特許第6202303号(P6202303)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6202303車両用試験装置および車両用試験システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202303
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】車両用試験装置および車両用試験システム
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/06 20060101AFI20170914BHJP
   G01M 17/007 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   G01M17/06
   G01M17/007 Z
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-94081(P2013-94081)
(22)【出願日】2013年4月26日
(65)【公開番号】特開2014-215223(P2014-215223A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100087701
【弁理士】
【氏名又は名称】稲岡 耕作
(74)【代理人】
【識別番号】100101328
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 実夫
(74)【代理人】
【識別番号】100086391
【弁理士】
【氏名又は名称】香山 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】田上 将治
(72)【発明者】
【氏名】嘉田 友保
(72)【発明者】
【氏名】葉山 良平
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 健
(72)【発明者】
【氏名】アリス マローニアン
【審査官】 福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/059547(WO,A1)
【文献】 特開2008−175778(JP,A)
【文献】 特開2003−302313(JP,A)
【文献】 特開2006−138827(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0229836(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第00360179(EP,A1)
【文献】 特開2004−020401(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0059993(US,A1)
【文献】 特開平04−113907(JP,A)
【文献】 米国特許第05323644(US,A)
【文献】 特表2014−532857(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/00〜17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左前輪、右前輪、左後輪および右後輪の4つの車輪に対応する4つの車軸が取り付けられるとともに、試験品が搭載される試験品搭載用車体と、
前記試験品搭載用車体を支持し、かつ前記試験品搭載用車体に6自由度の運動をさせるための第1モーションベースと、
前記各車軸の外端部にそれぞれ連結され、前記各車軸に回転力を付与するための4つ電動モータと、
前記各車軸をそれに連結された前記電動モータのモータ本体を介して支持し、前記各車軸に6自由度の運動をさせるための4つの第2モーションベースとを含む、車両用試験装置。
【請求項2】
前記各モーションベースは、
固定ベースと、
前記固定ベースの上方に配置された可動ベースと、
前記固定ベースと前記可動ベースとの間に連結され、前記可動ベースに6自由度の運動をさせるためのアクチュエータとを含み、
前記第1モーションベースにおける前記可動ベースには、前記試験品搭載用車体が載せられた状態で前記試験品搭載用車体が固定されており、
前記各第2モーションベースにおける前記可動ベースに、対応する車軸が支持されている、請求項1に記載の車両用試験装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用試験装置と、
前記各モーションベースを制御する制御装置とを含む、車両用検査システム。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記各モーションベースがとるべき位置・姿勢の目標値を、前記モーションベース毎に生成する位置・姿勢目標値生成手段と、
前記各モーションベースの位置・姿勢が、前記位置・姿勢目標値生成手段によって生成された位置・姿勢目標値と等しくなるように、前記各モーションベースを制御する制御手段とを含む、請求項3に記載の車両用検査システム。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記各モーションベースが発生している6自由度別の力を検出する検出手段と、
前記各モーションベースに発生させるべき6自由度別の力の目標値を、前記モーションベース毎に生成する力目標値生成手段と、
