(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような中実構造を持たない非空気入りタイヤは、周方向に隣り合うウェブスポークの間に比較的大きな間隔が存在することにより非空気入りタイヤが接地する部分で不均一な接地(いわゆるバックリング(座屈)現象)となるため、走行中に振動が発生し、トレッド部分の変形も増大し、転がり抵抗も増大する。このようなバックリング現象を防止する手段として、たとえば、スポーク構造体をタイヤ幅方向に分割し、これら分割片におけるフィンの位置を互いにずらすことにより、スポーク構造体のバックリングを抑えることが提案されている。(特許文献2)この方法によりバックリングをある程度抑えることが可能であるが、スポーク構造体において周方向に隣り合う一対のフィン間に比較的大きな間隔が存在することには替わりがないので、そのバックリング抑制効果が必ずしも十分ではない。また、支持体であるウェブスポークの数を増やして密にする方法は、タイヤの周方向の剛性変動を小さくすることが可能になり、バックリングの発生を改善することが可能になると考えられるが、タイヤ重量が増加するという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、パンクレスでエアメンテナンスフリーの非空気入りタイヤの利点および圧縮空気による路面との接地面の均一な支持が可能という空気入りタイヤの利点を融合して、上記のバックリング等の問題点を解決したものである。本発明は、タイヤホイールに取り付けた円環状の内環バンドおよび支持体によって支持された外環バンドの間に複数の空気嚢が存在することを特徴とする。さらに、本発明のタイヤにおけるこれらの空気嚢は各々が外部と連通した吸排気機構を備えており、タイヤの転動により自動的に吸排気を繰り返すようになっている。
【0008】
すなわち、路面に接地している領域における外環バンドは自動車全体の重量を受けて扁平状態に撓み、これに対応してこの部分に存在する空気嚢内のエアーは通気孔から抜けて、空気嚢は外環バンド形状に合わせて扁平化する。タイヤが回転し、この扁平化した領域が路面から離れると外環バンドが元の円形状態に復元し始め、これに対応して空気嚢も通気孔からエアーを吸気し膨らみ、通常の膨らんだ状態に戻り始める。さらに、タイヤが回転しこれらの領域が最上部付近に来ると完全に元の状態、すなわち外環バンドは円形状態になり、空気嚢は完全に脹らんだ状態に復元する。タイヤの回転に合わせてこれらの状態が繰り返される。
【0009】
本発明は、具体的には、ホイールの外周側に円環状の内環バンドおよび前記内環バンドと離間した同心円の円環状の外環バンドを有するタイヤにおいて、前記内環バンドおよび外環バンドの間に外部と連通した吸排気機構を備えた空気嚢を有することを特徴とするタイヤであり、前記内環バンドおよび外環バンドを連結する支持体を備え、前記空気嚢がタイヤ周方向に複数存在する。さらに、前記外環バンドはタイヤ用ゴム組成物で構成されている。
【発明の効果】
【0010】
従来の支持体(スポーク)構造体を有する非空気入りタイヤは、路面との接地面が支持体の存在しない部分が窪み、支持体の位置と連動した不均一な状態になるが、本発明のタイヤは支持体の存在しない部分を空気嚢で支持しているので、路面との接地が均一な状態となる。従って、タイヤの転動による振動の発生も抑制され、ころがり抵抗の増大もなくなり、乗心地性も良好となる。また、支持体の変形も空気嚢で適度に抑えられているため、トレッドの変形が必要以上に大きくならず適度な接地面積を確保でき、この点からもタイヤのころがり抵抗が大きくならない。支持体の変形が極端に大きくならないので支持体の耐疲労性能が向上し寿命も長くなる。さらに支持体より軽量な空気嚢を併用する事で、支持体を必要以上に増やす必要がなく、タイヤ重量を増大させることもない。加えて、複数の空気嚢が使用されているので、1個の空気嚢が損傷しても他の周辺の空気嚢でカバー出来、ある程度はランフラット走行が可能である。
