特許第6202301号(P6202301)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202301
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】ラジカル硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/38 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
   C08F2/38
【請求項の数】6
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-76530(P2013-76530)
(22)【出願日】2013年4月2日
(65)【公開番号】特開2014-201614(P2014-201614A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000199795
【氏名又は名称】川崎化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152928
【弁理士】
【氏名又は名称】草部 光司
(72)【発明者】
【氏名】池尻雄治郎
(72)【発明者】
【氏名】川島真人
(72)【発明者】
【氏名】檜森俊一
【審査官】 渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−057818(JP,A)
【文献】 特開平07−247329(JP,A)
【文献】 特開2012−111741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F2
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、ラジカル硬化性オリゴマー(A)、硬化剤(B)及び重合禁止剤(C)を含有するラジカル硬化性組成物において、硬化剤(B)としてハイドロパーオキサイド、ケトンパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、アルキルパーエステル、過酸化物又はアゾ化合物を用い、熱重合禁止剤(C)として下記一般式(2)で表される縮合多環芳香族骨格を有する化合物を用いることを特徴とするラジカル硬化性組成物。
【化1】

(式中、が水素原子、Rがメチル基であり、X、Y、Zは其々、水素原子、水酸基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基のいずれかを表し、同一でも異なっていても良く、XとYは互いに結合して飽和又は不飽和の環を形成しても良く、酸素原子を挟んで環を形成しても良い。)
【請求項2】
少なくとも、ラジカル硬化性オリゴマー(A)、硬化剤(B)及び重合禁止剤(C)を含有するラジカル硬化性組成物において、硬化剤(B)としてハイドロパーオキサイド、ケトンパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、アルキルパーエステル、過酸化物又はアゾ化合物を用い、熱重合禁止剤(C)として下記一般式(2)で表される縮合多環芳香族骨格を有する化合物を用いることを特徴とするラジカル硬化性組成物。
【化2】

(式中、、Rがメチル基であり、X、Y、Zは其々、水素原子、水酸基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基のいずれかを表し、同一でも異なっていても良く、XとYは互いに結合して飽和又は不飽和の環を形成しても良く、酸素原子を挟んで環を形成しても良い。)
【請求項3】
X、Y、Zが其々、水素原子であることを特徴とする請求項1又は2に記載のラジカル硬化性組成物。
【請求項4】
請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載のラジカル硬化性組成物において、さらにラジカル重合性モノマー(D)を含有することを特徴とするラジカル硬化性組成物。
【請求項5】
請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載のラジカル硬化性組成物において硬化剤(B)の添加量が、0.05重量%〜10重量%であることを特徴とするラジカル硬化性組成物。
【請求項6】
請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載のラジカル硬化性組成物を、ラジカル重合させることにより硬化させた硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はラジカル硬化性組成物、その製造方法及びその硬化物に関する。より詳しくは、添加することによって硬化特性を変えることなく、熱安定性や貯蔵安定性を向上させることができる重合禁止剤と、それを用いたラジカル硬化性組成物、その製造方法及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
不飽和ポリエステル、ビニルエステルに代表されるラジカル硬化性オリゴマーは、一般的に液体で取り扱えることから作業性に優れ、且つ硬化物の機械強度、耐久性等の性能も良好であることから、特に硝子繊維や炭素繊維強化プラスチック製品として、船体、浴槽、車両、タンク、電気部品等に用いられるほか、レジンコンクリート、ゲルコート、パテ、化粧板、アンカーボルト等、様々な用途で使用されている。
【0003】
このようなラジカル硬化性オリゴマーを含む組成物(ラジカル硬化性組成物)は、例えば、不飽和ポリエステルやビニルエステルのようなラジカル硬化性オリゴマーとスチレンやメタクリル酸メチルのようなラジカル重合性モノマー等から構成されており、このラジカル硬化性組成物に硬化剤として有機過酸化物等のラジカル重合開始剤を添加することによって重合反応を開始させ、樹脂硬化物を成形する。
【0004】
一般的なラジカル硬化性組成物の製品形態は液状であり、ユーザー側が別途準備した硬化剤を後から加えて成形する。また、チップ状やシート状の硝子繊維に硬化剤を加えた液状のラジカル硬化性組成物を含浸させ、半硬化の状態で粘土状やシート状で取り扱う半製品があり、ユーザー側で金型等を用いて加熱することにより成形される。
【0005】
何れにおいても、ラジカル硬化性組成物に重合禁止剤が添加される場合が多い。その目的としては、ラジカル硬化性オリゴマー及びラジカル重合性モノマーの自然重合を防止するため、また、半製品の場合は重合を半硬化の状態で留めおくため、即ち貯蔵安定性の向上のために重合禁止剤が添加される。一方、ラジカル硬化性組成物の製造工程においては、ラジカル硬化性オリゴマーの製造あるいは移送時、また、それら高粘度のラジカル硬化性オリゴマーを高温でラジカル重合性モノマーに混合する際の重合反応を防止するため、即ち熱安定性向上のために重合禁止剤が添加される。さらには、硬化剤混合後から硬化が始まるまで、あるいは、加熱後から硬化が始まるまでの誘導期間(注型可使時間;ゲル化時間)を確保するため、即ち作業時間に相当するゲル化時間の延長のために重合禁止剤が使用される。
【0006】
このように、本用途での重合禁止剤には主に次の3つの役割があり、目的や特性に応じた複数の重合禁止剤が用いられる。1)貯蔵安定性の向上 2)熱安定性の向上 3)ゲル化時間の延長である。そのため、貯蔵安定性や熱安定性の向上のために重合禁止剤を多く加えたいと思っても、多量に加えると硬化剤を添加して硬化させようとしたときゲル化時間が長くなりすぎて成形時にトラブルとなることがある。
【0007】
例えば、自動車用外板、外装部品等に用いられるSMC(シートモールディングコンパウンド)やBMC(バルクモールディングコンパウンド)においては、成形サイクルを向上させるため、すなわち生産性を向上させるために高速硬化性が求められるため、重合禁止剤を多量に用いることが難しい。実際にはゲル化時間は各ユーザーの製造設備や生産能力に応じて適切に設定され、重合禁止剤の添加量によって制御されている。
【0008】
また、SMCなどの成形材料はプレス成形されるまで常温保管されるが、その保管期間中に原料の不飽和ポリエステルのゲル化が徐々に進むため硬くなる。そうなると、プレス成形時に成形材料の流動性が低下し、充填不良などの成形欠陥が生じてしまう等の問題がある。これを防ぐために通常、ハイドロキノン系重合禁止剤が配合される(例えば、特許文献1、2、3)。
【0009】
