【実施例】
【0020】
図1〜
図8に、実施例の搬送システム2(
図1〜
図4,
図8)とその変形(
図5〜
図7)とを示す。搬送システム2は、半導体製造工場のクリーンルーム等に設けられている。クリーンルームの天井スペースに設けられたインターベイルート及びイントラベイルートを、天井走行車(OHT)4が走行軌道6に沿って走行する。なお支柱7は、走行軌道6を天井25側から支持する。イントラベイルートは、半導体等の処理装置12が配置されているベイ内のルートで、インターベイルートにより互いに接続されている。また天井走行車4は、ホイストとホイストの横移動機構(いずれも不図示)を備え、ホイストにより昇降台8を昇降させることにより、FOUP等の物品10をロードポート14との間で移載する。
【0021】
実施例での天井走行車4の任務は、異なるイントラベイルートのロードポート14間で速やかに物品10を搬送することである。ここで天井走行車4が、ロードポート14との間で物品10を移載するため停止することが、イントラベイルートの渋滞の原因となる。そこで天井走行車4はロードポート14以外のバッファに物品を搬出入する機会を増して、渋滞を少なくする。これに伴って、ロードポート14とバッファとの間の搬送をローカル台車が行い、好ましくはベイ内での搬送をローカル台車が行う割合を高める。そこでローカル台車の台数を増して搬送能力を高めると共に、ローカル台車が走行経路を柔軟に選択できるようにして、ローカル台車が渋滞しないようにする。
【0022】
16はローカル台車で、ローカル軌道20は、ロードポート14の上部から、処理装置12の上部もしくは処理装置12の背面の上部等に渡って、ベイ内に設けられている。ローカル軌道20は例えば縦横の格子状に配置され、例えば支柱24により天井25により支持されるが、クリーンルームの床面等により支持しても良い。またローカル軌道20の下部に、バッファ22が例えば格子状に設けられ、例えば支柱23によりローカル軌道20によって支持されている。そしてローカル台車16は、バッファ22とロードポート14との間で物品10を搬送する。
【0023】
図2に、ローカル軌道20の配置例を示す。インターベイルート30から、ベイ内にイントラベイルート32と増設ルート34とが引き込まれている。増設ルート34は、処理装置12の上部あるいは背面の上部を通り、ロードポート14の上部を通る通常のイントラベイルート32に増設されたルートである。ローカル軌道20は、処理装置12の上部等に格子状に配置され、格子の1枠に例えば1個、あるいは複数個のバッファ22が設けられている。即ち、格子状のローカル軌道20での、軌道により囲まれたスペースに、バッファ22が設けられている。またローカル台車16と天井走行車4とが共にアクセス可能なエリアを移載エリア36と呼び、移載エリア36にはロードポート14とバッファ22とが設けられている。
図2では、左右の処理装置12の列の間の通路37上にも、ローカル軌道20を設け、ベイ内の搬送をローカル台車16のみで行えるようにしている。しかしベイの左右のローカル軌道20を接続しないようにしても良い。なお
図2の下部に鎖線で示すように、処理装置12"とロードポート14"とが配置されている場合、これに応じて鎖線のローカル軌道20"を追加することが好ましい。この場合、ロードポート14"の向きは、他のロードポート14から、90°あるいは270°変化している。そこでローカル台車16のターンテーブルにより、物品の向きを90°、180°、及び270°回転させることができるようにすることが好ましい。さらにロードポート14,14"等の微妙な向きのずれを補正するように、ターンテーブルの回転角を微修正できるようにすることが好ましい。
【0024】
図3に、ローカル軌道20とローカル台車16とを示す。ローカル軌道20の幅方向の中心に溝21が設けられ、ローカル台車16は車輪18を例えば前後2対、車輪19を例えば前後2対備え、車輪18,19は走行方向が直角である。また走行部40により車輪18を回転させ、走行部41により車輪19を回転させ、車輪18,19の一方を下降させて他方を上昇させ、下降させた車輪を溝21によりガイドして走行させる。このように、ローカル台車16は一対のローカル軌道20,20にガイドされて走行し、格子状に配置されているローカル軌道20の任意の位置から任意の位置へ移動できる。この間に、ローカル台車16は縦横に走行するだけでなく、前後進が自在である。
【0025】
図4は、ローカル台車16の構造を示す。走行部40aでは、ベルト42により車輪18を回転させ、モータ46からギア43とベルト44とを介して、ベルト42を駆動する。また駆動軸48により、モータ46の出力を、走行部40bへ伝達する。走行部41も構造は同じである。50はホイストで、物品10を把持する昇降台52を昇降させ、ロードポート14及びバッファ22との間で物品10を移載する。ターンテーブル54は、ホイスト50を例えば90°刻みで回転させ、ロードポート14に適合する向きへと物品10を回転させる。切替部56は図示しないモータとカム等を備え、走行部40,41の一方を下降させて、車輪18,19の一方を溝21にガイドさせ、他方を上昇させて、ローカル軌道20から浮かす。そして物品10はローカル台車16の内部へ引き込まれ、物品10の上部に駆動軸48,切替部56等を設けると、物品10を避けてこれらの部材を配置でき、ローカル台車16の平面視での面積を小さくできる。
【0026】
以上の構造により、ローカル台車16は、
