に対する要求負荷が基準値以下で、アノードガス圧力及びカソードガス圧力が所定圧力範囲内にあり、燃料電池スタック1を冷却する冷却水の温度が所定温度範囲内にある場合に、アイドルストップ条件が成立したと判定し、アイドルストップ制御を実行する。なお、ドライバから加速要求等があった場合には、コントローラ50は、アイドルストップ時カソード供給制御等の実行を中止し、アイドルストップ制御から復帰して通常発電制御を再開する。
【0044】
S101でアイドルストップ実行中ではないと判定された場合には、コントローラ50は、アイドルストップ時カソード供給制御を終了する。これに対して、S101でアイドルストップ実行中であると判定された場合には、コントローラ50(コンプレッサ制御部)はS102の処理を実行する。
【0045】
S102では、コントローラ50は、カソードコンプレッサ23の駆動を停止する。その後、S103において、コントローラ50(外気導入制御部)はカソード調圧弁25を全閉状態となるように制御する。このようにカソード調圧弁25を閉じることで、カソードコンプレッサ23の停止中に、走行風等の外気が不要に燃料電池スタック1に供給されることを防止することができる。なお、アイドルストップ中には、パージ弁36は閉じられ、アノード調圧弁34はアノードガス圧力が所定圧力となるように開度制御される。
【0046】
S104では、コントローラ50は、アイドルストップ中における燃料電池スタック1の電圧V1が下限値V
L以下であるか否かを判定する。燃料電池スタック1の電圧V1は、電圧センサ46の検出信号に基づいて算出される。なお、燃料電池スタック1の電圧V1は、燃料電池スタック1の端子間電圧であるが、燃料電池スタック1を構成する各単セルの電圧に基づいて算出される電圧平均値等であってもよい。
【0047】
燃料電池スタック1の電圧V1が下限値V
Lよりも大きい場合には、コントローラ50は、燃料電池スタック1内のカソードガスが消費されて電圧V1が下限値V
Lに達するまで、S102〜S104の処理を繰り返し実行する。
【0048】
これに対して、燃料電池スタック1の電圧V1が下限値V
L以下の場合には、コントローラ50は、アイドルストップからの復帰時における燃料電池スタック1の出力電圧の応答遅れを抑制するために燃料電池スタック1の電圧を回復させる必要があると判断し、S105の処理を実行する。
【0049】
S105では、コントローラ50は、カソード調圧弁25を全閉状態から全開状態に制御する。このように、アイドルストップ中にカソード調圧弁25を開くことで、カソードコンプレッサ23が停止状態であっても、車両の周囲に生じている環境風や車両走行時における走行風がカソードコンプレッサ23及びカソードガス供給通路21を通じて燃料電池スタック1に供給される。S103及びS105で説明したように、カソード調圧弁25は、アイドルストップ中に燃料電池スタック1への外気の導入状態を制御する機能を有している。
【0050】
S106では、コントローラ50は、燃料電池スタック1の電圧V1が上限値V
H以上であるか否かを判定する。
【0051】
燃料電池スタック1の電圧V1が上限値V
H以上である場合には、コントローラ50は、今回のアイドルストップ時カソード供給制御を終了する。その後、コントローラ50は、再びアイドルストップ時カソード供給制御を開始し、S101の処理を実行する。
【0052】
これに対して、燃料電池スタック1の電圧V1が上限値V
Hより小さい場合には、コントローラ50は、燃料電池スタック1の電圧がまだ回復していないと判断し、S107の処理を実行する。
【0053】
S107では、コントローラ50は、コンプレッサ駆動条件が成立したか否かを判定する。コントローラ50は、S105でカソード調圧弁25を開いてから所定時間経過した場合や、カソード調圧弁25の開弁後に燃料電池スタック1の電圧V1が下限値V
Lより低く設定された第2下限値V
L2まで低下した場合に、コンプレッサ駆動条件が成立したと判定する。
【0054】