特に、本用途ではゲル化時間すなわち硬化剤存在下でのラジカル硬化性組成物の硬化特性に殆ど影響を与えずに熱安定性や貯蔵安定性を向上させるような重合禁止剤が求められていると言える。このような性質を有する重合禁止剤として、ビスt−ブチルヒドロキシトルエン(BHT)を用いた不飽和ポリエステルを主成分とするラジカル硬化性組成物が提案されている。しかしながらBHTは確かにゲル化時間をあまり変えない特性を有するものの、熱安定や貯蔵安定性は決して満足できるものではなかった(特許文献3)。
【0010】
一方、本発明で用いられる縮合多環芳香族骨格を有する化合物が重合禁止剤としての作用を有することは既に知られている(特許文献4、5)。しかし、本発明における不飽和ポリエステル等のラジカル硬化性組成物に用いた例は記載されておらず、更に熱安定性や貯蔵安定性の向上とともに、硬化剤存在下においてゲル化時間に影響を与えないという特性については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平4−372649号公報
【特許文献2】特開平5−320275号公報
【特許文献3】特開平5−222281号公報
【特許文献4】特開2012−111741号公報
【特許文献5】特開2005−336082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記実情に鑑みなされたものであり、その目的はラジカル硬化性組成物において、硬化剤存在下におけるラジカル硬化性組成物の硬化特性を変えることなく、熱安定性や貯蔵安定性を向上させることができる重合禁止剤を含有したラジカル硬化性組成物と、それを用いたラジカル硬化性組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らが鋭意検討した結果、ラジカル硬化性組成物において重合禁止剤として特定の構造的特徴を備えた縮合多環芳香族骨格を有する化合物を使用することにより、上記課題を解決できるとの知見を得て、本発明の完成に至った。
【0014】
即ち本発明の第一の要旨は、少なくとも、ラジカル硬化性オリゴマー(A)及び重合禁止剤(C)を含有するラジカル硬化性組成物において、重合禁止剤(C)として下記一般式(1)で表される縮合多環芳香族骨格を有する化合物を用いることを特徴とするラジカル硬化性組成物に存する。
【0015】
【化1】
【0016】
式中、nは1以上4以下の整数を表し、Rは水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシアルキル基、グリシジル基、ヒドロキシアルキル基又はアリールオキシアルキル基のいずれかを表し、OR基が複数ある場合のRは、それぞれ同一でも良いし異なっていても良い。X、Y、Zは其々、水素原子、水酸基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基のいずれかを表し、互いに同一でも良いし異なっていても良く、XとYは互いに結合して飽和又は不飽和の環を形成しても良く、酸素原子を挟んで環を形成しても良い。
【0017】
第二の要旨は、少なくとも、ラジカル硬化性オリゴマー(A)及び重合禁止剤(C)を含有するラジカル硬化性組成物において、重合禁止剤(C)として下記一般式(2)で表される縮合多環芳香族骨格を有する化合物を用いることを特徴とするラジカル硬化性組成物に存する。
【0018】
【化2】
【0019】
式中、R及びRは水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシアルキル基、グリシジル基、ヒドロキシアルキル基又はアリールオキシアルキル基のいずれかを表し、RとRは其々同一でも良いし異なっていても良い。X、Y、Zは其々、水素原子、水酸基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基のいずれかを表し、同一でも良いし異なっていても良く、XとYは互いに結合して飽和又は不飽和の環を形成しても良く、酸素原子を挟んで環を形成しても良い。
【0020】
第三の要旨は、Rが水素原子、Rがメチル基であることを特徴とする第二の要旨に記載のラジカル硬化性組成物に存する。
【0021】
第四の要旨は、Rが水素原子、Rがメチル基、X、Y、Zがいずれも、水素原子であることを特徴とする第三の要旨に記載のラジカル硬化性組成物に存する。
【0022】
第五の要旨は、第一乃至第四の要旨のいずれか一つに記載のラジカル硬化性組成物において、さらにラジカル重合性モノマー(D)を含有することを特徴とするラジカル硬化性組成物に存する。
【0023】
第六の要旨は、第一乃至第五の要旨のいずれか一つに記載のラジカル硬化性組成物において、さらに硬化剤(B)を含有することを特徴とするラジカル硬化性組成物に存する。
【0024】
第七の要旨は、第一乃至第五の要旨のいずれか一つに記載のラジカル硬化性組成物に、さらに0.05重量%〜10重量%の硬化剤(B)を混合することを特徴とするラジカル硬化性組成物の製造方法に存する。
【0025】
第八の要旨は、第一乃至第六の要旨のいずれか一つに記載のラジカル硬化性組成物を、ラジカル重合させることにより硬化させた硬化物に存する。
【0026】
本発明の記載において、「〜」で繋いだ数値の範囲は、「〜」の前に記載した数値以上で、「〜」の後に記載した数値未満の範囲であることを表す。
【発明の効果】
【0027】
本発明のラジカル硬化性組成物によれば、ラジカル硬化性組成物の硬化時において、その硬化特性をほとんど変えることなく、熱安定性や貯蔵安定性を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0029】
本発明は、少なくとも、ラジカル硬化性オリゴマー(A)、重合禁止剤(C)を含有するラジカル硬化性組成物において、重合禁止剤(C)として下記一般式(1)で表される縮合多環芳香族骨格を有する化合物を用いることを特徴とするものである。
【0030】
【化3】
【0031】
式中、nは1以上4以下の整数を表し、Rは水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシアルキル基、グリシジル基、ヒドロキシアルキル基又はアリールオキシアルキル基のいずれかを表し、OR基が複数ある場合のRは、それぞれ同一でも良いし異なっていても良い。X、Y、Zは其々、水素原子、水酸基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基のいずれかを表し、同一でも良いし異なっていても良く、XとYは互いに結合して飽和又は不飽和の環を形成しても良く、酸素原子を挟んで環を形成しても良い。
【0032】
本発明のラジカル硬化性組成物に用いられるラジカル硬化性オリゴマー(A)としては、分子中に1個以上の重合性基を有するものであれば特に限定されず、例えば、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのラジカル硬化性オリゴマーは、2種類以上を用いても良い。
【0033】
不飽和ポリエステルとしては、例えば、不飽和多価カルボン酸と多価アルコールを公知の方法にて反応させることよって得られるものであり、ジシクロペンタジエンのような重合性基を有する化合物で変性されていても良い。
【0034】
不飽和ポリエステル製造原料として用いられる、不飽和多価カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸とそれらの無水物及びメチルエステルのようなエステル誘導体が挙げられる。また、同時に使用することができる飽和多価カルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、テトラクロロフタル酸のような芳香族多価カルボン酸とその無水物やハロゲン化物及びメチルエステルのようなエステル誘導体、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘット酸のような脂肪族多価カルボン酸とそれらの無水物やハロゲン化物及びメチルエステルのようなエステル誘導体が挙げられる。これらの多価カルボン酸は2種類以上を用いても良い。
【0035】
不飽和ポリエステル製造原料として用いられる、多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAのような2価アルコールとそれらの異性体、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールのような3価以上の多価アルコール、また、これらのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドのようなアルキレンオキサイド付加物が挙げられる。これらの多価アルコールは2種類以上を用いても良い。
【0036】