前記検出手段によって検出された前記各モーションベースの6自由度別の力が、前記力目標値生成手段によって生成された力目標値と等しくなるように、前記各モーションベースを制御する制御手段とを含む、請求項3に記載の車両用検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車部品や車両の性能試験を行う車両用試験装置およびそれを備えた車両用試験システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両用試験装置として、横方向に移動可能な前後一対の横移動架台と、これらの横移動架台上面に左右一組ずつ設けられた4組の6自由度油圧シリンダ群と、これらの6自由度油圧シリンダ群の上端にそれぞれ連結された4つの旋回昇降架台と、これらの4つの旋回昇降架台上にそれぞれ設けられ、車両の4つの車輪が載せられる4つの回転ベルトとを備えた装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−175778号公報
【特許文献2】特開2006−138827号公報
【特許文献3】特開2009−536736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実車両の加速時、減速時、旋回時等には、車体に慣性力が作用する。前述の従来装置では、このような慣性力を車体に与えるためには、回転ベルトを回転駆動させることによって、車輪を支持している回転ベルトに対して車体を相対的に走行させる必要がある。
この発明の目的は、実車両の加速時、減速時、旋回時等に車体に作用する慣性力と同様な力を、車輪を支持している部材に対して車体を相対的に走行させることなく、車体に与えることができる車両用試験装置およびそれを備えた車両用試験システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための請求項1に記載の発明は、左前輪、右前輪、左後輪および右後輪の4つの車輪に対応する4つの車軸(21S,22S,23S,24S)が取り付けられるとともに、試験品(40,50)が搭載される試験品搭載用車体(2)と、前記試験品搭載用車体を支持し、かつ前記試験品搭載用車体に6自由度の運動をさせるための第1モーションベース(3)と、前記各車軸の外端部にそれぞれ連結され、前記各車軸に回転力を付与するための4つ電動モータ(31,32,33,34)と、前記各車軸をそれに連結された前記電動モータのモータ本体を介して支持し、前記各車軸に6自由度の運動をさせるための4つの第2モーションベース(4,5,6,7)とを含む、車両用試験装置(1)である。なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表すが、むろん、この発明の範囲は当該実施形態に限定されない。以下、この項において同じ。
【0006】
この発明では、第2モーションベースによって各車軸が支持されている状態で、第1モーションベースによって試験品搭載用車体に直接に力を加えることができる。これにより、実車両の加速時、減速時、旋回時等に車体に作用する慣性力と同様な力を、車輪(車軸)を支持している部材に対して車体を相対的に走行させることなく、試験品搭載用車体に与えることができる。また、この構成によれば、実車両が走行しているときに路面状況などの外部から車軸に与えられる回転力と同様な回転力を、車軸に付与することができるようになる。
【0007】
請求項2記載の発明は、前記各モーションベース(3〜7)は、固定ベース(11)と、前記固定ベースの上方に配置された可動ベース(12)と、前記固定ベースと前記可動ベースとの間に連結され、前記可動ベースに6自由度の運動をさせるためのアクチュエータ(13)とを含み、前記第1モーションベースにおける前記可動ベースには、前記試験品搭載用車体が載せられた状態で前記試験品搭載用車体が固定されており、前記各第2モーションベースにおける前記可動ベースに、対応する車軸が支持されている、請求項1に記載の車両用試験装置である。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1または2に記載の車両用試験装置(1)と、前記各モーションベースを制御する制御装置(70,3C〜7C;91,92,93,3C〜7C,103〜107)とを含む、車両用検査システム(100,100A)である。
【0010】
この発明によれば、実車両の加速時、減速時、旋回時等に車体に作用する慣性力と同様な力を、車輪(車軸)を支持している部材に対して車体を相対的に走行させることなく、試験品搭載用車体に与えることができる車両用検査システムを実現できる。
請求項記載の発明は、前記制御装置(70,3C〜7C)は、前記各モーションベースがとるべき位置・姿勢の目標値を、前記モーションベース毎に生成する位置・姿勢目標値生成手段(70)と、前記各モーションベースの位置・姿勢が、前記位置・姿勢目標値生成手段によって生成された位置・姿勢目標値と等しくなるように、前記各モーションベースを制御する制御手段(3C〜7C)とを含む、請求項に記載の車両用検査システム(100)である。
【0011】
請求項5記載の発明は、前記制御装置(91,92,93,3C〜7C,103〜107)は、前記各モーションベースが発生している6自由度別の力を検出する検出手段(92,103〜107)と、前記各モーションベースに発生させるべき6自由度別の力の目標値を、前記モーションベース毎に生成する力目標値生成手段(91)と、前記検出手段によって検出された前記各モーションベースの6自由度別の力が、前記力目標値生成手段によって生成された力目標値と等しくなるように、前記各モーションベースを制御する制御手段(93,3C〜7C)とを含む、請求項3に記載の車両用検査システム(100A)である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、この発明の第1実施形態に係る車両用検査装置の外観を図解的に示す概略斜視図である。
図2図2は、図1の車両用検査装置を図解的に示す正面図である。
図3図3は、図1の車両用検査装置を図解的に示す側面図である。
図4図4は、図1の車両用検査装置を図解的に示す平面図である。
