前記1次コイルのセンタータップと前記第3入出力ポートとの間に接続された第5インダクタ、及び、前記2次コイルのセンタータップと前記第4入出力ポートとの間に接続された第6インダクタの少なくとも一方を備える、
請求項1に記載の電力変換装置。
前記第1アームの前記上側スイッチ素子及び前記第2アームの前記下側スイッチ素子と、前記第1アームの前記下側スイッチ素子及び前記第2アームの前記上側スイッチ素子とを交互にオンオフさせる第3スイッチング制御部と、
前記第3アームの前記上側スイッチ素子及び前記第4アームの前記下側スイッチ素子と、前記第3アームの前記下側スイッチ素子及び前記第4アームの前記上側スイッチ素子とを交互にオンオフさせる第4スイッチング制御部と、
前記第1スイッチング制御部及び前記第2スイッチング制御部によるスイッチング制御モードと、前記第3スイッチング制御部及び前記第4スイッチング制御部によるスイッチング制御モードとを交互に切り替える切替部と、
を備える、請求項1から8の何れかに記載の電力変換装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の電力変換回路では、1次側から2次側への電力伝送が不要な場合、1次側及び2次側フルブリッジ回路のスイッチング周期の位相差を0にする必要がある。この場合、1次側から2次側へと伝送される電力は、2次側から1次側へと回生される。そして、この回生時に不要な損失が発生するため、効率のよい電力伝送を行えないといった問題がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、電力伝送時の損失を抑制でき、効率よく電力伝送を行える電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電力変換装置は、第1入出力ポート及び第2入出力ポートと、上側スイッチ素子と下側スイッチ素子とが直列接続された第1アーム及び第2アームを有し、前記第1アーム及び前記第2アームが前記第1入出力ポートに接続された1次側フルブリッジ回路と、上側スイッチ素子と下側スイッチ素子とが直列接続された第3アーム及び第4アームを有し、前記第3アーム及び前記第4アームが前記第2入出力ポートに接続された2次側フルブリッジ回路と、1次コイル及び2次コイルを有する変圧器と、第1端が前記1次コイルの第1端に接続され、第2端が、前記第1アームの前記上側スイッチ素子及び前記下側スイッチ素子の接続点に接続された第1インダクタと、第1端が前記1次コイルの第2端に接続され、第2端が、前記第2アームの前記上側スイッチ素子及び前記下側スイッチ素子の接続点に接続された第2インダクタと、第1端が前記2次コイルの第1端に接続され、第2端が、前記第3アームの前記上側スイッチ素子及び前記下側スイッチ素子の接続点に接続された第3インダクタと、第1端が前記2次コイルの第2端に接続され、第2端が、前記第4アームの前記上側スイッチ素子及び前記下側スイッチ素子の接続点に接続された第4インダクタと、前記1次コイルのセンタータップに接続された第3入出力ポートと、前記2次コイルのセンタータップに接続された第4入出力ポートと、前記第1アーム及び前記第2アームの前記上側スイッチ素子と、前記下側スイッチ素子とを交互にオンオフする第1スイッチング制御部と、前記第3アーム及び前記第4アームの前記上側スイッチ素子と、前記下側スイッチ素子とを交互にオンオフする第2スイッチング制御部とを備え、前記第1アーム及び前記第2アームの前記上側スイッチ素子のターンオン及びターンオフのタイミングが同時であり、かつ前記第1アーム及び前記第2アームの前記下側スイッチ素子のターンオン及びターンオフのタイミングが同時である動作モードと、前記第3アーム及び前記第4アームの前記上側スイッチ素子のターンオン及びターンオフのタイミングが同時であり、かつ前記第3アーム及び前記第4アームの前記下側スイッチ素子のターンオン及びターンオフのタイミングが同時である動作モードとの少なくとも何れか一方を有することを特徴とする。
【0008】
この構成では、各アームの上側スイッチ素子と下側スイッチ素子のターンオン及びターンオフのタイミングが同時であるため、変圧器の1次コイル又は2次コイルの両端の電位差は0である。したがって、変圧器には励磁電流が発生せず、絶縁方向(1次側から2次側へ、又はその逆)の電力伝送は行われない。この結果、非絶縁方向(第1入出力ポート及び第3入出力ポート間)の電力伝送を行う場合、従来のように電力が回生されることで生じる不要な損失を抑えることができ、効率のよい電力伝送を行える。
【0009】
前記1次コイルのセンタータップと前記第3入出力ポートとの間に接続された第5インダクタ、及び、前記2次コイルのセンタータップと前記第4入出力ポートとの間に接続された第6インダクタの少なくとも一方を備えることが好ましい。
【0010】
この構成では、第5インダクタ又は第6インダクタを設け、そのインダクタンスを調整することで、1次側変換回路又は2次側変換回路の電力伝送量の調整を行える。
【0011】
本発明の電力変換装置は、第1入出力ポート及び第2入出力ポートと、上側スイッチ素子と下側スイッチ素子とが直列接続された第1アーム及び第2アームを有し、前記第1アーム及び前記第2アームが前記第1入出力ポートに接続された1次側フルブリッジ回路と、上側スイッチ素子と下側スイッチ素子とが直列接続された第3アーム及び第4アームを有し、前記第3アーム及び前記第4アームが前記第2入出力ポートに接続された2次側フルブリッジ回路と、1次コイル及び2次コイルを有する変圧器と、第1端が、前記第1アームの前記上側スイッチ素子及び前記下側スイッチ素子の接続点に接続され、第2端が前記2次コイルの第1端に接続された第3インダクタと、第1端が、前記第2アームの前記上側スイッチ素子及び前記下側スイッチ素子の接続点に接続され、第2端が前記2次コイルの第2端に接続された第4インダクタと、前記1次コイルのセンタータップに接続された第3入出力ポートと、前記2次コイルのセンタータップに接続された第4入出力ポートと、前記1次コイルのセンタータップと前記第3入出力ポートとの間に接続される第5インダクタと、前記第1アーム及び前記第2アームの前記上側スイッチ素子と、前記下側スイッチ素子とを交互にオンオフする第1スイッチング制御部と、前記第3アーム及び前記第4アームの前記上側スイッチ素子と、前記下側スイッチ素子とを交互にオンオフする第2スイッチング制御部と、を備え、前記第1アーム及び前記第2アームの前記上側スイッチ素子のターンオン及びターンオフのタイミングが同時であり、かつ前記第1アーム及び前記第2アームの前記下側スイッチ素子のターンオン及びターンオフのタイミングが同時である動作モードと、前記第3アーム及び前記第4アームの前記上側スイッチ素子のターンオン及びターンオフのタイミングが同時であり、かつ前記第3アーム及び前記第4アームの前記下側スイッチ素子のターンオン及びターンオフのタイミングが同時である動作モードとの少なくとも何れか一方を有することを特徴とする。
【0012】
この構成では、非絶縁方向(第1入出力ポート及び第3入出力ポート間)の電力伝送を行う場合、従来のように電力が回生されることで生じる不要な損失を抑えることができ、効率のよい電力伝送を行える。
【0013】
前記2次コイルのセンタータップと前記第4入出力ポートとの間に接続された第6インダクタとを備えることが好ましい。
【0014】
この構成では、第6インダクタを設け、そのインダクタンスを調整することで、2次側変換回路の電力伝送量の調整を行える。
【0015】
本発明の電力変換装置は、第1入出力ポート及び第2入出力ポートと、上側スイッチ素子と下側スイッチ素子とが直列接続された第1アーム及び第2アームを有し、前記第1アーム及び前記第2アームが前記第1入出力ポートに接続された1次側フルブリッジ回路と、上側スイッチ素子と下側スイッチ素子とが直列接続された第3アーム及び第4アームを有し、前記第3アーム及び前記第4アームが前記第2入出力ポートに接続された2次側フルブリッジ回路と、1次コイル及び2次コイルを有する変圧器と、第1端が、前記第1アームの前記上側スイッチ素子及び前記下側スイッチ素子の接続点に接続され、第2端が前記1次コイルの第1端に接続された第1インダクタと、第1端が、前記第2アームの前記上側スイッチ素子及び前記下側スイッチ素子の接続点に接続され、第2端が前記1次コイルの第2端に接続された第2インダクタと、前記1次コイルのセンタータップに接続された第3入出力ポートと、前記第1アーム及び前記第2アームの前記上側スイッチ素子と、前記下側スイッチ素子とを交互にオンオフする第1スイッチング制御部と、前記第3アーム及び前記第4アームの前記上側スイッチ素子と、前記下側スイッチ素子とを交互にオンオフする第2スイッチング制御部と、を備え、前記第1アーム及び前記第2アームの前記上側スイッチ素子のターンオン及びターンオフのタイミングが同時であり、かつ前記第1アーム及び前記第2アームの前記下側スイッチ素子のターンオン及びターンオフのタイミングが同時である動作モードを有することを特徴とする。
【0016】
この構成では、非絶縁方向の電力伝送を行う場合、従来のように電力が回生されることで生じる不要な損失を抑えることができ、効率のよい電力伝送を行える。また、部品点数の削減となり、電力伝送装置の小型化が実現できる。
【0017】
第1インダクタ及び第2インダクタ、並びに、第3インダクタ及び第4インダクタの少なくとも一方は、磁気結合することが好ましい。
【0018】
本発明の電力変換装置は、第1入出力ポート及び第2入出力ポートと、上側スイッチ素子と下側スイッチ素子とが直列接続された第1アーム及び第2アームを有し、前記第1アーム及び前記第2アームが前記第1入出力ポートに接続された1次側フルブリッジ回路と、上側スイッチ素子と下側スイッチ素子とが直列接続された第3アーム及び第4アームを有し、前記第3アーム及び前記第4アームが前記第2入出力ポートに接続された2次側フルブリッジ回路と、1次コイル及び2次コイルを有する変圧器と、第1端が、前記第1アームの前記上側スイッチ素子及び前記下側スイッチ素子の接続点に接続され、第2端が前記2次コイルの第1端に接続された第3インダクタと、前記1次コイルのセンタータップに接続された第3入出力ポートと、前記1次コイルのセンタータップと前記第3入出力ポートとの間に接続される第5インダクタと、前記第1アーム及び前記第2アームの前記上側スイッチ素子と、前記下側スイッチ素子とを交互にオンオフする第1スイッチング制御部と、前記第3アーム及び前記第4アームの前記上側スイッチ素子と、前記下側スイッチ素子とを交互にオンオフする第2スイッチング制御部と、を備え、前記第1アーム及び前記第2アームの前記上側スイッチ素子のターンオン及びターンオフのタイミングが同時であり、かつ前記第1アーム及び前記第2アームの前記下側スイッチ素子のターンオン及びターンオフのタイミングが同時である動作モードを有することを特徴とする。