図2のローカル軌道20の任意の位置から任意の位置まで走行でき、物品10を所望の向きに回転させることができる。またローカル台車16が必要とするスペースは、ローカル軌道20の格子1枠と、その周囲の格子8枠である。即ち、ローカル台車16は、他のローカル台車16との間に、格子1枠以上の隙間が有れば自由に走行できる。このため、他のローカル台車にブロックされずに、自由に走行できる。
【0027】
図5の変形例では、ローカル軌道60の中心に突条61を設けると共に、その両側に一対の溝21,21を設けて、同じローカル軌道60を一対のローカル台車16,16が走行できるようにする。なお
図5の鎖線によりバッファ22を示す。ローカル軌道の構造は任意で、例えば溝21を設けずに、ローカル台車16に設けたガイドローラをローカル軌道でガイドしても良い。また実施例では、ローカル軌道20,60の上部をローカル台車16が走行するが、ローカル軌道から懸垂するように、ローカル台車16が走行しても良い。
【0028】
図6の変形例は、ローカル軌道20の配置を小規模にしたものである。
図6のローカル軌道20は、イントラベイルート36の下部の軌道と、その側方の軌道とを平行に複線状に配置し、かつ任意の枠で分岐と合流とを自在にしたものと見なすことができる。ローカル台車は、ローカル軌道20を縦横にかつ前後進自在に走行できるので、移載エリア36で天井走行車あるいは他のローカル台車が物品を移載中でも、迂回して目的地に達することができる。また1つの目的地に、その三方(
図2では目的地の四方から)、到達することができる。そしてターンテーブルにより、物品の向きをロードポート14に合わせて整えることができる。
【0029】
図7の変形例では、処理装置12の列の上部あるいは背面の上部に、増設ルート34を設け、イントラベイルート32から増設ルート34に渡る範囲に、ローカル軌道20を配置する。天井走行車は、移載エリア36a,36bのいずれでも物品の移載ができ、例えば直接ロードポート14との間で物品を移載することも、あるいはロードポート14と反対側の移載エリア36aのバッファと物品を移載することもできる。ローカル台車は、天井走行車あるいは他のローカル台車が移載を行っている位置を迂回して、目的地に達することができる。なお62は、ローカル軌道20もバッファ22も設けていない予備スペースで、ここにローカル軌道20とバッファ22を増設しても良い。
【0030】
図8は、搬送システム2の制御系を示す。70は最上位の生産管理システム(MES)で、材料管理システム(MCS)71および処理装置コントローラ75の情報管理を行うと共に、半導体の生産スケジュールに基づいて、処理装置コントローラ75と材料管理システム71に指示する。処理装置コントローラ75は、生産管理システム70からの指示に基づき、処理装置12を管理し、処理の進捗状況を生産管理システム70に報告する。材料管理システム71は、生産管理システム70からの半導体の生産スケジュールに基づいて、物品10の搬送スケジュールを作成し、天井走行車コントローラ(OHTコントローラ)72及びローカル台車コントローラ74に、物品10の搬送を実行させる。これ以外に、不図示のストッカコントローラを設けても良い。なお天井走行車コントローラ72とローカル台車コントローラ74とを一体にしても、別体にしても良い。天井走行車4は、走行ルートを一方向にしか走行できず、また走行ルートが渋滞することがあるため、指示通りに物品を搬送することは難しい。これに対してローカル台車16は、縦横に走行でき、前進と後退とが自由で、かつローカル軌道が平行に複線状に配置されているため、容易に目的地に達することができる。
【0031】
渋滞等が生じると、天井走行車4は荷下ろし位置を移載エリア内のバッファなどに適宜に変更し、その旨を天井走行車コントローラ72からローカル台車コントローラ74へ通知する。そしてローカル台車16は、天井走行車が荷下ろしした位置から、目的のロードポートへ物品を搬送する。またロードポート上に天井走行車4が停止して荷積みすると、他の天井走行車の走行を制約する。さらに渋滞のため、天井走行車が目的のロードポートにアクセスするのが難しいことがある。これに対して、ローカル台車16は容易に所望のロードポートにアクセスして荷積みでき、また天井走行車の渋滞が生じにくい位置のバッファへ荷下ろしできる。このためロードポートからの搬出を速やかに行うことができる。
【0032】
実施例には以下の特徴がある。
1) ローカル台車16は縦横にかつ前後進自在に走行でき、目的地までの走行経路を自由に選択できる。
2) ローカル台車16はターンテーブルを備え、物品の向きをロードポート14に合わせて変更できる。
3) ローカル台車16とバッファ22とが有るので、天井走行車4は荷下ろし位置と荷積み位置とを自由に変更できる。言い換えると、天井走行車4の都合の良い位置と目的のロードポート14との間で、ローカル台車16により物品を搬送し、バッファ22に保管しておくことができる。
4) バッファ22を多数設けることができ、またローカル台車16は柔軟に走行できるので、多数のローカル台車16により物品を搬送できる。
5) これらのため、緊急に搬送を要する物品(ホットロット)を速やかにロードポート14に搬出入できる。
6) 多数のローカル台車16が所望のロードポート14にアクセスでき、多数のバッファ22が有るので、生産管理システム71から要求された時間に、要求されたロードポート14に物品を搬出入できる。
【0033】
実施例では、ローカル軌道20は格子状で、ローカル台車16は縦横に走行自在である。しかし最小限、ローカル軌道を複線に配置し、分岐部と合流部とで複線を接続すると、前後進が自在でかつ分岐と合流とが自在なローカル台車により、目的位置へ柔軟に走行して、物品を搬出入できる。