特許第6202224号(P6202224)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202224
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】センサモジュール
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/16 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
   G01L1/16 G
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-562358(P2016-562358)
(86)(22)【出願日】2015年11月6日
(86)【国際出願番号】JP2015081279
(87)【国際公開番号】WO2016088507
(87)【国際公開日】20160609
【審査請求日】2017年5月24日
(31)【優先権主張番号】特願2014-246931(P2014-246931)
(32)【優先日】2014年12月5日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 喜弘
【審査官】 山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平3−295431(JP,A)
【文献】 特開2006−266738(JP,A)
【文献】 特表2007−536531(JP,A)
【文献】 特開昭55−29762(JP,A)
【文献】 特開昭61−245065(JP,A)
【文献】 特開昭62−167432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/00 − 27/02
G01D 3/02 − 3/024
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押圧力に応じた電荷量を発生する圧電素子と、
前記電荷量を電圧に変換するチャージアンプと、
前記チャージアンプの出力電圧に基づいて前記押圧力を検出する演算部と、
前記チャージアンプと前記演算部とを接続する増幅率の異なる第1、第2経路と、を備え、
前記第1経路は、第1オペアンプと、前記第1オペアンプの入力端子に電気的に接続される第1抵抗とを有し、
前記第2経路は、第2オペアンプと、前記第2オペアンプの入力端子に電気的に接続される第2抵抗を有し、
前記第1抵抗の純抵抗は、前記第2抵抗の純抵抗と同じであり、
前記第1経路の増幅率は、前記第2経路の増幅率よりも高く、
前記演算部は、
前記第1経路から出力される第1電圧が閾値電圧よりも低いことを検出すると、前記第1電圧を用いて前記押圧力を検出し、
前記第1電圧が前記閾値電圧以上であることを検出すると、前記第2経路から出力される第2電圧を用いて前記押圧力を検出する、
センサモジュール。
【請求項2】
前記演算部は、前記第1経路の増幅率と前記第2経路の増幅率の比を用いて、前記押圧力の検出に利用する電圧を補正する、
請求項1に記載のセンサモジュール。
【請求項3】
前記第1経路は、第1増幅回路および前記第1増幅回路の入力段に接続する第1コンデンサを備え、
前記第2経路は、前記第1増幅回路よりも増幅率の低い第2増幅回路および前記第2増幅回路の入力段に接続する第2コンデンサを備え、
前記第1コンデンサのキャパシタンスと前記第2コンデンサのキャパシタンスは同じである、
請求項1または請求項2に記載のセンサモジュール。
【請求項4】
前記演算部は、
前記圧電素子への前記押圧力の無印加状態における前記第1経路を介して得られる第3電圧と、前記第2経路を介して得られる第4電圧を検出し、
前記第1電圧を用いて前記押圧力を検出する場合には、前記第3電圧によって前記第1電圧を補正し、
前記第2電圧を用いて前記押圧力を検出する場合には、前記第4電圧によって前記第2電圧を補正する、
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のセンサモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の物理量を電荷、電圧に変換して検出するセンサモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、圧電素子等を用いて所定の物理量を検出するセンサモジュールが多く実用化されている。
