(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202321
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】車両のステアリング装置
(51)【国際特許分類】
B62D 1/18 20060101AFI20170914BHJP
F16H 25/24 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
B62D1/18
F16H25/24 B
F16H25/24 G
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-230758(P2013-230758)
(22)【出願日】2013年11月7日
(65)【公開番号】特開2015-89758(P2015-89758A)
(43)【公開日】2015年5月11日
【審査請求日】2016年10月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084124
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 一眞
(72)【発明者】
【氏名】加藤 健
【審査官】
神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−067312(JP,A)
【文献】
特開2004−291906(JP,A)
【文献】
特開2002−240729(JP,A)
【文献】
特開2008−018876(JP,A)
【文献】
特開2011−046309(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0199667(US,A1)
【文献】
特表2009−502106(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0320352(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00 − 1/28
F16H 19/00 − 37/16
F16H 48/12
F16H 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に対しステアリングシャフトを揺動可能に支持するメインハウジングと、当該車体に固定する固定ブラケットとを連結し、前記ステアリングシャフトを所望の傾斜角度に調整する電動チルト機構を備えた車両のステアリング装置において、前記電動チルト機構が、前記メインハウジングに対し出力回転軸を中心に回転可能に支持される電動モータと、前記メインハウジングに対し前記電動モータの出力回転軸を中心に揺動可能に支持され、前記電動モータに回転駆動されるチルト螺子軸と、該チルト螺子軸に螺合され、当該チルト螺子軸の回転駆動に応じて軸方向に移動するナット部材と、該ナット部材に揺動可能に支持されると共に、前記メインハウジング及び前記固定ブラケットに対し揺動可能に支持されるリンク機構とを備えたことを特徴とする車両のステアリング装置。
【請求項2】
前記リンク機構が、前記ナット部材に対し第1のピボット軸を中心に回転可能に支持されると共に前記メインハウジングに対し第2のピボット軸を中心に回転可能に支持される第1のリンク部材と、該第1のリンク部材に対し第3のピボット軸を中心に回転可能に支持され前記固定ブラケットに対し第4のピボット軸を中心に回転可能に支持される第2のリンク部材とを備えたことを特徴とする請求項1記載の車両のステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のステアリング装置に関し、特に、電動モータによってステアリングシャフトを所望の傾斜角度に調整する電動チルト機構を備えたステアリング装置に係る。
【背景技術】
【0002】