ビニルエステルとしては、例えば、エポキシオリゴマーと不飽和カルボン酸を公知の方法にて反応させることよって得られるものである。
【0037】
ビニルエステル製造原料として用いられる、エポキシオリゴマーとしては、例えば、ビスフェノールA系、水添ビスフェノールA系、ビスフェノールF系、ノボラック系、レゾール系が挙げられ、其々、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ジ)グリセリン(ポリ)グリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテルのようなジグリシジルエーテル型エポキシ化合物との反応により得られるものである。これらのエポキシオリゴマーは2種類以上を用いても良い。
【0038】
ビニルエステル製造原料として用いられる、不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、桂皮酸、クロトン酸、α−フェニルアクリル酸、メトキシアクリル酸、イタコン酸、ハロゲン化アクリル酸が挙げられる。これらの不飽和カルボン酸は2種類以上を用いても良い。
【0039】
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、ポリイソシアネートと水酸基を有する(メタ)アクリレート、必要に応じてポリオールとを公知の方法で反応させることよって得られるものである。
【0040】
ウレタン(メタ)アクリレート製造原料として用いられる、ポリイソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートのような芳香族ポリイソシアネートとその変性物、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネートのような脂肪族ポリイソシアネートとその変性物が挙げられる。これらのポリイソシアネートは2種類以上を用いても良い。
【0041】
ウレタン(メタ)アクリレート製造原料として用いられる、水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の1価(メタ)アクリレートや、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の多価(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの水酸基を有する(メタ)アクリレートは2種類以上を用いても良い。
【0042】
ウレタン(メタ)アクリレート製造原料として用いられる、ポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオールが挙げられる。これらのポリオールは2種類以上を用いても良い。
【0043】
ポリエステル(メタ)アクリレートとしては、不飽和カルボン酸と多価カルボン酸、多価アルコールとを公知の方法で反応させることよって得られるものである。
【0044】
ポリエステル(メタ)アクリレート製造原料として用いられる、不飽和カルボン酸としては、上記のビニルエステルで用いられるものが挙げられるほか、それらのハロゲン化物及びメチルエステルのようなエステル誘導体が挙げられる。また、多価カルボン酸及び多価アルコールとしては、上記の不飽和ポリエステルで用いられるものが挙げられる。いずれも2種類以上を用いても良い。
【0045】
ポリエステル(メタ)アクリレート製造原料として用いられる、ポリエーテル(メタ)アクリレートとしては、不飽和カルボン酸と多価アルコールを公知の方法で反応させることよって得られるものである。
【0046】
ポリエステル(メタ)アクリレート製造原料として用いられる、不飽和カルボン酸としては、上記のビニルエステルで用いられるものが挙げられるほか、それらのハロゲン化物及びメチルエステルのようなエステル誘導体が挙げられる。多価アルコールとしては、上記の不飽和ポリエステルで用いられるものや、上記のウレタン(メタ)アクリレートで用いられるポリオールが挙げられる。
【0047】
次に、本発明のラジカル硬化性組成物に用いられる硬化剤(B)としては、例えば、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のアルキルパーエステル、ビス(4−tーブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等の過酸化物;2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス−2−メチルブチロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。これらの硬化剤は2種類以上を用いても良い。
【0048】
上記硬化剤(B)は溶剤を含んだ形態のものであってもよい。溶媒としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジメチルフタレート、キシレン等の有機溶媒や水等を使用することができ、2種類以上を用いても良い。これら溶媒の含有量は特に限定されないが、例えば、硬化剤100重量%に対し、90重量%以下であることが好ましい。
【0049】
上記硬化剤(B)の使用量としては特に限定されないが、ラジカル硬化性オリゴマー(A)とラジカル重合性モノマー(D)の合計量を100重量部とした場合において、通常0.05〜10重量部、好ましくは0.1〜7重量部、さらに好ましくは0.15〜5重量部であり、いずれも硬化剤は溶剤を除いた有効成分としての重量である。
【0050】
これら硬化剤(B)は、ラジカル硬化性組成物に成形直前に添加して使用する場合もあるが、初めからラジカル硬化性組成物に加えておき、SMC、BMCのようなコンパウンドとして扱うこともできる。
【0051】
上記硬化剤(B)以外に、低温での硬化性を向上させるためや、SMC、BMCのようなラジカル硬化性組成物を半硬化の状態にするために必要に応じ促進剤を用いることができる。このような促進剤としては、例えば、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸銅、ナフテン酸カリウム、ナフテン酸カルシウム、オクチル酸コバルト、オクチル酸マンガン等の金属石鹸、コバルトアセチルアセトナート、バナジウムアセチルアセトナート等の金属キレート化合物、ジメチルアニリン、N,N’−ジメチルアニリン、N,N−ジメチルトルイジン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジ(ヒドロキシ)−4−メチルアニリン等のアミン化合物、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル等のアシル基含有ラクトン化合物、アセトアセトアミド化合物、β−ジケトン、β−ケトエステル、β−ケトアミド類等が挙げられ、いずれも溶剤を含んだ形態のものであってもよい。これらの促進剤は2種類以上を用いても良い。
【0052】
上記硬化促進剤の使用量としては特に限定されないが、ラジカル硬化性オリゴマー(A)とラジカル重合性モノマー(D)の合計量を100重量部とした場合において、通常0.1〜10重量部、好ましくは0.15〜7重量部、さらに好ましくは0.2〜5重量部であり、いずれも硬化促進剤は溶剤を除いた有効成分としての重量である。
【0053】
重合禁止剤(C)としては、下記一般式(1)で表される縮合多環芳香族骨格を有する化合物を用いる。
【0054】
【化4】
【0055】
式中、nは1以上4以下の整数を表し、Rは水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシアルキル基、グリシジル基、ヒドロキシアルキル基又はアリールオキシアルキル基のいずれかを表し、OR基が複数ある場合のRは、それぞれ同一でも良いし異なっていても良い。X、Y、Zは其々、水素原子、水酸基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基のいずれかを表し、同一でも良いし異なっていても良く、XとYは互いに結合して飽和又は不飽和の環を形成しても良く、酸素原子を挟んで環を形成しても良い。
【0056】