図5図5は、前方右側の第2モーションベースの可動ベースへの外力付加用モータの取付構造を示す部分拡大正面図である。
図6図6は、図5の側面図である。
図7図7は、図5の平面図である。
図8図8Aおよび図8Bは、平地での加速時の車両走行状態を模擬する場合の各モーションベースの制御例を説明するための模式図であり、図8Aは、平地で車両が静止している状態を示す模式図であり、図8Bは、平地での加速時の車両走行状態を示す模式図である。
図9図9Aおよび図9Bは、坂道での加速時の車両走行状態を模擬する場合の各モーションベースの制御例を説明するための模式図であり、図9Aは、坂道で車両が静止している状態を示す模式図であり、図9Bは、坂道での加速時の車両走行状態を示す模式図である。
図10図10Aおよび図10Bは、旋回時の車両走行状態を模擬する場合の各モーションベースの制御例を説明するための模式図であり、図10Aは、直線走行している状態を示す模式図であり、図10Bは、旋回時の車両走行状態を示す模式図である。
図11図11は、車両用検査システムの概略的な電気的構成を示すブロック図である。
図12図12は、車両用検査システムの他の例の概略的な電気的構成を示すブロック図である。
図13図13は、この発明の第2実施形態に係る車両用検査装置の外観を図解的に示す概略斜視図である。
図14図14は、図13の車両用検査装置を図解的に示す正面図である。
図15図15は、図13の車両用検査装置を図解的に示す側面図である。
図16図16は、図13の車両用検査装置を図解的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、この発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の第1実施形態に係る車両用検査装置の外観を図解的に示す概略斜視図である。図2は、図1の車両用検査装置を図解的に示す正面図である。図3は、図1の車両用検査装置を図解的に示す側面図である。図4は、図1の車両用検査装置を図解的に示す平面図である。図4では、試験品搭載用車体は省略されている。
【0014】
車両用検査装置1は、左前輪、右前輪、左後輪および右後輪の4つの車輪に対応する4つの車軸21S,22S,23S,24Sが取り付けられるとともに試験品が搭載される試験品搭載用車体2と、試験品搭載用車体2を支持し、かつ試験品搭載用車体2に6自由度の運動をさせるための第1モーションベース3と、各車軸21S,22S,23S,24Sを支持し、かつ各車軸21S,22S,23S,24Sに6自由度の運動をさせるための4つの第2モーションベース4,5,6,7とを含む。
【0015】
図1図4においては、試験品搭載用車体2の前端が符号2fで示され、試験品搭載用車体2の後端が符号2rで示されている。
試験品搭載用車体2の4つの車軸21S,22S,23S,24Sに、車輪は取り付けられていない。試験品搭載用車体2の4つの車軸21S,22S,23S,24Sの外端部には、回転力を車軸に与えるための4つの電動モータ(以下、「外力付加用モータ」という。)31,32,33,34の出力軸が連結されている。各外力付加用モータ31,32,33,34は、実車両が走行しているときに外部から各車軸に加えられる回転力(外力)と同様な回転力を、対応する車軸21S、22S、23S、24Sに個別に付与するためのものである。外力には、たとえば、実車両が走行している場合に路面摩擦等に起因して各車軸に与えられる回転負荷、実車両が坂道を下っている場合に各車軸に路面を介して与えられる回転力等が含まれる。
【0016】
試験品搭載用車体2には、各種の自動車部品の試験品が搭載される。この実施形態では、試験品搭載用車体2には、電動パワーステアリング装置(EPS:electric power steering)40と、左後輪用の車軸23Sおよび右後輪用の車軸24Sを電動モータによって駆動するための後輪駆動モジュール50とが試験品として搭載されている。
この実施形態では、EPS40は、コラムアシスト式EPSである。EPS40は、よく知られているように、ステアリングホイール81と、ステアリングホイール81の回転に連動して前輪を転舵するための転舵機構82と、運転者の操舵を補助するための操舵補助機構83とを含んでいる。ただし、この実施形態では、前輪は取り付けられていないので、転舵機構82は前輪に連結されていない。ステアリングホイール81と転舵機構82とは、ステアリングシャフトを介して機械的に連結されている。
【0017】
転舵機構82は、ステアリングシャフトの下端に設けられたピニオンと、ピニオンと噛み合うラックが設けられたラック軸とからなるラックアンドピニオン機構を含んでいる。操舵補助機構83は、操舵補助力を発生するための電動モータ41(図11参照。以下、「アシストモータ41」という。)と、アシストモータ41の出力トルクをステアリングシャフトに伝達するための減速機構(図示略)とを含む。
【0018】
さらに、EPS40は、アシストモータを制御するためのECU(電子制御ユニット:Electronic Control Unit)42(図11参照。以下、「EPS用ECU」という)と、ラック軸の軸方向の変位位置を検出するための直線変位センサ(図示略)を含んでいる。
後輪駆動用モジュール50は、後輪用の車軸23S,24Sを回転駆動するための電動モータ51(図11参照。以下、「後輪駆動モータ51」という。)と、後輪駆動モータ51の回転力を後輪用の車軸23S,24Sに伝達するための伝達機構(図示略)と、後輪駆動モータ51を制御すためのECU52(図11参照。以下、「後輪駆動モータ用ECU52」という。)と、後輪用車軸23S,24Sの両方またはいずれか一方の回転角を検出するための回転角センサ(図示略)とを含んでいる。伝達機構は、クラッチおよび減速機構を含んでいる。伝達機構は、クラッチおよび減速機構のいずれか一方のみを含んでいてもよい。
