(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202208
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】パワー半導体素子の電流検出装置
(51)【国際特許分類】
H02M 1/00 20070101AFI20170914BHJP
H03K 17/08 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
H02M1/00 H
H03K17/08 C
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-531168(P2016-531168)
(86)(22)【出願日】2015年4月30日
(86)【国際出願番号】JP2015063028
(87)【国際公開番号】WO2016002329
(87)【国際公開日】20160107
【審査請求日】2016年7月28日
(31)【優先権主張番号】特願2014-134870(P2014-134870)
(32)【優先日】2014年6月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092152
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 毅巖
(72)【発明者】
【氏名】中森 昭
【審査官】
栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2013/094148(WO,A1)
【文献】
特開2012−186899(JP,A)
【文献】
特開2013−169030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00
H03K 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主電流が流れるメイン素子と前記メイン素子の電流を検出する電流センス素子とを具備したパワー半導体素子の電流検出装置において、
所定の基準電圧を出力する基準電源と、
非反転入力端子に前記基準電圧を印加し、反転入力端子を出力端子および前記電流センス素子の電流出力端子に接続した演算増幅器と、
前記演算増幅器の出力段を構成するデバイスに流れる電流の比例倍の電流を流すよう構成したトランジスタおよび前記トランジスタに流れる電流を電圧に変換する抵抗を有し、前記トランジスタと前記抵抗との接続点から前記パワー半導体素子の検出電流に相当する電圧を出力する電流電圧変換器と、
を備え、
前記基準電源、前記演算増幅器および前記電流電圧変換器は、グランドの電位を基準に動作するよう構成されていることを特徴とするパワー半導体素子の電流検出装置。
【請求項2】
前記演算増幅器の出力段は、ハイサイドに電流源を配置し、ローサイドに出力段の電流を調整する前記デバイスを配置してA級増幅器を構成し、前記電流源と前記デバイスとの接続点を前記出力端子としたことを特徴とする請求項1記載のパワー半導体素子の電流検出装置。
【請求項3】
前記基準電源は、前記基準電圧が1ボルト以下の電圧に設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載のパワー半導体素子の電流検出装置。
【請求項4】
前記パワー半導体素子は、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のパワー半導体素子の電流検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパワー半導体素子の電流検出装置に関し、特に主電流が流れるメイン素子とこのメイン素子の電流を検出する電流センス素子とを具備したパワー半導体素子の電流検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機駆動用のインバータ装置やコンピュータの無停電電源装置などの電力変換装置では、パワー半導体素子をスイッチング動作させることにより電力変換を行っている。電力変換装置は、装置外部での突発的な短絡事故に対して装置を保護し、装置の破壊を回避することが必要である。電力変換装置にこの機能を具備するため、電力変換装置には、それを構成する半導体素子に流れる電流を常時検出する機能が搭載されている。
【0003】
図2はパワー半導体素子および従来の第1の電流検出回路を示す回路図である。