【0019】
この構成では、非絶縁方向の電力伝送を行う場合、従来のように電力が回生されることで生じる不要な損失を抑えることができ、効率のよい電力伝送を行える。また、部品点数の削減となり、電力伝送装置の小型化が実現できる。
【0020】
前記第1アーム、前記第2アーム、前記第3アーム及び前記第4アームの上側スイッチ素子及び下側スイッチ素子は、ボディダイオードを有するMOS−FETであり、前記第1スイッチング制御部は、前記動作モードにおいて、前記第1アーム及び前記第2アームの前記上側スイッチ素子または前記下側スイッチ素子のオンを禁止する第1禁止部を有し、前記第2スイッチング制御部は、前記動作モードにおいて、前記第3アーム及び前記第4アームの前記上側スイッチ素子又は前記下側スイッチ素子のオンを禁止する第2禁止部を有することが好ましい。
【0021】
この構成では、上側スイッチ素子又は下側スイッチ素子をスイッチング制御しないことで、電力損失をさらに低減できる。
【0022】
本発明の電力変換装置は、前記第1アームの前記上側スイッチ素子及び前記第2アームの前記下側スイッチ素子と、前記第1アームの前記下側スイッチ素子及び前記第2アームの前記上側スイッチ素子とを交互にオンオフさせる第3スイッチング制御部と、前記第3アームの前記上側スイッチ素子及び前記第4アームの前記下側スイッチ素子と、前記第3アームの前記下側スイッチ素子及び前記第4アームの前記上側スイッチ素子とを交互にオンオフさせる第4スイッチング制御部と、前記第1スイッチング制御部及び前記第2スイッチング制御部によるスイッチング制御モードと、前記第3スイッチング制御部及び前記第4スイッチング制御部によるスイッチング制御モードとを交互に切り替える切替部とを備えることが好ましい。
【0023】
この構成では、絶縁方向(1次側から2次側、又はその逆)へ電力を伝送するモードと、伝送しないモードとを交互に切り替えることで、絶縁方向の電力伝送を効率よく行える。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、電力伝送時の損失を抑制して、効率の良い電力伝送を行える。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(実施形態1)
図1は、本実施形態に係る電力変換装置1の回路図である。
【0027】
電力変換装置1は、1次側変換回路10と2次側変換回路20とを備えている。1次側変換回路10と2次側変換回路20とは、変圧器30で磁気結合する。1次側変換回路10は、入出力端子IO1,IO2を有する第1入出力ポートP1と、入出力端子IO2,IO3を有する第3入出力ポートP3とを備える。2次側変換回路20は、入出力端子IO4,IO5を有する第2入出力ポートP2と、入出力端子IO5,IO6を有する第4入出力ポートP4とを備える。電力変換装置1は、4つの入出力ポートP1〜P4の何れかと、他の入出力ポートとの間で電力変換を行う。
【0028】
1次側変換回路10は1次側フルブリッジ回路(以下、単にフルブリッジ回路と言う)を備える。このフルブリッジ回路は、スイッチ素子Q11,Q12,Q13,Q14を有する。スイッチ素子Q11,Q12,Q13,Q14はn型MOS−FETである。スイッチ素子Q11,Q12の直列回路は、入出力端子IO1,IO2に接続されている。また、スイッチ素子Q13,Q14の直列回路は、スイッチ素子Q11,Q12の直列回路に並列に接続されている。これらスイッチ素子Q11,Q12,Q13,Q14のゲートには、1次側ドライバ13からゲート信号を入力される。これにより、各スイッチ素子Q11,Q12,Q13,Q14はオンオフする。
【0029】
スイッチ素子Q11,Q12の直列回路は、本発明の「第1アーム」の一例である。スイッチ素子Q13,Q14の直列回路は、本発明の「第2アーム」の一例である。また、スイッチ素子Q11,Q13は、本発明の「上側スイッチ素子」の一例である。スイッチ素子Q12,Q14は、本発明の「下側スイッチ素子」の一例である。
【0030】
スイッチ素子Q11,Q12の接続点には、インダクタL11の第1端が接続されている。また、フルブリッジ回路のスイッチ素子Q13,Q14の接続点には、インダクタL12の第1端が接続されている。そして、インダクタL11,L12の第2端は、変圧器30の1次コイルの両端に接続されている。インダクタL11,L12は、磁気結合する結合インダクタである。インダクタL11,L12は、本発明の「第1インダクタ」及び「第2インダクタ」の一例である。
【0031】
変圧器30は、1次コイル31,32と2次コイル33,34とを備えている。1次コイル31,32は直列に接続されている。また、1次コイル31,32の接続点(センタータップ)には、第3入出力ポートP3の入出力端子IO3が接続されている。
【0032】
2次側変換回路20は2次側フルブリッジ回路(以下、単にフルブリッジ回路と言う)を備える。このフルブリッジ回路は、スイッチ素子Q21,Q22,Q23,Q24を有する。スイッチ素子Q21,Q22,Q23,Q24はn型MOS−FETである。スイッチ素子Q21,Q22の直列回路は、入出力端子IO4,IO5に接続されている。また、スイッチ素子Q23,Q24の直列回路は、スイッチ素子Q21,Q22の直列回路に並列に接続されている。これらスイッチ素子Q21,Q22,Q23,Q24のゲートには、2次側ドライバ23からゲート信号を入力される。これにより、各スイッチ素子Q21,Q22,Q23,Q24はオンオフする。