【0019】
各モーションベース3,4,5,6,7は、床上に載置された定盤10上に固定されている。各モーションベース3,4,5,6,7は、よく知られているように、定盤10に固定された固定ベース11と、固定ベース11の上方に配置された可動ベース(ムービンクベース)12と、固定ベース11と可動ベース12との間に連結され、可動ベース12に6自由度の運動(前後、左右、上下、ロール、ピッチおよびヨーの運動)をさせるためのアクチュエータ13と、アクチュエータ13を駆動制御するモーションコントローラ(図示略)から構成されている。アクチュエータ13は、6個の電動シリンダから構成されている。
【0020】
第1モーションベース3の可動ベース12には、試験品搭載用車体2の中央部が載せられた状態で試験品搭載用車体2が固定されている。つまり、第1モーションベース3の可動ベース12の上面に、試験品搭載用車体2の下面の中央部が取り付けられている。
前方左側の第2モーションベース4の可動ベース12には、複数の弾性体15およびモータ取付板16を介して、外力付加用モータ31が取り付けられている。前方右側の第2モーションベース5の可動ベース12には、複数の弾性体15およびモータ取付板16を介して、外力付加用モータ32が取り付けられている。後方左側の第2モーションベース6の可動ベース12には、複数の弾性体15およびモータ取付板16を介して、外力付加用モータ33が取り付けられている。後方右側の第2モーションベース7の可動ベース12には、複数の弾性体15およびモータ取付板16を介して、外力付加用モータ34が取り付けられている。
【0021】
各第2モーションベース4〜7の可動ベース12への外力付加用モータ31〜34の取付構造は全て同じである。ここでは、図5図7を参照して、前方右側の第2モーションベース5の可動ベース12への外力付加用モータ32の取付構造について詳細に説明する。モータ取付板16は、平面視で矩形状である。外力付加用モータ32のモータ本体がモータ取付板16上に固定されている。モータ取付板16の下面の4つのコーナー部には、平面視で円形の弾性体15がそれぞれ取り付けられている。つまり、4つの弾性体15の上面が、モータ取付板16の下面の4つのコーナー部に接着剤によって固定されている。各弾性体15の下面は、前方右側の第2モーションベース5の可動ベース12の上面に、接着剤によって固定されている。このような取付構造により、前方右側の第2モーションベース5の可動ベース12上に、4つの弾性体15およびモータ取付板16を介して外力付加用モータ32が取り付けられている。
【0022】
この車両用検査装置1では、試験品搭載用車体2は、第1モーションベース3によって支持されている。また、外力付加用モータ31,32,33,34は、それぞれ第2モーションベース4,5,6,7によって支持されている。言い換えれば、車軸21S,22S,23S,24Sの外端部は、それぞれ外力付加用モータ31,32,33,34を介して、第2モーションベース4,5,6,7に支持されている。
【0023】
したがって、この車両用検査装置1では、第1モーションベース3のアクチュエータ13を駆動制御することによって、各種の車体姿勢を作ることができる。また、第2モーションベース4,5,6,7のアクチュエータ13を個別に駆動制御することによって、各種の路面状態を作ることができる。したがって、各モーションベース3,4,5,6,7のアクチュエータ13を個別に制御することにより、各種の車両走行状態を模擬することが可能である。
【0024】
また、この車両用検査装置1では、実車両が走行しているときに外部から各車軸に加えられる回転力(外力)と同様な回転力を、対応する車軸21S、22S、23S、24Sに個別に付与することができる。これにより、実際の運転状況に応じた駆動負荷、サスペンション挙動を再現することが可能となる。
また、この車両用検査装置1では、第2モーションベース4,5,6,7によって各車軸21S〜24Sが支持されている状態で、第1モーションベース3によって試験品搭載用車体2に直接に力を加えることができる。これにより、実車両の加速時、減速時、旋回時等に車体に作用する慣性力と同様な力を、車軸21S〜24Sを支持している部材に対して試験品搭載用車体2を相対的に走行させることなく、試験品搭載用車体2に与えることができる。
【0025】
また、この車両用検査装置1では、第1モーションベース3によって、試験品搭載用車体2をヨーイング運動させることができる。これにより、ヨーイング運動を模擬することができる。
以下、より具体的に説明する。以下の説明において、X軸とは、試験品搭載用車体2の重心を通り、車体の前後方向に延びる軸をいうものとする。Y軸とは、試験品搭載用車体2の重心を通り、車体の左右方向に延びる軸をいうものとする。また、Z軸とは、試験品搭載用車体2の重心を通り、車体の上下方向に延びる軸をいうものとする。つまり、X軸、Y軸およびZ軸は、試験品搭載用車体2に固定された座標系(以下、「車体座標系」という。)である。
【0026】
図8Aおよび図8Bは、平地での加速時の車両走行状態を模擬する場合の各モーションベースの制御例を説明するための模式図である。
図8Aは、平地で車両が静止している状態を示している。この場合には、各モーションベース3,4,5,6,7の可動ベース12の上面は、定盤10の上面と平行となっている。そして、各モーションベース3,4,5,6,7の可動ベース12の高さは、車体座標系のX軸およびY軸によって規定されるXY平面が定盤10の上面と平行となるように調整されている。
【0027】
平地での加速時の車両走行状態は、次のようにして作ることができる。すなわち、図8Bを参照して、全ての第2モーションベース4,5,6,7を図8Aの静止状態に固定し、第1モーションベース3の可動ベース12がY軸周りの第1方向(矢印で示す方向)に回転するように、第1モーションベース3のアクチュエータ13を駆動させる。前記Y軸周りの第1方向は、試験品搭載用車体2の前端が上方に持ち上げられる方向である。