この回路図において、ここでは、電力変換装置のパワー半導体素子100として、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)の場合を例にしている。なお、パワー半導体素子100としては、図示のIGBTに限定されるものではなく、絶縁ゲート型電界効果トランジスタのような他の絶縁ゲート型半導体素子でも構わない。
【0004】
パワー半導体素子100は、主電流が流れるメイン素子であるIGBT101とこのIGBT101の電流を検出するための電流センス素子であるセンスIGBT102とを具備している。このセンスIGBT102は、IGBT101と同一構造を有するが、IGBT101よりも小さなサイズを有している。パワー半導体素子100は、IGBT101およびセンスIGBT102のゲート端子103およびコレクタ端子104がそれぞれ共通に接続された構成を有している。ゲート端子103は、このパワー半導体素子100の駆動回路に接続され、コレクタ端子104は、電動機などの負荷を介して電源に接続される。パワー半導体素子100は、また、IGBT101のエミッタ端子105およびセンスIGBT102のエミッタ端子106が独立して構成されている。IGBT101のエミッタ端子105は、グランド107に接続され、センスIGBT102のエミッタ端子106は、抵抗108の一端に接続され、抵抗108の他端は、グランド107に接続されている。
【0005】
パワー半導体素子100がオンとなる制御状態では、IGBT101のエミッタ端子105に流れる電流は、センスIGBT102のエミッタ端子106に流れる電流と比例倍の関係になる。このとき、センスIGBT102のエミッタ端子106に流れる電流は、そのまま抵抗108に流れるため、この抵抗108には、IGBT101のエミッタ端子105に流れる電流に比例した電圧降下が発生する。抵抗108には、この電圧降下を測定する図示しない回路が接続されており、その回路が電圧降下を測定することにより、IGBT101に流れる電流を間接的に検出していた。
【0006】
以上の
図2の構成による電流検出では、抵抗108の大きさを決める上で2つの課題、すなわち、電流検出精度に関する第1の課題と外乱ノイズによる誤動作に関する第2の課題とがあることが知られている。
【0007】
電流検出精度に関する第1の課題は、抵抗108の値を大きくすると、その電圧降下が大きくなり、IGBT101のゲート・エミッタ間の電圧とセンスIGBT102のゲート・エミッタ間の電圧とが大きく異なってしまうことである。IGBT101およびセンスIGBT102のゲート・エミッタ間の電圧が異なると、IGBT101に流れる電流とセンスIGBT102に流れる電流との電流比の精度が悪くなり、電流検出精度が悪化してしまうのである。
【0008】
外乱ノイズによる誤動作に関する第2の課題は、抵抗108の値を小さくすると、その電圧降下が小さくなり、上記の電流検出精度は向上するが、短絡時の過電流を判定するしきい値が小さくなるため、外乱ノイズによる誤動作が発生し易くなることである。
【0009】
以上の第1および第2の課題およびこれらの課題を解決する手段が既に提案されている(たとえば、特許文献1)ので、ここで提案されている電流検出について説明する。
図3はパワー半導体素子および従来の第2の電流検出回路を示す回路図である。なお、
図3において、
図2に記載のものと同一または同等の構成要素については、同じ符号を付してある。
【0010】
パワー半導体素子100は、IGBT101のコレクタ端子104およびエミッタ端子105に逆並列に還流ダイオード109が接続されている。IGBT101のエミッタ端子105は、接地電位が与えられるグランド107に接続されている。
【0011】
パワー半導体素子100は、駆動制御回路110によって制御するように構成されている。駆動制御回路110は、パワー半導体素子100のゲート端子103に接続されたドライブ回路120、過電流判定回路130、およびセンスIGBT102に流れる電流を検出する電流検出回路140を具備している。
【0012】
ドライブ回路120は、ドライバ121と直流電源122,123とを有し、ドライバ121が直流電源122を駆動電源としてパワー半導体素子100を駆動制御する。直流電源122の負電極は、駆動制御回路110の共通接続部111に接続されて駆動制御回路110の基準電位を与えている。直流電源123は、正電極が接地電位とするグランド107に接続され、負電極が駆動制御回路110の基準電位とする共通接続部111に接続されている。
【0013】
電流検出回路140は、PNPトランジスタ141と抵抗108とを有している。PNPトランジスタ141は、エミッタ端子がセンスIGBT102のエミッタ端子106に接続され、コレクタ端子が抵抗108の一端に接続され、ベース端子が接地電位とするグランド107に接続されている。抵抗108の他端は、駆動制御回路110の基準電位とする共通接続部111に接続されている。