【0033】
スイッチ素子Q21,Q22の直列回路は、本発明の「第3アーム」の一例である。スイッチ素子Q23,Q24の直列回路は、本発明の「第4アーム」の一例である。また、スイッチ素子Q21,Q22は、本発明の「上側スイッチ素子」の一例である。スイッチ素子Q22,Q24は、本発明の「下側スイッチ素子」の一例である。
【0034】
スイッチ素子Q21,Q22の接続点には、インダクタL21の第1端が接続されている。また、フルブリッジ回路のスイッチ素子Q23,Q24の接続点には、インダクタL22の第1端が接続されている。そして、インダクタL21,L22の第2端は、変圧器30の2次コイルの両端に接続されている。このインダクタL21,L22は、磁気結合する結合インダクタである。インダクタL21,L22は、本発明の「第3インダクタ」及び「第4インダクタ」の一例である。
【0035】
変圧器30の2次コイル33,34は直列に接続されている。また、2次コイル33,34の接続点(センタータップ)には、第4入出力ポートP4の入出力端子IO6が接続されている。
【0036】
電力変換装置1は制御部35を備えている。制御部35は、1次側ドライバ13及び2次側ドライバ23それぞれへ制御信号を出力する。この制御信号が入力された1次側ドライバ13及び2次側ドライバ23は、各スイッチ素子へゲート信号を出力する。
【0037】
図2は制御部35の機能を示すブロック図である。制御部35は、電力変換モード決定部351と、位相差決定部352と、Duty比決定部353と、1次側出力部354と、2次側出力部355とを備える。
【0038】
電力変換モード決定部351は、例えば、制御部35に入力された外部信号に基づいて、電力変換装置1の電力変換モードを決定する。電力変換モードには第1〜第12モードがある。
【0039】
第1モードは、第1入出力ポートP1から入力された電力を変換して第3入出力ポートP3へ出力するモードである。第2モードは、第1入出力ポートP1から入力された電力を変換して第2入出力ポートP2へ出力するモードである。第3モードは、第1入出力ポートP1から入力された電力を変換して第4入出力ポートP4へ出力するモードである。
【0040】
第4モードは、第3入出力ポートP3から入力された電力を変換して第1入出力ポートP1へ出力するモードである。第5モードは、第3入出力ポートP3から入力された電力を変換して第2入出力ポートP2へ出力するモードである。第6モードは、第3入出力ポートP3から入力された電力を変換して第4入出力ポートP4へ出力するモードである。
【0041】
第7モードは、第2入出力ポートP2から入力された電力を変換して第1入出力ポートP1へ出力するモードである。第8モードは、第2入出力ポートP2から入力された電力を変換して第3入出力ポートP3へ出力するモードである。第9モードは、第2入出力ポートP2から入力された電力を変換して第4入出力ポートP4へ出力するモードである。
【0042】
第10モードは、第4入出力ポートP4から入力された電力を変換して第1入出力ポートP1へ出力するモードである。第11モードは、第4入出力ポートP4から入力された電力を変換して第3入出力ポートP3へ出力するモードである。第12モードは、第4入出力ポートP4から入力された電力を変換して第2入出力ポートP2へ出力するモードである。
【0043】
位相差決定部352は、電力変換モード決定部351が決定したモードに応じて、1次側変換回路10及び2次側変換回路20それぞれが有するスイッチ素子のスイッチング周期の位相差φを決定する。決定された位相差φによって、第1入出力ポートP1から第2入出力ポートP2へ(又はその逆方向へ)電力が伝送される。
【0044】
Duty比決定部353は、決定されたモードに応じて、1次側変換回路10及び2次側変換回路20それぞれが有するスイッチ素子のDuty比を決定する。決定されたDuty比によって、1次側変換回路10及び2次側変換回路20それぞれにおいて電圧が制御(昇圧又は降圧)される。
【0045】
1次側出力部354は、電力変換モード決定部351が決定したモードに基づいて、1次側変換回路10の各スイッチ素子Q11,Q12,Q13,Q14のゲートへゲート信号を、1次側ドライバ13から出力させる。これにより、各スイッチ素子Q11,Q12,Q13,Q14はオンオフする。また、1次側出力部354は、位相差決定部352及びDuty比決定部353により決定された位相差φ及びDuty比に応じたゲート信号を出力させる。1次側出力部354は、本発明の「第1スイッチング制御部」の一例である。
【0046】
2次側出力部355は、電力変換モード決定部351が決定したモードに基づいて、2次側変換回路20の各スイッチ素子Q21,Q22,Q23,Q24のゲートへゲート信号を、2次側ドライバ23から出力させる。これにより、各スイッチ素子Q21,Q22,Q23,Q24はオンオフする。また、2次側出力部355は、位相差決定部352及びDuty比決定部353により決定された位相差φ及びDuty比に応じたゲート信号を出力させる。2次側出力部355は、本発明の「第2スイッチング制御部」の一例である。