このように本発明は、非空気入りタイヤの利点であるパンクに強いという特性と、空気入りタイヤの利点である良好な乗心地、低ころがり抵抗特性を合わせ持ちながら、タイヤ重量も増大させないという優れた効果を持つ。
本発明の目的、特徴、局面、及び利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、不均一な接地状態となる従来のスポーク構造体に空気嚢を付加して均一な接地状態を実現し、乗心地、ころがり抵抗を改善したタイヤに関するものである。
図1は、本発明の空気嚢付きスポーク構造体を有するタイヤの一実施形態を示す図である。タイヤホイール12に本発明の空気嚢付きスポーク構造体であるタイヤ11が装着されている。本発明の空気嚢付きスポーク構造体であるタイヤ11は、タイヤホイール12の外周に密着して嵌まる円環状の内環バンド13、この内環バンド13から離間して内環バンド13と同心円の円環状の外環バンド14、内環バンド13に対して外環バンド14を支持する支持体(スポーク)15、並びに内環バンド13と外環バンド14の間に存在する空気嚢17から構成されている。内環バンド13はタイヤホイール12の外周に密着して嵌まり、外環バンド14の外周にはトレッドリング16が装着され、このトレッドリング16が地面と接地する。外環バンド14をトレッドと同じタイヤ用ゴム組成物で構成することにより、外環バンド14をトレッドリング16と兼用することもできる。あるいは、外環バンドおよび/内環バンドを支持体と同じ材質で構成することにより支持体と兼用することもできる。
【0013】
空気嚢17は、円環状の内環バンド13および外環バンド14の幅方向の両側に配置されている支持体15の間に配置されていて、荷重を受けていない時はエアーを含み膨らんだ状態(通常状態)になっている。支持体15は内環バンド13および外環バンド14の幅方向の両側だけでなく中間に配置されていても良く、その場合空気嚢17はその中間に配置された支持体15の間にも存在している。従って、この場合空気嚢17は内環バンド13および外環バンド14の両側面の間に複数存在している。また、内環バンド13および外環バンド14のタイヤ径方向の中間にも支持体が存在しても良い。この場合もタイヤ径方向において内環バンド13および外環バンド14の間に複数の空気嚢が存在する。
図1では支持体15は内環バンド13および外環バンド14に対して略垂直方向に棒状または柱状の形状で配置されているが、斜めに配置されても良いし、あるいは網の目状に配置されていても良いし、梁構造状に組まれていても良い。この場合、内環バンド13および外環バンド14の間は、支持体によって区分された多数の小空間になっているがこれらに対応して空気嚢がそれぞれに配置されても良い。
【0014】
支持体は網状、梁状、棒状や柱状でも板状体でも良く、網状、梁状、棒状や柱状の場合には隣接する小空間はつながっているので、この中に配置された空気嚢は脹らんだ状態では隣の空間に入り込む場合もある。外環バンド14がトレッドリングを兼用する場合は、通常のトレッド用のタイヤ用ゴム組成物で構成する。外環バンド14の外側にトレッドリングを被せる場合には、支持体と同じ材料で構成することができるし、外環バンド14と支持体15を一体物として構成することもできる。空気嚢17は脹らんでいるときは、空気嚢17は外環バンド14を内側から外側へ押して、外環バンド14の円環形状を保持する役割も果たしている。尚、
図1等ではホイールはスポーク状の支持体で構成されているが、他の支持体(たとえば、スパイラルリング状)で構成されていても良い。
【0015】
図2は、本発明の空気嚢付きスポーク構造体から構成されるタイヤの機能を示す模式図であり、タイヤを接地させた状態でホイール中心を含む縦方向に切断した断面図で示している。
