(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記曲線形状は、前記内径側部分の内径側端と前記外径側部分に外接する外接円の外径側端とを結ぶ直線上の真ん中を前記断面形状の中心として、前記断面形状の内径側端を0度としたときに、170度から190度までの領域に存在する、
請求項1又は2に記載のコイルスプリング。
前記半楕円形状は、前記内径側部分の内径側端と前記外径側部分に外接する外接円の外径側端とを結ぶ直線上の真ん中を前記断面形状の中心として、前記断面形状の内径側端を0度としたときに、0度から90度まで及び270度から360度までの領域内に配置される、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のコイルスプリング。
前記円弧形状は、前記内径側部分の内径側端と前記外径側部分に外接する外接円の外径側端とを結ぶ直線上の真ん中を前記断面形状の中心として、前記断面形状の内径側端を0度としたときに、120度から170度まで及び190度から240度までの領域内に配置される、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のコイルスプリング。
前記内径側部分の内径側端と前記外径側部分に外接する外接円の外径側端との長さと、前記短径の方向における最大の長さと、の比が1.35から1.45までの間である、
請求項1ないし5のいずれか1項に記載のコイルスプリング。
前記内径側部分の内径側端と前記外径側部分に外接する外接円の外径側端との長さと、前記短径の方向における最大の長さと、の比が1.38から1.40までの間である、
請求項6に記載のコイルスプリング。
前記コイルスプリングは、2つの回転体の間に介在するように回転方向に向けて配置され、かつ少なくとも一方の回転体に設けられたカバーにより遠心力による移動が規制されるように配置され、
前記外接円の曲率が、前記カバーの前記回転方向の内接円の曲率よりも小さい、
請求項1ないし9のいずれか1項に記載のコイルスプリング。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1の実施の形態>
以下、第1の実施の形態について、
図1乃至
図7に沿って説明する。まず、本第1の実施の形態に係るコイルスプリング50を適用し得る自動変速機のトルクコンバータ1、及びそれに内蔵されたダンパ部17の構造について、
図1に沿って説明する。
【0013】
図1A及び
図1Bに示すように、トルクコンバータ1は、リヤカバー2及びフロントカバー3を一体に溶接してなるハウジング5を有しており、該ハウジング5内に、ポンプインペラ6、タービンランナ7及びステータ8、そしてロックアップクラッチ11が収納されている。ポンプインペラ6はリヤカバー2に固定された多数のブレードからなり、またタービンランナ7は外郭板9に固定された多数のブレードからなり、ステータ8はワンウェイクラッチ10に載置された多数のブレードからなる。
【0014】
フロントカバー3の中央にはセンタピース13が固着されていると共に周囲部にセットブロック12が固着されており、図示しないエンジンクランクシャフトに、上記センタピース13が嵌合して整列すると共に、フレキシブルプレートを介してセットブロック12が連結されて、該クランクシャフトの回転がハウジング5に伝達される。リヤカバー2の後側面にはポンプ側ボス14が固着されており、また上記タービンランナ7の外郭板9にタービン側ボス15が連結されている。ポンプ側ボス14は、ミッションケースと一体のポンプケース(不図示)に回転自在に支持されて、上記センタピース13と相俟ってハウジング5を支持している。上記タービン側ボス15は自動変速機構の入力軸(図示せず)にスプライン15aを介してスプライン係合し、また上記ワンウェイクラッチ10のインナレース10aがステータシャフト(不図示)を介してポンプケースに固定される。
【0015】
ロックアップクラッチ11は、フロントカバー3の内壁に接離自在に配置されたクラッチプレート16を有しており、該クラッチプレート16にて区画される上記ハウジング5内の油室A,Bに供給される油流を切換えることにより、該ロックアップクラッチ11が係合又は解放される。該クラッチプレート16は、タービン側ボス15に油密状にかつ回転及び軸方向摺動自在に支持されると共に外径側のエンジン側に摩擦材16aが固着されており、油室Aから油室Bにオイルが流れることによりロックアップクラッチ11が解放され、油室Bから油室Aにオイルが流れることによりロックアップクラッチ11が係合される。
【0016】
上記クラッチプレート16とタービンランナ7との間には、ダンパ部(ダンパ装置)17が介在している。該ダンパ部17は、大まかに、ドライブプレート(回転体)25、第1ドリブンプレート(回転体)26、カバープレート(カバー)27、補助プレート28、第2ドリブンプレート29、径方向異なる位置に2段に配置された収納部C
1,C
2、これら収納部C
1,C