【0003】
特許文献1のセンサ検出回路は、圧電素子、チャージアンプ、増幅回路を備える。圧電素子の出力端は、チャージアンプに接続される。チャージアンプは、圧電素子で検出した電荷量を電圧信号に変換して、増幅回路に出力する。増幅回路は、電圧信号を増幅して出力する。
【0004】
特許文献2の物理量センサは、第1段の増幅回路、第2段の増幅回路、マルチプレクサMPXを備える。第1段の増幅回路の出力端は、マルチプレクサMPXと第2段の増幅回路に接続されている。第2段の増幅回路の出力端はマルチプレクサMPXに接続されている。マルチプレクサMPXは、第1段の増幅回路の出力信号と、第2段の増幅回路の出力信号を、時分割で交互に出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−172518号公報
【特許文献2】特開2004−258019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のセンサ検出回路では、増幅回路の増幅率を微弱電圧の増幅に合わせた場合、増幅回路への入力電圧が高すぎると、出力電圧の波形が歪んでしまう。一方、増幅回路の増幅率を出力電圧が歪まないように設定した場合、入力電圧が微弱であると、後段の検出部で検出可能な振幅まで増幅できないことがある。すなわち、特許文献1のセンサおよび検出回路では、センサ素子に対するダイナミックレンジが不十分ではないという問題が生じる。
【0007】
また、特許文献2の物理量センサでは、増幅率の異なる出力電圧が時分割で出力されるため、適切なタイミングで適切な増幅率の出力電圧を得ることができない。
【0008】
したがって、本発明の目的は、センサ素子の出力電圧を、出力電圧に振幅に影響されることなく適切に増幅することができる検出回路を備えるセンサモジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のセンサモジュールは、押圧力に応じた電荷量を発生する圧電素子と、電荷量を電圧に変換するチャージアンプと、チャージアンプの出力電圧に基づいて押圧力を検出する演算部と、チャージアンプと演算部とを接続する増幅率の異なる第1、第2経路と、備える。第1経路の増幅率は、前記第2経路の増幅率よりも高い。演算部は、第1経路から出力される第1電圧が閾値電圧よりも低いことを検出すると、第1電圧を用いて押圧力を検出する。演算部は、第1電圧が閾値電圧以上であることを検出すると、第2経路から出力される第2電圧を用いて押圧力を検出する。
【0010】
この構成では、適正な増幅率で増幅された電圧を用いて、押圧力を検出することができる。
【0011】
また、この発明のセンサモジュールでは、演算部は、第1経路の増幅率と第2経路の増幅率の比を用いて押圧力の検出に利用する電圧を補正することが好ましい。
【0012】
この構成では、第1経路を介した場合と第2経路を介した場合とで、検出される押圧力に差が生じることを抑制できる。
【0013】
また、この発明のセンサモジュールでは、次の構成を備えることが好ましい。第1経路は、第1増幅回路および第1増幅回路の入力段に接続する第1コンデンサを備える。第2経路は、第1増幅回路よりも増幅率の低い第2増幅回路および第2増幅回路の入力段に接続する第2コンデンサを備える。第1コンデンサのキャパシタンスと第2コンデンサのキャパシタンスは同じである。
【0014】
この構成では、直流成分が第1コンデンサおよび第2コンデンサで除去されるので、第1増幅回路および第2増幅回路での入力オフセット電圧の増幅を抑制できる。したがって、第1増幅回路における入力オフセットの影響と第2増幅回路における入力オフセットの影響の差を抑制できる。これにより、第1経路と第2経路との入力オフセット電圧による出力電圧の差を抑制できる。
【0015】
また、この発明のセンサモジュールは、次の構成であることが好ましい。センサモジュールは、第1コンデンサに直列接続し、第1増幅回路の増幅率を決定する第1抵抗と、第2コンデンサに直列接続し、第2増幅回路の増幅率を決定する第2抵抗と、備える。第1抵抗のインピーダンスと第2抵抗とインピーダンスは同じである。
【0016】
