(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202210
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】組電池およびタブ接合方法
(51)【国際特許分類】
H01M 2/30 20060101AFI20170925BHJP
H01M 2/20 20060101ALI20170925BHJP
H01M 2/10 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
H01M2/30 C
H01M2/20 A
H01M2/10 M
H01M2/10 Y
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-539733(P2016-539733)
(86)(22)【出願日】2014年8月6日
(86)【国際出願番号】JP2014070716
(87)【国際公開番号】WO2016020999
(87)【国際公開日】20160211
【審査請求日】2016年9月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】中井 昌之
【審査官】
井原 純
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−79481(JP,A)
【文献】
特開2004−14317(JP,A)
【文献】
特開2011−192628(JP,A)
【文献】
特開2004−87337(JP,A)
【文献】
特開2004−63347(JP,A)
【文献】
特開2007−229788(JP,A)
【文献】
特開2006−172870(JP,A)
【文献】
特開2008−293662(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/009042(WO,A2)
【文献】
特開2010−219268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/30
H01M 2/10
H01M 2/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タブが偏平面と平行に導出された偏平な単電池を用い、この偏平な単電池を複数積層してなる組電池において、
各タブが、同じ長さの直線部と、各直線部の延長線との間の角度が90度未満となるように各直線部の先端から同じ方向かつ同じ角度に折り曲げられた折り曲げ部と、を有し、
積層方向に隣接した複数のタブの折り曲げ部同士が、重ね合わされて互いに接合されてなる組電池。
【請求項2】
積層方向に隣接した複数のタブの上記折り曲げ部同士の接合が並列接続を構成する請求項1に記載の組電池。
【請求項3】
各々複数の偏平な単電池を積層した第1の単電池群と第2の単電池群とが、各々の折り曲げ部が互いに対向する方向となるように対向して配置され、
第1の単電池群のタブが、正極および負極の一方で並列接続され、
第2の単電池群のタブが、負極および正極の他方で並列接続され、
第1の単電池群の1つの単電池のタブの折り曲げ部の先端から折り曲げられたフランジ部と、第2の単電池群の1つの単電池のタブの折り曲げ部の先端から折り曲げられたフランジ部とが、重ね合わされて互いに接合されることにより直列接続を構成する請求項1に記載の組電池。
【請求項4】
上記複数の偏平な単電池のタブが同じ形状を備える請求項1または2に記載の組電池。
【請求項5】
タブが偏平面と平行に導出された偏平な単電池を用い、この偏平な単電池を複数積層してなる組電池において、積層方向に隣接したタブ同士を接合する方法であって、
各タブの直線部が同じ長さを有するようにして、直線部の延長線との間の角度が90度未満となる角度で直線部の先端から各タブを同じ方向かつ同じ角度に折り曲げて折り曲げ部を形成する工程と、
積層方向に隣接したタブの折り曲げ部同士を重ね合わせる工程と、
これらの重ね合わされた折り曲げ部同士を接合する工程と、
を含むタブ接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層方向のタブ同士を重ね合わせて接合してなる組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
1回または複数回電極端子を折り曲げるようにした複数の偏平な単電池を積層した組電池として特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載された組電池では、積層方向に隣接した偏平な単電池の折り曲げられた電極端子同士が、突き合わせ接続、重ね接続またはフランジ状の突き合わせ接続によって互いに接続されている。