S107でコンプレッサ駆動条件が成立していないと判定された場合には、コントローラ50はS106の処理を再び実行する。これに対して、S107でコンプレッサ駆動条件が成立したと判定された場合には、コントローラ50はS108の処理を実行する。
【0055】
S108では、コントローラ50は、カソードコンプレッサ23を駆動し、外気を強制的に燃料電池スタック1に供給する。S108の処理後、コントローラ50は、S106の処理を再び実行する。このように、コンプレッサ駆動条件が成立した場合には、カソードコンプレッサ23が駆動され、燃料電池スタック1の電圧V1が上限値V
Hに達するまでカソードガス供給が継続される。
【0056】
燃料電池システム100では、上記アイドルストップ時カソード供給制御を実行することで、アイドルストップ中における燃料電池スタック1の電圧V1が
図2に示したように下限値V
Lと上限値V
Hの範囲内に管理される。
【0057】
図4及び
図5を参照して、アイドルストップ時カソード供給制御の作用効果について説明する。
図4は、カソード調圧弁25を開弁して外気導入を行う場合を例示したものであり、
図3のS105及びS106の処理に関連するタイミングチャートである。
図5は、カソードコンプレッサ23を駆動して強制的に外気導入を行う場合を例示したものであり、
図3のS105〜S108の処理に関連するタイミングチャートである。
【0058】
図4に示すように、時刻t
11でアイドルストップ条件が成立すると、燃料電池システム100ではアイドルストップ制御及びアイドルストップ時カソード供給制御が実行される。時刻t
11において、カソードコンプレッサ23への電力供給が
図4(C)に示すように停止され、カソード調圧弁25が
図4(B)に示すように閉じられる。このようにカソード調圧弁25が閉じられると、外気(走行風等)の燃料電池スタック1への導入が抑制される。これにより、燃料電池スタック1内に残留しているカソードガスがカソード極側に透過してきたアノードガスと反応することで消費され、
図4(A)に示すように燃料電池スタック1の電圧が徐々に低下する。
【0059】
時刻t
12で燃料電池スタック1の電圧が下限値V
Lまで低下すると、
図3のS105及び
図4(B)に示すように、カソード調圧弁25が全閉状態から全開状態に制御される。このようにカソード調圧弁25が開かれると、カソードコンプレッサ23が停止状態にあっても、車両の周囲に生じている環境風や車両走行時における走行風がカソードコンプレッサ23及びカソードガス供給通路21を通じて燃料電池スタック1に供給される。カソードコンプレッサ23により強制的に外気を導入しなくても、走行風等の外気が導入されるため、
図4(A)に示すように燃料電池スタック1の電圧は徐々に上昇する。
【0060】
そして、時刻t
13において、燃料電池スタック1の電圧が上限値V
Hに到達すると、カソード調圧弁25が閉じられる。その後、燃料電池スタック1の電圧が下限値V
Lに達するか、又はアイドルストップ制御が終了するまで、カソード調圧弁25は全閉状態のまま維持される。
【0061】
上述の通り、燃料電池システム100では、アイドルストップ中に燃料電池スタック1の電圧が下限値V
Lまで低下した時にカソード調圧弁25を開くことで、カソードコンプレッサ23を駆動しなくても、走行風等の外気をカソードガスとして燃料電池スタック1に供給することができる。
【0062】
次に、
図5を参照し、アイドルストップ中にカソードコンプレッサ23を駆動して、強制的に外気導入を行う場合について説明する。
【0063】
図5に示すように、アイドルストップ中の時刻t
14で燃料電池スタック1の電圧が下限値V
Lまで低下すると、
図3のS105及び
図5(B)に示すように、カソード調圧弁25が全閉状態から全開状態に制御される。これにより、走行風等の外気が燃料電池スタック1に供給されることが許容される。しかしながら、車両の周囲に生じている環境風や車両走行時における走行風が弱い場合には、カソード調圧弁25を開いてもカソードガス不足を補えず、燃料電池スタック1の電圧が回復しないことも考えられる。