【0047】
以上のように構成された電力変換装置1の動作について説明する。電力変換装置1は、昇降圧回路としての機能、及びDual Active Bridge(以下DAB)コンバータ回路としての機能を備える。
【0048】
図3は、電力変換装置1のコンバータ回路の機能のうち、昇降圧回路としての機能を説明するための図である。
図4は、電力変換装置1のコンバータ回路機能のうち、DABコンバータとしての機能を説明するための図である。
【0049】
電力変換装置1の1次側変換回路10側の昇降圧回路としての機能に関して説明する。図
3に示すように、例えば、第1入出力ポートP1の入出力端子IO1,IO2には、スイッチ素子Q11,Q12(又は、Q13,Q14)の直列回路が接続されている。そして、スイッチ素子Q11,Q12(又は、Q13,Q14)に接続するインダクタL11,L12は、磁気結合する結合インダクタであるため、
図3のように漏れインダクタLr1,Lr2と励磁インダクタM1の等価回路で表すことができる。
【0050】
また、励磁インダクタM1を流れる電流は変圧器30の1次コイル31,32に分配されて流れるため、ここでは磁束がキャンセルされ、励磁インダクタM1と入出力端子IO3とはショートされているのと同等とみなせる。すなわち、第1入出力ポートP1及び第3入出力ポートP3間には、降圧回路が接続されている。このため、第1入出力ポートP1から入力された電圧は、降圧されて第3入出力ポートP3から出力される。また、第3入出力ポートP3及び第1入出力ポートP1間には、昇圧回路が接続されている。このため、第3入出力ポートP3から入力された電圧は、昇圧されて第1入出力ポートP1から出力される。
【0051】
なお、2次側変換回路20側の昇降圧機能に関しては、1次側変換回路10側と同様に説明できる。すなわち、第2入出力ポートP2から入力された電圧は、降圧されて第4入出力ポートP4から出力される。また、第4入出力ポートP4から入力された電圧は、昇圧されて第2入出力ポートP2から出力される。
【0052】
次に、電力変換装置1のDABコンバータ回路としての機能に関して説明する。
図4に示すように、1次側変換回路10及び2次側変換回路20はそれぞれ、フルブリッジ回路を備えている。そして、インダクタL11,L12(又はL21,L22)は、磁気結合する結合インダクタであるため、漏れインダクタLr1,Lr2(又はLr3,Lr4)と励磁インダクタの等価回路で表すことができる。インダクタL11,L12(又はL21,L22)は極性に対し逆方向に電流が流れるため、励磁インダクタはキャンセルされ漏れインダクタLr1,Lr2(又はLr3,Lr4)のみが作用する。そして、1次側変換回路10及び2次側変換回路20は磁気結合する。
【0053】
すなわち、第1入出力ポートP1及び第2入出力ポートP2を入出力とするDABコンバータ回路を構成している。したがって、第1アームと第2アームとを位相差180度(π)でスイッチング動作させ、第3アームと第4アームとを位相差180度(π)でスイッチング動作させ、1次側変換回路10側と2次側変換回路20側とのスイッチ素子のスイッチング周期の位相差を調整することにより、第1入出力ポートP1(又は第3入出力ポートP3)に入力された電力を変換して第2入出力ポートP2(又は第4入出力ポートP4)に伝送することができる。また、第2入出力ポートP2(又は第4入出力ポートP4)に入力された電力を変換して第1入出力ポートP1(又は第3入出力ポートP3)に伝送することができる。
【0054】
以下に、電力変換装置1の動作について説明する。
【0055】
図5は、1次側変換回路10及び2次側変換回路20各部の電圧波形、及びインダクタL11に流れる電流波形を示す図である。ここで、Vu1は、スイッチ素子Q12のドレイン・ソース間電圧、Vv1は、スイッチ素子Q14のドレイン・ソース間電圧、Vu2は、スイッチ素子Q22のドレイン・ソース間電圧、Vv2は、スイッチ素子Q24のドレイン・ソース間電圧である(
図1参照)。
【0056】
この例では、第1入出力ポートP1に入力電源を接続し、他ポートに負荷を接続し、Vu1,Vv1がそれぞれオン時間δとなり、互いに180度の位相差となり、また、Vu2,Vv2がそれぞれオン時間δとなり、互いに180度の位相差となるよう、制御部35は1次側変換回路10及び2次側変換回路20それぞれの各スイッチ素子をスイッチング制御する。
【0057】
図5の電流I1の波形に示すように、Vu1がハイ(H)、Vv1がロー(L)の場合、入出力端子IO1→スイッチ素子Q11→インダクタL11→変圧器30の1次コイル31→入出力端子IO3の順に電流が流れる。Vu1がロー(L)、Vv1がハイ(H)の場合、入出力端子IO1→スイッチ素子Q13→インダクタL12→変圧器30の1次コイル32→入出力端子IO3の順に電流が流れる。Vu1,Vv1がロー(L)の場合、インダクタL11,L12→変圧器30の1次コイル31,32→入出力端子IO3→負荷→入出力端子IO2→スイッチ素子Q12,Q14の順に電流が流れる。すなわち、Vu1及びVv1のハイ・ローが繰り返されることで、第1入出力ポートP1から入力された電圧は降圧されて、第3入出力ポートP3へ出力される。このときの電圧の降圧比は、オン時間δによって定めることができる。
【0058】