図2では、ホイール22を構成するリム23に支持体25が嵌まっているが、支持体25のリムに嵌合する部分に内環バンドが嵌まり、この内環バンドに支持体25が結合している構造としても良い。
図2に示すようにリムに嵌合または結合する内環バンドと支持体は一体となっていても良い。リム23と離間して同心円状にトレッド24が支持体25によってリム23に支持されている。支持体25は格子状に組まれてリム23とトレッド24の間に配置され、これらの格子状に組まれた支持体内に空気嚢27が挿入されている。
図2ではトレッド24は外環バンドと一体となっているが、
図1で示すように別体でも良い。別体の場合には、支持体25とトレッド24の間に外環バンドが存在する。あるいは、支持体25の外径側が外環バンドと一体となっていても良い。いずれにしても路面と接触する部分はトレッドと同じ機能を持たせる必要がある。
【0016】
トレッド24が上側にあるときは、荷重がかかっていないので、弾性体である支持体25は復元した状態にあり、トレッド24を円環状態に保持している。同時に支持体内に挿入された空気嚢27も自己復元力で復元し膨らんだ状態となっている。このとき空気嚢27に備わる吸気口28が自動的に開いて、外気から空気嚢27内にエアー29を取り込む。
空気嚢27に備わる排気口30は閉じた状態になっているので、空気嚢27内のエアーが外部へ排出されることはない。また、吸気口28および排気口30に逆止弁を設けることによりエアーが一方だけへ流れ込む機能を確実にすることができる。
【0017】
地面と接地している下側のトレッド24においては、荷重がかかっているので、弾性体である支持体25は変形した状態となる。
図2においては、支持体25はタイヤの幅方向に押されているが、当然タイヤの周方向にも変形している。支持体25の変形に伴い、空気嚢27も下側に押されて変形した状態になるとともに、トレッド24の内面全体(支持体25がトレッド24に接触している部分を除く)に空気嚢27が接触して、トレッド24の内面全体を押圧する。従って、支持体25とトレッド24が接触していない部分も空気嚢27により押されるので、接地面がより均一な状態となる。(空気嚢がないとこの部分で接地圧が不均一な状態となる。)空気嚢27が変形状態になると排出口30が自動的に開いて空気嚢27の内部のエアー31が外気へ排気され、接地時の衝撃を吸収する。つまり緩衝機能も向上する。一方、空気嚢24に備わる吸気口28は閉じた状態になっており、この吸気口28からエアーが排気されることはない。特に吸気口28に逆止弁を設けることによりこの効果をさらに高めることができる。尚、ホイール22(リム23を含む)は荷重によって変形しないので、エンジンギアからのスムーズな回転がホイールに伝達される。
【0018】
図3は、路面に接地しながら回転する本発明のタイヤ側面の状態を示す模式図である。
図3におけるタイヤは、ホイール41の外周に内環バンド42が装着され、内環バンド42に対して支持体44に支持された同心円状の外環バンド43が備わる。内環バンド42および外環バンド43の間において格子状の支持体内に空気嚢45が配置されている。
図3では、
図2と同様に外環バンド43はトレッドリングと一体となっているが、別体でトレッドリングが外環バンド43に装着されても良い。タイヤは矢印R方向へ回転し、外環バンド43は接地領域48で地面と接地している。接地領域48において、自動車の荷重によって支持体44および外環バンド43は変形し、これらの変形に対応して空気嚢45も変形している。
【0019】
タイヤが回転して接地領域48で地面と接地すると、空気嚢45が圧縮変形し始め、空気嚢45に備わる排気孔が開き空気嚢45内のエアー46が外部へ排気される。この空気嚢45に備わる排気孔が最外層である外環バンド43やトレッドと連通して、外環バンドやトレッドに設けた細かい貫通孔を通じて外部へエアー46を排気するようにすれば、効果的なエアーの排出を行なうことができる。また、このようにすると、例えばウェット路面において、排出されたエアーが接地面付近の水を掃き出す事を補助する為、排水性が向上し、ウェット性能が向上するという効果ももたらす。