【0003】
電極端子同士の接触面積を大きくしつつ堅固に接合するためには、例えばレーザ溶接を用いて重ね接続で電極端子同士を接合することが望ましい。
【0004】
しかし、積層方向に隣接した複数の偏平な単電池において、単電池の偏平面と平行に導出した電極端子を電極端子の導出方向の同じ位置でそれぞれ直角に折り曲げて折り曲げ部を形成し、これらの折り曲げ部同士を重ね合わせて互いに接合しようとすると、折り曲げ部同士の干渉を避けるために、1つの単電池を隣接した単電池に対し電極端子の厚み分だけずらして配置する必要がある。従って、各々の単電池を全く同一の位置で積層するためには、1つの単電池の電極端子の直線部を隣接した単電池の電極端子の直線部よりも電極端子の厚み分だけ短くなるように加工する必要が生じ、付加的な加工手段や工程の増加が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2012−525665号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明は、タブが偏平面と平行に導出された偏平な単電池を用い、この偏平な単電池を複数積層してなる組電池において、各タブが、同じ長さの直線部と、各直線部の延長線との間の角度が90度未満となるように各直線部の先端から折り曲げられた折り曲げ部と、を有し、積層方向に隣接した複数のタブの折り曲げ部同士が、重ね合わされて互いに接合される組電池を提供するものである。
【0007】
本発明によれば、積層方向に同じ長さのタブの直線部を有するように偏平な単電池を複数積層してなる組電池において、タブの折り曲げ部が傾斜した状態のまま順次重ね合わされるので、積層方向に隣接した単電池をタブの厚み分だけずらさずに配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】単電池の一例としてラミネート型のリチウムイオン二次電池の概略構造を示す斜視図である。
【
図2】本発明に係る組電池の第1の実施例を示す斜視図である。
【
図3】
図2の組電池の4つの単電池における一方のタブの列の接続状態を模式的に示した図である。
【
図4】本発明に係る組電池の第2の実施例を示す図である。
【
図5】
図4の並列接続を2つ組み合わせてなる組電池を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に基づいて、本発明の組電池に用いられるフィルム外装電池の一例を説明する。
図1は、フィルム外装電池の一例としてリチウムイオン二次電池1の概略構造を示しており、この二次電池1(以下、単に「単電池」という。)は、例えば、電気自動車のリチウムイオンバッテリパックを構成する単電池として用いられる。
【0010】
図1に示すように、単電池1は、正極側の電極端子としての正極タブ2と負極側の電極端子としての負極タブ3とが外部に導出された状態で上下二枚のラミネートフィルム4a,4bからなる矩形状のラミネートフィルム外装体4にて収納密閉されている。ラミネートフィルム外装体4の内部には、電極としての正極ならびに負極とこれら両者の間に介在するセパレータとを複数積層してなる電池要素(発電要素)である積層体が電解液とともに収容されていて、ラミネートフィルム外装体4の四周が熱溶着により気密に封止されている。ここで、タブ2,3は、単電池1の本体部の偏平面5と平行に延びている。このように構成された偏平な単電池1は、複数積層した上でそれぞれのタブ2,3を接合することで組電池を構成する。
【0011】
図2は、本発明に係る組電池の第1の実施例を示す図である。ここで、複数積層された単電池1を上から順に第1の単電池1A、第2の単電池1B、第3の単電池1C・・・とする。まず、
図1に示した単電池1のタブ2,3の配置で、第1の単電池1Aの負極タブ3と第2の単電池1Bの負極タブ3とが積層方向に隣接し、さらに、第1の単電池1Aの正極タブ2と第2の単電池1Bの正極タブ2とが積層方向に隣接するようにして第2の単電池1Bを第1の単電池1Aに隣接させて積層してある。次に、
図1に示した単電池1を反転させてタブ2,3の配置を互いに入れ替えた状態として、第3の単電池1Cの正極タブ2と第4の単電池1Dの正極タブ2とが積層方向に隣接し、さらに、第3の単電池1Cの負極タブ3と第4の単電池1Dの負極タブ3とが積層方向に隣接するようにして第4の単電池1Dを第3の単電池1Cに隣接させて積層してある。そして、第5の単電池1Eおよび第6の単電池1Fを第1の単電池1Aおよび第2の単電池1Bと同様に積層し、さらに、第7の単電池1Gおよび第8の単電池1Hを第3の単電池1Cおよび第4の単電池1Dと同様に積層してある。このとき、例えば