【0028】
つまり、各外力付加用モータ31〜34が対応する第2モーションベース4,5,6,7に支持されている状態において、第1モーションベース3の可動ベース12をY軸周りの第1方向に回転駆動させる。これにより、試験品搭載用車体2には、試験品搭載用車体2をY軸周りの第1方向に回転させる回転力が直接付与される。つまり、実車両の加速時に車体に作用する慣性力と同様な力を、試験品搭載用車体2に直接付与することができる。これにより、車軸21S〜24Sを支持している部材に対して試験品搭載用車体2を相対的に走行させることなく、平地での加速時の車両走行状態を模擬することができる。この場合、ピッチング挙動評価、サスペンション挙動評価等が可能である。
【0029】
なお、減速時の車両走行状態を模擬する場合には、第1モーションベース3の可動ベース12に加えられるY軸周りの回転力の方向を、加速時の車両走行状態を模擬する場合の第1方向とは反対の方向(試験品搭載用車体2の後端が上方に持ち上げられる方向)にすればよい。
図9Aおよび図9Bは、坂道での加速時の車両走行状態を模擬する場合の各モーションベースの制御例を説明するための模式図である。坂道が上り坂であるについて説明する。
【0030】
図9Aは、坂道で車両が静止している状態を示している。この場合には、各モーションベース3,4,5,6,7の可動ベース12の上面は、想定している坂道の表面と平行となっている。そして、各モーションベース3,4,5,6,7の可動ベース12の高さは、車体座標系のX軸およびY軸によって規定されるXY平面が想定している坂道の表面と平行となるように調整されている。
【0031】
この静止状態は、平地での静止状態から、次のようにして作ることができる。つまり、第1モーションベース3の可動ベース12を、坂道の傾斜角に応じて、Y軸周りの第1方向に所定量回転させる。また、それと同時に、各第2モーションベース4,5,6,7の可動ベース12を、坂道の傾斜角に応じて、Y軸周りの第1方向に所定量回転させるとともにZ軸方向(上下方向)に移動させる。前記Y軸周りの第1方向は、試験品搭載用車体2の前端が持ち上げられる方向である。なお、この場合には、前側2つの第2モーションベース4,5の可動ベース12は上方向に移動され、後側2つの第2モーションベース6,7の可動ベース12は下方向に移動される。
【0032】
坂道での加速時の車両走行状態は、図9Aの静止状態から次のようにして作ることができる。すなわち、図9Bを参照して、全ての第2モーションベース4,5,6,7の可動ベース12を図9Aの坂道での静止状態に固定し、第1モーションベース3の可動ベース12がY軸周りの第1方向(矢印で示す方向)に回転するように、第1モーションベース3のアクチュエータ13を駆動させる。
【0033】
つまり、各外力付加用モータ31〜34が対応する第2モーションベース4,5,6,7に支持されている状態において、第1モーションベース3の可動ベース12をY軸周りの第1方向に回転駆動させる。これにより、試験品搭載用車体2には、試験品搭載用車体2をY軸周りの第1方向に回転させる回転力が直接付与される。つまり、実車両の坂道(この例では上り坂)での加速時に車体に作用する慣性力と同様な力を、試験品搭載用車体2に直接付与することができる。これにより、車軸21S〜24Sを支持している部材に対して試験品搭載用車体2を相対的に走行させることなく、坂道での加速時の車両走行状態を模擬することができる。この場合、ピッチング挙動評価、サスペンションおよびドライブシャフト挙動評価、ハブベアリングの評価等が可能である。
【0034】
なお、坂道での減速時の車両走行状態を模擬する場合には、第1モーションベース3の可動ベース12に加えられるY軸周りの回転力の方向を、坂道である場合の加速時の車両走行状態を模擬する場合の第1方向とは反対の方向(試験品搭載用車体2の後端が上方に持ち上げられる方向)にすればよい。
図10Aおよび図10Bは、旋回時の車両走行状態を模擬する場合の各モーションベースの制御例を説明するための模式図である。
【0035】
図10Aは、車両が直線走行している状態を示している。この状態から図10Bに示すように、車両が左方向に旋回する場合について説明する。
図10Bを参照して、試験品搭載用車体2を左方向に旋回させるために、第1モーションベース3の可動ベース12をZ軸周りに平面視で反時計方向に回転させる。また、全ての第2モーションベース4,5,6,7の可動ベース12を、Z軸周りに平面視で反時計方向に回転させるとともに、試験品搭載用車体2の旋回動に伴って外力付加用モータ31〜34が移動するように、車体座標系のX軸およびY軸によって規定されるXY平面内を移動させる。これにより、各第2モーションベース4,5,6,7の可動ベース12は、図10Bの二点鎖線で示す位置から実線で示す位置に移動する。これにより、旋回時の車両走行状態を模擬できる。この場合、車軸21S〜24Sの軸方向負荷の評価、操舵トルクの評価、ラック軸力の評価、ハブベアリングの評価等が可能である。
【0036】
この車両用検査装置1では、5つのモーションベース3,4,5,6,7によって試験品搭載用車体2および車軸21S〜24Sを支持して動かすことにより、各種の車両走行状態(車両挙動)を再現している。このため、このため、各種の車両走行状態を再現する際には、全てのモーションベース3,4,5,6,7は、それらの車両(試験品搭載用車体2または外力付加用モータ31〜34)への固定点間の相対的な位置関係を保持しながら、連動して動く必要がある。しかしながら、機械要素の個体差や制御性能等によって、固定点間の相対的な位置関係が保持されるように、全てのモーションベース3,4,5,6,7を正確に連動させることができないおそれがある。