式中のRで表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基等が挙げられ、アリール基としては、フェニル基、p-トリル基、o-トリル基、ナフチル基等が挙げられ、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等が挙げられ、アルコキシアルキル基としては、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基等が挙げられる。グリシジル基としては、グリシジル基、2−メチルグリシジル基等が挙げられる。ヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基等が挙げられる。アリールオキシアルキル基としては、フェノキシエチル、トリロキシエチル等が挙げられる。
【0057】
式中のX、Y、Zで表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基等が挙げられ、アリール基としては、フェニル基、p-トリル基、o-トリル基、ナフチル基等が挙げられ、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等が挙げられる。
【0058】
一般式(1)において、nが2で、二つのOR基がナフタレン骨格の1と4位に置換した化合物が一般式(2)の化合物である。
【0059】
【化5】
【0060】
式中、R及びRは水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシアルキル基、グリシジル基、ヒドロキシアルキル基又はアリールオキシアルキル基のいずれかを表し、RとRは其々同一でも良いし異なっていても良い。X、Y、Zは其々、水素原子、水酸基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基のいずれかを表し、同一でも良いし異なっていても良く、XとYは互いに結合して飽和又は不飽和の環を形成しても良く、酸素原子を挟んで環を形成しても良い。
【0061】
式中のR及びRで表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基等が挙げられ、アリール基としては、フェニル基、p-トリル基、o-トリル基、ナフチル基等が挙げられ、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等が挙げられ、アルコキシアルキル基としては、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基等が挙げられる。グリシジル基としては、グリシジル基、2−メチルグリシジル基等が挙げられる。ヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基等が挙げられる。アリールオキシアルキル基としては、フェノキシエチル、トリロキシエチル等が挙げられる。
【0062】
式中のX、Y、Zで表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基等が挙げられ、アリール基としては、フェニル基、p-トリル基、o-トリル基、ナフチル基等が挙げられ、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等が挙げられる。
【0063】
このような構造を有する化合物の具体例としては、たとえば次のような化合物を例示できる。
【0064】
まずは、一般式(2)において、XとYが互いに結合して環を形成していない場合は、例えば1,4−ジメトキシナフタレン、1,4−ジエトキシナフタレン、1,4−ジ−n−プロポキシナフタレン、1,4−ジイソプロポキシナフタレン、1,4−ジ−n−ブトキシナフタレン、1,4−ジヘキシルオキシナフタレン、1,4−ビス(2−エチルヘキシルオキシ)ナフタレン、1,4−ビス(2−メトキシエトキシ)ナフタレン、1,4−ビス(2−フェノキシエトキシ)ナフタレン、1,4−ジグリシジルオキシナフタレン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、1,4−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)ナフタレン、1−メトキシ−4−エトキシナフタレン、1−メトキシ−4−ブトキシナフタレン、2−メチル−1,4−ジエトキシナフタレン、2−エチル−1,4−ジエトキシナフタレン、1−ヒドロキシ−4−メトキシナフタレン、1−ヒドロキシ−4−エトキシナフタレン、1−ヒドロキシ−4−n−プロポキシナフタレン、1−ヒドロキシ−4−イソプロポキシナフタレン、1−ヒドロキシ−4−n−ブトキシナフタレン、1−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシナフタレン、1−ヒドロキシ−4−(2−エチルヘキシルオキシ)ナフタレン、1−ヒドロキシ−4−(2−メトキシエトキシ)ナフタレン、1−ヒドロキシ−4−(2−フェノキシエトキシ)ナフタレン1−ヒドロキシ−4−グリシジルオキシナフタレン、1−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、1−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシプロポキシ)ナフタレン、2−メチル−1−ヒドロキシ−4−エトキシナフタレン、2−エチル−1−ヒドロキシ−4−エトキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン等が挙げられる。
【0065】
一般式(2)において、XとYが互いに結合して飽和の6員環を形成している場合の具体例としては、9,10−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、9,10−ジエトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、9,10−ジ−n−プロポキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、9,10−ジイソプロポキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、9,10−ジ−n−ブトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、9,10−ビス(2−エチルヘキシルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、9,10−ビス(2−メトキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、9,10−ビス(2−フェノキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、9−メトキシ−10−エトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、9−メトキシ−10−ブトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、2−メチル−9,10−ジエトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、2−エチル−9,10−ジエトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、9−ヒドロキシ−10−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、9−ヒドロキシ−10−エトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、9−ヒドロキシ−10−n−プロポキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、9−ヒドロキシ−10−イソプロポキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、9−ヒドロキシ−10−n−ブトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、9−ヒドロキシ−10−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、9−ヒドロキシ−10−(2−メトキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、9−ヒドロキシ−10−(2−フェノキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、9−ヒドロキシ−10−(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、2−メチル−9−ヒドロキシ−10−エトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン、2−エチル−9−ヒドロキシ−10−エトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロアントラセン等が挙げられる。
