特許第6202267号(P6202267)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202267
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】燃料蒸発ガス排出抑止装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 25/08 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
   F02M25/08 Z
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-225477(P2013-225477)
(22)【出願日】2013年10月30日
(65)【公開番号】特開2015-86773(P2015-86773A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年9月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174366
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 史郎
(72)【発明者】
【氏名】松永 英雄
(72)【発明者】
【氏名】加村 均
【審査官】 小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−092135(JP,A)
【文献】 特開2004−156498(JP,A)
【文献】 特開2009−270494(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/00−15/10
F02B 47/00−47/06、49/00
F02M 25/00−25/14、37/00−37/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の吸気通路と燃料タンクとを連通する連通路と、
前記連通路に接続され前記連通路内の燃料蒸発ガスを吸着するキャニスタと、
前記連通路と前記キャニスタとの連通を開閉するキャニスタ開閉弁と、
前記吸気通路と前記キャニスタとの間の前記連通路を開閉するパージ弁と、
前記キャニスタの内部と外部とを連通する連通孔を介して前記キャニスタに圧力を発生させる圧力発生部と、
前記キャニスタの内圧を検出する圧力検出部と、
前記内燃機関が停止状態であるときに前記パージ弁を開弁状態にするとともに前記圧力発生部を作動させた状態で、前記キャニスタ開閉弁を閉制御して、前記圧力検出部により検出した前記キャニスタの内圧が第1の所定圧以上変化しない場合には前記キャニスタ開閉弁が開固着状態であると判定する、前記キャニスタ開閉弁の異常検出制御を行う制御部と、
を備えたことを特徴とする燃料蒸発ガス排出抑止装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記キャニスタ内の圧力が前記連通路内と差圧を有するときに、前記キャニスタ開閉弁を開制御して、前記圧力検出部により検出した前記キャニスタの内圧が第2の所定圧以上変化しない場合には前記キャニスタ開閉弁が閉固着状態であると判定することを特徴とする請求項に記載の燃料蒸発ガス排出抑止装置。
【請求項3】
前記燃料タンクと前記キャニスタとの間の前記連通路を開閉するタンク開閉弁を備え、