【0037】
この第1実施形態では、各車軸21S〜24Sが連結された各外力付加用モータ31〜34は、弾性体15を介して対応する第2モーションベース4,5,6,7に取り付けられている。これにより、全てのモーションベース3,4,5,6,7の連動動作に誤差が生じたとしても、その誤差を弾性体15の変形によって吸収することができる。これにより、試験品搭載用車体2に本来作用しない無理な力が働くのを防止できるとともに、各モーションベース3,4,5,6,7の制御装置(たとえば、後述するアクチュエータ制御器70、モーションコントローラ3C,4C〜7C(図11参照))に高い制御性能が要求されなくなる。
【0038】
前述の第1実施形態では、各車軸21S〜24Sが連結された各外力付加用モータ31〜34と第2モーションベース4〜7との間に弾性体15が介在しているが、試験品搭載用車体2と第1モーションベース3との間にも弾性体を介在させてもよい。また、弾性体の形状は、平面視で円形のものに限られず、任意の形状であってもよい。
図4に破線で示すように、各車軸21S,22S,23S,24Sに、各車軸21S,22S,23S,24Sに作用するトルクを検出するためのトルクセンサ21T,22T,23T,24Tを設けてもよい。
【0039】
以下、車両用検査装置1を用いた車両用検査システムについて説明する。
図11は、車両用検査システムの概略的な電気的構成を示すブロック図である。
この車両用検査システム100は、ドライビングシミュレータ60と、車両用検査装置1と、アクチュエータ制御器70とを備えている。ドライビングシミュレータ60は、仮想的に車両の運転をシミュレートするものであり、運転者によって操作される。車両用検査装置1には、EPS40、後輪駆動用モジュール50および各外力付加用モータ31,32,33,34を制御するためのモータ制御装置35,36,37,38が搭載されている。アクチュエータ制御器70は、コンピュータによって構成されており、車両用検査装置1の各モーションベース3,4,5,6,7および車両用検査装置1に搭載されているモータ制御装置35,36,37,38を制御する。
【0040】
EPS40は、前述したように、アシストモータ41と、アシストモータ41を制御するためのEPS用ECU42と、ラック軸の軸方向の変位位置を検出するための直線変位センサ(図示略)とを含んでいる。
後輪駆動用モジュール50は、前述したように、後輪駆動モータ51と、後輪駆動モータ51を制御するための後輪駆動モータ用ECU52と、後輪用車軸23S,24Sの両方またはいずれか一方の回転角を検出するための回転角センサ(図示略)とを含んでいる。
【0041】
ドライビングシミュレータ60からは、ドライビングシミュレータ60の運転操作に応じた操舵角情報(ハンドル角情報)、アクセル開度情報、ブレーキ踏力情報等が出力される。ドライビングシミュレータ60から出力される操舵角情報は、車両用検査装置1に搭載されているEPS用ECU42に送られる。ドライビングシミュレータ60から出力されるアクセル開度情報は、車両用検査装置1が搭載されている後輪駆動モータ用ECU52に送られる。ドライビングシミュレータ60から出力されるブレーキ踏力情報は、アクチュエータ制御器70に送られる。ブレーキ踏力情報は、ブレーキ踏込量情報であってもよい。
【0042】
EPS用ECU42は、ドライビングシミュレータ60から送られてくる操舵角情報に基づいて操舵トルクを決定し、決定した操舵トルクに応じてアシストモータ41を駆動制御する。また、EPS用ECU42は、直線変位センサの出力信号に基づいて、EPS40に含まれているラック軸の軸方向変位量(以下、「ラック軸変位量」という。)およびラック軸の軸方向変位速度(以下、「ラック軸変位速度」という。)を計測して、アクチュエータ制御器70に送る。
【0043】
後輪駆動モータ用ECU52は、ドライビングシミュレータ60から送られてくるアクセル開度情報に基づいて、後輪駆動モータ51のトルク指令値を決定し、決定したトルク指令値に応じて後輪駆動モータ51を駆動制御する。また、後輪駆動モータ用ECU52は、回転角センサの出力信号に基づいて、後輪用の車軸23S,24Sの回転速度(以下、「車軸回転速度」という。)を測定して、アクチュエータ制御器70に送る。
【0044】
アクチュエータ制御器70は、車両モデル71と、指令値生成部72とを備えている。車両モデル71には、ドライビングシミュレータ60から出力されるブレーキ踏力情報、EPS用ECU42から送られてくるラック軸変位量およびラック軸変位速度および後輪駆動モータ用ECU52から送られてくる車軸回転速度が入力する。車両モデル71は、これらの入力情報に基づいて、ドライビングシミュレータ41によってシミュレートされている運転状況に応じた車体の位置・姿勢、各車輪の位置・姿勢および各車軸に加えられている外力を生成する。
【0045】
指令値生成部72は、車両モデル71によって生成された車体の位置・姿勢、各車輪の位置・姿勢に基づいて、各モーションベース3,4,5,6,7がとるべき位置・姿勢の指令値(位置・姿勢指令値(位置・姿勢目標値))を生成する。また、指令値生成部72は、車両モデル71によって生成された各車軸に加えられている外力に基づいて、各外力付加用モータ31,32,33,34に発生させるべきモータトルクの指令値(トルク指令値)を生成する。
【0046】
指令値生成部72によって生成された各モーションベース3,4,5,6,7それぞれに対する位置・姿勢指令値は、対応するモーションベース3,4,5,6,7のモーションコントローラ3C,4C,5C,6C,7Cに与えられる。各モーションコントローラ3C,4C,5C,6C,7Cは、指令値生成部72から与えられた位置・姿勢指令値に基づいて、対応するアクチュエータ13を制御する。これにより、各モーションベース3,4,5,6,7の可動ベース12の位置・姿勢が、位置・姿勢指令値に応じた位置・姿勢となるように制御される。