【0066】
一般式(2)において、XとYが互いに結合して不飽和の6員環を形成している場合で当該6員環が非芳香族性の場合の具体例としては、9,10−ジメトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、9,10−ジエトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、9,10−ジ−n−プロポキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、9,10−ジイソプロポキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、9,10−ジ−n−ブトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、9,10−ビス(2−エチルヘキシルオキシ)−1,4−ジヒドロアントラセン、9,10−ビス(2−メトキシエトキシ)−1,4−ジヒドロアントラセン、9,10−ビス(2−フェノキシエトキシ)−1,4−ジヒドロアントラセン、9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,4−ジヒドロアントラセン、9−メトキシ−10−エトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、9−メトキシ−10−ブトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、2−メチル−9,10−ジエトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、2−エチル−9,10−ジエトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、9−ヒドロキシ−10−メトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、9−ヒドロキシ−10−エトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、9−ヒドロキシ−10−n−プロポキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、9−ヒドロキシ−10−イソプロポキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、9−ヒドロキシ−10−n−ブトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、9−ヒドロキシ−10−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,4−ジヒドロアントラセン、9−ヒドロキシ−10−(2−メトキシエトキシ)−1,4−ジヒドロアントラセン、9−ヒドロキシ−10−(2−フェノキシエトキシ)−1,4−ジヒドロアントラセン、9−ヒドロキシ−10−(2−ヒドロキシエトキシ)−1,4−ジヒドロアントラセン、2−メチル−9−ヒドロキシ−10−エトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン、2−エチル−9−ヒドロキシ−10−エトキシ−1,4−ジヒドロアントラセン等が挙げられる。
【0067】
一般式(2)において、XとYが互いに結合して不飽和の6員環を形成している場合で当該6員環が芳香族性の場合の具体例としては、9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジ−n−プロポキシアントラセン、9,10−ジイソプロポキシアントラセン、9,10−ジ−n−ブトキシアントラセン、9,10−ビス(2−エチルヘキシルオキシ)アントラセン、9,10−ビス(2−メトキシエトキシ)アントラセン、9,10−ビス(2−フェノキシエトキシ)アントラセン、9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセン、9−メトキシ−10−エトキシアントラセン、9−メトキシ−10−ブトキシアントラセン、2−メチル−9,10−ジエトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジエトキシアントラセン、9−ヒドロキシ−10−メトキシアントラセン、9−ヒドロキシ−10−エトキシアントラセン、9−ヒドロキシ−10−n−プロポキシアントラセン、9−ヒドロキシ−10−イソプロポキシアントラセン、9−ヒドロキシ−10−n−ブトキシアントラセン、9−ヒドロキシ−10−(2−エチルヘキシルオキシ)アントラセン、9−ヒドロキシ−10−(2−メトキシエトキシ)アントラセン、9−ヒドロキシ−10−(2−フェノキシエトキシ)アントラセン、9−ヒドロキシ−10−(2−ヒドロキシエトキシ)アントラセン、2−メチル−9−ヒドロキシ−10−エトキシアントラセン、2−エチル−9−ヒドロキシ−10−エトキシアントラセン等が挙げられる。
【0068】
一般式(2)において、XとYが互いに酸素原子を挟んで結合して環を形成している場合の具体例としては、3,4‐ジヒドロ‐5,10‐ジメトキシ‐2‐メチル‐2H‐ナフト[2,3‐b]ピラン‐4‐オン、4,9−ジメトキシ-2,3−ジヒドロナフト[2,3−b]フラン、2‐メチル‐4,9‐ジメトキシ‐2,3‐ジヒドロナフト[2,3‐b]フラン、1,4−ジメトキシ−2,3−メチレンジオキシナフタレン、9‐メトキシ‐2,3‐ジヒドロナフト[2,3‐b]フラン‐4‐オール、2−メチル−9−メトキシ−2,3−ジヒドロナフト[2,3−b]フラン-4−オール等が挙げられる。
【0069】
一般式(2)で表される化合物以外の一般式(1)で表される化合物でn=2である化合物の具体例としては、例えば次の化合物が挙げられる。すなわち、一般式(1)において、XとYが互いに結合して環を形成していない場合の具体例としては、1,5−ジメトキシナフタレン、1,6−ジメトキシナフタレン、1,7−ジメトキシナフタレン、2,6−ジメトキシナフタレン、2,7−ジメトキシナフタレン、1,5−ジエトキシナフタレン、1,6−ジエトキシナフタレン、1,7−ジエトキシナフタレン、2,6−ジエトキシナフタレン、2,7−ジエトキシナフタレン、1,5−ジ−n−プロポキシナフタレン、1,5−ジイソプロポキシナフタレン、1,6−ジ−n−プロポキシナフタレン、1,6−ジイソプロポキシナフタレン、1,7−ジ−n−プロポキシナフタレン、1,7−ジイソプロポキシナフタレン、2,6−ジ−n−プロポキシナフタレン、2,6−ジイソプロポキシナフタレン、2,7−ジ−n−プロポキシナフタレン、2,7−ジイソプロポキシナフタレン、1,5−ジ−n−ブトキシナフタレン、1,6−ジ−n−ブトキシナフタレン、1,7−ジ−n−ブトキシナフタレン、2,6−ジ−n−ブトキシナフタレン、2,7−ジ−n−ブトキシナフタレン、1,5−ビス(2−エチルへキシルオキシ)ナフタレン、1,6−ビス(2−エチルへキシルオキシ)ナフタレン、1,7−ビス(2−エチルへキシルオキシ)ナフタレン、2,6−ビス(2−エチルへキシルオキシ)ナフタレン、2,7−ビス(2−エチルへキシルオキシ)ナフタレン、1,5−ビス(2−メトキシエトキシ)ナフタレン、1,6−ビス(2−メトキシエトキシ)ナフタレン、1,7−ビス(2−メトキシエトキシ)ナフタレン、2,6−ビス(2−メトキシエトキシ)ナフタレン、2,7−ビス(2−メトキシエトキシ)ナフタレン、1,5−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、1,6−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、1,7−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、2,6−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、2,7−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、1,5−ビス(2−フェノキシエトキシ)ナフタレン、1,6−ビス(2−フェノキシエトキシ)ナフタレン、1,7−ビス(2−フェノキシエトキシ)ナフタレン、2,6−ビス(2−フェノキシエトキシ)ナフタレン、2,7−ビス(2−フェノキシエトキシ)ナフタレン、1−メトキシ−5−エトキシナフタレン、1−メトキシ−6−エトキシナフタレン、1−メトキシ−7−エトキシナフタレン、2−メトキシ−6−エトキシナフタレン、2−メトキシ−7−エトキシナフタレン、1−メトキシ−5−n−ブトキシナフタレン、1−メトキシ−6−n−ブトキシナフタレン、1−メトキシ−7−ブトキシナフタレン、2−メトキシ−6−n−ブトキシナフタレン、2−メトキシ−7−n−ブトキシナフタレン、2−メチル−1,5−ジメトキシナフタレン、2−メチル−1,6−ジメトキシナフタレン、2−メチル−1,7−ジメトキシナフタレン、2−エチル−1,5−ジエトキシナフタレン、2−エチル−1,6−ジエトキシナフタレン、2−エチル−1,7−ジエトキシナフタレン等が挙げられる。
