(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ともにリード端子が取り付けられた陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回してなるコンデンサ素子と、上記コンデンサ素子が所定の電解物質とともに収納される有底筒状の外装ケースと、上記リード端子用の端子挿通孔が穿設されていて上記外装ケースの開口部に装着される封口ゴムとを含み、
上記リード端子が、扁平部と丸棒部とを有するタブ端子と、表面に鉛フリーの錫メッキ層を有し上記丸棒部の端部に溶接される外部引出リード線とを備え、
上記封口ゴムの端子挿通孔には、上記タブ端子の丸棒部が嵌合される丸棒嵌合孔と、上記丸棒嵌合孔と同軸であって上記外部引出リード線が挿通される上記丸棒嵌合孔よりも小径のリード線挿通孔とが含まれ、
上記リード線挿通孔の孔径が上記外部引出リード線の外径よりも小径であり、上記外部引出リード線が上記リード線挿通孔内に強制的に挿通されて上記外装ケース外に引き出され、上記丸棒部と外部引出リード線との溶接部が外気と遮断されるアルミニウム電解コンデンサにおいて、
上記端子挿通孔内における上記丸棒嵌合孔と上記リード線挿通孔との間には、漸次縮径する円錐状のガイド面が形成されており、
上記外部引出リード線は、上記リード線挿通孔の孔径よりも大径のリード線本体と、上記リード線本体の先端部に一体に連設された挿通ガイド部とを有し、
上記外部引出リード線を上記リード線挿通孔に挿通する際に上記コンデンサ素子にピーク的な負荷がかからないようにするため、上記挿通ガイド部は、上記リード線挿通孔の孔径よりも小径となるように上記リード線本体から漸次縮径するように形成され、上記挿通ガイド部には、所定の傾斜角を有するほぼ円錐状のスロープ面が形成されており、上記端子挿通孔を通る軸線Yと直交する仮想平面Xに対する上記ガイド面の傾斜角をθaとし、上記スロープ面の傾斜角をθbとして、θa<θbであることを特徴とするアルミニウム電解コンデンサ。
上記外部引出リード線の少なくとも上記挿通ガイド部の表面および/または上記封口ゴムの少なくとも上記リード線挿通孔の内面には、低摩擦樹脂がコーティングされていることを特徴とする請求項1または2に記載のアルミニウム電解コンデンサ。
上記封口ゴムの全体に低摩擦樹脂がコーティングされているとともに、上記電解物質として、非水系もしくは水系の電解液が用いられることを特徴とする請求項3ないし5のいずれか1項に記載のアルミニウム電解コンデンサ。
上記端子挿通孔を通る軸線Yと直交する仮想平面Xに対する上記溶接部の傾斜角をθcとし、上記リード線本体と上記リード線挿通孔とを同軸とした状態における上記リード線本体の外径面の延長線と上記ガイド面との交点部分を境として、上記ガイド面には、上記交点部分から上記丸棒嵌合孔の内面にかけて上記傾斜角θcとほぼ同じ角度をもって傾斜する第1傾斜面と、上記交点部分から上記リード線挿通孔の内周縁にかけて上記傾斜角θcよりも小さな角度で傾斜する第2傾斜面とが含まれていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のアルミニウム電解コンデンサ。
上記リード端子は、上記第1傾斜面が上記溶接部とほぼ密着するように、上記溶接部の下端が上記交点部分に当接するまで上記端子挿通孔内に嵌合されることを特徴とする請求項7に記載のアルミニウム電解コンデンサ。
【背景技術】
【0002】
図11の断面図を参照して、アルミニウム電解コンデンサは、基本的な構成として、一対のリード端子2,2を有するコンデンサ素子1を備える。コンデンサ素子1は、
図12に示すように、リード端子2が取り付けられたアルミニウム材からなる陽極箔1aと陰極箔1bとを図示しないセパレータ紙を介して渦巻き状に巻回することにより形成される。
【0003】
コンデンサ素子1は、有底円筒状の外装ケース3内に所定の電解物質を伴って収納され、外装ケース3の開口部は、封口ゴム4によって封口される。封口ゴム4には、端子挿通孔5,5が穿設されており、この端子挿通孔5,5を通してリード端子2,2の各先端部が外部に引き出される。