【0014】
過電流判定回路130は、コンパレータ131と直流電源132とを有している。コンパレータ131は、その一方の入力端子が電流検出回路140におけるPNPトランジスタ141のコレクタ端子と抵抗108との接続部に接続され、他方の入力端子が直流電源132の正電極に接続されている。直流電源132の負電極は、駆動制御回路110の共通接続部111に接続されている。これにより、コンパレータ131は、抵抗108に発生する共通接続部111を基準とした電位差Vsを直流電源132の電圧と比較し、電位差Vsが直流電源132の電圧を超えた場合に、パワー半導体素子100のIGBT101に過電流が流れたと判定する。
【0015】
この駆動制御回路110の電流検出回路140によれば、パワー半導体素子100がオンしてセンスIGBT102に電流が流れた場合、電流検出回路140のPNPトランジスタ141もオンする。PNPトランジスタ141がオンしたときのPNPトランジスタ141のベース・エミッタ間電圧は、ほぼ、ダイオード1個分の順方向電圧降下に等しくなる。このため、センスIGBT102のエミッタ端子は、グランド107の接地電位を基準として、ほぼ、ダイオード1個分の順方向電圧降下分の電位に固定され、IGBT101およびセンスIGBT102のゲート・エミッタ間の電圧がほとんど変わらなくなる。IGBT101に流れる電流とセンスIGBT102に流れる電流との電流比の精度がほとんど変わらないので、電流検出精度が悪化することがなく、上記の第1の課題は解決される。
【0016】
また、上記の第2の課題についても、抵抗108の基準電位を直流電源123でグランド107の接地電位よりも低い電位に設定して、抵抗108の電圧降下を大きくすることができるようにしたので、同様に解決される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2012−186899号公報(段落〔0017〕〜〔0041〕,
図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
ここで、
図3に示す直流電源122の電圧をV1、直流電源123の電圧をV2とした場合、電流検出回路140を動作させる電源は、−V2〜(V1−V2)となる。このため、電流検出回路140を負電圧から動作させる必要があるため、駆動制御回路110は、それを考慮したシステム設計が複雑になるという問題点があった。
【0019】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、高い電流検出精度を維持し、外乱ノイズによる影響を受けないようにしながら、負電圧から動作させる必要のないパワー半導体素子の電流検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明では上記の課題を解決するために、主電流が流れるメイン素子と前記メイン素子の電流を検出する電流センス素子とを具備したパワー半導体素子の電流検出装置が提供される。このパワー半導体素子の電流検出装置は、所定の基準電圧を出力する基準電源と、非反転入力端子に前記基準電圧を印加し、反転入力端子を出力端子および前記電流センス素子の電流出力端子に接続した演算増幅器と、前記演算増幅器の出力段を構成するデバイスに流れる電流
の比例倍の電流を流すよう構成したトランジスタおよび前記トランジスタに流れる電流を電圧に変換する
抵抗を有し、前記トランジスタと前記抵抗との接続点から前記パワー半導体素子の検出電流に相当する電圧を出力する電流電圧変換器と、を備え、前記基準電源、前記演算増幅器および前記電流電圧変換器は、グランドの電位を基準に動作するよう構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
上記構成のパワー半導体素子の電流検出装置は、基準電源、演算増幅器および電流電圧変換器がグランドの電位を基準に動作するため、負電圧から動作させる必要のない簡単な構成で実現できるという利点がある。
【0022】
本発明の上記および他の目的、特徴および利点は本発明の例として好ましい実施の形態を表す添付の図面と関連した以下の説明により明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施の形態に係るパワー半導体素子の電流検出装置の一構成例を示す回路図である。
【
図2】パワー半導体素子および従来の第1の電流検出回路を示す回路図である。
【