【0047】
指令値生成部72によって生成された各外力付加用モータ31,32,33,34それぞれに対するトルク指令値は、対応するモータ制御装置35,36,37,38に与えられる。各モータ制御装置35,36,37,38は、指令値生成部72から与えられたトルク指令値に基づいて、対応する外力付加用モータ31,32,33,34を制御する。これにより、各外力付加用モータ31,32,33,34からは、トルク指令値に応じたモータトルクが発生される。
【0048】
なお、図1に破線で示すように、アクチュエータ制御器70を試験品搭載用車体2に搭載することが好ましい。この理由について説明する。ラック軸変位量およびラック軸変位速度はアナログ信号として、EPS用ECU42からアクチュエータ制御器70に送信される。また、車軸回転速度はアナログ信号として、輪駆動モータ用ECU52からアクチュエータ制御器70に送信される。したがって、EPS用ECU42とアクチュエータ制御器70とはアナログ信号用の配線によって接続され、後輪駆動モータ用ECU52とアクチュエータ制御器70とはアナログ信号用の配線によって接続される。アナログ信号用の配線が長くなると、アナログ信号にノイズが混入しやすくなり、アナログ信号の誤差が大きくなるおそれがある。図1に破線で示すように、アクチュエータ制御器70を試験品搭載用車体2に搭載すると、これらのアナログ信号用の配線の長さを短くすることができる。
【0049】
図12は、車両用検査装置1を用いた他の車両用検査システムの他の例を示している。
この車両用検査システム100Aは、ドライビングシミュレータ60と、車両用検査装置1と、アクチュエータ制御器90とを備えている。ドライビングシミュレータ60は、仮想的に車両の運転をシミュレートするものであり、運転者によって操作される。車両用検査装置1には、EPS40、後輪駆動用モジュール50および各外力付加用モータ31,32,33,34を制御するためのモータ制御装置35,36,37,38が搭載されている。アクチュエータ制御器90は、コンピュータによって構成されており、車両用検査装置1の各モーションベース3,4,5,6,7および車両用検査装置1に搭載されているモータ制御装置35,36,37,38を制御する。
【0050】
EPS40は、アシストモータ41と、アシストモータ41を制御するためのEPS用ECU42と、ラック軸の軸方向の変位位置を検出するための直線変位センサ(図示略)とを含んでいる。後輪駆動用モジュール50は、後輪駆動モータ51と、後輪駆動モータ51を制御するための後輪駆動モータ用ECU52と、後輪用車軸23S,24Sの両方またはいずれか一方の回転角を検出するための回転角センサ(図示略)とを含んでいる。
【0051】
各モーションベース3,4,5,6,7には、アクチュエータ13を構成する6つの電動シリンダの発生力を個別に検出するための6つの力センサがそれぞれ設けられている。図12には、各モーションベース3,4,5,6,7それぞれに設けられている6つの力センサを、力センサ群103,104,105,106,107として表している。力センサは、たとえば、ロードセルである。また、各外力付加用モータ31,32,33,34に対応して、外力付加用モータ31,32,33,34に流れるモータ電流を検出するための電流センサ131,132,133,134が設けられている。
【0052】
ドライビングシミュレータ60からは、ドライビングシミュレータ60の運転操作に応じた操舵角情報(ハンドル角情報)、アクセル開度情報、ブレーキ踏力情報等が出力される。ドライビングシミュレータ60から出力される操舵角情報は、EPS用ECU42に送られる。ドライビングシミュレータ60から出力されるアクセル開度情報は、後輪駆動モータ用ECU52に送られる。ドライビングシミュレータ60から出力されるブレーキ踏力情報は、アクチュエータ制御器90に送られる。ブレーキ踏力情報は、ブレーキ踏込量情報であってもよい。
【0053】
EPS用ECU42は、ドライビングシミュレータ60から送られてくる操舵角情報に基づいて操舵トルクを決定し、決定した操舵トルクに応じてアシストモータ41を駆動制御する。また、EPS用ECU42は、直線変位センサの出力信号に基づいて、EPS40に含まれているラック軸の軸方向変位量(以下、「ラック軸変位量」という。)およびラック軸の軸方向変位速度(以下、「ラック軸変位速度」という。)を計測して、アクチュエータ制御器90に送る。
【0054】
後輪駆動モータ用ECU52は、ドライビングシミュレータ60から送られてくるアクセル開度情報に基づいて、後輪駆動モータ51のトルク指令値を決定し、決定したトルク指令値に応じて後輪駆動モータ51を駆動制御する。また、後輪駆動モータ用ECU52は、回転角センサの出力信号に基づいて、後輪用の車軸23S,24Sの回転速度(以下、「車軸回転速度」という。)を測定して、アクチュエータ制御器90に送る。
【0055】
アクチュエータ制御器90は、車両モデル91と、6自由度力演算部92と、MB制御指令値生成部93と、モータ制御指令値生成部94とを含んでいる。
車両モデル91には、ドライビングシミュレータ60から出力されるブレーキ踏力情報、EPS用ECU42から送られてくるラック軸変位量およびラック軸変位速度および後輪駆動モータ用ECU52から送られてくる車軸回転速度が入力する。車両モデル91は、これらの入力情報に基づいて、ドライビングシミュレータ41によってシミュレートされている運転状況に応じた制御目標値を生成する。車両モデル91によって生成される制御目標値は、各モーションベース3,4,5,6,7に発生させるべき6自由度別の力の目標値(6自由度別の力目標値)と、各外力付加用モータ31,32,33,34に発生させるべきモータトルクの目標値(トルク目標値)である。6自由度別の力は、各モーションベース3,4,5,6,7に固定されたxyz座標系のx方向の力、y方向の力、z方向の力、x軸周りのトルク、y軸周りのトルクおよびz軸周りのトルクからなる。