なお、第3入出力ポートP3から第1入出力ポートP1への電力変換についても、Vu1及びVv1のハイ・ローが繰り返されることで、第3入出力ポートP3から入力された電圧を昇圧して、第1入出力ポートP1へ出力される。そして、昇圧比は、オン時間δによって定めることができる。また、2次側変換回路20側に関しても、1次側変換回路10側と同様に説明できる。
【0059】
また、前記のように1次側変換回路10において電流が流れると、変圧器30の1次コイル31,32に電圧が印加され、変圧器30の2次コイル33,34に電圧が誘起される。そして、Vu2,Vv2がVu1,Vv1と位相差φ(>0)となるよう、2次側変換回路20の各スイッチ素子をスイッチング制御すると、第2入出力ポートP2(又は、第4入出力ポートP4)へ電流が流れる。これにより、1次側変換回路10から2次側変換回路20への電力伝送が行われる。
【0060】
例えば、変圧器30の2次コイル33側が高電位である場合、スイッチ素子Q21,Q24がオンのとき、2次側変換回路20では、変圧器30の2次コイル33→インダクタL21→スイッチ素子Q21→入出力端子IO4の経路に電流が流れる。また、変圧器30の2次コイル34側が高電位である場合、スイッチ素子Q22,Q23がオンのとき、変圧器30の2次コイル34→インダクタL22→スイッチ素子Q23→入出力端子IO4の経路に電流が流れる。
【0061】
このように、1次側変換回路10及び2次側変換回路20の各スイッチ素子を位相差φ(>0)でスイッチング制御することにより、第1入出力ポートP1から入力された電圧が、DABコンバータ回路としての機能によって2次側変換回路20側に伝送されて、第2入出力ポートP2及び第4入出力ポートP4から出力される。
図5に示すように、位相差φを変化させるとVu1,Vu2がハイ(スイッチ素子Q11,Q21がオン)で、Vv1,Vv2がロー(スイッチ素子Q14,Q24がオン)の時間T1が変化し、同様に、Vu1,Vu2がロー(スイッチ素子Q12,Q22がオン)で、Vv1,Vv2がハイ(スイッチ素子Q13,Q23がオン)の時間T2が変化する。このことにより、1次側変換回路10から2次側変換回路20への電力送電量は、位相差φによって制御できる。なお、第3入出力ポートP3から第2入出力ポートP2又は第4入出力ポートP4への電力伝送についても、同様である。
【0062】
また、位相差φを変更することで、第2入出力ポートP2から第1入出力ポートP1(又は第3入出力ポートP3)への電力伝送、第4入出力ポートP4から第1入出力ポートP1(又は第3入出力ポートP3)への電力伝送が可能となる。詳しくは、1次側変換回路10及び2次側変換回路20の各スイッチ素子を位相差φ(<0)でスイッチング制御することにより、2次側変換回路20から1次側変換回路10に電力が伝送される。
【0063】
位相差φを0として、1次側変換回路10及び2次側変換回路20の各スイッチ素子をスイッチング制御することにより、絶縁方向への電力伝送は行われない。1次側変換回路10及び2次側変換回路20は対称回路である。このため、第1入出力ポートP1及び第2入出力ポートP2それぞれにバッテリ等の電源が接続され、位相差φが0である場合、1次側変換回路10及び2次側変換回路20は対称動作する。この場合、1次側変換回路10から2次側変換回路20へ伝送された電力は、2次側変換回路20から1次側変換回路10へ回生される。同様に、2次側変換回路20から1次側変換回路10へ伝送された電力は、1次側変換回路10から2次側変換回路20へ回生される。その結果として絶縁方向への電力伝送は行われない。第3入出力ポートP3及び第4入出力ポートP4間についても同様である。しかしながら、この場合、回生によって無駄な電力消費が発生する。
【0064】
そこで、本実施形態に係る電力変換装置1は、非絶縁方向への電力伝送のみを行う場合に、回生による無駄な電力消費を発生させないよう、1次側変換回路10及び2次側変換回路20のスイッチ素子をスイッチング制御する。以下、非絶縁方向への電力伝送のみを行う場合のスイッチング制御について説明する。
【0065】
図6は、1次側変換回路10の各スイッチ素子Q11,Q12,Q13,Q14のタイミングチャート、及び、1次側変換回路10各部の電圧波形を示す図である。この例でも、
図5と同様に、第1入出力ポートP1に入力電源を接続したとして説明する。
【0066】
1次側変換回路10側では、制御部35は、スイッチ素子Q11,Q13と、スイッチ素子Q12,Q14とを、交互にオンオフする。スイッチ素子Q11,Q13がオン、スイッチ素子Q12,Q14がオフの場合、入出力端子IO1→スイッチ素子Q11→インダクタL11→変圧器30の1次コイル31→入出力端子IO3の経路と、入出力端子IO1→スイッチ素子Q13→インダクタL12→変圧器30の1次コイル32→入出力端子IO3の経路とに電流が流れる。このときのVu1,Vv1の電位はハイ(H)である。また、スイッチ素子Q11,Q13がオフ、スイッチ素子Q12,Q14がオンの場合、入出力端子IO2→スイッチ素子Q12,Q14→インダクタL11,L12→変圧器30の1次コイル31,32→入出力端子IO3の経路で電流が流れる。このときのVu1,Vv1の電位はロー(L)である。
【0067】
すなわち、スイッチ素子Q11,Q12の接続点と、スイッチ素子Q13,Q14の接続点との電位差Vuv1は常に0である。このため、変圧器30の1次コイル31,32に印加される電圧は0であり、第1入出力ポートP1から2次側変換回路20側への電力伝送は行われない。第3入出力ポートP3から2次側変換回路20側への電力伝送についても同様である。