【0004】
実際には、封口ゴム4は、先にリード端子2,2に取り付けられた状態で、コンデンサ素子1とともに外装ケース3内に収納され、その後形成される外装ケース3の横絞り溝3aと、外装ケース3の端縁3bのかしめによって外装ケース3の開口部内に気密的に固定される。
【0005】
外装ケース3には、通常、アルミニウムケースが用いられる。封口ゴム4には、ブチルゴムなどが用いられる。また、電解物質には、通常、非水系もしくは水系の電解液が用いられるが、固体電解質が用いられることもある。
【0006】
図12に示すように、リード端子2には、タブ端子21と外部引出リード線22とが含まれている。タブ端子21はアルミニウム材からなり、羽子板状にプレス成型された扁平部21aと丸棒部21bとを備える。
【0007】
この種のタブ端子21は、アルミニウムの丸棒材を所定長さに切断し、その一端側をプレスすることにより得ることができ、扁平部21aがかしめ針もしくは溶接などにより陽極箔1aと陰極箔1bとに取り付けられる。
【0008】
外部引出リード線22には、通常、銅被覆鋼線(CP線)が用いられる。外部引出リード線22は、回路基板に対するハンダ付け性を良好とするため、表面にメッキ層を備えるが、Pb(鉛)フリー化の場合、そのメッキ層には主としてSn100%メッキもしくはSn/Bi(0.5%)メッキなどが適用される。
【0009】
外部引出リード線22は、タブ端子21の丸棒部21bよりも小径で、丸棒部21bの端面に溶接される。その溶接部に参照符号23を付す。
【0010】
ところで、表面のメッキ層がSn100%メッキである場合、溶接部23以外のメッキ層は安定しているが、溶接部23では、Al,Sn,Cu,Feなどが混在しており、外気に晒されると、Alの水和や酸化反応によりSn層に応力が働き、Snウィスカ(ヒゲ状の結晶体)23aが猛烈な勢いで発生し成長する。
【0011】
Sn/Bi(0.5%)メッキにおいても、Sn100%よりはウィスカの成長は緩和されるが、同様にウィスカは発生する。ウィスカの成長が著しい場合には、ウィスカが回路基板上に飛散し、最悪の場合、電子回路をショートさせる危険性がある。
【0012】
そこで、ウィスカの発生を極力抑制するとともに、ウィスカの外部への飛散を防止するため、本出願人は、特許文献1,2において、
図13に示すように、封口ゴム4の端子挿通孔5として、タブ端子21の丸棒部21bが嵌合される大径の丸棒嵌合孔51と、外部引出リード線22が挿通される小径のリード線挿通孔52とを同軸的に連設し、リード線挿通孔52の孔径φ2を外部引出リード線22の外径φ1よりも小径(φ2<φ1)として、溶接部23を外気と遮断することを提案している。
【0013】
上記特許文献1,2によれば、溶接部23で発生するウィスカ23aの外部への飛散が防止されるが、他方において、リード線挿通孔52の孔径φ2が外部引出リード線22の外径φ1よりも小径(φ2<φ1)であることにより、外部引出リード線22をリード線挿通孔52に強制的に挿通する際に、コンデンサ素子1に過大なストレスがかかり、これが原因で、コンデンサ素子1の特性が劣化することがある。
【0014】
この点を解決するため、特許文献3には、封口ゴムのリード線挿通孔に、コンデンサの外部側に向かって漸次小径となる薄膜からなる漏斗形状の円筒体を形成することが提案されている。
【0015】
また、特許文献4には、封口ゴムのリード線挿通孔内に、リード端子を通すためのスリットを有する封止栓体を一体に形成し、スリットを介してリード端子を外部に引き出すことが提案されている。
【0016】