図2の手前側のタブの列において、負極タブ3,負極タブ3,正極タブ2,正極タブ2,負極タブ3,負極タブ3,正極タブ2,正極タブ2の順序で2つずつ交互に入れ替わるようにタブが積層方向に整列している。さらに、積層方向に隣接する2つの負極タブ3,3同士および2つの正極タブ2,2同士が互いに接続され、この接続された負極タブ3,3と正極タブ2,2とが、フランジ部3cおよびフランジ部2cにおいて互いに接合されている。このようにして、負極タブ3,3の並列接続と正極タブ2,2の並列接続とを直列に組み合わせてなる組電池6Aが構成される。
【0012】
図3は、
図2の組電池6Aの4つの単電池1A〜1Dにおける一方のタブの列の接続状態を模式的に示した図である。第1の単電池1Aの負極タブ3は、偏平面5と平行に延びる帯状の直線部3aを備えており、直線部3aの先端から、折り曲げ部3bが、折り曲げ角度αで下方へと折り曲げられている。ここで、折り曲げ角度αは、直線部3aの延長線7と折り曲げ部3bとがなす角度であり、90度未満の角度とされている。折り曲げ角度αは、例えば89度であり、この角度は、重ね合わされたタブの厚み等によって一義的に決定されるものである。また、フランジ部3cが、折り曲げ部3bの先端から折り曲げられており、偏平面5と平行に延びている。
【0013】
また、第2の単電池1Bの負極タブ3は、第1の単電池1Aの直線部3aと長さが等しく、かつ偏平面5と平行に延びる帯状の直線部3aを備えている。この直線部3aの先端から、折り曲げ部3bが、第1の単電池1Aの折り曲げ部3bと同様に90度未満の折り曲げ角度αで下方へと折り曲げられており、第1の単電池1Aの折り曲げ部3bと重ね合わされている。そして、レーザ溶接機(図示せず)が、重ね合わされた折り曲げ部3b,3bの双方と直交するようにして第1の単電池1Aの折り曲げ部3b側から矢印L1で示すようにレーザを照射する。つまり、レーザL1は、第2の単電池1Bの偏平面5に対し傾斜している。そして、折り曲げ部3b,3bが接合されて、第1の単電池1Aの負極タブ3と第2の単電池1Bの負極タブ3とが並列接続される。
【0014】
このように、90度未満の折り曲げ角度αで第1の単電池1Aおよび第2の単電池1Bの折り曲げ部3b,3bを傾斜させることで、第1の単電池1Aに対し第2の単電池1Bをタブの厚み分だけずらすことなく、第1の単電池1Aおよび第2の単電池1Bの折り曲げ部3b,3b同士を重ね合わせて接合することができる。つまり、仮に第1の単電池1Aおよび第2の単電池1Bの直線部3a,3aを互いに同じ長さとして、直線部3a,3aに対し折り曲げ部3b,3bを垂直に配置すると、折り曲げ部3b,3b同士が垂直方向に互いに干渉するので第1の単電池1Aに対し第2の単電池1Bを第2の単電池1Bのタブの厚み分だけ第2の単電池1Bの本体部側へとずらすことが必要となる。しかし、90度未満の折り曲げ角度αで折り曲げ部3b,3bの双方を傾斜させることで、折り曲げ部3b,3b同士の垂直方向の干渉を避けながら第1の単電池1Aおよび第2の単電池1Bの折り曲げ部3b,3b同士を重ね合わせて接合することができる。
【0015】
また、同じ折り曲げ角度αで折り曲げ部3b,3bを傾斜させているので、この折り曲げ角度αで折り曲げるための単一の折り曲げ機を用意する必要があるだけで、異なる複数の角度で折り曲げるために複数の個別の折り曲げ機を用意する必要がない。
【0016】
さらに、折り曲げ角度αで傾斜した折り曲げ部3b,3bに対し略直交するようにレーザL1を照射することで、第2の単電池1Bの本体部にレーザL1が当たらないようし、第2の単電池1Bの本体部の損傷を防止することができる。
【0017】
また、第3の単電池1Cおよび第4の単電池1Dの正極タブ2,2は、第1の単電池1Aおよび第2の単電池1Bの負極タブ3,3の帯状の直線部3a,3aと同じ長さを有し、かつ偏平面5,5と平行に延びる帯状の直線部2a,2aを備えており、これらの直線部2a,2aから、折り曲げ部2b,2bが、第1の単電池1Aおよび第2の単電池1Bの負極タブ3,3の折り曲げ部3b,3bと対向するようにして90度未満の折り曲げ角度αで上方へと折り曲げられている。そして、第3の単電池1Cの正極タブ2の折り曲げ部2bと第4の単電池1Dの正極タブ2の折り曲げ部2bとが重ね合わされてレーザ溶接により接合されて、これにより、第3の単電池1Cの正極タブ2と第4の単電池1Dの正極タブ2とが並列接続される。また、フランジ部2cが、第4の単電池1Dの正極タブ2の折り曲げ部2bの先端から折り曲げられており、偏平面5と平行に延びている。