【0064】
カソード調圧弁25を開いても燃料電池スタック1の電圧が回復せず、例えば時刻t
15で燃料電池スタック1の電圧が第2下限値V
L2まで低下すると、コンプレッサ駆動条件が成立したとして、
図5(C)に示すようにカソードコンプレッサ23に電力が供給される。これにより、カソードコンプレッサ23が駆動され、外気が強制的に燃料電池スタック1に供給される。その結果、
図5(A)に示すように燃料電池スタック1の電圧が上昇する。なお、カソード調圧弁25を開いてから所定時間経過しても燃料電池スタック1の電圧が上限値に達していない場合に、コンプレッサ駆動条件が成立したとして、カソードコンプレッサ23を駆動してもよい。
【0065】
時刻t
16において燃料電池スタック1の電圧が上限値V
Hに到達すると、カソードコンプレッサ23が停止され、その直後にカソード調圧弁25が閉じられる。その後、燃料電池スタック1の電圧が下限値V
Lに達するか、又はアイドルストップ制御が終了するまで、カソード調圧弁25は全閉状態のまま維持される。
【0066】
上述の通り、燃料電池システム100では、アイドルストップ中にカソード調圧弁25が開かれても燃料電池スタック1の電圧が回復せず、所定のコンプレッサ駆動条件が成立した場合に、カソードコンプレッサ23を駆動する。そのため、走行風等が弱い場合であっても、燃料電池スタック1にカソードガスを確実に供給することができる。このように外気を供給することで、アイドルストップ中におけるカソードガス不足を解消でき、燃料電池スタック1の電圧を下限値V
Lと上限値V
Hの範囲内で管理することができる。
【0067】
上記した本実施形態による燃料電池システム100によれば、以下の効果を得ることができる。
【0068】
燃料電池システム100では、コントローラ50は、アイドルストップ時にカソードコンプレッサを停止制御する。この時、カソードガス排出通路22に配置されたカソード調圧弁25を閉じることで、走行風等の外気の燃料電池スタック1への導入を抑制できる。そして、コントローラ50は、アイドルストップ中における燃料電池スタック1の電圧に応じてカソード調圧弁25を開弁制御し、外気導入の抑制を解除する。より具体的には、アイドルストップ中の燃料電池スタック1の電圧が下限値V
Lに達した場合に、カソード調圧弁25は開かれる。
【0069】
アイドルストップ中にカソード調圧弁25により外気導入の抑制を解除することで、カソードコンプレッサ23を駆動しなくても、走行風等の外気をカソードガスとして燃料電池スタック1に供給することができる。また、車両が停止している時にアイドルストップが実行されている場合には、車両の周囲の環境風をカソードガスとして燃料電池スタック1に供給することができる。このように、燃料電池システム100は、外気導入の抑制を解除することで、外気がカソードガス供給通路21から燃料電池スタック1に流れ込むように構成されているため、走行風や環境風をカソードガスとして取り込むことによりアイドルストップ中におけるカソードガス不足を解消することが可能となる。また、カソードコンプレッサ23を駆動せずにカソードガス供給を行うので、カソードコンプレッサ23での消費電力を節約でき、燃料電池システム100における電力消費効率を高めることが可能となる。
【0070】
さらに、燃料電池システム100のコントローラ50は、カソード調圧弁25が開かれて燃料電池スタック1の電圧が上限値V
Hに達した場合に、カソード調圧弁25を再び閉じる。これにより、不要な外気の導入を抑制でき、アイドルストップ中に燃料電池スタック1の電圧が上限値V
Hを超えてしまうことを防止できる。したがって、燃料電池システム100によれば、アイドルストップ中に、燃料電池スタック1の電圧を下限値V
Lと上限値V
Hの範囲内で管理することができる。
【0071】