図3】パワー半導体素子および従来の第2の電流検出回路を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、パワー半導体素子にセンスIGBTを有するIGBTを適用した場合を例に図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の実施の形態に係るパワー半導体素子の電流検出装置の一構成例を示す回路図である。
【0025】
パワー半導体素子10は、主電流が流れるメイン素子としたIGBT11とこのIGBT11の電流を検出する電流センス素子としたセンスIGBT12とを具備している。このセンスIGBT12は、IGBT11と同一構造を有するが、IGBT11よりも小さなサイズを有し、IGBT11を流れる電流の一部を分流するようにしている。
【0026】
IGBT11およびセンスIGBT12は、ゲート端子13およびコレクタ端子14をそれぞれ共通に接続している。ゲート端子13は、このパワー半導体素子10の駆動回路に接続され、コレクタ端子14は、負荷を介して電源に接続される。IGBT11のエミッタ端子15およびセンスIGBT12の電流出力端子であるエミッタ端子16は、独立して構成されている。IGBT11のエミッタ端子15は、接地電位が与えられるグランド17に接続され、センスIGBT12のエミッタ端子16は、パワー半導体素子10の電流検出装置に接続されている。
【0027】
電流検出装置は、演算増幅器20と、電流電圧変換器40と、基準電源50と、電源60とを具備している。基準電源50は、センスIGBT12のエミッタ端子16を接地電位(0ボルト)に近い所定の電圧に固定するのに使用されるものであり、1ボルト以下、好ましくは、0.6ボルト程度の電圧にしてある。
【0028】
演算増幅器20は、非反転入力端子21、反転入力端子22および出力端子23を有している。演算増幅器20の非反転入力端子21は、基準電源50の正電極に接続され、基準電源50の負電極は、接地電位とするグランド17に接続されている。演算増幅器20の反転入力端子22は、出力端子23およびセンスIGBT12のエミッタ端子16に接続されている。
【0029】
演算増幅器20には、電源60が接続されており、その電源60の正電極は、PMOS(P-Channel Metal-Oxide Semiconductor)トランジスタ24のソース端子に接続されている。PMOSトランジスタ24のドレイン端子は、電流源25を介して電源60の負電極およびグランド17に接続されている。PMOSトランジスタ24のゲート端子は、自身のドレイン端子と、PMOSトランジスタ26のゲート端子に接続されている。PMOSトランジスタ26のソース端子は、電源60の正電極に接続され、ドレイン端子は、PMOSトランジスタ27,28のソース端子にそれぞれ接続されている。PMOSトランジスタ27のゲート端子は、演算増幅器20の非反転入力端子21に接続され、PMOSトランジスタ28のゲート端子は、反転入力端子22に接続されている。PMOSトランジスタ27のドレイン端子は、NMOS(N-Channel Metal-Oxide Semiconductor)トランジスタ29のドレイン端子に接続され、NMOSトランジスタ29のソース端子は、グランド17に接続されている。PMOSトランジスタ28のドレイン端子は、NMOSトランジスタ30のドレイン端子に接続され、NMOSトランジスタ30のソース端子は、グランド17に接続されている。NMOSトランジスタ29のゲート端子は、NMOSトランジスタ30のゲート端子およびドレイン端子に接続されている。
【0030】
PMOSトランジスタ24のゲート端子およびドレイン端子は、また、PMOSトランジスタ31のゲート端子に接続されている。PMOSトランジスタ31のソース端子は、電源60の正電極に接続され、ドレイン端子は、NMOSトランジスタ32のドレイン端子に接続されている。NMOSトランジスタ32のソース端子は、グランド17に接続され、ゲート端子は、PMOSトランジスタ27のドレイン端子とNMOSトランジスタ29のドレイン端子との接続点に接続されている。PMOSトランジスタ31のドレイン端子とNMOSトランジスタ32のドレイン端子との接続点は、演算増幅器20の出力端子23に接続されている。そして、NMOSトランジスタ32のドレイン端子とゲート端子との間には、演算増幅器20を安定して動作させるための容量33と抵抗34との直列回路が接続されている。
【0031】
電流電圧変換器40は、NMOSトランジスタ41と抵抗42とを有している。NMOSトランジスタ41は、そのゲート端子が演算増幅器20のNMOSトランジスタ32のゲート端子に接続され、ソース端子がグランド17に接続されている。NMOSトランジスタ41のドレイン端子は、抵抗42の一端に接続され、抵抗42の他端は、電源60の正電極に接続されている。そして、NMOSトランジスタ41のドレイン端子と抵抗42との接続点は、出力端子43に接続されている。