電動チルト機構を備えたステアリング装置に関し、例えば下記の特許文献1には、「車体に対し前方側端部を揺動中心として揺動可能に支持するメインハウジングと、該メインハウジングに収容し軸方向移動可能に支持する可動コラム部材と、前記メインハウジングの車体後方側端部を前記車体に対して上下方向に移動可能に支持した状態で前記車体に固定する固定ブラケットと、該固定ブラケットに一端を支持するリンク機構と、該リンク機構の他端に連結する駆動機構を備え、該駆動機構によって前記リンク機構を介して前記メインハウジングを揺動し、前記可動コラム部材に連結するステアリングホイールの少なくとも上下方向の操作位置を調整し得る車両のステアリング装置」が開示されている(特許文献1の段落〔0006〕の前段に記載)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−67311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1においては、「駆動機構とリンク機構との連結構造を簡単且つ組み付け容易な構成とし、少ない部品点数で安価なステアリング装置を提供する」ことを課題としており(特許文献1の段落〔0005〕に記載)、その特徴は同段落〔0006〕の後段に記載されているが、チルト螺子軸及び電動モータの支持構造については
図1、
図10及び同段落〔0020〕等に記載されている。即ち、メインハウジングに対しチルト螺子軸がピボット軸を中心に揺動するように構成されており、そのピボット軸と電動モータの出力回転軸との間が離隔している。これは、電動モータには減速機構やコネクタ等が連結されており、これらを含む大型のモータホルダがピボット軸を介してメインハウジングに支持されているためである。このように、モータホルダが大型というだけでなく、上記のピボット軸と電動モータの出力回転軸との間が離隔していることによって、(電動モータを含む)モータホルダの揺動範囲が大きくなるので、これを許容し得る大きなスペースが必要となる。
【0005】
そこで、本発明は、チルト螺子軸の揺動に伴う電動モータ等の揺動範囲を極力抑え、省スペース化を可能とする電動チルト機構を備えた車両のステアリング装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を達成するため、本発明は、車体に対しステアリングシャフトを揺動可能に支持するメインハウジングと、当該車体に固定する固定ブラケットとを連結し、前記ステアリングシャフトを所望の傾斜角度に調整する電動チルト機構を備えた車両のステアリング装置において、前記電動チルト機構が、前記メインハウジングに対し出力回転軸を中心に回転可能に支持される電動モータと、前記メインハウジングに対し前記電動モータの出力回転軸を中心に揺動可能に支持され、前記電動モータに回転駆動されるチルト螺子軸と、該チルト螺子軸に螺合され、当該チルト螺子軸の回転駆動に応じて軸方向に移動するナット部材と、該ナット部材に揺動可能に支持されると共に、前記メインハウジング及び前記固定ブラケットに対し揺動可能に支持されるリンク機構とを備えることとしたものである。
【0007】
上記のステアリング装置において、前記リンク機構は、前記ナット部材に対し第1のピボット軸を中心に回転可能に支持されると共に前記メインハウジングに対し第2のピボット軸を中心に回転可能に支持される第1のリンク部材と、該第1のリンク部材に対し第3のピボット軸を中心に回転可能に支持され前記固定ブラケットに対し第4のピボット軸を中心に回転可能に支持される第2のリンク部材とを備えたものとするとよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明は上述のように構成されているので以下の効果を奏する。即ち、本発明のステアリング装置においては、電動チルト機構が、メインハウジングに対し出力回転軸を中心に回転可能に支持される電動モータと、メインハウジングに対し電動モータの出力回転軸を中心に揺動可能に支持され、電動モータに回転駆動されるチルト螺子軸と、チルト螺子軸に螺合され、チルト螺子軸の回転駆動に応じて軸方向に移動するナット部材と、ナット部材に揺動可能に支持されると共に、メインハウジング及び固定ブラケットに対し揺動可能に支持されるリンク機構を備えているので、ステアリングシャフトを所望の傾斜角度に容易に調整することができる。特に、チルト螺子軸は電動モータの出力回転軸を中心に揺動可能に支持されているので、電動モータの揺動範囲を最小限に抑えることができ、省スペース化が可能となる。
【0009】