【0020】
さらにタイヤが回転し、外環バンド43が接地領域48から離れると、自動車の荷重は支持体44および外環バンド43にかからなくなるので、それらの弾性体の復元力で元の荷重がかからない状態へ戻っていき、タイヤの上側で円環状態になる。これに対応して空気嚢45も自動的に復元していく。それと同時に空気嚢45の吸気孔が自動的に開き、外部からエアー47が空気嚢45内に取り込まれて空気嚢45が一定圧力で膨らんだ状態になる。タイヤの回転に応じてこれらが繰り返されるので、外環バンド(トレッド)43と地面との接地状態が常に均一に保持される。この結果、振動の発生も少なく、またトレッドの変形も一定状態に維持され、良好なころがり抵抗を得ることが可能となる。
【0021】
図2で示した吸排気孔28および30は、上述したように一方向だけにエアーが流れるような機構になっている。すなわち逆止弁機構を持つ。たとえば、吸気孔28はタイヤが接地しているときは閉じて、タイヤが接地していないときに開き、空気嚢27内部へエアーが入り込む。一方、排気孔30はタイヤが接地しているときに開き、タイヤが接地していないときに閉じて、空気嚢27内部から外部へエアーが排気される。
図2および
図3に示すように、空気嚢27の排気孔30は最外層である外環状バンドやトレッドリングまで連通させることによって、空気嚢27内部のエアーを効果的に外部へ排気させることができる。
【0022】
図4は、空気嚢51に取り付けた逆止弁機構の一実施形態を示す図である。空気嚢51は、空気嚢51の嚢壁52に逆止弁54および55を備えている。この逆止弁54および55には内側と外側との圧力差によって開閉可能な弁56(56−1、56−2)およびストッパー57(57−1、57−2)が付いている。逆止弁54において、空気嚢51の内部空間53の圧力が空気嚢51の外部の圧力より低くなると開閉弁56(56−1)が開き、外気のエアーが空気嚢51の内部空間53へ流入し、逆に空気嚢51の内部空間53の圧力が空気嚢51の外部の圧力より高くなると開閉弁56(56−1)がストッパー57(57−1)で押さえられて閉じるので、エアーの出入はなくなる。一方逆止弁55は、逆止弁54と反対の動作をする。すなわち、逆止弁55において、空気嚢51の内部空間53の圧力が空気嚢51の外部の圧力より高くなると開き、空気嚢51の内部空間53のエアーが空気嚢51の外部へ流出し、逆に空気嚢51の内部空間53の圧力が空気嚢51の外部の圧力より低くなると開閉弁56(56−2)がストッパー57(57−2)で押さえられて閉じるので、エアーの出入はなくなる。尚この逆止弁54および55は、エアーの出入が可能な位置であれば空気嚢51の任意の場所に設けることができる。逆止弁はこのように単純な機構であるから小型化することも容易であり空気嚢51の嚢壁52に埋め込むこともできる。このような簡単な機構の逆止弁を空気嚢に設けるだけで本発明の空気嚢付きスポーク構造体のタイヤを作製できる。
【0023】
図5は、空気嚢61に取り付けた逆止弁の別の実施形態を示す図である。空気嚢61は、空気嚢61の嚢壁62に逆止弁64および66を備えている。この逆止弁66には、通気路を有する回転ボール67が備わっていて、この通気路を通して空気嚢61のエアーの入った内部空間63と空気嚢61の外部とのエアーの出入が行なわれる。この回転ボール67は逆止弁66内で気密な状態を保持しながら回転自在に取り付けられていて、重力に応じて通気路が一定方向を向くようになっている。すなわち、この回転ボール67は空気嚢61がどの位置にあってもほぼ同じ状態を保持しており、逆止弁66に対しては自在に回転するが、外部から見ると回転ボール67はほぼ同じ状態を維持している。