さらに、燃料電池システム100のコントローラ50は、アイドルストップ中にカソード調圧弁25が開かれた後、燃料電池スタック1の電圧が回復しない場合に、燃料電池スタック1の電圧が上限値に達するまでカソードコンプレッサ23を駆動させる。このようにカソードコンプレッサ23を駆動すれば、走行風等が弱い場合であっても、カソードガスを強制的に燃料電池スタック1に供給でき、アイドルストップ中におけるカソードガス不足を確実に解消することが可能となる。
【0072】
<第2実施形態>
図6を参照して、本発明の第2実施形態による燃料電池システム100について説明する。なお、以下の実施形態では、第1実施形態と同じ機能を果たす構成等には同一の符号を用い、重複する説明を適宜省略する。
【0073】
図6は、第2実施形態による燃料電池システム100のコントローラ50が実行するアイドルストップ時カソード供給制御を示すフローチャートである。
【0074】
図6に示すように、第2実施形態の燃料電池システム100のコントローラ50は、S105の処理後に、走行風導入量に基づくカソードコンプレッサ23の駆動判定を行う点で、第1実施形態の燃料電池システムのコントローラとは相違する。つまり、第2実施形態の燃料電池システム100のコントローラ50は、S105の処理後にS111〜S113の処理を実行する。
【0075】
図6に示すように、S104で燃料電池スタック1の電圧V1が下限値V
Lまで低下したと判定されると、コントローラ50は、S105において走行風等が燃料電池スタック1内に導入されるようにカソード調圧弁25を開弁制御する。その後、コントローラ50はS111の処理を実行する。
【0076】
S111では、コントローラ50(外気導入量算出部)は、車速センサ52によって検出された現在の車速に基づき、走行風導入量Qaを算出する。走行風導入量Qaは、燃料電池スタック1に導かれる走行風等の外気(カソードガス)の流量であって、車速が速くなるほど大きな値として算出される。なお、走行風導入量Qaは大気圧等に応じて補正されてもよい。
【0077】
S112では、コントローラ50は、S111で算出された走行風導入量Qaが基準導入量Q
H以上であるか否かを判定する。基準導入量Q
Hは、走行風等の導入により燃料電池スタック1の電圧を上昇をさせることが可能な値として設定されている。
【0078】
走行風導入量Qaが基準導入量Q
H以上である場合には、コントローラ50は、カソードコンプレッサ23を駆動しなくても十分な量の外気を取り込めると判断し、S113の処理を実行せずにS106の処理を実行する。
【0079】
これに対して、走行風導入量Qaが基準導入量Q
Hより小さい場合には、コントローラ50は、カソード調圧弁25を開いただけでは十分な量の外気を取り込めないと判断し、S113の処理を実行する。
【0080】
S113では、コントローラ50は、カソードコンプレッサ23を駆動し、外気を強制的に燃料電池スタック1に供給する。S113の処理後、コントローラ50はS106の処理を実行する。
【0081】
上述の通り、燃料電池システム100では、走行風導入量Qaが基準導入量Q
H以上である場合、カソードコンプレッサ23は駆動されない。しかしながら、何らかの影響で走行風等を取り込みにくい状況になっている場合、走行風導入量Qaが基準導入量Q
H以上であっても、カソード調圧弁25を開弁するだけでは十分な外気を燃料電池スタック1に供給できない可能性がある。そのような場合であっても、コントローラ50は、コンプレッサ駆動条件が成立した時にカソードコンプレッサ23を駆動するので(S107及びS108参照)、カソードガスを燃料電池スタック1に確実に供給することができる。このように、S107及びS108は一種のフェイルセーフ処理として機能する。
【0082】
図7を参照して、第2実施形態による燃料電池システム100のコントローラ50が実行するアイドルストップ時カソード供給制御の作用効果について説明する。
【0083】
アイドルストップ中に燃料電池スタック1の電圧が下限値V
Lまで低下すると、コントローラ50はカソード調圧弁25を開弁制御する。
図7(D)に示すように車両が高速走行している時には、