前記制御部は、前記異常検出制御時に更に前記タンク開閉弁を閉弁状態にすることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料蒸発ガス排出抑止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料蒸発ガス排出抑止装置に係り、詳しくは、燃料蒸発ガス排出抑止装置の異常検出技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料タンク内で蒸発した燃料蒸発ガスの大気への放出を防止するために、燃料タンクと内燃機関の吸気通路とを連通する連通路に介装するキャニスタと、キャニスタ内を大気に開放又は封鎖する切替弁と、燃料タンクとキャニスタとを連通又は封鎖する密閉弁と、吸気通路とキャニスタとの間の連通路の連通と遮断とを行うパージ弁とからなる燃料蒸発ガス排出抑止装置が設けられている。燃料蒸発ガス排出抑止装置は、給油時には切替弁と密閉弁を開きパージ弁を閉じて、燃料タンク内の燃料蒸発ガスをキャニスタに流出するようにし、燃料蒸発ガスをキャニスタ内に配設された活性炭に吸着させている。そして、燃料蒸発ガス排出抑止装置は、内燃機関の作動時に切替弁とパージ弁を開きキャニスタの活性炭に吸着させた燃料蒸発ガスを内燃機関の吸気通路に排出して燃料蒸発ガスを処理している。
【0003】
更に、燃料蒸発ガス排出抑止装置からの燃料蒸発ガスの漏れや当該装置におけるバルブの故障を検出する技術が開発されている。
例えば、内燃機関の作動時に切替弁、密閉弁及びパージ弁の開閉を制御して、内燃機関の吸気通路に発生する負圧によってパージ通路及び燃料タンク内を負圧にし、当該負圧の保持或いは不保持により漏れやバルブの故障等の異常を検出するようにしている。
【0004】
しかしながら、内燃機関の他に電動機を備え、主に電動機の駆動力により走行するプラグインハイブリッド車等の車両では、燃費向上のために内燃機関が作動される機会が少なく、よって内燃機関の作動時に燃料蒸発ガス排出抑止装置の異常検出を行おうとすると異常検出の可能な機会が少なくなってしまう。
そこで、内燃機関の作動機会の少ない車両に設けられる燃料蒸発ガス抑止装置では、燃料蒸発ガス排出抑止装置の通路内を減圧可能な負圧ポンプを備え、内燃機関の停止中に、負圧ポンプの作動と、切替弁、密閉弁及びパージバルブの開閉を制御して、負圧ポンプの吸入圧や燃料タンク内の圧力の変化に基づいて、燃料蒸発ガス排出抑止装置の異常検出を行っているものがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許4352945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
また、上記特許文献1のように負圧ポンプを備えた燃料蒸発ガス排出抑止装置において、連通路にキャニスタを直接介装するのではなく、連通路とキャニスタとの間に開閉弁(キャニスタ開閉弁)を備えた燃料蒸発ガス排出抑止装置が開発されている。
当該燃料蒸発ガス排出抑止装置では、キャニスタ開閉弁を閉止することで、燃料タンクからの燃料蒸発ガスがキャニスタに流入することなく、連通路を介して内燃機関の吸気通路に排出することができ、キャニスタに燃料蒸発ガスが吸着することを抑制することが可能となっている。
【0007】
そして、このようにキャニスタ開閉弁を有する燃料蒸発ガス排出抑止装置においては、当該キャニスタ開閉弁の開固着や閉固着といった異常検出を行うことが要求されている。
本発明は、この様な問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、キャニスタ開閉弁の異常検出が可能な燃料蒸発ガス排出抑止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1の燃料蒸発ガス排出抑止装置は、内燃機関の吸気通路と燃料タンクとを連通する連通路と、前記連通路に接続され前記連通路内の燃料蒸発ガスを吸着するキャニスタと、前記連通路と前記キャニスタとの連通を開閉するキャニスタ開閉弁と、前記吸気通路と前記キャニスタとの間の前記連通路を開閉するパージ弁と、前記キャニスタの内部と外部とを連通する連通孔を介して前記キャニスタに圧力を発生させる圧力発生部と、前記キャニスタの内圧を検出する圧力検出部と、前記内燃機関が停止状態であるときに前記パージ弁を開弁状態にするとともに前記圧力発生部を作動させた状態で、前記キャニスタ開閉弁を閉制御して、前記圧力検出部により検出した前記キャニスタの内圧が第1の所定圧以上変化しない場合には前記キャニスタ開閉弁が開固着状態であると判定する、前記キャニスタ開閉弁の異常検出制御を行う制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、請求項の燃料蒸発ガス排出抑止装置は、請求項において、前記制御部は、前記キャニスタ内の圧力が前記連通路内と差圧を有するときに、前記キャニスタ開閉弁を開制御して、前記圧力検出部により検出した前記キャニスタの内圧が第2の所定圧以上変化しない場合には前記キャニスタ開閉弁が閉固着状態であると判定することを特徴とする。
【0011】
また、請求項の燃料蒸発ガス排出抑止装置は、請求項1または2において、前前記燃料タンクと前記キャニスタとの間の前記連通路を開閉するタンク開閉弁を備え、前記制御部は、前記異常検出制御時に更に前記タンク開閉弁を閉状態にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、キャニスタ開閉弁が閉弁状態で圧力発生部が作動すると、キャニスタの内圧がすぐに変化する。また、パージ弁が開弁状態であって更にキャニスタ開閉弁が開弁状態である場合には、キャニスタは連通路を介して吸気通路と連通しているので、内燃機関が停止している場合には圧力発生部が作動してもキャニスタの内圧は大気圧からほとんど変化しない。
【0013】
したがって、パージ弁が開弁状態及び圧力発生部が作動した状態で、キャニスタ開閉弁を開閉制御することで、キャニスタの内圧の変化によって、実際にキャニスタ開閉弁が開弁状態あるいは閉弁状態であるかを判定することができる。そして、キャニスタ開閉弁の開閉制御とキャニスタの内圧の変化により判定した実際のキャニスタ開閉弁の開閉状態とが一致しない場合に、キャニスタ開閉弁の異常を検出することができる。
【0014】
特に、圧力発生部を作動させた状態でキャニスタ開閉弁を閉制御して、キャニスタの内圧が第1の所定圧以上変化しない場合には、キャニスタ開閉弁が実際に開弁状態であるので、キャニスタ開閉弁が開固着状態であると判定することができる。
請求項の発明によれば、キャニスタ内の圧力が連通路に対して差圧を有しているときに、キャニスタ開閉弁を開制御して、キャニスタの内圧が第2の所定圧以上変化しない場合には、キャニスタ開閉弁が実際に閉弁状態であるので、キャニスタ開閉弁が閉固着状態であると判定することができる。
【0015】
請求項の発明によれば、キャニスタ開閉弁の異常検出時にタンク開閉弁を閉弁状態にするので、タンク内の圧力による異常検出制御への影響を回避して、キャニスタ開閉弁の異常検出の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る燃料蒸発ガス排出抑止装置の概略構成図である。
図2】エバポレーティブリークチェックモジュールの切替弁の非作動時における内部構成部品の作動を示す図である。
図3】エバポレーティブリークチェックモジュールの切替弁の作動時における内部構成部品の作動を示す図である。
図4】本実施形態の電子コントロールユニットが実行するバイパス弁の異常検出の制御フローチャートの一部である。
図5】本実施形態の電子コントロールユニットが実行するバイパス弁の異常検出の制御フローチャートの残部である。
図6】開固着なし、閉固着なしと判定される場合の、バイパス弁の駆動信号、各バルブ、負圧ポンプ、各タイマの作動、キャニスタ圧力偏差の推移の一例を示すタイムチャートである。
図7】開固着ありと判定される場合の、バイパス弁の駆動信号、各バルブ、負圧ポンプ、各タイマの作動、キャニスタ圧力偏差の推移の一例を示すタイムチャートである。