特許文献4と同様な技術として、特許文献5には、封口ゴムのリード線挿通孔内に、その挿通孔を塞ぐ薄肉からなる封口栓を一体に形成し、封口栓を突き破るようにしてリード端子を外部に引き出すことが提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、特許文献3に記載された発明の場合、封口ゴムの成型技術上、封口ゴムにコンデンサの外部側に向かって漸次小径となる薄膜からなる漏斗形状の円筒体を一体に形成することは困難であり、また、成型し得たとしても、漏斗形状の薄膜部分でリード端子の周りを封止するため信頼性に乏しい、という問題がある。
【0019】
また、特許文献4に記載された発明では、封止栓体のスリットを介してリード線を外部に引き出し、特許文献5に記載された発明では、封口栓を突き破るようにしてリード端子を外部に引き出すようにしているため、いずれの発明においても、リード端子の周りを確実に封止することが困難である、という問題がある。
【0020】
したがって、本発明の課題は、コンデンサ素子に特性を劣化させるような過大な負荷をかけることなく、また、外気と確実に遮断し得る状態を保って、リード端子を封口ゴムの端子挿通孔に挿通することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するため、本発明は、ともにリード端子が取り付けられた陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回してなるコンデンサ素子と、上記コンデンサ素子が所定の電解物質とともに収納される有底筒状の外装ケースと、上記リード端子用の端子挿通孔が穿設されていて上記外装ケースの開口部に装着される封口ゴムとを含み、
上記リード端子が、扁平部と丸棒部とを有するタブ端子と、表面に
鉛フリーの錫メッキ層を有し上記丸棒部の端部に溶接される外部引出リード線とを備え、上記封口ゴムの端子挿通孔には、上記タブ端子の丸棒部が嵌合される丸棒嵌合孔と、上記丸棒嵌合孔と同軸であって上記外部引出リード線が挿通される上記丸棒嵌合孔よりも小径のリード線挿通孔とが含まれ、上記リード線挿通孔の孔径が上記外部引出リード線の外径よりも小径であり、上記外部引出リード線が上記リード線挿通孔内に強制的に挿通されて上記外装ケース外に引き出され、上記丸棒部と外部引出リード線との溶接部が外気と遮断されるアルミニウム電解コンデンサにおいて、
上記端子挿通孔内における上記丸棒嵌合孔と上記リード線挿通孔との間には、漸次縮径する円錐状のガイド面が形成されており、上記外部引出リード線は、上記リード線挿通孔の孔径よりも大径のリード線本体と、上記リード線本体の先端部に一体に連設された挿通ガイド部とを有し、
上記外部引出リード線を上記リード線挿通孔に挿通する際に上記コンデンサ素子にピーク的な負荷がかからないようにするため、上記挿通ガイド部は、上記リード線挿通孔の孔径よりも小径となるように上記リード線本体から漸次縮径するように形成され、上記挿通ガイド部には、所定の傾斜角を有するほぼ円錐状のスロープ面が形成されており、上記端子挿通孔を通る軸線Yと直交する仮想平面Xに対する上記ガイド面の傾斜角をθaとし、上記スロープ面の傾斜角をθbとして、θa<θbであることを特徴としている。
【0022】
本発明において、上記封口ゴムは、ショア硬度が80以上のゴム材からなることが好ましい。
【0023】
また、好ましくは、上記外部引出リード線の少なくとも上記挿通ガイド部の表面および/または上記封口ゴムの少なくとも上記リード線挿通孔の内面には、低摩擦樹脂がコーティングされているとよい。
【0024】
この場合において、上記低摩擦樹脂のコーティング厚は0.3〜1.5μmであることが好ましい。
【0025】
上記低摩擦樹脂としては、ポリパラキシレンもしくはシリコーンオイルエマルジョンが好ましく採用される。
【0026】
上記封口ゴムの全体に低摩擦樹脂がコーティングされている場合、用いられる上記電解物質は、非水系もしくは水系の電解液のいずれであってもよい。
【0027】