【0056】
6自由度力演算部92は、各力センサ群103,104,105,106,107によって検出される6つの電動シリンダの発生力に基づいて、対応するモーションベース3,4,5,6,7が発生している6自由度別の力を演算する。各MB制御指令値生成部93は、モーションベース3,4,5,6,7毎に、6自由度力演算部92によって演算される6自由度別の力と、車両モデル91によって生成される6自由度別の力目標値との偏差を零に近づけるための制御指令値(MB制御指令値)を生成して、対応するモーションコントローラ3C,4C,5C,6C,7Cに与える。MB制御指令値は、たとえば、前記偏差に対して、PI(比例積分)演算またはPID(比例積分微分)演算を行うことによって生成することができる。
【0057】
各モーションコントローラ3C,4C,5C,6C,7Cは、MB制御指令値生成部93から与えられるMB制御指令値に基づいて、対応するアクチュエータ13を構成している6つの電動シリンダの発生力を制御する。これにより、各モーションベース3,4,5,6,7から発生される6自由度別の力が、車両モデル91によって生成される6自由度の力目標値と等しくなるように制御される。
【0058】
モータ制御部94は、車両モデル91によって生成される各外力付加用モータ31,32,33,34のトルク目標値を、対応する外力付加用モータ31,32,33,34の電流目標値に変換する。そして、モータ制御部94は、外力付加用モータ31,32,33,34毎に、対応する電流センサ131,132,133,134によって検出されるモータ電流と、対応する電流目標値との偏差を零に近づけるための制御指令値(モータ制御指令値)を演算して、対応するモータ制御装置35,36,37,38に与える。各モータ制御装置35,36,37,38は、モータ制御部94から与えられるモータ制御指令値に基づいて、対応する外力付加用モータ31,32,33,34を制御する。これにより、各外力付加用モータ31,32,33,34からは、車両モデル91によって生成されるトルク目標値に応じたモータトルクが発生される。
【0059】
なお、各力センサ群103,104,105,106,107の代わりに、各モーションベース3,4,5,6,7の可動ベース12に作用している6自由度別の力を検出するための5つの6軸力センサを用いてもよい。この場合には、6自由度力演算部92は不要である。つまり、各6軸力センサによって検出された6自由度別の力は、MB制御指令値生成部93に与えられる。
【0060】
前述した図11の車両用検査システム100は、各モーションベース3,4,5,6,7の位置・姿勢がアクチュエータ制御器70によって設定された位置・姿勢目標値(位置・姿勢指令値)と等しくなるように、各モーションベース3,4,5,6,7のアクチュエータ13を制御する位置・姿勢制御システムである。これに対して、図12の車両用検査システム100Aは、各モーションベース3,4,5,6,7から発生される6自由度別の力がアクチュエータ制御器90によって設定された6自由度別の力目標値と等しくなるように、各モーションベース3,4,5,6,7のアクチュエータ13を制御する力制御システムである。
【0061】
図13は、この発明の第2実施形態に係る車両用検査装置の外観を図解的に示す概略斜視図である。図13において、前述の図1に示された各部に対応する部分には、図1の場合と同一の参照符号を付して示す。図14は、図13の車両用検査装置を図解的に示す正面図である。図15は、図13の車両用検査装置を図解的に示す側面図である。図16は、図13の車両用検査装置を図解的に示す平面図である。図16では、試験品搭載用車体は省略されている。
【0062】
第2実施形態に係る車両用検査装置1Aでは、各車軸21S、22S、23S、24Sには、第1実施形態に係る車両用検査装置1のように外力付加用モータ31,32,33,34が連結されていない。第2実施形態に係る車両用検査装置1Aでは、各車軸21S、22S、23Sおよび24Sには、それぞれ左前輪21、右前輪22、左後輪23および右後輪24が装着されている。
【0063】
これらの車輪21,22,23,24は、それぞれ第2モーションベース4,5,6,7の可動ベース12に、載せられている。つまり、車輪21,22,23,24は、それぞれ第2モーションベース4,5,6,7によって支持されている。言い換えれば、車軸21S,22S,23S,24Sの外端部は、それぞれ車輪21,22,23,24を介して、第2モーションベース4,5,6,7に支持されている。
【0064】
この第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、試験品搭載用車体2には、コラムアシスト式のEPS40と、後輪用の車軸23S,車軸24Sを電動モータによって駆動するための後輪駆動用モジュール50が試験品(評価対象)として搭載されている。
なお、この発明は、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0065】
1,1A…車両用試験装置、2…試験品搭載用車体、3…第1モーションベース、3C〜7C…モーションコントローラ、4〜7…第2モーションベース、11…固定ベース、12…可動ベース、13…アクチュエータ、21〜24…車輪、21S〜24S…車軸、31〜34…外力付加用モータ、70,90…アクチュエータ制御器、91…車両モデル、92…6自由度力演算部、93…MB制御指令値生成部、100,100A…車両用検査システム、103〜107…力センサ群
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16