(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202259
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】竪型ミル及び竪型ミルの分級機
(51)【国際特許分類】
B02C 15/04 20060101AFI20170914BHJP
B02C 23/30 20060101ALI20170914BHJP
B07B 7/083 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
B02C15/04
B02C23/30
B07B7/083
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-144563(P2013-144563)
(22)【出願日】2013年7月10日
(65)【公開番号】特開2015-16417(P2015-16417A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2016年5月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(74)【代理人】
【識別番号】100118267
【弁理士】
【氏名又は名称】越前 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】田村 雅人
【審査官】
高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/041628(WO,A1)
【文献】
特開2005−324104(JP,A)
【文献】
特開昭60−078650(JP,A)
【文献】
特開平08−189353(JP,A)
【文献】
米国特許第5957300(US,A)
【文献】
米国特許第6679500(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 15/00 − 15/16、
23/00 − 23/40
B07B 7/08 − 7/086
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭を粉砕する粉砕部と、
前記粉砕部の上方に位置して該粉砕部で粉砕されて成る石炭粉砕物と外部から導入される空気との混合流から微粉炭を分級する分級機を備えた竪型ミルにおいて、
前記分級機は、該分級機の中心軸周りに固定された多数の短冊状の固定フィンと、これらの固定フィンの下方に配置されたすり鉢状のリジェクトシュートを有する固定式分級機構と、前記固定式分級機構の前記多数の短冊状の固定フィン間で且つ前記リジェクトシュートの上部周縁を通過して内側に入り込む前記混合流に旋回を与えて前記微粉炭を分級する回転式分級機構を具備し、
前記固定式分級機構の前記リジェクトシュートの上部周縁には、前記分級機の中心軸に沿う方向の断面が円形状を成す整流リングが配置されている
ことを特徴とする竪型ミル。
【請求項2】
竪型ミルの石炭を粉砕する粉砕部の上方に位置して該粉砕部で粉砕されて成る石炭粉砕物と前記竪型ミルに導入される外部の空気との混合流から微粉炭を分級する竪型ミルの分級機において、
該分級機の中心軸周りに固定された多数の短冊状の固定フィンと、これらの固定フィンの下方に配置されたすり鉢状のリジェクトシュートを有する固定式分級機構と、前記固定式分級機構の前記多数の短冊状の固定フィン間で且つ前記リジェクトシュートの上部周縁を通過して内側に入り込む前記混合流に旋回を与えて前記微粉炭を分級する回転式分級機構を備え、
前記固定式分級機構の前記リジェクトシュートの上部周縁には、前記中心軸に沿う方向の断面が円形状を成す整流リングが配置されている
ことを特徴とする竪型ミルの分級機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塊状の石炭を粉砕して微粉炭として石炭焚きボイラに供給する竪型ミル及び竪型ミルの分級機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記した竪型ミルとしては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。
この竪型ミルは、石炭を粉砕する粉砕部と、この粉砕部で粉砕して成る石炭粉砕物と外部からの空気との混合流から微粉炭を分級して石炭焚きボイラに供給する分級機とから主として構成されている。
【0003】
分級機は、その中心軸周りに配置された多数の固定フィン及びこれらの固定フィンの下方に配置されたリジェクトシュートを具備した固定式分級機構を備えていると共に、固定フィンの内側に位置する回転式分級機構を備えている。
【0004】