本発明の好ましい態様によれば、上記ガイド面と上記溶接部との間に電解液が貯留されないようにするうえで、上記端子挿通孔を通る軸線Yと直交する仮想平面Xに対する上記溶接部の傾斜角をθcとし、上記リード線本体と上記リード線挿通孔とを同軸とした状態における上記リード線本体の外径面の延長線と上記ガイド面との交点部分を境として、上記ガイド面には、上記交点部分から上記丸棒嵌合孔の内面にかけて上記傾斜角θcとほぼ同じ角度をもって傾斜する第1傾斜面と、上記交点部分から上記リード線挿通孔の内周縁にかけて上記傾斜角θcよりも小さな角度で傾斜する第2傾斜面とが含まれる。
【0028】
また、上記ガイド面と上記溶接部との間に電解液が貯留されないようにするうえで、上記リード端子は、上記第1傾斜面が上記溶接部とほぼ密着するように、上記溶接部の下端が上記交点部分に当接するまで上記端子挿通孔内に嵌合されることが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、端子挿通孔内における丸棒嵌合孔とリード線挿通孔との間に、漸次縮径する円錐状のガイド面を形成するとともに、外部引出リード線の先端側に、リード線挿通孔の孔径よりも小径となるようにリード線本体から漸次縮径する挿通ガイド部を一体に形成し、挿通ガイド部に所定の傾斜角を有するほぼ円錐状のスロープ面を形成したことにより、コンデンサ素子に特性を劣化させるような過大な負荷をかけることなく、また、外気と確実に遮断し得る状態を保って、リード端子を封口ゴムの端子挿通孔に挿通することができる。
【0030】
したがって、外部引出リード線に鉛フリーの錫メッキが施されており、溶接部でのウィスカの発生を極力抑え、かつ、仮にウィスカが発生したとしても、ウィスカの外部への飛散を防止するうえで、リード線挿通孔の孔径を外部引出リード線の外径よりも小径とし、外部引出リード線をリード線挿通孔内に強制的に挿通して外装ケース外に引き出し、丸棒部と外部引出リード線との溶接部を外気と遮断するようにしたアルミニウム電解コンデンサを製造するにあたって、その歩留まり率が高められ、生産性をより向上させることができる。
【0031】
また、端子挿通孔を通る軸線Yと直交する仮想平面Xに対する溶接部の傾斜角をθcとして、ガイド面に傾斜角θcとほぼ同じ角度の傾斜面を含ませることにより、ガイド面と溶接部との間に貯留する電解液の量が大幅に減少し、電解液の液漏れを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
次に、
図1〜
図10により、本発明のいくつかの実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、この実施形態において、先の
図11〜
図13で説明した従来例と同一もしくは同一と見なされてよい構成要素には同じ参照符号を用いている。
【0034】
図1および
図2には、本発明の要部しか示されていないが、
図11ないし
図13を併せて参照して、本発明のアルミニウム電解コンデンサにおいても、先に説明した従来例と同じく、基本的な構成として、一対のリード端子2,2を有するコンデンサ素子1と、外装ケース3と、封口ゴム4とを備えている。
【0035】
コンデンサ素子1は、
図12に示すように、リード端子2が取り付けられたアルミニウム材からなる陽極箔1aと陰極箔1bとを図示しないセパレータ紙を介して渦巻き状に巻回することにより形成される。
【0036】
コンデンサ素子1は、アルミニウム材からなる有底円筒状の外装ケース3内に所定の電解物質を伴って収納され、外装ケース3の開口部は、封口ゴム4によって封口される。封口ゴム4には、端子挿通孔5,5が穿設されており、この端子挿通孔5,5を通してリード端子2,2の各先端部が外部に引き出される。
【0037】
実際には、封口ゴム4は、先にリード端子2,2に取り付けられた状態で、コンデンサ素子1とともに外装ケース3内に収納され、その後に形成される外装ケース3の横絞り溝3aと、外装ケース3の端縁3bのかしめによって外装ケース3の開口部内に気密的に固定される。
【0038】
封口ゴム4には、好ましくは加硫されたIIR(ブチルゴム)やEPT(エチレンプロピレンゴム)等のゴム材が用いられる。また、電解物質には、通常、非水系もしくは水系の電解液が用いられるが、固体電解質が用いられてもよい。通常、コンデンサ素子1は、あらかじめ電解液が含浸された状態で外装ケース3内に収納される。