2に収納されることで回転方向に向けて配置されたコイルスプリング50及びコイルスプリング60を有する。これらコイルスプリング50,60は、アーク状(円弧状)の収納部C
1,C
2に収納されるようにアークスプリングからなる。
【0017】
詳細には、ドライブプレート25は、リベット31により上記クラッチプレート16に固着されている。ドライブプレート25(一方の回転体)の外径側には、カバープレート27が溶接等により固着されて設けられており、該カバープレート27の突起部27aがコイルスプリング50の一端に当接している。これにより、ドライブプレート25及びカバープレート27は、ロックアップクラッチ11の係合時にコイルスプリング50に回転力を伝達する。また、カバープレート27は、断面視で半筒形状に形成されており、上記収納部C
1の空間を構成する。また、カバープレート27の収納部C
1は、トルクコンバータ1の中心軸AX1(回転軸)を中心とした半径Dの内周面を有しており、つまりコイルスプリング50は、半径Dの内接円に内接することになる。
【0018】
一方の第1ドリブンプレート26は、収納部C
1の内径側を構成していると共に、コイルスプリング50の他端に当接する当接部26aを有している。これにより、コイルスプリング50は、カバープレート27を介してドライブプレート25と、第1ドリブンプレート26との間に介在されていることになる。
【0019】
また、第1ドリブンプレート26は、内径側において、補助プレート28にリベット32により固定されており、補助プレート28と共にコイルスプリング60を収納する収納部C
2を構成している。第1ドリブンプレート26は、図示を省略した突起部でコイルスプリング60の一端に当接している。
【0020】
また、第1ドリブンプレート26と補助プレート28との間には、第2ドリブンプレート29が回転方向に摺動自在に配置されている。第2ドリブンプレート29は、図示を省略した当接部によりコイルスプリング60の他端に当接している。これにより、コイルスプリング60は、第1ドリブンプレート26と第2ドリブンプレート29との間に介在されていることになる。
【0021】
そして、第2ドリブンプレート29は、内径側において、タービン側ボス15のフランジ部15bと上記外郭板9と共にリベット33により固着されており、つまりタービン側ボス15により支持されている。従って、第1ドリブンプレート26、補助プレート28、コイルスプリング60などは、第2ドリブンプレート29を介してタービン側ボス15により支持されている。
【0022】
なお、本実施の形態では、各リベット31,32,33により各プレートなどを固着して締結するものを説明しているが、これに限らず溶接などの接合手段を用いてもよい。また、本実施の形態では、カバープレート27をドライブプレート25に固着したものを説明したが、第1ドリブンプレート26に固着したものでもよい。この場合は、コイルスプリング50の一端にドライブプレート25を当接させ、他端に第1ドリブンプレート26又はカバープレート27を当接させることになる。さらに、カバープレート27は、ドライブプレート25や第1ドリブンプレート26の一方に固着させるだけでなく、例えば半数をドライブプレート25に、残りの半数を第1ドリブンプレート26にそれぞれ固着させてもよく、つまり少なくとも一方の回転体に設けられていればよい。
【0023】
以上のような構成からなるので、ハウジング5内の油室Aから油室Bへオイルが流れて、ロックアップクラッチ11が解放状態にある場合、エンジンクランクシャフトの回転は、ハウジング5を介してポンプインペラ6に伝達され、更に該ポンプインペラ6、タービンランナ7及びステータ8を循環するフルードの流れによりタービンランナ7に伝達されて、タービン側ボス15を介して自動変速機構の入力軸に伝達され、そして該自動変速機構により適宜変速された回転が車輪に伝達される。
【0024】
上記油室Bから油室Aへオイルの流れを切換えることにより、ロックアップクラッチ11が係合状態にある場合、エンジンクランクシャフトの回転は、フロントカバー3から該ロックアップクラッチ11、ドライブプレート25、カバープレート27、コイルスプリング50、第1ドリブンプレート26及び補助プレート28、コイルスプリング60、第2ドリブンプレート29を介して、直接的にタービン側ボス15に伝達される。該ロックアップクラッチ11を介する機械的動力伝達にあって、アクセルのオン・オフ、ロックアップクラッチの断接、自動変速機構のクラッチやブレーキのオン・オフ、並びにエンジンの爆発振動等に伴うトルク変動は、振動周波数が異なるコイルスプリング50,60により適宜に吸収される。
【0025】
この際、コイルスプリング50,60は、伸縮を繰り返しながら振動を吸収するので、それぞれ収納部C
1,C
2の内面に沿って摺動することになるが、特にダンパ部17がロックアップクラッチ11の係合状態によってエンジン回転により連れ回ることになるので、コイルスプリング50,60には遠心力が発生すると共に収納部C
1,C
2により外径側への移動が規制され、つまり収納部C