図8】開固着なし、閉固着ありと判定される場合の、バイパス弁の駆動信号、各バルブ、負圧ポンプ、各タイマの作動、キャニスタ圧力偏差の推移の一例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る燃料蒸発ガス排出抑止装置1の概略構成図である。また、図2は、エバポレーティブリークチェックモジュール34の切替弁34eの非作動時における内部構成部品の作動を示す図であり、図3は、エバポレーティブリークチェックモジュール34の切替弁34eの作動時における内部構成部品の作動を示す図である。図2及び図3中の矢印は、図の状態でエバポレーティブリークチェックモジュール34内の負圧ポンプ34cを作動させた場合の空気の流れ方向を示す。なお、切替弁34eは、図2の非作動時が開弁状態であり、図3の作動時が閉弁状態である。以下、燃料蒸発ガス排出抑止装置1の構成を説明する。
【0018】
本実施形態の燃料蒸発ガス排出抑止装置1は、図示しない走行用モータ及びエンジン10(内燃機関)を備え、どちらか一方或いは双方を用いて走行するハイブリット車やプラグインハイブリッド車に用いられている。
図1に示すように、燃料蒸発ガス排出抑止装置1は、大きく車両に搭載されるエンジン10と、燃料を貯留する燃料貯留部20と、燃料貯留部20で蒸発した燃料の蒸発ガスを処理する燃料蒸発ガス処理部30と、車両の総合的な制御を行うための制御装置である電子コントロールユニット40(制御部)とで構成されている。
【0019】
エンジン10は、吸気通路噴射型(Multi Point Injection:MPI)のガソリンエンジンである。エンジン10には、エンジン10の燃焼室内に空気を取り込む吸気通路11が設けられている。また、吸気通路11の下流には、エンジン10の吸気ポート内に燃料を噴射する燃料噴射弁12が設けられている。燃料噴射弁12には、燃料配管13が接続され、燃料を貯留する燃料タンク21から燃料が供給される。
【0020】
エンジン10の吸気通路11には、吸入する空気の温度を検出する吸気温センサ14が配設されている。また、エンジン10には、エンジン10を冷却する冷却水の温度を検出する水温センサ15が配設されている。
燃料貯留部20は、燃料タンク21と、燃料タンク21への燃料注入口である燃料給油口22と、燃料を燃料タンク21から燃料配管13を介して燃料噴射弁12に供給する燃料ポンプ23と、燃料タンク21から燃料蒸発ガス処理部30への燃料の流出を防止する燃料カットオフバルブ24と、給油時に燃料タンク21内の液面を制御するレベリングバルブ25とで構成されている。また、燃料タンク21内で発生した燃料蒸発ガスは、燃料カットオフバルブ24よりレベリングバルブ25を経由して、燃料蒸発ガス処理部30に排出される。
【0021】
燃料蒸発ガス処理部30は、パージ配管(連通路)31と、ベーパ配管(連通路)32と、キャニスタ33と、エバポレーティブリークチェックモジュール34と、密閉弁35(タンク開閉弁)と、パージバルブ36(パージ弁)と、バイパス弁37(キャニスタ開閉弁)と、圧力センサ38とを備えている。
パージ配管31は、エンジン10の吸気通路11とキャニスタ33とを連通するように設けられている。
【0022】
ベーパ配管32は、燃料タンク21のレベリングバルブ25とパージ配管31とを連通するように設けられている。即ち、ベーパ配管32は、燃料タンク21とパージ配管31とを連通するように設けられている。
キャニスタ33は、内部に活性炭を有している。また、キャニスタ33には、燃料タンク21内で発生した燃料蒸発ガス或いは活性炭に吸着した燃料蒸発ガスが流通可能なようにパージ配管31が接続されている。また、キャニスタ33には、活性炭に吸着した燃料蒸発ガスをエンジン10の吸気通路11に放出するときに外気を吸入する大気孔(連通孔)33aが設けられている。
【0023】