図7(B)に示すようにカソード調圧弁25を開くだけで十分な量の外気を取り込むことができ、燃料電池スタック1の電圧は上限値V
Hに向かって上昇する。そして、時刻t
21で燃料電池スタック1の電圧が上限値V
Hに達すると、カソード調圧弁25が閉じられる。
【0084】
その後、時刻t
22で燃料電池スタック1の電圧が下限値V
Lまで低下すると、カソード調圧弁25が再び開かれる。この時、車両は
図7(D)に示すように低速走行しているため、走行風導入量Qaが基準導入量Q
Hより小さくなる。このような場合には、カソード調圧弁25を開いただけでは十分な量の外気を取り込めないので、
図7(C)に示すようにカソードコンプレッサ23に電力が供給される。これにより、カソードコンプレッサ23が駆動され、外気が強制的に燃料電池スタック1に供給される。その結果、
図7(A)に示すように燃料電池スタック1の電圧が上限値V
Hに向かって上昇する。
【0085】
上記した本実施形態による燃料電池システム100によれば、以下の効果を得ることができる。
【0086】
燃料電池システム100では、コントローラ50は、アイドルストップ中に燃料電池スタック1の電圧が下限値V
Lまで低下した時に、カソード調圧弁25を開弁制御する。コントローラ50は、車速に基づいて燃料電池スタック1に供給可能な走行風導入量Qaを算出し、走行風導入量Qaが基準導入量Q
Hよりも小さい場合に燃料電池スタック1の電圧が上限値に達するまでカソードコンプレッサ23を駆動させる。
【0087】
このようにカソードコンプレッサ23を駆動すれば、車両が低速走行しており、カソード調圧弁25を開いただけでは十分な量の外気を取り込めない場合であっても、カソードガス(外気)を強制的に燃料電池スタック1に供給できる。したがって、アイドルストップ中におけるカソードガス不足を確実に解消することが可能となる。また、走行風導入量Qaに応じて必要な場合のみカソードコンプレッサ23を駆動するので、カソードコンプレッサ23での消費電力を節約でき、燃料電池システム100における電力消費効率を高めることが可能となる。
【0088】
また、燃料電池システム100では、車速から算出される走行風導入Qa量に基づいてカソードコンプレッサ23の駆動判定を行うので、カソードコンプレッサ23を駆動させる必要性を即座に判断でき、燃料電池スタック1の電圧を速やかに回復させることが可能となる。
【0089】
上記した第1及び第2実施形態による燃料電池システム100は、カソードガス排出通路22にカソード調圧弁25を備え、カソード調圧弁25によりアイドルストップ中の外気導入制御を行うように構成されている。しかしながら、アイドルストップ中の外気導入制御を実現する構成としては、カソードガス排出通路22にカソード調圧弁25を配置する構成以外にも、
図8A〜
図8Dに示すような構成が考えられる。
【0090】
図8A〜
図8Dはそれぞれ、燃料電池システム100の一変形例を示す図である。
【0091】
図8Aに示すように、燃料電池システム100では、カソードガス供給通路21及びカソードガス排出通路22のそれぞれにカソード調圧弁25を配置してもよい。このように構成される場合には、これら二つのカソード調圧弁25は、
図3及び
図6のS103において同時に閉弁制御され、
図3及び
図6のS106において同時に開弁制御される。
【0092】
また、
図8Bに示すように、燃料電池システム100では、カソード調圧弁25を、カソードコンプレッサ23と燃料電池スタック1の間のカソードガス供給通路21に配置してもよい。
【0093】
さらに、
図8Cに示すように、燃料電池システム100では、カソード調圧弁25を、カソードコンプレッサ23よりも上流のカソードガス供給通路21に配置してもよい。カソードコンプレッサ23よりも上流のカソードガス供給通路21を開閉する構成として、車両の前側フロントグリルの開口部をシャッターによって開閉することも考えられる。この場合には、カソードガス供給通路21の上流端を前側フロントグリルの開口部に対向するように配置し、この開口部を開閉するようにシャッターが設けられる。このような構成では、シャッターは、