1,C
2の外径側の内周面に摺動されることになる。特に以下に説明するコイルスプリング50の場合は、収納部C
1、つまりカバープレート27における半径Dの内周面に遠心力により押し付けられて摺動することになる。なお、コイルスプリング50は、コイルスプリング60よりも外径側に配置されているので、遠心力がより大きく発生することになる。
【0026】
続いて、本第1の実施の形態に係るコイルスプリング50の構成について説明するにあたり、従来の基本形状のコイルスプリング250を対比のため、
図9A、
図9B、
図9C、
図10A、及び
図10Bに沿って説明する。
【0027】
従来の基本形状であるコイルスプリング250は、
図9A、
図9B、
図9Cに示すように、素線251がコイル状に巻かれて形成されており、かつダンパ部17(つまりトルクコンバータ1)の中心軸AX1を中心として収納部C
1に納まるように、そのコイル中心軸AX2がアーク状となるように形成されている。従って、コイルスプリング250は、アーク状の外周部分が収納部C
1の回転方向に対してアーク状の内面の内接円C
1INに遠心力によって接触しつつ伸縮時には摺動することになる。
【0028】
このコイルスプリング250は、収納部C
1に収納される際、一端250aが例えばカバープレート27の突起部27aに当接され、他端250bが第1ドリブンプレート26の当接部26aに当接されて、設計上の付勢力を生じるように縮設されて配置される。ここで、コイルスプリング250が設計上の付勢力となるためには、断面二次モーメントとコイルの有効巻数との関係を適宜に設定する必要がある。
【0029】
ここで、例えば素線の断面形状が、直径dの円形とした場合の有効巻数の計算は、以下のようになる。即ち、断面二次モーメントIzは、
【数1】
であり、
【数2】
である。
有効巻数Naは、横弾性係数G、コイル平均径D、ばね定数kとしたとき、
【数3】
であり、上記数式(3)に上記数式(2)を代入すると、
【数4】
となる。
【0030】
ここで、
図10Bに示すように、コイルスプリング250の素線251の断面形状は、長径a及び短径bの半楕円形状251aと半径bの半円形状251bとを組合せたものである。そのため、素線251の断面二次モーメントを詳細に演算し(計算が複雑であるので説明は省略する)、それを数式(3)に代入することにより有効巻数を計算できる。
【0031】
従って、
図10Aに示すように、アーク状のコイルスプリング250をストレート状に置き換えた場合の長さL
2を有するストレート状のコイルスプリング250Bにおいては、一端250aから他端250bまでの巻数をN
2として設計することになる。なお、アーク状のコイルスプリング250は、ストレート状のコイルスプリング250Bをアーク状に曲げて形成することが主流であるが、これに限らず、アーク状のコイルスプリング250を、素線251のコイル状に巻くのと同時に形成するようにしてもよく、要するにアーク状の形成手法はどのようなものであってもよい。従って、ストレート状のコイルスプリング250Bは、単にストレート状のコイルスプリング250Bとしての一例でもあるが、アーク状のコイルスプリング250をアーク状に曲げる前の形状であるとも言える。
【0032】
ついで、本実施の形態に係るコイルスプリング50について、
図2A、
図2B、
図2C、
図3、
図4、
図5、
図6、及び
図7に沿って説明する。コイルスプリング50は、
図2A、
図2B、
図2Cに示すように、素線51がコイル状に巻かれて形成されており、かつダンパ部17(つまりトルクコンバータ1)の中心軸AX1を中心として収納部C
1に納まるように、そのコイル中心軸AX2がアーク状となるように形成されている。つまり、コイルスプリング50は、アーク状の外周部分が半径Dとなるように形成されており、収納部C
1のアーク状の内面の内接円C
1INに遠心力によって接触しつつ伸縮時には摺動することになる。なお、素線の断面形状は、コイル状に巻かれる前の素線の断面形状と、コイル状に巻かれることでコイルスプリングとして形成された後の素線の断面形状とは、厳密には異なるものであり、
図4及び
図5に示す素線51の断面形状は、素線をコイル状に巻いて形成した後の断面形状である。つまり以下に説明でいう「素線」は、「コイルスプリングとして形成された後の素線」を指すものである。
【0033】
このコイルスプリング50は、収納部C
1に収納される際、一端50aが例えばカバープレート27の突起部27aに当接され、他端50bが第1ドリブンプレート26の当接部26aに当接されて、設計上の付勢力を生じるように縮設されて配置される。
【0034】
図4に示すように、コイルスプリング50の素線51の断面形状は、半楕円形状となる半楕円形状部51a、直線形状となる直線部51b、円弧形状となる円弧部51d、曲線形状となる曲線形状部51cを含むように形成されている。本実施の形態における素線51は、半楕円形状部51aが内径側に、曲線形状部51cが外径側となるように巻かれてコイルスプリング50が形成されている。従って、曲線形状部51cにより形成されるコイルスプリング50の最外周部分が、収納部C