【0024】
タイヤに取り付けられた空気嚢61はタイヤの回転と一緒に空気嚢61も回転していく。タイヤが回転し、
図5に示す空気嚢61が地面に接地する領域68に来たときに、空気濃61に取り付けた逆止弁66もこの接地領域に入るように空気嚢61の嚢壁62に逆止弁66が配置されている。このときに、
図5に示すように、接地領域68にある逆止弁66の通気路および回転ボール67の通気路が
図5に示すように接続することにより、空気嚢61の内部空間63と空気嚢61の外部とがつながりエアーの出入ができるようになる。
空気嚢61が接地状態にあるときは、空気嚢61の内部空間63のエアーは逆止弁66の通気路を通して空気嚢61の外部へ排気される。
【0025】
一方、逆止弁64にも、通気路を有する回転ボール65が備わっていて、この通気路を通して空気嚢61のエアーの入った内部空間63と空気嚢61の外部とのエアーの出入が行なわれる。この回転ボール65は逆止弁64内で気密な状態を保持しながら回転自在に取り付けられていて、重力に応じて通気路が一定方向を向くようになっている。すなわち、この回転ボール65は空気嚢61がどの位置にあってもほぼ同じ状態を保持しており、逆止弁64に対しては自在に回転するが、外部から見ると回転ボール65はほぼ同じ状態を維持している。
【0026】
タイヤに取り付けられた空気嚢61はタイヤの回転と一緒に空気嚢61も回転していく。タイヤが回転し、
図5に示す空気嚢61が地面に接地する領域68に来たときに、空気濃61に取り付けた逆止弁64もこの接地領域に入るように空気嚢61の嚢壁62に逆止弁64が配置されている。このときに、
図5に示すように、接地領域68にある逆止弁64の通気路および回転ボール65の通気路は接続せず遮断されているので、空気嚢61の内部空間63と空気嚢61の外部とのエアーの出入はできない。
【0027】
さらにタイヤの回転に対応して空気嚢61も回転して、逆止弁64や66の存在する部分が接地領域68から離れると、逆止弁64や66の向きも変化していく。一方回転ボール65や67の向きは変わらないので、回転ボール65や67の周りに逆止弁64や66が回転していると考えることもできる。従って、逆止弁66の通気路と回転ボール67の通気路が接続しないようになり、一方、逆止弁64の通気路と回転ボール65の通気路が接続するようになる。この状態になると空気嚢61が復元して膨らんでいくので、空気嚢61の外部から空気嚢61の内部空間63へエアーが流入する。逆止弁64や66の存在する部分がタイヤの上部領域69に来ると、逆止弁64の通気路と回転ボール65の通気路が完全に接続し、空気嚢61は充分に膨らんだ状態になっている。一方、逆止弁66の通気路と回転ボール67の通気路は遮断され、エアーの入出はできないようになる。尚、逆止弁64や66はエアーの入出が可能な位置であれば空気嚢61の任意の場所に配置できる。また小型化も可能であり、エアーの入出量が少なければ複数の逆止弁を配置しても良い。以上のような通気路を有する回転ボールを用いた簡単な逆弁を取り付けた空気嚢でも本発明に適用できる。尚、逆止弁64および66は厳密な意味では逆止弁と呼べない。すなわち内部圧力に応じて吸排気するだけである。従って、
図4や
図5等に示す逆止弁と組み合わせることによって、逆流を防止できる優れた吸排気機構となる。
【0028】
図6は、空気嚢71に取り付けた逆止弁の他の実施形態を示す図である。空気嚢71は、空気嚢71の嚢壁72に逆止弁74および75を備えている。
図6Aは、空気嚢71が存在する領域がタイヤの接地部分に来たときの状態を示す図であり、
図6Bは、タイヤが回転して、空気嚢71が存在する領域がタイヤの接地部分から離れたときの状態を示す図で、特に