図2及び図3に示すように、エバポレーティブリークチェックモジュール34には、キャニスタ33の大気孔33aに通じるキャニスタ側通路34aと、大気に通じる大気側通路34bとが設けられている。大気側通路34bには、負圧ポンプ(圧力発生部)34cを備えるポンプ通路34dが連通している。また、エバポレーティブリークチェックモジュール34には、切替弁34eとバイパス通路34fとが設けられている。切替弁34eは、電磁ソレノイドを備え、当該電磁ソレノイドで駆動される。切替弁34eは、電磁ソレノイドが無通電の状態(OFF)である時には、図2のように、キャニスタ側通路34aと大気側通路34bとを連通させる(切替弁34eの開弁状態に相当)。また、切替弁34eは、電磁ソレノイドに外部から駆動信号が供給され通電の状態(ON)である時には、図3のように、キャニスタ側通路34aとポンプ通路34dとを連通させる(切替弁34eの閉弁状態に相当)。バイパス通路34fは、常時キャニスタ側通路34aとポンプ通路34dとを導通させる通路である。そして、バイパス通路34fには、小径(例えば、直径0.45mm)の基準オリフィス34gが設けられている。また、ポンプ通路34dの負圧ポンプ34cとバイパス通路34fの基準オリフィス34gとの間には、ポンプ通路34d或いは基準オリフィス34g下流のバイパス通路34f内の圧力を検出する圧力センサ34h(圧力検出部)が設けられている。
【0024】
圧力センサ34hは、キャニスタ33の内圧であるキャニスタ内圧を検出するものである。
密閉弁35は、燃料タンク21とパージ配管31との間のベーパ配管32に介装されている。密閉弁35は、電磁ソレノイドを備え、当該電磁ソレノイドで駆動される。密閉弁35は、電磁ソレノイドが無通電の状態(OFF)で閉弁状態となり、電磁ソレノイドに外部から駆動信号が供給され通電の状態(ON)となると開弁状態となる常時閉タイプの電磁弁である。密閉弁35は、電磁ソレノイドが無通電の状態(OFF)で閉弁状態であるとベーパ配管32を封鎖し、電磁ソレノイドに外部から駆動信号が供給され通電の状態(ON)で開弁状態であるとベーパ配管32を開放する。即ち、密閉弁35は、閉弁状態であれば燃料タンク21を密閉状態に封鎖し、燃料タンク21内で発生した燃料蒸発ガスのキャニスタ33或いはエンジン10の吸気通路11への流出を不可とし、開弁状態であれば燃料蒸発ガスのキャニスタ33或いはエンジン10の吸気通路11への流出を可能とする。
【0025】
パージバルブ36は、吸気通路11とパージ配管31のベーパ配管32の接続部との間のパージ配管31に介装されている。パージバルブ36は、電磁ソレノイドを備え、当該電磁ソレノイドで駆動される。パージバルブ36は、電磁ソレノイドが無通電の状態(OFF)で閉弁状態となり、電磁ソレノイドに外部から駆動信号が供給され通電の状態(ON)となると開弁状態となる常時閉タイプの電磁弁である。パージバルブ36は、電磁ソレノイドが無通電の状態(OFF)で閉弁状態であるとパージ配管31を封鎖し、電磁ソレノイドに外部から駆動信号が供給され通電の状態(ON)で開弁状態であるとパージ配管31を開放する。即ち、パージバルブ36は、閉弁状態であればキャニスタ33或いは燃料タンク21よりエンジン10の吸気通路11への燃料蒸発ガスの流出を不可とし、開弁状態であればキャニスタ33或いは燃料タンク21よりエンジン10の吸気通路11へ燃料蒸発ガスの流出を可能とする。
【0026】
バイパス弁37は、パージ配管31のベーパ配管32の接続部とキャニスタ33との間のパージ配管31に介装されている。バイパス弁37は、電磁ソレノイドを備え、当該電磁ソレノイドで駆動される。バイパス弁37は、電磁ソレノイドが無通電の状態(OFF)で開弁状態となり、電磁ソレノイドに外部から駆動信号が供給され通電の状態(ON)となると閉弁状態となる常時開タイプの電磁弁である。そして、バイパス弁37は、電磁ソレノイドが無通電の状態(OFF)で開弁状態であるとキャニスタ33をパージ配管31に開放し、電磁ソレノイドに外部から駆動信号が供給され通電の状態(ON)で閉弁状態であるとキャニスタ33を封鎖する。即ち、バイパス弁37は、閉弁状態であればキャニスタ33を密閉し、キャニスタ33への燃料蒸発ガスの流出或いはキャニスタ33からの燃料蒸発ガスの流出を不可とする。そして、バイパス弁37は、開弁状態であればキャニスタ33への燃料蒸発ガスの流入或いはキャニスタ33からの燃料蒸発ガスの流出を可能とする。
【0027】