1の内面の内接円C
1INに接触・摺動することになる。
【0035】
上記半楕円形状部51aは、中心点P1から内外径方向に向かって延びる長径aと、該長径aと直交する方向に向かって延びる短径bとにより、(x/a)
α+(y/b)
α=1で定義される半楕円形状で構成されており、コイル形状に巻かれた際の内径側部分を構成している。なお、αは通常2であるが、これに限らず、楕円形状を表せればどのような値でもよい。また、本実施の形態において、半楕円形状部51aは、楕円形状のちょうど半分であるものを説明しているが、これに限らず、短径bに沿った方向(平行な方向、或いは僅かに傾斜していても良い)に楕円形状を何れかの場所で区切ったものでよい。即ち、本明細書中でいう「半楕円形状」は、一周しているものではなく、途中で区切られているものを指し、半分であることに限定されるものではなく、実質的に半楕円形状であればよい。
【0036】
一方、曲線形状部51cは、直線部51bと円弧部51dと共にコイル形状に巻かれた際の外径側部分を構成しており、中心点P1に対して内外径方向に延びる中心線上に配置された中心点P2から半径cとなる円弧状であり、本第1の実施の形態では、曲線形状部51cに外接する外接円51outと一部が一致する。この外接円51outは、本実施の形態では収納部C
1の内面の内接円C
1INよりも小さい曲率となるように設計されており、つまり半径cは半径D(
図2B参照)未満の長さである。要するに曲線形状部51cは、収納部C
1の内面に遠心力により押し付けられた際に、なるべく広い面積の接触面FSで接触するように、その曲率を設定することが好ましく、曲線形状部51cの曲率が内接円C
1INの曲率よりも大きいと、接触面が浮いて、接触点だけに応力が集中することになるので、好ましくない。
【0037】
また、曲線形状部51cの中心点P2は、半楕円形状部51aの中心点P1よりも(コイルに巻かれたときの)内径側に位置しており、半径cは、上記基本形状の半径b(
図10B参照)よりも大きい。即ち、半楕円形状部51aの内径側端(内径側の頂点)51gと、曲線形状部51cの外径側端(外径側の頂点、外接円51outの外径側端)51hとの長さlは、基本形状における長径a及び半径bを加算した長さよりも長くされている。また、外接円51outの半径c、つまり曲線形状部51cの半径cが半楕円形状部51aの長径aよりも大きいので、曲線形状部51c(外接円51out)の曲率は、半楕円形状部51aの曲率よりも大きくなっている。
【0038】
このように、曲線形状部51cの半径cを上記基本形状の半径b(
図10B参照)よりも大きくし、かつ素線51の断面積を大きくするため、2つの直線状の直線部51bは、半楕円形状部51aの両端、即ち半楕円形状部51aの中心点P1と内外径方向と直交する方向における2つの端部と、円弧部51dを介して曲線形状部51cの両端とをそれぞれ繋いでいる。この直線部51bは、内外径方向に延びており、詳細には、直線部51bの半楕円形状部51a側の部分は、中心点P1,P2を結ぶ素線51の断面形状の中心線に対して平行に形成されている。また、直線部51bの曲線形状部51c側の部分は、曲線状に丸めて曲線形状部51cに滑らかに連続的になるように円弧部51dによって繋げられており、つまり角部を角Rとして応力集中が発生しないような形状となっている。この円弧部51dの曲率は、曲線形状部51c(外接円51out)の曲率よりも大きい(半径が小さい)。なお、直線部51bは、本実施の形態では、内外径方向に対して平行に配置されているものを説明しているが、内外径方向に対して傾斜するように配置されていてもよい。
【0039】
ここで、
図5に沿って、半楕円形状部51a、直線部51b、曲線形状部51c、円弧部51dの位置関係を角度に基づき説明する。
図5に示す中心P3は、半楕円形状部51aの内径側端(内径側の頂点)51gと、曲線形状部51cの外径側端(外径側の頂点、外接円51outの外径側端)51hとの長さlの直線状の真ん中であり、勿論であるが、短径bの方向における素線51の幅方向の真ん中で、言い換えると、素線51に外接する外接矩形の中心である。
【0040】
このように中心P3を素線51の断面形状の中心とし、内径側端51gを0度としたとき、半楕円形状部51aは、0度から90度まで及び270度から360度までの領域内に配置されており、本実施の形態では、約0度から75度まで及び約285度から360度までの領域に位置する。
【0041】
また、中心P3を素線51の断面形状の中心とし、内径側端51gを0度としたとき、直線部51bは、本実施の形態では、約75度から135度まで及び約225度から285度までの領域に位置する。なお、直線部51bの長さは、詳しくは後述するオーバル比の設定に基づき変更できる部分であるので、これらの角度に限定されるものではない。
【0042】