この構成では、第1、第2増幅回路の増幅率比の過渡的な変化を抑制できる。これにより、第1経路の出力電圧と第2経路の出力電圧とでの増幅回路の構成および設定による誤差を抑制できる。
【0017】
また、この発明のセンサモジュールでは、次の構成であることが好ましい。演算部は、圧電素子への押圧力の無印加状態における第1経路を介して得られる第3電圧と、第2経路を介して得られる第4電圧を検出する。演算部は、第1電圧を用いて押圧力を検出する場合には、第3電圧によって第1電圧を補正する。演算部は、第2電圧を用いて押圧力を検出する場合には、第4電圧によって第2電圧を補正する。
【0018】
この構成では、押圧力の無印加時のオフセット電圧で、押圧力検出用の電圧を補正できる。これにより、押圧力をより精確に検出することができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、センサ素子の出力電圧を、出力電圧に振幅幅に影響されることなく適切に増幅することができる。これにより、センサ素子によって検出される押圧力等の物理量を精確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施形態に係るセンサモジュールの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係るセンサモジュールのチャージアンプの回路図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係るセンサモジュールの第1経路および第2経路の回路図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係るセンサモジュールで用いる処理概念を示す図である。
図5】入力端に接続される抵抗の比とオペアンプの増幅率比とを示すグラフである。
図6】本発明の第2の実施形態に係るセンサモジュールの増幅回路部(経路)の回路図である。
図7】本発明の第3の実施形態に係るセンサモジュールの検出回路のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の第1の実施形態に係るセンサモジュールについて、図を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係るセンサモジュールの構成を示すブロック図である。なお、本実施形態では、押圧力を電圧に変換して検出するセンサモジュールを例に説明するが、他の物理量を電圧に変換して検出するセンサモジュールに適用できる。特に物理量の変化によって電荷量が変化し、当該電荷量の変化を電圧に変換して検出するセンサモジュールへの適用が特に有効である。
【0022】
センサモジュール1は、圧電素子100、および、検出回路10を備える。圧電素子100は検出回路10に接続されている。圧電素子100は、押圧力に応じた電荷量を発生する。検出回路10は、圧電素子100で発生した電荷量を電圧に変換して、当該電圧から押圧力を検出する。
【0023】
圧電素子100は、例えば、圧電性フィルムと、圧電性フィルムに形成された検出用導体とを備える。圧電性フィルムは、互いに対向する第1主面と第2主面を備える矩形状の平膜からなる。検出用導体は、圧電性フィルムの第1主面と第2主面に配置されている。
【0024】
圧電性フィルムは、一軸延伸されたL型ポリ乳酸(PLLA)によって形成されている。PLLAは、キラル高分子であり、主鎖が螺旋構造を有する。PLLAは、一軸延伸等により分子が配向されると、圧電性を生じる。一軸延伸されたPLLAの圧電定数は、高分子中で非常に高い部類に属する。なお延伸倍率は3〜8倍程度が好適である。延伸後に熱処理を施すことにより、ポリ乳酸の延びきり鎖結晶の結晶化が促進され圧電定数が向上する。尚、二軸延伸した場合はそれぞれの軸の延伸倍率を異ならせることによって一軸延伸と同様の効果を得ることが出来る。
【0025】
また、PLLAは、延伸等による分子の配向処理で圧電性を生じ、PVDF等の他のポリマーや圧電セラミックスのように、ポーリング処理を行う必要がない。すなわち、強誘電体に属さないPLLAの圧電性は、PVDFやPZT等の強誘電体のようにイオンの分極によって発現するものではなく、分子の特徴的な構造である螺旋構造に由来するものである。このため、PLLAには、他の強誘電性の圧電体で生じる焦電性が生じない。さらに、PVDF等は経時的に圧電定数の変動が見られ、場合によっては圧電定数が著しく低下する場合があるが、PLLAの圧電定数は経時的に極めて安定している。