図6Aに示す空気嚢71がそのまま回転してタイヤの接地部分と逆側、すなわちタイヤの上部側に来たときを示す図である。逆止弁74において、空気嚢71の嚢壁72の領域76で切れ目が入っており、この部分76で嚢壁72がオーバーラップし、内側の嚢壁79に外側から嚢壁79が被さっていて、外側にある嚢壁78が外側へ開閉できるようにフレキシブルな状態になっている。一方逆止弁75において、空気嚢71の嚢壁72の領域77で切れ目が入っており、この部分77で嚢壁72がオーバーラップし、外側の嚢壁80に内側から嚢壁81が被さっていて、内側にある嚢壁81が内側へ開閉できるようにフレキシブルな状態になっている。
【0029】
空気嚢71がタイヤの接地部分に来たとき、空気嚢71は圧縮された状態になるので、空気嚢71の内部空間73の圧力が空気嚢71の外部よりも高くなっている。従って、
図6Aに示すように、逆止弁75において、内側の嚢壁81は内側から押されて外側の嚢壁80に密着しているので、エアーの出入はない。一方、逆止弁74において、外側の嚢壁78は内側から押されて外側へ開き通気口82ができ、この通気口82から空気嚢71の内部空間73のエアーが空気嚢71の外部へ排出される。
【0030】
空気嚢71がタイヤの上部側に来たとき、空気嚢71は自己復元力で膨張した状態になるので、空気嚢71の内部空間73の圧力が空気嚢71の外部よりも低くなっている。従って、
図6Bに示すように、逆止弁74において、外側の嚢壁78は外側から押されて内側の嚢壁79に密着しているので、エアーの出入はない。一方、逆止弁75において、内側の嚢壁81は外側から押されて内側へ開き通気口83ができ、この通気口83から空気嚢71の外部のエアーが空気嚢71の内部空間73へ流入する。
図6Aでは逆止弁の位置を空気嚢の下部に記載し、
図6Bでは逆止弁の位置を空気嚢の上部に記載しているが、逆止弁の位置はこれらの場所に限定されず、逆止弁を開閉しエアーの出入の可能な場所であれば空気嚢の任意の場所に設けることができる。
【0031】
図7は、タイヤ周方向にスパイラルしているスプリング式(コイル状またはバネ状と呼んでも良い)の支持体を用いた実施形態を示す図である。
図1で示す支持体は内環バンドと外環バンドの間を結合する柱状、棒状、あるいは板状体であるが、
図7に示す支持体はタイヤ周方向にスパイラルしながら巻かれているスプリングである。本実施形態の空気嚢付きスポーク構造体であるタイヤ91は、タイヤホイール92の外周に密着して嵌まる円環状の内環バンド93、この内環バンド93から離間して内環バンド93と同心円の円環状の外環バンド94、内環バンド93に対して外環バンド94を支持する支持体(スポーク)95、内環バンド93と外環バンド94の間に存在する空気嚢97、並びに外環バンド94の外周に装着されたトレッドリング96から構成されている。支持体95はタイヤ周方向にスパイラルしながら巻かれているスプリングである。このスプリング状の支持体95の内部に空気嚢97が挿入されていて、タイヤが接地して荷重を受けると、スプリング95はタイヤ径方向に撓み、同時にこの部分に配置された空気嚢97も変形し内部のエアーを排出する。タイヤが接地状態でなくなると荷重がかからなくなるので、スプリング95が元の状態に戻っていき次第にスプリング径を大きくしていく。これに応じてこの部分に配置された空気嚢97も膨らんで外部から空気嚢内部へエアーを吸い込む。スプリングの材料としては金属やプラスチック(樹脂)等を用いることができるが、金属の方が好ましく、更にはバネ鋼のような材料を用いる事がより好ましい。
【0032】