また、中心P3を素線51の断面形状の中心とし、内径側端51gを0度としたとき、曲線形状部51cは、少なくとも170度から190度までの領域に跨って存在するような長さを有しており、本実施の形態では、約145度から215度までの領域に位置する。なお、曲線形状部51cが位置する角度は、上述したように直線部51bの長さを変更した際に、変わることになるが、少なくとも170度から190度までの領域に跨って存在することで、例えば素線51が傾いても(倒れても)10度未満の傾きであれば、接触面積の減少が大きくなることを防止できることになる。素線51の傾き(倒れ)については、詳しくは後述する。
【0043】
そして、中心P3を素線51の断面形状の中心とし、内径側端51gを0度としたとき、円弧部51dは、上記直線部51bの長さにもよるが、120度から170度まで及び190度から240度までの領域内に配置されることが好ましい。円弧部51dは、本実施の形態では、約135度から145度まで及び約215度から225度までの領域に位置している。
【0044】
ついで、以上説明した素線51の断面形状における角度と最大せん断応力とのシミュレーション結果を
図6に沿って説明する。コイルスプリングは全体がアーク状に形成されており、荷重をかけて縮めると、内径側(0度〜100度)に約90%のせん断応力が集中し、特に内径側端(0度)には最も大きなせん断応力が生じることになる。しかしながら、
図6に示すように、本実施の形態に係るコイルスプリング50に荷重をかけて縮めた際、半楕円形状部51aの部分に相当する0度から90度では、特に内径側端(0度)に最大せん断応力が集中することなく、内径側部分における0度から90度までにおいてせん断応力が分散されて平均化されていることが分かる。
【0045】
また、直線部51bが位置する75度から135度までと、円弧部51dが位置する135度から145度までとは、最大せん断応力が内径側部分よりも下降しており、外径側部分の曲線形状部51cが位置する145度から180度までは最大せん断応力が円弧部51dよりも上昇するが、内径側部分よりも小さいことが分かる。
【0046】
このように本実施の形態におけるコイルスプリング50では、最大せん断応力が分散されて特定の部分に集中することがなく、耐久性が向上することが分かる。
【0047】
次に、コイルの有効巻数について説明する。素線51の断面形状は、以上説明したように曲線形状部51cの円弧を大きくし、中心線と平行な直線部51bにより半楕円形状部51aと繋ぐことで、断面積を大きくすることができる。ここで、コイルスプリング50が設計上の付勢力となるためには、断面二次モーメントとコイルの有効巻数との関係を適宜に設定する必要がある。
【0048】
ここで、例えば素線の断面形状が、直交する辺の長さh及び長さbの四角形とした場合の有効巻数の計算は、以下のようになる。即ち、断面二次モーメントIzは、
【数5】
であり、b=h=dで近似すると、
【数6】
であり、
【数7】
である。
そして、上記有効巻数の数式(3)に上記数式(7)を代入すると、
【数8】
となり、断面形状が半径dの円形である場合の数式(4)と、断面形状が一辺の長さdの四角形である場合に数式(8)とを比較すると、その比が8/πと3/2とであり、四角形の方が大きいことが分かる。
【0049】
即ち、素線の断面積が大きくなると、有効巻数Naを大きくする必要があり、つまり素線の断面積が大きくなるとスプリングが固くなるので、巻数を増やして設計上の付勢力を設定する必要があることが分かる。
【0050】
ここで、
図7に沿ってオーバル比とばね定数比との関係について、有限要素法を用いたシミュレーション結果を説明する。ここで言うオーバル比とは、素線51の断面形状における、内外径方向の長さと幅方向の長さ(短径bの方向の最大長さ)との比であり、具体的には内径側端51gと外径側端51hとの長さlを、短径bの2倍の長さで除算した値のことである。また、ばね定数比は、素線の断面形状が楕円形状でオーバル比が1.25であるもののばね定数を100%とし、それを基準に計算してものである。
【0051】
図7に示すように、素線の断面形状が楕円形状である場合であっても、オーバル比が約1.38となるよう、つまり内外径方向に延ばすと、低剛性化が図れることが分かる。そして、素線の断面形状が楕円形状である場合よりも、本実施の形態にかかる素線51の断面形状では、さらに低剛性化が図れていることが分かる。
【0052】
本素線51の断面形状にあって、直線部51bを延ばし、オーバル比を設定する場合、オーバル比が1.35から1.45までの間であるとばね定数比が約90%であって、低剛性化が達成できる。ここでオーバル比を大きくすることは、素線の断面形状が内外径に向けて長くなるということであるが、素線を巻いてコイルを製造する際に、内外径に細長くなると倒れ(傾き)易くなるという問題がある。そのため、製造時のことを考慮すると、オーバル比が1.38から1.40までの間であるものが好ましいと分かる。
【0053】
このようにオーバル比を(例えば1.25から1.40のように)上げることは、つまり断面積が大きくなることである。断面積が大きくなると、各部に発生するせん断応力が小さくなるので、線径(素線の径)を細くすることができ、巻数を増やすことができるようになるので、低剛性化が図れるものである。