【0026】
また、PLLAは比誘電率が約2.5と非常に低いため、dを圧電定数とし、εを誘電率とすると、圧電出力定数(=圧電g定数、g=d/ε)が大きな値となる。
【0027】
ここで、誘電率ε33=13×ε,圧電定数d31=25pC/NのPVDFの圧電g定数は、上述の式から、g31=0.2172Vm/Nとなる。一方、圧電定数d14=10pC/NであるPLLAの圧電g定数をg31に換算して求めると、d14=2×d31であるので、d31=5pC/Nとなり、圧電g定数は、g31=0.2258Vm/Nとなる。したがって、圧電定数d14=10pC/NのPLLAで、PVDFと同様の押し込み量の検出感度を十分に得ることができる。そして、本願発明の発明者らは、d14=15〜20pC/NのPLLAを実験的に得ており、当該PLLAを用いることで、さらに非常に高感度に押圧力を検出することが可能になる。
【0028】
検出用導体は、ITO、ZnO、ポリチオフェンを主成分とする有機電極、ポリアニリンを主成分とする有機電極、銀ナノワイヤ電極のいずれかを用いるのが好適である。これらの材料を用いることで、透光性の高い電極を形成できる。尚、透明性が必要とされない場合には銀ペーストにより形成された電極や、蒸着やスパッタ、あるいはメッキなどにより形成された金属系の電極を用いることもできる。
【0029】
このような圧電素子100の平板面(主面)が押し込まれると、圧電性フィルムに電荷が発生する。この電荷は、検出用導体を介して外部回路で検出することができる。
【0030】
検出回路10は、チャージアンプ20、増幅回路31を有する第1経路S1、増幅回路32を有する第2経路S2、および、演算部40を備える。
【0031】
図2は、本発明の第1の実施形態に係るセンサモジュールのチャージアンプの回路図である。チャージアンプ20は、オペアンプU20、抵抗R20、コンデンサC20を備える。オペアンプU20の反転入力端子は圧電素子100の一方の検出用導体に接続されている。なお、圧電素子100の他方の検出用導体は、グランド電位、圧電素子用の基準電位等、一定の電位に接続されている。オペアンプU20の非反転入力端子は、オペアンプ用の基準電位VSTDに接続されている。オペアンプU20の出力端子は、抵抗R20およびコンデンサC20の並列回路を介して、オペアンプU20の反転入力端子に接続されている(フィードバック接続されている)。この際、圧電素子100からオペアンプU20を視たインピーダンスは、抵抗R20およびコンデンサC20によって構成されるフィードバック回路のインピーダンスと比較して十分に小さい。
【0032】
このような構成によって、チャージアンプ20は、圧電素子100で発生する電荷量を電圧Vpに変換する。チャージアンプ20の出力電圧Vpは、次の式で得られる。次式におけるCは、コンデンサC20のキャパシタンスであり、次式におけるRは抵抗R20の純抵抗である。また、Qは、圧電素子100で発生した電荷量を示す。また、電荷量Qの変化の周波数をfとする。
【0033】
Vp=Q/C [f≫1/(2πCR)] −(式1)
Vp=R(dQ/dt) [f≪1/(2πCR)] −(式2)
一般に、操作者が圧電素子100を押す動作は低周波数である。したがって、本実施形態に係るセンサモジュール1の利用状況では、チャージアンプ20の出力電圧Vpは(式2)に基づいて決定される。すなわち、チャージアンプ20の出力電圧Vpは、電荷量の時間微分に比例する。また、押圧力と電荷量とは線形の関係である。
【0034】
したがって、押圧力を検出する場合、出力電圧の時間変化を継続的に取得する必要がある。また、(式2)に示すように、チャージアンプ20の出力電圧Vpは、電荷量の変化速度に比例するため、出力電圧Vpは、操作者の押圧動作に依存し、より広いダイナミックレンジが必要である。
【0035】
なお、コンデンサC20のキャパシタンス、抵抗R20の純抵抗を大きくすれば、(式1)に基づいて押圧力を検出できるが、回路動作が緩慢になり、起動後の安定化まで時間が掛かってしまう。したがって、(式2)によって出力電圧Vpが得られる領域でチャージアンプ20を利用する方が、センサモジュール1としての検出感度や出力の安定性の観点から好ましい。
【0036】