圧力センサ38は、燃料タンク21と密閉弁35との間のベーパ配管32に配設されている。そして、圧力センサ38は、燃料タンク21の内圧であるタンク内圧を検出するものである。なお、圧力センサ38は、密閉弁35が閉弁状態であって、燃料タンク21が密閉されている時にのみ、燃料タンク21のみの内圧を検出することができる。
電子コントロールユニット40は、車両の総合的な制御を行うための制御装置であり、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)、中央演算処理装置(CPU)及びタイマ等を含んで構成される。
【0028】
電子コントロールユニット40の入力側には、上記吸気温センサ14、水温センサ15、圧力センサ34h及び圧力センサ38が接続されており、これらのセンサ類からの検出情報が入力される。
一方、電子コントロールユニット40の出力側には、上記燃料噴射弁12、燃料ポンプ23、負圧ポンプ34c、切替弁34e、密閉弁35、パージバルブ36及びバイパス弁37が接続されている。
【0029】
電子コントロールユニット40は、各種センサ類からの検出情報に基づいて、負圧ポンプ34cの運転と、切替弁34e、密閉弁35、パージバルブ36及びバイパス弁37の開閉とを制御し、燃料タンク21にて発生した燃料蒸発ガスのキャニスタ33への吸着や、エンジン10の運転時にキャニスタ33に吸着した燃料蒸発ガスや燃料タンク21にて発生した燃料蒸発ガスをエンジン10の吸気通路11へ排出するパージ処理制御を行うものである。また、電子コントロールユニット40は、エンジン10の運転の停止時には、燃料貯留部20及び燃料蒸発ガス処理部30の漏れの検出や、バイパス弁37が開弁状態で固着する開固着や閉弁状態で固着する閉固着の有無を検出する異常検出制御(開固着判定制御、閉固着判定制御)を行うものである。
【0030】
以下、このように構成された本発明に係る電子コントロールユニット40でのバイパス弁37の異常検出制御について説明する。当該バイパス弁37の異常検出制御は、キーオフ、ソーク中、即ちエンジン10の運転が停止しているときに実施される。
図4は、電子コントロールユニット40が実行するバイパス弁37の異常検出の制御フローチャートの一部である。図5は、電子コントロールユニット40が実行するバイパス弁37の異常検出の制御フローチャートの残部である。
【0031】
また、図6〜8は、バイパス弁37の異常検出制御におけるバイパス弁37の駆動信号、各バルブ(切替弁34e、パージバルブ36)、負圧ポンプ34c、各タイマ(バイパス弁開固着判定タイマ、バイパス弁閉固着判定タイマ)の作動、キャニスタ33の圧力偏差の推移を示すタイムチャートである。図6は、バイパス弁37の開固着なし、閉固着なしと判定される場合の一例を示し、図7は開固着ありと判定される場合の一例、図8は開固着なし、閉固着ありと判定される場合の一例を示す。
【0032】
バイパス弁37の異常検出制御では、図4、5に示すように、始めにステップS10において、切替弁34eを閉弁状態に、バイパス弁37及びパージバルブ36を夫々開弁状態に制御する。更に圧力センサ34hによりキャニスタ内圧を検出し、検出した圧力を基準圧力Pbとして記憶する。そして、ステップS20に進む。
なお、エンジン10が停止状態のとき、吸気通路11は大気圧となる。これは、吸気通路11の下流は吸気バルブ50、気筒内51、排気バルブ52を介して排気管53に通じており、排気管53は大気に開放されているからである。また、吸気通路11の上流側もスロットルバルブ55、エアクリーナ56を介して大気側に開放されている。このように、エンジン10停止中は、これら吸気排気バルブ50、51の隙間およびスロットルバルブ55の隙間等から吸気通路11の圧力が大気側に開放されるので、吸気通路11は大気圧となる。
【0033】
ステップS20では、負圧ポンプ34cを作動開始させる。そして、ステップS30に進む。
ステップS30では、バイパス弁37を閉弁状態にするとともに、開固着判定タイマを0からスタートさせる。そして、ステップS40に進む。