【0054】
以上のような巻数の演算手法やオーバル比について考慮すると、
図3に示すように、アーク状のコイルスプリング50をストレート状に置き換えた場合の長さL
1を有するストレート状のコイルスプリング50Bにおいては、一端50aから他端50bまでの巻数を上述した基本形状のコイルスプリング250における巻き数N
2よりも多いN
1として設計することになる。なお、上述した基本形状のコイルスプリング250と同様に、アーク状のコイルスプリング50は、ストレート状のコイルスプリング50Bをアーク状に曲げて形成することが主流であるが、これに限らず、アーク状のコイルスプリング50を、素線51のコイル状に巻くのと同時に形成するようにしてもよく、要するにアーク状の形成手法はどのようなものであってもよい。従って、ストレート状のコイルスプリング50Bは、単にストレート状のコイルスプリング50Bとしての一例でもあるが、アーク状のコイルスプリング50をアーク状に曲げる前の形状であるとも言える。
【0055】
以上説明したように第1の実施の形態に係るコイルスプリング50によると、外径側部分が、短径bよりも長い半径cを有する外接円に外接する曲線形状の曲線形状部51c、曲率の大きい円弧形状の円弧部51d、直線形状の直線部51bを含むので、例えば外径側部分が短径bを半径とした半円形状である基本形状のものに比して、素線51の断面積を大きくすることができる。また、内径側部分が半楕円形状の半楕円形状部51aで、外径側部分の直線部51bに繋がるので、曲率変化が小さく、せん断応力が集中し難くすることができる。このように、断面積が大きく、曲率変化が小さくなるので、せん断応力を分散でき、コイルスプリング50の耐久性を向上することができる。
【0056】
また、素線51の断面形状に、内外径方向に延び、内径側部分の半楕円形状部51aと外径側部分の円弧部51dとをそれぞれ繋ぐ直線状の直線部51bを含むので、コイルスプリング50が縮んで素線51同士が接触した際に生じる応力を分散することができる。
【0057】
さらに、曲線形状部51cには、直線部51b繋がり、外接円51outの曲率よりも小さい曲率である円弧部51dを含むので、直線部51bと曲線形状部51cとを滑らかに繋いで、応力が集中してしまうことを防止することができる。
【0058】
また、外接円51outの中心点P2は、半楕円形状部51aの中心点P1よりもコイル形状に巻かれた際の内径側に位置するので、曲線形状部51cの外接円51outの曲率を大きくすることができ、カバープレート27に接触する際の遠心力により生じる応力を分散することができる。
【0059】
また、曲線形状部51cは、内径側端51gと外径側端51hとを結ぶ直線上の真ん中を素線51の中心P3として、素線51の内径側端51gを0度としたときに、170度から190度までの領域に存在するので、例えば素線が10度未満で傾いたとしても、カバープレート27と素線51との接触面積の減少が大きくなることを防止することができる。
【0060】
さらに、半楕円形状部51aは、内径側端51gと外径側端51hとを結ぶ直線上の真ん中を素線51の中心P3として、素線51の内径側端51gを0度としたときに、0度から90度まで及び270度から360度までの領域内に配置されるので、内径側部分に生じるせん断応力を分散させることができ、コイルスプリングの耐久性を向上することができる。
【0061】
さらに、円弧部51dは、内径側端51gと外径側端51hとを結ぶ直線上の真ん中を素線51の中心P3として、素線51の内径側端51gを0度としたときに、120度から170度まで及び190度から240度までの領域内に配置されることが好ましい。
【0062】
また、内径側端51gと外径側端51hとの長さlと、短径bの方向における最大の長さと、の比が1.35から1.45までの間であるので、素線51の断面積を大きくするものでありながら、線径を細くすることができ、有効巻数を増やすことができて、コイルスプリング50の低剛性化を図ることができる。
【0063】
また好ましくは、内径側端51gと外径側端51hとの長さlと、短径bの方向における最大の長さと、の比が1.38から1.40までの間であると、製造時に生じる素線51の倒れの防止を図ることができる。
【0064】
また、内径側部分の内径側端51gと外径側部分に外接する外接円51outの外径側端51hとの長さlが、長径aと短径bとを加算した長さよりも長いので、つまり基本形状の素線251の断面積よりも、本コイルスプリング50の素線51の断面積を大きくすることができ、応力集中を分散することが可能となって、コイルスプリング50の耐久性を向上することができる。
【0065】
そして、外径側部分における外接円51outに外接する曲線形状において、外接円51outの曲率が、カバープレート27の内接円C