【0039】
図12に示すように、リード端子2には、タブ端子21と外部引出リード線22とが含まれている。タブ端子21はアルミニウム材からなり、羽子板状にプレス成型された扁平部21aと丸棒部21bとを備える。
【0040】
この種のタブ端子21は、アルミニウムの丸棒材を所定長さに切断し、その一端側をプレスすることにより得ることができ、扁平部21aがかしめ針もしくは溶接などにより陽極箔1aと陰極箔1bとに取り付けられる。
【0041】
外部引出リード線22には、通常、銅被覆鋼線(CP線)が用いられる。外部引出リード線22は、回路基板に対するハンダ付け性を良好とするため、表面にメッキ層を備えるが、Pb(鉛)フリー化の場合、そのメッキ層には主としてSn100%メッキもしくはSn/Bi(0.5%)メッキなどが適用される。
【0042】
図1にも示すように、外部引出リード線22は、タブ端子21の丸棒部21bよりも小径で、丸棒部21bの端面に溶接される。その溶接部に参照符号23を付す。
【0043】
先にも説明したように、表面のメッキ層がSn100%メッキである場合、溶接部23以外のメッキ層は安定しているが、溶接部23では、Al,Sn,Cu,Feなどが混在しており、外気に晒されると、Alの水和や酸化反応によりSn層に応力が働き、Snウィスカ(ヒゲ状の結晶体)23aが猛烈な勢いで発生し成長する。
【0044】
Sn/Bi(0.5%)メッキにおいても、Sn100%よりはウィスカの成長は緩和されるが、同様にウィスカは発生する。ウィスカの成長が著しい場合には、ウィスカが回路基板上に飛散し、最悪の場合、電子回路をショートさせる危険性がある。
【0045】
溶接部23でのウィスカの発生を極力抑制するとともに、ウィスカの外部への飛散を防止するため、本発明においても、封口ゴム4の端子挿通孔5として、タブ端子21の丸棒部21bが嵌合される大径の丸棒嵌合孔51と、外部引出リード線22が挿通される小径のリード線挿通孔52とを同軸的に連設し、リード線挿通孔52の孔径φ2を外部引出リード線22の外径φ1よりも小径(φ2<φ1)として、溶接部23を外気と遮断するようにしているが、本発明では、コンデンサ素子1に特性を劣化させるような過大な負荷をかけることなく、また、外気と確実に遮断し得る状態を保って、外部引出リード線22を封口ゴム4のリード線挿通孔52に挿通し得るように、次のような構成を採用している。
【0046】
図2を参照して、本発明によると、外部引出リード線22は、リード線挿通孔52の孔径φ2よりも大径である外径φ1のリード線本体221のほかに、リード線本体221の先端部側(
図2では下端側)に、リード線挿通孔52に対する挿通ガイド部222を一体に備えている。
【0047】
なお、
図2において、リード線本体221から下方に向けて描かれている鎖線は、挿通ガイド部222を持たない従来の外部引出リード線を示している。
【0048】
挿通ガイド部222は、その先端部(
図2では下端部)222aがリード線挿通孔52の孔径φ2よりも小径のφ3(φ3<φ2)となるようにリード線本体221から漸次縮径するように形成されている。
【0049】
この実施形態では、挿通ガイド部222の外径φ3の先端部222aは、ほぼ平坦に形成されているが、リード線挿通孔52内に入り込む外径φ3から先の部分を円弧状としてもよい。
【0050】
本発明において、挿通ガイド部222には、外径φ3の先端部222aから外径φ1のリード線本体221に至る部分にかけて所定の角度を有する円錐状のスロープ面223が形成されている。これにより、外部引出リード線22をリード線挿通孔52内に挿通する際、まず初めに、挿通ガイド部222のスロープ面223がリード線挿通孔52の内縁に当接することになる。
【0051】