ステップS40では、圧力センサ34hによりキャニスタ内圧Pを検出する。そして、ステップS50に進む。
【0034】
ステップS50では、ステップS40で検出したキャニスタ内圧Pと、ステップS10で記憶した基準圧力Pbとの差である圧力偏差ΔP(=|P―Pb|)を演算する。そして、ステップS60に進む。
ステップS60では、ステップS50で演算した圧力偏差ΔPが、第1の所定圧P1以上であるか否かを判別する。第1の所定圧P1は、バイパス弁37を閉弁状態にして負圧ポンプ34cを第1の所定時間T1作動した場合に達する圧力偏差ΔPをあらかじめ確認しておき、その下限値に設定すればよい。なお、第1の所定時間T1は、負圧ポンプ34cの作動により圧力偏差ΔPが十分に大きくなるような値に適宜設定すればよい。圧力偏差ΔPが、第1の所定圧P1以上である場合には、ステップS70に進む。圧力偏差ΔPが、第1の所定圧P1未満である場合には、ステップS80に進む。
【0035】
ステップS70では、バイパス弁37が開固着なしと判定する。そして、図5のステップS110に進む。
ステップS80では、ステップS30で開固着判定タイマがスタートしてからの経過時間Taを読み込む。そして、ステップS90に進む。
ステップS90では、ステップS80で読み込んだ経過時間Taが第1の所定時間T1以上であるか否かを判別する。経過時間Taが第1の所定時間T1以上である場合には、ステップS100に進む。経過時間Taが第1の所定時間T1未満である場合には、ステップS40に戻る。
【0036】
ステップS100では、バイパス弁37が開固着ありと判定する。そして、本ルーチンを終了する。
ステップS110では、閉固着判定タイマを0からスタートさせる。そして、ステップS120に進む。
ステップS120では、圧力センサ34hによりキャニスタ内圧Pを検出する。そして、ステップS130に進む。
【0037】
ステップS130では、ステップS120で検出したキャニスタ内圧Pと、ステップS10で記憶した基準圧力Pbとの差である圧力偏差ΔP(=|P−Pb|)を演算する。そして、ステップS140に進む。
ステップS140では、ステップS130で演算した圧力偏差ΔPが、第2の所定圧P2以下であるか否かを判別する。第2の所定圧P2は、圧力偏差が第1の所定圧P1である状態からバイパス弁37が開弁状態になってキャニスタ33内の圧力が吸気通路11に開放され、圧力偏差ΔPが低下し、第2の所定時間T2経過した場合に到達する圧力偏差ΔPをあらかじめ確認しておき、その上限値に設定すればよい。なお、第2の所定時間T2は、バイパス弁37の開弁によりキャニスタ内圧が負圧状態から上昇して圧力偏差ΔPが0に近くなるような値に適宜設定すればよい。圧力偏差ΔPが、第2の所定圧P2以下である場合には、ステップS150に進む。圧力偏差ΔPが、第2の所定圧P2より大きい場合には、ステップS160に進む。
【0038】
ステップS150では、バイパス弁37が閉固着なしと判定する。そして、本ルーチンを終了する。
ステップS160では、ステップS30で閉固着判定タイマがスタートしてからの経過時間Tbを読み込む。そして、ステップS170に進む。
ステップS90では、ステップS160で読み込んだ経過時間Tbが第2の所定時間T2以上であるか否かを判別する。経過時間Tbが第2の所定時間T2以上である場合には、ステップS180に進む。経過時間Tbが第2の所定時間T2未満である場合には、ステップS120に戻る。
【0039】
ステップS180では、バイパス弁37が閉固着ありと判定する。そして、本ルーチンを終了する。
なお、以上のステップS10からステップS100までの制御が本願発明の開固着判定制御に該当し、ステップS110からステップS180までの制御が本願発明の閉固着判定制御に該当する。
【0040】