1INの曲率よりも小さくなるように構成されているので、外径側部分が半円形状であるものに比して、カバープレート27と素線51との接触面積を大きくすることができ、さらに、外径側部分に直線部分を有するものに比して、素線51がカバープレート27に対して傾いても接触面積の減少が大きくなることを防止できる。このため、総じて遠心力により生じる応力の分散が図られて、コイルスプリングの耐久性を向上することができる。
【0066】
<第2の実施の形態>
ついで、上記第1の実施の形態を一部変更した第2の実施の形態について、
図8に沿って説明する。なお、本第2の実施の形態の説明では、第1の実施の形態と同様な部分について、同符号を用いて説明し、その説明を省略する。
【0067】
本第2の実施の形態は、第1の実施の形態に比して、コイルスプリング50の素線の断面形状を変更したものである。詳細には、
図8に示すように、素線151の断面形状は、同様に、半楕円形状部151a、直線部151b、円弧部151d、曲線形状部151cとから形成されている。このうちの半楕円形状部151a、直線部151b、及び円弧部151dの形状は、第1の実施の形態と同様である。
【0068】
本第2の実施の形態における曲線形状部151cは、中心点P1に対して内外径方向に延びる中心線上に配置された中心点P2から半径cとなる外接円151outに2箇所で外接する形状であり、言い換えると、第1の実施の形態の曲線形状部51cに比して、中心線上を通る部分が凹状に凹んでいる形状からなる。曲線形状部151cに外接する外接円151outは、第1の実施の形態と同様に、収納部C
1の内面の内接円C
1INと同じ曲率かそれ以下の曲率となるように設計されており、つまり半径cは半径D(
図2B参照)以下の長さである。曲線形状部151cは、収納部C
1の内面に遠心力により押し付けられた際に、2箇所の接触面FS1,FS2で接触するように形成されており、例えば第1の実施の形態のような円弧状の曲線形状部51cで半径cが半径Dよりもかなり小さい場合には、1点で収納部C
1の内面に接触し、かつ曲率の違いから接触面積が小さくなってしまうが、本第2の実施の形態では、2箇所の接触面FS1,FS2で接触するため、その分、遠心力により発生する応力を分散することができる。
【0069】
本第2の実施の形態における素線151にあっても、曲線形状部151cの中心点P2は、半楕円形状部151aの中心点P1よりも(コイルに巻かれたときの)内径側に位置しており、半径cは、上記基本形状の半径b(
図10B参照)よりも大きい。即ち、半楕円形状部151aの内径側端(内径側の頂点)151gと、外接円151outの外径側端(外径側の頂点)151hとの長さlは、基本形状における長径a及び半径bを加算した長さよりも長くされている。従って、基本形状の素線251の断面積よりも、素線151の断面積の方が大きくなっている。
【0070】
なお、これ以外の構成、作用、及び効果は、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
【0071】
(本実施の形態のまとめ)
以上説明したように、コイルスプリング(50)は、素線(51,151)がコイル形状に巻かれることで形成されたコイルスプリング(50)において、
前記コイル形状に巻かれた際の内径側部分の素線(51)の断面形状は、長径(a)及び短径(b)を有し前記長径(a)が内外径方向に向けられた実質的に半楕円形状(51a,151a)を含み、
前記コイル形状に巻かれた際の外径側部分の素線(51)の断面形状は、前記短径(b)よりも長い半径(c)を有する円を外接円として、それに外接する曲線形状と、前記外接円の曲率より大きい曲率の円弧形状と、前記円弧形状と前記半楕円形状とをそれぞれ繋ぐ直線形状と、を含む。
【0072】
これにより、外径側部分が、短径(b)よりも長い半径(c)を有する外接円(51out,151out)に外接する曲線形状(51c)、曲率の大きい円弧形状(51d)、直線形状(51b)を含むので、例えば外径側部分が短径(b)を半径とした半円形状であるものに比して、素線(51)の断面積を大きくすることができる。また、内径側部分が半楕円形状(51a)で、外径側部分の直線形状(51b)に繋がるので、曲率変化が小さく、せん断応力が集中し難くすることができる。このように、断面積が大きく、曲率変化が小さくなるので、せん断応力を分散でき、コイルスプリング(50)の耐久性を向上することができる。
【0073】
また、本コイルスプリング(50)において、前記外接円(51out,151out)の中心点(P2)は、前記半楕円形状(51a,151a)の中心点(P1)よりも前記コイル形状に巻かれた際の内径側に位置する。
【0074】
これにより、曲線形状(51c,151c)の外接円(51out,151out)の曲率を大きくすることができ、カバー(27)に接触する際の遠心力により生じる応力を分散することができる。
【0075】
また、本コイルスプリング(50)において、前記曲線形状(51c、151c)は、前記内径側部分の内径側端(51g,151g)と前記外径側部分に外接する外接円(51out,151out)の外径側端(51h,151h)とを結ぶ直線上の真ん中を前記断面形状の中心(P3)として、前記断面形状の内径側端(51g,151g)を0度としたときに、170度から190度までの領域に存在する。