【0070】
更にまた、1−ヒドロキシ−5−メトキシナフタレン、1−ヒドロキシ−6−メトキシナフタレン、1−ヒドロキシ−7−メトキシナフタレン、2−ヒドロキシ−6−メトキシナフタレン、2−ヒドロキシ−7−メトキシナフタレン、1−ヒドロキシ−5−エトキシナフタレン、1−ヒドロキシ−6−エトキシナフタレン、1−ヒドロキシ−7−エトキシナフタレン、2−ヒドロキシ−6−エトキシナフタレン、2−ヒドロキシ−7−エトキシナフタレン、1−ヒドロキシ−5−n−プロポキシナフタレン、1−ヒドロキシ−5−イソプロポキシナフタレン、1−ヒドロキシ−6−n−プロポキシナフタレン、1−ヒドロキシ−6−イソプロポキシナフタレン、1−ヒドロキシ−7−n−プロポキシナフタレン、1−ヒドロキシ−7−イソプロポキシナフタレン、2−ヒドロキシ−6−n−プロポキシナフタレン、2−ヒドロキシ−6−イソプロポキシナフタレン、2−ヒドロキシ−7−n−プロポキシナフタレン、2−ヒドロキシ−7−イソプロポキシナフタレン、1−ヒドロキシ−5−n−ブトキシナフタレン、1−ヒドロキシ−6−n−ブトキシナフタレン、1−ヒドロキシ−7−n−ブトキシナフタレン、2−ヒドロキシ−6−n−ブトキシナフタレン、2−ヒドロキシ−7−n−ブトキシナフタレン、1−ヒドロキシ−5−(2−エチルへキシルオキシ)ナフタレン、1−ヒドロキシ−6−(2−エチルへキシルオキシ)ナフタレン、1−ヒドロキシ−7−(2−エチルへキシルオキシ)ナフタレン、2−ヒドロキシ−6−(2−エチルへキシルオキシ)ナフタレン、2,7−ビス(2−エチルへキシルオキシ)ナフタレン、1−ヒドロキシ−5−(2−メトキシエトキシ)ナフタレン、1−ヒドロキシ−6−(2−メトキシエトキシ)ナフタレン、1−ヒドロキシ−7−(2−メトキシエトキシ)ナフタレン、2−ヒドロキシ−6−(2−メトキシエトキシ)ナフタレン、2−ヒドロキシ−7−(2−メトキシエトキシ)ナフタレン、1−ヒドロキシ−5−(2−ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、1−ヒドロキシ−6−(2−ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、1−ヒドロキシ−7−(2−ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、2−ヒドロキシ−6−(2−ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、2−ヒドロキシ−7−(2−ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、1−ヒドロキシ−5−(2−フェノキシエトキシ)ナフタレン、1−ヒドロキシ−6−(2−フェノキシエトキシ)ナフタレン、1−ヒドロキシ−7−(2−フェノキシエトキシ)ナフタレン、2−ヒドロキシ−6−(2−フェノキシエトキシ)ナフタレン、2−ヒドロキシ−7−(2−フェノキシエトキシ)ナフタレン、2−メチル−1−ヒドロキシ−5−メトキシナフタレン、2−メチル−1−ヒドロキシ−6−メトキシナフタレン、2−メチル−1−ヒドロキシ−7−メトキシナフタレン、2−エチル−1−ヒドロキシ−5−エトキシナフタレン、2−エチル−1−ヒドロキシ−6−エトキシナフタレン、2−エチル−1−ヒドロキシ−7−エトキシナフタレン等が挙げられる。
【0071】
さらに、一般式(1)で表される化合物であり、n=1である化合物の具体例としては、例えば次の化合物が挙げられる。まず、XとYが互いに結合して環を形成していない場合の具体例としては、1−ナフトール、2−ナフトール、1−メトキシナフタレン、1−エトキシナフタレン、1−n−プロポキシナフタレン、1−イソプロポキシナフタレン、1−n−ブトキシナフタレン、1−(2−エチルヘキシルオキシ)ナフタレン、2−メトキシナフタレン、2−エトキシナフタレン、2−n−プロポキシナフタレン、2−イソプロポキシナフタレン、2−n−ブトキシナフタレン、2−(2−エチルヘキシルオキシ)ナフタレン等が挙げられる。
【0072】
さらに、一般式(1)で表される化合物であり、nが3以上である化合物の具体例としては、例えば次の化合物が挙げられる。まず、XとYが互いに結合して環を形成していない場合の具体例としては、1,2,4−トリメトキシナフタレン、1,2,4−トリエトキシナフタレン、1,2,4−トリプロポキシナフタレン、1,2,4−トリブトキシナフタレン、1,4,5−トリメトキシナフタレン、1,4,5−トリエトキシナフタレン、1,4,5−トリ−n−プロポキシナフタレン、1,4,5−トリイソプロポキシナフタレン、1,4,5−トリ−n−ブトキシナフタレン、1,4,6−トリメトキシナフタレン、1,4,6−トリエトキシナフタレン、1,4,6−トリ−n−プロポキシナフタレン、1,4,6−トリイソプロポキシナフタレン、1,4,6−トリ−n−ブトキシナフタレン、1,4,5,8−テトラメトキシナフタレン、1,4,5,8−テトラエトキシナフタレン、1,4,5,8−テトラ−n−プロポキシナフタレン、1,4,5,8−テトライソプロポキシナフタレン、1,4,5,8−テトラ−n−ブトキシナフタレン、2−ヒドロキシ−1,4−ジメトキシナフタレン、2−ヒドロキシ−1,4−ジエトキシナフタレン、2−ヒドロキシ−1,4−ジプロポキシナフタレン、2−ヒドロキシ−1,4−ジブトキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジメトキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジエトキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジ−n−プロポキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジイソプロポキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジ−n−ブトキシナフタレン等が挙げられる。
【0073】
ここに例示した化合物以外に、例えば、特開2012−111741号公報に具体的に開示された化合物を用いることができる。
【0074】
これら例示した化合物の中でも、ナフタレン骨格の1,4位にOR1基、OR基が置換した一般式(2)の化合物が本発明の効果が高いことから好ましく、特に、OR1基が水素原子であり、OR基がメチル基である化合物が好ましい。なかでも、X、Y、Zが水素原子である化合物は、効果が高いこと製造が容易であることから、さらに好ましい。
【0075】
これら例示した化合物は、対応するヒドロキシナフタレン化合物をジアルキル硫酸等のアルキル化剤でアルキル化する方法により、容易に合成できる。
【0076】
本発明のラジカル硬化性組成物における重合禁止剤(C)の使用量は特に限定されないが、ラジカル硬化性オリゴマー(A)又はラジカル硬化性オリゴマー(A)とラジカル重合性モノマー(D)の合計量を100重量部とした場合において、通常、0.001〜0.5重量部、好ましくは0.002〜0.45重量部、さらに好ましくは0.003〜0.4重量部である。0.001重量部未満の場合は重合禁止の効果が小さくなる一方、0.5重量部以上加えても構わないが溶解度を超えて析出する場合がある。
【0077】
本発明のラジカル硬化性組成物には、重合禁止剤(C)の他に、本発明の効果を損なわない範囲で重合禁止剤(C)以外の重合禁止剤を併せて用いることができる。
【0078】