チャージアンプ20の出力電圧Vpは、第1経路S1および第2経路S2に出力される。
【0037】
図3は、本発明の第1の実施形態に係るセンサモジュールの第1経路および第2経路の回路図である。
【0038】
第1経路S1は、増幅回路31を備える。第2経路S2は、増幅回路32を備える。増幅回路31,32の入力端は、チャージアンプ20の出力端子に接続されている。
【0039】
増幅回路31は、オペアンプU1、抵抗R11,R12、コンデンサC1を備える。オペアンプU1の反転入力端子には、抵抗R11(本発明の「第1抵抗」に相当する。)とコンデンサC1(本発明の「第1コンデンサ」に相当する。)の直列回路が接続されている。コンデンサC1における抵抗R11に接続する端子と反対側の端子は、チャージアンプ20の出力端子に接続されている。オペアンプU1の非反転入力端子は、オペアンプ用の基準電位VSTDに接続されている。オペアンプU1の出力端子は、抵抗R12を介してオペアンプU1の反転入力端子に接続されている。抵抗R11の純抵抗と抵抗R12の純抵抗の比(R12/R11)によって、増幅率AVが設定される。
【0040】
増幅回路32は、オペアンプU2、抵抗R21,R22、コンデンサC2を備える。オペアンプU2の反転入力端子には、抵抗R21(本発明の「第2抵抗」に相当する。)とコンデンサC2(本発明の「第2コンデンサ」に相当する。)の直列回路が接続されている。コンデンサC2における抵抗R21に接続する端子と反対側の端子は、チャージアンプ20の出力端子に接続されている。オペアンプU2の非反転入力端子は、オペアンプ用の基準電位VSTDに接続されている。オペアンプU2の出力端子は、抵抗R22を介してオペアンプU2の反転入力端子に接続されている。抵抗R21の純抵抗と抵抗R22の純抵抗の比(R22/R21)によって、増幅率AVが設定される。
【0041】
増幅回路31の増幅率AVは、増幅回路の増幅率AVよりも高い(AV>AV)。増幅回路31は、チャージアンプ20の出力電圧Vpを増幅率AVで増幅し、出力電圧Vp1(本発明の「第1電圧」に相当する。)を演算部40に出力する。増幅回路32は、チャージアンプ20の出力電圧Vpを増幅率AVで増幅し、出力電圧Vp2(本発明の「第2電圧」に相当する。)を演算部40に出力する。これにより、演算部40には、チャージアンプ20の出力電圧Vpが異なる増幅率AV,AVで増幅された出力電圧Vp1,Vp2が入力される。なお、増幅率AV,AVは、桁が異なる程度に差を有する方が好ましい。
【0042】
演算部40は、判定部41、検出データ算出部42を備える。演算部40は例えばマイコンであり、第1、第2経路S1,S2に対する接続端にA/D変換回路を備える。A/D変換回路は、出力電圧Vp1,Vp2をアナログ信号からデジタルデータへ変換する。なお、A/D変換回路は、必須ではなくアナログ信号の出力電圧Vp1,Vp2を用いて、押圧力の算出を行ってもよい。ただし、マイコンにすることで、演算部40の構成を簡素化できる。以下では、説明を容易にするため、アナログ信号を用いた演算部40の処理、動作を説明する。
【0043】
判定部41は、処理切替用の閾値VTHを予め記憶している。判定部41は、出力電圧Vp1と閾値VTHとを比較して、比較結果を検出データ算出部42に出力する。例えば、判定部41は、コンパレータによって構成され、出力電圧Vp1が閾値VTH未満であればHiデータを検出データ算出部42に出力し、出力電圧Vp1が閾値VTH以上であればLowデータを検出データ算出部42に出力する。
【0044】
検出データ算出部42は、出力電圧Vp1,Vp2を積算して、押圧力の検出データを算出する。検出データ算出部42は、判定部41の出力に基づいて、出力電圧Vp1と出力電圧Vp2のいずれかを選択する。具体的には、検出データ算出部42は、判定部41からHiデータが入力されたことを検出すると、出力電圧Vp1を用いて、押圧力の検出データを算出する。検出データ算出部42は、判定部41からLowデータが入力されたことを検出すると、出力電圧Vp2を用いて、押圧量の検出データを算出する。
【0045】
図4は、本発明の第1の実施形態に係るセンサモジュールで用いる処理概念を示す図である。
【0046】
上述のように、増幅回路31の増幅率AVは、増幅回路32の増幅率AVよりも高い。したがって、出力電圧Vp1の振幅は、出力電圧Vp2の振幅よりも大きくなる。
【0047】