以上のように制御することで、本発明に係る燃料蒸発ガス排出抑止装置1では、例えば、図6に示すように、バイパス弁37が正常であれば、エンジン10が停止状態であって吸気通路11に負圧が発生していないときに、バイパス弁37を閉弁するとともに切替弁34eを閉弁させることでキャニスタ33は封鎖された状態となり、負圧ポンプ34cを作動させることでキャニスタ内圧Pが大気圧から低下し、圧力偏差ΔPが増加する。そして、この圧力偏差ΔPが第1の所定時間T1内に第1の所定圧P1に達すれば、バイパス弁37が実際に閉弁状態になっており、開弁状態で固着していないと判定することができる。
【0041】
図7に示すように、バイパス弁37が開弁状態で固着している場合には、負圧ポンプ34cが作動しても、キャニスタ内圧がほとんど変化せず、圧力偏差ΔPが増加しない。したがって、バイパス弁37を閉制御しているにもかかわらず、圧力偏差ΔPが第1の所定時間T1内に第1の所定圧P1まで増加しないことをもって、バイパス弁37が開状態で固着していると判定することができる。
【0042】
バイパス弁37が開固着していないと判定された場合は、次に、圧力偏差ΔPが第1の所定圧P1に達した状態からバイパス弁37を開作動させる。バイパス弁37を開弁させれば、エンジン10が停止してパージバルブ36が開弁状態であるので、キャニスタ33内の負圧が吸気通路11へ開放され、圧力偏差ΔPが減少する。そして、図6に示すように、この圧力偏差ΔPが第2の所定時間T2に達する前に第2の所定圧P2まで減少すれば、バイパス弁37が閉状態で固着していないと判定することができる。図8に示すように、圧力偏差ΔPが第2の所定時間T2経過しても第2の所定圧P2まで減少しなければ、バイパス弁37が閉状態で固着していると判定することができる。
【0043】
このように、エンジン停止時にパージバルブ36を開弁状態とし負圧ポンプ34cを使用して、バイパス弁37の開閉制御によるキャニスタ内の圧力の変化に基づいて、バイパス弁37開固着及び閉固着を判定することができる。
また、上記実施形態では、開固着判定制御を行い、開固着状態でないと判定した場合には、圧力偏差ΔPが第1の所定圧P1まで増加している状態から続けて閉固着判定制御を行っている。これにより、開固着及び閉固着の両方を続けて短時間で判定することができる。
【0044】
また、バイパス弁37の開固着及び閉固着の判定を圧力センサ34hのみの検出結果に基づいて行っているので、複数の圧力センサの検出結果に基づいてバイパス弁37の開固着及び閉固着の判定を行うよりも、圧力センサの故障により判定が不能となる可能性を減少させることができる。
以上で発明の実施形態の説明を終えるが、本発明の形態は上記実施形態に限定されるものではない。
【0045】
例えば、上記開固着判定制御及び閉固着判定制御のうち、開固着判定制御のみ行ってもよい。
また、キーオフによるエンジン停止時だけでなく、吸気通路11が大気圧に近い状態であれば、開固着判定及び閉固着判定が可能である。
また、上記実施形態では、エバポレーティブリークチェックモジュール34に負圧ポンプ34cを備えているが、正圧を発生させる正圧ポンプを代わりに用いてもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、車両をハイブリッド車両としているが、これに限定されるものではなく、キャニスタ33内に圧力を付与することのできる圧力ポンプと、キャニスタ33内の圧力を検出する圧力センサを有し、バイパス弁37を有する燃料蒸発ガス排出抑止装置において広く、当該バイパス弁37の開固着及び閉固着といった異常を検出することが可能である。
【符号の説明】
【0047】
10 エンジン(内燃機関)
11 吸気通路
21 燃料タンク
31 パージ配管(連通路)
32 ベーパ配管(連通路)
33 キャニスタ
34c 負圧ポンプ(圧力発生部)
34h 圧力センサ(圧力検出部)
35 密閉弁(タンク開閉弁)
36 パージバルブ(パージ弁)
37 バイパス弁(キャニスタ開閉弁)
40 電子コントロールユニット(制御部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8