併せて用いることができる重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2−メチルハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン等のハイドロキノン系、p−ベンゾキノン、メチル−p−ベンゾキノン等のベンゾキノン系、カテコール、t−ブチルカテコール等のカテコール系、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、4−メトキシフェノール、クレゾール等のフェノール系、フェノチアジン、フェルダジル、α,α−ジフェニル−β−ピクリルヒドラジル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル等の公知の重合禁止剤が挙げられる。これらの重合禁止剤は2種類以上を用いても良い。
【0079】
重合禁止剤(C)と併せて用いることができる重合禁止剤の使用量は特に限定されないが、ラジカル硬化性オリゴマー(A)又はラジカル硬化性オリゴマー(A)とラジカル重合性モノマー(D)の合計量を100重量部とした場合において、通常、0.001〜0.3重量部、好ましくは0.002〜0.25重量部、さらに好ましくは0.003〜0.2重量部である。0.3重量部以上添加するとゲル化時間が長くなりすぎたり、硬化不良を引き起こす場合がある。
【0080】
ラジカル重合性モノマー(D)としては、分子中に1個以上の重合性基を有するものであれば特に限定されず、例えば、1官能ビニルモノマー、多官能ビニルモノマーが挙げられる。
【0081】
1官能ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、p−クロルスチレン、ヒドロキシスチレン、ビニルトルエンのような単官能芳香族ビニルモノマー、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルベンジルクロライド塩、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸ヘプタデカフルオロデシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコールのような単官能(メタ)アクリル酸モノマー等が挙げられる。
【0082】
多官能ビニルモノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート(n=8,9)、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペントールジ(メタ)アクリレート、ソルビトールジ(メタ)アクリレート、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、2,2−ビス〔4−((メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル〕プロパン、2−ヒドロキシ−1−アクリロキシ−3−メタクリロキシプロパンのような多官能(メタ)アクリルモノマー、ジビニルベンゼン等の多官能芳香族ビニルモノマー、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート等の多官能アリルモノマー等が挙げられる。
【0083】
本発明のラジカル硬化性組成物において、性能を損なわない範囲内で、繊維補強剤、充填材、揺変性付与剤、揺変性付与助剤、カップリング剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸価防止剤、増粘剤、減粘剤、内部離型剤、低収縮剤、消泡剤、ワックス、可塑剤、柄剤等の各種添加剤を適宜配合してもよい。
【0084】
繊維補強材としては、例えば、ガラス繊維、アミド、アラミド、ビニロン、ポリエステル、フェノール等の有機繊維、カーボン繊維、金属繊維、セラミック繊維等の無機繊維が挙げられ、2種類以上を用いても良い。施工性、経済性を考慮した場合、好ましいのはガラス繊維及び有機繊維であり、特にガラス繊維であることがさらに望ましい。また、繊維の形態は、平織り、朱子織り、不織布、マット、ロービング、チョップ、編み物、組み物、これらの複合構造のもの等があるが、施工法や製品形態に合せて選択される。
【0085】
充填材としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、フライアッシュ、硫酸バリウム、タルク、クレー、ガラス粉末などが挙げられる。骨材としては、例えば、珪砂・砂利・砕石などが挙げられる。モルタル用途に使用するときは、これらの粒径が5mm以下程度のものが好ましい。充填材又は骨材の配合量としては特に限定されないが、ラジカル硬化性オリゴマー(A)又はラジカル硬化性オリゴマー(A)とラジカル重合性モノマー(D)の合計量を100重量部とした場合において、通常、1〜300重量部である。
【0086】
本発明のラジカル硬化性組成物としては、あらかじめ重合禁止剤や充填材が混合された市販のラジカル硬化性組成物にさらに重合禁止剤(C)として上記一般式(1)で表される縮合多環芳香族骨格を有する化合物を添加して調製することもできる。
【0087】
そのような市販のラジカル硬化性組成物としては、例えば、充填材などがあらかじめ混合された不飽和ポリエステル、ビニルエステル等が挙げられる。これらの市販のラジカル硬化性組成物は、硬化剤(B)を硬化前に添加するもの、あるいは硬化剤(B)が事前に添加された状態のものもあり、例えば、SMC、BMC等が挙げられる。
【0088】
市販の不飽和ポリエステルとしては、例えば、昭和電工株式会社製のリゴラック(リゴラックは昭和電工株式会社の登録商標)、日本ユピカ株式会社製のユピカ(ユピカは日本ユピカ株式会社の登録商標)、ジャパンコンポジット株式会社製のポリホープ(ポリホープはジャパンコンポジット株式会社の登録商標)、ディーエイチ・マテリアル株式会社製のサンドーマ(サンドーマはディーエイチ・マテリアル株式会社の登録商標)が挙げられる。
【0089】
市販のビニルエステルとしては、例えば、昭和電工株式会社製のリポキシ(リポキシは昭和電工株式会社の登録商標)、日本ユピカ株式会社製のネオポール(ネオポールは日本ユピカ株式会社の登録商標)、ジャパンコンポジット株式会社製のビニエスター(ビニエスターはジャパンコンポジット株式会社の登録商標)、ディーエイチ・マテリアル株式会社製のエクスドーマ(エクスドーマはディーエイチ・マテリアル株式会社の登録商標)が挙げられる。
【0090】
(ラジカル硬化性組成物の製造方法)
本発明のラジカル硬化性組成物は、その成分が異なる以外は公知のラジカル硬化性組成物と同様の製造方法で製造することができる。例えば、ラジカル硬化性オリゴマー(A)、硬化剤(B)、重合禁止剤(C)と必要に応じてラジカル重合性モノマー(D)を配合したのち、均一になるまで十分攪拌混合することにより製造することができる。硬化剤(B)を後で添加することも可能である。
【0091】
硬化剤(B)の使用量としては、ラジカル硬化性オリゴマー(A)とラジカル重合性モノマー(D)の合計量を100重量部とした場合において、通常0.05〜10重量部、好ましくは0.1〜7重量部、さらに好ましくは0.15〜5重量部であり、いずれも硬化剤は溶剤を除いた有効成分としての重量である。
【0092】
本発明のラジカル硬化性組成物の成形法としては特に制限されないが、例えば、ハンドレイアップ成形法、スプレーアップ成形法、フィラメントワインディング成形法、レジンインジェクション成形法、レジントランスファー成形法、引き抜き成形法、真空成形法、圧空成形法、圧縮成形法、インジェクション成形法、注型法、スプレー法などを適用することができる。
【0093】
本発明のラジカル硬化性組成物において、重合禁止剤(C)として上記一般式(1)で表される縮合多環芳香族骨格を有する化合物を用いることにより、硬化特性をほとんど変えることなく、熱安定性や貯蔵安定性を向上させることができる。
【0094】
本発明のラジカル硬化性組成物は、一般的に、「プラスチック・機能性高分子材料辞典」(産業調査会、初版、2005年8月1日、466頁〜482頁)に記載された不飽和ポリエステル樹脂の製造に使用することができる。
【実施例】
【0095】
以下、実施例により本発明の具体的態様をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0096】
実施例で使用した重合禁止剤の種類と略称を表1に示した。尚、表中のMNTとDENは本発明の縮合多環芳香族骨格を有する化合物であり、BHT及びHQは比較として用いた単環芳香族骨格を有する化合物である。
【0097】
【表1】
【0098】
<スチレンの熱安定性の評価>実施例1、2、3、比較例1、2、3