【0068】
図7は、2次側変換回路20の各スイッチ素子Q21,Q22,Q23,Q24のタイミングチャート、及び、2次側変換回路20各部の電圧波形を示す図である。この例では、第2入出力ポートP2に入力電源を接続したとして説明する。
【0069】
2次側変換回路20側では、制御部35は、スイッチ素子Q21,Q23とスイッチ素子Q22,Q24とを、交互にオンオフする。スイッチ素子Q21,Q23がオン、スイッチ素子Q22,Q24がオフの場合、入出力端子IO4→スイッチ素子Q21→インダクタL21→変圧器30の2次コイル33→入出力端子IO6の経路と、入出力端子IO4→スイッチ素子Q23→インダクタL22→変圧器30の2次コイル34→入出力端子IO6の経路とに電流が流れる。このときのVu1,Vv1の電位はハイ(H)である。また、スイッチ素子Q21,Q23がオフ、スイッチ素子Q22,Q24がオンの場合、入出力端子IO5→スイッチ素子Q22,Q24→インダクタL21,L22→変圧器30の2次コイル33,34→入出力端子IO6の経路で電流が流れる。このときのVu2,Vv2の電位はロー(L)である。
【0070】
すなわち、スイッチ素子Q21,Q22の接続点と、スイッチ素子Q23,Q24の接続点との電位差Vuv2は常に0である。このため、変圧器30の2次コイル33,34に印加される電圧は0で、第2入出力ポートP2から1次側変換回路10への電力伝送は行われない。第4入出力ポートP4から1次側変換回路10側への電力伝送についても同様である。
【0071】
このように、本実施形態では、変圧器30の1次コイル31,32及び2次コイル33,34に電圧が印加されないようにして、絶縁方向への電力伝送が行われないようにすることで、回生による無駄な電力消費は発生しない。また、1次側変換回路10と2次側変換回路20とでスイッチング制御を同期させる必要がなく、1次側変換回路10内での電力伝送(例えば、第1入出力ポートP1から第3入出力ポートP3への電力伝送)と、2次側変換回路20内での電力伝送(例えば、第2入出力ポートP2から第4入出力ポートP4への電力伝送)とをそれぞれ独立させて実行できる。また、第1入出力ポートP1と第3入出力ポートP3との間で電力伝送を行い、第2入出力ポートP2と第4入出力ポートP4との間で電力伝送を行う必要がない場合は、1次側変換回路10のみをスイッチング制御し、2次側変換回路20のスイッチングを停止してもよい。同様に、2次側変換回路20のみをスイッチング制御し1次側変換回路10のスイッチングを停止してもよい。
【0072】
以上説明したように、電力変換装置1は、昇降圧回路としての機能、及びDABコンバータ回路としての機能を備え、4つの入出力ポートP1〜P4の何れかと、他の入出力ポートとの間で電力変換を行うことができる。そして、非絶縁方向のみ電力伝送を行う場合、絶縁方向へ電力が伝送しないようにすることで、不要な電力消費が発生せず、効率のよい電力伝送が行える。
【0074】
図8に示す電力変換装置1Aが有するインダクタL11,L12(又はL21,L22)は磁気結合せず、それぞれ独立している。この場合であっても、電力変換装置1と同様に効率のよい電力伝送を行える。
【0075】
図9に示す電力変換装置1Bは、1次コイル31,32のセンタータップと入出力端子IO3との間に接続されたインダクタL13と、2次コイル33,34のセンタータップと入出力端子IO6との間に接続されたインダクタL23とを備えている。この場合、インダクタL11,L12(又はL21,L22)は磁気結合していてもよいし、それぞれが独立していてもよい。
【0076】
ここで、インダクタL13は、本発明に係る「第5インダクタ」の一例であり、インダクタL23は、本発明に係る「第6インダクタ」の一例である。
【0077】
図10に示す電力変換装置1Cは、電力変換装置1Bの回路構成において、インダクタL11,L12,L23を備えない構成である。
図11に示す電力変換装置1Dは、電力変換装置1Bの回路構成において、インダクタL11,L12を備えない構成である。この場合、インダクタL21,L22は磁気結合していてもよいし、それぞれが独立していてもよい。
【0078】
図12に示す電力変換装置1Eは、3つの入出力ポートP1,P2,P3を備えている。そして、電力変換装置1Eは、3つの入出力ポートP1,P2,P3のうち、任意の2つの入出力ポートの間で電力変換を行う電力変換回路である。そして、電力変換装置1Eの2次側回路20は、インダクタL21,L22を備えない。
【0079】
図13に示す電力変換装置1Fは、電力変換装置1Eと同様に、3つの入出力ポートP1,P2,P3を備えている。そして、電力変換装置1Fの1次側回路10は、インダクタL11,L12を備えず、インダクタL13を備えている。また、2次側回路20は、インダクタL21のみを備えている。
【0080】
これら
図9〜
図13に示す各電力伝送装置の回路構成であっても、電力変換装置1と同様に効率のよい電力伝送を行える。
【0081】
(実施形態2)
実施形態2では、絶縁方向への電力伝送を行わない場合に、1次側変換回路10ではスイッチ素子Q11,Q13のみをオンオフさせ、2次側変換回路20ではスイッチ素子Q21,Q23のみをオンオフさせる。