封口ゴム4側には、端子挿通孔5として、タブ端子21の丸棒部21bが緊密に嵌合される孔径φ4(φ1<φ4)の丸棒嵌合孔51と、孔径φ2(φ3<φ2<φ1)のリード線挿通孔52とが同軸的に設けられるが、本発明では、丸棒嵌合孔51とリード線挿通孔52との間には、丸棒嵌合孔51側から漸次縮径する円錐状のガイド面53が形成されている。なお、丸棒部21bの外径をφ5として、丸棒嵌合孔51の孔径φ4は丸棒部21bの外径φ5よりも若干小さい(φ4<φ5)。
【0052】
外部引出リード線22は、挿通ガイド部222を先端として、リード線挿通孔52を押し広げながらリード線挿通孔52内に挿通されるが、そのとき、コンデンサ素子1にピーク的な負荷をかけないようにするため、端子挿通孔5を通る軸線Y−Yと直交する仮想平面X−Xに対するガイド面53の傾斜角をθaとし、スロープ面223の傾斜角をθbとして、θa<θbとすることが好ましい。なお、スロープ面223の沿面距離は、傾斜角θbに比例する。
【0053】
また、リード線挿通孔52に対する外部引出リード線22の挿通性をよくするうえで、リード線挿通孔52の内面やガイド面53の表面に、滑り性をよくするためのポリパラキシレンもしくはシリコーンオイルエマルジョン等の低摩擦樹脂をコーティングすることも有効である。
【0054】
この場合において、低摩擦樹脂のコーティング厚は0.3〜1.5μmであることが好ましい。なお、膜厚が0.3μm未満であると、低摩擦樹脂による滑り性が十分に発揮されず、これに対して、膜厚が1.5μmを超えると、外部引出リード線22とリード線挿通孔52との間から電解液が漏れるおそれがあり、好ましくない。低摩擦樹脂は外部引出リード線22側に塗布されてもよい。
【0055】
また、外部引出リード線22に鉛フリーの錫メッキが施されている場合、その溶接部23でのウィスカ23aの成長を抑えるうえで、ガイド面53を溶接部23aに密着するように形成することが好ましい。
【0056】
図3に示すように、リード端子2はコンデンサ素子1の各電極箔1a,1bに、その扁平部21aが例えばかしめ針により固着された状態で、コンデンサ素子1の上部から加えられるプレスヘッド60の押圧力により、封口ゴム4のリード線挿通孔52内に強制的に挿入されるが、
図4に示す本発明例1〜3と、
図5に示す比較例1〜5について、リード端子2のかしめ部分21cに加えられる圧力を実測したので、その実施例について説明する。
【0057】
なお、外部引出リード線22の先端部がリード線挿通孔52から突き出たのちは、プレスヘッド60による押圧が停止され、これに代わって、図示しない引っ張り装置にてリード端子2が引っ張られるため、リード端子2のかしめ部分21cに加えられる圧力はほぼ0となる。
【0058】
この実施例において、本発明例1〜3,比較例1〜5ともに、外部引出リード線22には、直径φ0.8mmのリード線(CP線)を用いた。また、本発明例1〜3,比較例1〜5ともに、リード線挿通孔52の孔径φ2は0.5mmとし、ガイド面53の傾斜角θaは30゜とした。
【0059】
図4(a)に示す本発明例1では、挿通ガイド部222の先端部222aの外径φ3を0.3mm,スロープ面223の傾斜角θbを45゜とした。
【0060】
図4(b)に示す本発明例2では、挿通ガイド部222の先端部222aの外径φ3を0.3mm,スロープ面223の傾斜角θbを70゜とした。
【0061】
図4(c)に示す本発明例3では、挿通ガイド部222の先端部222aの外径φ3を0.1mm,スロープ面223の傾斜角θbを70゜とした。
【0062】
図5(a)に示す比較例1では、挿通ガイド部222を形成せず、直径φ0.8mmのリード線をそのまま用いた。したがって、その端部径はφ0.8mm,傾斜角θbは0゜である。
【0063】
図5(b)に示す比較例2では、挿通ガイド部222の先端部222aの外径φ3を0.6mm,スロープ面223の傾斜角θbを60゜とした。
【0064】
図5(c)に示す比較例3では、挿通ガイド部222の先端部222aの外径φ3を0.2mm,スロープ面223の傾斜角θbを15゜とした。