図3及び
図6のS103において閉じられ、
図3及び
図6のS106において開かれる。
【0094】
さらに、
図8Dに示すように、燃料電池システム100では、カソード調圧弁25を設けず、カソードガス供給通路21の上流端21A及びカソードガス排出通路22の下流端22Aが回動するように構成されてもよい。
【0095】
このような構成では、外気導入を抑制する必要がある場合、カソードガス供給通路21の上流端21A及びカソードガス排出通路22の下流端22Aが車両進行方向からはずれるように回動される。一方、外気導入の抑制を解除する場合、カソードガス供給通路21及びカソードガス排出通路22が車両進行方向に沿って直線状となるように、上流端21A及び下流端22Aが回動される。
【0096】
<第3実施形態>
図9を参照して、本発明の第3実施形態による燃料電池システム100について説明する。第3実施形態による燃料電池システム100は、バイパス通路60及びバイパス弁61を備える点において第1実施形態の燃料電池システムと相違する。
【0097】
図9に示すように、燃料電池システム100は、カソードガス供給通路21から分岐してカソードガス排出通路22に合流するバイパス通路60と、バイパス通路60に配置されるバイパス弁61と、をさらに備える。
【0098】
バイパス通路60は、カソードガスが燃料電池スタック1を通過しないように当該燃料電池スタック1をバイパスする通路である。バイパス通路60の上流端はカソード圧力センサ24より上流のカソードガス供給通路21に接続され、バイパス通路60の下流端はカソード調圧弁25よりも下流のカソードガス排出通路22に接続される。
【0099】
バイパス弁61は、バイパス通路60を開閉する開閉弁であって、バイパス通路60の途中に設けられる。バイパス弁61の開度は、コントローラ50によって制御される。
【0100】
次に、
図10を参照して、第3実施形態による燃料電池システム100のコントローラ50が実行するアイドルストップ時カソード供給制御について説明する。
図10のフローチャートは
図3と同様のフローチャートであり、
図10のS103A及びS105Aは
図3のS103及びS105に代わる処理である。
【0101】
図10に示すように、コントローラ50は、アイドルストップが開始されると、S102においてカソードコンプレッサ23を停止する。そして、S102の処理後、コントローラ50はS103Aの処理を実行する。
【0102】
S103Aでは、コントローラ50は、カソード調圧弁25を全閉状態となるように制御し、バイパス弁61を全開状態となるように制御する。このようにアイドルストップ中にカソード調圧弁25を閉じてバイパス弁61を開くので、仮に走行風等の外気がカソードガス供給通路21内に流入しても、外気はバイパス通路60を通じてカソードガス排出通路22に流れ込む。そのため、外気が不要に燃料電池スタック1に供給されることを抑制できる。なお、S103Aでは、バイパス弁61を開いてからカソード調圧弁25を閉じることが好ましい。
【0103】
S103Aの処理後のS104において、燃料電池スタック1の電圧が下限値V
Lまで低下したと判定された場合には、コントローラ50はS105Aの処理を実行する。
【0104】
S105Aでは、コントローラ50は、カソード調圧弁25を全閉状態から全開状態に制御し、バイパス弁61を全開状態から全閉状態に制御する。このようにアイドルストップ中にカソード調圧弁25を開きバイパス弁61を閉じることで、カソードガス供給通路21に流入した走行風等の外気の全量を燃料電池スタック1に供給することができる。これにより、アイドルストップ中の燃料電池スタックの電圧を速やかに上昇させることができる。
【0105】
なお、S105Aでは、カソード調圧弁25を開いてからバイパス弁61を閉じることが好ましい。また、車両走行状態によって走行風等の強さが変化するため、車両走行状態に基づいてバイパス弁61の開度を制御し、燃料電池スタック1に導かれる外気の量を調整してもよい。