【0032】
以上の構成の電流検出装置において、演算増幅器20では、電流源25がPMOSトランジスタ24のドレイン端子に接続されている。PMOSトランジスタ24とPMOSトランジスタ31とはカレントミラー構成となっているため、PMOSトランジスタ31のドレイン電流は、電流源25の比例倍の一定した電流が流れる。一方、NMOSトランジスタ32のゲート電圧は、非反転入力端子21の電圧と反転入力端子22の電圧との差に比例した電圧が印加されることで、NMOSトランジスタ32のドレイン電流が制御される。このように、出力段のハイサイドを電流源とし、ローサイドの電流を変化させて出力段の電流を調整する構成をA級増幅器と呼ばれている。このA級増幅器では、演算増幅器20の出力端子23から演算増幅器20に入る電流変動分は、NMOSトランジスタ32に流れることになる。
【0033】
ここで、パワー半導体素子10がオフのとき、センスIGBT12には電流が流れないので、演算増幅器20の出力段では、PMOSトランジスタ31のドレイン電流は、そのままNMOSトランジスタ32に流れる。演算増幅器20は、電圧フォロワ構成にしたことで、非反転入力端子21に印加された基準電源50の電圧がそのまま出力端子23に出力され、センスIGBT12のエミッタ端子16は、基準電源50の電圧に固定されていることになる。
【0034】
このとき、電流電圧変換器40では、そのNMOSトランジスタ41のゲート端子が演算増幅器20のNMOSトランジスタ32のゲート端子に接続されているので、NMOSトランジスタ32に流れる電流の比例倍の電流がNMOSトランジスタ41に流れる。この電流は、抵抗42に流れ込むことにより、抵抗42に電圧降下が発生し、出力端子43より出力される。
【0035】
次に、パワー半導体素子10がオンのとき、センスIGBT12の電流は、演算増幅器20の出力端子23に流れ込む。演算増幅器20では、出力段のNMOSトランジスタ32に、PMOSトランジスタ31からの一定電流とセンスIGBT12の電流とが流れる。NMOSトランジスタ32は、センスIGBT12の電流が増えた分、ゲート・ソース間電圧が増加する。これにより、電流電圧変換器40のNMOSトランジスタ41も、NMOSトランジスタ32に流れる電流の比例倍の電流が流れ、抵抗42での電圧降下も増加する。この電圧降下の変化は、出力端子43に接続された図示しない回路により観測され、これにより、IGBT11に流れる電流を検出することが可能となる。
【0036】
この電流検出装置によれば、演算増幅器20がセンスIGBT12のエミッタ端子16を1ボルト以下の電圧に固定したことにより、パワー半導体素子10がオンしたときのIGBT11およびセンスIGBT12のゲート・エミッタ間の電圧変化がほとんどない。このため、IGBT11に流れる電流とセンスIGBT12に流れる電流との電流比の精度が変わらないので、高い電流検出精度を維持することができる。
【0037】
また、電流電圧変換器40を備え、そのNMOSトランジスタ41を、センスIGBT12の電流が流れ込むNMOSトランジスタ32の電流の比例倍の電流が流れるように構成し、NMOSトランジスタ41のハイサイド側に抵抗42を設けた。これにより、抵抗42は、任意の値に調整可能となることから、抵抗42の値を大きく設定することで、外乱ノイズに影響されなくなる。
【0038】
さらに、この電流検出装置は、グランド17の電位を基準に動作させるように構成したことにより、負電圧から動作させる必要がないため、この電流検出装置を含むシステム設計を複雑にすることがなくなる。
【0039】
上記については単に本発明の原理を示すものである。さらに、多数の変形、変更が当業者にとって可能であり、本発明は上記に示し、説明した正確な構成および応用例に限定されるものではなく、対応するすべての変形例および均等物は、添付の請求項およびその均等物による本発明の範囲とみなされる。
【符号の説明】
【0040】
10 パワー半導体素子
11 IGBT
12 センスIGBT
13 ゲート端子
14 コレクタ端子
15 IGBTのエミッタ端子
16 センスIGBTのエミッタ端子
17 グランド
20 演算増幅器
21 非反転入力端子
22 反転入力端子
23 出力端子
24,26,27,28,31 PMOSトランジスタ
25 電流源
29,30,32,41 NMOSトランジスタ
33 容量
34,42 抵抗
40 電流電圧変換器
43 出力端子
50 基準電源
60 電源