この竪型ミルでは、固定式分級機構の固定フィン間を通して分級機内に導入した石炭粉砕物と外部空気との混合流を回転式分級機構に到達させることで、微粉炭と粒度の大きい粗粒子とに分級するようになっており、粗粒子はリジェクトシュートを介して粉砕部に戻し、微粉炭のみを回転式分級機構を通して石炭焚きボイラに供給するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-324104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来の竪型ミルにおいて、石炭粉砕物と外部空気との混合流が分級機内に導入される際には、混合流の流れが均一であるとは言い難く、過剰分級や分級不良が生じてしまうことがあった。
【0007】
分級機内に導入された混合流に対して過剰分級が生じると、本来分級機を通過して石炭焚きボイラに送られるべき微粉炭が粉砕部に戻ってしまい、石炭焚きボイラと竪型ミルとの間の差圧が増大する。一方、分級機内に導入された混合流に対して分級不良が生じると、粒度の大きい粗粒子までもが石炭焚きボイラのバーナに搬送されてしまい、石炭焚きボイラにおいて未燃焼の石炭量が増加する。
【0008】
したがって、過剰分級や分級不良が生じない分級機を有する竪型ミルの構築が望まれており、これを解決することが従来の課題となっていた。
【0009】
本発明は、上記した従来の課題に着目してなされたもので、過剰分級や分級不良の発生がほとんど皆無である分級性能の高い竪型ミル及び竪型ミルの分級機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するために、本発明の請求項1に係る発明は、石炭を粉砕する粉砕部と、前記粉砕部の上方に位置して該粉砕部で粉砕されて成る石炭粉砕物と外部から導入される空気との混合流から微粉炭を分級する分級機を備えた竪型ミルにおいて、前記分級機は、
該分級機の中心軸周りに固定された多数の短冊状の固定フィンと、これらの固定フィンの下方に配置されたすり鉢状のリジェクトシュートを有する固定式分級機構と、前記固定式分級機構の
前記多数の短冊状の固定フィン間で且つ前記リジェクトシュートの上部周縁を通過して内側に入り込む前記混合流に旋回を与えて前記微粉炭を分級する回転式分級機構を具備し、前記固定式分級機構の前記リジェクトシュートの上部周縁には、
前記分級機の中心軸に沿う方向の断面が円形状を成す整流リングが配置されている構成としたことを特徴としており、この竪型ミルの構成を前述した従来の課題を解決するための手段としている。
【0011】
一方、本発明の請求項2に係る発明は、竪型ミルの石炭を粉砕する粉砕部の上方に位置して該粉砕部で粉砕されて成る石炭粉砕物と前記竪型ミルに導入される外部の空気との混合流から微粉炭を分級する竪型ミルの分級機において、
該分級機の中心軸周りに固定された多数の短冊状の固定フィンと、これらの固定フィンの下方に配置されたすり鉢状のリジェクトシュートを有する固定式分級機構と、前記固定式分級機構の
前記多数の短冊状の固定フィン間で且つ前記リジェクトシュートの上部周縁を通過して内側に入り込む前記混合流に旋回を与えて前記微粉炭を分級する回転式分級機構を備え、前記固定式分級機構の前記リジェクトシュートの上部周縁には、
前記中心軸に沿う方向の断面が円形状を成す整流リングが配置されている構成としている。
【0012】
本発明に係る竪型ミル及び竪型ミルの分級機において、分級機の固定式分級機構におけるリジェクトシュートの上部周縁に、
分級機の中心軸に沿う方向の断面が円形状を成す整流リングを配置しているので、空気と石炭粉砕物との混合流は、リジェクトシュートの上部周縁を剥離することなく通過することとなる。
【0013】
すなわち、リジェクトシュートの上部周縁を通過して内側に入り込む空気と石炭粉砕物との混合流の流れが均一化されることとなり、したがって、分級機における分級過剰や分級不良が生じることがほとんど皆無となって、分級機特に回転式分級機構の分級性能の向上が図られることとなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る竪型ミルでは、過剰分級や分級不良の発生がほとんど皆無となって、その結果、分級性能の向上が実現するという非常に優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る竪型ミルの一実施形態を示す断面説明図である。
【
図2】
図1のA−A線位置に基づく断面説明図である。
【
図3】
図1における竪型ミル内の流動数値解析による
短冊状の固定フィン間でのガスのフローパターンを示す
図1円内の拡大説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る竪型ミルを図面に基づいて説明する。
図1〜
図3は、本発明に係る竪型ミルの一実施形態を示している。
【0017】
図1に示すように、この竪型ミル1は、石炭Cを粉砕する粉砕部2と、この粉砕部2で生成された石炭Cの粉砕物を任意の粒度に分ける分級機10とから主として構成されている。
【0018】
粉砕部2は、円錐台形状を成す基台3の上方中央に位置する粉砕テーブル21と、この粉砕テーブル21を定速で回転させるテーブル駆動ユニット22と、粉砕テーブル21の回転中心から放射状に配置された複数個(
図1では1個のみ示す)の加圧ローラ23を具備しており、加圧ローラ23は、ローラ加圧手段24により粉砕テーブル21の上面の環状溝21aに押圧されつつ回転するようになっている。
【0019】