【0106】
S105Aの処理後、コントローラ50は、S106以降の処理を実行し、燃料電池スタック1の電圧が上限値V
Hに到達した時にアイドルストップ時カソード供給制御を終了する。
【0107】
上記した本実施形態による燃料電池システム100によれば、以下の効果を得ることができる。
【0108】
燃料電池システム100では、コントローラ50は、アイドルストップ時にカソードコンプレッサを停止制御する。この時、カソード調圧弁25を閉じてバイパス弁61を開くので、仮に走行風等の外気がカソードガス供給通路21内に流入しても、外気はバイパス通路60を通じてカソードガス排出通路22に流れ込む。そのため、外気が不要に燃料電池スタック1に供給されることを確実に抑制でき、燃料電池スタック1の電圧が高くなりすぎることを防止できる。
【0109】
また、コントローラ50は、アイドルストップ中の燃料電池スタック1の電圧が下限値V
Lまで低下した場合に、カソード調圧弁25を開弁制御するとともにバイパス弁61を閉弁制御する。このようにアイドルストップ中にカソード調圧弁25を開きバイパス弁61を閉じることで、カソードガス供給通路21に流入した走行風等の外気の全量を燃料電池スタック1に供給することができる。このように外気を供給することで、アイドルストップ中におけるカソードガス不足を解消することが可能となる。また、カソードコンプレッサ23を駆動せずにカソードガス供給を行うので、カソードコンプレッサ23での消費電力を節約でき、燃料電池システム100における電力消費効率を高めることが可能となる。
【0110】
また、コントローラ50は、アイドルストップ中にカソード調圧弁25を開弁制御する場合、車両走行状態に基づいてバイパス弁61の開度を制御し、燃料電池スタック1に導かれる外気の量を調整してもよい。これにより、適度な量の外気を燃料電池スタック1に供給することが可能となる。
【0111】
なお、第3実施形態の燃料電池システム100のコントローラ50は、
図10のフローチャートではなく、第2実施形態の
図6に対応する
図11のフローチャートに基づいてアイドルストップ時カソード供給制御を実行してもよい。
図11のS103Aは、
図6のS103に代わる処理であり、
図10のS103Aと同じ処理である。また、
図11のS105Aは、
図6のS105に代わる処理であり、
図10のS105Aと同じ処理である。このように、
図11のフローチャートに基づいてアイドルストップ時カソード供給制御を実行することで、第2及び第3実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
【0112】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0113】
例えば、第3実施形態の燃料電池システム100では、カソード調圧弁25を設けず、バイパス弁61だけでアイドルストップ中の外気導入制御を実行してもよい。このような構成では、アイドルストップ中に外気導入を抑制する必要がある場合にバイパス弁61は開かれ、外気導入の抑制を解除する場合にバイパス弁61は閉じられる。
【0114】
さらに、第1から第3実施形態では、アイドルストップ中にカソード調圧弁25を開いて十分な外気を取り込める場合には、カソードコンプレッサ23を駆動しない。しかしながら、このような場合であっても、走行風等の外気の取り込みを補助するようにカソードコンプレッサ23を駆動させてもよい。これにより、カソードコンプレッサ23を駆動する分だけ燃料電池システム100の電力消費効率が低下するが、アイドルストップ中の燃料電池スタック1の電圧を速やかに回復させることが可能となる。
【0115】
さらに、第1から第3実施形態では、燃料電池システム100は、カソードコンプレッサ23の代わりにブロワを備え、このブロワによりカソードガスを燃料電池スタック1に供給するように構成されてもよい。