【0065】
図5(d)に示す比較例4では、挿通ガイド部222の先端部222aの外径φ3を0.6mm,スロープ面223の傾斜角θbを60゜とした。
【0066】
図5(e)に示す比較例5では、挿通ガイド部222の先端部222aの外径φ3を0.6mm,スロープ面223の傾斜角θbを70゜とした。
【0067】
これに対して、封口ゴム4側においては、上記したようにリード線挿通孔52の孔径φ2は0.5mmであるが、このほかに、丸棒嵌合孔51の孔径φ4は1.9mm,リード線挿通孔52の軸方向厚みT1は0.5mm,リード線挿通孔52の内縁から見たガイド面53の高さT2は0.4mm,ガイド面53の径方向距離d1は0.7mmである。
【0068】
なお、封口ゴム4は、ひっかき傷の発生の少ないショア硬度が80以上のゴム材であることが好ましく、この実施例では、封口ゴム4にショア硬度が84のゴム材を用いた。
【0069】
表1に、本発明例1〜3および比較例1〜5で測定されたプッシュプルゲージによるリード端子2のかしめ部分21cの圧力(gf)を示し、
図6にその測定データによるグラフを示す。なお、表1およびグラフ中の距離は、外部引出リード線22がリード線挿通孔52に突き当たる寸前のところを0mmとしている。
【0071】
これから分かるように、比較例1ではピーク圧力が750(gf),比較例2ではピーク圧力が600(gf),比較例3ではピーク圧力が500(gf),比較例4および比較例5ではピーク圧力が420(gf)となっており、これでは、リード線挿通時にコンデンサ素子1の特性を劣化させるおそれがある。
【0072】
これに対して、本発明例1〜3では、リード線挿通時に圧力のピークがほとんど見られず、本発明例1,2では圧力が約220〜250(gf)で推移し、本発明例3では圧力が約120〜210(gf)で推移している。
【0073】
このことから、本発明によれば、コンデンサ素子1に特性を劣化させるような過大な負荷をかけることなく、また、外気と確実に遮断し得る状態を保って、リード端子2を封口ゴム4の端子挿通孔5に挿通することができる。なお、本発明例3の場合、先端が尖った形状で、製品本体に傷をつけるおそれがあるため、本発明例1,2がもっとも好ましいと言える。
【0074】
ところで、
図1に示すように、溶接部23の仮想平面X−Xに対する傾斜角をθcとすると、溶接部23の傾斜角θcは、丸棒部21bの外径φ5と外部引出リード線22の外径φ1とに依存するが、概ね60〜70゜程度である。
【0075】
なお、実際の溶接部23の表面には微細な凹凸が含まれているが、ここで言う傾斜角θcは、溶接部23の下端23aと上端23b(丸棒部21bの下端縁)とを結ぶ線の上記仮想平面X−Xに対する角度である。
【0076】
これに対して、ガイド面53の傾斜角θaを上記実施例のように例えば30゜に設定すると、
図7に示すように、リード線の挿通後において、ガイド面53と溶接部23との間に空隙Gができるため、次のような問題が生ずることがある。
【0077】
図3で説明したように、リード端子2はコンデンサ素子1に取り付けられた状態で封口ゴム4の端子挿通孔5に挿通されるが、コンデンサ素子1には電解液が含浸されているため、その電解液の一部が空隙G内に溜まる。そうすると、外部引出リード線22とリード線挿通孔52との間の隙間から徐々にではあるが電解液が漏れることがある。
【0078】
この問題は、ガイド面53の傾斜角θaを溶接部23の傾斜角θcに近づけて空隙Gを狭くすることにより解決されるが、その場合、次の点に留意する必要がある。
【0079】
図8を参照して、
図7に示すように外部引出リード線22をリード線挿通孔52に挿通すると、溶接部23の下端23aは、ガイド面53と外部引出リード線22の外径面との交点Pに突き当たることから、2点鎖線で示すように、ガイド面53を交点Pを通る傾斜角θcの傾斜面にすることが考えられる。
【0080】
しかしながら、このようにすると、リード線挿通孔52の軸方向厚みT1がTaだけ削られて薄くなるため、外部引出リード線22を気密的に封止するうえで好ましくなく、信頼性が損なわれることになる。