一方、分級機10は、基台3上に設置されたケーシング4の上部に位置しており、固定式分級機構10A及び回転式分級機構10Bの二つの分級機構を組み合わせて成っている。
【0020】
固定式分級機構10Aは、
図2にも示すように、天井壁41から吊り下げられ且つ分級機10の中心軸周りに固定された多数の短冊状の固定フィン11と、これらの固定フィン11の下方に配置されたすり鉢状のリジェクトシュート12を具備しており、このリジェクトシュート12の上方で且つ多数の固定フィン11の間を分級機入口としている。
【0021】
回転式分級機構10Bは、固定式分級機構10Aにおける多数の固定フィン11の内側に位置しており、ケーシング4の上方に位置する石炭給排部5の給炭管51に回転自在に同軸配置された回転軸15と、この回転軸15に支持され且つ円周方向に任意のピッチで配置された複数の回転ブレード16と、回転軸15を駆動する回転軸駆動ユニット17を具備している。
【0022】
この場合、固定式分級機構10Aにおけるリジェクトシュート12の上部周縁には、
分級機10の中心軸に沿う方向の断面が円形状を成す整流リング13が配置されており、リジェクトシュート12の上方の分級機入口から分級機10に入り込む後述する空気Airと石炭Cの石炭粉砕物との混合流Gの流れを均一化するようになっている。
【0023】
また、この竪型ミル1は、ケーシング4の下部に位置して図示しない送風機に接続される一次空気供給口42と、粉砕テーブル21の周囲に設けられて一次空気供給口42と連通する一次空気吹き出し口43を備えており、この一次空気吹き出し口43は、一次空気供給口42から導入された外部の空気Airに旋回を与えつつ上方に向けて噴出させるようになっている。なお、符号52は、微粉炭送給管である。
【0024】
このような構成の竪型ミル1において、給炭管51から石炭Cを供給すると、この供給された石炭Cは、白抜き矢印に示すように、粉砕部2の回転している粉砕テーブル21の中央に落下して、粉砕テーブル21の回転による遠心力で粉砕テーブル21上を渦巻状の軌跡を描きながら環状溝21aに移動し、粉砕テーブル21と加圧ローラ23との間に挟み込まれて粉砕される。
【0025】
このように粉砕されて生じた石炭Cの石炭粉砕物は、一次空気吹き出し口43から噴出する一次空気Airにより乾かされ且つ旋回が与えられつつ混合流Gとなって上方に吹き上げられ、この吹き上げられた混合流Gにおける石炭粉砕物のうちの粒度が大きいものは、分級機10の手前で自重により落下して粉砕部2に戻される(一次分級)。
【0026】
一方、分級機10に到達した混合流Gには、固定式分級機構10Aの多数の固定フィン11間(分級機入口)を通過する際に弱い旋回が与えられる。
【0027】
この際、固定式分級機構10Aにおけるリジェクトシュート12の上部周縁には、整流リング13が配置されているので、
図3にも示すように、空気Airと石炭粉砕物との混合流Gは、その流れが均一化されてリジェクトシュート12の上方の分級機入口を通過する。
【0028】
そして、リジェクトシュート12の上方の分級機入口を通過して弱い旋回が与えられた混合流Gには、回転式分級機構10Bの回転している回転ブレード16に達した時点で強い旋回が与えられ、この際、所定粒度を超えた粗粒子Cbは回転ブレード16により弾き飛ばされて、リジェクトシュート12を通して粉砕部2に落下して再び粉砕される(二次分級)。
【0029】
また、所定粒度を超えた粗粒子Cbから分級された所定粒度以下の微粉炭Caは、回転式分級機構10Bを通して上方に搬送され、このように回転式分級機構10Bの上方に搬送された所定粒度以下の微粉炭Caは、微粉炭送給管52から図示しない石炭焚きボイラに送られる。
【0030】
上記したように、この実施形態に係る竪型ミル1では、分級機10の固定式分級機構10Aにおけるリジェクトシュート12の上部周縁に、
分級機10の中心軸に沿う方向の断面が円形状を成す整流リング13を配置しているので、リジェクトシュート12の上方の分級機入口
(固定式分級機構10Aの多数の固定フィン11間)から入り込む空気Airと石炭粉砕物との混合流Gの流れが均一化され、分級過剰や分級不良が生じることがほとんど皆無となって、分級機10特に回転式分級機構10Bの分級性能の向上が図られることとなる。
【0031】
本発明に係る竪型ミル及び竪型ミルの分級機の構成は、上記した実施形態に係る竪型ミル及び竪型ミルの分級機の構成に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0032】
1 竪型ミル
2 粉砕部
10 分級機
10A 固定式分級機構
10B 回転式分級機構
11 固定フィン(固定式分級機構)
12 リジェクトシュート(固定式分級機構)
13 整流リング(固定式分級機構)
15 回転軸(回転式分級機構)
16 回転ブレード(回転式分級機構)
17 回転軸駆動ユニット(回転式分級機構)
21 粉砕テーブル(粉砕部)
21a 環状溝(粉砕部)
22 テーブル駆動ユニット(粉砕部)
23 加圧ローラ(粉砕部)
24 ローラ加圧手段(粉砕部)
Air 空気
C 石炭
Ca 微粉炭
G 空気と石炭粉砕物との混合流