図2に示す、1次側出力部354は、本発明に係る「第1禁止部」の一例である。また、2次側出力部355は、本発明に係る「第2禁止部」の一例である。
【0082】
図14は、1次側変換回路10の各スイッチ素子Q11,Q12,Q13,Q14のタイミングチャート、及び、1次側変換回路10各部の電圧波形を示す図である。本実施形態の電力変換装置は、
図1と同じであり、第1入出力ポートP1に入力電源を接続したとして説明する。なお、1次側変換回路10及び2次側変換回路20のスイッチング制御は同じであるため、1次側変換回路10のスイッチング制御についてのみ説明する。
【0083】
1次側変換回路10側では、制御部35は、スイッチ素子Q11,Q13のみを同時にオンオフし、スイッチ素子Q12,Q14は常にオフにする。この場合、図
3の等価回路で考えると、スイッチ素子Q
12,Q
14はボディダイオードを有するMOS−FETであるため、常時オフであっても、スイッチ素子Q11,Q13のみをスイッチングさせることで、ボディダイオードにより整流が行われる。
【0084】
スイッチ素子Q11,Q13がオンであるとき、インダクタL11,L12を流れる電流I1,I2が上昇する。スイッチ素子Q11,Q13がオフになると、インダクタL11,L12に蓄積されたエネルギーがスイッチ素子Q12,Q14のボディダイオードを通して放出される。インダクタL11,L12に蓄積されたエネルギーが放出されるI1,I2はゼロになる。このとき、ボディダイオードはオフするので、電圧Vdが現れる。
【0085】
仮に第3入出力ポートP3にバッテリ等の電源が接続されていて、スイッチ素子Q12,Q14持スイッチング制御し、スイッチ素子Q12,Q14がオンであるとき、第3入出力ポートP3→インダクタL11,L12→スイッチ素子Q12,Q14の経路で電流が流れる。すなわち、第3入出力ポートから第1入出力ポートP1への回生電流(
図7の破線部分)が発生する。これに対し、本実施形態では、スイッチ素子Q12,Q14を常時オフにするため、回生電流の発生を抑制でき、回生電流による損失を抑えることができる。
【0086】
なお、例えば、第1入出力ポートP1に接続された入力電源から、第3入出力ポートP3に接続された負荷へ電力を供給する場合、その負荷が軽負荷であれば、軽負荷への電流は小さい。このため、スイッチ素子Q12,Q14をスイッチングせず、ボディダイオードを利用して整流した場合であっても、そのボディダイオードでの損失は大きくない。
【0087】
以上説明したように、絶縁方向への電力伝送を行わず、非絶縁方向への電力伝送のみを行う場合に、1次側変換回路10ではスイッチ素子Q11,Q13のみをスイッチング制御し、2次側変換回路20ではスイッチ素子Q21,Q23のみをスイッチング制御する。これにより、回生電流の発生を抑制でき、回生電流による損失を抑えることができる。その結果、非絶縁方向への電力伝送の効率を向上させることができる。
【0088】
(実施形態3)
本実施形態に係る電力変換装置は、絶縁方向へ電力伝送する場合、絶縁方向へ電力を伝送するモード(以下、絶縁電力伝送モードと言う)と、絶縁方向へ電力を伝送せず、非絶縁方向のみへ電力を伝送するモード(以下、非絶縁電力伝送モードと言う)とを交互に切り替える。
【0089】
図15は、電力変換装置1の動作モードを説明するための図である。
【0090】
以下、
図1において、第1入出力ポートP1に入力電源が接続され、第2入出力ポートP2に負荷が接続され、第1入出力ポートP1から第2入出力ポートP2へ電力伝送する場合について説明する。
【0091】
第1入出力ポートP1から第2入出力ポートP2へ電力伝送する場合、制御部35は、実施形態1で説明したように、1次側変換回路10及び2次側変換回路20の各スイッチ素子を位相差φでスイッチング制御する。このときの位相差φは、電力変換装置1が高効率で動作できる値とする。軽負荷である場合には、電力変換モード決定部351は、
図9に示す、絶縁電力伝送モードと非絶縁電力伝送モードとを交互に実行する動作モードに切り替える。1次側出力部354及び2次側出力部355は、電力変換モード決定部351が決定した動作モードに基づいて、各スイッチ素子をスイッチング制御する。
【0092】
絶縁電力伝送モードでは、制御部35の1次側出力部354及び2次側出力部355は、1次側変換回路10及び2次側変換回路20の各スイッチ素子を位相差φでスイッチング制御する。非絶縁電力伝送モードでは、制御部35の1次側出力部354及び2次側出力部355は、1次側変換回路10のスイッチ素子Q11,Q13と、スイッチ素子Q12,Q14とを交互にオンオフし、2次側変換回路20のスイッチ素子Q21,Q23と、スイッチ素子Q22,Q24とを交互にオンオフする。電力変換モード決定部351は、本発明に係る「切替部」の一例である。1次側出力部354は、本発明に係る「第3スイッチング制御部」の一例である。2次側出力部355は、本発明に係る「第4スイッチング制御部」の一例である。
【0093】
絶縁方向へ伝送する電力が小さい場合、すなわち位相差φが小さいと、回生電流が発生し損失が大きくなる。しかしながら、本実施形態のように、高効率で動作できる位相差φで動作させ、絶縁電力伝送モードと非絶縁電力伝送モードとの切り替えによって絶縁方向へ伝送する電力を調整することによって、絶縁方向への電力伝送の効率を向上させることができる。