【0081】
そこで、本発明では、
図9に示すように、上記交点Pを境として、ガイド面53を傾斜角の異なる第1および第2の2つの折れ線状の傾斜面53a,53bに分ける。
【0082】
すなわち、第1傾斜面53aを交点Pから丸棒嵌合孔51の内面にかけて溶接部23の傾斜角θcとほぼ同じ角度(例えば60〜70゜程度)をもって傾斜する傾斜面とし、これに対して、第2傾斜面53bは交点Pから端子挿通孔52の内周縁にかけて上記傾斜角θcよりも小さな角度(例えば30゜程度)で傾斜する傾斜面とする。
【0083】
これによれば、リード線挿通孔52の軸方向厚みT1を薄くすることなく、また、封口ゴム4に対するタブ端子21の取付高さ位置を
図7において上方にほとんどずらすことなく、また、リード線挿通孔52に対する外部引出リード線22の挿通ガイド部222の案内効果を損なうことなく、ガイド面53の傾斜角を溶接部23の傾斜角θcに近づけて空隙Gを狭くすることができる。
【0084】
また、本発明には、
図10(a)に示すように、封口ゴム4に、陽極箔1aと陰極箔1bとにそれぞれ取り付けられるリード端子2,2(
図11,12参照)のほかに、コンデンサ素子1とは接続されない電気的に中性のダミー端子30が挿通される3端子型のアルミニウム電解コンデンサも含まれる。
【0085】
ダミー端子30は、もっぱら実装安定性を高めるために、リード端子2,2とともに図示しない回路基板にハンダ付けされる端子であるが、リード端子2よりも太径である点、また、
図10(b)に示すように、タブ端子21としては扁平部21aがなく丸棒部21bのみである点がリード端子2と異なっている。
【0086】
すなわち、丸棒部21bの一端側(
図10(b)において下端側)には、溶接部23を介して外部引出リード線22が一体に取り付けられている。この実施形態において、丸棒部21bの他端側(
図10(b)において上端側)には、拡径されたフランジ部31が形成されている。
【0087】
封口ゴム4側にも、ダミー端子30の丸棒部21bが嵌合される大径の丸棒嵌合孔51と、外部引出リード線22が挿通される小径のリード線挿通孔52とを同軸的に連設してなる端子挿通孔5が穿設されるが、この実施形態において、丸棒嵌合孔51の上縁には、フランジ部31が密嵌合される凹部54が形成されている。
【0088】
この3端子型のアルミニウム電解コンデンサにおいても、ダミー端子30のリード線挿通孔52の孔径φ2は、外部引出リード線22の外径φ1よりも小径(φ2<φ1)であり、溶接部23を外気と遮断するようにしているが、コンデンサ素子1に特性を劣化させるような過大な負荷をかけることなく、また、外気と確実に遮断し得る状態を保って、外部引出リード線22を封口ゴム4のリード線挿通孔52に挿通し得るように、上記リード端子2と同じく、外部引出リード線22の先端には、スロープ面223を有する挿通ガイド部222が一体に形成され、また、端子挿通孔5内には、外部引出リード線22の先端をリード線挿通孔52に案内するためのガイド面53が形成されている。
【0089】
また、このダミー端子30における溶接部23とガイド面53との間の空隙G(
図7参照)をより狭くするため、先の
図9で説明したように、ガイド面53に、上記交点Pから丸棒嵌合孔51の内面にかけて溶接部23の傾斜角θcとほぼ同じ角度をもって傾斜する第1傾斜面53aと、交点Pから端子挿通孔52の内周縁にかけて上記傾斜角θcよりも小さな角度で傾斜する第2傾斜面53bとを含ませてもよい。
【0090】
このように、本発明によれば、ダミー端子30を有する3端子型のアルミニウム電解コンデンサにおいても、コンデンサ素子1に特性を劣化させるような過大な負荷をかけることなく、また、外気と確実に遮断し得る状態を保って、外部引出リード線22を封口ゴム4のリード線挿通孔52に挿通し得るとともに、溶接部23とガイド面53との間の空隙Gを可及的に狭くすることができる。