上記のステアリング装置において、リンク機構が、ナット部材に対し第1のピボット軸を中心に回転可能に支持されると共にメインハウジングに対し第2のピボット軸を中心に回転可能に支持される第1のリンク部材と、該第1のリンク部材に対し第3のピボット軸を中心に回転可能に支持され固定ブラケットに対し第4のピボット軸を中心に回転可能に支持される第2のリンク部材とを備えたものとすれば、第1及び第2のリンク部材11、12を、ステアリングシャフトの左右両側に対称に配置することができるので、こじり力を生ずることなく、円滑且つ確実な揺動作動を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態において、電動モータとチルト螺子軸の連結部の底面図を組み入れて示した電動チルト機構を備えたステアリング装置の側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るステアリング装置の横断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態における電動モータとチルト螺子軸の連結部を示した側面図である。
【
図4】従来のステアリング装置における電動モータとチルト螺子軸の連結部を示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の望ましい実施形態を図面を参照して説明する。
図1及び
図2は本発明の一実施形態に係るステアリング装置の全体構成を示すもので、車体Bに対しステアリングシャフト1を揺動中心(C)回りに揺動可能に支持するメインハウジング2と、車体Bに固定する固定ブラケット3が電動チルト機構MTを介して連結され、その作動に応じてステアリングシャフト1が所望の傾斜角度に調整され、ステアリングホイールWの操作位置が調整されるように構成されている。本実施形態のステアリングシャフト1は、後端部にステアリングホイールWが接続される筒状のアッパシャフト1aと、このアッパシャフト1aの前端部とスプライン結合されるロアシャフト1bから成り、コラム部材4を介してメインハウジング2に支持されている。アッパシャフト1aとロアシャフト1bは軸方向に相対移動可能に連結されており、ロアシャフト1bの前端部が転舵機構(図示せず)に接続されている。この転舵機構はステアリングホイールWの操作に応じて駆動されて車輪操舵機構(図示せず)を介して操舵輪(図示せず)を転舵するように構成されている。
【0012】
本実施形態の電動チルト機構MTは、メインハウジング2に対し出力回転軸(軸心をSで示す)を中心に回転可能に支持される電動モータ5と、これに回転駆動されるチルト螺子軸6と、これに螺合され、チルト螺子軸6の回転駆動に応じて軸方向に移動するナット部材7と、これに揺動可能に支持されると共に、メインハウジング2及び固定ブラケット3に対し揺動可能に支持されるリンク機構LMを備えている。上記のチルト螺子軸6は、電動モータ5の出力回転軸(軸心S)を中心に揺動可能に支持されている。
【0013】
電動モータ5は、その側面及び底面を並記した
図1に示すように、減速機構5a及びコネクタ部5bを有し、ブラケット51、52によってメインハウジング2に回転可能に支持されている。減速機構5aは、例えばウォーム軸及びウォームホイール(図示せず)から成り、電動モータ5の出力回転軸が減速機構5aを介してチルト螺子軸6に連結されており、電動モータ5の出力トルクが適切に調整されてナット部材7に伝達される。チルト螺子軸6には台形螺子が形成されており、ナット部材7はチルトナットあるいはチルトスライダとも呼ばれる。尚、
図1の上方(側面)に示すように、減速機構5aの存在により、電動モータ5の出力回転軸の軸心(S)は、これを含む面に対してチルト螺子軸6の軸心(T)が直交する点(O)から所定距離離隔しており、軸心(S)と点(O)との間にはオフセットが存在する。
【0014】
上記のリンク機構LMは、ナット部材7に対し第1のピボット軸P1を中心に回転可能に支持されると共にメインハウジング2に対し第2のピボット軸P2を中心に回転可能に支持される第1のリンク部材11と、第1のリンク部材11に対し第3のピボット軸P3を中心に回転可能に支持され固定ブラケット3に対し第4のピボット軸P4を中心に回転可能に支持される第2のリンク部材12とを備えている。
【0015】
本実施形態の第1のリンク部材11は側面視V字形部材で、ベルクランク機構が構成されており、ナット部材7の軸方向移動に応じて第2のピボット軸P2を中心に第1のピボット軸P1と第3のピボット軸P3が同方向に揺動する。また、