ここで、図4に示すように、チャージアンプ20の出力電圧Vpが高い場合、増幅回路31の線形領域を超えて飽和領域に入り、出力電圧Vp1の波形は歪む。一方、増幅回路32は増幅率AVが低いため、チャージアンプ20の出力電圧Vpが高くても、飽和領域に入らず、出力電圧Vp2の波形は歪まない。したがって、チャージアンプ20の出力電圧Vpが高い時には、増幅回路31の出力電圧Vp1を用いずに、増幅回路32の出力電圧Vp2を用いる。
【0048】
一方、チャージアンプ20の出力電圧Vpが低い場合、増幅回路31の線形領域を超えず飽和領域に入らないので、出力電圧Vp1は歪まない。増幅回路32は増幅率AVが低いため、増幅回路31と同様に飽和領域に入らず、出力電圧Vp2の波形は歪まない。この場合、出力電圧Vp1,Vp2のいずれを利用することも可能であるが、出力電圧Vp1は出力電圧Vp2よりも振幅が大きいため、デジタルサンプリングの分解能を高くすることができる。すなわち、精確な押圧力の検出が可能になる。したがって、チャージアンプ20の出力電圧Vpが低い時には、増幅回路31の出力電圧Vp2を用いずに、増幅回路31の出力電圧Vp1を用いる。
【0049】
なお、この出力電圧の選択処理を行うため、閾値VTHは、増幅回路31が飽和領域に入る電圧に基づいて設定されている。具体的には、増幅回路31が飽和領域に入る電圧よりも低く、所定の電圧マージンを加えた電圧に設定されている。
【0050】
ここで、増幅回路31の増幅率AVと増幅回路32の増幅率AVが異なるので、上述のままでは、チャージアンプ20の出力電圧Vpが高い時と低い時とで増幅率が異なる。すなわち、チャージアンプ20の出力電圧Vpが高い時の出力電圧Vp2と、チャージアンプ20の出力電圧Vpが低い時の出力電圧Vp2とは、増幅率が異なる。このように、チャージアンプ20の出力電圧Vpの高さによって、検出データ算出部42で押圧力の検出に用いられる電圧の増幅率が異なってしまう。
【0051】
検出データ算出部42は、図4に示すように、チャージアンプ20の出力電圧Vpが高く、増幅回路32の出力電圧Vp2を選択された場合、出力電圧Vp2に対して、補正係数を乗算して、補正出力電圧Vp2Cを算出する。補正係数は、増幅率AVと増幅率AVとの比(AV/AV)である。
【0052】
このような補正処理を行うことによって、チャージアンプ20の出力電圧Vpが高い時と低い時とで増幅率が異なる増幅回路を経由しても、同じ増幅率で増幅された出力電圧Vp1,Vp2Cを用いて、押圧力の検出を行うことができる。これにより、押圧力のダイナミックレンジが広くても、押圧力を精確に検出することができる。
【0053】
以上のように、本実施形態の構成および処理を用いることによって、押圧力の大きさ、速度に影響されることなく、押圧力に応じた出力電圧を、波形を崩すことなく増幅できる。これにより、押圧力の大きさ、速度に影響されることなく、高い分解能にて押圧力を検出することができる。また、本実施形態の構成および処理を用いることで、増幅率の異なる出力電圧Vp1,Vp2を、常時、押圧力の検出用に取得し続けることができる。したがって、適正なタイミングで精確に押圧力を検出することができる。
【0054】
なお、上述の説明では、増幅回路31,32の飽和を考慮した例を示したが、A/D変換回路の処理可能レンジを考慮する場合にも、上述の構成および処理を適用することができる。
【0055】
また、上述の増幅回路31,32には、それぞれコンデンサC1,C2を接続する態様を示した。オペアンプU1,U2は、入力電圧に直流のオフセット電圧が重畳されていると、このオフセット電圧分も増幅し、出力誤差を生じる。しかしながら、オペアンプU1,U2の入力端にコンデンサC1,C2を接続することによって、オペアンプU1,U2への入力オフセット電圧を除去することができる。
【0056】
したがって、本実施形態の増幅回路31,32のようにコンデンサC1,C2を接続することによって、押圧力をより精確に検出することができる。なお、入力オフセット電圧が殆ど0の場合には、コンデンサC1,C2を省略することもできる。
【0057】