【0018】
そして、第1の単電池1Aのフランジ部3cと第4の単電池1Dのフランジ部2cとが重ね合わされてレーザ溶接により互いに接合されている。なお、この接合は、超音波接合によって行われてもよい。これにより、第1の単電池1Aおよび第2の単電池1Bの負極タブ3,3の並列接続と、第3の単電池1Cおよび第4の単電池1Dの正極タブ2,2の並列接続とが直列に組み合わされてなる組電池6Aが構成される。
【0019】
図4は、本発明に係る組電池の第2の実施例を示す図であり、同じ形状のタブを有した3つの単電池1,1,1におけるタブの一方の列の接続状態を模式的に示した図である。積層された3つの単電池1,1,1の負極タブ3,3,3は、同じ長さを有した直線部3aをそれぞれ備えており、各直線部3aの先端から、各折り曲げ部3bが、
図3の第1の単電池1Aおよび第2の単電池1Bと同様に、90度未満の折り曲げ角度αで下方へと折り曲げられている。このとき、1番目の単電池1の折り曲げ部3bの先端が、2番目の単電池1の折り曲げ部3bの直線部3aに近い部分と重ね合わされており、さらに、2番目の単電池1の折り曲げ部3bの先端が、3番目の単電池1の折り曲げ部3bの直線部3aに近い部分と重ね合わされている。そして、重ね合わされた折り曲げ部3b,3b同士のそれぞれをレーザ溶接により接合することで、3つの単電池1,1,1の負極タブ3,3,3もしくは正極タブ2,2,2が並列接続される。
図4には、3つの単電池を積層して並列接続する例を示したが、90度未満の折り曲げ角度αで傾斜した折り曲げ部を有した同じ形状のタブ2,3を順次重ね合わせることで、4つ以上の単電池を積層して並列接続することができる。
【0020】
図5は、
図4の3つの単電池1,1,1のタブの並列接続を2つ組み合わせてなる組電池6Bを示す図である。
図5の上半部に示す第1の単電池群11は、積層された3つの単電池1,1,1からなる。これらの負極タブ3,3,3は、同じ長さを有した直線部3aをそれぞれ備えており、各直線部3aの先端から、各折り曲げ部3bが、
図4に示した単電池1,1,1の負極タブ3,3,3の折り曲げ部3b,3b,3bと同様に、90度未満の折り曲げ角度αで下方へと折り曲げられており、積層方向に隣接した単電池1の負極タブ3の折り曲げ部3bに重ね合わされている。そして、重ね合わされた折り曲げ部3b,3b同士のそれぞれをレーザ溶接により接合することで、第1の単電池群11の負極タブ3,3,3が並列接続される。また、フランジ部3cが、3番目の単電池1の負極タブ3の折り曲げ部3bの先端から折り曲げられており、偏平面5と平行に延びている。
【0021】
一方、
図5の下半部に示す第2の単電池群12は、同様に、積層された3つの単電池1,1,1からなる。これらの正極タブ2,2,2が、第1の単電池群11の負極タブ3,3,3の帯状の直線部3a,3a,3aと同じ長さを有した帯状の直線部2aをそれぞれ備えており、各直線部2aから、折り曲げ部2bが、上半部の第1の単電池群11の負極タブ3,3,3の折り曲げ部3b,3b,3bと対向する方向となるようにして90度未満の折り曲げ角度αで上方へと折り曲げられており、積層方向に隣接した単電池1の正極タブ2の折り曲げ部2bに重ね合わされている。そして、重ね合わされた折り曲げ部2b,2b同士のそれぞれをレーザ溶接により接合することで、第2の単電池群12の正極タブ2,2,2が並列接続される。また、フランジ部2cが、1番目の単電池1の正極タブ2の折り曲げ部2bの先端から折り曲げられており、偏平面5と平行に延びている。
【0022】
つまり、上記のように、第1の単電池群11と第2の単電池群12とは対向して配置されており、そして、第1の単電池群11の3番目の単電池1のフランジ部3cと第2の単電池群12の1番目の単電池1のフランジ部2cとが重ね合わされてレーザ溶接により互いに接合されている。なお、この接合は、超音波接合によって行われてもよい。これにより、第1の単電池群11の負極タブ3,3,3の並列接続と第2の単電池群12の正極タブ2,2,2の並列接続とが直列に組み合わされてなる組電池6Bが構成される。
【0023】
なお、上記各実施例では、偏平な単電池の一辺から2つのタブが導出してなる単電池を複数積層した組電池について説明したが、偏平な単電池の一辺から1つのタブが導出し、かつ上記一辺とは反対側の他辺から1つのタブが導出してなる単電池を複数積層した組電池に本発明を適用してもよい。
【0024】
また、上記各実施例では、単電池として、フィルム外装電池の一例としてリチウムイオン二次電池を例にとり、この二次電池を複数積層してなる組電池について説明したが、本発明の対象となる電池は必ずしもフィルム外装電池に限定されるものではない。