図8は、タイヤ径方向にスパイラルしているスプリング式の支持体を用いた実施形態を示す図である。本実施形態の空気嚢付きスポーク構造体であるタイヤ101は、タイヤホイール102の外周に密着して嵌まる円環状の内環バンド103、この内環バンド103から離間して内環バンド103と同心円の円環状の外環バンド104、内環バンド103に対して外環バンド104を支持する支持体(スポーク)105、内環バンド103と外環バンド104の間に存在する空気嚢107、並びに外環バンド104の外周に装着されたトレッドリング106から構成されている。支持体105はタイヤ径方向にスパイラルして巻かれているスプリングである。タイヤ径方向に巻かれたスプリング105が内環バンド103と外環バンド104の間に多数配置されて、外環バンド104はスプリング105を介して内環バンド103によって支持されている。それぞれのスプリングは独立しており、このスプリングの内部に空気嚢107が配置されている。タイヤが接地して荷重がかかるとスプリング105はタイヤ径方向へ縮み、それに応じて空気嚢107も縮んで内部のエアーを排出する。タイヤが接地状態でなくなると荷重がかからなくなるので、スプリング105が元の状態に戻っていき、次第にスプリングが伸びていく。これに応じてこの部分に配置された空気嚢107も伸びて外部から空気嚢内部へエアーを吸い込む。スプリングの材料としては金属やプラスチック(樹脂)等を用いることができるが、金属の方が好ましく、更にはバネ鋼のような材料を用いる事がより好ましい。
【0033】
これまでに述べた支持体を構成する材料は弾力性に富み、伸縮性のある材料が望ましく、更に粘性が低い材料を用いることが望ましい。たとえば、金属、ポリウレタン、FRP(繊維強化プラスチック)等が良い。また空気嚢も弾力性があり伸縮性に富む材料が良く、たとえばゴム組成物、FRP、ウレタン等である。
【0034】
図9は、上述した本発明の内容を分かりやすく説明するために、本発明の空気嚢付きスポーク構造体から構成されるタイヤの機能を示す概念図である。自動車が止まっているときは路面に接地している部分のタイヤ(
図9における(1)の領域)は車体の重量によって窪んだ状態にある。また、接地面と反対側のタイヤ((3)の領域)は通常の円環状に膨らんだ状態にある。タイヤが矢印の方向((1)→(2)→(3)→(1))に回転すると、(3)の状態にあるタイヤ(円環状に膨らんだ状態)は路面と接地する領域((1)の領域)になり、車体重量によりタイヤが窪み、支持体も窪んでくる。この結果空気嚢が圧縮されて空気嚢内のエアーが通気孔から外部へ排気される。さらにタイヤが回転すると接地域(1)から外れ車体重量がかからない領域((2)の領域)になり、支持体の自己復元力で支持体が元の状態に戻り始める。また支持体の内部に入っている空気嚢も自己復元力で膨らみ始め、通気孔から外部のエアーを空気嚢内へ吸気する。このエアーの吸気はタイヤの接地後端から始まり接地前端に来るまでの間で空気嚢が膨らみきるまで行なわれる。タイヤがさらに回転するとタイヤの接地後端から接地前端までの間の領域((3)の領域)において支持体も空気嚢も元の膨らんだ状態(保圧状態)になる。さらにタイヤが回転すると、タイヤが接地域に入り上記のサイクルが繰り返される。本発明の空気嚢付きスポーク構造体から構成されるタイヤは、このようにタイヤの接地回転に合わせて空気を自動的に吸排気してタイヤの窪みと膨らみを繰り返すが、このことによってころがり抵抗を良好に保持しながら、乗心地性能も良好に確保できる。
【0035】
尚、明細書のある部分に記載し説明した内容を記載しなかった他の部分においても矛盾なく適用できることに関しては、当該他の部分に当該内容を適用できることは言うまでもない。また、実施形態や実施例で示した内容を組み合わせて適宜採用できることや、これらと既存または既知のものとを組み合わせて適宜採用できることも言うまでもない。さらに、上記実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施でき、本発明の権利範囲が上記実施形態や実施例に限定されないことも言うまでもない。
【0036】
本出願は、2012年5月24日に日本国に本出願人により出願された特願2012-119103号に基づくものであり、その全内容は参照により本出願に組み込まれる。