【0076】
これにより、例えば素線が10度未満で傾いたとしても、カバーと素線との接触面積の減少が大きくなることを防止することができる。
【0077】
さらに、本コイルスプリング(50)において、前記半楕円形状(51a,151a)は、前記内径側部分の内径側端(51g,151g)と前記外径側部分に外接する外接円の外径側端(51h,151h)とを結ぶ直線上の真ん中を前記断面形状の中心(P3)として、前記断面形状の内径側端(51g,151g)を0度としたときに、0度から90度まで及び270度から360度までの領域内に配置される。
【0078】
これにより、内径側部分に生じるせん断応力を分散させることができ、コイルスプリングの耐久性を向上することができる。
【0079】
さらに、本コイルスプリング(50)において、前記円弧部(51d,151d)は、前記内径側部分の内径側端(51g,151g)と前記外径側部分に外接する外接円の外径側端(51h,151h)とを結ぶ直線上の真ん中を前記断面形状の中心(P3)として、前記断面形状の内径側端(51g,151g)を0度としたときに、120度から170度まで及び190度から240度までの領域内に配置される。
【0080】
また、本コイルスプリング(50)において、前記内径側部分の内径側端(51g,151g)と前記外径側部分に外接する外接円の外径側端(51h,151h)との長さと、前記短径(b)の方向における最大の長さと、の比が1.35から1.45までの間である。
【0081】
これにより、素線(51,151)の断面積を大きくするものでありながら、線径を細くすることができ、有効巻数を増やすことができて、コイルスプリング(50)の低剛性化を図ることができる。
【0082】
また好ましくは、本コイルスプリング(50)において、前記内径側部分の内径側端(51g,151g)と前記外径側部分に外接する外接円の外径側端(51h,151h)との長さと、前記短径(b)の方向における最大の長さと、の比が1.38から1.40までの間である。
【0083】
これにより、製造時に生じる素線(51,151)の倒れの防止を図ることができる。
【0084】
さらに、本コイルスプリング(50)において、前記内径側部分の内径側端(51g,151g)と前記外径側部分に外接する外接円(51out,151out)の外径側端(51h,151h)との長さ(l)は、前記長径(a)と前記短径(b)とを加算した長さよりも長い。
【0085】
これにより、つまり基本形状の素線の断面積よりも、本コイルスプリング(50)の素線(51,151)の断面積を大きくすることができ、応力集中を分散することが可能となって、コイルスプリング(50)の耐久性を向上することができる。
【0086】
また、本コイルスプリング(50)において、前記半楕円形状は、前記長径をa、前記短径をbとしたときに、(x/a)
α+(y/b)
α=1で表わされる。
【0087】
また、本コイルスプリング(50)は、2つの回転体(25,26)の間に介在するように回転方向に向けて配置され、かつ少なくとも一方の回転体(25)に設けられたカバー(27)により遠心力による移動が規制されるように配置され、
前記外接円(51out,151out)の曲率が、前記カバー(27)の前記回転方向の内接円(C
1IN)の曲率よりも小さい。
【0088】
これにより、外径側部分が半円形状であるものに比して、カバー(27)と素線(51)との接触面積を大きくすることができ、さらに、外径側部分に直線部分を有するものに比して、素線(51)がカバー(27)に対して傾いても接触面積の減少が大きくなることを防止できる。このため、総じて遠心力により生じる応力の分散が図られて、コイルスプリングの耐久性を向上することができる。
【0089】
(他の実施の形態の可能性)
なお、以上説明した第1及び第2の実施の形態にあっては、素線51,151の断面形状において、中心線と平行に延びる直線部51b,151bを設けたものを説明したが、直線部51b,151bを無くして半楕円形状部51a,151aと曲線形状部51c,151cとを直接的に繋ぐような形状であってもよく、さらには、直線部51b,151bを円弧状やその他の曲線状で形成してもよい。つまり素線51,151がコイル状に巻けるように内外径の長さが設定され、かつ断面積が基本形状よりも大きくなり、かつカバーに接触する曲線形状部51c,151cの外接円51out,151outの曲率が大きくなるような断面形状であればよい。
【0090】
また、本実施の形態においては、自動変速機のトルクコンバータに配置されるダンパ装置に本コイルスプリングを提供したものを説明したが、勿論、これに限るものではなく、変速機のクラッチに用いられるリターンスプリング、エンジンの弁バネ、サスペンション、バルブスプリングなどのコイルスプリングであれば、どのようなものに適用しても構わない。