さらに、本実施形態の検出回路10では、増幅回路31のオペアンプU1の入力端に接続される抵抗R11の純抵抗と、増幅回路32のオペアンプU2の入力端に接続される抵抗R21の純抵抗を同じにしている。図5は、入力端に接続される抵抗の比とオペアンプの増幅率比とを示すグラフである。図5の前提条件として、オペアンプU1に接続される抵抗R11と抵抗R12の抵抗比と、オペアンプU2に接続される抵抗R21と抵抗R22の抵抗比は同じである。すなわち、設計上では、オペアンプU1の増幅率AVとオペアンプU2の増幅率AVは同じであり、増幅率比は時間に依存せず一定になる。
【0058】
しかしながら、図5に示すように、抵抗R11の純抵抗と抵抗R21の純抵抗とが異なると時間の経過とともに増幅率比が変化してしまう。ここで、図5の二点鎖線はチャージアンプ20の出力電圧Vpであり、図5に示すように、押圧力によってチャージアンプ20の出力電圧Vpが変化している期間中に、すなわち、押圧力の検出の過渡期間中に、増幅率比が変化してしまう。
【0059】
一方、抵抗R11の純抵抗と抵抗R21の純抵抗とが同じ場合には、経過時間に関係なく、増幅率比は一定である。
【0060】
したがって、本実施形態の検出回路10のように、抵抗R11の純抵抗と抵抗R21の純抵抗とを同じにすることによって、増幅率比が変化せず、どのタイミングで出力電圧Vp1,Vp2のいずれが選択されても、常時、押圧力を精確に検出することができる。
【0061】
次に、本発明の第2の実施形態に係るセンサモジュールについて、図を参照して説明する。図6は、本発明の第2の実施形態に係るセンサモジュールの増幅回路部(経路)の回路図である。本実施形態に係るセンサモジュールは、第2経路S2Aの構成が、第1の実施形態に係るセンサモジュール1と異なる。他の構成は、第1の実施形態に係るセンサモジュール1と同じである。
【0062】
第2経路S2Aは、電圧伝送回路32Aを備える。電圧伝送回路32Aは、抵抗R21、抵抗R23、コンデンサC2を備える。コンデンサC2と抵抗R21は直列接続されており、この直列回路は、チャージアンプ20と演算部40との間に接続されている。この直列回路は、コンデンサC2がチャージアンプ20に接続され、抵抗R21が演算部40に接続されている。
【0063】
抵抗R21の演算部40側の端部は、抵抗R23を介して基準電位VSTDに接続されている。
【0064】
このような構成を用いることによって、S2Aの出力先の検出データ算出部42の入力インピーダンスが抵抗R23より十分大きい場合には、第2経路S2Aには、増幅率がR23/(R21+R23)の増幅回路が接続されている回路構成と電気的に同等の回路構成を備えることができる。なお、抵抗R23が抵抗R21よりも十分に大きい場合は、この増幅率は1とみなせる。さらに、本実施形態の構成では、第2経路S2Aのオペアンプを使用しないので、回路を簡素化できる。
【0065】
次に、本発明の第3の実施形態に係るセンサモジュールについて、図を参照して説明する。図7は、本発明の第3の実施形態に係るセンサモジュールの検出回路のブロック図である。本実施形態に係るセンサモジュール1Bは、第1の実施形態に係るセンサモジュール1に対して、増幅回路33を追加したものである。他の構成は、第1の実施形態に係るセンサモジュール1と同じである。
【0066】
検出回路10Bは、増幅回路33を備える。増幅回路33は、チャージアンプ20の出力端に接続される。増幅回路33は、チャージアンプ20の出力電圧Vpを増幅率AVで増幅して、出力電圧Vp’を増幅回路31,32に出力する。
【0067】
このような構成とすることで、チャージアンプ20の出力電圧Vpが微弱であっても、押圧力検出用に利用する電圧を十分な振幅レベルまで増幅して、検出データ算出部42に入力することができる。また、このような場合、増幅率が高い増幅回路31を経由する電圧は飽和によって歪みやすくなる可能性があるが、上述の構成および処理を用いることで、歪む電圧を使用せずとも精確に押圧力を検出することができる。これにより、さらにダイナミックレンジの広い押圧力の検出が可能になる。
【符号の説明】
【0068】
1,1B:センサモジュール
10,10B:検出回路
20:チャージアンプ
31,32,33:増幅回路
32A:電圧伝送回路
40:演算部
41:判定部
42:検出データ算出部
100:圧電素子
C1,C2,C20:コンデンサ
R11,R12,R20,R21,R22,R23:抵抗
S1:第1経路
S2,S2A:第2経路
U1,U2,U20:オペアンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7