市販のスチレン(和光純薬株式会社製 試薬特級)を0.5%の水酸化ナトリウム水溶液で洗浄後さらに減圧蒸留することによって、予め添加されている重合禁止剤と微量ポリマーを取り除いた。このようにして精製したスチレン30gを試験管に入れ、表2に記載の各重合禁止剤を加えた。次に窒素を20ml/分で通気しつつ、オイルバスで内温が100℃になるように加熱した。内温が100℃になった時点を開始とし、所定時間毎に2g程度をサンプリングして氷水で急冷後に粘度を測定した。結果を表2に併せて示した。尚、粘度測定はビスコメイトVM−10A(CBC株式会社製 振動式粘度計)を使用して25℃で測定した。
【0099】
【表2】
【0100】
<スチレンの貯蔵安定性の評価>実施例4、5、6、比較例4、5、6
窒素ボックス中にて、先と同様の方法にて精製したスチレン30gを試験管に入れ、表3に記載の各重合禁止剤を加えた。次に窒素を20ml/分で3分間通気することで脱気した後に密栓し、窒素を5L/分で通気した60℃のイナートオーブンに保管した。経時で粘度の変化をサンプル瓶を振ることで確認し、粘度の上昇が認められるまでの日数を表3に併せて示した。
【0101】
【表3】
【0102】
<不飽和ポリエステルの硬化特性の評価>実施例7、8、9、比較例7、8、9
市販の不飽和ポリエステル(昭和電工株式会社製 リゴラック158BQT)を用いて、JISK6901(2008)「液状不飽和ポリエステル樹脂試験方法」に記載の常温硬化特性(発熱法)による硬化特性試験を実施した。このような市販の不飽和ポリエステルには予め何らかの重合禁止剤が添加されているが、本試験では表4に記載の各重合禁止剤をさらに加えて実施し、ゲル化に要する時間、硬化に要する時間を測定し、結果を表4に併せて示した。
【0103】
【表4】
【0104】
<ビニルエステルの硬化特性の評価>実施例10、11、12、比較例10、11、12
市販のビニルエステル(昭和電工株式会社製 リポキシR−802)を用いて、JISK6901(2008)「液状不飽和ポリエステル樹脂試験方法」に記載の常温硬化特性(発熱法)による硬化特性試験を実施した。このような市販のビニルエステルには予め何らかの重合禁止剤が添加されているが、本試験では表5に記載の各重合禁止剤をさらに加えて実施し、ゲル化に要する時間、硬化に要する時間を測定し、結果を表5に併せて示した。
【0105】
【表5】
【0106】
以上の結果より、主に次のことが明らかである。
【0107】
まず、表2より、次のことが明らかである。すなわち、スチレンの熱安定性の評価において、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する化合物である4−メトキシ−1−ナフトール(MNT)を用いた実施例1、2の場合、重合禁止剤を用いなかった比較例1や、ビスt−ブチルヒドロキシトルエン(BHT)を用いた比較例2と比べて熱安定性が明らかに向上していることが分かる。また、4−メトキシ−1−ナフトールの使用量を増やした実施例2では、比較例3のハイドロキノン(HQ)を用いた場合とほぼ同等の熱安定性を示している。ただし、ハイドロキノンの場合は、熱安定性が良好であるが、次項の硬化特性の評価において問題が生じる。このことから、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する化合物である4−メトキシ−1−ナフトールは重合禁止剤として重合性モノマーに対してすぐれた熱安定性効果を示すといえる。
【0108】
更にまた、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する化合物である1、4−ジエトキシナフタレン(DEN)とハイドロキノンを併用した実施例3の場合、比較例3のハイドロキノンのみを用いた場合と比べても著しく熱安定性が向上している。そして、ハイドロキノン単独の場合は、問題となる次項の硬化特性の評価でもゲル化時間の延長は起こらないという優れた性能を示している。
【0109】
次に、表3から次のことが明らかである。すなわち、スチレンの貯蔵安定性の評価において、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する化合物である4−メトキシ−1−ナフトールを用いた実施例4、5の場合、重合禁止剤を用いなかった比較例4や、ビスt−ブチルヒドロキシトルエンを用いた比較例5と比べて貯蔵安定性が著しく向上している。また、比較例6のハイドロキノンを用いた場合の貯蔵安定性とほぼ同等の効果を有していることが分かる。ただし、HQの場合は、貯蔵安定性は良好であるが、次項の硬化特性の評価において問題が生じる。また、実施例5では4−メトキシ−1−ナフトールの使用量を増やすことにより、さらに貯蔵安定性を高めることができることが分かる。このことから、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する化合物である4−メトキシ−1−ナフトールは重合禁止剤として重合性モノマーに対してすぐれた貯蔵安定性効果を示すといえる。
【0110】
更にまた、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する化合物である1、4−ジエトキシナフタレンとハイドロキノンを併用した実施例6の場合、比較例6のハイドロキノンのみを用いた場合と比べて貯蔵安定性が著しく向上していることが分かる。そして、ハイドロキノン単独の場合は、問題となる次項の硬化特性の評価ではゲル化時間の延長は起こらないという優れた性能を示している。
【0111】
次に、表4から次のことが明らかである。すなわち、不飽和ポリエステルの硬化特性の評価において、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する化合物である4−メトキシ−1−ナフトールを用いた実施例7と、ビスt−ブチルヒドロキシトルエンを用いた比較例8や、ハイドロキノンを用いた比較例9と比べると、ゲル化時間が実施例7が32.0分で重合禁止剤を用いなかった比較例7の25.6分との差が6.4分であるのに対して、比較例8では、その差が10.6分、比較例9では、21.3分と長くなっており、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する化合物である4−メトキシ−1−ナフトールの場合、ゲル化時間の伸びが小さくなっていることが分かる。
【0112】
更にまた、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する化合物である1、4−ジエトキシナフタレンとハイドロキノンを併用した実施例9の場合、比較例9ハイドロキノンのみを用いた場合と比べてゲル化時間は殆ど変化がなく、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する化合物である1、4−ジエトキシナフタレンを添加したことによるゲル化時間の増加がないことが分かる。
【0113】
次に、表5から次のことが明らかである。すなわち、ビニルエステルの硬化特性の評価において、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する化合物である4−メトキシ−1−ナフトールを用いた実施例10と、ビスt−ブチルヒドロキシトルエンを用いた比較例11や、ハイドロキノンを用いた比較例12と比べると、ゲル化時間が実施例10が10.6分で重合禁止剤を用いなかった比較例10の9.1分との差が1.5分であるのに対して、比較例11の場合は、その差が0.9分でほぼ同等であり、比較例12では、4.0分と長くなっており、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する化合物である4−メトキシ−1−ナフトールの場合、ゲル化時間の伸びが小さくなっていることが分かる。
【0114】
更にまた、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する化合物である1、4−ジエトキシナフタレンとハイドロキノンを併用した実施例12の場合、比較例12のハイドロキノンのみを用いた場合と比べてゲル化時間は殆ど変化がなく、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する化合物である1、4−ジエトキシナフタレンを添加したことによるゲル化時間の増加がないことが分かる。
【0115】
以上をまとめると、本発明の縮合多環芳香族骨格を有する化合物を含有するラジカル硬化性組成物は、硬化剤添加前の熱安定性及び貯蔵安定性が良好なことに加えて、硬化剤添加後のゲル化時間の延長が少なく、硬化遅延を起こすことが少ないといえる。また、添加量を増やせば更に熱安定性が向上するが、それに伴うゲル化時間の延長等硬化時間の延長は僅かであるといえる。