図2に示すように、第1のリンク部材11は断面H字状で、一対の腕部11a、11aには、夫々第2のリンク部材12が第3のピボット軸P3を中心に回転可能に支持されており、一対の脚部11b、11bの間にはナット部材7が介装され、第1のピボット軸P1を中心に回転可能に支持されている。一方、第2のリンク部材12は、ステアリングシャフト1の左右両側に対称に配置されており、断面π字状の固定ブラケット3の一対の脚部3a、3aに、夫々第2のリンク部材12が第4のピボット軸P4を中心に回転可能に支持されている。
【0016】
而して、上記の構成になる電動チルト機構MTにおいて、電動モータ5が回転駆動されると、チルト螺子軸6が軸心(T)を中心に回転駆動され、その回転駆動に応じて、ナット部材7が軸心(T)を中心に回転しながらチルト螺子軸6の軸方向に移動する。これにともない、第1のリンク部材11が第2のピボット軸P2を中心に揺動すると共に、第2のリンク部材12が第4のピボット軸P4を中心に揺動し、メインハウジング2(並びに、コラム部材4、ステアリングシャフト1及びステアリングホイールW)が揺動中心(C)を中心に揺動し、ステアリングホイールWが車体上下方向に移動する。
【0017】
本実施形態においては、チルト螺子軸6は電動モータ5の出力回転軸(軸心S)を中心に揺動可能に支持されているので、
図3に「r」で示すように、(コネクタ部5bを含む)電動モータ5の揺動範囲を最小に抑えることができる。これに対し、従来の電動チルト機構においては、
図4に示すように、チルト螺子軸6が、(減速機構5aを含む)モータホルダ5xに支持されたピボット軸P5を中心に回転駆動されるように構成されており、ピボット軸P5と電動モータ5の出力回転軸(軸心S)との間が離隔しているので、
図4に「R」で示すように、(コネクタ部5bを含む)電動モータ5の揺動範囲は上記の「r」より大となる。
【0018】
次に、上記の構成になるステアリング装置の作動を説明する。先ず、電動モータ5が回転駆動(例えば正転)されると、この回転運動に応じてナット部材7がチルト螺子軸6に沿って、軸心(T)を中心に回転しながら、点Oに近接する方向に軸方向移動する。これにともない、第1のリンク部材11が第2のピボット軸P2を中心に揺動すると共に、第2のリンク部材12が第4のピボット軸P4を中心に揺動する。この結果、メインハウジング2(並びに、コラム部材4、ステアリングシャフト1及びステアリングホイールW)は揺動中心(C)を中心に反時計方向に揺動(レイクアップ)し、ステアリングホイールWの操作位置は、中立位置から揺動中心(C)を中心に上方に傾斜して最上段位置に至る。尚、本実施形態のようにステアリングシャフト1等の全体が揺動しステアリングホイールWが上方に移動することはレイクアップ(rake up)と呼ばれ、また、ステアリングシャフト1等の全体が揺動しステアリングホイールWが下方に移動することはレイクダウン(rake down)と呼ばれ、一般的なチルトアップ及びチルトダウンと区別される。
【0019】
これに対し、電動モータ5が上記と逆方向に回転駆動されると、この回転運動に応じてナット部材7が、軸心(T)を中心に回転しながら、点Oから離隔する方向に軸方向移動する。これにともない、第1のリンク部材11が第2のピボット軸P2を中心に揺動すると共に、第2のリンク部材12が第4のピボット軸P4を中心に揺動する。この結果、メインハウジング2(並びに、コラム部材4、ステアリングシャフト1及びステアリングホイールW)は揺動中心(C)を中心に時計方向に揺動(レイクダウン)し、ステアリングホイールWの操作位置は、揺動中心(C)を中心に下方に傾斜して最下段位置に至る。
【0020】
而して、本実施形態のステアリング装置においては、ステアリングシャフト1を所望の傾斜角度に調整することができ、
図3に示すように、チルト螺子軸6は電動モータ5の出力回転軸(軸心S)を中心に揺動可能に支持されているので、電動モータ5の揺動範囲(r)を最小に抑えることができ、省スペース化が可能となる。また、リンク機構LMを前述のように構成すれば、第1及び第2のリンク部材11、12を、ステアリングシャフト1の左右両側に対称に配置することができるので、こじり力を生ずることなく、円滑且つ確実な揺動作動を確保することができる。
【符号の説明】
【0021】
B 車体
MT 電動チルト機構
LM リンク機構
P1 第1のピボット軸
P2 第2のピボット軸
P3 第3のピボット軸
P4 第4のピボット軸
1 ステアリングシャフト
2 メインハウジング
3 固定ブラケット
4 コラム部材
5 電動モータ
6 チルト螺子軸
7 ナット部材
11 第1のリンク部材
12 第2のリンク部材